説明

高周波コイル及びそれを用いた磁気共鳴イメージング装置

【課題】開放型のMRI装置に好適な、照射/受信効率が高く、照射/受信均一性のよい平面形状の高周波コイルを提供する。
【解決手段】リング状導体1の内側に放射状に直線導体2を複数接続した構造の平面コイルであって、リング状導体1に挿入された共振容量3を調整することにより照射周波数の1波長に波長整合をとっている。この平面コイルは、高周波電流が入力されるとコイル面と平行な面の回転磁界を発生し、リング状導体1の90度をなす2ヵ所の位置から入力することにより1つのコイルで直交コイルを実現できる。このような平面コイルをMRI装置の上下に対向配置して照射コイル10を構成する。照射コイルを平面形状にすることができ、撮像空間の開放を妨げることがなくなるため、被検体へのアクセスが容易で広範囲な臨床応用を可能とする高性能なMRI装置を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング装置(以下、MRI装置という)に用いられる新規な形状の高周波コイル及びそれを備えたMRI装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置では、核磁気共鳴現象を利用して被検体中の所望の検査部位における原子核スピンの密度分布、緩和時間分布を計測して、その計測データから被検体の断面を画像表示するものであり、被検体に高周波パルスを照射するための照射コイル及び被検体から発生する核磁気共鳴信号を受信するための受信コイルが備えられている。
【0003】
これら照射コイル及び受信コイルは、静磁場方向に応じて種々の形状、形態の高周波コイルが使用されている。例えば、被検体の上下方向に静磁場を与える垂直磁場方式のMRI装置の場合、高周波磁界は上下方向を軸とする水平方向の回転磁界となり、ソレノイド型コイルやサドル型コイルが用いられている。また、照射、受信効率や均一度を向上させる目的で、直交方式も利用されている。これは直交状態(90度)に配置された2つの高周波コイル(ソレノイド型コイルとサドル型コイル等)を組み合わせ、位相の90度異なった照射パルスあるいは受信信号を同時に照射、受信して回転磁界を印加、検出するものである。
【0004】
一方、近年、IVRと呼ばれる手技がX線装置の分野で普及しつつあるが、MRI装置の分野でも撮像をしながら各種臨床行為を行うことが要求されている。このためにはMRI装置の撮像空間が開放されていることが重要となる。つまり、静磁場発生磁石の開口面積が広く、照射や受信を行う高周波コイルが被検体を覆わない構造であることが必要である。
【0005】
IVRに適したMRI装置として開口面積の広いオープン構造の磁石を採用した垂直磁場方式のMRI装置が実用化されているが、このような垂直磁場方式のMRI装置に従来のソレノイド型やサドル型の高周波コイルを適用した場合、被検体の一部を覆ってしまうという問題があった。特に照射コイルは照射の均一性を確保する目的から比較的大きなコイルが必要とされ、オープン構造を妨げる影響が大きい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに対し、垂直磁場方式のMRI装置に適した平面コイルとして図7(a)に示すような平面コイル7が提案されており、この平面コイルを磁場空間の上下に2つ対向配置して照射コイルとして用いたMRI装置が実用化されている。このコイルは、中央に位置する2本の導体に同一方向に電流が流れるように左右のループが形成されており、図示するように高周波電流iを流すことによって、コイルの上下に横方向の照射磁界Bを発生させる。
【0007】
しかし、この平面照射コイルでは横方向の磁界を発生しうるのは中央の直線導体の上下部分であり、左右のループの中心部分では縦方向の磁界を生じてしまい、照射磁界として利用できる範囲が狭く、照射磁界の均一度や、照射効率も低いという問題があった。
【0008】
これを改善するために、図7(b)に示すように平面コイル7a、7bを直交状態に組み合わせ、直交照射を行っているが、この場合にも照射の不均一性を十分に解決するためには平面コイル7を大きくする必要があり、装置の制約上困難であった。また、このような直交コイルを構成するためには照射コイルの厚さが増加し、撮像空間を狭めてしまうという新たな問題も生じていた。さらに一般に高磁場装置では照射信号の周波数が高くなり波長が短くなるために、このような平面コイルを適用した場合、コイル導体上に不必要な電流分布が生じて、照射コイルとしての良好な動作が期待できなくなる。勿論、以上の問題は照射コイルのみならず、この方式の受信コイルにおいても同様である。
【0009】
本発明は、オープン構造のMRI装置において被検体の開放を妨げない構造を有し、照射効率、受信感度、均一性ともに高く、高磁場装置にも適用しうる平面高周波コイルを提供することを目的とする。また本発明はIVRに適したオープン構造を有し、良好な画像の得られるMRI装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明の高周波コイルは、リング状導体と、このリング状導体の内側を放射状に接続した複数の直線導体と、リング状導体あるいは直線導体に接続又は分布された複数のキャパシタンスとを備えている。
【0011】
本発明の高周波コイルにおいて、リング状導体或いは直線導体に接続又は分布されるキャパシタンスとは、コンデンサ等の素子によるキャパシタンスのみならず、導体自体のキャパシタンスをも含む概念であり、導体自体のキャパシタンスを含むキャパシタンスが、リング状導体を流れる高周波電流の1波長と波長整合するように調整されているものとする。従って導体自体のキャパシタンスのみによって波長整合されている場合には、必ずしも素子を挿入しなくてもよい。またキャパシタンス素子を接続する場合、リング状導体でも直線導体でも、またその両方であってもよいが、発生する磁場の均一度の点からはリング状導体に接続することが好ましい。
【0012】
この高周波コイルでは、直線導体に流れる電流によって横方向の磁場を生じる。この場合、リング状導体がそれを流れる高周波電流と波長整合していることにより、リング状導体に1波長に相当する電流分布を生じ、ある瞬間には一方向の電流が流れる。この電流分布は高周波電流の位相の変化に伴い、変化するので、これにより放射線状の直線導体に順次電流が流れることになる。従って高周波コイルの面と平行な回転磁場が発生する。同様にコイル面と平行な回転磁場を検出できる。従ってオープン構造の垂直磁場方式のMRI装置において被検体の開放を妨げることなく配置され、水平回転磁場を発生し或いは検出することができる。
【0013】
本発明の高周波コイルは、好適にはリング状導体の少なくとも2ヵ所に入力及び/又は出力端子を有し、1つのコイルで直交照射コイルあるいは直交受信コイルを構成する。これによりコイルの厚さを増すことなく直交化し、照射効率或いは検出効率を高めることができる。
【0014】
本発明の高周波コイルは、MRI装置の照射コイルとして、受信コイルとして或いはその両方として、また照射兼受信コイルとして用いることができる。
【0015】
MRI装置としては垂直磁場方式、水平磁場方式のいずれであってもよく、いずれの場合にも静磁場方向に対し垂直な面上に配置される。照射コイル或いは照射兼受信コイルとして本発明の高周波コイルを備える場合には、2個のコイルを被検体を挟んで対向した位置であって、両コイルによって形成される磁場方向が一致するように配置すること好適である。特に上下に磁石及び平面状の傾斜磁場コイルを配置したオープン構造の垂直磁場方式のMRI装置において、傾斜磁場コイルに近接して配置することが好適である。
【0016】
また本発明の好適な態様では、平面状高周波コイルはその2ヵ所に端子を設け、1つのコイルで直交照射コイルあるいは直交受信コイルを構成する。1つのコイルで直交コイルを構成できるので、厚さを増加することなく、即ち広い空間を提供し、しかも照射効率或いは検出効率の高い直交コイルとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明による高周波コイルの実施例を図面を参照して説明する。
【0018】
図1はMRI装置用照射コイルの1実施例を示す図で、この照射コイル10は、リング状導体1とその内側に放射線状に接続された8本の直線導体2とからなる平面形状のコイルで、リング状導体1を8分割するように共振容量(キャパシタンス)3が8個挿入され、1箇所の共振容量3の両端に入力端子4が接続されている。
【0019】
このような照射コイルにおいて、水平回転磁束を発生する原理について図2を用いて説明する。図中、a〜hはリング状導体1と直線導体2の8ヵ所の接合点を示す。図2(a)は、図1の平面照射コイル10のリング状導体1を切り離して開いた状態で表現した回路であり、共振容量3と直線導体2のインダクタンスとがハシゴ型回路を構成している。入力端子4から入力された高周波電流はリング状導体1の遅延特性によって特定の電流分布を示す。この電流分布は共振容量3を調整することにより、リング状導体1にちょうど1波長分の電流分布(同図(b))を形成するようにすることができ、本発明の照射コイルではこのような調整がなされている。
【0020】
電流分布は入力された高周波電流に従って刻々と変化し、リング状導体1上に電流密度変化を生じさせる。今、図のような電流分布が生じている瞬間を考えると、接合点aと接合点eの電流密度が最も高く逆極性であることからa−e間の直線導体2に大きく電流iが流れることが解る(同図(c))。また、接合点bと接合点dは電流密度が等しく逆極性であり、同様に接合点hと接合点fは電流密度が等しく逆極性であるため、b−d間とh−f間にも電流iが流れるが、接合点c、gには電流密度がないため、電流は流れない。
【0021】
従って、平面コイル全体として見た場合には、同図(d)に示すように点aから点eに向かって電流iが流れることになり、平面照射コイルの上下に水平磁束Bが生じる。この電流iの向きはリング状導体1の電流密度変化に従って変わり、その結果水平磁束Bは回転することになる。
【0022】
以上、照射コイルとしての動作を説明したが、受信コイルとしての動作も相反定理により同様であり、水平磁束Bによって直線導体に電流iが誘導されることにより水平磁束Bを検出する。この電流の向きが変化することにより、回転磁界を検出することができる。
【0023】
このような構成の高周波コイルは高磁場装置に好適に採用でき、例えば静磁場強度1.5テスラの高磁場装置では、共振周波数64MHz程度、波長4.7m程度であり、直径1m程度の実用的な高周波コイルを構成することができる。
【0024】
本高周波コイルを低磁場装置に適用する場合、使用周波数が低くなるため、コイルの大きさによってはリング状導体1に1波長分の電流分布を形成することが困難である。その場合には、リング状導体1あるいは直線導体2にインダクタンスを挿入し、遅延量を調整することにより実用的な大きさのコイルを構成することが可能である。
【0025】
本発明の高周波コイルは、適用されるMRI装置の性能や用途等によって種々の変更が可能であり、例えば、図示する例ではリング状導体1に共振容量3を挿入しているが、これは直線導体2に挿入してもよい。また直線導体の数は、図示するような8本に限らず、それより多くても少なくてもよく、直線導体の数を増やすことにより照射の均一度を向上できる。
【0026】
図3に本発明の高周波コイルの他の実施例を示す。図3(a)は図1の高周波コイルを直交コイル10'として構成した実施例を示し、この高周波コイル10'はリング状導体1の2ヵ所、90度をなす位置に入力端子4a、4bが設けられている。この高周波コイルを照射コイルとして用いる場合には、これら入力端子4a、4bから90度位相の異なった照射パルス(高周波電流i、i’)を入力する。リング状導体1は1波長に整合が取れているため、入力端子4aから見た場合、それと90度位置(図2、接合点c)には電流分布が生じない。従って、この位置から照射パルスを入力しても2つの入力が互いに干渉することはなく、あたかも2つの照射コイルのように動作することができる。
【0027】
このように直交状態に配置された2つの照射コイルを使用することにより、必要な強度の照射パルスを得るのにパワーアンプの出力を半減することができる。また従来の直交照射方式では2つの照射コイルを必要としたのに対し、1つのコイルで直交照射コイルを構成できるので、照射コイルの厚さを抑え、撮像空間を圧迫しないというメリットもある。
【0028】
この直交コイルは、端子4a、4bを出力端子とすることによりMRI装置の受信コイルとしても適用でき、検出効率を向上することができる。
【0029】
尚、このように本発明の高周波コイルを直交コイルとして用いる場合には、直線導体の数は2組の端子の角度に対応して所定の数とする必要がある。例えば2つの入力端子を90度の角度で設ける場合には、4の倍数、例えば8本ないしは12本が適当である。
【0030】
図3(b)は、本発明の高周波コイル10”の他の実施例を示す図で、この高周波コイルは中央にリング5を挿入したものである。既に述べたように直線導体2の本数は多いほど照射パルスの均一性が向上すると考えられるが、照射磁界強度は直線導体の集まる平面照射コイルの中心付近で高くなる。この高周波コイル10”では中心リング5を挿入することにより、中心付近において磁界強度が高くなることを低減できる。中心リング5を挿入した場合にも、コイルの動作原理は図1の高周波コイルと全く同様である。
【0031】
次に上述した高周波コイルを組込んだ本発明のMRI装置について説明する。
図4は垂直磁場方式のMRI装置の全体構成概略を示すブロック図で、このMRI装置は、主として被検体14の置かれる測定空間に静磁場を発生する磁場発生装置11、静磁場に重畳される傾斜磁場を発生する傾斜磁場コイル12、被検体14に高周波磁場を照射する照射コイル10、被検体14から発生する核磁気共鳴(NMR)信号を受信する受信コイル13、被検体14を寝かせて測定空間に搬送するためのベッド15、これらを制御するためのMRIユニット16及び表示装置17より構成される。
【0032】
MRIユニット15は、撮像における種々のパルスシーケンスをコントロールする制御装置18、制御装置18のコントロールに従って照射コイル10により被検体14にスピン励起のための高周波パルスを照射する高周波装置19、傾斜磁場電源20及び受信コイル17で検出し、高周波装置19で収集した信号データに画像再構成演算等を行なう画像データ演算装置21により構成される。表示装置17は演算装置21で得られたMRI画像を表示する。
【0033】
磁場発生装置11は、被検体14の周りのある広がりをもった空間に垂直に強く均一な静磁場を発生させるもので、永久磁石方式あるいは超電導方式等の磁場発生手段からなり、術者や操作者が被検体の近くで生検等の処置を施すことができるようにオープン構造になっている。
【0034】
傾斜磁場コイル12は、X、Y、Zの3軸方向のコイルをそれぞれ平板状にして組合せたもので、上下の磁場発生手段11に近接して3組配置されている。これら傾斜磁場コイル12は、制御装置18に制御される傾斜磁場電源20の出力電流によって被検体14の周りに必要な傾斜磁場空間を形成し、NMR信号に位置情報を与える。
【0035】
受信コイル13は、この実施例では検査部位(ここでは頭部)に応じた形状のコイルで検査に際して被検体14に装着される。
【0036】
照射コイル10は、図1に示すようなリング状導体と放射線状の直線導体とからなる平面コイルで、図5に示すように2つの平面照射コイル10a、10bを磁場発生装置11内の磁場空間上下に対向して配置し、照射コイル10を構成する。このとき、上下の平面照射コイル10a、10bの入力端子4を互いに逆接続するか、あるいは入力する高周波パルスの位相を180度ずらして与える。これにより、上下のコイルの対応する直線導体2に大きさが同一で逆向きの電流iが流れ、照射コイル10の中心付近にそれぞれの電流によって同じ向きの磁束Bが生じる。既に述べたように入力された高周波電流により次々に電流の流れる直線導体2が変化することにより、それに伴い発生磁束Bの向きも変化し、磁場空間にスピンを励起するのに必要な水平の回転磁界を得ることができる。
【0037】
尚、図示していないが、この照射コイルには、受信コイルとの干渉を避けるために受信動作中はコイルループがオープンとなるようなデカップリング回路が付加されている。デカップリング回路はピンダイオードなどの高周波スイッチング素子をコイルループに直列に接続し、スイッチング電流を制御することによって実現できる。この場合、すべてのリング状導体と直線導体により作られるループに、このデカップリング回路を付加する必要がある。
【0038】
このように垂直磁場方式のMRI装置の照射コイルとして本発明の平面コイルを用いたことにより、オープン構造のMRI装置とすることができ、しかも高効率且つ均一性よく高周波パルスの照射を行えるので良好な画像を得ることができる。
【0039】
照射コイルとしては、図1に示す1つの入力端子4を設けた高周波コイルの他、本発明の高周波コイルの種々の変更例を採用することができる。例えば、照射コイルの照射効率の向上には直交照射方式が有効であり、このためには図3(a)に示すようにリング状導体1の2ヵ所に入力端子4a、4bを設けた高周波コイルを用い、これら入力端子4a、4bから90度位相の異なった照射パルス(高周波電流)を入力する。これにより1つのコイルで直交照射方式を実現でき、少ない照射パワーアンプの出力で効率良く回転磁場を照射することができる。
【0040】
また照射均一性を向上させるためには、直線導体数の多い高周波コイルを採用してもよい。この場合、照射磁界強度がコイル中央で高くなるのを低減するために図3(b)に示すように中心リング5を挿入した照射コイルを用いることが有効である。
【0041】
更に低磁場装置の場合には、リング状導体や直線導体に共振容量だけでなく、インダクタンスを付加することにより波長整合をとった高周波コイルを用いる。これにより比較的周波数の低い低磁場装置であっても、実用的な大きさの高周波コイルを組込むことができ、上述した実施例と同様の効果を得ることができる。
【0042】
以上、本発明による平面コイルの構成及びそれを組込んだMRI装置について説明したが、本発明による平面コイルはMRI装置の受信コイルとしても適用することができる。この応用例を図6に示す。
【0043】
本発明の平面コイルは、相反定理により、図2(d)に示す磁界Bによってそれと直交する直線導体に電流iが誘導されることにより磁界Bを検出する。NMR信号は静磁場と垂直な面内の回転磁場として検出されるので、本発明の平面コイルを受信コイルとして用いる場合は、信号回転面と平行な面であって被検体近傍に設置する。例えば、図6(a)は垂直磁場方式のMRI装置の場合で、この場合には平面受信コイル6を被検体の関心領域(ここでは頭部)の下側或いは上側に水平に設置する。また同図(b)は水平磁場方式のMRI装置の場合で、この場合には信号回転面は垂直となるので、頭頂部位置等に垂直に設置する。同図(c)は、装置例は少ないが、横磁場方式MRI装置の場合で、被検体14の左右位置に設置して使用できる。
【0044】
図6からも分かるように本発明の平面受信コイル6は、被検体の関心領域を覆わない形状であるので、被検体に閉塞感を与えることなく、またIVR等における処置を容易に行うことができる。
【0045】
また本発明の平面コイルを受信コイルとして用いる場合も、2つの出力端子を90度位置に設けたものを使用することにより、1つのコイルで直交受信コイルを構成できるので検出効率を高めることができ、また従来のコイルのように、2つのコイルを互いに検出方向を直交させて重ねて配置する必要がないので、撮像空間を広く確保できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上述べたように本発明によれば、平面形状であってしかも照射/受信効率のよい高周波コイルを構成できるので、撮像空間の開放を妨げることがなく、被検体へのアクセスが容易で広範囲な臨床応用を可能とする高性能なMRI装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による高周波コイルの一実施例を示す構成図。
【図2】本発明による照射コイルの原理を説明する図。
【図3】(a)及び(b)はそれぞれ本発明による高周波コイルの一実施例を示す構成図。
【図4】本発明が適用されるMRI装置の構成図。
【図5】MRI装置における照射コイルの配置を説明する図。
【図6】本発明による受信コイルの配置を説明する図。
【図7】(a)は従来の平面コイル及びその感度分布を示す図、(b)は従来の平面コイルを直交コイルとして用いた場合を示す図。
【符号の説明】
【0048】
1・・・・・・リング状導体
2・・・・・・直線導体
3・・・・・・共振容量
4、4a、4b・・・・・・入力端子
5・・・・・・中心リング
6・・・・・・平面受信コイル
10、10a、10b・・・・・・照射コイル
10'、10"・・・・・・照射コイル
11・・・・・・磁場発生装置(磁気回路)
12・・・・・・傾斜磁場コイル
21・・・・・・演算装置(画像再構成手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージング装置において被検体に高周波磁場を照射し及び/又は前記被検体から発生する磁気共鳴信号を検出する高周波コイルであって、
リング状導体と、このリング状導体の内側を放射状に接続した複数の直線導体と、前記リング導体あるいは直線導体に接続又は分布された複数のキャパシタンスとを備えたことを特徴とする平面状の高周波コイル。
【請求項2】
前記キャパシタンスは、前記リング状導体を流れる高周波電流の1波長と整合するように調整されていることを特徴とする請求項1記載の高周波コイル。
【請求項3】
前記リング状導体の少なくとも2箇所に信号入力手段及び/又は信号出力手段を有することを特徴とする請求項1記載の高周波コイル。
【請求項4】
被検体に静磁場を与える磁気回路と、前記被検体に傾斜磁場を印加する傾斜磁場コイルと、前記被検体を構成する原子の原子核に磁気共鳴を起こさせる高周波パルスを印加する照射コイルと、前記被検体から発生する磁気共鳴信号を検出する受信コイルと、検出された磁気共鳴信号を使って画像を再構成する画像再構成手段とを備えた磁気共鳴イメージング装置において、
前記照射コイル及び/又は受信コイルが、請求項1ないし3いずれか1項記載の平面状の高周波コイルであって前記磁気回路の形成する磁場と垂直となる面に配置されていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
2つの前記平面状の高周波コイルを、前記被検体を挟んで対向した位置に配置したことを特徴とする請求項4記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記平面状高周波コイルの2個所に信号の入出力手段を設け、1つのコイルで直交照射コイルあるいは直交受信コイルを構成したことを特徴とした請求項4又は5記載の磁気共鳴イメージング装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴イメージング装置において被検体に高周波磁場を照射し及び/又は前記被検体から発生する磁気共鳴信号を検出する高周波コイルであって、
同心円状に配置された1以上のリング状導体と、最大径のリング状導体の内側を放射状に接続した複数の直線導体と、前記リング導体あるいは直線導体に挿入又は分布された複数のキャパシタンスとを備えている平面状の高周波コイルにおいて、
前記キャパシタンスは、前記リング状導体に1波長の電流分布が形成されるように調整されており、前記直線導体の数は8より大きい4の倍数であることを特徴とする高周波コイル。
【請求項2】
前記リング状導体の少なくとも2箇所に信号入力手段及び/又は信号出力手段を有することを特徴とする請求項1記載の高周波コイル。
【請求項3】
被検体に静磁場を与える磁気回路と、前記被検体に傾斜磁場を印加する傾斜磁場コイルと、前記被検体を構成する原子の原子核に磁気共鳴を起こさせる高周波パルスを印加する照射コイルと、前記被検体から発生する磁気共鳴信号を検出する受信コイルと、検出された磁気共鳴信号を使って画像を再構成する画像再構成手段とを備えた磁気共鳴イメージング装置において、
前記照射コイル及び/又は受信コイルが、請求項1又は2に記載の平面状の高周波コイルであって前記磁気回路の形成する磁場と垂直となる面に配置されていることを特徴とする磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
2つの前記平面状の高周波コイルを、前記被検体を挟んで対向した位置に配置したことを特徴とする請求項記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記平面状高周波コイルの2個所に信号の入出力手段を設け、1つのコイルで直交照射コイルあるいは直交受信コイルを構成したことを特徴とした請求項3又は4記載の磁気共鳴イメージング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−272004(P2006−272004A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−190509(P2006−190509)
【出願日】平成18年7月11日(2006.7.11)
【分割の表示】特願平9−165877の分割
【原出願日】平成9年6月23日(1997.6.23)
【出願人】(000153498)株式会社日立メディコ (1,613)
【Fターム(参考)】