説明

高含量L−カルボシステインドライシロップ剤

【課題】
本発明は、市販製剤に比べて高含量で、且つ服用感が改善されたL−カルボシステイン高含量ドライシロップ剤の開発を目的とする。
【解決手段】
L−カルボシステインとともに、白糖等の糖、アスパルテーム及びサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味剤及びカルメロースカルシウム等の崩壊剤を配合したL−カルボシステイン高含量ドライシロップ製剤に関するもので、市販のL−カルボシステインドライシロップ剤に比べて、L−カルボシステインの含量が高いにも関わらず、同程度の分散性及び再分散性を有し、該市販製剤に比べて服用感が著しく改善されるという優れた効果を有し、更に、本発明の高含量L−カルボシステインドライシロップ剤は、大部分が比較的狭い粒度範囲に分布することから、調剤時の薬量のばらつきを少なくすることが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高含量のL−カルボシステインを含有しながら、良好な分散性及び再分散性を有し、且つ服用性の改善されたドライシロップ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
L−カルボシステインの化学名は(2R)-2-Amino-3-carboxymethylsulfanylpropanoic acidであり、気道粘液に含まれる各種ムチンの含量比を正常化することにより、痰の粘度を低下させ、また、線毛細胞などの粘膜上皮を修復することにより、粘液線毛輸送系を改善し、貯留物の排泄を促進する作用を有する。これらの作用からL−カルボシステインは、気道粘液調整・粘膜正常化剤として、各種呼吸器疾患の去痰、慢性副鼻腔炎の排膿、滲出性中耳炎の排液に優れた効果が認められている。しかしながら、L−カルボシステインは強い酸味を有しており、酸味を軽減し、服用感を改善した製剤化が必須である。
L−カルボシステインの製剤としては錠剤、細粒剤、懸濁シロップ剤、シロップ剤、ドライシロップ剤がある。一般的に錠剤等の固形製剤では、嚥下能力の弱い小児や高齢者にとって服用させるのが困難である。また、シロップ剤のような液剤は、固形製剤と比較して薬局や病院等での調剤業務に手間がかかるうえ、患者が携帯するのにも不便である。このような点を改良した製剤として、ドライシロップ剤や細粒剤がある。特に、他の製剤に比して高齢者の服用し易いL−カルボシステインのドライシロップ剤は、高齢化人口の増加に伴い、服用性等の改善の要望が高い。
【0003】
L−カルボシステインの酸味を改善した製剤としては、L−カルボシステインと糖アルコール及び高甘味度甘味剤を含有することを特徴とするドライシロップ剤が、特許文献1に開示されている。該製剤は、従来の糖類を多量に添加するか、又はコーティングにより、酸味を改善する代わりに、糖アルコール及び高甘味度甘味剤を併用するものである。該製剤においては、糖アルコールをL−カルボシステインの2倍使用し、更に、高甘味度甘味剤であるサッカリンナトリウム又はアスパルテームを製剤全体に対して、0.67〜1.5%、又はグリチルリチン酸二カリウムを製剤全体に対して、2.5%添加するもので、酸味はかなり改善されている。該製剤では、多量の糖を使用する代わりに、糖アルコール及び高甘味度甘味剤を併用したというものの、糖アルコール含量はL−カルボシステインの2倍であることから、該製剤では、L−カルボシステインの含量が33%程度となっている。
また、特許文献2には、難水溶性薬物のドライシロップ剤が記載され、懸濁化剤及び結合剤として、20℃における2(w/v)%水溶液の粘度が3.0mPa・s未満であるヒドロキシプロピルセルロースを0.5(w/w)%以上含有させて、分散液上に浮遊物を生じさせなくし、消泡性を改善したドライシロップ剤が記載されている。該特許文献には、難水溶性薬物の例としてL−カルボシステインが挙げられているがL−カルボシステインを含む具体的な製剤例はなく、具体的に開示されている製剤例は、エテンザミド1%と白糖を96.4〜98.5%及びヒドロキシプロピルセルロースを0.6%を含む製剤である。
【0004】
L−カルボシステインは、成人に対する投与量は、1回500mgと比較的多量であることから、高濃度製剤の要望が高く、現在細粒剤では50%製剤がでている。しかしながら、上記特許文献1に記載の製剤においては、含量が33%程度(市販のL−カルボシステインドライシロップ製剤もほぼ同程度)と、50%細粒剤に比して低濃度であるため、1回につき1.5gものドライシロップ製剤を服用する必要があり、より少ない服用量で済むドライシロップ剤の開発が望まれている。L−カルボシステインのドライシロップ剤は、溶液に分散させて服用するため、細粒のまま服用する細粒剤に比して、酸味などを感じやすいこと、酸味の軽減にコーティングなど特殊な加工を施す方法もあるが、コーティングを施した製剤では製造工程の複雑化と製造コストが増大するという医療経済上の問題があること、更に、コーティング剤の一般的な課題として、製剤を高含量化すると粒度が整いにくく、結果として含量均一性の問題が生じ易いことなどから、現在まで、L−カルボシステインの含量が50%という高含量ドライシロップ剤は開発されていない。
【0005】
【特許文献1】再公表特許 WO2002/041887
【特許文献2】再公表特許 WO2005/009474
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、強い酸味を有するL−カルボシステインを高含量で含有しながら、そのままでも服用しやすい程度に酸味が軽減されることで服用感が改善され、用時懸濁して服用する際には分散性及び再分散性に優れ、さらに簡便な製造方法で製造可能でありながら粒度が整い含量均一性に優れるL−カルボシステイン高含量ドライシロップ剤の開発を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく種々検討の結果、L−カルボシステインを50%という高含量で含有するドライシロップ剤を製造する際、白糖などの糖、及びアスパルテームなどの高甘味度甘味剤及びカルメロースカルシウムなどの崩壊剤を配合した場合、市販のL−カルボシステインドライシロップ剤と同程度の分散性を示すと共に、酸味が抑制され、服用性において改善された高含量L−カルボシステインドライシロップ剤を得ることが出来ることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち本発明は、
(1)L−カルボシステイン、糖及び高甘味度甘味剤を含有し、L−カルボシステインの含量が製剤全体に対して40〜70質量%であることを特徴とするL−カルボシステインドライシロップ剤、
(2)糖含量が製剤全体に対して15質量%以上で、60質量%未満の範囲であり、且つL−カルボシステイン含量よりも少ないことを特徴とする(1)に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤、
(3)更に、崩壊剤を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤、
(4)崩壊剤の含量が製剤全体に対して3〜7質量%であることを特徴とする(3)に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤、
(5)糖が白糖である(1)〜(4)の何れか1項に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤、
(6)高甘味度甘味剤としてアスパルテームを含む(1)〜(5)の何れか1項に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤、
(7)高甘味度甘味剤がアスパルテーム及びサッカリンナトリウムの両者の併用である上記(6)に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
(8)高甘味度甘味剤の含量が製剤全体に対して、2〜5質量%である(1)〜(7)の何れか1項に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤、
(9)アスパルテームとサッカリンナトリウムの両者の使用割合がアスパルテーム100質量部に対して、サッカリンナトリウムが1〜10質量部である(7)又は(8)に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
(10)崩壊剤としてカルメロースカルシウムを含有することを特徴とする(3)〜(9)の何れか1項に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤、
(11)更に着香剤を含有することを特徴とする(1)〜(10)の何れか1項に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤、
(12)着香剤がアップルフレーバーである(9)に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤、
(13)製剤全体に対して、L−カルボシステインを45〜60質量%、白糖を30質量%以上で、45質量%未満、アスパルテーム3〜4質量%、サッカリンナトリウム0.1〜0.3質量%、カルメロースカルシウム4〜6質量%及び残部その他の医薬添加剤を含有することを特徴とする(1)に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤、
(14) 結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを含む(1)〜(13)の何れか一項に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
(15)流動層造粒法により造粒されることを特徴とする(1)〜(14)に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤、
(16)流動層造粒法が転動流動層造粒法であることを特徴とする(15)に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤、
に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、白糖などの糖及びアスパルテーム等の高甘味度甘味剤を配合することで、L−カルボシステイン含量を50%という高含量としても、L−カルボシステインの強い酸味が軽減されて服用感が改善され、50%製剤においては含量計算が容易であり、調剤が容易であり、更に、携帯薬剤量が少なくて済むことから、嵩張らず携帯に便利という利点を有する。また、酸味が軽減されていることから、水に懸濁して容易に服用することができる。また本発明のドライシロップ剤は、L−カルボシステインを高含量で含有するにも拘らず、用時懸濁して服用する際の分散性及び再分散性にも優れるという特徴を有する。
さらに本発明のドライシロップ剤に着香剤(香料)特にアップルフレーバーを添加することは服用感の改善上より好ましい。
加えて、本発明のL−カルボシステイン高含量ドライシロップ剤は、市販製剤に比べて、粒度が揃っていることから分包性に優れる。即ち、含量均一性が担保されることから、有効成分含量を均一に分包することが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を以下により詳しく説明する。
なお特に記載しない限り、以下の記載において、特に断らない限り、%は質量%、部は質量部を表す。
本発明はL−カルボシステインを高含量含有するドライシロップ剤に関するものである。本発明におけるドライシロップ剤とは、日本薬局方に記載されるシロップ剤のうち、用時溶解又は懸濁して用いる乾燥固形剤を意味する。
本発明のドライシロップ剤におけるL−カルボシステインの含有量は、服用性の面から、製剤全体に対して40〜70%が好ましく、更に好ましくは45〜60%、最も好ましくは45〜55%である。
【0011】
本発明のドライシロップ剤に用いられる糖は、医薬製剤技術分野において賦形剤として通常使用される糖類、例えば、白糖、ブドウ糖、果糖、水飴、乳糖等をいずれも使用することができる。これらの糖の中では白糖が好ましい。2種以上を用いてもよいが、併用の場合、糖類全体に対して、好ましくは白糖が50%以上、より好ましくは80%以上であり、更に好ましくは90%以上である。最も好ましくは白糖単独である。本発明においては、高甘味度甘味剤(より好ましくは、アスパルテーム)との併用により、ドライシロップ剤中に配合する糖類の量を減じても、水懸濁液での強い酸味を著しく軽減することができ、L−カルボシステインの配合量よりも少ない配合量とすることができる。本発明のドライシロップ剤に用いられる糖の配合量は、製剤全体に対して通常15%以上60%未満であり、好ましくは15%以上50%未満であり、更に好ましくは30%以上45%未満であり、最も好ましくは35〜40%である。
【0012】
高甘味度甘味剤とは、ショ糖の10倍以上の甘味度を有する甘味剤のことを言い、そのような甘味剤であればいずれも本発明のドライシロップ剤に好適に使用することができる。本発明のドライシロップ剤に用いられる高甘味度甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム等のサッカリンの塩類、アスパルテーム、グリチルリチン酸及びグリチルリチン酸二カリウム等のグリチルリチン酸の塩類、アセスルファムカリウム、ステビアなどが挙げられる。これらの高甘味度甘味剤は単独で使用してもよいが、2種以上を併用することもできる。本発明のドライシロップ剤においては、高甘味度甘味剤として、アスパルテーム及びサッカリンナトリウムの何れか一方又は両方を用いるのが好ましく、アスパルテームを含む製剤がより好ましく、アスパルテーム及びサッカリンナトリウムの併用が最も好ましい。
本発明のドライシロップ剤における高甘味度甘味剤の配合量、好ましくはアスパルテーム、又はアスパルテームとサッカリンナトリウムの両者の配合量は、製剤全体に対して2.0〜5.0%、好ましくは2.5〜4.5%、より好ましくは3.0〜4.0%程度である。また、アスパルテーム及びサッカリンナトリウムを併用する際における両者の使用割合は、アスパルテーム100部に対して、サッカリンの塩、好ましくはナトリウム塩を1〜20部、好ましくは2〜15部、より好ましくは3〜10部である。また、アスパルテームの配合量は製剤全体に対して通常2〜5%の範囲内であり、好ましくは2.5〜4.5%、より好ましくは3〜4%、最も好ましくは3.3〜3.7%であり、サッカリンナトリウムの配合量は製剤全体に対して通常0.1〜0.5%の範囲内であり、好ましくは0.1〜0.3%、最も好ましくは0.15〜0.25%である。
【0013】
本発明のドライシロップ剤に用いられる崩壊剤としては、医薬品添加物として用い得るものであれば何れも使用しうる。当該崩壊剤としては、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、バレイショデンプン及びトウモロコシデンプン等のデンプン類、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム等を挙げることができる。これらの崩壊剤は単独で使用してもよいが、2種以上を使用してもよい。
本発明に用いられる崩壊剤としては、分散性及び再分散性の面から、クロスカルメロース及びカルメロースカルシウムからなる群から選ばれる1種若しくは2種以上を使用するのが好ましい。これらの中で、カルメロースカルシウムが最も好ましい。クロスカルメロースの場合、カルボキシメチルスターチナトリウムとの併用も好ましい。カルメロースカルシウムは通常単独で使用するのが好ましい。崩壊剤の製剤全体に対する配合量は、通常2〜10%、好ましくは3.0〜7.0%、より好ましくは4.0〜6.0%、最も好ましくは4.5〜5.5%である。
【0014】
本発明のドライシロップ剤においては、服用性や商品的価値をさらに高めることを目的として、上記した糖、高甘味度甘味剤及び崩壊剤の他に、結合剤、着香剤(香料)、滑沢剤、着色剤及び可溶化剤などの、通常の医薬製剤技術分野で常用される種々の医薬品添加物を任意に配合することができる。これらの添加剤は1種又は2種以上であってもよく、本発明のドライシロップ剤におけるL−カルボシステインの高含量性、服用性や分散性及び再分散性、粒度分布・含量均一性を損なわない範囲であれば、通常、任意の量を単独あるいは混合して使用することができ、通常製剤全体に対して、0〜10%、好ましくは0〜5%、更に好ましくは、0〜2%程度である。
【0015】
本発明のドライシロップ剤に任意に配合しうる結合剤としては、医薬品添加物として用い得るものであれば特に制限はない。例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキプロピルメチルセルロース(HPMC)、アラビアゴム末、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン、プルラン等を挙げることができる。これらの結合剤は単独で使用してもよいが、2種以上を併用してもよい。好ましい結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロースが挙げられる。ヒドロキシプロピルセルロースとしては通常医薬製剤において結合剤として使用されるものであれば何れも使用でき、例えば2%(質量/容量)水溶液における粘度が2〜10mPa・sのものを挙げることができ、より好ましくは3〜10mPa・sのものである。
本発明のドライシロップ剤における結合剤の使用量は、通常0.5〜5%、好ましくは1〜4%、より好ましくは1〜3%であり、1〜2%が最も好ましい。
【0016】
本発明のドライシロップ剤において、その他の添加剤として、必要に応じて例えば、クエン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム等を添加しても良いが、通常添加する必要は無く、通常含まない方が好ましい。
【0017】
本発明のドライシロップ剤に任意に配合しうる着香剤(香料)としては、医薬品、食品等において用いられるものがあげられ、例えば、アップルフレーバー、オレンジエキス、オレンジ油、オレンジエッセンス、スペアミント油、ハッカ油、バニラフレーバー、レモン油、l−メントール、ピーチフレーバー、グレープフルーツフレーバー、ストロベリーエッセンス等を挙げることができる。
これらの着香剤のうち、好ましいものはアップルフレーバーである。アップルフレーバーは他の着香剤に比して、本発明のL−カルボシステイン高含量ドライシロップ製剤の服用感をより改善する。着香剤の使用量は通常0.2%以下程度(0.1%程度)の微量であり、通常含量割合としては含めない。
【0018】
本発明のドライシロップ剤に任意に配合しうる着色剤としては、医薬品添加物として用い得るものであれば特に制限はない。例えば、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、カラメル等を挙げることができる。好ましくはカラメルである。本発明製剤においては、使用量は微量で良く、通常0.1%以下程度(0.05%程度)の微量であり、通常含量割合としては含めない。
本発明のドライシロップ剤に任意に配合しうる滑沢剤としては、医薬品添加物として用い得るものであれば特に制限はない。例えば、含水二酸化ケイ素、トウモロコシデンプン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸及びその塩類、フマル酸、フマル酸ステアリルナトリウム、タルク、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。本発明においては含水二酸化ケイ素が好ましい。
【0019】
本発明におけるL−カルボシステイン高含量ドライシロップ剤の好ましい組成は、製剤全体に対して、L−カルボシステインを40〜70%、糖(好ましくは白糖)を15〜60%で且つL−カルボシステイン含量よりも少ない含量、高甘味度甘味剤(好ましくはアスパルテーム及びサッカリンナトリウム)を2〜5%、崩壊剤(好ましくはカルメロースカルシウム)を3〜7%、及び、残部がその他成分(上記以外の医薬添加物等)である。より好ましい組成は、製剤全体に対して、L−カルボシステインを45〜60%、白糖を30%〜45%、アステルパームを3〜4%、サッカリンナトリウムを0.1〜0.3%、カルメロースカルシウムを4〜6%、及び、残部がその他成分である。上記の好ましい組成又はより好ましい組成からなる本発明のドライシロップ剤において、その他の成分として、着香剤、好ましくはアップルフレーバーを適量含む場合、さらに好ましい。
また、その他の成分として、本発明で使用する結合剤として、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する製剤も更に好ましい。
【0020】
本発明におけるドライシロップ剤の製造方法としては特に限定はなく、一般的な造粒方法で製造可能であり、流動層造粒法、攪拌造粒法、高速攪拌造粒法、転動流動層造粒法、乾式造粒法など公知のいかなる方法を用いても製造することができる。本発明の高含量L−カルボシステインドライシロップ製剤の製造において、粒度分布が整い含量均一性に優れる製剤を得るためには、これらの造粒方法のうち、流動層造粒法、特に転動流動層造粒法が好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例及び試験例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
以下の様にして本発明のドライシロップ剤を製造した。
L−カルボシステイン6500g、白糖5161g、カルメロースカルシウム650g、アスパルテーム455gをマルチプレックス(転動流動層造粒機、株式会社パウレック製 FD−MP−25/44)に投入して混合した後、サッカリンナトリウム26g、ヒドロキシプロピルセルロース195g、カラメル6.5gを精製水3900gに溶解した液を造粒溶液として噴霧し造粒を行った。得られた造粒物を乾燥・整粒して得られた顆粒に、含水二酸化ケイ素とアップルフレーバーを適量加えて混合し、本発明のドライシロップ剤を得た。本実施例により得られたドライシロップ剤の組成を表1に示す。但し、カラメル及びアップルフレーバーは添加量が微量のため、下記表においては含量割合に含めていない。
【0022】
【表1】

【0023】
実施例2及び3
表1に記載の組成において、カルメロースカルシウムの代わりに表2に示す崩壊剤を用いること以外は実施例1と同様の製法によって、実施例2及び3のL−カルボシステイン高含量ドライシロップ剤を製造した。なお、実施例3ではカルボキシメチルスターチナトリウム(CMS−Na)を製剤100gあたり2.5g及びクロスカルメロースナトリウムを製剤100gあたり2.5g用いた。
【0024】
【表2】

【0025】
実施例4
表1に示した本発明のドライシロップ剤の組成において、サッカリンナトリウム水和物を使用しないこと以外は、実施例1と同様の製法によって本発明のドライシロップ剤を得た。このドライシロップ剤は、服用し易さの点で、実施例1の製剤に比して、服用時の最初の段階での甘味が少ないが、市販製剤に比べると服用感はかなり向上していた。
【0026】
比較例1及び2
表1に記載の組成において崩壊剤を用いないこと以外は実施例1と同様してL−カルボシステイン高含量ドライシロップ剤を製造した。この製剤を比較例1とした。
また、比較例2として、市販のL−カルボシステインドライシロップ剤(L−カルボシステイン含量33.3%、崩壊剤:クロスカルメロースナトリウム)を用いた。
【0027】
試験例1
分散性・再分散性試験
実施例1〜3並びに比較例1及び2によって得られた製剤について、下記試験法によって分散性・再分散性の試験を行った。試験結果を表3に示した。
<分散性・再分散性試験方法>
1.L−カルボシステイン500mg相当量を秤量する。
2.15mLの遠沈管に精製水10mLを入れる。
3.秤量した製剤をこの遠沈管に加える。
4.遠沈管に栓をした後、激しく振り混ぜ、均一に分散させる。
5.静置し、時間ごとの沈殿物の量(mL)を遠沈管の目盛から測定する。
6.1時間後、遠沈管を5回転倒して再分散し、残った沈殿物の量(mL)を遠沈管の目盛から測定し、下記の評価基準により、分散性・再分散性を評価した。
沈殿物量 0〜0.3mL 良い ○
沈殿物量 0.3mLより多く、0.8mL以下 やや悪い △
沈殿物量 0.8mLより多い 悪い ×
【0028】
分散性・再分散性の試験結果
【表3】

【0029】
本発明のドライシロップ剤は、比較例2の市販製剤と同様に最も重要な当初数分間における分散安定性は何れも良好である。また、実施例1においては、30分という比較的長時間後においても、やや悪い程度で、かなりの分散性を保っており、比較的長時間後の分散安定性にも優れており、この点では市販製剤より優れており、更に再分散性も良好である。実施例2及び3の製剤においてもほぼ市販製剤と同等の分散性及び再分散性を有する。一方、崩壊剤を含まない比較例1では、ドライシロップ剤で最も重要な当初の分散安定性が悪く、1分以内に沈降してしまうため、再分散性は良いがドライシロップ剤としては適さない。
上記の結果より、本発明のドライシロップ剤は比較例2の市販製剤とほぼ同等な分散性及び再分散性を有するものであることが判る。
また、本発明の中では崩壊剤としてカルメロースカルシウム(実施例1)が最も好ましく、クロスカルメロースナトリウムとCMS−Naの併用も好ましいことが判る。
【0030】
試験例2
粒度分布試験
実施例1において得られた製剤、及び、比較例2として市販のL−カルボシステインドライシロップ製剤(商品名ムコダインDS、杏林製薬株式会社製、L−カルボシステイン含量33.3%)を用いて、ふるい分け法によって粒度分布・含量均一性の試験を行った。粒度分布試験において使用した各ふるいのふるい番号(日本薬局方)及び目開き(μm)、並びに粒度分布試験の試験結果を表4に示した。
【0031】
【表4】

【0032】
表4より、実施例1の製剤については、60メッシュのふるいを通過しない比較的大きな粒子は24%とやや多いが、60メッシュのふるいを通過し、140メッシュのふるいを通過しない粒子の割合は70%であり、140メッシュのふるいを通過する細かな粒子の割合は、6%と非常に低い。従って、本願発明のドライシロップ剤は、大部分が140メッシュ以上で、60メッシュ通過の粒度範囲に入る、粒度の揃った均一な製剤であり、且つ、140メッシュのふるいを通過する細かな粒子の割合が非常に少ないことから、粉化の防止された製剤であることが判る。一方市販品は、140メッシュのふるいを通過する細かな粒子の割合は、26%とかなり高く、また、60メッシュより大きい粒子の割合も34%と高いことから、あまり粒度が揃った製剤とは言えない。
また、上記の結果と実施例から、本発明の製剤は転動流動層造粒装置により、粉化された細かい粒子の少ない均一な製剤を容易に得ることが出来るものであることが判る。
【0033】
試験例3
本願実施例1のドライシロップ剤及び比較例2の市販製剤を用いて、下記の試験方法により官能試験を行った。結果を表5に示す。
(1)官能試験・試験方法
1.L−カルボシステイン2500mg対応量の製剤を秤量した。
2.B型投薬瓶(容量60mL、ポリプロピレン製)に秤量した製剤を加えた。
3.精製水50mLを加え、ふたをして手で振とう分散し、試料液とした。
4.試料液10mLを用いて口腔内での服用感を健康な成人5名により測定した。
評価基準を下記の5段階評価で行った。
(2)評価基準
5:L−カルボシステインの酸味がほとんど感じられず服用感が良好
4:L−カルボシステインの酸味がわずか残る程度であり服用感がほぼ良好
3:L−カルボシステインの酸味が残るが普通に服用しうる
2:L−カルボシステインの酸味がかなり感じられ、服用感が悪い
1:L−カルボシステインの酸味が強く感じられ、服用感が非常に悪い
【0034】
(3)官能試験結果
【表5】

【0035】
上記の結果から、明らかなように本発明のL−カルボシステイン高含量ドライシロップ剤は、L−カルボシステインの含量が50%と高いにも関わらず、L−カルボシステインの含量が33.3%の比較例2の市販製剤に比して、酸味が抑えられ、良好な服用感を有する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のL−カルボシステインの高含量ドライシロップ剤は、市販製剤よりも高含量でありながら、調剤業務を容易に行うことができ、携帯する上にも便利で、L−カルボシステイン特有の酸味が軽減され、また処方量が少なく済むことから服用性に優れ、用時水に懸濁あるいは溶解して服用する際には分散性及び再分散性に優れるといった特徴を有し、なおかつ簡便な製造方法で製造可能でありながら粒度分布が整い含量均一性に優れるといった特徴も併有する、小児から高齢者まで服用可能な製剤である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−カルボシステイン、糖及び高甘味度甘味剤を含有し、L−カルボシステインの含量が製剤全体に対して40〜70質量%であることを特徴とするL−カルボシステインドライシロップ剤。
【請求項2】
糖含量が製剤全体に対して15質量%以上で、60質量%未満の範囲であり、且つL−カルボシステイン含量よりも少ないことを特徴とする請求項1に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
【請求項3】
更に、崩壊剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
【請求項4】
崩壊剤の含量が製剤全体に対して3〜7質量%であることを特徴とする請求項3に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
【請求項5】
糖が白糖である請求項1〜4の何れか1項に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
【請求項6】
高甘味度甘味剤としてアスパルテームを含む請求項1〜5の何れか1項に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
【請求項7】
高甘味度甘味剤がアスパルテーム及びサッカリンナトリウムの両者の併用である請求項6に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
【請求項8】
高甘味度甘味剤の含量が製剤全体に対して、2〜5質量%である請求項1〜7の何れか1項に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
【請求項9】
アスパルテームとサッカリンナトリウムの両者の使用割合がアスパルテーム100質量部に対して、サッカリンナトリウムが1〜10質量部である請求項7又は8に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
【請求項10】
崩壊剤としてカルメロースカルシウムを含有することを特徴とする請求項3〜9の何れか1項に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
【請求項11】
更に着香剤を含有することを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
【請求項12】
着香剤がアップルフレーバーである請求項11に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
【請求項13】
製剤全体に対して、L−カルボシステインを45〜60質量%、白糖を30質量%以上で、45質量%未満、アスパルテーム3〜4質量%、サッカリンナトリウム0.1〜0.3質量%、カルメロースカルシウム4〜6質量%及び残部その他の医薬添加剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
【請求項14】
結合剤としてヒドロキシプロピルセルロースを含む請求項1〜13の何れか一項に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
【請求項15】
流動層造粒法により造粒されることを特徴とする請求項1〜14に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。
【請求項16】
流動層造粒法が転動流動層造粒法であることを特徴とする請求項15に記載のL−カルボシステインドライシロップ剤。

【公開番号】特開2010−13357(P2010−13357A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172012(P2008−172012)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(000169880)高田製薬株式会社 (33)
【Fターム(参考)】