説明

高反射プレコートアルミニウム合金板

【課題】薄肉軽量化、製造コスト低減が可能で、成形性及び反射特性に優れた高反射プレコートアルミニウム合金板を提供すること。
【解決手段】基板2の少なくとも一面に形成されたプレコート層3は、ベース樹脂(42)100重量部に対して高反射物質41を30重量部以上含有する高反射層4を有し、1層又は複数層からなる。ベース樹脂42は、正反射率80%以上のアルミニウム合金板上に厚さ10μmの塗膜を形成した際の塗装前後の正反射低下率が10%以下である。高反射物質41は、硫酸バリウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、アルミナ、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化亜鉛、ガラス、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、シリカ、酸化ジルコニウム、中空ガラスビーズのうち1種以上よりなる。高反射物質41の平均粒径は0.1〜10μmである。高反射層4の膜厚は20〜150μmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明の反射板、液晶の蛍光灯バックパネル等に用いられる高反射プレコートアルミニウム合金板に関する。
なお、本発明において、アルミニウム合金板とは、純アルミニウム板、及びアルミニウム合金板を含むものである。
【背景技術】
【0002】
従来、家電製品やOA機器の筐体等の材料として、プレコートアルミニウム合金板が広く使われている。
プレコートアルミニウム合金板は、アルミニウム合金板の表面を合成樹脂塗膜にてコーティングしてなり、軽量であり、かつ、成形後に塗装を施す必要がないという優れた特性を有している。
【0003】
最近では、家電製品あるいはOA機器においては、軽量化、小型化、高性能化のほか低価格化がますます進み、それに伴って、筐体等に用いられる材料の高性能化、低コスト化が重要課題となっている。
また、最近では、家電製品やOA機器は薄型タイプが望まれ、特殊な形状も増え、筐体等に用いられる材料に対しては、様々な形状に成形可能な優れた成形性が強く求められている。
【0004】
さらに、液晶ディスプレイの裏側面に配置される液晶バックパネルは、可視光の全波長で均一に反射する必要があり、また、蛍光灯からの発熱に対する耐熱性及び高寿命が必要である。
そして、上記液晶バックパネルとしては、これまで、高反射のフィルムや、アルミニウム合金板に高反射のフィルムを貼り付けたもの等が使用されていた(特許文献1〜6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−160208号公報
【特許文献2】特開平9−251805号公報
【特許文献3】特開2002−254558号公報
【特許文献4】特開平11−29745号公報
【特許文献5】特開2002−258020号公報
【特許文献6】WO97/01117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、高反射のフィルムを貼り付けたアルミニウム合金板等を作製するには、複雑なプロセスが必要となり、製造コストが高い。このことが、液晶バックパネルの今後の低価格化には大きな問題となっている。そのため、製造コストが低く、高反射特性を有する材料の開発が望まれている。
また、上記高反射特性を有する材料としては、複雑なプレス成形にも耐えうる成形性を具備し、かつ、薄肉軽量であるという特性も求められている。
【0007】
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、薄肉軽量化、製造コスト低減が可能で、成形性及び反射特性に優れた高反射プレコートアルミニウム合金板を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アルミニウム合金板よりなる基板と、該基板の片面又は両面に形成したプレコート層とを有するプレコートアルミニウム合金板であって、
上記基板の少なくとも一面に形成されたプレコート層は、ベース樹脂100重量部に対して高反射物質を30重量部以上含有する高反射層を有し、
上記ベース樹脂は、正反射率80%以上のアルミニウム合金板上に厚さ10μmの塗膜を形成した際の塗装前後の正反射低下率が10%以下であり、
上記高反射物質は、硫酸バリウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、アルミナ、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化亜鉛、ガラス、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、シリカ、酸化ジルコニウム、中空ガラスビーズのうち1種又は2種以上よりなり、
上記高反射物質の平均粒径は、0.1〜10μmであり、
上記高反射層の膜厚は、20〜150μmであることを特徴とする高反射プレコートアルミニウム合金板にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
本発明の高反射プレコートアルミニウム合金板は、基板としてアルミニウム合金板を用い、かつ、その片面又は両面に、上記特定の構成を有する高反射層を有するプレコート層を有している。これにより、上記高反射プレコートアルミニウム合金板は、薄肉軽量化、製造コスト低減が可能で、成形性及び反射特性に優れたものとなる。
【0010】
上記高反射層は、屈折率の大きい上記特定の高反射物質を、透光性を有するベース樹脂に特定量含有させている。つまり、上記高反射層に侵入した光が、上記ベース樹脂を透過し、上記ベース樹脂と上記高反射物質との界面において反射するため、高反射層は高い反射率を得ることができる。そのため、プレコートアルミニウム板に優れた反射特性を付与することができる。
【0011】
また、上記高反射層は、20〜150μmの膜厚で十分な反射特性を有することができるため、薄肉軽量化が可能である。
また、上記高反射層を構成するベース樹脂、及び高反射物質は、比較的安価である。また、上記プレコート層は比較的容易に形成することができる。そのため、製造コストを低減することができる。
また、アルミニウム合金板の表面を上記プレコート層によりコーティングしているため、複雑なプレス成形にも耐えうる成形性を具備することができる。
【0012】
このように、本発明によれば、薄肉軽量化、製造コスト低減が可能で、成形性及び反射特性に優れた高反射プレコートアルミニウム合金板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1における、高反射プレコートアルミニウム合金板を示す説明図。
【図2】実施例1における、高反射層のメカニズムを示す説明図。
【図3】実施例2における、高反射プレコートアルミニウム合金板を示す説明図。
【図4】実施例3における、高反射プレコートアルミニウム合金板を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のプレコートアルミニウム合金板は、上述したように、アルミニウム合金板よりなる基板と、該基板の片面又は両面に形成したプレコート層とを有する。
上記プレコート層は、上記高反射層のみで構成することもできるが、高反射層のほかに、例えば、素材との密着性を確保するためのプライマー層、加工性を付与するための潤滑層等を積層して構成することもできる。
また、上記高反射層自体は、一層の高反射層のみより形成することもできるし、複数層の高反射層を積層して形成することもできる。
【0015】
上記プレコート層が、上記基板の片面のみに形成されている場合には、そのプレコート層は必ず高反射層を有しなければならず、上記プレコート層が、上記基板の両面に設けられている場合には、片面に形成されたプレコート層が高反射層を有し、もう一方の面が上述の高反射層以外の層のみからなるプレコート層であっても良いし、両方のプレコート層が高反射層を有していても良い。
【0016】
また、上記高反射層に含まれる上記高反射物質の含有量(複数種類の高反射物質を含有した場合には、その合計含有量)は、ベース樹脂100重量部に対して30重量部以上である。
上記高反射物質の含有量がベース樹脂100重量部に対して30重量部未満の場合には、反射率が低下するおそれがある。
また、上記高反射物質を複数の成分を含有させる場合には、それぞれの単独の含有量が、上記ベース樹脂100重量部に対して30重量部以上であることが好ましい。
【0017】
また、上記高反射物質の含有量(複数種類の高反射物質を含有した場合には、その合計含有量)は、上記ベース樹脂100重量部に対して300重量部以下であることが好ましい(請求項2)。
上記高反射物質の含有量がベース樹脂100重量部に対して300重量部を超える場合には、塗膜からの高反射物質の脱落数が増加するおそれがある。また、加工時にプレコート層に割れが発生し易くなるおそれがある。なお、塗膜の加工性等の性能が劣化しない場合には、300重量部を超える含有量にすることも可能である。
また、上記高反射物質の含有量は、ベース樹脂100重量部に対して100〜200重量部であることがより好ましい。
【0018】
また、上記ベース樹脂は、正反射率80%以上のアルミニウム合金板上に厚さ10μmの塗膜を形成した際の塗装前後の正反射低下率が10%以下であるという特性を有している。
正反射率80%以上のアルミニウム合金板上に上記ベース樹脂よりなる厚さ10μmの塗膜を形成する試験を行った際の塗装前後の正反射低下率が10%を超える場合には、光の損失が大きくなり、反射率が低下するおそれがある。
【0019】
なお、上記正反射低下率は、100−{(塗装後正反射率/塗装前正反射率)×100}(%)により導き出すことができる。
【0020】
上記ベース樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、脂肪酸変性したポリエステル樹脂(アルキド樹脂)、オイルフリーアルキド樹脂、綿状ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール系樹脂等の塗料が挙げられる。
【0021】
また、上記高反射物質は、硫酸バリウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、アルミナ、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化亜鉛、ガラス、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、シリカ、酸化ジルコニウム、中空ガラスビーズのうち1種又は2種以上よりなる。
また、上記中空ガラスビーズのガラス成分としては、ケイ酸ガラス、ホウ酸ソーダガラス、シリカガラス、その他様々な種類のガラスを適用することができる。
【0022】
また、上記高反射物質の平均粒径は0.1〜10μmである。
上記高反射物質の平均粒径が0.1μm未満の場合には、可視光が透過しやすく、反射率が低下するおそれがある。一方、上記高反射物質の平均粒径が10μmを超える場合には、塗膜からの上記高反射物質の脱落数が増加するという問題がある。また、加工時にプレコート層に割れが発生し易くなるおそれがある。
そして、上記高反射物質の平均粒径は0.2〜1.0μmであることがより好ましい。
【0023】
上記高反射物質の平均粒径は、一次粒子のメジアン径(D50)であり、電子顕微鏡で観察し、画像解析プログラムにより各々の粒子径を測定することによって算出する。
【0024】
また、上記高反射層の膜厚は20〜150μmである。
より高い高反射率を得るためには高反射層の膜厚を100μm以上にすることが好ましく、加工が厳しい場合には、100μm未満であることが好ましい。
上記高反射層の膜厚が20μm未満である場合には、反射率は著しく低下する。一方、上記高反射層の膜厚が150μmを越える場合には、反射率向上には望ましいが、コストアップになるという問題がある。また、加工時にプレコート層に割れが発生し易くなるおそれがある。
【0025】
上記高反射層を有するプレコート層が高反射層のみからなる場合には、上記プレコート層は、20〜150μmとなる。
また、上記高反射層を有するプレコート層が、高反射層と高反射特性を有していない層とを積層して構成されている場合には、上記プレコート層の膜厚は、40〜120μmであることが好ましい。
【0026】
また、上記プレコートアルミニウム合金板において、上記高反射層を有するプレコート層の最外層は、上記ベース塗膜100重量部に対して、動物性ワックス、植物性ワックス、合成ワックス、石油ワックスのうち1種又は2種以上よりなるインナーワックスを0.05〜3重量部含有していることが好ましい(請求項3)。
【0027】
この場合には、プレコートアルミニウム合金板に摺動性向上効果を付与することができる。
上記動物性ワックスとしては、例えば、ラノリン等が挙げられる。
また、上記植物性ワックスとしては、例えば、カルナバ等が挙げられる。
また、上記合成ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックスや、フィッシャートロプッシュワックス等が挙げられる。
また、上記石油ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクロスタリンワックス、あるいはペトロラタム等が挙げられる。
【0028】
上記インナーワックスの含有量が0.05%未満の場合には、摺動性向上の効果を得ることができない。一方、上記インナーワックスの含有量が3重量部を超える場合には、コストアップとなるという問題がある。
【0029】
また、上記プレコート層と上記基板との間には、化成処理皮膜が形成されていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記基板と上記プレコート層との密着性を効果的に向上させることができる。また、優れた耐食性が実現されて、水、塩素化合物等の腐食性物質がアルミニウム合金板の表面に浸透した際に惹起される塗膜下腐食を抑制することができ、塗膜割れや塗膜剥離の防止を図ることができる。
【0030】
上記化成処理皮膜としては、リン酸クロメート、クロム酸クロメート等のクロメート処理、クロム化合物以外のリン酸チタンやリン酸ジルコニウム、リン酸モリブデン、リン酸亜鉛等によるノンクロメート処理等の化学皮膜処理、いわゆる化成処理により得られる皮膜を採用することができる。
なお、上記クロメート処理やノンクロメート処理等の化成処理方法には、反応型及び塗布型があるが、本発明においては、いずれの手法が採用されてもなんら差し支えない。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
本例では、本発明の実施例にかかる高反射プレコートアルミニウム合金板について、図1及び図2を用いて説明する。本発明はこれらの実施例によってのみ限定されるものではない。
本例では、本発明の実施例として12種類のプレコートアルミニウム合金板(試料E
1〜試料E12)、及び本発明の比較例として、8種類のプレコートアルミニウム合金板(試料C1〜試料C8)を作製した。
【0032】
図1に示すように、本例の高反射プレコートアルミニウム合金板1(試料E1〜試料E12)は、アルミニウム合金板よりなる基板2と、該基板2の片面に形成したプレコート層3とを有するプレコートアルミニウム合金板1である。
【0033】
本例の高反射プレコートアルミニウム合金板1を作製するに当たっては、まず、アルミニウム合金板よりなる基板2として、厚さ0.5mmの1050−H24アルミニウム合金板を用意した。
【0034】
また、上記プレコート層3を構成するベース樹脂42として、正反射率80%以上のアルミニウム合金板上に厚さ10μmの塗膜を形成した際の塗装前後の正反射低下率が5%であるポリエステル樹脂、上記正反射低下率が20%である上記正反射低下率が6%であるウレタン樹脂、上記正反射低下率が10%であるアクリル樹脂を用意した。
上記正反射低下率は、正反射率84%のアルミニウム合金板の表面に上記ベース樹脂を単体で10μm塗装し、塗装後の正反射率を測定する試験を行い、正反射低下率=100−{(塗装後の正反射率(%)/84%)×100}(%)にて算出した。
【0035】
また、上記プレコート層3を構成する高反射物質41として、平均粒径が0.5μm、0.1μm、0.06μmである3種類の酸化チタン、平均粒径が1μm、10μm、15μmである3種類の硫酸バリウムを用意した。
【0036】
そして、上記基板2をアルカリ系脱脂剤で脱脂した後、リン酸クロメート浴中でリン酸クロメート処理を実施して化成処理皮膜であるクロメート皮膜5を形成した。クロメート皮膜量は、皮膜中のCr含有量が20±5mg/m2となる量とした。
【0037】
次に、試料E1〜試料E12、試料C1〜試料C8のそれぞれについて、表1に示すベース樹脂42に、表1に示す高反射物質41を、表1に示す含有量で含有させた塗料を、上記基板2の化成処理皮膜5上にバーコーターを用いて塗布した。その後、アルミニウム表面の温度が230℃になるよう240℃のオーブンの中で60秒焼付け、硬化することによりプレコート層3(高反射層4)を形成し、プレコートアルミニウム合金板1(試料E1〜試料E12、及び試料C1〜試料C8)を得た。
上記プレコート層3は、表1に示す膜厚を有するように、一層又は複数層で形成した。
【0038】
【表1】

【0039】
次に、得られたプレコートアルミニウム合金板1について、反射性、加工性の評価を行った。
<反射性>
反射性は、全反射率を測定することにより評価した。全反射率の測定は、村上色彩技術研究所社製積分球分光測色計を用いて行った。硫酸バリウムの微粉末を固めた白色板の全反射率を100%とし、各々のサンプルについて550nmの波長における測定値を全反射率と定義した。結果を表1に併せて示す。
【0040】
プレコート層3の膜厚が100μm以上の場合には、全反射率が95%以上の場合を評価○とし、全反射率が95%未満の場合を評価×とした。また、プレコート層3の膜厚が100μm未満の場合には、全反射率が88%以上の場合を評価○とし、全反射率が88%未満の場合を不良として×印で示した。
【0041】
なお、図2には、高反射層4のメカニズムを示す。図2に示すように、高反射層4は、屈折率の大きい上記特定の高反射物質41を、透光性を有するベース樹脂42に特定量含有させており、また特定の膜厚を有する。そして、上記プレコート層3(高反射層4)に侵入した光は、上記ベース樹脂42を透過し、上記ベース樹脂42と上記高反射物質41との界面において反射するため、高い反射率を得ることができる。
【0042】
<加工性>
加工性は、90°曲げ及び密着曲げを行うことにより評価した。
90°曲げ、密着曲げ共に塗膜に割れがない場合を評価○とし、密着曲げのみ塗膜に割れが認められた場合を評価△とし、90°曲げで塗膜に割れが認められた場合を評価×とした。結果を表1に併せて示す。評価が○及び△の場合を合格、評価が×の場合を不合格とする。
【0043】
また、表1に示す総合評価は、反射性及び加工性のいずれの評価も合格である場合を合格(評価○)とし、反射性、加工性のいずれか一方でも不合格である場合を不合格(評価×)とした。
【0044】
表1に示すように、本発明の実施例としての試料E1〜試料E12は、いずれも優れた反射性及び加工性を示した。
また、上記試料E1〜試料12は、プレコート層3(高反射層4)の膜厚が20〜140μmであるため、薄肉軽量化が可能である。
また、上記ベース樹脂42、及び高反射物質41は安価であり、また、上記プレコート層3を容易に形成できるため、製造コストの低減も可能である。
このように、本例によれば、薄肉軽量化、製造コスト低減が可能で、成形性及び反射特性に優れた高反射プレコートアルミニウム合金板を得ることができる。
【0045】
また、表1より知られるように、比較例としての試料C1は、プレコート層(高反射層)の膜厚が本発明の上限を上回るため、反射率は良好であったが、加工性が不合格であった。また、製造コストが増大した。
また、試料C2は、プレコート層の膜厚が本発明の下限を下回るため、反射率が著しく低下し、反射性が不合格であった。
【0046】
また、試料C3は、高反射物質の平均粒径が本発明の下限を下回るため、可視光が透過しやすく、反射率が低下し、反射性が不合格であった。
また、試料C4は、高反射物質の含有量が本発明の下限を下回るため、反射率が低下し、反射性が不合格であった。
【0047】
また、試料C5は、高反射物質の含有量が本発明の好ましい範囲の上限を上回るため、塗膜からの高反射物質の脱落数が増加しやすく、また、加工時にプレコート層に割れが発生し易くなり、加工性が不合格であった。
また、試料C6は、高反射物質の平均粒径が本発明の平均粒径を上回るため、塗膜からの上記高反射物質の脱落数が増加しやすく、また、加工時にプレコート層に割れが発生し易くなり、加工性が不合格であった。
【0048】
また、試料C7、及び試料C8は、ベース樹脂の正反射低下率が本発明の上限を上回るため、樹脂による光の吸収が多く、これにより全反射率低下の原因となり、反射性が不合格であった。
【0049】
なお、本例においては、上記プレコート層3は、上記基板2の一方の面のみに形成したが、上記基板の両面に設けてももちろん良い。
また、本例においては、高反射物質は単一種類としたが、複数種類の高反射物質を組み合わせた場合にも同様の効果を得ることができる。
【0050】
(実施例2)
本例は、図3に示すように、高反射層402とプライマー層6と積層してなるプレコート層302を形成した高反射プレコートアルミニウム合金板102を作成した例である。
上記プライマー層6を構成するプライマー層用塗料として、ポリエステル系プライマーを用意した。
【0051】
上記実施例1において用いた基板と同一の、クロメート皮膜5を形成した基板2に対し、上記クロメート皮膜5上に、上記プライマー層用塗料をバーコーターを用いて塗布した。その後、その上に、ベース樹脂(ポリエステル)100重量部に対して高反射物質(酸化チタン)を150重量部含有させた塗料をバーコーターを用いて塗布した。その後、アルミニウム表面の温度が230℃になるよう240℃のオーブンの中で60秒焼付け、硬化することにより、上記プライマー層6及び上記高反射層402よりなるプレコート層302を形成し、高反射プレコートアルミニウム合金板102を得た。
上記プライマー層6の膜厚は5μmであり、上記高反射層402の膜厚は40μmであった。
【0052】
本例の高反射プレコートアルミニウム合金板102は、上記実施例1において得られた高反射プレコートアルミニウム合金板と同様に、薄肉軽量化、製造コスト低減が可能で、成形性及び反射特性に優れる。
【0053】
(実施例3)
本例は、図4に示すように、第1高反射層403と、インナーワックス43を含有する第2高反射層404とからなるプレコート層303を形成した高反射プレコートアルミニウム合金板103を作製した例である。
上記インナーワックス43としては、カルナウバワックスを用意した。
【0054】
上記実施例1において用いた基板と同一の、クロメート皮膜5を形成した基板2に対し、上記クロメート皮膜5上に、ベース樹脂42(ポリエステル)100重量部に対して高反射物質41(酸化チタン)を150重量部含有させた塗料をバーコーターを用いて塗布し、その後、ベース樹脂42(ポリエステル)100重量部に対して高反射物質41(酸化チタン)を60重量部、インナーワックス43を2重量部含有する塗料をバーコーターを用いて塗布した。その後、アルミニウム表面の温度が230℃になるよう240℃のオーブンの中で60秒焼付け、硬化することにより、上記第1高反射層403、及びインナーワックスを含有する第2高反射層404(最外層)よりなるプレコート層303を形成し、高反射プレコートアルミニウム合金板103を得た。
上記第1高反射層403の膜厚は40μmであり、最外層である上記第2高反射層404の膜厚は20μmであった。
【0055】
本例の高反射プレコートアルミニウム合金板103は、記高反射層403、404を有するプレコート層303の最外層404にインナーワックス43が含有されているため、薄肉軽量化、製造コスト低減が可能で、成形性及び反射特性に優れるだけでなく、良好な摺動性を有することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 高反射プレコートアルミニウム合金板
2 基板
3 プレコート層
4 高反射層
41 高反射物質
42 ベース樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金板よりなる基板と、該基板の片面又は両面に形成したプレコート層とを有するプレコートアルミニウム合金板であって、
上記基板の少なくとも一面に形成されたプレコート層は、ベース樹脂100重量部に対して高反射物質を30重量部以上含有する高反射層を有し、
上記ベース樹脂は、正反射率80%以上のアルミニウム合金板上に厚さ10μmの塗膜を形成した際の塗装前後の正反射低下率が10%以下であり、
上記高反射物質は、硫酸バリウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、アルミナ、酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化亜鉛、ガラス、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、シリカ、酸化ジルコニウム、中空ガラスビーズのうち1種又は2種以上よりなり、
上記高反射物質の平均粒径は、0.1〜10μmであり、
上記高反射層の膜厚は、20〜150μmであることを特徴とする高反射プレコートアルミニウム合金板。
【請求項2】
請求項1において、上記高反射物質の含有量は、上記ベース樹脂100重量部に対して300重量部以下であることを特徴とする高反射プレコートアルミニウム合金板。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、上記高反射層を有するプレコート層の最外層は、上記ベース塗膜100重量部に対して、動物性ワックス、植物性ワックス、合成ワックス、石油ワックスのうち1種又は2種以上よりなるインナーワックスを0.05〜3重量部含有していることを特徴とする高反射プレコートアルミニウム合金板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、上記プレコート層と上記基板との間には、化成処理皮膜が形成されていることを特徴とする高反射プレコートアルミニウム合金板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−221617(P2010−221617A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73392(P2009−73392)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002277)住友軽金属工業株式会社 (552)
【Fターム(参考)】