説明

高分離性液体フィルター

【課題】液体中のサブミクロン粒子の捕集性と捕集精度が高い高分離性液体フィルターを得ること。
【解決手段】液体中の固形物を濾過するフィルターであって、平均繊維径が0.2〜1.0μm、目付けが50〜300g/m2、空孔率が45〜75%、平均流量孔径が0.3〜2.0μm、かつ、開孔径のばらつきが200%以内である不織布を含有する主濾過材が、プリーツ状に形成されてなることを特徴とする液体フィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体中の固形物を除去するための液体フィルターに関する。より詳しくは、本発明は主濾過材に極細繊維からなる不織布を使用したフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
液体フィルターの一種である不織布プリーツ状フィルターは、1種以上の不織布をプリーツ状に織り込み、カートリッジの内筒部に巻きつけ、固形物を不織布表面上に補足するフィルターである。特に、粒径がサブミクロンあるいは数ミクロンの粒子を精度よく捕集するために、熱カレンダーによって不織布を高密度化したり、あるいは、複数枚の不織布を積層して用い、不織布の開孔径をコントロールして濾材としたフィルターが知られている。
【0003】
不織布プリーツ状フィルターの特長としては、粒子捕集量が多くフィルター寿命が長いこと、および、不織布の孔径より小さいものは通過しやすく、分離性能の良いことが挙げられる。しかし、その反面、サブミクロン粒径粒子の捕集性が低く、またろ過精度が高くない欠点がある。そのため粒径が小さい捕集物用のフィルターとしては、メンブレン膜が用いられているが、捕集量が多い液体の場合や高濃度粒子の濾過の場合は、表面濾過のため捕集したものが障害となり、通過させるべき粒子も捕集してしまい、フィルター寿命の観点又は分離精度の観点から、実用に適さないという問題がある。
【0004】
そのため、極細不織布を使用したフィルターが多く使われている。その多くは、平均繊維径が0.1〜5.0μmのメルトブロー法による極細不織布を主濾過材としたカートリッジフィルターであり、これらのフィルターは、不織布の厚み方向全体で固形物を捕集することから、表面濾過になりにくいため、不織布の閉塞が起こりにくく、高寿命のフィルターとして、又は高濃度粒子の濾過用途に使われている(例えば、特許文献1参照)。例えば、半導体研磨に用いられるCMP(ケミカルメカニカルポリシング)スラリーの製造工程、磁性塗料の製造工程などで、不純物や凝集物などの粒径の大きいものを除去する際に使用されている。
【0005】
しかしながら、不織布を用いたフィルターは、孔径が不均一になり、メンブレンと比較すると捕集すべき大きさのものがすり抜ける確率が高くなるという問題点がある。そのため、主濾過材に使用する不織布の繊維径を細くすること、不織布の目付けを上げるなどして不織布使用量を増やすこと等が試みられている。ところがこれらの方法を用いても、捕集される粒子のサイズは小さくなるものの、大きい粒子が通過してしまう問題の改善にはつながらず、捕集精度の向上が不十分な結果となっている。
【0006】
更に不織布の密度を大きくすること、空隙を減らし固形物を通りにくくすることが試みられている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、メンブレン膜と同様に表面濾過の現象となり、寿命の点で不十分となる。そのため、補助濾過材を設け、表面閉塞を生じしにくくする方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。この方法では、寿命を向上させても、サブミクロン粒子の捕集性や分離精度を上げる手法にはならない。
【0007】
サブミクロンの粒子を捕捉(捕集)するためには、不織布の繊維径を小さくする必要があり、メルトブロー法による不織布が用いられることが多い。しかしながら、メルトブロー法では高速気流で紡糸された糸を延伸吹き付けして製造するため、繊維径の斑や繊維分布斑(目付け斑)が発生しやすく、孔径の分布も大きくなる。
そのため、サブミクロン粒子捕集用の液体フィルターにおいて、高精度化が難しいという問題点があり、特に高濃度粒子液体からの不純物除去については、捕集精度が依然として問題となっているのが現状である。
以上のように、サブミクロン粒径の粒子捕集性と高捕集精度を両立させた液体フィルターは未だ得られていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許4083951号公報
【特許文献2】特許3994225号公報
【特許文献3】特開2009−112887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、粒子捕集性と捕集精度に優れた、液体中のサブミクロン粒子の捕集用フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し実験を重ねた結果、特定の孔径及び孔径分布等を有する極細繊維不織布をプリーツ状に加工し、主濾過材の少なくとも一部として適宜配置した液体フィルターがサブミクロン粒子の捕集性と捕集精度に優れ、上記課題が解決されることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は下記の通りである。
【0011】
[1]液体中の固形物を濾過するフィルターであって、平均繊維径が0.2〜1.0μm、目付けが50〜300g/m2、空孔率が45〜75%、平均流量孔径が0.3〜2.0μm、かつ、開孔径のばらつきが200%以内である不織布を含有する主濾過材が、プリーツ状に形成されてなることを特徴とする液体フィルター。
[2]主濾過材が、不織布が複数枚積層された構造である上記[1]記載の液体フィルター。
[3]主濾過材の合計目付けが80〜500g/m2である上記[1]または[2]に記載の液体フィルター。
[4]主濾過材の単位面積当たり液体処理量が5〜50L/min/m2の範囲である上記[1]〜[3]のいずれかに記載の液体フィルター。
【発明の効果】
【0012】
本発明の液体フィルターは、サブミクロン粒子に対し高捕集性であり、且つ捕集精度が高い。また、不織布フィルターの特長である高分離精度を保持したものであり、液体中の高濃度粒子から捕集すべき粒子を効率よく除去できる優れたフィルターである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳述する。
本発明の液体フィルターは、主濾過材の少なくとも一部に不織布が含有され、プリーツ状に形成されていることを特徴とする。
前述した、不織布フィルターにおける従来技術の問題を解決するために鋭意検討した結果、本発明者らは、不織布を構成する繊維を細くすることと、部分的に存在する孔径の大きな部分を減らすこととを組み合わせ、さらに、不織布の目付け、空孔率、平均流量孔径および開孔径のばらつきを、それぞれ特定の値に設定することにより、不織布が含有されてなる主濾過材の捕集精度を向上させることができることを見出した。
【0014】
即ち、本発明の液体フィルターにおいては、主濾過材に含有される不織布を構成する繊維の平均繊維径は0.2〜1.0μmであり、好ましくは0.2〜0.7μmである。平均繊維径が1.0μmより大きくなると、サブミクロン粒径を有する粒子の捕集性が低下してしまうだけでなく、カレンダー加工などで密度を上げても孔径の均一性が向上しない。一方、0.2μmより小さいと、不織布の強度低下や繊維径の不均一という問題が生じる。また、生産性が著しく低下してしまい、経済性からも好ましくない。
【0015】
不織布の目付けは50〜300g/m2である。目付けは、積層数や有効面積(カートリッジ内筒の1周分の面積)、濾過する液体、捕集性能、流量圧損等に応じて適宜設定すればよいが、目付けを50g/m2以下にすると、重ね枚数を増やしても捕集精度が上がらず、一方、目付けが300g/m2以上になると、流量圧損が大きくなるだけでなく、プリーツ加工が行いにくく、しわの発生や山数を増やしにくくなる問題が生じる。目付けは好ましくは70〜250g/m2である。
【0016】
不織布の空孔率は、45〜75%である。空孔率が45%より小さいと流量圧損が高くなり、結果として捕集精度も低下する要因になる。一方、75%より大きいと繊維径が小さくてもサブミクロン領域の粒子捕集性が低くなるだけでなく、強度や表面強度の点で取り扱いが問題となる。空孔率を調整する方法としては、カレンダー加工やエンボス加工を行う方法が挙げられ、常温から素材の融点以下の温度で行うカレンダー加工が好ましい。
【0017】
不織布の平均流量孔径は0.3〜2.0μmである。2.0μmより大きいと積層しても1μm以下の粒子捕集性が不足し、0.3μm未満にするとフィルターに液が流れ難く、流量圧損が高くなるだけでなく、捕集物による閉塞が起こりやすいため、フィルター寿命が短くなる。該平均流量孔径は好ましくは0.5〜1.5μmである。ここで、不織布の平均流量孔径は、ASTM F316−86に準じて、PMI社製パームポロメーターCFP−1200AEXS(多孔質材料自動細孔径分布測定システム)を用いて測定する。
【0018】
不織布の開孔径のばらつきは200%以下である。開孔径のばらつきが200%より大きいと、捕集される粒子径の分布が大きくなるので、捕集が必要な粒径の粒子捕集性を高めるためには、全体の孔径をより小さくする必要があり、流量圧損やフィルター寿命の点で問題となる。また高濃度粒子からの不純物の濾過では、不純物と通すべき粒子のサイズが近い場合には、使用できないという問題も生じる。開孔径のばらつきの好ましい範囲は50〜150%である。開孔径ばらつきについては、上述のASTM F316−86に準じた測定において、累積流量を100%とした時のフィルター流量パーセントが2.3%の時を最大孔径、97.7%の時を最小孔径とし、以下の式で計算し求める。
開孔径ばらつき(%)=[(2.3%最大孔径−97.7%最小孔径)/平均流量孔径]×100
【0019】
本発明に使用される不織布は、上記物性を満足していれば特に限定はされないが、合成繊維不織布が好ましく、例えば、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ポリフェニレンサルファイド、ポリフッ化ビニリデン等の不織布が挙げられ、これらの一種又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。不織布の製法としては、メルトブロー法、エレクトロスピング法、フラッシュスパン法、抄造法などが挙げられ、更に、それぞれの方法を組み合わせた不織布、例えばスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド積層不織布(SMS)や、上記不織布を熱処理やバインダーによる接着によって複合してもよい。
【0020】
上記の方法によって極細繊維からなる不織布を好適に得ることができ、製造条件の調整によって目的の不織布を得ることができるが、平均流量孔径及び開孔径ばらつきをコントロールするためには、上記の製法によって作られた不織布を複数枚積層し、実質的に一体化させ、1枚の不織布とすることが好ましい。実質的に一体化させる方法としては、圧力により一体化させる方法、熱溶着または超音波ウェルダー等による接着、各種接着剤や熱溶融樹脂をバインダーとして接着する方法等が挙げられる。例えばメルトブロー法不織布数枚を熱カレンダー機やエンボス機により圧縮一体化させる方法や複数枚のフラッシュスパン法による不織布とメルトブロー不織布を熱融着ネットをバインダーとして熱プレスすることで複合する方法などが挙げられる。これらの方法によって、不織布製造条件だけではコントロールが困難な上述の性能を調節させることができる。
【0021】
本発明のフィルターにおける主濾過材は、主濾過材の一部に上述の不織布が用いられていれば良いが、優れた濾過性能を達成するには実質的に上述の不織布からなる主濾過材であることが好ましい。
主濾過材は、1枚の不織布、または2〜8枚を重ねたものからなることが好ましい。重ね枚数が8枚を超えると流量圧損が高くなるだけでなく、プリーツ加工が難しくなり、山数も制限されてしまう。重ね枚数のさらに好ましい条件としては2〜5枚である。主濾過材全体の合計目付け(同種の不織布が重ねて用いられる場合は不織布1枚の目付け×重ね枚数)は80〜500g/m2であることが好ましく、より好ましくは100〜400g/m2である。
【0022】
上記のように得られた主濾過材を用いたフィルターは、捕集精度が高いだけでなく、高分離精度を有する。つまり捕集すべき粒子を確実に捕集し、捕集する粒子より小さな粒子は捕集せず通過させる特長を有する。本発明の分離精度の指標としては、後述する方法により、捕集すべき粒子径の粒子、および該粒子の約半分の粒子径の粒子それぞれの濾過試験による通過率の比率(通過比率)により評価する。
【0023】
本発明の液体フィルターは、通常、交換可能なカートリッジ状に組み立てられる。カートリッジフィルターの製造方法としては、例えば、上記不織布からなる主濾過材、必要に応じ補助濾過材およびサポート材等を重ねプリーツ加工を行い、プリーツ加工したシートをフィルターの内筒に巻きつけ、プリーツシートの端面同士を接着剤や熱接着により固定シールし、その上から必要に応じて伸縮するシート材またはネット状基材を介してプラスチック製の筒(外筒)により内筒に固定する。
また、フィルターカートリッジの端面のシール処理としては、樹脂製のエンドプレートを用いて熱処理によってシールしても良いし、エポキシ樹脂などにより金属や樹脂製のプレートを接着することでシールしても良い。更にエンドプレートの形状については、フィルターカートリッジの容器(ハウジング)に合わせ、公知の形状のものを適宜選定する。
【0024】
上記プリーツ加工については、例えば主濾過材を構成する不織布、補助濾過材およびプリーツを保持するためのサポート材等に使用される素材の融点以下に熱した熱板や歯車により、折りたたみにより凹凸をつけ、プリーツ加工を行う。凹凸の高さは5〜50mm程度が好ましい。5mmより小さいと、プリーツの凹凸数に制限があるため、濾過面積が大きくならず、圧損が大きくなるため好ましくない。一方、50mm以上になるとプリーツ形状の保持が難しくなる。また、プリーツの形状としては均一な高さでもよいし、M字型の高さが不連続な形でも構わない。
【0025】
主濾過材面積は処理液の流量と関係しているが、本発明の高分離性液体フィルターであれば、単位面積当たり液体処理量が5〜50(L/min/m2)であるように主濾過材面積を設定することが好ましい。50(L/min/m2)より大きくなると不織布の開孔径が変化するため、捕集性や捕集精度が低下し、好ましくない。また、5(L/min/m2)より小さいと濾過面積が全面的に使用されにくく、液の通過に斑が生じるため好ましくない。
【0026】
フィルターに処理液を外側から内側に流す際には、主濾過材を内側(内筒側)にし、補助濾過材が外側となるように巻けばよく、処理液を内側から外側に流す際には、逆の構成とすればよい。
本発明に使用される補助濾過材としては、主濾過材の平均流量孔径より大きな平均流量孔径を有するものを使用してカートリッジ寿命を延ばすよう工夫することが好ましい。補助濾過材としては、不織布やフェルト状物を含む繊維構造体、合成紙を含む紙、多孔質フィルムおよびネット等公知ものが使用可能であり、2種類以上の補助濾過材を組み合わせて用いても構わない。補助濾過材においても、液の流れる方向から平均流量孔径が順次小さくなる構成が更に好ましい。
【0027】
主濾過材および補助濾過材には、親水性及び吸液性を制御するために、各種薬剤や粉体を、フィルター性能や濾過する液体に影響しない範囲で含有させてもよい。例えば、界面活性剤、透水剤、繊維を固定するための樹脂、抗菌剤、防腐剤、酸化防止剤などを含有させることができる。また、繊維の表面処理としてグラフト加工、コロナ放電処理、硫酸ガスやフッ素ガスによるガス処理を行ってもよい。また各種公知の滅菌処理や洗浄を行ってもよい。
【0028】
本発明の液体フィルターは、水の不純物の濾過や洗浄液に含まれる固形物の除去等液体中の固形不純物を除去する目的で好適に用いることができる。特に、本発明の特徴を生かした分野として、半導体研磨に用いられるCMPスラリーの製造工程および磁性塗料の製造工程などにおける、不純物や凝集物などの粒径の大きいものの除去処理がある。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
なお、測定方法および評価方法等は下記の通りである。
(1)厚み(mm)
ピーコック厚み計を用いて、9.8kPaの接圧で測定を実施した。
(2)目付け(g/m2
不織布の目付けは、測定サンプル(好適には0.5m2以上の面積のサンプル)を105℃で一定重量になるまで乾燥後、20℃65%RHの恒温室に16時間以上放置した後、その重量を測定し、不織布の単位面積当たりの重量(g/m2)を求めた。
主濾過材の目付けは、主濾過材を構成する各々の材料の目付け合計によって求めた。
【0030】
(3)空孔率
上記(1)及び(2)で測定した厚み、目付け、及び使用した各素材の比重より次式によって算出した。
空孔率(%)=[1−目付け(g/m2)/比重(g/cm3)/厚み(mm)/1000)]×100
【0031】
(4)平均繊維径
不織布の巾方向および長手方向において重ならないように10箇所サンプリングし、各サンプルの5000倍に拡大した電顕写真から繊維径を任意に10点測定した。合計100点の平均値を平均繊維径とする。
(5)平均流量孔径
不織布の平均流量孔径はASTM F316−86に準じて、PMI社製パームポロメーターCFP−1200AEXS(多孔質材料自動細孔径分布測定システム)で測定を行った。
【0032】
(6)開孔径ばらつき
不織布の開孔径ばらつきはASTM F316−86に準じて、PMI社製パームポロメーターCFP−1200AEXS(多孔質材料自動細孔径分布測定システム)で測定を行い、累積流量を100%とした時の、流量が2.3%となる開孔径を最大孔径、97.7%の時を最小孔径とし、以下の式で計算し求めた。
開孔径ばらつき(%)=[(2.3%最大孔径―97.7%最小孔径)/平均流量孔径]×100
【0033】
(7)捕集性(%)
JIS11種粉塵を水に分散した濃度10ppmの試験液を均一に攪拌しながら実施例及び比較例でのカートリッジフィルター(濾過面積0.474m2)に流量10L/min(処理量:21L/min/m2)でフィルター外側から内側に流れるようにして通水し、開始後30分、45分、60分後の濾過前液及び濾過後液を採取し、超純水で100倍希釈し、粒度分布測定器(PARTICLE MEASURING SYSTEMS INC.社製LS−200(シリングサンプラ)およびLiqulaz−S02−HF(パーティクルセンサー))を使用し、0.5μm(測定範囲0.47〜0.53μm)粒子の各時間での捕集性を下記の式から求め、平均した値とする。
捕集性(%)=[(A−B)/A]×100
式中、Aは濾過前の10mlあたりの粒子数であり、Bは濾過後の10mlあたりの粒子数である。
(8)捕集精度(%)
捕集性と同様に測定を行い、0.47μmから2.03μmの範囲の粒径が捕集される割合を計算する。
【0034】
(9)流量圧損(KPa)
JIS11種粉塵を水に分散した濃度60ppmの試験液を均一に攪拌しながら実施例及び比較例でのカートリッジフィルターに流量10L/min(処理量:21L/min/m2)でフィルター外側から内側に流れるようにして通水した時の初期圧力損失を測定する。
(10)フィルター寿命(分)
JIS11種粉塵を水に分散した濃度60ppmの試験液を均一に攪拌しながら実施例及び比較例でのカートリッジフィルターに流量10L/min(処理量:21L/min/m2)でフィルター外側から内側に流れるようにして通水し、初期圧力損失より圧力損失が0.1MPa上昇するまでに要した時間とする。
【0035】
(11)分離精度
捕集すべき粒子径の粒子として、粒子径0.48μmのラテックス球(JSR社製 STADEX SC−048−S)を、該粒子の約半分の粒子径の粒子として、粒子径0.29μmのラテックス球(JSR社製 STADEX SC−031−S)を、それぞれ用いた。
粒子径0.48μmの粒子が0.14ppm濃度になるように超純水に滴下して試験液を作り、均一に攪拌しながら実施例及び比較例でのカートリッジフィルターに流量10L/min(処理量:21L/min/m2)でフィルター外側から内側に流れるようにして通水し、開始後30分後の濾過前液及び濾過後液を採取し、粒度分布測定器(PARTICLE MEASURING SYSTEMS INC.社製LS−200(シリングサンプラ)及びLiqulaz−S02−HF(パーティクルセンサー))を使用し、0.48μm(測定範囲0.45〜0.51μm)粒子の捕集性を求めた。
同様に、粒子径0.29μmの粒子を含有する試験液を通水し、0.29μm(測定範囲0.26〜0.32μm)粒子の捕集性を求めた。
次いで、分離精度を下記基準で判定した。
分離精度としては0.48μm粒子を捕集し、0.29μm粒子を多く通過させたものを優れているとし、以下の数式による通過比率を求め、20以上を「○」、20未満10以上を「△」、そして10以下を「×」として評価した。
(通過比率)=(100−0.29μm粒子の捕集性(%))/(100−0.48μm粒子の捕集性(%))
【0036】
[実施例1]
メルトブロー方式を用いて、原料不織布(PP製、目付け10g/m2、平均繊維径0.5μm)を作製し、得られた原料不織布を8枚重ね合せながら、カレンダー機(金属ロール/金属ロール)で積層一体化させて表1に示す物性の不織布を作製した。
次に、上記不織布を表1に示す枚数重ねて主濾過材とし、プリーツサポート材、補助濾過材、上記主濾過材、プリーツサポート材の順序で重ねながら、プリーツ加工機((有)東洋工機社製)で山高さ1cmのプリーツ基材を得た。
プリーツサポート材:PR10(PP性ネット、三晶株式会社製)
補助濾過材:PO30UA(タピルス社製PPメルトブロー不織布、目付け30g/m2、平均流量孔径6.1μm)を3枚重ねたもの
このプリーツ基材を山部が100山になるようにカットし、山部と平行の端面同士を超音波プラスチックウェルダー(日本ヒューチュア株式会社製W3080−20型)を用いて融着させ、筒状のプリーツフィルター材を得た。このプリーツフィルター材を内筒(PP製、内径33mm、厚み3mm)に被せ、外筒(PP製、内径66mm、厚み3mm)およびPP製樹脂プレートを用いて熱融着機により端面をシールし、実施例1のカートリッジフィルター(高さ250mm、濾過材有効高さ237mm、濾過面積0.474m2)を作製した。その評価結果を表2に示す。
【0037】
[実施例2]
主濾過材において、不織布を重ねる枚数を変えた以外は実施例1と同様にして、実施例2のカートリッジフィルター(高さ250mm、濾過材有効高さ237mm、濾過面積0.474m2)を作製した。その評価結果を表2に示す。
【0038】
[実施例3および4]
メルトブロー方式を用いて、原料不織布(PP製、目付け25g/m2、平均繊維径0.8μm)を作製し、得られた原料不織布を4枚重ね合せながら、実施例1と同様にしてカレンダー機(金属ロール/金属ロール)で積層一体化させて表1に示す物性の不織布を作製した。
次に、上記不織布を表1に示す枚数重ねて主濾過材とし、実施例1と同様のプリーツサポート材を用いて、プリーツサポート材、主濾過材、プリーツサポート材の順序で重ねながら、プリーツ加工機((有)東洋工機社製)で山高さ1cmのプリーツ基材を得た。
このプリーツ基材を実施例1と同様に、カットおよび端面同士を融着させ筒状のプリーツフィルター材を得、実施例3および4のカートリッジフィルター(高さ250mm、濾過材有効高さ237mm、濾過面積0.474m2)を作製した。評価結果を表2に示す。
【0039】
[実施例5および6]
メルトブロー方式を用いて、原料不織布(ナイロン製、目付け50g/m2、平均繊維径0.7μm)を作製し、得られた原料不織布を3枚重ね合せながら、カレンダー機(金属ロール/金属ロール)で積層一体化させて表1に示す物性の不織布を作製した。
次に、上記不織布を表1に示す枚数重ねて主濾過材とし、プリーツサポート材、補助濾過材、主濾過材、プリーツサポート材の順序で重ねながら、プリーツ加工機((有)東洋工機社製)で山高さ1cmのプリーツ基材を得た。
プリーツサポート材:Ny800(朝日加工株式会社製Nyメッシュ織物)
補助濾過材:N070A(旭化成せんい製ナイロンメルトブロー不織布、目付け70g/m2、平均流量孔径3.8μm)
このプリーツ基材を山部が100山になるようにカットし、山部と平行の端面同士を超音波プラスチックウェルダー(日本ヒューチュア株式会社製W3080−20型)を用いて融着させ、筒状のプリーツフィルター材を得た。得られたプリーツフィルター材を用いて、内筒および外筒の素材をナイロンに変更した以外は実施例1と同様にして、実施例5および6のカートリッジフィルター(高さ250mm、濾過材有効高さ237mm、濾過面積0.474m2)を作製した。評価結果を表2に示す。
【0040】
[比較例1]
A040C(旭化成せんい社製PETメルトブロー不織布、目付け40g/m2、平均繊維径1.2μm)を8枚重ねて主濾過材とする以外は実施例1と同様にして、カートリッジフィルターを作製した。不織布の物性を表1に、フィルター評価結果を表2に示す。
【0041】
[比較例2]
N070A(旭化成せんい社製ナイロンメルトブロー不織布、目付け70g/m2、平均繊維径1.7μm)を8枚重ねて主濾過材とする以外は実施例5と同様にして、カートリッジフィルターを作製した。不織布の物性を表1に、フィルター評価結果を表2に示す。
【0042】
[比較例3]
メルトブロー方式を用いて、原料不織布(PP製、目付け25g/m2、平均繊維径0.8μm)を作製し、得られた原料不織布を2枚重ね合せながら、カレンダー機(金属ロール/金属ロール)で積層一体化させて表1に示す物性の不織布を作製した。
この不織布1枚を主濾過材とする以外は実施例1と同様にして、カートリッジフィルターを作製した。評価結果を表2に示す。
【0043】
[比較例4]
メルトブロー方式を用いて、表1に示す物性の不織布(PP製、目付け10g/m2、平均繊維径0.5μm)を作製した。
この不織布を10枚重ねて主濾過材とする以外は実施例1と同様にして、カートリッジフィルターを作製した。評価結果を表2に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
本発明に係るフィルター(実施例1〜6)は、サブミクロン粒径の捕集性が良好であり、捕集精度も高い値を示しており、目的の捕集粒径以上を高精度で捕集していることが分かる。また、本発明に係るフィルター(実施例1〜6)は、分離精度も良好である。更に実施例1、5、及び6では、主濾過材より大きい平均流量孔径の補助濾過材を設けることが寿命向上に優位であることを示している。
【0047】
比較例1のフィルターは、捕集性は高いが、孔径ばらつきが大きく、捕集精度及び分離精度が、実施例に比較して劣っていた。比較例2のフィルターは、主濾過材を構成する不織布の平均繊維径が大きいためにサブミクロン粒子の捕集性が低く、捕集精度、分離精度ともに満足されない結果となった。比較例3のフィルターは、空孔率を下げることで、サブミクロン捕集性を高めているが、捕集精度も低く、分離精度も劣る結果となった。比較例4のフィルターは、孔径ばらつきが大きいため、サブミクロン捕集性の値に対し、捕集精度が向上しておらず、また、分離精度も十分なレベルに達していない結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の高分離性液体フィルターは、サブミクロン粒子の捕集性と捕集精度の高い高性能フィルターであるため、エレクトロニクス、医療関連、ケミカル等の用途で好適に利用可能である。また、本発明の高分離性液体フィルターは、液体中の高濃度粒子から粒径の大きなものを除去又は分離するフィルター性能に優れるため、CMPや磁性塗料製造用途で特に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中の固形物を濾過するフィルターであって、平均繊維径が0.2〜1.0μm、目付けが50〜300g/m2、空孔率が45〜75%、平均流量孔径が0.3〜2.0μm、かつ、開孔径のばらつきが200%以内である不織布を含有する主濾過材が、プリーツ状に形成されてなることを特徴とする液体フィルター。
【請求項2】
主濾過材が、不織布が複数枚積層された構造である請求項1に記載の液体フィルター。
【請求項3】
主濾過材の合計目付けが80〜500g/m2である請求項1または2に記載の液体フィルター。
【請求項4】
主濾過材の単位面積当たり液体処理量が5〜50L/min/m2の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の液体フィルター。

【公開番号】特開2011−104568(P2011−104568A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265416(P2009−265416)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】