説明

高分子電解質膜及びそれを用いた燃料電池

【課題】 優れた機械的性質を持つ高分子電解質膜を提供する。
【解決手段】
(1)弾性率が23℃、相対湿度50%において400〜900MPaであって、構成成分としての高分子における、全てがその主鎖に芳香環を有し、少なくとも1種がその主鎖に脂肪族鎖を有し、かつ少なくとも1種が高分子電解質であることを特徴とする高分子電解質膜。
(2)高分子電解質膜のイオン交換容量が、0.2〜4meq/gであることを特徴とする上記(1)の高分子電解質膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質膜に関し、詳しくは、特定の弾性率を有することを特徴とする高分子電解質膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の少ないエネルギー源を模索する試みが種々なされている。なかでも燃料電池、特に固体高分子電解質膜を用いる固体高分子電解質型燃料電池は、排出物質は水のみである等の利点から、自動車等の動力源としての応用が期待されている。
【0003】
かかる固体高分子電解質型燃料電池用の高分子電解質膜として、ナフィオン(Nafion、デュポン社登録商標)に代表されるパーフルオロアルキルスルホン酸等の高分子電解質から得られる膜があるが、非常に高価であること、耐熱性が低いこと、膜強度が低く何らかの補強をしないと実用的でないことなどの問題が指摘されている。
【0004】
一方、上記高分子電解質に替わり得る安価な高分子電解質の開発が近年活発化している。なかでも耐熱性に優れフィルム強度の高い芳香族ポリエーテルにスルホン酸基を導入した高分子、すなわち側鎖にスルホン酸基を有し主鎖が芳香族系である芳香族系高分子が有望視されており、例えば、スルホン化ポリエーテルケトン系(特許文献1)、スルホン化ポリエーテルスルホン系(特許文献2、3)が提案されている。
【0005】
ところで、高分子電解質膜は、燃料電池セル・スタック内でセパレータやガスケット、ガス拡散層などに狭持され、かつ高い面圧がかけられている。このような条件下で、電流の変化や起動・停止に伴い、膜の吸水量が変化し寸法変化を起こすため、燃料電池用高分子電解質膜の要求特性の一つとして、吸水・乾燥に伴う膨張・収縮に対する耐久性が高いことが挙げられる。
【0006】
このことから、機械的性質を向上せしめた高分子電解質膜が提案されている。例えば、フィルム耐折れ性を改善するものとして、スルホン化ポリアリーレンにポリエチレングリコールまたはその誘導体を添加してなる弾性率が2400〜5400MPaの膜(特許文献4)、スルホン化ポリアリーレン膜とテトラフルオロエチレン共重合体膜とが積層されてなる弾性率3300〜5400MPaの複合膜(特許文献5)、含フッ素共重合体からなる弾性率が170〜270MPa、350MPaである膜(特許文献5、6)が提案されている。
しかしながら、これらの高分子電解質膜は燃料電池セル・スタック内における機械的耐久性が未だ不十分であるという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特表平11−502249号公報
【特許文献2】特開平10−45913号公報
【特許文献3】特開平10−21943号公報
【特許文献4】特開2002−008440
【特許文献5】特開2002−008447
【特許文献6】特開平11−329062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、より優れた機械的性質を持つ高分子電解質膜を見出すべく、鋭意検討を重ねた結果、23℃、相対湿度50%において400MPa〜900MPaという特定の弾性率を有する特定の高分子電解質膜が、燃料電池セル・スタック内等においても優れた機械的耐久性を示すことを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、
[1] 弾性率が23℃、相対湿度50%において400MPa〜900MPaであって、構成成分としての高分子における、全てがその主鎖に芳香環を有し、少なくとも1種がその主鎖に脂肪族鎖を有し、かつ少なくとも1種が高分子電解質であることを特徴とする高分子電解質膜を提供するものである。
【0010】
さらに、本発明は、
[2] 高分子電解質膜のイオン交換容量が、0.2〜4meq/gであることを特徴とする上記[1]の高分子電解質膜を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、
[3] 高分子電解質が、繰り返し単位として、下記一般式(1)で示される単位を少なくとも有するか又は下記一般式(2)で示される単位と下記一般式(3)で示される単位とを少なくとも有することを特徴とする上記[1]または[2]の高分子電解質膜を提供するものである。
―[(Ar1n―R1―(Ar2m―X1]― (1)
(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレンオキシ基から選ばれる基を表し、Ar1、Ar2は互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニリレン基、置換基を有していてもよいトリフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる基を表し、R1、Ar1、Ar2の少なくともいずれかはイオン交換性基を有する。X1は直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−のいずれかを表す。n、mはそれぞれ0または1を表し、n+mは1または2である。)
―[(Ar3o―R2―(Ar4p―X2]― (2)
−(Ar5−Z1−Ar6−Z2)− (3)
(式中、R2は置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレンオキシ基から選ばれる基を表し、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6は互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニリレン基、置換基を有していてもよいトリフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる基を表し、Ar5、Ar6の少なくとも何れかがイオン交換性基を有する。X2、Z1、Z2は互いに独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−のいずれかを表し、o、pはそれぞれ独立に0または1を表す。)
【0012】
また、本発明は、
[4] イオン交換性基が、−SO3H、−PO(OH)2、−COOH、−SO2NHSO2−から選ばれる酸基であることを特徴とする上記[3]の高分子電解質膜を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、
[5] 高分子電解質における主鎖が、芳香族系セグメントと脂肪族系セグメントからなるブロック共重合体であることを特徴とする上記[1]〜[4]いずれかの高分子電解質膜を提供するものである。
[6] 繰り返し単位として、下記一般式(4)で示される単位を少なくとも有する高分子非電解質を含有するか又は下記一般式(5)で示される単位と下記一般式(6)で示される単位とを少なくとも有する高分子非電解質を含有することを特徴とする上記[1]〜[5]いずれかの高分子電解質膜を提供するものである。
―[(Ar7q―R3―(Ar8r―X3]― (4)
(式中、R3は置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレンオキシ基から選ばれる基を表し、Ar7、Ar8は互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニリレン基、置換基を有していてもよいトリフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる基を表す。X3は直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−のいずれかを表す。q、rはそれぞれ0または1を表し、q+rは1または2である。

−(R4―X4)− (5)
−(Ar9−Z3−Ar10−Z4)− (6)
(式中、R4は置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレンオキシ基から選ばれる基を表し、Ar9、Ar10は互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニリレン基、置換基を有していてもよいトリフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる基を表し、X4、Z3、Z4は互いに独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−のいずれかを表す。)
[7] 高分子非電解質が、ブロック共重合体であることを特徴とする上記[6]の高分子電解質膜を提供するものである。
加えて、本発明は、
[8] 上記[1]〜[7]いずれかの高分子電解質膜を用いてなることを特徴とする燃料電池を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の高分子電解質膜は、弾性率が23℃、相対湿度50%において400MPa〜900MPaであって、構成成分としての高分子における、全てがその主鎖に芳香環を有し、少なくとも1種がその主鎖に脂肪族鎖を有し、かつ少なくとも1種が高分子電解質であるが故に、優れた機械的耐久性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明における高分子電解質膜は、23℃、相対湿度50%における弾性率が、400MPa〜900MPaであることを特徴とする。弾性率が低すぎると燃料電池セル・スタックの中で膜がクリープすることが懸念され、500MPa以上であることが好ましく、さらに好ましくは550MPa以上、とりわけ好ましくは600MPa以上である。また、弾性率が高すぎると膜の脆性が高くなり、870MPa以下であることが好ましく、さらに好ましくは840MPa以下、とりわけ好ましくは800MPa以下である。
【0016】
また本発明の高分子電解質膜は、構成成分としての高分子における、全てがその主鎖に芳香環を有し、少なくとも1種がその主鎖に脂肪族鎖を有し、かつ少なくとも1種が高分子電解質であることを特徴とする。構成成分としての高分子は、その全てが高分子電解質であっても、高分子電解質と電解質ではない高分子(以下、高分子非電解質と略称する)の混合物であっても良い。
これらの高分子電解質、高分子非電解質は、本発明においては、その全てが主鎖に芳香族環を有し、その少なくとも1種がその主鎖に脂肪族鎖を有するものであるが、中でも高分子電解質主鎖に芳香族環と脂肪族鎖の両方を有する場合が好ましく、とりわけ主鎖が芳香族系セグメントと脂肪族系セグメントのブロック共重合体であるものが好ましい。ここで、主鎖に芳香族環を有さない高分子電解質及び/又は高分子非電解質が構成成分に含まれると、高分子電解質膜のガラス転移温度が低く、耐熱性に乏しいものになったり、膜の耐水性が低下したりする傾向があり好ましくない。
【0017】
またこれらの高分子電解質、高分子非電解質は、その分子量が、GPC法によるポリスチレン換算の数平均分子量で表して、通常1000〜1000000程度である。
ここで、数平均分子量が1000より小さいと膜強度が低下する傾向にあり、好ましくは5000以上、より好ましくは20000以上である。また数平均分子量が1000000より大きいと溶媒への溶解に時間がかかったり、溶液粘度が高くなり過ぎたりして製膜加工が困難になる傾向があり、好ましくは500000以下、より好ましくは300000以下である。
【0018】
また高分子電解質としては、イオン交換性基として、例えば、−SO3H、−COOH、−PO(OH)2、−P(OH)2、−SO2NHSO2−、−Ph(OH)(Phはフェニレン基を表す)等の陽イオン交換基、−NH2、−NHR、−NRR'、−NRR'R''+、−NH3+等(R、R'、R''は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等を表す)等の陰イオン交換基を有する高分子が挙げられる。かかるイオン交換性基は、高分子の主鎖を構成している芳香族環に直接導入されていても良いし、主鎖を構成している芳香族環上や脂肪族鎖上の置換基、側鎖等に導入されていても良い。
これらのイオン交換性基は、その一部または全部が対イオンとの塩を形成していても良いが、燃料電池用の高分子電解質膜として実際に使用される際には、陽イオン交換基すなわち酸基である場合が好ましく、実質的に全ての酸基が遊離酸である場合が好ましい。
好ましい酸基としては、−SO3H、−PO(OH)2、−COOH、−SO2NHSO2−などが挙げられる。より好ましくは、−SO3H、−PO(OH)2であり、とりわけ−SO3Hが好ましい。
【0019】
本発明の高分子電解質膜の構成成分である高分子電解質は、これを用いた高分子電解質膜のイオン交換容量が、0.2〜4meq/g程度になるようなイオン交換容量のものが通常使用される。
ここで、高分子電解質膜のイオン交換容量が4meq/gを超えると膜の耐水性が低下する傾向にあり、好ましくは3meq/g以下、より好ましくは2.5meq/g以下である。また高分子電解質膜のイオン交換容量が0.2meq/gより低いと膜のイオン伝導度が低下し、燃料電池として出力が低下する傾向にあり、好ましくは0.5meq/g以上、より好ましくは0.8meq/g以上である。従って、高分子電解質は、高分子電解質膜が高分子非電解質を含む場合には、通常0.2〜5.0meq/g程度のイオン交換容量のものから、好ましくは0.5〜4.0meq/g程度、より好ましくは1.0〜3.0meq/g程度のイオン交換容量のものから選定されることになる。また高分子非電解質を含まない場合には、高分子電解質膜について示した上述の範囲のイオン交換当量を有するものから通常選定されることになる。
【0020】
本発明の高分子電解質膜は、上記のような高分子電解質またはこれと高分子非電解質からなるものであるが、好適に用いられる高分子電解質としては、例えば繰り返し単位として、下記一般式(1)で示される単位を少なくとも有するもの、下記一般式(2)で示される単位と下記一般式(3)で示される単位とを少なくとも有するもの等が挙げられる。
―[(Ar1n―R1―(Ar2m―X1]― (1)
(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレンオキシ基から選ばれる基を表し、Ar1、Ar2は互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニリレン基、置換基を有していてもよいトリフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる基を表し、R1、Ar1、Ar2の少なくともいずれかはイオン交換性基を有する。X1は直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−のいずれかを表す。n、mはそれぞれ0または1を表し、n+mは1または2である。)
【0021】
―[(Ar3o―R2―(Ar4p―X2]― (2)
−(Ar5−Z1−Ar6−Z2)− (3)
(式中、R2は置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレンオキシ基から選ばれる基を表し、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6は互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニリレン基、置換基を有していてもよいトリフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる基を表し、Ar5、Ar6の少なくとも何れかがイオン交換性基を有する。X2、Z1、Z2は互いに独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−のいずれかを表し、o、pはそれぞれ独立に0または1を表す。)
【0022】
また本発明の高分子電解質膜において、好適に用いられる高分子非電解質としては、例えば繰り返し単位として、下記一般式(4)で示される単位を少なくとも有すか又は下記一般式(5)で示される単位と下記一般式(6)で示される単位とを少なくとも有するもの等が挙げられる。
―[(Ar7q―R3―(Ar8r―X3]― (4)
(式中、R3は置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレンオキシ基から選ばれる基を表し、Ar7、Ar8は互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニリレン基、置換基を有していてもよいトリフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる基を表す。X3は直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−のいずれかを表す。q、rはそれぞれ0または1を表し、q+rは1または2である。

−(R4―X4)− (5)
−(Ar9−Z3−Ar10−Z4)− (6)
(式中、R4は置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレンオキシ基から選ばれる基を表し、Ar9、Ar10は互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニリレン基、置換基を有していてもよいトリフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる基を表し、X4、Z3、Z4は互いに独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−のいずれかを表す。)
【0023】
ここで、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基としては、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デカメチレン基等の他に、これらに、メチル、エチル、n−プロピルなどの炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシなどの炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチルなどの炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、トリフルオロメトキシなどの炭素数1〜6のハロゲン化アルコキシ基、フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜14のアリール基、フェノキシ、ナフチルオキシなどの炭素数6〜14のアリールオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、フルオロ、クロロ、ブロモなどのハロゲノ基、水酸基などが置換したもの等が挙げられる。置換基が複数ある場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。
中でもハロゲノ基が置換した炭素数2〜10のアルキレン基が好ましく、2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンチレン基、2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロヘプチレン基等の炭素数2〜10の部分ハロゲン化アルキレン基、1,1,2−トリフルオロ−2−クロロエチレン基、テトラフルオロエチレン基、オクタフルオロブチレン基、ドデカフルオロへキシレン基、ヘキサデカフルオロオクチレン基等の炭素数2〜10の過ハロゲン化アルキレン基などがより好ましい。とりわけ好ましくはテトラフルオロエチレン基、オクタフルオロブチレン基、ドデカフルオロへキシレン基、ヘキサデカフルオロオクチレン基などである。
【0024】
また置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレン基としては、例えばオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシペンチレン基、オキシへキシレン基、オキシへプチレン基、オキシオクチレン基、オキシノニレン基、オキシデカメチレン基等の他に、これらに、メチル、エチル、n−プロピルなどの炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシなどの炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチルなどの炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、トリフルオロメトキシなどの炭素数1〜6のハロゲン化アルコキシ基、フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜14のアリール基、フェノキシ、ナフチルオキシなどの炭素数6〜14のアリールオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、フルオロ、クロロ、ブロモなどのハロゲノ基、水酸基などが置換したもの等が挙げられる。置換基が複数ある場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。
中でも、ハロゲノ基が置換した炭素数2〜10のオキシアルキレン基が好ましく、オキシ−(2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ)ペンチレン基、オキシ−(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロ)ヘプチレン基等の炭素数2〜10の部分ハロゲン化オキシアルキレン基、オキシ−(1,1,2−トリフルオロ−2−クロロ)エチレン基、オキシ−(テトラフルオロ)エチレン基、オキシ−(オクタフルオロ)ブチレン基、オキシ−(ドデカフルオロ)へキシレン基、オキシ−(ヘキサデカフルオロ)オクチレン基等の炭素数2〜10の過ハロゲン化オキシアルキレン基がより好ましい。とりわけ好ましくは、オキシ−(テトラフルオロ)エチレン基、オキシ−(オクタフルオロ)ブチレン基、オキシ−(ドデカフルオロ)へキシレン基、オキシ−(ヘキサデカフルオロ)オクチレン基などである。
【0025】
置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレンオキシ基としては、
例えばオキシエチレンオキシ基、オキシプロピレンオキシ基、オキシブチレンオキシ基、オキシペンチレンオキシ基、オキシへキシレンオキシ基、オキシへプチレンオキシ基、オキシオクチレンオキシ基、オキシノニレンオキシ基、オキシデカメチレンオキシ基等の他に、これらに、メチル、エチル、n−プロピルなどの炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシなどの炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチルなどの炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、トリフルオロメトキシなどの炭素数1〜6のハロゲン化アルコキシ基、フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜14のアリール基、フェノキシ、ナフチルオキシなどの炭素数6〜14のアリールオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、フルオロ、クロロ、ブロモなどのハロゲノ基、水酸基などが置換したもの等が挙げられる。置換基が複数ある場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。
中でもハロゲノ基が置換した炭素数2〜10のオキシアルキレンオキシ基が好ましく、オキシ−(2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロ)ペンチレン−オキシ基、オキシ−(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロ)ヘプチレン−オキシ基等の炭素数2〜10の部分ハロゲン化オキシアルキレンオキシ基、オキシ−(1,1,2−トリフルオロ−2−クロロ)エチレン−オキシ基、オキシ−(テトラフルオロ)エチレン−オキシ基、オキシ−(オクタフルオロ)ブチレン−オキシ基、オキシ−(ドデカフルオロ)へキシレン−オキシ基、オキシ−(ヘキサデカフルオロ)オクチレン−オキシ基等の炭素数2〜10の過ハロゲン化オキシアルキレンオキシ基がより好ましい。とりわけ好ましくは、オキシ−(テトラフルオロ)エチレン−オキシ基、オキシ−(オクタフルオロ)ブチレン−オキシ基、オキシ−(ドデカフルオロ)へキシレン−オキシ基、オキシ−(ヘキサデカフルオロ)オクチレン−オキシ基などである。
【0026】
また置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニリレン基、置換基を有していてもよいトリフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基における置換基としては、例えばメチル、エチル、n−プロピルなどの炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシなどの炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチルなどの炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、トリフルオロメトキシなどの炭素数1〜6のハロゲン化アルコキシ基、フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜14のアリール基、フェノキシ、ナフチルオキシなどの炭素数6〜14のアリールオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、フルオロ、クロロ、ブロモなどのハロゲノ基、水酸基、などが挙げられる。置換基は複数有していても良く、この場合は同一であっても異なるものであっても良い。
置換基を有していてもよいフェニレン基の好ましい例としては、例えば、1,4−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,2−フェニレン基、及びこれらに、メチル、エチル、n−プロピルなどの炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシなどの炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチルなどの炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、トリフルオロメトキシなどの炭素数1〜6のハロゲン化アルコキシ基、フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜14のアリール基、フェノキシ、ナフチルオキシなどの炭素数6〜14のアリールオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、フルオロ、クロロ、ブロモなどのハロゲノ基、水酸基などが置換したもの等が挙げられる。置換基が複数ある場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。中でも、これらの置換基で置換されていてもよい1,4−フェニレン基が好ましい。
【0027】
置換基を有していてもよいビフェニリレン基の好ましい例としては、例えば、4,4’−ビフェニリレン基、3,3’−ビフェニリレン基、3,4’−ビフェニリレン基、及びこれらに、メチル、エチル、n−プロピルなどの炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシなどの炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチルなどの炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、トリフルオロメトキシなどの炭素数1〜6のハロゲン化アルコキシ基、フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜14のアリール基、フェノキシ、ナフチルオキシなどの炭素数6〜14のアリールオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、フルオロ、クロロ、ブロモなどのハロゲノ基、水酸基などが置換したもの等が挙げられる。置換基が複数ある場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。中でも、これらの置換基で置換されていてもよい4,4’−ビフェニリレン基が好ましい。
また置換基を有していてもよいトリフェニレン基の好ましい例としては、例えば、4,4”−トリフェニレン基、3,3”−トリフェニレン基、3,4”−トリフェニレン基、及びこれらに、メチル、エチル、n−プロピルなどの炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシなどの炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチルなどの炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、トリフルオロメトキシなどの炭素数1〜6のハロゲン化アルコキシ基、フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜14のアリール基、フェノキシ、ナフチルオキシなどの炭素数6〜14のアリールオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、フルオロ、クロロ、ブロモなどのハロゲノ基、水酸基などが置換したもの等が挙げられる。置換基が複数ある場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。中でも、これらの置換基で置換されていてもよい4,4”−トリフェニレン基が好ましい。
【0028】
置換基を有していてもよいナフチレン基の好ましい例としては、例えば、1,4−ナフチレン基、2,3−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、1,8−ナフチレン基、及びこれらに、メチル、エチル、n−プロピルなどの炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシなどの炭素数1〜6のアルコキシ基、トリフルオロメチルなどの炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基、トリフルオロメトキシなどの炭素数1〜6のハロゲン化アルコキシ基、フェニル、ナフチルなどの炭素数6〜14のアリール基、フェノキシ、ナフチルオキシなどの炭素数6〜14のアリールオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、フルオロ、クロロ、ブロモなどのハロゲノ基、水酸基などが置換したもの等が挙げられる。置換基が複数ある場合は、それらは同一であっても異なっていても良い。中でも、これらの置換基で置換されていてもよい1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基が好ましい。
【0029】
前記一般式(1)で示される単位の代表例としては、遊離酸の形で表すと、例えば下記のものが挙げられる。ここで、kはそれぞれ独立に0、1または2を表し、各単位中のkの少なくとも何れか一つは1または2である。

【0030】
また前記一般式(2)で示される単位の具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。

【0031】
一般式(3)で示される単位の具体例としては、遊離酸の形で表すと、例えば下記のものが挙げられる。

【0032】
また前記一般式(4)で示される単位の具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。

【0033】
また前記一般式(5)で示される単位の具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。

【0034】
前記一般式(6)で示される単位の具体例としては、例えば下記のものが挙げられる。

【0035】
本発明において、好適に用いられる高分子電解質としては、上記のような一般式(1)で示される繰返し単位を少なくとも有するもの、上記のような一般式(2)で示される繰返し単位と上記のような一般式(3)で示される繰返し単位とを少なくとも有するものなどが挙げられるが、さらに他の繰返し単位を有することもできる。複数の繰返し単位を有する場合は、交互共重合体であっても、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、グラフト共重合体であっても良い。
また好適に用いられる高分子非電解質としては、上記のような一般式(4)で示される繰返し単位を少なくとも有するもの、上記のような一般式(5)で示される繰返し単位と上記のような一般式(6)で示される繰返し単位とを少なくとも有するものなどが挙げられるが、さらに他の繰返し単位を有することもできる。複数の繰返し単位を有する場合は、交互共重合体であっても、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても、グラフト共重合体であっても良い。
【0036】
本発明における高分子電解質、高分子非電解質は、例えば、アルカリ存在下に、対応するジハロゲノ化合物と対応するジオール化合物を溶媒中で縮合する等の公知の方法により製造することができる。
具体例を示すと、下式(7)で表される高分子電解質は、1,6−ビス(4−フルオロフェニル)−ドデカフルオロへキサンと4,4’−ジヒドロキシビフェニルと4,4’−ジフルオロ−3,3’−ジスルホジフェニルスルホンとをアルカリ存在下、重縮合して製造することができる。また下式(8)で表される高分子電非解質は、鎖末端に水酸基を有するポリエチレンオキシドと両末端をフッ素化したポリエーテルスルホンを反応させることで製造することができる。

【0037】
本発明の高分子電解質膜は、構成する高分子として、上記のような高分子電解質の他に、上記のような高分子非電解質を含んでいて良いが、その組合せとしては特に制限がなく、高分子電解質1種のみから構成される高分子電解質膜であっても、複数種の高分子電解質と複数種の高分子非電解質から構成される高分子電解質であってもよい。
かかる高分子電解質膜を製造するに当り、その方法は特に制限はないが、溶液状態より製膜する方法(溶液キャスト法)が好ましく使用される。
具体的には、高分子電解質及び必要に応じて用いる高分子非電解質とを適当な溶媒に溶解し、その溶液をガラス板上に流延塗布し、溶媒を除去することにより高分子電解質膜が製膜される。製膜に用いる溶媒は、高分子電解質及び必要に応じて用いる高分子非電解質を溶解可能であり、その後に除去し得るものであるならば特に制限はなく、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルなどが好適に用いられる。これらは単独で用いることもできるが、必要に応じて2種以上の溶媒を混合して用いることもできる。中でも、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等がポリマーの溶解性が高く好ましい。
【0038】
また本発明の高分子電解質膜は、多孔性のフィルムやシート(多孔膜)との含浸複合化や、繊維状高分子との混合等の方法により得られる複合膜であっても良い。
すなわち、本発明の高分子電解質膜の構成成分の内、少なくとも1種以上の高分子電解質及び/又は高分子非電解質からなる多孔性のフィルムやシート(多孔膜)に、本発明の高分子電解質膜の構成成分である高分子電解質及び/又は高分子非電解質を含浸複合化することで複合膜を得ることができる。このとき、多孔性のフィルムやシートの構成成分としては高分子非電解質を含む場合が好ましく、含浸させる成分としては高分子電解質を含むことが好ましい。
また、本発明の高分子電解質膜の構成成分の内、少なくとも1種以上の高分子電解質及び/又は高分子非電解質からなる繊維状物と、本発明の高分子電解質膜の構成成分である高分子電解質及び/又は高分子非電解質を混合して製膜することで複合膜を得ることができる。このとき、繊維状物の構成成分としては高分子非電解質を含む場合が好ましく、繊維状物と混合させる成分としては高分子電解質を含むことが好ましい。
【0039】
ここで多孔膜は、高分子電解質膜の強度や柔軟性、耐久性のさらなる向上のために使用されるため、その使用目的を満たすものであればその形状によらず用いることができるが、固体高分子型燃料電池の隔膜として使用する場合は、膜厚は通常1〜100μm、好ましくは3〜30μm、さらに好ましくは5〜20μm、孔径は通常0.01〜10μm、好ましくは0.02〜7μm、空隙率は通常20〜98%、好ましくは30〜95%である。また、多孔膜の材質としては、高分子非電解質、並びに、主鎖に脂肪族鎖を有する高分子である場合が好ましい。これらの多孔膜の製造方法としては、公知の手法を用いることができる。
またここで繊維状物は、高分子電解質膜の強度や柔軟性、耐久性のさらなる向上のために使用されるため、その使用目的を満たすものであればその長さ、太さなどの形状によらず用いることができる。固体高分子型燃料電池の隔膜として使用する場合は、高分子電解質膜中に占める繊維状物の重量組成比は、0.1%乃至20%である場合が好ましい。また、繊維状物の材質としては、高分子非電解質、並びに、主鎖に脂肪族鎖を有する高分子である場合が好ましい。これらの繊維状物の製造方法としては、公知の手法を用いることができる。
【0040】
かかる多孔膜や繊維状物との複合化方法に特に制限は無く、例えば高分子電解質溶液中に多孔膜を含浸し、多孔膜を取り出した後に溶媒を乾燥させて複合膜を得る方法や、高分子電解質溶液を多孔膜に塗布し、溶媒を乾燥させて複合膜を得る方法、多孔膜に減圧下で高分子電解質溶液を接触させ、その後常圧に戻す事で溶液を多孔膜空孔内に含浸させ、溶媒を乾燥させて複合膜を得る方法、繊維状物と高分子電解質溶液を混合し、その後に前記した溶液キャスト方法に準じて製膜する方法等が挙げられる。
【0041】
かくして高分子電解質膜が得られるが、本発明においては、23℃、相対湿度50%における弾性率が、400MPa〜900MPaであるものが選定される。
次に燃料電池について説明する。
本発明の燃料電池は、上記のような高分子電解質膜の両面に、触媒および集電体としての導電性物質を接合することにより製造することができる。
該触媒としては、水素または酸素との酸化還元反応を活性化できるものであれば特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、白金の微粒子を用いることが好ましい。
白金の微粒子は活性炭や黒鉛などの粒子状または繊維状のカーボンに担持されて用いることが好ましい。
また集電体としての導電性物質に関しても、公知の材料を用いることができるが、多孔質性のカーボン不織布またはカーボンペーパーが、原料ガスを触媒へ効率的に輸送するために好ましい。
ここで、多孔質性のカーボン不織布またはカーボンペーパーに白金微粒子または白金微粒子を担持したカーボンを接合させる方法、およびそれを高分子電解質膜と接合させる方法については、例えば、J. Electrochem. Soc.: Electrochemical Science and Technology, 1988, 135(9), 2209 に記載されている方法等の公知の方法を用いることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
弾性率
日本工業規格(JIS K 7127)に準拠して23℃、相対湿度50%下において実施した引っ張り試験から弾性率を求めた。
【0044】
乾湿サイクル試験
カーボンに担持された白金触媒(白金担時量30%)10mgをNafion(デュポン社の登録商標)の低級アルコール溶液(水を10wt%含む)(Aldrich社製)0.1mlと混合してペースト状とし、電極材料としての多孔質性のカーボン織布に塗布、乾燥し、触媒が固定された電極材料としての集電体を得た。この集電体を膜の両面に重ね合せ、膜−電極接合体を得た。この膜−電極接合体を燃料電池セルに組み込むことで燃料電池単セルを得た。
95℃に保った燃料電池単セルのアノード・カソード両側に、95℃に保ったバブラーを通した加湿窒素を30分、バブラーを通さない乾燥窒素を30分送り込むプロセスを1サイクルとした。この乾湿サイクルに対する膜の機械的劣化の指標として、膜の水素透過量を用いた。水素透過量があるレベル以上に達するサイクル数が大きいほど、機械的耐久性が高いと言える。
水素透過量は次の方法で測定した。燃料電池単セルのアノード側に水素、カソード側に窒素を送り込み、ポテンショスタット/ガルバノスタットを接続した。まず、両極とも背圧を1atm(ゲージの読み)に設定し、電圧を0.2V〜0.6Vの間で掃引し、そのときに得られた電流の値(Ib)を記録した。次に、アノード側の背圧はそのままにカソード側の背圧を0.5atm(ゲージの読み)に設定し、電圧を0.2V〜0.6Vの間で掃引し、そのときに得られた電流の値(Iu)を記録した。このとき、背圧が等しい場合と差圧がかかっている場合の電流の差、すなわちIb−Iuを透過水素の体積に換算し、水素透過量とした。
【0045】
粘度測定
高分子電解質をN、N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解させ、0.01g/mL溶液とした。この溶液の比粘度を40℃、ウベローデ型粘度計にて測定した。
【0046】
合成例1
ランダム共重合体(RC−1)の合成例
フラスコに室温下、p−フルオロヨードベンゼン26.64gと脱水ジメチルスルホキシド100mlを入れ、銅粉末15.24gを加え、110℃で攪拌した。ここに1,6−ジヨードドデカフルオロへキサン30.46gをゆっくりと滴下し、120℃で24時間攪拌した。反応溶液を放冷後ろ過した後、水溶液に滴下し析出物を回収した。析出物をアセトンに溶解させ、ろ過した後、アセトンを留去した。残留物をメタノールに溶解させ、水中に析出させた。析出物を減圧蒸留(155℃、5mmHg)で精製し、目的の1,6−ビス(4−フルオロフェニル)ドデカフルオロへキサン(以下M−1と略称する)を得た。
以下にNMR測定結果を示す。1H−NMR(ppm):7.49、7.77、19F−NMR(ppm):−108、−110、−122。
次いで、フラスコに、窒素気流下、4,4’−ジヒドロキシビフェニルを2g、炭酸カリウム1.559g、N−メチルピロリドン14ml、トルエン5mlを加えた。180℃にてトルエンを留去しながら、共沸脱水を行なった。 次いで、上記M−1を2.634g、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホン酸カリウムを2.635g加え、180℃で8.5時間攪拌した。放冷後の反応液を塩酸酸性メタノール中に滴下し、得られた沈殿物を濾過回収し、メタノール、水で洗浄した後、40℃にて減圧乾燥した。
ランダム共重合体である下記式(9)の高分子電解質RC−1が茶色の粉末として5.82g得られた。該高分子電解質のイオン交換容量を滴定法により測定したところ、1.3meq/gであった。また、RC−1の比粘度は1.25であった。

【0047】
合成例2
ポリエーテルスルホン(末端−F型)の合成例
フラスコに窒素下、住友化学工業製スミカエクセルPES4003P(住友化学工業製、水酸基末端ポリエーテルスルホン、数平均分子量:39000)1000g、炭酸カリウム7.59g、DMAc2500ml、およびトルエン500mlを加え、160℃にて加熱撹拌して共沸脱水した。室温にて放冷後、デカフルオロビフェニル53.6gを加え80℃にて3.5時間加熱撹拌した。放冷後、反応液を大量の水に滴下し、得られた沈殿物をろ過回収し、メタノール/アセトン混合溶媒で洗浄後、80℃にて乾燥して両末端F基の下記式(10)のポリマー(以下P−1と略称する)を得た。

【0048】
合成例3
ポリエチレンオキシド(以下PEOと略称する)とポリエーテルスルホン(以下PESと略称する)を構成成分とするブロック共重合体の合成例
鎖末端に水酸基を有する分子量70000のPEO 15gをDMAc20mlに溶解させ、トルエン5mlを加えて共沸脱水した後室温まで放冷した。そこへ油性のNaH(60wt%)を30mg加え室温で撹拌し、鎖末端水酸基をナトリウム塩とした。さらに上記P−1を5gを加えて撹拌することにより目的のブロック共重合体を得た。 このブロック共重合体溶液をメタノールに注ぎ、下記式(11)のポリマー(以下BC−1と略称する)を取り出した。1H・NMR測定より各セグメントの重量比を算出したところPES:PEO=1.0:1.9であった。

【0049】
合成例4
ポリ(オキシ(3,3’−ジフェニル−4,4’−ビフェニリレン)オキシ−4,4’−ビフェニリレン)(両末端−OH型)の合成例
フラスコに窒素下、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシビフェニルを22.12g、4,4’−ジブロモビフェニル19.26g、ベンゾフェノンを80g、およびトルエンを20ml加え、撹拌溶解した。そこへ炭酸カリウム9.49gを添加し、加熱撹拌してトルエンと水の共沸条件下にて脱水後、トルエンを蒸留除去した。さらに、あらかじめ準備した塩化第一銅/キノリン触媒(0.1g/10ml)を5ml加え、210℃で6時間加熱攪拌した。反応液を大量の酢酸酸性メタノールに注ぎ、得られた沈殿物をろ過、乾燥して両末端水酸基の下記式(12)のポリマー(以下P−2と略称する)を得た。

【0050】
合成例5
ブロック共重合体(BC−2)の合成例
フラスコに、合成例4の条件に従って合成したP−2を100g、炭酸カリウム8.29g、DMAc3000ml、およびトルエン250mlを加え、150℃にて加熱撹拌して共沸脱水した。室温まで放冷後、合成例2の条件に従って合成したP−1を400g加え80℃にて6時間加熱撹拌した。放冷後、反応液を大量の塩酸酸性メタノールに滴下し、得られた沈殿物をろ過回収し、80℃にて乾燥してブロック共重合体を得た。得られたブロック共重合体を濃硫酸に溶解させ60℃でスルホン化反応を行った。得られた溶液を大量の氷水中に滴下し、沈殿物をろ過回収した。さらに洗液が中性になるまでイオン交換水によるミキサー洗浄を繰返した後、乾燥することにより、スルホン化した下記式(13)ブロック共重合体BC−2を得た。BC−2の重DMSO溶媒中での1H−NMR測定を行った結果、下記参考例1で述べるPESのスルホン化物に起因する各シグナルが実質的に観察されなかったことから、スルホン酸基は実質的にP−1由来のセグメントには導入されておらず、P−2由来のセグメントに選択的に導入されていることを確認した。1H−NMR測定より各セグメントの重量比を算出したところ(PES):(P−2セグメントのスルホン酸置換体)=2.0:1.0であった。また、相対粘度は1.03であり、イオン交換容量を滴定法により測定したところ、1.5meq/gであった。

【0051】
合成例6
ブロック共重合体(BC−3)の合成例
無水塩化第二鉄0.2gとプロピレンオキシド1mlをエーテル4ml中0℃で10分撹拌した後に、温度を室温まで上げ、減圧にしてエーテルおよび揮発成分を除去して触媒を調整した。これにフェニルグリシジルエーテル17.74gとエピクロロヒドリン2.37gを加え、100℃で1時間、160℃で8時間加熱撹拌した。重合液をメタノール中に注いで析出物をろ過、乾燥することにより、ポリ(フェニルグリシジルエーテル−co−エピクロロヒドリン)のポリマー(以下GE2と略称する)を得た。
スミカエクセルPES5003P(住友化学工業製、水酸基末端ポリエーテルスルホン)の8gと炭酸カリウム0.1gをDMAc40mlとトルエン5mlに溶解し、加熱してトルエンを蒸留した。これにGE2を2g加え160℃で3.5時間加熱攪拌した。反応液を希塩酸に注いでポリマーを析出させ、ろ過、水洗、乾燥してブロック共重合体を回収した。得られたブロック共重合体を濃硫酸40gと混合し溶解した後、大量の水に注いでポリマーを析出させ、ろ過、水洗、乾燥してスルホン化した下記式(14)のブロック共重合体(BC−3)を得た。BC−3のイオン交換容量を滴定法により測定したところ、1.0meq/gであった。一方、BC−3は若干のゲル分を含み、各種溶媒に完溶しないため、比粘度測定は困難であった。

【0052】
合成例7
ブロック共重合体(BC−4)の合成例
特開2001−250567号公報の実施例1に記載の方法に準じて合成し、下記式(15)のブロック共重合体BC−4を得た。BC−4の相対粘度は0.91であり、イオン交換容量を滴定法により測定したところ、1.6meq/gであった。

【0053】
参考例1
スミカエクセルPES5200P(住友化学工業製、クロロ基末端ポリエーテルスルホン)1.5gを10%発煙硫酸20gに溶解させ室温で3日間スルホン化した。その後ポリマーの硫酸溶液を氷水に注いで希釈し、ポリマーの希硫酸溶液を透析膜(UC36−32−100、三光純薬株式会社製)で純水流水中2日間透析し硫酸を除去した。透析後の水溶液を濃縮、乾燥し、スルホン化PESを得た。
スルホン化PESの重DMSO溶媒中での1H−NMR測定を行った結果、スルホン化前のPES5200Pには認められなかった7.05ppm、7.90ppm、8.29ppmにシグナルが観測され、芳香環にスルホン酸基が導入されたことを確認した。
【0054】
実施例1
合成例1で得たRC−1をDMAcに約15重量%の濃度で溶解し、ガラス板に流延し、80℃で乾燥して溶媒を除去することにより、透明で強靭、かつ柔軟な膜を得た。膜のイオン交換容量を滴定法により測定したところ、1.3meq/gであった。この膜の弾性率と乾湿サイクル試験の結果を表1に示す。
【0055】
実施例2
合成例3で得たBC−1、合成例5で得たBC−2を重量比で1:2になるように量り取り、DMAcに約15重量%の濃度で溶解し、ガラス板に流延し、80℃で乾燥して溶媒を除去することにより、透明で強靭、かつ柔軟な膜を得た。膜のイオン交換容量を滴定法により測定したところ、1.0meq/gであった。この膜の弾性率と乾湿サイクル試験の結果を表1に示す。
【0056】
実施例3
合成例6で得たBC−3をDMAcに約15重量%の濃度で溶解し、ガラス板に流延し、80℃で乾燥して溶媒を除去することにより、透明で強靭、かつ柔軟な膜を得た。膜のイオン交換容量を滴定法により測定したところ、1.0meq/gであった。この膜の弾性率と乾湿サイクル試験の結果を表1に示す。
【0057】
比較例1
実施例2において、BC−1とBC−2を重量比2:1になるように量り取る以外は同様の方法で、透明な膜を得た。膜のイオン交換容量を滴定法により測定したところ、0.5meq/gであった。この膜の弾性率と乾湿サイクル試験の結果を表1に示す。
【0058】
比較例2
合成例7で得たBC−4をDMAcに約15重量%の濃度で溶解し、ガラス板に流延し、80℃で乾燥して溶媒を除去することにより、透明褐色な膜を得た。膜のイオン交換容量を滴定法により測定したところ、1.6meq/gであった。この膜の弾性率と乾湿サイクル試験の結果を表1に示す。
【0059】
【表1】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性率が23℃、相対湿度50%において400MPa〜900MPaであって、構成成分としての高分子における、全てがその主鎖に芳香環を有し、少なくとも1種がその主鎖に脂肪族鎖を有し、かつ少なくとも1種が高分子電解質であることを特徴とする高分子電解質膜。
【請求項2】
高分子電解質膜のイオン交換容量が、0.2〜4meq/gであることを特徴とする請求項1記載の高分子電解質膜。
【請求項3】
高分子電解質が、繰り返し単位として、下記一般式(1)で示される単位を少なくとも有するか又は下記一般式(2)で示される単位と下記一般式(3)で示される単位とを少なくとも有することを特徴とする請求項1又は2記載の高分子電解質膜。
―[(Ar1n―R1―(Ar2m―X1]― (1)
(式中、R1は置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレンオキシ基から選ばれる基を表し、Ar1、Ar2は互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニリレン基、置換基を有していてもよいトリフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる基を表し、R1、Ar1、Ar2の少なくともいずれかはイオン交換性基を有する。X1は直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−のいずれかを表す。n、mはそれぞれ0または1を表し、n+mは1または2である。)
―[(Ar3o―R2―(Ar4p―X2]― (2)
−(Ar5−Z1−Ar6−Z2)− (3)
(式中、R2は置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレンオキシ基から選ばれる基を表し、Ar3、Ar4、Ar5、Ar6は互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニリレン基、置換基を有していてもよいトリフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる基を表し、Ar5、Ar6の少なくとも何れかがイオン交換性基を有する。X2、Z1、Z2は互いに独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−のいずれかを表し、o、pはそれぞれ独立に0または1を表す。)
【請求項4】
イオン交換性基が、−SO3H、−PO(OH)2、−COOH、−SO2NHSO2−から選ばれる酸基であることを特徴とする請求項3記載の高分子電解質膜。
【請求項5】
高分子電解質における主鎖が、芳香族系セグメントと脂肪族系セグメントからなるブロック共重合体であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の高分子電解質膜。
【請求項6】
繰り返し単位として、下記一般式(4)で示される単位を少なくとも有する高分子非電解質を含有するか又は下記一般式(5)で示される単位と下記一般式(6)で示される単位とを少なくとも有する高分子非電解質を含有することを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の高分子電解質膜。
―[(Ar7q―R3―(Ar8r―X3]― (4)
(式中、R3は置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレンオキシ基から選ばれる基を表し、Ar7、Ar8は互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニリレン基、置換基を有していてもよいトリフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる基を表す。X3は直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−のいずれかを表す。q、rはそれぞれ0または1を表し、q+rは1または2である。

−(R4―X4)− (5)
−(Ar9−Z3−Ar10−Z4)− (6)
(式中、R4は置換基を有していてもよい炭素数2〜10のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素数2〜10のオキシアルキレンオキシ基から選ばれる基を表し、Ar9、Ar10は互いに独立に、置換基を有していてもよいフェニレン基、置換基を有していてもよいビフェニリレン基、置換基を有していてもよいトリフェニレン基、置換基を有していてもよいナフチレン基から選ばれる基を表し、X4、Z3、Z4は互いに独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO2−のいずれかを表す。)
【請求項7】
高分子非電解質が、ブロック共重合体であることを特徴とする請求項6記載の高分子電解質膜。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかに記載の高分子電解質膜を用いてなることを特徴とする燃料電池。




【公開番号】特開2006−45512(P2006−45512A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186132(P2005−186132)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】