高分解能質量分析法と薬理活性検査を利用した天然物の薬理活性物質発掘方法

本発明は、複数の試料に含まれている薬理活性成分を高速で発掘するために、複数の試料の薬理活性を検査して活性度プロファイルを作成するステップ、前記試料を質量分析法で分析して得られた質量スペクトルを基礎として、質量プロファイルを作成するステップ、及び前記活性度プロファイルと質量プロファイルとを比較、分析して、薬理活性物質の分子量を決定するステップを含む天然物の薬理活性物質発掘方法を提供する。本発明は、高分解能質量分析器を使用して、天然物抽出物試料に含まれる数多くの構成化合物の分子式を高分解能質量スペクトルから決定すると同時に活性検査資料と比較することにより、高速で薬理活性物質を発掘することができ、このときに収集された天然物の薬理活性物質の活性度データによる活性の強弱についての情報により天然物の効率的な利用が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
天然物における薬理活性物質を発掘する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
植物資源から得られる抽出物には、数多くの成分が混合されており、その中には多くの薬理活性物質も含まれている。鎮痛剤であるアスピリンは柳に、抗がん剤であるタキソールはアララギから得られたように、植物抽出物は、薬理活性物質の宝庫である。これまで、植物抽出物から薬理活性物質を発掘するにあたって重要な2つの過程は、成分の分離と活性検査法であった。高度の混合物である植物抽出物を分析するためには、まず混合度を下げる分取、分離過程を順次的に実行して、究極的には一つの成分を分離した。すなわち、各分取段階において得られる分取物それぞれに対して活性検査を実施して、最も活性の高い分取物を選択し、選択された分取物は、更なる分取段階と活性検査を反復的に適用して有効成分を発掘した。
【0003】
このとき、抽出物の分取物は依然として混合物の状態であり、活性検査法は分取物に含まれている個別成分の活性を確認するのでなく、混合状態である分取物の全体活性度を測定するため、分取過程を経て最終的に成分分離が完了する前までは、特定成分についての情報を全く得ることができず、したがって、抽出物を複数段階で分取、分離精製するという、長い時間と労力を投入した後にようやく所望の物質を得ることが可能であった。
【0004】
抽出物の分析にあたり、前記のように複雑な分離過程が要求されるため、混合物の個別成分についての情報を抽出することにより、所望の物質を発掘する時間と労力を短縮する必要性があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の問題点を解決するための天然物の薬理活性物質発掘方法であって、高分解能質量分析器を利用して複数の試料中の個別成分についての情報を得て、薬理活性物質を発掘する時間と労力を短縮する天然物の薬理活性物質発掘方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の一つの実施形態は、複数の試料を、薬理活性を検査して活性度プロファイルを作成するステップ;前記試料を質量分析器で分析して得られた質量スペクトルを基礎として、質量プロファイルを作成するステップ;及び、前記活性度プロファイルと質量プロファイルとを比較、分析して、薬理活性物質の分子量を決定するステップを含む天然物の薬理活性物質発掘方法を提供する。
【0007】
また、本発明の一つの実施形態は、前記質量プロファイルを基礎として、薬理活性物質の分子式を決定するステップを追加する天然物の薬理活性物質発掘方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の天然物の薬理活性物質発掘方法は、天然物の抽出物又はこれらの各分取物の薬理活性物質についての情報を取得することができるだけでなく、得られた薬理活性物質についての情報を利用してより効率的な分離過程を設計することにより、所望の物質を迅速に分離することができるという長所がある。
【0009】
また、本発明は、発掘された活性物質が持つ活性の強弱についての情報を提供して、天然物の効率的な利用を可能にする効果がある。
【0010】
以下、後述する詳細な説明により、下記図面と関連した本発明の実施例の特徴及び長所が明確に分かるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】黄耆(Astragalus membranaceus)抽出物が分取ステップを通じて複数の分取物に分けられたものである。
【図2】分取物の抗酸化活性評価により製作された抗酸化活性度プロファイルである。
【図3】分取物の構成成分を高分解能質量分析器で分析して得られた質量スペクトル、及び一部区間を拡大して個別成分が信号重畳なく分析されることを示す質量スペクトルである。
【図4】正規化された測定値を利用してプリンシパルコンポーネントアナリシスを行った結果である。赤色で表示された活性度成分と類似なパターンは、活性度位置に近い測定値であり、成分の分子量が285.076Daと286.076Daであることを容易に確認することができる。
【図5】分取物に対する図2の抗酸化活性度プロファイルと図3の質量プロファイルを同一のグラフに表記して、プロファイルのパターンの連関性を直接比較、分析したものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、実施例を示す図面を参照しつつ実施例が詳細に説明される。しかし、こうした発明は、多様な他の形態を含んでいてよく、本明細書に記載された実施例に限定されるものではない。実施例は、当業者が請求の範囲を完成し、十分に伝達され得るようにするために提供されるものである。本明細書において、既知の細部事項及び技術は、不必要に本実施例を曖昧にしないために省略され得る。
【0013】
本明細書において使用された用語は、特定の実施例を説明するための目的のためのものであり、本発明を限定するものでない。単数形「一つの」、及び「その」は、脈絡が明確に異なるものを指すのでなければ、複数形も含む。また、「一つの」という用語の使用は、量を限定せず、言及した物品が少なくとも1つ以上存在することを示す。また、本明細書において使用された「〜含む。」及び/又は「含む〜」又は「構成される」及び/又は「構成された」という用語は、特性、地域、ステップ、定数、動作、要素及び/又は構成成分の存在を具体化するが、一つ以上の他の特性、地域、ステップ、定数、動作、要素、構成要素及び/又はこれらのグループの存在並びに追加を不可能にするものではない。
【0014】
本明細書において使用されたすべての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、異なって定義されない限り、当業者にとって一般的なものと同一の意味を有する。一般的な辞書に定義されたような用語は、関連技術及び本発明の文脈において有する意味に相当する意味を有するものと解釈されなければならない。また、本明細書に記載されなかった以上、理想化され、又は過度に形式的に解釈されてはならない。
【0015】
本発明の一つの実施形態は、複数の試料を、薬理活性を検査して活性度プロファイルを作成するステップ;前記試料を高分解能質量分析器で分析して得られた質量スペクトルを基礎として、質量プロファイルを作成するステップ;前記活性度プロファイルと質量プロファイルとを比較、分析して、薬理活性物質の分子量を決定するステップ;及び、前記質量プロファイルを基礎として薬理活性物質の分子式を決定するステップを含む、天然物の薬理活性物質発掘方法を提供する。
【0016】
前記試料は、薬理活性物質を発掘することのできる物質であれば、種類を問わずに本発明の発掘方法を使用することができ、特に制限されない。
【0017】
本発明の一つの実施の形態において、前記試料は、天然抽出物又はその混合物であってよい。天然抽出物は天然物の抽出物をいい、天然物とは人間の力を加えていない天然のままの物質をいう。天然抽出物は、天然物の抽出物であれば特に制限されず、非制限的な例として、植物抽出物、動物抽出物、微生物抽出物又は鉱物抽出物等を挙げることができる。
【0018】
本発明の一つの実施の形態において、前記試料は、天然抽出物の分取物であってよい。天然抽出物は、数多くの化合物を含んでおり、有効成分を発掘するために、抽出物を複数個の分取物に分取する作業が先行されてよい。
【0019】
前記分取物に分取する方法は、通常的に使用される抽出物を分取する方法であれば特に制限されず、非制限的な例として、クロマトグラフィー分離法、溶解度差を利用した分液分離法、比重差を利用した分離法、密度差を利用した遠心分離法、固体試料抽出法及び色相差を利用した分離法からなる群より選択された一つ以上の方法を使用して分取してもよい。
【0020】
また、前記クロマトグラフィー分離法は、通常的に使用されるクロマトグラフィー分離法であれば特に制限されず、非制限的な例として、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、薄膜クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、ゲル浸透クロマトグラフィーからなる群より選択された一つ以上の方法を使用してもよい。
【0021】
本発明の一つの実施形態において、前記活性度プロファイルを作成するステップにおいて、薬理活性検査は、生理活性調節作用又は疾病に対する予防及び治療作用を定量化してもよい。
【0022】
生理活性とは、生物が生を営むにあたって、生体の機能を増進させたり、抑制させたりすることを言い、生理活性調節とは、生体内において機能調節に関与する物質の欠乏や過度な分泌により非正常的な病態を見せた際に、これを正してやることを言う。本発明において、生理活性調節作用を定量化し得る薬理活性検査であれば差し支えなく、特に制限されない。
【0023】
また、疾病に対する予防及び治療作用を定量化し得る薬理活性検査であれば、疾病の種類を問わず、特に制限されない。
【0024】
前記薬理活性検査は、非制限的な例示として、抗酸化活性検査、抗癌検査、抗炎症検査及び抗菌検査の中から選択された一つ以上であってよい。
【0025】
本発明の一つの実施形態において、前記薬理活性検査の結果により活性度プロファイルを作成してもよい。
【0026】
本発明の一つの実施形態において、前記質量プロファイルは、高分解能質量分析器で構成成分の分子量とその含量を分析して得られた質量スペクトルを基礎として作成してもよい。
【0027】
分子の性質のうち最も安定的で、かつ周囲の環境変化に影響を受けないのは、分子の質量である。したがって、複雑な化合物の構成化合物を分析する際に、最も多く活用されるのが質量分析器である。質量分析器を活用すれば、天然抽出物に含まれている構成成分の同時分析が可能になる。ただし、混合物試料の場合、質量分析信号の重畳による正確な分析が困難であるため、信号の重畳を避けることのできる十分な分解能を備えた高分解能質量分析器である通常的に使用する質量分析器であれば差し支えなく、特に制限されない。
【0028】
高分解能質量分析器で天然抽出物又は分取物を測定すると、含有される各々の構成成分の分子量の測定はもちろん、相対的な含量も同時に測定されて一つの質量スペクトルに表わされることになり、これをその分取物の質量プロファイルと言う。質量プロファイルから、個別成分の分取物ごとの含有量を測定することができる。
【0029】
また、本発明の一つの実施形態において、前記質量プロファイルと活性度プロファイルとの比較、分析により薬理活性物質の分子量を決定して、一つ又は複数の薬理活性物質を発掘してもよい。
【0030】
前記天然抽出物又はその混合物中に含まれているいずれかの成分が発掘しようとする活性成分であれば、活性度が高い天然抽出物には多く含まれているであろうし、活性度が低い天然抽出物には少なく含まれているであろう。また、天然抽出物の分取物中に含まれるいずれかの成分が発掘しようとする活性成分であれば、活性度が高い分取物には多く含まれているであろうし、活性度が低い分取物には少なく含まれているであろう。すなわち、その成分の質量プロファイルの形状は、活性度プロファイルの形状と一致するようになるのである。有効な薬理活性成分が複数個である場合も同様に、その成分の質量プロファイルの形状は、活性度プロファイルの形状と一致するようになる。
【0031】
このとき、同一分子量を有する成分の分取物ごとの含有量を示す質量プロファイルから薬理活性プロファイルと類似なパターンを有するプロファイルを決定する方法は、本発明において新たに開発した相関係数比較法を使用してもよい。
【0032】
本発明者が新たに開発した前記相関係数は、下記数式1で表わされてよい。
【0033】
【数1】




【0034】
活性度の正規化は、各分取物活性度の自乗値をすべて加えた値の平方根で割る方法であり、質量分析強度の正規化は、各分取物においてj番目のチャネルのピークにおける強度の自乗値をすべて加えた値の平方根で割る方法であって、数式2のとおりである。
【0035】
【数2】




【0036】
ここで、前記相関係数が最大であるとき、活性度プロファイルと最も類似なパターンを持つ質量プロファイルチャネルにより薬理活性成分を決定することができる。
【0037】
前記活性度プロファイルと質量プロファイルとを比較、分析して、薬理活性物質の分子量を決定するステップを具体的に説明すると、以下のとおりである。
【0038】
N個の分取物{f,f,f,…f}のうちi番目の分取物fを質量分析器で分析して得た質量スペクトルを、例えば、1Daずつ100Da〜2000Daまで1900個のチャネルに分類して、各チャネルにおけるピーク強度(peak intensity)を{mi1,mi2,mi3,…mi1900}で表わすと、mijは、i番目の分取物の質量スペクトルにおいてm/z=(100+j)Daであるピーク(peak)位置での強度(intensity)値である。
【0039】
このとき、V={m1j,m2j,m3j,…,mNj}(j=1,…,1900)であるベクトルをj番目のチャネルの質量プロファイル値と定義する。活性度の各分取物におけるプロファイルをA={a,a,a,…,a}とするときに、{A,V,V,V,…,V1900}の1901個のベクトルからなるデータにおいて、各々のベクトルの構成成分を、数式2と同様の方法で、各構成成分の二乗の和の平方根で割ったときに、Vの最大値が1となるように正規化(Normalize)した後で相関係数を比較して相関係数が高いチャネルを、活性度とさらに類似なパターンを示す質量チャネルとして選択する。
【0040】
このとき、本発明において新たに開発した相関係数比較方法を使用して、活性度プロファイルと質量プロファイルとを比較、分析して選択した質量チャネルにより薬理活性物質の分子量を決定する。
【0041】
前記本発明において新たに開発した相関係数比較方法を使用して活性度プロファイルのベクトルと質量チャネルの強度(intensity)ベクトルを定義する際に、正規化(Normalize)したベクトル値をそれぞれV={m1j,m2j,m3j,…,mNj}、A={a,a,a,…,a}と表示することにする。このとき、AとV間の相関係数を前記数式1と定義すると、最も類似なパターンを示すチャネルは、Cが最大値であるjと決定する。
【0042】
前記活性度プロファイルと質量プロファイルとを比較、分析して薬理活性物質の分子量を決定するステップにおいて、同一分子量を有する成分の分取物ごとの含有量を示す質量プロファイルから薬理活性プロファイルと類似なパターンを有するプロファイルを決定する方法は、前記本発明において新たに開発した相関係数比較方法以外に、クラスタリングアルゴリズムを使用してもよい。
【0043】
前記クラスタリングアルゴリズムは、非制限的な例として、プリンシパルコンポーネントアナリシス(Principal Component Analysis)又はサポートベクターマシン(Support Vector Machine)を使用してもよい。
【0044】
前記本発明において新たに開発した相関係数比較方法以外に、プリンシパルコンポーネントアナリシス(Principal Component Analysis)又はサポートベクターマシン(Support Vector Machine)といったクラスタリングアルゴリズムを使用すると、天然物の有効な薬理活性物質を発掘するにあたり、可視的な分解能の改善及び分析時間の短縮が可能となり得る。薬理活性度と質量プロファイルのベクトル{A,V,V,V,…,V1900}に対してクラスタリングアルゴリズムを適用すると、薬理活性度ベクトルと類似な質量プロファイルのグループを判別することができる。
【0045】
また、本発明の一つの実施形態は、前記質量プロファイルを基礎として薬理活性物質の分子式を決定するステップをさらに含むことができる。
【0046】
高分解能により測定精度が高くなるため、高分解能質量分析器による個別成分の分子量測定においては、分子量の測定だけでも分子式を決定することができる。
【0047】
前記質量プロファイルは、天然抽出物又は分取物を構成している複数の化合物に対する分子量や含有量等の情報を含んでいるので、活性度プロファイルと比較分析して発掘した薬理活性物質を、質量プロファイルの情報を基礎として分子式を決定することができる。そして、さらには、その化合物を決定し得る重要な情報も提供している。
【0048】
本発明は、天然物から発掘された薬理活性物質が持つ活性の強弱についての情報を提供して、天然物の効率的な利用が可能となり得る。
【実施例】
【0049】
以下、本発明の実施例を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。これらの実施例は、ただ本発明をより具体的に説明するために例示的に提示したものであるに過ぎず、本発明の範囲がこれら実施例によって制限されないということは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0050】
<実施例1>天然抽出物を複数の分取物に分取
植物黄耆200gのエタノール抽出物を、液体クロマトグラフィー分離法を利用して11の分取物に分取した。使用された固定相はカラムに充填されたC18微細粒子であり、移動相は蒸留水とエタノールを使用した。移動相の組成変化に使用された溶媒勾配法は、10分間、100%蒸留水を適用した後、100分間、100%蒸留水から100%エタノールへ組成を変化させた。溶出液を各10分ごとに分取して11の分取物を得た(図1)。
【0051】
<実施例2>活性度プロファイルの作成
各分取物の抗酸化活性を評価するために、DPPH(1,1‐Diphenyl‐2‐picrylhydrazyl)抗酸化検査を実施した。体内の活性ラジカルをなくす機能を有する抗酸化物質の活性度は、DPPH活性ラジカル消去活性測定により評価することができる。まず、各分取物を凍結乾燥させて得た抽出物粉末に50%エタノールを添加して、濃度100μg/mLの試料溶液1mLを各分取物ごとに1個ずつ、全部で11個製造した。11個の試料溶液をエタノールで2倍希釈した各試料溶液に、60μM DPPH溶液100μLを加える。30分放置後、各試料溶液において消去されたDPPHを、紫外線吸光検出器で、517nmでの吸光度で測定した。検証のための基準物質としてクロロゲン酸(chlorogenic acid)を使用した。測定された結果は、下記の表1に示し、図2に図示した。
【0052】
【表1】




【0053】
<実施例3>質量プロファイルの作成
高分解能質量分析器(Apex‐Qe 15T FT‐ICR MS:Bruker Daltonics社製)を使用して分取した11の分取物を測定して、質量スペクトルを得た。各分取物の質量測定時の平均分解能は400,000であり、平均質量測定誤差は1ppm以内であった。この質量スペクトルを基礎として、各々の分取物を構成している物質の分子量と相対的な含量を表示する質量プロファイルを作成した(図3)。
【0054】
<実施例4>プロファイルの比較、分析
11の分取物{f,f,f,…,f11}のうちi番目の分取物fを質量分析器で分析して得た質量スペクトルに、276.204Da〜295.227Daまでの23のチャネルに分類した。このとき、各チャネルにおけるピーク強度(peak intensity)を{mi1,mi2,mi3,…,mi34}で表わすと、mijは、i番目の分取物の質量スペクトルにおいてm/zを昇順整理したときに、j番目のピーク(peak)位置における強度(intensity)値である。また、V={m1j,m2j,m3j,…,m11j}(j=1,…,23)であるベクトルを、j番目のチャネルの質量分析プロファイル値として定義した。
【0055】
活性度の各分取物におけるプロファイルをA={a,a,a、…,a11}とするとき、{A,V,V,V,…,V34}の34+1個のベクトルからなるデータにおいて、各々のベクトルの構成成分の自乗の和の平方根で正規化(Normalize)した後に、本発明において新たに開発した相関係数比較法を適用して、活性度と類似なパターンを示す質量スペクトルチャネルを決定した。
【0056】
このとき、活性度プロファイルベクトルと質量チャネルの強度(intensity)ベクトルを正規化(Normalize)して、各々V={m1j,m2j,m3j,…,m11j}、A={a,a,a,…,a11}と表示した。このとき、AとV間の相関係数を、
【数3】




と定義し、Cが最大値であるjを、最も類似なパターンを示すチャネルと決定した。
【0057】
実施例においては、各分取物ごとに様々な成分のピークが検出されて、チャネルの数が34であり、Cの値を表2に整理した。
【0058】
【表2】




【0059】
前記表2において見られるように、分子量285.0755の成分と同位元素である分子量286.0762の成分が、Cが最大値を示すので、有効成分として発掘された。ここで、同位元素ピークもともに確認されるので、発掘結果の正確性をより高めることができた。
【0060】
また、表2に整理された正規化された値を利用してプリンシパルコンポーネントアナリシス(Principal Component Analysis)を行って、図4の結果を得た。図4において見られるように、活性度プロファイルと類似したパターンを有する成分をプリンシパルコンポーネントアナリシス(Principal Component Analysis)を通じて活性度ベクトルと最も近い距離の質量チャネルベクトルを選択することにより、相関関係の大きい質量値を視覚的に容易に確認することができる。
【0061】
<実施例5>薬理活性物質の分子式及び化合物の決定
活性度プロファイルと同一のパターンを示す分子量285.0755Da成分が活性成分であることを発掘し、分子式はC1612であるものと即時的に決定することができた。標準品を利用した質量分析法と抗酸化活性度実験で発掘された化合物は、biochanin Aであるものと確認された(図5)。
【0062】
以上、本発明の特定部分を詳細に記述したところ、当業界の通常の知識を有する者にとって、こうした具体的な記述は単に好ましい具現例であるに過ぎず、これに本発明の範囲が制限されるものでないという点は明白である。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付された請求項とその等価物によって定義されると言えよう。
【0063】
これに加え、本発明の核心的な範囲を超えずに、本発明の示唆に特別な状況又は材料を適用して多様な変形を行うことができる。そのため、本発明は、本発明を遂行する最善の形態として開示された特定の実施例に限定されるものでなく、本発明は、請求の範囲に該当するあらゆる実施を含むものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の試料の薬理活性を検査して活性度プロファイルを作成するステップ;
前記試料を質量分析器で分析して得られた質量スペクトルを基礎として、質量プロファイルを作成するステップ; 及び
前記活性度プロファイルと質量プロファイルとを比較、分析して、薬理活性物質の分子量を決定するステップを含む、天然物の薬理活性物質発掘方法。
【請求項2】
前記質量プロファイルを基礎として薬理活性物質の分子式を決定するステップをさらに含む、請求項1記載の天然物の薬理活性物質発掘方法。
【請求項3】
前記試料は、天然抽出物又はその混合物である、請求項1記載の天然物の薬理活性物質発掘方法。
【請求項4】
前記試料は、天然抽出物の分取物である、請求項1記載の天然物の薬理活性物質発掘方法。
【請求項5】
前記分取物は、クロマトグラフィー分離法、溶解度差を利用した分液分離法、比重差を利用した分離法、密度差を利用した遠心分離法、固体試料抽出法(SPE; Solid Phase Extraction)及び色相差を利用した分離法からなる群より選択された一つ以上の方法を使用して分取したことである、請求項4記載の天然物の薬理活性物質発掘方法。
【請求項6】
前記クロマトグラフィー分離法は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー、ペーパークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、薄膜クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー及びゲル浸透クロマトグラフィーからなる群より選択された一つ以上の方法を使用することである、請求項5記載の天然物の薬理活性物質発掘方法。
【請求項7】
前記分子量を決定するステップにおいて、活性度プロファイルと質量プロファイルの比較、分析は、相関係数比較方法を使用することである、請求項1記載の天然物の薬理活性物質発掘方法。
【請求項8】
前記分子量を決定するステップにおいて、活性度プロファイルと質量プロファイルの比較、分析は、クラスタリングアルゴリズムを使用することである、請求項1記載の天然物の薬理活性物質発掘方法。
【請求項9】
前記クラスタリングアルゴリズムは、プリンシパルコンポーネントアナリシス(Principal Component Analysis)又はサポートベクターマシン(Support Vector Machine)である、請求項8記載の天然物の薬理活性物質発掘方法。
【請求項10】
前記相関係数は、下記数式1で表わされる、請求項7記載の天然物の薬理活性物質発掘方法。
【数1】




【請求項11】
前記活性度プロファイルを作成するステップにおいて、薬理活性検査は、生理活性調節作用又は疾病の予防及び治療作用を定量化することである、請求項1記載の天然物の薬理活性物質発掘方法。
【請求項12】
前記活性度プロファイルを作成するステップにおいて、薬理活性検査は、抗酸化活性検査、抗癌検査、抗炎症検査及び抗菌検査の中から選択された一つ以上である、請求項1記載の天然物の薬理活性物質発掘方法。
【請求項13】
前記質量プロファイルを作成するステップにおいて、質量プロファイルは、高分解能質量分析器で構成成分の分子量とその含量を測定して得られた質量スペクトルを基礎として作成することである、請求項1記載の天然物の薬理活性物質発掘方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−515965(P2013−515965A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546993(P2012−546993)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/KR2010/008988
【国際公開番号】WO2011/081329
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(505280369)コリア ベーシック サイエンス インスティテュート (11)
【Fターム(参考)】