説明

高効率摩擦帯電濾材

【課題】本発明は、高効率かつ通気性に優れた摩擦帯電濾材に関するものである。
【解決手段】ポリエステル系繊維と、リン系添加剤とイオウ系添加剤を含むポリオレフィン系繊維からなる摩擦帯電濾材を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高効率かつ通気性に優れた摩擦帯電濾材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気中の粉塵を捕集するエアフィルターは、低圧力損失でかつ粒子捕集効率が可能な限り高いことが望まれ、様々な種類の濾材が存在している。その中でもエレクトレット濾材は、機械的な捕集に加えて静電気力によって粉塵を高効率で捕集することが出来る。エレクトレット化の手段としては、異なる繊維同士を摩擦する方法などが古くから知られている。
【0003】
例えば、特許第4649863号では、ポリオレフィン系繊維とポリエステル繊維を混綿、カーディングによってウェブを作製後、ニードルパンチによって摩擦帯電を行なっている。この組み合わせにおいて、ポリエステル分子鎖と共重合しているリン原子および/またはイオウ原子の含有量が、粒子捕集効率に影響を及ぼすことが記載されているが、ポリオレフィン系繊維については、適切な含有物に関して記載がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4649863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高効率かつ通気性に優れた摩擦帯電濾材に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。本発明は以下のとおりである。
【0007】
ポリエステル系繊維と、リン系添加剤とイオウ系添加剤を含むポリオレフィン系繊維からなる摩擦帯電濾材。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、高効率かつ通気性に優れた摩擦帯電濾材に関するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明におけるポリオレフィン系繊維とはポリエチレン、ポリプロピレン、あるいはポリエチレン―ポリプロピレンの複合繊維などがあげられる。複合繊維においては芯鞘構造やサイドバイサイド構造のいずれでも構わない。
【0010】
ポリオレフィン系繊維にはリン系添加剤とイオウ系添加剤を含むことが重要である。リン系添加剤としてはトリス(2、4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェイト、ビス(2、4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスフェイトなどが挙げられる。またイオウ系添加剤としては3,3’−チオジプロピオン酸ジラウリル、3,3’−チオジプロピオン酸ジミリスチルなどが挙げられる。前記添加剤含有ポリオレフィン系繊維とポリエステル系繊維からなる濾材は、添加剤を含んでいないポリオレフィン系繊維とポリエステル系繊維からなる濾材と比較して高い捕集効率を示す。
【0011】
本発明におけるポリエステル系繊維には、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、芳香族ポリエステルを用いることができる。またポリエステル分子鎖には、ホスフィン酸化物及び/またはスルホン酸化合物が共重合されていることが好ましい。前記共重合ポリエステルとポリオレフィン系繊維からなる濾材は、標準ポリエステルとポリオレフィン系繊維からなる濾材と比較して帯電レベルが高く、また難燃性にも優れている。
【0012】
ポリオレフィン系繊維とポリエステル系繊維の繊維径は10〜20μmが好ましい。かかる範囲であれば低圧力損失であり、かつ微細塵を十分に除去できるためである。混合割合は30:70〜70:30が好ましい。かかる範囲であれば有効に荷電することが出来るためである。
【0013】
繊維の断面は特に限定されず、円形、三角形、矩形、異形など何れでも良いが、より好ましくは円形断面の繊維である。例えば矩形断面繊維であると、繊維同士の接触面積が増大し、有効繊維表面積の減少を引き起こすからである。繊維断面形状は直線部を有さない形状であれば、真円に限らず楕円形などでも良い。またその繊維長は、本摩擦帯電濾材のシート化手段にもよるが、10〜100mmが好ましく、より好ましくは30〜80mmである。かかる範囲であれば、該繊維のカーディングにおいて、より均一なウェブを作製することができるからである。
【0014】
該繊維のシート化手段は特に限定しないが、それらの繊維を混繊してカーディングによりウェブを作製し、それらをニードルパンチやウォーターパンチ等で繊維を交絡させるのが好ましい。ニードルパンチやウォーターパンチ等の絡合手段は必ずしも単独である必要は無く、組み合わせて利用しても良い。繊維間の絡合が強くなり、剥離強度が向上するからである。ウォーターパンチを実施する場合は、液体の接触による電荷の消失を防ぐために、摩擦帯電工程の前に実施するのが好ましい。
【0015】
本発明の摩擦帯電濾材の使用方法は特に限定しないが、本発明を用いた自動車エアコン用フィルターにおいては、プリーツ状に成型していることが好ましい。またその際は、上記摩擦帯電濾材単独だけでなく不織布やネットなどを積層し、強度・加工性の向上、粉塵供給量の増大とった機能性を付与することも可能である。積層方法は、単に重ねる以外にニードルパンチやウォーターパンチ、熱接着、接着剤の使用等が好ましい。
【0016】
本発明の補強層に用いられるメッシュ状の補強ネットは濾材に剛性を付与する役割があり、合成繊維、無機繊維、金属繊維の何れでも良い。また補強ネットの種類は織物、不織布、フィルムあるいは押出成型物が挙げられる。織物の場合、補強ネットの織り構造は、平織り、綾織り、ラッセル織り等が挙げられる。繊維径は0.04〜0.4mm、目開きは1mm2以上100mm2未満、好ましくは9mm2以上50mm2未満である。繊維径、目開きがこの範囲であれば補強効果は十分であり、また通気抵抗に対しても有利である。
【0017】
本発明の補強層に用いられるメッシュ状の補強ネットは単一成分の樹脂でもよく、複数成分からなるものでもあってもよいが、低融点樹脂と高融点樹脂を含むサイドバイサイド構造やシースコア構造からなる複合繊維が好ましい。シースコア構造の組み合わせとしては、例えばシースをポリエチレンや低融点ポリプロピレン、コアをポリプロピレンやポリエチレンテレフタレートとする組み合わせ等が考えられる。かかる繊維の組み合わせであれば、経糸と緯糸の熱接着が可能であるため、交点の接着強度に優れた補強ネットを得ることが出来る。
【0018】
不織布層と補強層の積層方法は特に限定されず、ニードルパンチ法、水流交絡法などの物理的方法、サーマルボンド法、エンボスロールを用いた加熱圧着などの熱による接着方法等が挙げられる。不織布層と補強層の二層構造となる場合は、エンボスロールを用いた熱接着が好ましい。比較的繊維量が少なくても各層間が強く接着されるためである。三層以上となる場合は、補強層の両側に不織布層を配置するのが好ましい。両側から不織布層の繊維をニードルパンチ法で絡合出来るため、補強層をより強固に一体化できる。また、熱接着による繊維の溶融に伴う繊維有効表面積の減少も起こらないため、通気性に優れ、また粉塵供給量に対しても有利である。
【実施例】
【0019】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。実施例中に示した特性は以下の方法で測定した。
【0020】
(0.3μm粒子捕集効率)
濾材をダクト内に設置し、空気濾過速度が10cm/秒になるよう大気を通気させ、濾材の上流、下流の0.3〜0.5μm粒子の個数濃度をパーティクルカウンターにて計測し、次式にて粒子捕集効率を算出した。
粒子捕集効率(%)=[1−(下流側濃度/上流側濃度)]×100
(通気抵抗)
濾材をダクト内に設置し、空気濾過速度が10cm/秒になるよう大気を通気させ、濾材の上流、下流の静圧差を差圧計にて読み取り、通気抵抗(Pa)を測定した。
【0021】
〔実施例1〕
リン系添加剤とイオウ系添加剤を含む円形断面ポリプロピレン繊維A(宇部日東化成株式会社製、2.2dtex、51mm)と、リンを含有する難燃性の円形断面ポリエステル繊維(東洋紡績株式会社製、1.7dtex、44mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付100g/mの混繊ウェブを作製後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡、乾燥し、混繊シートを作成した。この混繊シートに、15g/mのポリプロピレンスパンボンド不織布を積層後、針密度31本/cmにてニードルパンチ処理を行い、摩擦帯電と交絡を同時に行なって、全目付115g/mの濾材を得た。
【0022】
〔比較例1〕
円形断面ポリプロピレン繊維A(宇部日東化成株式会社製、2.2dtex、51mm)と、リンを含有する難燃性の円形断面ポリエステル繊維(東洋紡績株式会社製、1.7dtex、44mm)を1:1の重量比で混綿、カーディングして目付100g/mの混繊ウェブを作製後、3MPaの高圧水を連続的に噴霧して交絡、乾燥し、混繊シートを作成した。この混繊シートに、15g/mのポリプロピレンスパンボンド不織布を積層後、針密度31本/cmにてニードルパンチ処理を行い、摩擦帯電と交絡を同時に行なって、全目付115g/mの濾材を得た。
【0023】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の摩擦帯電不織布は、高効率かつ低通気抵抗であり、本発明の産業上の有用性は高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系繊維と、リン系添加剤とイオウ系添加剤を含むポリオレフィン系繊維からなる摩擦帯電濾材。

【公開番号】特開2013−49021(P2013−49021A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188913(P2011−188913)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003160)東洋紡株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】