説明

高単分散微粒子の製造方法

【課題】 粒度分布が狭い高単分散であり、かつナノオーダーでの目的の粒径を有する高単分散樹脂微粒子の簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】 マイクロリアクター(A)を流れる連続相(B)に対し、接続される開口部から重合性モノマー(b)からなる分散相を吐出し、該分散相からなる前記連続相中に分散する液滴を作製し、重合させることで単分散微粒子(I)を得る製造方法において、該液滴に外部から均一なせん断力を加えることにより単分散の微小液滴(C)にすることで平均粒子径が50nm〜500nmである単分散微粒子(I)を得ることを特徴とする高単分散微粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高単分散微粒子及びその製造法に関する。さらに詳しくは、ナノオーダーの粒子径で、かつ粒度分布が狭い微粒子ポリマーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナノオーダーの樹脂微粒子を作製する方法としては、懸濁重合法、乳化重合法、ソープフリー重合法、シード重合法、分散重合法などが知られている(例えば、特許文献1)。
しかし、これらの重合法で作製された粒子は単分散性が低いため、医療、電子材料分野などに使用される樹脂微粒子としては課題を有している。
一方、→マイクロリアクターを用いた単分散樹脂微粒子の製造方法が知られている(例えば、特許文献2)。
しかし、微粒子の粒径は、マイクロリアクターの径に大きく依存するが、マイクロリアクターの径はミクロンオーダーであることから、ナノオーダーの粒径を有する単分散微粒子を得ることは困難である。
【特許文献1】特開平5−222204
【特許文献2】特開2001−181309
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、ナノオーダーで目的の粒径を有する高単分散樹脂微粒子の簡便な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、粒度分布が狭い高単分散であり、かつナノ微粒子の製造方法を鋭意検討した結果、本発明に到達した。
マイクロリアクター(A)を流れる連続相(B)に対して、接続される開口部から重合性モノマー(b)を含む分散相(D)を吐出し、前記連続相(B)中に、分散する該分散相(D)から構成された液滴(C’)を作製し、重合させることで単分散微粒子(I)を得る製造方法において、粒径の比較的大きい液滴(C’)に外部から均一なせん断力を加えることにより、さらに小さく単分散な微小液滴(C)にすることで平均粒子径が50nm〜500nmである単分散微粒子(I)を得ることを特徴とする高単分散微粒子の製造方法である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の製造方法を用いると、従来の製造方法と比較して、単分散な微粒子を作製することができる。また、マイクロリアクターの管径や溝幅に依存することなく粒径を調整することができる。特に、マイクロリアクターの管径や溝幅を極端に狭くしなくても、ナノオーダーの微粒子が製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
マイクロリアクター(A)の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、従来から使用されている、ガラス、蛍光ガラス、石英、セラミックス、シリコン等の無機材料が挙げられる。これらのなかで、ガラス、石英、セラミックスがより好ましい。これらの無機材料は耐薬品性、耐熱性が優れており、半導体加工技術において広く用いられている、光リソグラフィー技術により基板上にミクロンオーダーの溝を形成することができる。
【0007】
また、上記材質において高分子樹脂を用いることも可能である。これらは特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン系樹脂が挙げられ、耐酸性・アルカリ性を有するポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂がより好ましい。
【0008】
上記熱可塑性樹脂以外には、コスト、易取扱い性の点から、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0009】
さらに、流路径は特に限定されるものではなく、マイクロリアクターを流れる流体が層流を形成しやすい管径や溝幅であればよい。好ましくは1μm〜1000μmの範囲の管径や溝幅であり、1μm〜600μmがより好ましい。
【0010】
ここで、層流とは、その流体の流線が常に管軸と平行なものをいい、その環境下にある粒子は、それぞれの接触頻度が低減される。そのため、粒子の接触による合一が極めて起こりにくいことから、得られた微粒子の単分散性を維持することが可能である。この層流は、流体の流れの状態を示す代表的なパラメーターであるレイノルズ数Reにおいて、一般にこの数値が2100以下のときに層流になるとされている。レイノルズ数Reは下記の数式で定義される。
Re=ud/ν
ただし、動粘性係数ν、流速u、管径dを表わす。
【0011】
本発明の高単分散微粒子(I)の粒径や粒度分布は電気泳動光散乱を用いた粒子径分布測定装置により測定することができる。
具体的には、得られた粒子の溶液を循風乾燥機もしくは微減圧乾燥機により濃縮したものを、電気泳動光散乱式粒径分布測定装置(ELS)で分析し、Marquadt法による解析から、平均粒径及び粒度分布を求める。
【0012】
本発明の単分散樹脂粒子(I)の平均粒径は、好ましくは50〜500nm、より好ましくは100〜500nm、さらに好ましくは200〜500nmである。
また、粒度分布は、粒径の変動係数(CV値)が、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下である。
ここで、粒径の変動係数は、以下の計算式より算出される値である。
変動係数CV=(標準偏差/平均粒径)×100
【0013】
本発明の微粒子の製造において、水中油相系に適用できる重合性モノマー(b)としては、例えば、ビニル芳香族単量体、アクリル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、ジオレフィン系単量体、モノオレフィン系単量体等である。
モノビニル芳香族単量体としては、モノビニル芳香族炭化水素として、たとえばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−、m−、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼンの単独または二種以上の組み合わせを挙げることができる。
アクリル系単量体としては、たとえばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−ヒドロキシアクリル酸プロピル、δ−ヒドロキシアクリル酸ブチル、β−ヒドロキシメタアクリル酸エチル、エチレングリコールジメタクリル酸エステル、テトラエチレングリコールジメタクリル酸エステル等が挙げられる。
ビニルエステル系単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等が挙げられる。
ビニルエーテル系単量体としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル等が挙げられる。
ジオレフィン系単量体としては、例えば、ブタジエン、イソブレン、クロロプレン等が挙げられる。
モノオレフィン系単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチルペンテン−1等が挙げられる。
【0014】
また、重合性モノマー(b)は有機溶剤等で希釈されていてもよい。このときに用いられる有機溶剤としては、重合性モノマーが溶解するものであれば特に限定されず、例えば、n−ヘキサン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素系、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系の溶媒が挙げられる。
【0015】
本発明の微粒子の製造において、油中水相系に適用できる重合性モノマー(b)としては、例えば、アクリルアミド、メタアクリルアミド、フマルアミド、エタクリルアミド等のエチレン不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸のアミノアルキルエステル及び酸無水物、アクリル酸、メタアクリル酸等エチレン性不飽和カルボン酸等の水溶性の重合性モノマーなどが挙げられる。
【0016】
このとき、油中水相系の連続相(B)としては、例えば、n−ヘキサン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素系、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系の溶媒が用いられる。
【0017】
本発明の乳化重合に用いる水溶性開始剤(c)は、好ましくは遊離基開始剤である。特に限定されるものではなく、例えば、過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化tert−ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1−フェニル−2−メチルプロピル−1−ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸tert−ブチルヒドロペルオキシド、過蟻酸tert−ブチル、過酢酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチル、過フェニル酢酸tert−ブチル、過メトキシ酢酸tert−ブチル、過N−(3−トルイル)カルバミン酸tert−ブチル、重硫酸アンモニウム、重硫酸ナトリウム、等の過酸化物類等が挙げられる。さらに好ましい水溶性開始剤は、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の、過硫酸開始剤である。遊離基開始剤は、通常水溶液としてモノマーエマルション及び/又は水相に加え使用する。
【0018】
また、水溶性開始剤の量は、通常重合すべきモノマーの約0.1〜10質量%であり、ポリマーの調製に用いる水溶性開始剤の全量を、連続相に加える。
【0019】
本発明の懸濁重合に用いる油溶性開始剤(d)は、特に限定されるものでなく、通常使用されるラジカル重合性を有する有機過酸化物系重合開始剤を組み合わせて使用することができる。有機過酸化物系重合開始剤としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノニルパーオキサイド、デカノニルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。なかでも、原料モノマーに対する重合活性の持続性や重合の短時間化の点から、オクタノニルパーオキサイド、デカノニルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートが好ましい。
【0020】
また、油溶性開始剤の量は、通常重合すべきモノマーの0.1〜10質量%であり、さらに好ましくは0.2〜5質量%である。
【0021】
本発明の微粒子の製造において、モノマー液滴の安定化のために、連続相(B)に界面活性剤(a)等を含有させることができる。
この界面活性剤(a)としては、特に限定されるものではなく、例えば、アニオン性乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸エステルナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム等);ノニオン性乳化剤(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物等);カチオン性乳化剤(ステアリルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアリルベンジルジメチルアンモニウムクロリド等);重合性乳化剤(アルキルアリルスルホコハク酸ナトリウム、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン硫酸エステルナトリウム等)等が用いられる。また、これらのうち2種以上を併用してもよい。
連続相(B)に含有させる界面活性剤(a)の量は、本発明を阻害しない程度であれば良く、一般的には少量であり、具体的には0.01〜10重量%であり、好ましくは0.05〜5重量%である。
【0022】
さらに、懸濁重合を行う場合、水中油相系では、モノマー液滴の安定化のために、安定化剤を添加することもできる。例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、でんぷん、ゼラチン等の水溶性高分子;リン酸三カルシウム等の難水溶性無機塩等を連続相(B)に含有させることができる。
連続相(B)に含有させる安定化剤の量は、本発明を阻害しない程度であれば良く、一般的には少量であり、具体的には0.01〜10重量%であり、好ましくは0.05〜5重量%である。
【0023】
なお、本発明の微粒子の製造において、粒子安定化のため、連続相(B)中に還元剤(例えば、ピロ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、グルコース、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、L−アスコルビン酸(塩)等)、キレート剤(グリシン、アラニン、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等)、pH緩衝剤(トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸カリウム等)、増感剤、粘度調製剤等の公知の添加剤を含有させてもよい。
【0024】
本発明の単分散微粒子の製造方法において、マイクロリアクターの連続相の流れによるせん断力で、あらかじめ作製した連続相中に分散する液滴(C’)に、さらに外部からせん断力を加えることで微小液滴(C)にした後、これを重合させて、平均粒子径が50nm〜500nmの粒子を得るが、このときの外部からせん断力を与える方法には、この目的で通常使用される操作や機器等を使用することができる。
例えば、超音波照射、低周波振動による音波エネルギーによる分散方法や、マイクロリアクターを多段階衝突型にすることで攪拌混合・分散させる手法であるマイクロミキサー、分散相を多孔質膜に通すことで微小液滴化する等の方法が挙げられる。好ましくは、超音波照射、低周波振動、多孔質膜透過により分散を行う方法であり、特に好ましくは超音波の照射である。
これらを、微小なマイクロリアクター内でおこなうことで、せん断力に広い分布が生じることを防ぎ、均一なせん断を与えることができるため、単分散で、マイクロリアクターの管径や溝幅より小さな微小液滴(C)を作製することができる。
【0025】
上記の超音波の照射エネルギーは、マイクロリアクター中の溶媒を混合・分散可能なエネルギーであればよい。そして、超音波の照射エネルギーは、通常1.0×10W/m〜1.0×10W/m、好ましくは、1.0×10W/m〜1.0×10W/mである。
具体的には、マイクロリアクターにおける開口部からモノマー液滴を作製する部位に超音波を照射することで、モノマー液滴を微小化する。
さらに、このときの照射エネルギーを調整することで、所望の粒径の微小液滴を得ることができる。
【0026】
前述したように、層流が形成された環境下にある微小液滴は、それぞれの相互の接触頻度が低減されるため、粒子の接触による合一が極めて起こりにくいことから、得られた微粒子の単分散性を維持することが可能である。
また、層流以外の粒子接触を制御する手段として、マイクロリアクターに磁場をかけて擬似無重力場を形成することで、粒子同士の接触頻度を低減することが可能である。また、これらは併用することが可能である。
【0027】
このような擬似無重力場を形成するには、磁場を発生させるものであれば特に限定されないが、例えば電磁石、ハイブリッド磁石等が挙げられ、これらは併用して使用することができる。具体的には、マイクロリアクター流路に対し、電磁石を下部より磁場があたるように設置する。磁場強度は、反応に用いる溶媒及び媒質によって異なるが、好ましくは10T〜25Tの磁場をかけられるものがよい。
【0028】
高単分散微粒子(I)は、微小液滴(C)の重合により得られるが、その時の反応温度は、通常35〜150℃で行う。好ましくは60〜90℃であり、さらに好ましくは80℃〜90℃である。
反応に用いられる熱源としては、通常使われるものでよく、例えば、オイルバスやウォーターバスによる加熱、マイクロ波照射による加熱等が挙げられ、好ましくはマイクロ波照射による加熱である。
【0029】
また、マイクロリアクター内を流れる液滴を加熱する場合、マイクロリアクターの容積が小さいため、加熱による熱エネルギーを瞬時に、また均一に液滴に与えることができる。このため、モノマーの重合度を均一にすることができ、分子量分布の狭いポリマーを得ることができる。
【0030】
本発明の単分散樹脂粒子(I)の分子量および分子量分布は、数種の単分散ポリスチレンを標準サンプルとするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0031】
本発明の単分散樹脂粒子(I)の重量平均分子量(Mw)は3000〜100万、好ましくは5000〜50万である。また、分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は1.01〜1.20、好ましくは1.01〜1.10である。
ここで、Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
【0032】
重合にかかる時間は、通常0.5時間〜8時間程度で良く、好ましくは1時間〜6時間であり、特に好ましくは1時間〜4時間である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されない。
実施例1
流路幅400μmのガラス製マイクロリアクターを反応場として用意した。
連続相は、あらかじめ、蒸留水1331重量部、非イオン性界面活性剤エレミノールNL−100(当社製ポリオキシエチレンアルキルエーテル)5.3重量部を加え、窒素ガスを水中に吹き込み、水中に溶解している酸素を約1時間かけて置換した。ここに、水溶性開始剤である過硫酸カリウム6.15重量部を水170重量部に溶解させたものを加え連続相とした。分散相はスチレンモノマーを用いた。
連続相の流量は20ml/hr、分散相の流量は1ml/hrとし送液を行った。両液が接触して液滴が作製される部位に小型振動モーター装置によって30Hzの低周波振動を1分間与えることで液滴の微小化を行い、分散液を得た。この分散液に対し、マイクロ波照射により85℃まで瞬時に加熱し、そのまま1時間保持して重合反応をおこなった。
得られた粒子溶液の一部を60℃順風乾燥機で1時間乾燥して濃縮し、電気泳動光散乱式粒径分布測定装置(ELS)により測定した結果、平均粒径290nm、CV値3.9%の高単分散微粒子を得た。また、この微粒子はGPCによる測定により、Mw=13940、Mw/Mn=1.09であった。
【0034】
実施例2
流路幅を40μm、連続相の流量を5ml/hrにしたこと以外は実施例1と同様の方法で粒子を得た。その結果、平均粒径185nm、CV値4.7%、Mw=12510、Mw/Mn=1.08の高単分散微粒子を得た。
【0035】
実施例3
開始剤を油溶性開始剤であるラウロイルパーオキサイドにしたこと以外は実施例1と同様の方法で粒子を得た。その結果、平均粒径220nm、CV値4.1%、Mw=18740、Mw/Mn=1.16の高単分散微粒子を得た。
【0036】
実施例4
流路幅を100μm、連続相の流量を3ml/hrにしたこと以外は実施例1と同様の方法で粒子を得た。その結果、平均粒径215nm、CV値7.2%、Mw=15460、Mw/Mn=1.11の単分散微粒子を得た。
【0037】
比較例1
流路幅400μmのマイクロリアクターを使用し、低周波振動を与えないこと以外は実施例1と同様の方法で粒子を得た。その結果、平均粒径288μm、CV値4.9%、Mw=14190、Mw/Mn=1.13の微粒子を得た。なお、ここで得られた微粒子の平均粒径はELSでは測定できなかったため、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた。
【0038】
比較例2
流路幅を40μmとした以外は、低周波振動を与えない比較例1と同様の方法で粒子を得た。その結果、平均粒径24μm、CV値7.8%、Mw=12720、Mw/Mn=1.09の微粒子を得た。
【0039】
以上の結果から、実施例1〜4で得られた微粒子は、いずれも流路幅より小さいナノオーダーの粒子径で、かつ変動係数が10%以下の高単分散であった。一方、比較例1、2では、設定した流路幅に見合ったミクロンサイズの粒子しか得られないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の製造方法を用いると、従来の製造方法と比較して、ナノオーダーでの目的の粒径を有する高単分散樹脂微粒子を簡便に製造することができる。このようにして製造された高単分散樹脂微粒子は医療材料、電子材料分野などに使用される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロリアクター(A)を流れる連続相(B)に対して、接続される開口部から重合性モノマー(b)を含む分散相(D)を吐出し、前記連続相(B)中に、分散する該分散相(D)から構成された液滴(C’)を作製し、重合させることで単分散微粒子(I)を得る製造方法において、該液滴(C’)に外部から均一なせん断力を加えることにより単分散な微小液滴(C)にすることにより平均粒子径が50nm〜500nmである単分散微粒子(I)を得ることを特徴とする高単分散微粒子の製造方法。
【請求項2】
該連続相(B)が界面活性剤(a)を含む請求項1記載の高単分散微粒子の製造方法。
【請求項3】
重合が、水溶性開始剤(c)を用いる乳化重合である請求項1または2記載の高単分散微粒子の製造方法。
【請求項4】
重合が、油溶性開始剤(d)を用いる懸濁重合である請求項1または2記載の高単分散微粒子の製造方法。
【請求項5】
せん断力が、超音波の照射によるものである請求項1〜4いずれか記載の高単分散微粒子の製造方法。
【請求項6】
該超音波の照射エネルギーが1.0×10W/m〜1.0×10W/mである請求項5に記載の高単分散微粒子の製造方法。
【請求項7】
該微小液滴(C)が、該連続相(B)中に分散している請求項1〜6いずれか記載の高単分散微粒子の製造方法。
【請求項8】
該高単分散微粒子(I)の粒径分布の変動係数CVが10%以下である請求項1〜7いずれか記載の高単分散微粒子の製造方法。
【請求項9】
該マイクロリアクター(A)の径が1μm〜1000μmである請求項1〜8いずれか記載の高単分散微粒子の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9いずれか記載の製造方法で得られ、電気泳動光散乱式粒子径分布測定装置による粒子径が50nm〜500nmであり、かつ粒度分布が変動係数10%以下であることを特徴とする高単分散微粒子。
【請求項11】
請求項1〜9いずれか記載の製造方法で得られる樹脂粒子であって、その重量平均分子量が5,000〜1,000,000であり、かつ分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量の比)が1.01〜1.20であることを特徴とする高単分散微粒子。


【公開番号】特開2008−31419(P2008−31419A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86992(P2007−86992)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】