説明

高周波アシスト記録用磁気ヘッドおよびそれを用いた磁気記録装置

【課題】スピントルク発振子の反転時間を可及的に短くすることのできる高周波アシスト記録用磁気ヘッドを提供することを可能にする。
【解決手段】主磁極22と、主磁極と磁気回路を形成する磁気シールド24と、主磁極と磁気シールドとの間に設けられ、第1および第2磁性層10d、10bと、第1磁性層10dと第2磁性層10bとの間に設けられる中間層10cとを有する積層体からなり、第1および第2磁性層間に電流を通電して第2磁性層10bから高周波磁界を発生するスピントルク発振子10と、を備え、第1磁性層10dは、保持力が200Oe以下の磁性材料で形成されており、第1磁性層の積層面に略面直方向の断面積が、第2磁性層の積層面に略面直方向の断面積の4倍以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高記録密度、高記録容量、高データ転送レートのデータストレージの実現に好適な高周波アシスト記録用磁気ヘッドおよび高周波アシスト磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1990年代においては、MR(Magneto-Resistive effect)ヘッドとGMR(Giant Magneto-Resistive effect)ヘッドの実用化が引き金となって、HDD(Hard Disk Drive)の記録密度と記録容量が飛躍的な増加を示した。しかし、2000年代に入ってから磁気記録媒体の熱揺らぎの問題が顕在化してきたために、記録密度増加のスピードが一時的に鈍化した。それでも、水平磁気記録方式よりも原理的に高密度記録に有利である垂直磁気記録方式が2005年に実用化されたことが牽引力となって、昨今、HDDの記録密度は年率約40%の伸びを示している。
【0003】
また、最新の記録密度実証実験では400Gbits/inchを超えるレベルが達成されており、このまま堅調に進展すれば、2012年頃には記録密度1Tbits/inchが実現されると予想されている。しかしながら、このような高い記録密度の実現は、垂直磁気記録方式を用いても、再び熱揺らぎの問題が顕在化するために容易ではないと考えられる。
【0004】
この問題を解消し得る記録方式として「高周波磁界アシスト記録方式」が提案されている。高周波磁界アシスト記録方式では、記録信号周波数より十分に高い、磁気記録媒体の共鳴周波数付近の高周波磁界を局所的に印加する。この結果、磁気記録媒体が共鳴し、高周波磁界を印加された磁気記録媒体の保磁力Hcは、元々の保磁力の半分以下となる。このため、記録磁界に高周波磁界を重畳することにより、より高い保磁力Hcかつ高い磁気異方性エネルギーKuの磁気記録媒体への磁気記録が可能となる(例えば、特許文献1)。しかし、この特許文献1に開示された手法ではコイルにより高周波磁界を発生させており、高密度記録時に効率的に高周波磁界を印加することが困難であった。
【0005】
そこで高周波磁界の発生手段として、スピントルク発振子を用いる方式が提案されている(例えば、特許文献2および3)。この特許文献2および3に開示された技術においては、スピントルク発振子は、スピン注入層と、非磁性層と、磁性層とを、一対の電極層で挟んだ構造を有している。一対の電極層を通じてスピントルク発振子に直流電流を通電すると、スピン注入層によって生じたスピントルクにより、磁性層の磁化が強磁性共鳴を生じる。その結果、スピントルク発振子から高周波磁界が発生することになる。
【0006】
スピントルク発振子のサイズは数十ナノメートル程度であるため、発生する高周波磁界はスピントルク発振子の近傍の数十ナノメートル程度に局在する。さらに高周波磁界の面内成分(水平成分)により、垂直磁化した磁気記録媒体を効率的に共鳴させることが可能となり、磁気記録媒体の保磁力を大幅に低下させることが可能となる。この結果、主磁極による記録磁界と、スピントルク発振子による高周波磁界とが重畳した部分のみで高密度磁気記録が行われ、高保磁力Hcかつ高磁気異方性エネルギーKuの磁気記録媒体を利用することが可能となる。このため、高密度記録時の熱揺らぎの問題を回避できる。
【特許文献1】米国特許第6011664号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0023938号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0219771号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、スピントルク発振子は、主磁極と磁気シールドで挟まれた位置に配置される。このような、主磁極と磁気シールドで挟まれた位置にスピントルク発振子が配置されるスピン反転タイプのスピントルク発振子においては、後述するように、スピントルク発振子の反転に0.3ナノ秒〜0.5ナノ秒の時間がかかる。いま3.5インチのハードディスクでは最高使用周波数が1ギガヘルツ程度であり、スピン反転に消費される時間は使用上大きな問題になる。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、スピントルク発振子の反転時間を可及的に短くすることのできる高周波アシスト記録用磁気ヘッドおよびこの磁気ヘッドを用いた磁気記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様による高周波アシスト記録用磁気ヘッドは、主磁極と、前記主磁極と磁気回路を形成する磁気シールドと、前記主磁極と前記磁気シールドとの間に設けられ、第1および第2磁性層と、前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられる中間層とを有する積層体からなり、前記第1および第2磁性層間に電流を通電して前記第2磁性層から高周波磁界を発生するスピントルク発振子と、を備え、前記第1磁性層は、保持力が200Oe以下の磁性材料で形成されており、前記第1磁性層の積層面に略面直方向の断面積が、前記第2磁性層の積層面に略面直方向の断面積の4倍以上であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の第2の態様による高周波アシスト記録用磁気ヘッドは、主磁極と、前記主磁極と磁気回路を形成する磁気シールドと、前記主磁極と前記磁気シールドとの間に設けられ、第1および第2磁性層と、前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられる中間層とを有する積層体からなり、前記第1および第2磁性層間に電流を通電して前記第2磁性層から高周波磁界を発生するスピントルク発振子と、を備え、前記第1磁性層は、Co、Ni、Feの内、少なくとも1つの元素を主成分とした磁性材料で形成されており、前記第1磁性層の積層面に略面直方向の断面積が、前記第2磁性層の積層面に略面直方向の断面積の4倍以上であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の第3の態様による磁気記録装置は、磁気記録媒体と、第1または第2の態様による高周波アシスト記録用磁気ヘッドと、前記磁気記録媒体と前記磁気ヘッドとが浮上または接触の状態で対峙しながら相対的に移動するように制御する移動制御部と、前記磁気ヘッドを前記磁気記録媒体の所定記録位置に位置するように制御する位置制御部と、前記磁気ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への書き込み信号および前記磁気記録媒体からの読み出し信号を処理する信号処理手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スピントルク発振子の反転時間を可及的に短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明に至った経緯について説明する。
【0014】
一般に、スピントルク発振子を有する磁気ヘッドは媒体に対向する面に垂直に切断した断面で見た場合、例えば図1に示すような形態で実装される。すなわち、磁気ヘッド1は、基板5上に形成された再生部30と、この再生部30上に形成された記録部20とを有し、基板5の面に垂直な方向の表面が、磁気記録媒体100に対向する媒体対向面(以下、ABS面ともいう)となっている。また、磁気記録媒体100は、裏打ち層101上に垂直磁気記録層102が設けられた構成となっている。なお、図1は、磁気記録媒体100の表面に略垂直な面で切断した磁気ヘッドの断面図である。
【0015】
再生部30は、再生素子32と、この再生素子32を挟みかつ再生素子32と電気的に接続されて基板5に平行となるように形成された一対の電極34a、34bとを備えている。この一対の電極34a、34bには、再生素子22に電流を流すための電源38が接続される。
【0016】
記録部20は、主磁極(記録磁極)22と、磁気シールド24と、絶縁層26と、主磁極22を励磁する励磁コイル28とを備えている。主磁極22および磁気シールド24は、ABS面側においてはライトギャップgを空けて配置され、このライトギャップgにスピントルク発振子10が設けられている。このスピントルク発振子10は、主磁極22および磁気シールド24と電気的に接続されている。そして、ABS面と反対側の端部には絶縁層26が設けられており、この端部においては、主磁極22と磁気シールド24は電気的に絶縁されが、磁気的には接続されている。そして、主磁極22と磁気シールド24は、スピントルク発振子10に電流を流すために、電源29に電気的に接続される。
【0017】
一般的に垂直磁気記録方式の磁気ヘッドにおいては、主磁極22のトレーリング側(磁気記録媒体100の進行方向側)に磁気シールド24を配置するのが一般的である。しかし、後述するようにスピントルク発振子10は主磁極22の近傍に配置する必要がある。したがって、図1に示すように、スピントルク発振子10は、主磁極22と磁気シールド24で挟まれたギャップgに挿入される。
【0018】
次に、スピントルク発振子10を主磁極22の近傍に配置する必要性を述べる。まず、高周波磁界でアシストしない通常の垂直記録方式を、図2(a)乃至図2(e)を参照して説明する。図2(a)、2(b)は、磁気記録媒体100の表面に略垂直な面で切断した磁気ヘッドの断面図である。図2(a)は図1のスピントルク発振素子10を除いた記録部20のみを模式的に示している。励磁コイル28に電流を流すと、主磁極22の磁化23は例えば下向き(主磁極22から磁気記録媒体100に向かう方向)となる。また、このとき、主磁極22からギャップgを通って磁気シールド24に向かうギャップ磁界25が生じる。そして、主磁極22の直下の磁気記録媒体100に、下向きに磁界の大きい部位が発生する。この内、磁気記録媒体100の磁化110を反転させる、より大きな磁界部分112をライトバブルと呼ぶことにする。主磁極22の媒体100の移動方向の長さはおおよそ200nm程度なので、ライトバブル112もほぼ200nmの大きさを持つ。励磁コイル28の電流の流れる方向(極性)が変わらない間は、磁気記録媒体100が移動していくと、磁気記録媒体100のライトバブル112を通過した部分が主磁極22の磁化23と同じ方向に磁化される(図2(b))。励磁コイル28の極性が逆になると、ライトバブル112中の磁化110がそれ以前とは逆方向に磁化され、このとき始めてライトバブル112のトレーリング側に一つの記録パターン114が形成される(図2(c))。励磁コイル28の極性を反転させることで、ライトバブル112のトレーリング側に次々に記録パターン114が形成されていく(図2(d)、2(e))。
【0019】
これに対して、スピントルク発振子10をライトギャップgに挿入した磁気ヘッドの模式図を図3に示す。図3は、磁気記録媒体100の表面に略垂直な面で切断した磁気ヘッドの断面図である。この図3では、説明を簡単にするために、スピントルク発振子10は発振層10bしか表示していない。発振層10bの厚みは5nmから30nm程度がよく、そのために高周波アシスト磁界の広がりは20nm程度に限られる。この大きさは主磁極22の長さ200nm程度に比べ一桁小さな大きさである。高周波アシスト記録は主磁極22の磁界とアシスト磁界が重なった部分がライトバブル116になるため、100nm〜300nmの長さの主磁極22や50nm〜100nmのライトギャップgの長さに比べ、ずっと近傍に配置する必要がある。高周波アシスト記録用のライトバブルができれば、後はライトバブルの大きさが異なるだけで記録の方式は前述の通常の垂直磁気記録方式と同様である。
【0020】
図4にスピントルク発振子10の詳細な構成を示す。図4は、媒体対向面から磁気ヘッドをみた平面図である。スピントルク発振子10は、少なくとも発振層10b、非磁性層(中間層)10c、スピン注入層10dを備えており、これらの層を挟むように電極10a、10eが設けられる。発振層10bとスピン注入層10dは磁性体である。通常、両磁性層10b、10dに一軸異方性磁界Hkを導入し、互いに磁化が平行、あるいは反平行になるように調整する。発振層10bとスピン注入層10dの磁化が平行な場合、電子14を発振層10bからスピン注入層10dに向けて流す。そうすると、中間層10cとスピン注入層10dとの界面で、スピン注入層10dの磁化と反対方向のスピンをもった電子が高い確率で反射される。この反射された電子14は発振層10bの磁化とも反対方向のスピンを持つため、発振層10bの磁化と干渉し、発振層10bの磁化を発振させる。この場合、スピン注入層10dの磁化が動けば発振層10bの発振が阻害されるため、通常、スピン注入層10dの異方性磁界Hkを大きくする等によって、スピン注入層10dの磁化を安定化させる。
【0021】
発振層10bの発振周波数は有効磁界Heffにγ(ジャイロ定数)を乗じた値に等しい。そして、有効磁界は下記の式で表される。
eff=H−Hdos+Hdinj±Hgap (1)
ここで、Hkは発振層10bの異方性磁界の値、HdosとHdinjはそれぞれ発振層10bとスピン注入層10dの反磁界の値、Hgapはギャップ磁界25の値である。図2で説明した記録過程からわかるように、主磁極22の磁化23の向き(すなわち、主磁極22からの磁界22aの向き)が反転するに従い、ギャップ磁界25も反転する(図5(a)、5(b))。したがって、記録過程で2×Hgapだけ有効磁界が変動することになる。Hgapは5kOe〜20kOe程度であり、Hgap以外の項の磁界の合計が40kOe〜50kOe程度になるため、20%〜100%程度、有効磁界が変動する。これは、高周波アシスト磁界の周波数が同程度、変動することになるので、発振層10bの周波数を磁気記録媒体100の共鳴周波数に合わせる高周波アシスト記録には致命的な変動となる。なお、図5(a)、5(b)は、磁気記録媒体の表面に略垂直な面で切断した磁気ヘッドの断面図である。
【0022】
これを回避する手段として、ピンフリップタイプのスピントルク発振子が知られている。このピンフリップタイプのスピントルク発振子10は、スピン注入層10dの保持力をギャップ磁界25より小さく設定することで、ギャップ磁界25が反転するとスピン注入層10dも同時に反転するよう制御したスピントルク発振子である。このとき、発振層10bの保持力をスピン注入層10dより小さくすれば、発振層10bが回転しやすくなる。このようにすると、図6(a)、6(b)に示すように、ギャップ磁界25の方向と、発振層10bおよびスピン注入層10dの磁化方向との相対関係は常に一定に保たれ、したがって有効磁界、つまり発振層10bの共鳴周波数も保たれる。なお、図6(a)、6(b)は、磁気記録媒体の表面に略垂直な面で切断した磁気ヘッドの断面図である。
【0023】
しかし、ピンフリップタイプのスピントルク発振子10には発振層10bのスピンの反転時間の問題がある。図7(a)乃至図8(b)に主磁極22からの磁界22aが反転する前後の模式図を示す。なお、図7(a)乃至図8(b)は、磁気記録媒体の表面に略垂直な面で切断した磁気ヘッドの断面図である。媒体にデータを記録するために記録ヘッドに印加する電流の極性が反転すると、まず、図7(a)から図7(b)に示すように、主磁極22の磁化23が反転する。それと同時にスピントルク発振子10に印加されるギャップ磁場25が反転する。この反転には通常0.2ナノ秒〜0.5ナノ秒程度の時間がかかる。
【0024】
次に、スピントルク発振子の反転が始まってこれにより図8(a)に示す状態になり、初めてスピントルク発振子10は正常動作を始める(図8(b))。図7(b)に示す状態から図8(a)に示す状態になるまでに要する時間は0.5ナノ秒程度である。現在、3.5インチのハードディスクでは最高使用周波数が1ギガヘルツ程度であり、主磁極22の反転のみでも問題になりつつある。したがって、高密度ハードディスクで使用する場合、スピン反転に消費される時間は使用上大きな問題になる。
【0025】
そこで、本発明者達は、鋭意研究に努めた結果、下記のように考えた。
【0026】
まず、スピン注入層10dが硬磁性であること、すなわち保持力が高いことが反転時間の増加の一因であると考え、スピン注入層10dの保持力を低くするために、スピン注入層10dを実質的に軟磁性となるようする。この場合、シールドの軟磁性材料がスピン注入層より速やかに反転することから、シールド層程度の軟磁性性があること、すなわちシールド材料の保持力として200Oe程度以下の材料が使われているので、実質的に軟磁性とは200Oe程度以下の保持力を有することを意味する。また、シールド材料と同様の、Co、Ni、Feの内、少なくともひとつの元素を主成分とする磁性体でスピン注入層を形成すると良い。
【0027】
しかし、前述したようにスピン注入層10dが安定していない場合、発振層10bの発振が阻害されるので、スピン注入層10dが実質的に軟磁性であってもスピン注入層10dを安定化する方策が必要となる。スピン注入層10dを反強磁性体や強磁性体等と強磁性結合させる方策は、スピン注入層10d自身の保持力を大きくすることと本質的に変わりなく、反転時間問題を解決することはできない。
【0028】
一つの方策はスピン注入層10dの断面積を発振層10bに比べ大きくすることである。スピン注入層10dが安定化しない原因の一つに、発振層10bでスピン偏極した電子がスピン注入層10dに流れ込み、この偏極した電子とスピン注入層10dが相互作用することでスピン注入層10dが発振することが挙げられる。スピン注入層10dにおけるスピントルクに対する磁化の安定性は臨界電流密度Jcで決まり、この臨界電流密度Jcは次式で表せる。
Jc=(Hex+Hk−Hd)×α×e×Ms×δ/(p×h/(2π)) (2)
ここでHexは外部磁界、Hkはスピン注入層10dの一軸異方性磁界、Hdはスピン注入層10dの反磁界、Msはスピン注入層10dの飽和磁化、αはダンピング定数、δはスピン注入層10dの膜厚、eは素電荷、pはポラリティ((アップスピン電子密度-ダウンスピン電子密度)÷(トータル電子密度))、hはプランク定数である。臨界電流は2.0×10〜10.0×10(A・cm)であり、典型的な、Fe、Coを含む軟磁性体では2.5×10(A・cm)程度の値になる。
【0029】
一方、発振層10bが安定した発振を行うためには、より大きな電流密度が必要であって、5.0×10〜30.0×10(A・cm)程度の値になる。発振層10bに使用する典型的な値として10.0×10(A・cm)程度である。発振層10bが安定に発振し、スピン注入層10dの電流密度を臨界電流密度Jc以下に抑えるためには通常、一軸異方性磁界Hk、外部磁界Hexを調整してスピン注入層10dの臨界電流密度Jcを大きくしている。今、発振層10bとスピン注入層10dの一軸異方性磁界Hk、外部磁界Hexが同じ値の場合は、発振層10bに比べてスピン注入層10dの電流密度そのものを、前述の典型例では4倍以上小さくすれば良い。通常、発振層10bとスピン注入層10dは、図9(a)に示すように電流が流れる断面積が同じであるが、それを図9(b)に示すようにスピン注入層10dの断面積を発振層10bの4倍以上にすれば良い。なお、図9(a)、9(b)は、媒体対向面からみたスピントルク発振子の平面図である。
【0030】
また、前述したように、スピン注入層10dを硬磁性層(例えば、反強磁性層)等と強磁性結合させると反転時間が改善されないので、主磁極22が反転した図7(b)に示す状態ですでに反転が完了している、軟磁性材料からなる磁気シールド層24と強磁性結合させれば、スピン注入層10dの反転時間のロスは実質的に無視できる程度となり、スピントルク発振子10の反転時間の大幅な改善となる。
【0031】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0032】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による磁気ヘッドの概略の構成を図10に示す。図10は、本実施形態の磁気ヘッドを媒体対向面から見た平面図である。本実施形態の磁気ヘッドは、図1に示す磁気ヘッドのスピントルク発振子10を図10に示すスピントルク発振子10Aに置き換えた構成となっている。
【0033】
このスピントルク発振子10Aは、電極10aと、発振層10bと、中間層10cと、スピン注入層10dとがこの順序で積層された積層構造を備えている。電極10aは、発振層10bと反対側の面が主磁極22と接触している。スピン注入層10dは、磁気シールド24と強磁性結合をしている。本実施形態においては、電極10a、発振層10b、および中間層10cは、膜面が同じサイズを有しているが、スピン注入層10dは、電極10a、発振層10b、および中間層10cよりも大きな膜面を有している。すなわち、スピン注入層10dは、電極10a、発振層10b、および中間層10cの各層の膜面の面積よりも4倍以上広い面積の膜面を有している。例えば、スピン注入層10dの幅Winjは、発振層10bの幅Wosよりも、4倍以上広いように構成されている。なお、図10の紙面に垂直な方向における、スピントルク発振子10Aの各層の長さは同じとする。
【0034】
本実施形態に磁気ヘッドは、図1に示す場合と同様に、主磁極22から磁気シールド24に向かう方向がトレーリング方向となっている。そして、図10中には示していないが、図10において、上方にスライダ基板が設けられている。したがって、本実施形態の磁気ヘッドにおける成膜順序は、主磁極22→電極10a→発振層10b→中間層10c→スピン注入層10d→磁気シールド24となる。
【0035】
発振層10bはFe、Co、Ni等の典型的な軟磁性金属元素の内の少なくとも1つの元素を含む層、または2つ以上の元素を含む合金の層、あるいはこれらの層の積層体とすると良い。膜厚は5nmから20nmの範囲であることが好ましい。主磁極22と発振層10bとの間には電極10aとして導電率の良い金属材料が用いられる。この金属材料としては、主磁極22からのスピントルク伝達を抑制するため、スピントルクが伝達しにくいRu、Rh、Pd、IrおよびPt等の材料を用いても良い。また、発振層10bとスピン注入層10dとの間に設けられる中間層10cとしては、逆にスピントルクの透過率が良い、Cu、Ag、Au等の材料を用いることが好ましい。
【0036】
スピン注入層10dとしては、電流が広がり易いように低抵抗の高Bs材料が望ましい。前述したように電流密度が発振層10bの25%程度以下になるように幅方向のサイズWinjが発振層10bの幅Wosの4倍以上にする。ただし、電流が広がって等価的に電流密度が発振層10bのそれより小さくなるためには、電流が広がっているエリアの磁化が実質一体となって振動していることが好ましい。このため、スピン注入層10dの交換結合長Lexが長い材料を用いることが好ましいく、Co、Ni、Fe等の軟磁性材料の合金が用いられる。交換結合長Lexは材料の交換スティフネス定数の平方根に比例する量である。これらの軟磁性体の場合、交換結合長Lexは5nm〜15nm程度となり、この2倍程度の範囲で磁化が一体で振動していると考えられる。
【0037】
磁化が一体となって振動するために、もう一つの施策として、スピントルクの受け渡しがなるべく長い距離で行われる材料を用いることが挙げられる。これはスピン拡散長λsとして知られる量で数nmから10nmの値である。CoFeにB等の元素を混入した合金(CoFeB)においては、スピン拡散長λsは10nm以上にもなる。
【0038】
交換結合長Lexが7nm程度、スピン拡散長λsが12nm程度として、スピン注入層10dの磁化が一体で動くエリアの、発振層10bの端からの長さは、Lex×2+λs(=26nm)で見積もられる。発振層10bの形状を一辺Wの正方形とすると、磁化が一体で動くスピン注入層10dの断面積は(26×2+W)となり、前述のようにこの値がWの4倍より大きい必要がある。つまり、Wは52nm以下という発振層10bの大きさに制限がつく。この発振層10bの幅はおおよそ500Gbpsi以上の記録密度に相当する。
【0039】
更に本実施形態では、スピン注入層10dと磁気シールド24を直接接触させて、これらを強磁性的に結合させることで、さらにスピン注入層10dの反転時間を改善している。このように軟磁性のスピン注入層10dと、磁気シールド24との強磁性結合により、スピン注入層10dの反転時間のロスはほとんど無くなる。
【0040】
また本実施形態では、スピン注入層10dが磁気シールド24の役割も兼用するようになり、ライトギャップgを20nm以下にすることも可能となる。通常、スピン注入層10dと、発振層10bと、中間層10cの合計の厚みを主磁極22、磁気シールド24間のライトギャップgに挿入するために40nm程度以上のライトギャップが好まれるが、線記録密度の増加とともにライトンギャップも短くする必要があり、20nm以下のギャップが可能になれば高密度化への可能性がさらに高くなる。
【0041】
以上説明したように、本実施形態によれば、スピントルク発振子の反転時間を可及的に短くすることができる。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による磁気ヘッドの概略の構成を図11に示す。図11は、本実施形態の磁気ヘッドを媒体対向面から見た平面図である。
【0043】
本実施形態の磁気ヘッドは、図10に示す第1実施形態の磁気ヘッドにおいて、スピントルク発振子10Aをスピントルク発振子10Bに置き換えた構成となっている。図10に示す第1実施形態の磁気ヘッドにおいては、スピン注入層10dと磁気シールド24とは異なる材料で形成されていた。しかし、第2実施形態の磁気ヘッドにおいては、スピントルク発振子10Bのスピン注入層10dは、磁気シールド24を同じ材料で形成されて、磁気シールド24と一体となった構成となっている。すなわち、磁気シールド24がスピン注入層10dと兼用した構成となっている。この場合、交換結合長Lexとスピン拡散長λsを考慮して、磁気シールド24として、Co、Fe、Ni等の軟磁性材料の合金、あるいはこれらの合金にB等の元素を添加した材料を用いることができる。
【0044】
また、スピン注入層10dを安定化するためにはスピン注入層10dの断面積(磁化が一体で動いている領域の断面積)は発振層10bの断面積の4倍以上必要である。しかし、本実施形態では、磁気シールド24がスピン注入層10dを兼用しているため、磁気シールド24における、磁化が一体で動いている領域の断面積としては、図11に示すように、中間層10cから20nm程度の深さの断面積を用いて設計すると良い。
【0045】
本実施形態も、第1実施形態と同様に、スピントルク発振子の反転時間を可及的に短くすることができる。
【0046】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態による磁気ヘッドの概略の構成を図12に示す。図12は、本実施形態の磁気ヘッドを媒体対向面から見た平面図である。
【0047】
本実施形態の磁気ヘッドは、図10に示す第1実施形態の磁気ヘッドにおいて、スピントルク発振子10Aをスピントルク発振子10Cに置き換えた構成となっている。このスピントルク発振子10Cは、スピン注入層10dおよび主磁極22が同じ材料で、一体となって形成され、この主磁極22と磁気シールド24との間に、中間層10c、発振層10b、電極10aが、この順序で積層された構成となっている。この場合も、交換結合長Lexとスピン拡散長λsを考慮して、主磁極22として、Co、Fe、Ni等の軟磁性材料の合金、あるいはこれらの合金にB等の元素を添加した材料を用いることができる。
【0048】
また、スピン注入層10dを安定化するためにはスピン注入層10dの断面積(磁化が一体で動いている領域の断面積)は発振層10bの断面積の4倍以上必要である。しかし、本実施形態では、主磁極22がスピン注入層10dを兼用しているため、主磁極22における、磁化が一体で動いている領域の断面積としては、図12に示すように、中間層10cから20nm程度の深さの断面積を用いて設計すると良い。
【0049】
なお、本実施形態においては、主磁極22からのスピントルク透過率を高め、磁気シールド24からのスピントルク透過率を抑制するために、第1および第2実施形態と異なり、中間層10cは発振層10bに対して主磁極22の側に配置され、電極10aは、発振層10bに対して磁気ジールド24側に配置されている。
【0050】
本実施形態も、第1実施形態と同様に、スピントルク発振子の反転時間を可及的に短くすることができる。
【0051】
なお、本実施形態においては、スピン注入層10dおよび主磁極22が同じ材料で、一体となって形成されているが、別の材料で形成されてもよい。この場合、スピン注入層10dと主磁極22とは強磁性結合することが好ましい。
【0052】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態による磁気記録装置について説明する。
【0053】
上述した第1乃至第3実施形態のいずれかに記載の磁気ヘッドは、例えば、記録再生一体型の磁気ヘッドアセンブリに組み込まれ、磁気記録装置に搭載することができる。なお、本実施形態による磁気記録装置は、記録機能のみを有することもできるし、記録機能と再生機能の両方を有することもできる。
【0054】
図13は、本発明の第4実施形態による磁気記録装置の構成を例示する模式的斜視図である。図13に示すように、本実施形態による磁気記録装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。同図において、記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ152に装着され、図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。本実施形態に係る磁気記録装置150は、複数の記録用媒体ディスク180を備えたものとしても良い。
【0055】
記録用媒体ディスク180に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダー153は、薄膜状のサスペンション154の先端に取り付けられている。ここで、ヘッドスライダー153は、例えば、前述した実施形態のいずれかによる磁気ヘッドをその先端付近に搭載している。
【0056】
記録用媒体ディスク180が回転すると、ヘッドスライダー153の媒体対向面(ABS)は、記録用媒体ディスク180の表面から所定の浮上量をもって保持される。なお、ヘッドスライダー153が記録用媒体ディスク180と接触するいわゆる「接触走行型」としても良い。
【0057】
サスペンション154は、図示しない駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、アクチュエータアーム155のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石及び対向ヨークからなる磁気回路とから構成することができる。
【0058】
アクチュエータアーム155は、軸受部157の上下2箇所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。
【0059】
図14は、本実施形態に係る磁気記録装置の一部の構成を例示しており、アクチュエータアーム155から先の磁気ヘッドアセンブリ160をディスク側から眺めた拡大斜視図である。図14に示したように、磁気ヘッドアセンブリ160は、軸受部157と、この軸受部157から延出したヘッドジンバルアセンブリ(以下、HGAと称する)158と、軸受部157からHGAと反対方向に延出しているとともにボイスコイルモータのコイル147を支持した支持フレーム146を有している。HGAは、軸受部157から延出したアクチュエータアーム155と、アクチュエータアーム155から延出したサスペンション154と、を有する。
【0060】
サスペンション154の先端には、既に説明した第1乃至第3実施形態のいずれかによる磁気ヘッドを具備するヘッドスライダー153が取り付けられている。
【0061】
すなわち、本実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ160は、第1乃至第3実施形態のいずれかによる磁気ヘッドと、磁気ヘッドを一端に搭載するサスペンション154と、サスペンション154の他端に接続されたアクチュエータアーム155と、を備えている。
【0062】
サスペンション154は信号の書き込み及び読み取り用のリード線(図示しない)を有し、このリード線とヘッドスライダー153に組み込まれた磁気記録ヘッドの各電極とが電気的に接続されている。また、図示しない電極パッドが、磁気ヘッドアセンブリ160に設けられる。本具体例においては、電極パッドは8個設けられる。すなわち、主磁極61のコイル用の電極パッドが2つ、磁気再生素子71用の電極パッドが2つ、DFH(ダイナミックフライングハイト)用の電極パッドが2つ、スピントルク発振子10用の電極パッドが2つ、設けられる。
【0063】
そして、磁気記録ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う、図示しない信号処理部190が設けられる。信号処理部190は、例えば、図13に示した磁気記録装置150の図面中の背面側に設けられる。信号処理部190の入出力線は、電極パッドに接続され、磁気記録ヘッドと電気的に結合される。
【0064】
このように、本実施形態に係る磁気記録装置150は、磁気記録媒体と、第1乃至第3実施形態のいずれかによる磁気ヘッドと、磁気記録媒体と磁気ヘッドとを離間させ、または、接触させた状態で対峙させながら相対的に移動可能とした可動部と、磁気ヘッドを磁気記録媒体の所定記録位置に位置合せする位置制御部と、磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部と、を備える。すなわち、上記の磁気記録媒体として、記録用媒体ディスク180が用いられる。上記の可動部は、ヘッドスライダー153を含むことができる。また、上記の位置制御部は、磁気ヘッドアセンブリ160を含むことができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の磁気記録装置も、第1乃至第3実施形態のいずれかによる磁気ヘッドを備えているので、スピントルク発振子の反転時間を可及的に短くすることができる。
【0066】
本発明の各実施形態による磁気ヘッドに用いることができる磁気記録媒体の第1具体例を図15に示す。
【0067】
本具体例の磁気記録媒体201は、非磁性体(あるいは空気)287により互いに分離された垂直配向した多粒子系の磁性ディスクリートトラック286を有する。この磁気記録媒体201がスピンドルモータ204により回転され、媒体走行方向に向けて移動する際に、ヘッドスライダー203に搭載された磁気ヘッド205により、記録磁化284を形成することができる。なお、ヘッドスライダー203はサスペンション202の先端に取り付けられている。このサスペンション202には、信号の書き込みおよび読み取り用のリード線を有し、これらのリード線とヘッドスライダー203に組み込まれた磁気ヘッド205の各電極とが電気的に接続される。
【0068】
スピントルク発振子の記録トラック幅方向の幅(TS)を記録トラックの幅(TW)以上で、且つ記録トラックピッチ(TP)以下とすることによって、スピントルク発振子から発生する漏れ高周波磁界による隣接記録トラックの保磁力の低下を大幅に抑制することができる。このため、本具体例の磁気記録媒体201では、記録したい記録トラックのみを効果的に高周波磁界アシスト記録することができる。特に、高周波磁界は周波数が高くシールド効果がないため、トラック幅方向に設けたシールドで隣接記録トラックへの記録滲みを低減することが困難である。本発明の各実施形態による磁気ヘッドでは、図15で示した磁気記録媒体201を用いた磁気記録再生装置により、隣接記録トラックのイレーズ問題を解決することができる。また、本具体例によれば、従来の磁気ヘッドでは書き込み不可能なFePtやSmCo等の高磁気異方性エネルギーKの媒体磁性材料を用いることによって、媒体磁性粒子のさらなる微細化(ナノメーター級のサイズ)が可能となり、記録トラック方向(ビット方向)においても、従来よりも遥かに線記録密度の高い磁気記録装置を実現することができる。
【0069】
図16に、本発明の各実施形態の磁気ヘッドに用いることができる磁気記録媒体の第2具体例を示す。すなわち、本具体例の磁気記録媒体201は、非磁性体287により分離された磁性ディスクリートビット288を有する。この磁気記録媒体201がスピンドルモータ204により回転され、媒体走行方向に向けて移動する際に、ヘッドスライダー203に搭載された磁気記録ヘッド205により、記録磁化を形成することができる。
【0070】
この具体例においても、スピントルク発振子の記録トラック幅方向の幅(TS)を記録トラックの幅(TW)以上で、且つ記録トラックピッチ(TP)以下とすることによって、スピントルク発振子から発生する漏れ高周波磁界による隣接記録トラックの保磁力の低下を大幅に抑制することができるため、記録したい記録トラックのみを効果的に高周波磁界アシスト記録することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】スピントルク発振子を有する磁気ヘッドの断面図。
【図2】高周波磁界でアシストしない垂直記録方式を説明する断面図。
【図3】高周波磁界でアシストする垂直記録方式を説明する断面図。
【図4】スピントルク発振子の構成を示す平面図。
【図5】スピントルク発振子を用いて高周波アシスト記録する場合の問題点を説明する図。
【図6】ピンフリップタイプのスピントルク発振子を用いた高周波アシスト記録を説明する図。
【図7】ピンフリップタイプのスピントルク発振子を用いて高周波アシスト記録する場合の問題点を説明する図。
【図8】ピンフリップタイプのスピントルク発振子を用いて高周波アシスト記録する場合の問題点を説明する図。
【図9】本発明の一実施形態に係るスピントルク発振子を示す平面図。
【図10】第1実施形態による磁気ヘッドの概略の構成を示す平面図。
【図11】第2実施形態による磁気ヘッドの概略の構成を示す平面図。
【図12】第3実施形態による磁気ヘッドの概略の構成を示す平面図。
【図13】第4実施形態による磁気記録装置の概略の構成を示す斜視図。
【図14】ヘッドスライダーが搭載されるヘッドスタックアセンブリを示す斜視図。
【図15】磁気記録媒体の第1具体例を示す図。
【図16】磁気記録媒体の第2具体例を示す図。
【符号の説明】
【0072】
1 磁気ヘッド
5 基板
10 スピントルク発振子
10a 電極
10b 発振層
10c 中間層(非磁性層)
10d スピン注入層
10e 電極
10A スピントルク発振子
10B スピントルク発振子
10C スピントルク発振子
20 記録部
22 主磁極(記録磁極)
24 磁気シールド
26 絶縁層
28 励磁コイル
30 再生部
32 再生素子
34a 電極
34b 電極
100 磁気記録媒体
101 裏打ち層
102 磁気記録層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主磁極と、
前記主磁極と磁気回路を形成する磁気シールドと、
前記主磁極と前記磁気シールドとの間に設けられ、第1および第2磁性層と、前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられる中間層とを有する積層体からなり、前記第1および第2磁性層間に電流を通電して前記第2磁性層から高周波磁界を発生するスピントルク発振子と、
を備え、
前記第1磁性層は、保持力が200Oe以下の磁性材料で形成されており、
前記第1磁性層の積層面に略面直方向の断面積が、前記第2磁性層の積層面に略面直方向の断面積の4倍以上であることを特徴とする高周波アシスト記録用磁気ヘッド。
【請求項2】
主磁極と、
前記主磁極と磁気回路を形成する磁気シールドと、
前記主磁極と前記磁気シールドとの間に設けられ、第1および第2磁性層と、前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられる中間層とを有する積層体からなり、前記第1および第2磁性層間に電流を通電して前記第2磁性層から高周波磁界を発生するスピントルク発振子と、
を備え、
前記第1磁性層は、Co、Ni、Feの内、少なくとも1つの元素を主成分とした磁性材料で形成されており、
前記第1磁性層の積層面に略面直方向の断面積が、前記第2磁性層の積層面に略面直方向の断面積の4倍以上であることを特徴とする高周波アシスト記録用磁気ヘッド。
【請求項3】
前記第2磁性層は、前記第1磁性層に対して前記主磁極側に位置していることを特徴とする請求項1または2記載の高周波アシスト記録用磁気ヘッド。
【請求項4】
前記第2磁性層は、前記第1磁性層に対して前記磁気シールド側に位置していることを特徴とする請求項1または2記載の高周波アシスト記録用磁気ヘッド。
【請求項5】
前記第1磁性層は、前記磁気シールドと強磁性結合していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高周波アシスト記録用磁気ヘッド。
【請求項6】
前記第1磁性層は、前記磁気シールドと同じ材料から形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高周波アシスト記録用磁気ヘッド。
【請求項7】
前記第1磁性層は、前記主磁極と強磁性結合していることを特徴とする請求項1、2、または4のいずれかに記載の高周波アシスト記録用磁気ヘッド。
【請求項8】
前記第1磁性層は、前記主磁極と同じ材料から形成されることを特徴とする請求項1、2、または4のいずれかに記載の高周波アシスト記録用磁気ヘッド。
【請求項9】
磁気記録媒体と、
請求項1乃至8いずれかに記載の高周波アシスト記録用磁気ヘッドと、
前記磁気記録媒体と前記磁気ヘッドとが浮上または接触の状態で対峙しながら相対的に移動するように制御する移動制御部と、
前記磁気ヘッドを前記磁気記録媒体の所定記録位置に位置するように制御する位置制御部と、
前記磁気ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への書き込み信号および前記磁気記録媒体からの読み出し信号を処理する信号処理手段と、
を備えることを特徴とする磁気記録装置。
【請求項10】
前記磁気記録媒体は、隣接し合う記録トラック同士が非磁性部材を介して形成されたディスクリートトラック媒体であることを特徴とする請求項9記載の磁気記録装置。
【請求項11】
前記磁気記録媒体は、非磁性部材を介して孤立した記録磁性パターン部が規則的に配列形成されたディスクリートビット媒体であることを特徴とする請求項9記載の磁気記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−40060(P2010−40060A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198167(P2008−198167)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】