説明

高周波コイルユニットおよびそれを備えた磁気共鳴撮像装置

【課題】 撮影感度を効率的に向上することを可能とする。
【解決手段】 少なくとも4つのループコイル71,72,73,74を、内側2つのループコイル72,73を挟んで外側2つのループコイル71,74が位置するように配列する。内側2つのループコイル72,73はそれぞれ、ループコイル71,72,73,74の配列方向についての幅およびループ面の面積を、外側2つのループコイル71,74に比べて小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体から放出される磁気共鳴信号を受信するのに適する高周波コイルユニットおよびそれを備えた磁気共鳴撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴撮像装置では、感度良く画像を得るために、複数の表面コイル(アレイコイル)を被験者の関心領域に配置して撮像することが行われている。例えば、脊椎用コイルとしては、図14に示すようにQD表面コイルQD1,QD2,QD3,QD4を体軸方向に並べるアレイコイルが提案されている(特許文献1を参照)。このようなアレイコイルを用いると、仰臥位になった被験者の脊椎部分を非常に感度良く撮像できる。
【0003】
ここで、QD表面コイルについて説明する。
図15はQD表面コイルの構造を示す図である。QD表面コイルは、ループ型表面コイルSC1と8字型表面コイルSC2とを重ねて配置したものである。このQD表面コイルでは、ループ型表面コイルSC1および8字型表面コイルSC2が互いに発生する高周波磁場のループ内での総和が0になるため、構造的に電気的デカップリングが可能であり、重ねて配置できる。
【0004】
図15におけるA断面でループ型表面コイルSC1および8字型表面コイルSC2が発生する高周波磁場の方向を見ると、図16に示すように軸上でちょうど直交することがわかる。このような場合、互いのコイルからのノイズは独立となり、信号を90°ずらして和をとると、SNRは以下のようになる。
【0005】
SNR=[B1(ループ)+B1(8字型)]/√[B1(ループ)2+B1(8字型)2
図17は各コイルのY軸上のSNRの特徴を示している。つまり図17は、ループ型表面コイルSC1および8字型表面コイルSC2のSNRプロファイルと、QD表面コイルとしてのSNRプロファイルを示している。QD表面コイルは、ちょうどループ型表面コイルSC1および8字型表面コイルSC2のSNRが互いに等しいところで√2倍のSNRとなっているのをはじめとして、広い範囲でループ型表面コイルSC1および8字型表面コイルSC2より高いSNRになっていることがわかる。このようにQD表面コイルは、ループ型表面コイルSC1や8字型表面コイルSC2を1つ1つ使うより高いSNRを達成できるコイルである。
【0006】
一方、腹部全体を撮像する場合には、図18に示すように被検者を取り囲むように多数の表面コイルSCを配置し、腹部全体から信号を取得できるようにする技術が知られている(例えば特許文献2を参照)。
【0007】
このように、複数の表面コイルを撮像部位に応じて配置することで、各部位で感度良く画像を取得できるようになってきた。
【0008】
ところで、図14に示す脊椎用コイルでは、4つのQD表面コイルQD1,QD2,QD3,QD4を体軸方向に並べている。しかしながらこれは、体軸方向に長い脊椎の各部から放出される磁気共鳴信号を複数の表面コイルにより分担して受信することによって撮影範囲を広くしているのであって、局部的な撮影感度の向上はそれほど大きくない。
【0009】
また4つの同じ表面コイルを配列したコイルユニットを、体軸方向に交差する方向に沿って配置して使用することが考えられる。このようにすれば、脊椎の局部から放出される信号を4つの表面コイルによって受信することができ、当該局部に関する撮影感度を向上することができる。
【特許文献1】特開平5−261081号公報
【特許文献2】特開2003−334177
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、4つの同じ表面コイルを体軸方向に交差する方向に配列していると、外側の表面コイルは脊椎からの距離が大きくなってしまうため、十分な感度が得られなくなってしまう。つまり、4つの表面コイルを備えていながら、それに見合う十分な撮影感度の向上が達成できないおそれがあった。
【0011】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、撮影感度を効率的に向上することができる高周波コイルユニットおよびそれを備えた磁気共鳴撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の目的を達成するために本発明は、内側2つのループコイルを挟んで外側2つのループコイルが位置するように配列された少なくとも4つのループコイルを備え、内側2つの前記ループコイルはそれぞれ、前記ループコイルの配列方向についての幅およびループ面の面積を外側2つの前記ループコイルに比べて小さくして高周波コイルユニットを構成した。
【0013】
前記の目的を達成するために別の本発明は、内側2つのループコイルを挟んで外側2つのループコイルが位置するように配列された4つのループコイルと、内側2つの前記ループコイルのそれぞれの出力信号を同相合成する第1の合成手段と、外側2つの前記ループコイルのそれぞれの出力信号を反相合成する第2の合成手段と、前記第1および第2の合成手段のそれぞれの出力信号を、いずれか一方を90度移相した上で互いに合成する手段とを備えて高周波コイルユニットを構成した。
【0014】
前記の目的を達成するために別の本発明は、内側2つのループコイルを挟んで外側2つのループコイルが位置するように配列された少なくとも4つの前記ループコイルを備え、内側2つの前記ループコイルはそれぞれ、前記ループコイルの配列方向についての幅が外側2つの前記ループコイルに比べて小さくして高周波コイルユニットを構成した。
【0015】
前記の目的を達成するために別の本発明は、互いに隣接して配置された少なくとも2つのループコイルを備え、前記2つのループコイルの一方は、前記ループコイルの配列方向についての幅およびループ面の面積が他方に比べて小さくして高周波コイルユニットを構成した。
【0016】
前記の目的を達成するために別の本発明は、被検体から放出される磁気共鳴信号に基づいて前記被検体を撮像する磁気共鳴撮像装置に、前記磁気共鳴信号を受信するために前記請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の高周波コイルユニットを備えた。
【0017】
前記の目的を達成するために別の本発明は、被検体から放出される磁気共鳴信号に基づいて前記被検体を撮像する磁気共鳴撮像装置に、前記磁気共鳴信号を前記被検体を挟む2方向から受信するために前記請求項1乃至請求項6、請求項10および請求項11のいずれか1項に記載の高周波コイルユニットを2組備えた。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、撮影感度を効率的に向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の構成を示す図である。
【0021】
この磁気共鳴撮像装置は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場コイル駆動回路3、寝台4、送信部5、送信用の高周波コイル6、受信用の高周波コイルユニット7、受信部8、データ収集部9、計算機10、シーケンスコントローラ11、ディスプレイ12およびコンソール13を具備する。
【0022】
静磁場磁石1は、中空の円筒形をなし、内部の空間に一様な静磁場を発生する。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形をなし、静磁場磁石1の内側に配置される。傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされている。傾斜磁場コイル2は、上記の3つのコイルが傾斜磁場コイル駆動回路3から個別に電流供給を受けて、磁場強度がX,Y,Zの各軸に沿って傾斜する傾斜磁場を発生する。なお、Z軸方向は、例えば静磁場と同方向とする。X,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Geおよびリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応される。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮影断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相をエンコードするために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数をエンコードするために利用される。
【0023】
被検体Pは、寝台4の天板41に載置された状態で傾斜磁場コイル2の空洞(撮影口)内に挿入される。天板41は基部42によって支持されており、その長手方向(図1中における左右方向)および上下方向に移動される。ここでは、この長手方向が静磁場磁石1の中心軸(静磁場方向)、すなわちZ軸方向と平行になるように寝台4が設置される。そして被検体Pは、その体軸方向とZ軸方向とがほぼ一致するように配置される。なお、オープン型のMRI装置では、静磁場方向と体軸方向とは直交する。
【0024】
送信部5は、ラーモア周波数に対応するRFパルスを高周波コイル6に供給するべく送出する。高周波コイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置される。高周波コイル6は、送信部5から高周波パルス(RFパルス)の供給を受けて、高周波磁場を発生する。
【0025】
高周波コイルユニット7は、天板41に載置される。高周波コイルユニット7は、被検体から放出される磁気共鳴信号を受信部8へと導く。受信部8は、高周波コイルユニット7によって導かれた磁気共鳴信号を、増幅した上で検波する。データ収集部9は、受信部8から出力される磁気共鳴信号を収集し、A/D変換する。計算機10は、データ収集部9から出力された磁気共鳴信号に基づく画像再構成処理を行う。
【0026】
シーケンスコントローラ11は、所定のシーケンスに従って撮影動作を行うように傾斜磁場コイル駆動回路3、送信部5、受信部8、データ収集部9および計算機10を制御する。
【0027】
ディスプレイ12は、再構成画像やその他の各種の情報を計算機10の制御の下に表示する。
【0028】
コンソール13は、オペレータからの各種指令や情報入力を受け付ける。
【0029】
高周波コイルユニット7は図2に示すように、4つのループコイル71,72,73,74を含む。これらのループコイル71,72,73,74は、ループ面を同一方向に向けて、かつ隣接するものどうしの一部がオーバーラップするように配列されている。以下においては、上記のようにループコイル71,72,73,74が配列された方向を配列方向と称する。かくして、配列方向に関しては、ループコイル72,73が内側に位置し、ループコイル71,74がループコイル72,73を挟んで外側に位置する。なお、ループコイル71,72,73,74は、互いに電気的に絶縁されている。ここでは、高周波コイルユニット7は、配列方向がX軸方向にほぼ一致する状態で使用される。
【0030】
ループコイル71,72,73,74における前記配列方向に直交する方向についての中心軸は、それらのループ面に交差する方向から見て直線上に配列されることが望ましい。ただし、設計上の問題などで厳密に直線上に配置することが困難な場合もあり、多少はジグザグに配列されていても構わない。
【0031】
また、ループコイル71,72,73,74は、一層の基板上に配置されていても良い。
【0032】
配列方向についてのループコイル72,73のループ面の幅W72,W73は、同方向についてのループコイル71,74のループ面の幅W71,W74よりも小さい。なお第1の実施形態では、幅W72と幅W73とが等しく、また幅W71と幅W74とが等しいが、上記の条件を満たすならば、それぞれが異なっていても良い。
【0033】
配列方向に直交する方向についてのループコイル71,72,73,74のループ面の幅は、いずれも同一の幅W7である。このため、ループコイル72,73のループ面の面積S72,S73は、ループコイル71,74のループ面の面積S71,S74よりも小さい。なお、面積S71,S72,S73,S74は、図3(a)〜(d)にハッチングして示す領域の面積である。配列方向に直交する方向についてのループコイル71,72,73,74のループ面の幅は、互いに異なっていても良い。
【0034】
2つのループコイルのコイル面のオーバーラップ量は、2つのループコイルの電気的カップリングを抑えるため、互いに発生する高周波磁場のループ内での総和が0になるように適当な量に設定される。
【0035】
3つのオーバーラップ部の面積を、図3(e)に示すようにそれぞれSnとする。このときにループコイル71,72,73,74は例えば、次の式により求まるk1,k2が0.35〜0.65になるように大きさを定める。
k1=S71/(S72+S73−Sn)
k2=S74/(S72+S73−Sn)
なお、図3(e)では、ループコイル72とループコイル73とのオーバーラップ量は、ループコイル71とループコイル72とのオーバーラップ量およびループコイル73とループコイル74とのオーバーラップ量とを等しくしているが、必ずしも同じにしなくても良い。例えば、ループコイル72とループコイル73とのオーバーラップ部の面積を、ループコイル71とループコイル72とのオーバーラップ部の面積およびループコイル73とループコイル74とのオーバーラップ部の面積に比べて小さくしても良い。
【0036】
この高周波コイルユニット7は、ループコイル71,72,73,74のループ面が天板41の上面に沿い、かつ配列方向が天板41の長手方向に交差する方向(X軸方向)を向く状態で、天板41上に設置されている。かくしてループコイル71,72,73,74のループ面は、天板41上に載置された被検体Pを向く。また、被検体Pはその体軸方向を天板41の長手方向に向けた状態で天板41上に載置されるため、ループコイル71,72,73,74の配列方向が被検体Pの体軸方向に交差する。
【0037】
高周波コイルユニット7は図4に示すように、180度分配/合成器75,76および90度分配/合成器77をさらに含んでも良い。これらの180度分配/合成器75,76および90度分配/合成器77を備えずに、ループコイル71,72,73,74のそれぞれの出力信号をそのまま受信部8に送るようにしても良い。
【0038】
180度分配/合成器75には、ループコイル72,73が出力する信号SB,SCが、同調・整合回路(図示せず)を通じて同軸ケーブルなどで入力される。180度分配/合成器75は、信号SB,SCを同相および反相でそれぞれ合成する。180度分配/合成器75は、同相合成の結果として得られた信号SEを90度分配/合成器77へ出力する。180度分配/合成器75は、反相合成の結果として得られた信号を反相合成信号として受信部8に送る。
【0039】
180度分配/合成器76には、ループコイル71,74が出力する信号SA,SDが、同調・整合回路(図示せず)を通じて同軸ケーブルなどで入力される。180度分配/合成器76は、信号SA,SDを同相および反相でそれぞれ合成する。180度分配/合成器75は、同相合成の結果として得られた信号を同相合成信号として受信部8に送る。180度分配/合成器75は、反相合成の結果として得られた信号SGを90度分配/合成器77へ出力する。
【0040】
90度分配/合成器77は、信号SGを90度移相した上で、信号SEに合成する。90度分配/合成器77は、この合成の結果として得られた信号をQD信号として、またこのQD信号と反相の信号をAntiQD信号としてそれぞれ受信部8に送る。
【0041】
図5は図1に示す磁気共鳴撮像装置により被検体Pの脊椎を撮像する場合における被検体Pと高周波コイルユニット7との位置関係をアキシャル断面で示す図である。
【0042】
図5に示すように、ループコイル72,73は脊椎に近接する。ループコイル71,74は、脊椎からの距離がループコイル72,73よりも大きくなる。ループコイルは、コイル面の面積に反比例して感度が向上する。しかしながらループコイルは、コイル面の面積が小さいほど感度範囲が狭い。つまりループコイル72,73は、近接している脊椎から放出される磁気共鳴信号を感度良く受けることができる。一方ループコイル71,74は、脊椎から放出される磁気共鳴信号を離れた場所から良好に受けることができる。
【0043】
ループコイル72,73を第1の実施形態のループコイル71,74と同じ大きさに変更した場合、ループコイル72,73の面積およびループコイル71,74と脊椎との距離は、第1の実施形態よりもそれぞれ大きくなる。このため、ループコイル71,72,73,74は、脊椎から放出される磁気共鳴信号についての感度がいずれも低下してしまう。逆にループコイル71,74を第1の実施形態のループコイル72,73と同じ大きさに変更した場合、ループコイル71,74は脊椎から放出される磁気共鳴信号についての感度が低下してしまう。
【0044】
従って第1の実施形態の高周波コイルユニット7は、同じ大きさのループコイルを4つ並べる場合に比べて、近傍および遠方の両方のSN比を向上させることができる。つまり、ループコイル72,73により撮像対象局部の撮像感度を作り出し、さらにループコイル71,74により撮像対象近傍の撮像感度を加えることで、撮像対象についての撮像でのSN比を向上させることができる。そしてこの結果として、効率的にSN比の良い画像を撮像することが可能となる。なお上記のような性質上、高周波コイルユニット7は、脊椎または腹部の撮像に用いる場合に都合が良い。
【0045】
また第1の実施形態によれば、QD信号は、QD合成がなされているため、ループコイル71,72,73,74のそれぞれの出力信号よりもSN比が向上されている。従って、受信部8のチャネル数が少ない場合には、QD信号を使用することにより、少ないチャネルを有効に利用してSN比の良い画像を撮像することが可能となる。具体的には、受信部8が高周波コイルユニット7のために4チャネルを有するならば、QD信号、AntiQD信号、同相合成信号および反相合成信号を使用すれば良いが、2チャネルのみならば、QD信号と同相合成信号または反相合成信号とを使用する。
【0046】
(第2の実施形態)
図6は第2の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の構成を示す図である。なお、図6において図1と同一部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0047】
この磁気共鳴撮像装置は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場コイル駆動回路3、寝台4、送信部5、送信用の高周波コイル6、受信部8、データ収集部9、計算機10、シーケンスコントローラ11、ディスプレイ12、コンソール13および受信用の高周波コイルユニット14,15を具備する。
【0048】
すなわち第2の実施形態の磁気共鳴撮像装置は、第1の実施形態における高周波コイルユニット7に代えて高周波コイルユニット14,15を備えている。
【0049】
高周波コイルユニット14は、天板41に載置される。高周波コイルユニット15は、傾斜磁場コイル2の内側の上側に配置される。高周波コイルユニット14,15は、被検体から放出される磁気共鳴信号を受信部8へと導く。
【0050】
高周波コイルユニット14は図7に示すように、4つのコイル組141,142,143,144を含む。コイル組141,142,143,144はそれぞれ、ループコイル71,72,73,74を備える。そしてコイル組141,142,143,144は、ループコイル71,72,73,74の配列方向に交差する方向に配列されている。コイル組141,142,143,144は、隣接するものどうしの一部がオーバーラップするように配列されている。高周波コイルユニット14は、ループコイル71,72,73,74の配列方向がX軸方向にほぼ一致し、コイル組141,142,143,144の配列方向が天板41の長手方向、すなわち被検体Pの体軸方向にほぼ一致する状態で使用される。
【0051】
コイル組141,142,143,144のそれぞれに対して図4に示す構成を付加して、図4に示される信号を4組分を受信部8に送るように構成しても良いし、コイル組141,142,143,144のそれぞれのループコイルのそれぞれの出力信号をそのまま受信部8に送るようにしても良い。
【0052】
コイル組141,142,143,144の配列方向に対して斜めに隣接するループコイルどうしは、コイル間でのカップリングを抑えるようにオーバーラップさせることが困難である。そこで、そのような関係にある2つのループコイルの間に、図8に示すようにデカップリング回路145を設けている。なお図8では、コイル組141のループコイル72とコイル組142のループコイル71との間のデカップリング回路145のみを図示しているが、他の同様な2つのループコイルの間にもそれぞれデカップリング回路が設けられる。
【0053】
図9はデカップリング回路145の構成例を示す図である。
【0054】
図9に示すデカップリング回路145は、インダクタンス145a,145bを備える。インダクタンス145a,145bは、一部を重ねて配置される。インダクタンス145a,145bは、デカップリングの対象となる2つのループコイルのそれぞれに直列接続されている。
【0055】
図10はデカップリング回路145の別の構成例を示す図である。
【0056】
図10に示すデカップリング回路145は、デカップリングの対象となる2つのループコイルにそれぞれ直列にキャパシタ145c,145dを配し、このキャパシタ145c,145dの間にキャパシタネットワーク145eを取り付ける。キャパシタネットワーク145eに含まれるキャパシタの容量C1,C2を調整することでデカップリングをすることが可能である。
【0057】
高周波コイルユニット15の構成は、高周波コイルユニット7と同様である。
【0058】
図11は図6に示す磁気共鳴撮像装置により被検体Pの脊椎および腹部を撮像する場合における被検体Pと高周波コイルユニット14,15との位置関係をアキシャル断面で示す図である。
【0059】
かくして第2の実施形態によれば、高周波コイルユニット14を用いることにより、脊椎を体軸方向に広い範囲について良好なSN比で撮像することが可能となる。また高周波コイルユニット15を用いることにより、腹部を良好なSN比で撮像することが可能となる。
【0060】
また第2の実施形態によれば、体軸方向および対軸方向に直交する方向にもパラレルイメージ対応が可能になる。
【0061】
以上の実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
ループコイルは、幅が狭いほど、その幅方向についての感度が向上するが、その幅方向についての感度範囲が狭い。従って、ループ面の面積が上記のような条件を満たしていなくても、前記第1の実施形態と同様な効果を達成できる。ただし、第1の実施形態のほうが、より良好なSN比で撮像可能で望ましい。
【0062】
高周波コイルユニット7,14,15は、図12および図13に示すように曲面に沿わせた状態で各ループコイルを配列しても良い。このようにすれば、図12および図13に示すように、高周波コイルユニット7,14,15を被検体Pに沿わせて配置させることができ、各ループコイルをさらに被検体Pに近接させることができる。
【0063】
ループコイル71,72,73,74の出力信号をそれぞれ受信部8に送っても良い。そして受信部8において同相合成、反相合成、あるいはQD合成を必要に応じて行うようにしても良い。あるいは各出力信号をそれぞれ計算機10に導き、これらの信号に基づいて独立に再構成処理を行った上で、これにより得られる4つの画像の2乗和のルートをとることで1つの画像を得るようにしても良い。
【0064】
ループコイル71,72,73,74をオーバーラップさせずに、例えば図9または図10に示すようなデカップリング回路によってデカップリングしても良い。
【0065】
高周波コイルユニット14のように複数のコイル組を配列する場合、備えるコイル組の数は任意であって良い。
【0066】
図4に示す回路は、同じループコイルを4つ備える高周波コイルユニットにおいても適用が可能である。
【0067】
ループコイルは、5つ以上が設けられても良い。
【0068】
2つまたは3つのループコイルにより高周波コイルユニットを構成する場合であっても、隣接する2つのループコイルの一方が、前記ループコイルの配列方向についての幅およびループ面の面積が他方に比べて小さければ、上記実施形態と同様な効果が得られる。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の構成を示す図。
【図2】図1中の高周波コイルユニット7におけるループコイル71,72,73,74の配列状態を示す図。
【図3】図2中のループコイル71,72,73,74のループ面の面積およびオーバーラップ部の面積を表す図。
【図4】図1中の高周波コイルユニット7における信号処理回路の構成を示す図。
【図5】図1に示す磁気共鳴撮像装置により被検体Pの脊椎を撮像する場合における被検体Pと高周波コイルユニット7との位置関係をアキシャル断面で示す図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る磁気共鳴撮像装置の構成を示す図。
【図7】図6中の高周波コイルユニット14におけるコイル組141,142,143,144の配列状態を示す図。
【図8】デカップリング回路145の装着状態を示す図。
【図9】図8中のデカップリング回路145の構成例を示す図。
【図10】図8中のデカップリング回路145の別の構成例を示す図。
【図11】図6に示す磁気共鳴撮像装置により被検体Pの脊椎および腹部を撮像する場合における被検体Pと高周波コイルユニット14,15との位置関係をアキシャル断面で示す図。
【図12】高周波コイルユニット7を湾曲させる例をアキシャル断面で示す図。
【図13】高周波コイルユニット14,15を湾曲させる例をアキシャル断面で示す図。
【図14】特開平5−261081号公報に開示されるアレイコイルの構成を示す図。
【図15】QD表面コイルの構造を示す図。
【図16】図15におけるA断面でループ型表面コイルSC1および8字型表面コイルSC2が発生する高周波磁場の方向を表す図。
【図17】QDコイルのSNRの特性を示す図。
【図18】特開2003−334177に開示されるマルチコイルの構成を示す図。
【符号の説明】
【0071】
4…寝台、41…天板、7,14,15…高周波コイルユニット、71,72,73,74…ループコイル、75,76…180度分配/合成器、77…90度分配/合成器、141,142,143,144…コイル組、145…デカップリング回路、145a,145b…インダクタンス、145c,145d…キャパシタ、145e…キャパシタネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側2つのループコイルを挟んで外側2つのループコイルが位置するように配列された少なくとも4つの前記ループコイルを備え、
内側2つの前記ループコイルはそれぞれ、前記ループコイルの配列方向についての幅およびループ面の面積が外側2つの前記ループコイルに比べて小さいことを特徴とする高周波コイルユニット。
【請求項2】
内側2つの前記ループコイルは、形状が互いにほぼ合同であることを特徴とする請求項1に記載の高周波コイルユニット。
【請求項3】
外側2つの前記ループコイルは、形状が互いにほぼ合同であることを特徴とする請求項1に記載の高周波コイルユニット。
【請求項4】
前記少なくとも4つのループコイルからなるコイル組が、前記配列方向に交差する方向に複数配列されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の高周波コイルユニット。
【請求項5】
前記交差する方向は、体軸方向であることを特徴とする請求項4に記載の高周波コイルユニット。
【請求項6】
前記交差する方向は、体厚方向であることを特徴とする請求項4に記載の高周波コイルユニット。
【請求項7】
前記複数のコイル組は、一層の基板上に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の高周波コイルユニット。
【請求項8】
内側2つの前記ループコイルのそれぞれの出力信号を同相合成する第1の合成手段と、
外側2つの前記ループコイルのそれぞれの出力信号を反相合成する第2の合成手段と、
前記第1および第2の合成手段のそれぞれの出力信号を、いずれか一方を90度移相した上で互いに合成する手段とをさらに具備したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の高周波コイルユニット。
【請求項9】
内側2つのループコイルを挟んで外側2つのループコイルが位置するように配列された少なくとも4つのループコイルと、
内側2つの前記ループコイルのそれぞれの出力信号を同相合成する第1の合成手段と、
外側2つの前記ループコイルのそれぞれの出力信号を反相合成する第2の合成手段と、
前記第1および第2の合成手段のそれぞれの出力信号を、いずれか一方を90度移相した上で互いに合成する手段とを具備したことを特徴とする高周波コイルユニット。
【請求項10】
内側2つのループコイルを挟んで外側2つのループコイルが位置するように配列された少なくとも4つの前記ループコイルを備え、
内側2つの前記ループコイルはそれぞれ、前記ループコイルの配列方向についての幅が外側2つの前記ループコイルに比べて小さいことを特徴とする高周波コイルユニット。
【請求項11】
互いに隣接して配置された少なくとも2つのループコイルを備え、
前記2つのループコイルの一方は、前記ループコイルの配列方向についての幅およびループ面の面積が他方に比べて小さいことを特徴とする高周波コイルユニット。
【請求項12】
被検体から放出される磁気共鳴信号に基づいて前記被検体を撮像する磁気共鳴撮像装置であって、
前記磁気共鳴信号を受信するために前記請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の高周波コイルユニットを備えることを特徴とする磁気共鳴撮像装置。
【請求項13】
前記高周波コイルユニットを、前記被検体の背中側となる位置に配置したことを特徴とする請求項12に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項14】
前記被検体を載置するための天板をさらに備え、
かつ前記高周波コイルユニットを前記天板に備えたことを特徴とする請求項12に記載の磁気共鳴撮像装置。
【請求項15】
被検体から放出される磁気共鳴信号に基づいて前記被検体を撮像する磁気共鳴撮像装置であって、
前記磁気共鳴信号を前記被検体を挟む2方向から受信するために前記請求項1乃至請求項6、請求項10および請求項11のいずれか1項に記載の高周波コイルユニットを2組備えることを特徴とする磁気共鳴撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−21188(P2007−21188A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−163524(P2006−163524)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】