説明

高分散性Ca・Mg複合炭酸塩類及びその製造方法

【課題】
微粒子かつ粒子形状が揃った高純度Ca・Mg複合炭酸塩類及びその焼成物、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
重金属の含有量が少ない、もしくは重金属を除去した原料を用いて、Caイオン、Mgイオン及びCO3イオンを水中で接触させ得られた反応生成物を加熱処理(好ましくは水熱処理)することにより、下記式(1)で表される微粒子かつ粒子形状が揃った高純度Ca・Mg複合炭酸塩類を製造する。
Ca1-XMgXCO3・・・(1)
(式中、Xは0<X<1)
なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱処理を施したCa・Mg複合炭酸塩化合物及びその製造方法に関するものである。さらに本発明は、副産物として炭酸カルシウム及び/または炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムを含有するCa・Mg複合炭酸塩類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
天然鉱物であるドロマイトCaMg(CO3)2はカルシウムとマグネシウムを2:1の比率で含有しており、栄養学的バランスが優れていることから最近ではパンやうどんを製造する際に粉末を添加したり、その他食品への応用が多数研究報告されている。
【0003】
例えば、特許文献1〜5ではドロマイト粒子を液中で分散安定化させたり、可溶化することでドロマイト含有飲料の提供を可能にしている。
【特許文献1】特開2001-252059号公報
【特許文献2】特開2001-275617号公報
【特許文献3】特開2001-29052号公報
【特許文献4】特開2002-218944号公報
【特許文献5】特開2003-79341号公報
【0004】
またドロマイトを焼成することで抗菌作用を持たせ、水または食品類の抗菌及びミネラル付与剤として用いる方法が特許文献6に示されている。
【特許文献6】特開2001-58188号公報
【0005】
しかし、これらの原料であるドロマイトは天然鉱物であるため、産出地によりばらつきはあるが少なからず重金属等の不純物を多く含有している。そのため一般的な天然ドロマイトは灰白色あるいは茶色味を帯びており、食品に添加して使用する場合には、精製するか、あるいは高純度な天然ドロマイトを産出する地域を選択して常時分析検査を行いながら採掘・製品化する等、細心の注意を払う必要がある。
【0006】
食品以外の用途としては、粉砕した天然ドロマイトにFe2O3やSiO2、Mg(OH)2、Ca(OH)2等を添加して均質混合し、耐火煉瓦の原料に利用する方法が知られている(特許文献7)。しかし、耐火煉瓦製造用ドロマイトの耐火特性はドロマイトの不純物レベルや粒度分布、粒子の反応性等に大きく影響されると記載されている。
【特許文献7】特開2000-239057号公報
【0007】
不純物が少ないドロマイトを得る手段としては、Ca源、Mg源及び炭酸源とを反応させ、ドロマイトを人工的に合成する方法が考えられる。特許文献8では水溶性カルシウムと水溶性マグネシウムを水媒体中で炭酸源と反応させ、ドロマイト類似構造を有するCa・Mg複合炭酸塩類を合成し、合成物を制酸剤として利用する方法が述べられている。しかし、これらは常温に近い温度で合成されており、実施例の反応温度も40℃のものしか例示されていない。反応温度が50℃以下のCa・Mg複合炭酸塩類の粒度分布を測定すると一次粒子の結晶成長が不十分であるために粗大な凝集体を形成しており、二次粒子形状の均一性はない。また結晶成長が不十分であることは結晶成長しているものと比べて酸に対する溶解性が非常に速いことを意味し、制酸剤として用いた場合には、胃内pHの急激かつ過剰な上昇を招くとともにその持続性にも問題があった。
【特許文献8】特開平10-182149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、不純物が少なく、微粒子かつ粒子形状が揃ったCa・Mg複合炭酸塩類及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、Ca源、Mg源及び炭酸源とを反応させたCa・Mg複合炭酸塩類をさらに加熱処理することにより、不純物が少なく、かつ粒子形状、粒子径が揃ったCa・Mg複合炭酸塩類が得られることを見出し、本発明をなすに至った。またCaやMg、CO3のモル比を変えた未加熱反応物を加熱処理することにより、炭酸カルシウム及び/または炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムを副産物として含有するCa・Mg複合炭酸塩類が生成し、これが非常に優れた結晶性ならびに特異な粒子形状を有することも見出した。
【発明の効果】
【0010】
本発明のCa・Mg複合炭酸塩類は、微粒子で、かつ均一な粒子形状を有するため、天然ドロマイトや未加熱の合成ドロマイトと比べ、分散性に優れ、有害な重金属や不純物含有量が少ない。さらに、加熱条件や原料の組成を変えることによって、粒度分布や粒子形状等の物理的性質および酸反応性のような化学的性質を調整できるため、食品添加物、制酸剤、各種フィラー、セラミック素材等の利用が可能である。また、本発明の複合炭酸塩類は低温で脱水・脱炭酸を行うことができるので、微粒子かつ均一な粒子形状を有する抗菌性Ca・Mg複合金属酸化物を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。本発明の途中段階であるCa・Mg複合炭酸塩類反応物(未加熱品)は、例えば、特開平10-182149で詳細に述べられているような公知の物質を原料にして公知の方法によって合成することができる。すなわち、Ca源としては、例えば、フッ化カルシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、硝酸カルシウム四水和物、酢酸カルシウム等の少なくとも1種。Mg源としては、例えば、フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化マグネシウムカリウム,塩化マグネシウムナトリウム、塩化マグネシウムアンモニウム、臭化マグネシウム、硝酸マグネシウム及び酢酸マグネシウム等の少なくとも1種。炭酸源としては、水媒質中で(CO2−)を発生する化合物で、例えば、炭酸水、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等の重炭酸塩、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の炭酸塩および炭酸ナトリウムカリウム等の少なくとも1種である。またCaイオンとMgイオンが混在している水溶液にCO2ガスを吹き込んで合成することも可能である。CO2ガスに工場から出る排ガスを利用すれば環境保全の面でもメリットがある。
【0012】
上記方法で得られた反応物(未加熱)スラリーを加熱処理するが、加熱処理としては、水熱処理が好ましい。加熱処理温度は、50℃以上が好ましい。より好ましくは70℃以上であり、70℃以上であれば粒度分布測定で粒度分布曲線のピークが1つで粒子形状、粒子径が揃ったものが得られる。またより高温で加熱処理(水熱処理)するか、Ca:MgのMgのモル比を高めるほど結晶成長が促進され、粒子形状が立体的なものが得られる。したがって、加熱処理温度やCa:Mgの反応モル比を変えることによって粒子形状及び粒子径の調整が可能である。
【0013】
加熱処理(水熱処理)時間は特に限定されないが、反応の均一性を考えると1時間以上が好ましく、さらに好ましくは4時間以上である。本発明の目的とする化合物は、加熱処理(水熱処理)後のスラリーを通水法、フィルタープレス法、デカンテーション法等の公知の方法により洗浄し、棚式乾燥、バンド乾燥、噴霧乾燥等の公知の方法で乾燥後、粉砕することにより得られる。
【0014】
またドロマイト(Ca:Mg:CO3=1:1:2)と異なるモル比の未加熱反応スラリーを高温で加熱処理するとX線解析上ドロマイト以外のピーク(炭酸カルシウム及び/または炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム)が観察されるが、これらの副産物はSEM写真による結晶外観や粒度分布測定値などから化合物粒子中にミクロなレベルで均一分散(均一含有)していると考えられ、単にドロマイトとこれら副産物の粉末を混合した混合粉末とは異なり、物理化学的に均一な粒子形状を有する混合物が形成される。さらに本発明品である粉末は、顆粒状、ペレット状、錠剤状、カプセル状に加工することも可能である。
【0015】
本発明のCa・Mg複合炭酸塩類は、一般にCaO及びMgOが抗菌性を有することから、焼成することによって抗菌性を付与することができる。通常、鉱物ドロマイトの一次分解温度が約800℃、二次分解温度が約900℃であるのに対して、本発明品のCa・Mg複合炭酸塩類の分解温度は合成時の加熱処理温度やCa:Mgモル比により若干異なるが、大体500℃付近と700℃付近に大きな重量減少が見られる。すなわち、鉱物ドロマイトより低い焼成温度での焼成が可能である。つまり、抗菌活性を有する焼成物を得るためには少なくとも500℃以上、好ましくは700℃以上、より好ましくは750℃以上で焼成すればよい。しかし、あまり焼成温度を上げ過ぎると、焼成物の焼結が進んでBETが低下するとともに抗菌活性も低下するため、抗菌剤として使用する場合には焼成温度は1000℃以下が好ましい。
【0016】
本発明のCa・Mg複合炭酸塩類は、不純物(重金属)が少ない原料を使用し、さらに加熱処理をほどこすことによって、人体に有害な重金属の含有量を少なくすることができる。すなわち、本発明のCa・Mg複合炭酸塩類およびその焼成物の重金属総含有量は、20ppm以下、好ましくは、10ppm以下であり、鉛(Pb)化合物含有量が金属に換算して0.5ppm以下、砒素(As)化合物含有量が金属に換算して0.2ppm以下で、鉛化合物、砒素化合物、カドミウム化合物の合計含有量が金属に換算して1ppm以下、好ましくは0.5ppm以下である。さらに不純物含有量が少ないため、白色度は98以上、好ましくは99以上である。平均2次粒子径は、0.1〜3μm、好ましくは,0.2〜2μmである。すなわち、ほとんどの粒子が2次凝集していない1次粒子であることを意味する。
【0017】
以下本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明は実施例の範囲に限定されるものではない。以下の実施例においては、(1)モル比、(2)粒度分布、(3)平均2次粒子径(4)X線構造解析、(5)鉛(Pb)、砒素(As)、カドミウム(Cd)、(6)重金属、(7)白色度、(8)BET法比表面積、(9)制酸力、(10)最小発育阻止濃度(MIC)の各測定は、下記の測定法によって測定された値を意味する。
(1) モル比;キレート滴定
(2) 粒度分布;マイクロトラック粒度分析計(日機装7995−30(SPA))にて測定する。すなわち、試料粉末700mgを70mlのイソプロパノールに加えて、超音波(NISSEI社製、MODEL US-300、電流300μA)で3分間分散処理した後,その分散液の2〜4mlを採って、250mlのイソプロパノールを収容した上記粒度分析計の試料室に加え、分析計を作動させて8分間その懸濁液を循環した後、粒度分布を測定する。合計2回の測定を行い算術平均値を算出する。
(3) 平均二次粒子径
上記粒度分布の測定で得られた50%累積2次粒子径の算術平均値を算出して、試料の平均2次粒子径とする。
(4)X線構造解析;自動X線回折装置(リガクRINT2200V)
(5) 鉛(Pb)、砒素(As)、カドミウム(Cd)の分析;原子吸光度法
原子吸光分光光度計(日立製作所製 Z-5010)にて測定
(6) 重金属の分析;原子吸光法
原子吸光分光光度計(日立製作所製 Z-5010)にて測定
(7)白色度;光電光度計(ケット科学(株)製 Kett 粉体白度計C-100)にて測定
(8)BET法比表面積;
液体窒素の吸着法により測定する。すなわち、液体窒素吸着法装置(ユアサアイオニクス社製NOVA2000)を用いて測定する。試料粉末0.5gを測定用専用セルに正確に秤り取り、真空度10Torr以下、105℃で30分間、前処理をする。(装置:ユアサアイオニックス社製Flovac Degasser)前処理後、セルを冷却し、測定装置室に入れ、比表面積を測定する。
(9)制酸力
試料0.25gを精密に量り、共栓フラスコに入れ、0.1mol/L 塩酸100mLを正確に加え、密栓して、37±2℃で1時間振り混ぜた後、ろ過する。ろ液50mLを正確に量り、過量の塩酸を0.1mol/L水酸化ナトリウム液でpH3.5になるまで、よくかき混ぜながら測定する。本品の換算した乾燥物1gにつき、0.1mol/L塩酸の消費量は、170mL以上である。
(10)最小発育阻止濃度(MIC)の測定方法;日本化学療法学会標準法に準拠
使用菌株
・ 大腸菌(E. coli NBRC3972)
・ 黄色ブドウ球菌 (S. aureus NBRC12732)
1.普通寒天斜面培地(日水製薬(株)製)に供試菌を接種し、36℃で24時間培養する。(前々培養)
2.普通寒天斜面培地に前々培養菌を接種し、36℃で20〜22時間培養する。(前培養)
3.イオン交換水に粉末試料を添加懸濁し、3.2、1.6、0.8、0.4、0.2、0.1wt%試料希釈液を調整する。
4.約55℃の溶融した標準寒天培地(日水製薬(株)製)9mLに試料希釈液1mLを注入して十分混合した後、シャーレに流し込み固化させ、試料濃度3200、1600、800、400、200、100ppmのサンプル平板培地をそれぞれ作成する。
5.前培養菌を普通ブイヨン培地(栄研器材(株)製)10mLに10個/mLになるように接種して懸濁し、接種菌液を調製する。
6.冷蔵庫で0.5〜1時間倒置保存したサンプル平板培地に接種菌液を画線接種し、37℃で18〜20時間培養する。
7.判定。(完全に発育が阻止されたサンプル平板培地の試料濃度をMIC値(ppm)とした。)

【実施例1】
【0018】
精製苦汁と食品添加物用塩化カルシウムを水に溶解して塩化カルシウム0.24モルと塩化マグネシウム0.24モルが溶解した水溶液400ml(Ca:Mg=1:1混液)を調製し、撹拌下、1.76mol/Lの炭酸ソーダ水溶液300ml(Ca+Mgに対して1.1当量)を約3分かけて徐々に添加し、添加後さらに1時間撹拌保持した。1時間後、反応スラリーを撹拌下90℃まで昇温し、そのまま90℃で4時間加熱処理を行った。得られた加熱処理スラリーを濾過し、700mlの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて95℃で12時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通してBET比表面積70.2m2/gの白色粉末43gを得た。
【実施例2】
【0019】
精製苦汁と食品添加物用塩化カルシウムを水に溶解して塩化カルシウム0.24モルと塩化マグネシウム0.24モルが溶解した水溶液400ml(Ca:Mg=1:1混液)を調製し、撹拌下、1.76mol/Lの炭酸ソーダ水溶液300ml(Ca+Mgに対して1.1当量)を約3分かけて徐々に添加し、添加後さらに1時間撹拌保持した。1時間後、反応スラリーを撹拌下120℃で4時間水熱処理を行った。得られた水熱処理スラリーを濾過し、700mlの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて95℃で12時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通してBET比表面積17.6m2/gの白色粉末43gを得た。
【実施例3】
【0020】
実施例2の水熱処理温度を170℃に変えて、実施例2と同様に合成を行い、BET比表面積12.5m2/gの白色粉末42gを得た。
【実施例4】
【0021】
精製苦汁と食品添加物用塩化カルシウムを水に溶解して塩化カルシウム0.12モルと塩化マグネシウム0.36モルが溶解した水溶液400ml(Ca:Mg=0.5:1.5混液)を調製した以外は実施例3と同様に合成を行い、BET比表面積5.9m2/gの白色粉末42gを得た。
【実施例5】
【0022】
実施例4で得られたCa・Mg複合炭酸塩類を750℃で1時間焼成して、BET比表面積9.2m2/gの焼成物を得た。
【0023】
(比較例1)
市販の食品用天然ドロマイト粉砕品(カルマシコ:協和化学工業(株))を用いた。BET比表面積は2.6 m2/gであった。
【0024】
(比較例2)
市販の食品用天然ドロマイト粉砕品(カルマグ:三共フーズ(株))を用いた。BET比表面積は2.2 m2/gであった。
【0025】
(比較例3)
精製苦汁と食品添加物用塩化カルシウムを水に溶解して塩化カルシウム0.24モルと塩化マグネシウム0.24モルが溶解した水溶液400ml(Ca:Mg=1:1混液)を調製し、撹拌下、1.76mol/Lの炭酸ソーダ水溶液300ml(Ca+Mgに対して1.1当量)を約3分かけて徐々に添加し、添加後さらに1時間撹拌保持した。1時間後、反応スラリーを濾過し、700mlの水にて通水洗浄後、脱水し、棚式乾燥機にて95℃で12時間乾燥した。乾燥物を乳鉢で粉砕し、目開き150μmの金網を通してBET比表面積14.2m2/gの白色粉末39gを得た。
【0026】
(比較例4)
比較例1の天然ドロマイト粉砕品を750℃で1時間焼成して、BET比表面積15.8m2/gの焼成物を得た。
【0027】
(比較例5)
比較例3で得られたCa・Mg複合炭酸塩類を750℃で1時間焼成して、BET比表面積4.1m2/gの焼成物を得た。
【0028】
組成及び外観(1)
上記実施例1〜4及び比較例1〜3について、Ca:Mgの組成分析、レーザー回折散乱法による粒度分布測定、X線回折装置による構造解析、ならびにSEMによる粒子の形状観察を行った。分析結果を表1に、SEM写真を図1〜6に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
(図1)

【0031】
(図2)

【0032】
(図3)

【0033】
(図4)

【0034】
(図5)

【0035】
(図6)

表1及び図1〜6から、比較例1〜3が不定形粗大粒子あるいは不定形凝集体であるのに対して、実施例1〜4は形状が揃った微粒子であることが示された。
【0036】
純度分析
実施例1〜4及び比較例1〜3について、原子吸光度法により鉛及びヒ素の定量を行った。また白度計(Keet粉体白度計C-100:ケット科学(株))を用いて白色度の測定も行った。分析結果は表2の通りであった。
【0037】
【表2】

表2から、比較例1〜2の天然ドロマイトは食品用として使用されており、一般的な天然ドロマイトと比べると極めて高純度な品質ではあるが、それよりも実施例1〜4及び比較例3の合成ドロマイトの方が鉛及びヒ素の含有量が少なく、白色度が高いことが示された。
【0038】
制酸性試験
実施例1〜4及び比較例3の制酸力測定を行い、酸反応性について評価を行った。分析結果は表3の通りであった。
【0039】
【表3】

表3から、比較例3の未加熱品と比べて、加熱処理(水熱処理)している実施例1〜4は制酸力が高く、pHの過剰な上昇も抑えられていることがわかる。
【0040】
組成及び外観(2)
実施例4及び比較例1、比較例3を750℃で1時間焼成して得られた実施例5及び比較例4、比較例5のレーザー回折散乱法による粒度分布測定、X線回折装置による構造解析、ならびにSEMによる粒子の形状観察を行った。分析結果を表4に、SEM写真を図7〜9に示す。
【0041】
【表4】

【0042】
(図7)

【0043】
(図8)

【0044】
(図9)

表4のX線構造解析から、比較例4の天然ドロマイト粉砕品焼成物と比べて、実施例5及び比較例5の合成ドロマイト焼成物の方がより低温で脱水・脱炭酸されることが示された。また実施例5では焼成前の形状及び粒度を保持した均一かつ微粒子の焼成物が得られている。
【0045】
抗菌性試験
実施例5及び比較例4、比較例5について、大腸菌(E.coli NBRC3972)、黄色ブドウ球菌(S.aureus NBRC12732)に対するMIC(最小発育阻止濃度)を測定した。測定結果を表5に示す。
【0046】
【表5】

表5から、ドロマイト焼成物が抗菌性を有することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のCa・Mg複合炭酸塩類は、微粒子かつ揃った粒子形状を有し、有害物質や不純物が少なく、さらに物理的性質及び化学的性質を調整できるため、食品添加物や制酸剤としてはもちろん、各種フィラー、セラミック素材等多岐にわたる利用が期待できる。また本発明の複合炭酸塩類は低温で脱水・脱炭酸を行うことができ、微粒子かつ揃った粒子形状を有する抗菌性Ca・Mg複合金属酸化物としての利用も可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Caイオン、Mgイオン及びCO3イオンを水中で接触させ得られた反応生成物を加熱処理することにより得られる下記式(1)で表されるCa・Mg複合炭酸塩類。
Ca1-XMgXCO3・・・(1)
(式中、Xは0<X<1)
【請求項2】
上記式(1)で表される物質が焼成品である請求項1に記載のCa・Mg複合炭酸塩類。
【請求項3】
Caイオン、Mgイオン及びCO3イオンを水中で接触させ得られた反応生成物を加熱処理することにより得られる請求項1に記載のCa・Mg複合炭酸塩類の製造方法。
【請求項4】
加熱処理が水熱処理である請求項1、2および3に記載のCa・Mg複合炭酸塩類およびその製造方法。
【請求項5】
副産物として炭酸カルシウム及び/または炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムをX線最強ピーク強度比で0〜95%含有する請求項1および2に記載のCa・Mg複合炭酸塩類及びその焼成物。
【請求項6】
平均二次粒子径が0.1〜6μmでありかつ二次粒子の見掛け形状が揃った請求項1および2に記載のCa・Mg複合炭酸塩類及びその焼成物。
【請求項7】
加熱処理温度が50℃以上100℃以下である請求項1、2及び5に記載のCa・Mg複合炭酸塩類及びその焼成物。
【請求項8】
水熱処理温度が100℃以上250℃以下である請求項1、2及び5に記載のCa・Mg複合炭酸塩類及びその焼成物。
【請求項9】
焼成温度が450℃以上である請求項2及び5に記載のCa・Mg複合炭酸塩類焼成物。
【請求項10】
Pbの含有量が0.5ppm以下である請求項1、2及び5に記載のCa・Mg複合炭酸塩類。
【請求項11】
Asの含有量が0.2ppm以下である請求項1、2及び5に記載のCa・Mg複合炭酸塩類。

【公開番号】特開2006−151712(P2006−151712A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341464(P2004−341464)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000162489)協和化学工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】