説明

高周波を用いる繊維製品乾燥機

【課題】優れた電磁遮蔽性能を有し、電磁界をタンク内に完全に閉じ込めることができ、安全性の高い、コンパクトな乾燥機を提供する。
【解決手段】本発明の繊維製品乾燥装置は、互いに電気的に絶縁された第1のタンク部分(41)と第2のタンク部分(42)により形成されている、繊維製品(P)を受け取るタンクと、前記第1のタンク部分と前記第2のタンク部分との間に、無線周波数にて振動性電界を発生させて、前記繊維製品中の水分子を加熱して蒸発させる働きをするように、前記タンクに接続された高周波電力発生器(10)と、を備えるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RF(無線周波数)波を使用して繊維製品を乾燥させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
RF(無線周波数)エネルギーを利用すれば、繊維製品などの誘電体材料を乾燥させることができる。電磁波を使用して乾燥させる原理は、無線周波数にて振動する電界を、このような誘電体材料に印加することである。これは、誘電体材料の分子中で、その振動周波数にて、分子振動を励起し、分子間摩擦によって内部熱利得(heat gain)を与えるものである。誘電体材料が濡れている場合、充分なエネルギーが吸収されたときに、誘電体材料中の水分子は、この熱利得により、液体から気体の相へ変化する。気相の水分子は、蒸発により誘電体材料から自由に逃げ出すことができ、その結果、誘電体材料が乾燥する。単位重量の水を蒸発させるのに必要な熱量は、一定の圧力において一定の量である。水を、所与の温度から蒸発点まで上げるのに必要な総熱量は、この水の総質量によって決まる。繊維製品工業において、乾燥によく用いられる無線周波数は、27MHzである。
【0003】
代表的なRF繊維製品乾燥機は、織糸パッケージ(yarn package)を、安全キャビネット(gallery(細長い部屋))へ運搬し、また、安全キャビネットから運搬するコンベヤ・ベルトにより構成されている。一組の平行な電極が、この細長い部屋の中に設置されており、RF波発生器を用いて電極間にRF電界が印加される。織糸パッケージは、この電界を通って運ばれて、その結果、織糸に閉じ込められた水分子が、二極性振動(dipolar vibration)し、内部熱エネルギー利得を得て、その結果、蒸発する。次に、蒸発した水分は、これらの電極の上に取り付けられた抽出ファンにより運び去られる。このような乾燥機の一例は、EP 0,651,590に示されている。
【0004】
普通、同軸ケーブルは、RF波発生器で発生させたRF波を、アノード電極に送るために使用されるが、一方、カソード電極は、接地のためにアースに接続される。これらのアノードは、アルミニウム棒(aluminium bar)などの長方形要素の形状を取ることがある。RF波発生器は、一般に、発振器と三極管を含み、電子管と呼ばれることがある。三極管は、3つの極、すなわち、アノード、カソード、グリッドを持っている。発振器は、グリッドに印加される信号を、所望の周波数にて発生させ、また、アノードとカソード間の高電圧が、その振動性電力を増幅して、乾燥機のアノードに送られる大電力RF波を供給する。電子管の代表的な寿命は、約2000時間である。このような電子管を繊維製品乾燥機に使用するときには、劣化動作を補償するために、3〜6ヶ月ごとに、この電子管を取り替える必要がある。RF波発生器は、冷却システムを必要とする。普通、空冷が用いられるが、ただし、電子管の寿命を延ばすには、水冷の方が効果的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
RF乾燥のために電子管を使用することの欠点は、電子管が、電気通信装置に、比較的に高いレベルの電磁妨害を起こしがちであることである。これは、飛行機の航空通信を危うくすることなど、多くの望ましくない影響を及ぼす。この電磁妨害は、コンベヤ・ベルトが通過する細長い部屋の開口からのRF波の漏れに起因するものである。
【0006】
さらに、電子管の動作周波数を制御することにも難点がある。27MHzという一定の動作周波数では、乾燥機の電極と電極との間の間隔のいかなる変化も補償するために、電力調整器(power regulator)を必要とする。例えば可変容量結合回路からの充分な電力調整は実現しにくく、したがって、一定の電極設計は、特定の用途を除き、めったに用いられない。
【0007】
それゆえ、改良されたRF繊維製品乾燥機が必要である。
【0008】
よって、本発明の第1の態様は、互いに電気的に絶縁された第1のタンク部分と第2のタンク部分により形成されている、繊維製品を受け取るタンクと、この第1のタンク部分と、この第2のタンク部分との間に、無線周波数にて振動性電界を発生させて、これらの繊維製品中の水分子を加熱して、蒸発させる働きをするように、タンクに接続された高周波電力発生器とを備える、繊維製品を乾燥させる装置を対象としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、高周波繊維製品乾燥機のうち、繊維製品容器(タンク)を成す部分もアノードおよびカソードとして使用して、電界を繊維製品に印加することで乾燥をもたらす高周波繊維製品乾燥機を提供する。このような配置構成は、コンパクトな乾燥機を提供する。さらに、その配置構成により、優れた電磁遮蔽は、電磁界をタンク内に完全に閉じ込めることができるために、妨害を減らし、また、安全性を高めることができる。
【0010】
上記第1のタンク部分は、タンクの壁面を含むことがあり、また、上記第2のタンク部分は、タンクに受け取られる繊維製品を支えるために、タンク内に位置づけられたスピンドル(糸巻き心、spindle)を含むことがある。タンクとスピンドルを含む乾燥機は、様々な繊維製品処理用途、特に繊維製品染色にすでに常用されており、したがって、既存の設計を改良することで、本発明による乾燥機を容易に提供できる。さらに、この乾燥機用のタンクとスピンドルの配置は、コンベヤ型の高周波乾燥機と比較して、アノードとカソードの間隔を正確に調整する必要もなく、一様な繊維製品乾燥能力を呈することがわかった。
【0011】
一実施形態では、高周波電力発生器がスピンドルに接続され、このスピンドルが、電界を発生させる目的で、アノードとして働くようにしている。それゆえ、タンクの壁面は、カソードとして働く。好ましくは、この壁面を電気的に接地する。こうすれば、乾燥機の周りに専用シールドを施す必要もなく、充分な電磁遮蔽が与えられる。
【0012】
この高周波電力発生器は、半導体式高周波電力発生器でも良い。半導体式高周波電力発生器は、従来の電子管式RF発生器よりも動作寿命がさらに長く、したがって、メインテナンス費用が削減される。効率も良くなる。
【0013】
一実施形態により、高周波電力発生器は、高周波信号を発生させるように作動するドライバ・ユニットと、ドライバ・ユニットから高周波信号を受け取って、この高周波信号を増幅するように作動する1つまたは複数の増幅器ユニットとを含む。このようなモジュラ設計は、メインテナンスを向上させ、かつ簡単にする。これは、それらのユニットを個別に手入れおよび取替えを行うことができるからである。そのような設計はまた、多くの熱発生問題を回避するか、あるいは減らす都合のよい形式で、繊維製品乾燥を行うのに必要な大電力を与える。空冷で充分であり、これは、水冷よりも好ましい。
【0014】
高周波電力発生器はさらに、ドライバ・ユニットから高周波信号を受け取って、この高周波信号を、並列に配置された少なくとも2つの増幅器ユニットの間で配分するように作動するディバイダ・ユニットと、増幅された高周波信号を増幅器ユニットから受け取って、その高周波信号を組み合わせるように作動するコンバイナ(combiner)ユニットも含むことがある。並列増幅により、1つの増幅段階において、高周波大電力を直接に発生させることができる。さらに、高周波電力発生器の動作、したがって乾燥装置の動作は、1つまたは複数の増幅器ユニットの故障の場合であっても、さらに、故障したユニットの取替えの間にも、続けることができる。それにより、乾燥機の運転停止時間が減らされるから、運転費のコストが向上する。
【0015】
さらに、ドライバ・ユニットと増幅器ユニットの1つまたは複数は、これらのユニットの動作を監視するように作動する組込み試験装置も備えることもある。これは、モジュラ半導体構成のさらなる利点である。これらの様々なユニットまたはモジュールは、どんな問題も素早く識別するように、個々に、かつ絶え間なく監視して、メインテナンスを効率的に実行することができる。
【0016】
タンクは、蒸発した水分子を取り出すための出口を備えることがある。これは、繊維製品が湿った外気中にとどまらず、また、水分子が、さらに容易に、これらの繊維製品から逃げ出すことができるので、乾燥処理を向上させる。さらに、このタンクは、空気をタンクに導き入れるための入口も備えることがある。水蒸気を含んだ空気が除去されて、新鮮な空気がタンクに加えられると、タンク内の圧力がだいたい一定に保たれ、かつ、空気の循環を向上し、さらに乾燥処理を向上させる。
【0017】
有利な一実施形態では、この装置はさらに、タンクに受け取られた繊維製品を染色するように構成されている。これは、タンク配置が、染色などの他の繊維製品処理用途への使用に適しているから、繊維製品を入れておくタンクを形成しているアノードとカソードを用いて、高周波乾燥を実行すれば、とりわけ可能となる。パッケージ染色タンクなどの既存のタンク設計は、本発明を適合し、よって、染色と乾燥の統合した装置を提供するように、容易に改造できる。タンクを形成している上記部分を、染色処理にも乾燥処理にも最適化できる新たな装置設計も可能である。例えば、このタンクは、染料液入口と染料液出口を備え、その染料液入口と染料液出口を介して、染料液をタンクに流通させて、タンクに受け取られた繊維製品を染色することがある。
【0018】
本発明は広範囲の繊維製品に適用でき、さらに、特定の例において、高周波乾燥を許容し、かつ、タンク内に容易に収容できる他の材料にも適用できるが、この装置は、染色された織糸を乾燥させるように構成されている。よって、これらの繊維製品は、1つまたは複数の織糸パッケージを含むことがある。
【0019】
本発明の第2の態様は、第1のタンク部分と、第1のタンク部分から電気的に絶縁された第2のタンク部分とにより形成されているタンク内に繊維製品を配置することと、第1のタンク部分と第2のタンク部分との間に、無線周波数での振動性電界を発生させて、繊維製品中の水分子を加熱して、蒸発させることを含む、繊維製品を乾燥させる方法を対象としている。
【0020】
他の実施形態および例は、併記の特許請求の範囲に述べられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明をより良く理解するために、また、本発明を実施する方法を示すために、例示として、添付図面を参照する。
本発明は、大電力高周波電界を用いて繊維製品を乾燥させる装置または装置の新規設計を提案している。本発明による装置が呈する乾燥能力により、コンパクトで、かつ安全な装置を提供することができる。さらに、この装置は、繊維製品の染色と乾燥が、ただ1つの装置で実行できるように、設計されている。
【0022】
繊維製品を染色した(あるいは、代りの処理手法では、別様に濡らした)後で、それらの繊維製品を乾燥させる必要がある。高周波(RF)電力は、染色に常用されるが、ただし、RF周波数を用いる繊維製品染色は、大電力を必要とする。このような大電力は、RF波を発生させる電子管を使用して得られることがあるが、ただし、電子管、および、電子管の使用が提案された乾燥機の設計には、欠点がある。電子管に代わる別法は、半導体技術である。これは、携帯電話や無線ネットワークなどの電気通信用途にRF波を発生させるのに常用される。しかしながら、半導体技術は、小電力においてのみ動作する。繊維製品乾燥に必要な大電力を得るために、本発明は、アレイ状に配列された多数のエミッタを使用して、所要の電力レベルをもたらす場合に発生するかもしれない熱放散やホットスポット(hot spot、過熱点)の問題を避けることを目的とした半導体式パワートランジスタを含むRF発生器を提案している。
【0023】
図1は、本発明の実施形態による繊維製品乾燥機への使用に適した半導体式RF発生器の模式図を示している。一連の半導体ユニットを含むRF発生器10は、所定の無線周波数にて、電界振動をもたらす働きをする。無線周波数に関する国際ルールを守るために、この周波数は、通常、繊維製品乾燥に対して、27.12MHzに決められることになる。RF発生器10は、所望の無線周波数にて信号を発生するように作動する周波数シンセサイザ11を含む。この合成された周波数信号をソース・ドライバ・ユニット12に供給し、そこで、ソース・ドライバ・ユニット12を使用して、RF波電力を発生させる。この電力は、1:nのディバイダ13に渡されて、ディバイダ13は、この電力を、複数の増幅器ユニット14の間で均等に配分する。それぞれの増幅器ユニット14は、RF波電力のうちのその均等部分を増幅し、その増幅された電力をn:1のコンバイナ15に渡して、すべての増幅器14の出力を組み合わせて、ただ1つの大電力RF波出力16を形成する。ソース・ドライバ・ユニット12と増幅器ユニット14は、例えば、1kWのユニットであることもあるが、ただし、必要に応じて、それ以外のサイズのユニットも使用できる。所与のサイズの増幅器ユニットでは、出力16で必要とされる電力により、n個の増幅器ユニット14が選択されることになる。よって、適宜に、1つまたは複数の増幅器を含めることができる。ただ1つの増幅器を用いる構成は、上記のディバイダやコンバイナを省いてもよい。さらに、増幅器の並列配置は有利ではあるが、それらの並列増幅器を、直列にした増幅器に代えてもよい。
【0024】
図2は、ソース・ドライバ・ユニット12の一実施形態の模式図を示している。ソース・ドライバ・ユニット12は、直流(DC)電力を供給する電源ユニット22(この例では、1.5kWの電源)から電力が供給されるドライバ21(この例では、1kWのドライバ)を含む。ドライバ21は、RF発生器10の周波数シンセサイザ11から、周波数入力24を受け取って、RF波電力出力25を出力する。したがって、ソース・ドライバ・ユニット12は、周波数入力24をRF電力出力25に変換する。ソース・ドライバ・ユニット12はまた、組込み試験機器(BITE)ユニット23も含んで、ソース・ドライバ・ユニット12の動作を監視する。BITEユニットは、さらに大きいシステムに恒久的に搭載され、かつ使用されて、単独で、あるいは外部試験機器と関連させて、このシステムの全部または一部を試験する装置である。一組の計器またはスイッチなどの単純な装置から、コンピュータ制御式診断システムなどの複雑な装置に及ぶ多くのタイプのBITEユニットが利用できる。
【0025】
図3は、増幅器ユニット14の一実施形態の模式図を示している。増幅器ユニット14は、DC電力を供給する電源ユニット32(この例では、1.5kWの電源)から電力が供給される高周波増幅器31(この例では、1kWの増幅器)を含む。高周波増幅器31は、入力として、1:nのディバイダ13からRF波34を受け取って、それを増幅し、増幅されたRF波35をn:1のコンバイナ15に出力する。増幅器ユニット14はまた、その動作を監視するために、BITEユニット33も含む。
【0026】
図1のRF発生器は、電力発生やメインテナンスの作業において、高い柔軟性を与えるモジュラ設計である。これらの増幅器ユニットは並列に配置される。したがって、増幅器ユニットのどれかが故障した場合でも、RF発生器は、電力レベルは下がるが、動作を続けることができる。個々の増幅器ユニットのメインテナンスと取替えは、他のユニットの動作を中断させることなく、別々に行うことができる。したがって、RF発生器は、停止する必要はない。さらに、モジュラ設計は、このシステムの全域に、よりよい熱分布を与え、それゆえ、RF発生器の空冷が、受入れ可能な冷却結果をもたらすことになる。空冷は、さらに複雑で、かつ危険な(電気環境において)水冷よりも好ましい。しかしながら、水冷、または他の冷却法であっても、要望があれば、その方法を本発明に使用してもよい。
【0027】
モジュラ動作を容易ならしめるために、ドライバ・ユニットと増幅器ユニットは、BITEユニットで取り囲まれることがあり(図2と図3に示される通り)、それにより、それらのドライバ・ユニットと増幅器ユニットの個々の自己監視および動作が可能になる。それにより、特定ユニットの故障を、簡単に、かつ素早く識別して、必要なメインテナンスを実行できるようにしている。
【0028】
半導体技術を使用してRF発生器を製作すれば、電子管RF発生よりも優れたいくつかの利点が与えられる。重要なことは、半導体式RF発生器の寿命が、電子管RF発生器の寿命の数千倍までであり得ることであり、それゆえ、メインテナンス費用が大幅に削減される。メインテナンスはまた、上述のモジュラ半導体構成を用いても容易となる。さらに、半導体式RF発生器は、電子管のものよりも効率が高くなっており、運転費コストも低減する。
【0029】
図1のRF発生器、または代替RF発生器は、大電力振動性電界を繊維製品に印加して、水分子の加熱および蒸発による乾燥を実現するために、使用される。本発明により、この電界は、専用の電極を介してではなくて、乾燥機のうち繊維製品を保持することを目的とする部分の構成要素を電極として使用することで、印加される。特に、乾燥処理の間、繊維製品を支持するスピンドルは、RF発生器に接続され、よって、アノードとして働き、また、このスピンドルが入れられている繊維製品受取り用タンクは、カソードとして働く。それゆえ、好ましくは、このタンクは接地される。このスピンドルは、タンクから電気的に絶縁される。RF発生器からスピンドルにRF波を印加することにより、スピンドルと、それを取り巻くタンクとの間に、振動性の電界が与えられる。それゆえ、スピンドル上に保持された繊維製品は、電界中に位置づけられて、乾燥する。
【0030】
図4は、乾燥機40の部分切開図を示し、また、図5は、乾燥機40の下部のクローズアップ図を示している。これらの図を参照すると、乾燥機40は、直立円筒体の形を持つ第1のタンク部分または上部41を含む。これは、タンクの側壁を形成している。乾燥機40のベース部分42は、タンクの下端を閉鎖し、一層の電気的に絶縁する材料43により、上部41から隔てられている。上部41とベース部材42には、必要な機能を与えるのに適した材料であればどんなものでも使用でき、例えば、鋼(好ましくは、ステンレス鋼)であり、同様に、絶縁層43では、例えばテフロン(RTM)であるかもしれない。直立のスピンドル48(同様に、例えば鋼またはステンレス鋼でできている)は、ベース部分42から、タンクの長手方向の中心線に沿って、上方へ延びている。スピンドル48は、直接に固定されるか、あるいは一体成形されることにより、ベース部分42に電気的に接続される。スピンドル48とベース部分42はともに、第2のタンク部分を構成し、また、第1のタンク部分と第2のタンク部分がともに、タンクを形成している。
【0031】
乾燥機40は、RFケーブル接続部を備えている。第1の接続部44は、上部41をアースに接続して、接地し、したがって、上部41はカソードとして働くことができる。第2の接続部45は、下部42とスピンドル48を、図1に示されるようなRF発生器(これらの図には示されてない)に接続して、スピンドル48がアノードとして働くことができるようにしている。金属製の上側カバー46と金属製の下側カバー47は、タンクのベースの周りに配置され、接続部44、接続部45を取り巻き、電磁遮蔽する。
【0032】
運転の際は、織糸パッケージPのように乾燥する予定の繊維製品は、スピンドル48上に収められ、よって、タンクに収容される。RF発生器を動作させて、RF波電力をスピンドル48に印加し、したがって、RF波が、スピンドル48から発して、織糸パッケージPを通って、上部41、またはタンクの壁面に放出する。したがって、織糸パッケージPは、スピンドル48とタンク壁面との間に広がっている振動性の電界中に置かれ、織糸中の水分子は、RF周波数(好ましくは、27.12MHz)にて振動する。これは、加熱、または内部運動エネルギーの増加をもたらせ、蒸発により、織糸から水分子を逃げ出させる。それにより、織糸パッケージPは乾燥する。
【0033】
RFアノードおよびカソードとしてスピンドルおよびタンクを使用すれば、従来の電子管RF繊維製品乾燥機と比較して、繊維製品が一様に乾燥させるのに、動作中に、アノードとカソードの間隔を正確に調整する必要性が少なくなるか、あるいは、無くなる。
【0034】
水蒸気は、乾燥機40の内部から空気を取り出すファンまたはブロワを使用して、タンクの上の方に付けられた出口49を介して、乾燥機40から除去される。入口50は、出口49から除去される上記水を含んだ空気の入替えのために、新鮮な空気をポンプで乾燥機40に送り込むように、タンクのベースに設けられている。出口49は、汚染物質または異物がタンクに入り込まないようにするために、1つまたは複数のエアフィルタ(図示されてない)を備えることがある。
【0035】
繊維製品の乾燥させすぎると繊維製品をいためる可能性があるため、そのような乾燥させすぎを防止するべく、水分監視システム(図示されてない)を備えて、水分蒸発(乾燥)率を監視および管理することがある。水分は、タンク出口から取り出された空気中の水の濃度を測定すること、あるいは、乾燥処理の間、繊維製品の目方を量ることなど、任意の適切な方法により、監視されることがある。この監視システムは、RF発生器にリンクされて、所望の繊維製品乾燥レベルに達すると、この電界をオフ状態に切り替えることができる。
【0036】
図4と図5に示される乾燥機の設計は、充分なRF遮蔽を提供し、よって、電磁妨害を減らすものである。タンクは、密閉容器であって、接地されており、それゆえ、動作の間、RF波は、周囲の環境にはまったく漏れ出さない。これは、RFコネクタ44、45を、金属製のカバー46、47で遮蔽することで促進される。さらに、RF発生器のドライバ・ユニットと電力増幅器ユニットは、好ましくは、金属製の外殻(シェル)またはケーシングにも収容されて、さらなる遮蔽を実現し、しかも、安全で、かつ、放射のない動作環境を持続させる。
【0037】
タンク壁面をカソードとして使用することにより、遮蔽の点から上記の利点が与えられるが、本発明は、別法として、タンク壁面を、アノードとしてRF発生器に接続し、かつ、スピンドルをカソードとして働くように接地することで、実施される場合がある。このような配置構成では、周囲にRF波が漏れないようにしたければ、装置全体の周りに追加シールド(遮蔽)を設けることが必要になろう。
【0038】
さらなる実施形態では、本発明による乾燥機は、繊維製品染色にも使用されて、染色と乾燥の統合した装置を提供することがある。これは、繊維製品保持のスピンドルをタンク内に含む、提案された装置設計によって可能になる。このような配置構成は、繊維製品染色にすでに用いられている。織糸パッケージなどの繊維製品を、圧力タンク内に位置づけられたスピンドルに取り付け、また、染料液をタンクに循環させて、繊維製品を所望の色および色合いに染色する。図4と図5に示されるものとして構成される装置を考えると、染料液は、染料液をスピンドルの中へ注ぎ上げることで、タンク内に導くことができる。スピンドルの開口により、染料液は、染料液が吸収される繊維製品に対して、流出し、流入することが可能となる。残りの染料液は、タンクの本体に流入し、またタンクから除去されて、同一装置内で再循環するか、あるいは、異なる装置に流通する。図5を参照すると、管50と管51が、弁およびポンプを含む管路網(pipe network)を介して染料液槽に連結されている場合には、これらの管を使用して、染料液を追加および除去することができる。染色処理が完了して、すべての染料液がタンクから排出されさえすれば、RF発生器と空気循環システムを動作させることで、乾燥処理を活動させられる。このような目的で、吸込管50は、吸込管50を、染料液管路網か、あるいは、上述のように、タンクに新鮮な空気を導くエアポンプに連絡するように作動する弁を備えることもある。このようにして、染色と乾燥を両方とも、同一装置内で、順次に達成できる。これにより、これら2つの処理に対して、別々の装置を持つ必要がなくなり、さらに、染色機から乾燥機への繊維製品の手間の掛かる運搬も排除される。
【0039】
染料液が、繊維製品を保持するタンクの周りで循環する繊維製品染色用の装置およびシステムの一例が英国特許第2,404,199号に示されている。
【0040】
本発明は、従来の染色装置の設計を使用して、RF乾燥機を製作できるように提案しているから、既存の染色機は、単にRF発生器を染色機の関連部分に接続することで、染色と乾燥の統合した機能を提供するように、容易に改造できる。空気循環システムはまた、蒸発した水を取り出すように、提供されるべきである。半導体式RF発生器は、多くの利点を与えるから好ましいが、好まれる場合には、電子管発生器を用いて、同一の乾燥効果を達成できる。
【0041】
本発明は、図4と図5に示される装置の設計には限定されない。タンクおよびスピンドルの代替形状や代替位置を持つ他の装置構成も使用されてもよい。この装置は、染色と乾燥の両方、または乾燥だけを提供するように構成されてもよいが、いずれにしても、半導体式または電子管式のRF発生を使用できる。同様に、図1〜図3に示されるRF発生器の実施形態は、模範的なものにすぎない。半導体式RF発生器の他の設計が、当業者には容易に明らかになろう。また、このような他の設計が、代りに使用されてもよい。さらに、この装置は、様々な形式およびタイプの繊維製品の処理を目的とすることもある。本発明は、図4と図5に示される織糸パッケージには限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に使用する半導体式高周波電力発生器の模式図を示す。
【図2】図1の半導体式高周波電力発生器に含まれることあるソース・ドライバ・ユニットの一実施形態の模式図を示す。
【図3】図1の半導体式高周波電力発生器に含まれることある増幅器ユニットの一実施形態の模式図を示す。
【図4】本発明の一実施形態による繊維製品乾燥機の断面斜視図を示す。
【図5】図4の繊維製品乾燥機の下部のクローズアップ断面斜視図を示す。
【符号の説明】
【0043】
10 高周波電力発生器
12 ドライバ・ユニット
13 ディバイダ・ユニット
14 増幅器ユニット
15 コンバイナ・ユニット
23、33 組込み試験装置
40 繊維製品を染色する装置
41 第1のタンク部分
42 第2のタンク部分
48 スピンドル
49 出口
50 染色液入口
51 染色液出口
P 繊維製品、織糸パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに電気的に絶縁された第1のタンク部分(41)と第2のタンク部分(42)により形成されている、繊維製品(P)を受け取るタンクと、
前記第1のタンク部分と前記第2のタンク部分との間に、無線周波数にて振動性電界を発生させて、前記繊維製品中の水分子を加熱して蒸発させる働きをするように、前記タンクに接続された高周波電力発生器(10)と、
を備える、繊維製品乾燥装置(40)。
【請求項2】
前記第1のタンク部分が前記タンクの壁面であり、また、前記第2のタンク部分が、前記タンクに受け取られる繊維製品を支えるために、前記タンク内に位置づけられたスピンドル(48)である請求項1に記載の繊維製品乾燥装置。
【請求項3】
前記高周波電力発生器が前記スピンドルに接続され、
前記スピンドルが、前記電界を発生させる目的で、アノードとして働くようにしている請求項2に記載の繊維製品乾燥装置。
【請求項4】
前記壁面が電気アースに接続される請求項3に記載の繊維製品乾燥装置。
【請求項5】
前記高周波電力発生器が、半導体式高周波電力発生器である請求項1ないし4に記載の繊維製品乾燥装置。
【請求項6】
前記高周波電力発生器が、
高周波信号を発生させるように作動するドライバ・ユニット(12)と、
前記ドライバ・ユニットから前記高周波信号を受け取って、前記高周波信号を増幅するように作動する1つまたは複数の増幅器ユニット(14)と、を備える請求項5に記載の繊維製品乾燥装置。
【請求項7】
前記高周波電力発生器が、
前記ドライバ・ユニットから前記高周波信号を受け取って、前記高周波信号を、並列に配置された少なくとも2つの増幅器ユニットの間で配分するように作動するディバイダ・ユニット(13)と、
前記増幅された高周波信号を前記増幅器ユニットから受け取って、前記高周波信号を組み合わせるように作動するコンバイナ・ユニット(15)と、を備える請求項6に記載の繊維製品乾燥装置。
【請求項8】
前記ドライバ・ユニットと前記増幅器ユニットの1つまたは複数が、前記ユニットの動作を監視するように作動する組込み試験装置(23、33)を備える請求項6または7に記載の繊維製品乾燥装置。
【請求項9】
前記タンクが、蒸発した水分子を取り出すための出口(49)を備える請求項1ないし8に記載の繊維製品乾燥装置。
【請求項10】
前記タンクが、空気を前記タンクに導き入れるための入口(50)を備える請求項9に記載の繊維製品乾燥装置。
【請求項11】
前記タンクに受け取られた繊維製品を染色するように構成されている請求項1ないし10に記載の繊維製品乾燥装置。
【請求項12】
前記タンクが、染料液入口(50)と染料液出口(51)を備え、前記染料液入口と前記染料液出口を介して、前記染料液を前記タンクに循環させて、前記タンクに受け取られた繊維製品を染色する請求項11に記載の繊維製品乾燥装置。
【請求項13】
前記繊維製品が、1つまたは複数の織糸パッケージ(P)である請求項1ないし12に記載の繊維製品乾燥装置。
【請求項14】
第1のタンク部分(41)と、前記第1のタンク部分から電気的に絶縁された第2のタンク部分(42)とにより形成されているタンク内に繊維製品(P)を配置するステップと、
前記第1のタンク部分と前記第2のタンク部分との間に、無線周波数での振動性電界を発生させて、前記繊維製品中の水分子を加熱して、蒸発させるステップと、
を含む、繊維製品を乾燥させる方法。
【請求項15】
前記第1のタンク部分が前記タンクの壁面であり、また、前記第2のタンク部分が、前記タンク内に配置された繊維製品を支えるために、前記タンク内に位置づけられたスピンドル(48)である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記スピンドルが、前記電界を発生させる目的で、アノードとして使用される請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記壁面が電気アースに接続される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記タンクに接続された半導体式高周波電力発生器(10)を作動させて、前記振動性電界を発生させるステップを含む請求項14ないし17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
前記半導体式高周波電力発生器が、高周波信号を発生させるように作動するドライバ・ユニット(12)と、前記ドライバ・ユニットから前記高周波信号を受け取って、前記高周波信号を増幅するように作動する1つまたは複数の増幅器ユニット(14)と、を備える請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記半導体式高周波電力発生器が、前記ドライバ・ユニットから前記高周波信号を受け取って、前記高周波信号を、並列に配置された少なくとも2つの増幅器ユニットの間で配分するように作動するディバイダ・ユニット(13)と、前記増幅された高周波信号を前記増幅器ユニットから受け取って、前記高周波信号を組み合わせるように作動するコンバイナ・ユニット(15)と、を備える請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ドライバ・ユニットと前記増幅器ユニットの1つまたは複数が、前記ユニットの動作を監視するように作動する組込み試験装置(23、33)を備える請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記タンクから前記蒸発した水分子を取り出すステップを含む請求項14ないし21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
前記蒸発した水分子を取り出している間に、空気を前記タンクに導き入れるステップを含む請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記タンク内に前記繊維製品を配置するステップと前記振動性電界を発生させるステップとの間に、
前記タンクに染色液を追加して、前記繊維製品を染色するステップと、
前記繊維製品された後、未使用の染色液を除去するステップと、
を含む請求項14ないし23のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
前記繊維製品が、1つまたは複数の織糸パッケージ(P)を含む請求項14ないし24のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−179948(P2007−179948A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−379293(P2005−379293)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(506003668)ファルマー・インヴェストメンツ・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】