説明

高周波シールドケースの配線構造

【目的】 遮蔽と信号配線を1種類の線材で行え、シールドケース内で離れた回路間を配線する場合、遮蔽の溝の一部を配線の溝として共用でき、プリント板の実装面積を増大させてスペース効率の向上が図れる。
【構成】 シールドケース1の上面1aには、個々に回路4(4A,4B,4C)を形成するプリント板5(5A,5B,5C)が取り付けられた複数の開口部3(3A,3B,3C)が区画形成されているとともに、外縁1bに沿って全周に溝6(6A,6B)が形成されている。この溝6は配線対象となるプリント板5(例えば5Aと5C)の開口部3A,3Cに連通しており、溝6には外周7aが導電性を有する遮蔽・配線兼用ケーブル7が嵌合している。そして、開口部3を覆うようにシールドケース1にフタ8が取付固定されると、フタ8の押圧によって遮蔽・配線兼用ケーブル7が変形し、導電性を有する外周7aがフタ8および溝6と適正に接触してアースされる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、個々にプリント板に形成された回路間あるいは各回路と外部との間で信号が干渉しないように構成された高周波シールドケースの配線構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図3(a),(b)は例えば個々にプリント板に形成された回路間あるいは個々の回路と外部との間で信号が干渉しないように遮蔽された高周波シールドケースの配線構造の一例を示している。
【0003】
図示の配線構造によるシールドケース11には、例えば型成形あるいは切削成形により周囲が所定厚さの壁12で囲まれて区画された複数の開口部13(13A,13B,13C)が形成されている。個々の開口部13の底面13aには、所定の回路14(14A,14B,14C)を構成するプリント板15(15A,15B,15C)が取り付けられている。また、シールドケース11の上面11aには、個々の開口部13を覆うようにしてフタ16がネジ等により取付固定されている。
【0004】
ところで、この種の配線構造では、図4(a)に示すようにシールドケース11の上面11aとフタ16の裏面16aとの接触面を拡大して見ると、シールドケース11およびフタ16の各面11a,16aには凹凸があるため、フタ16をシールドケース11に固定した際に接触面に隙間17が生じ、この隙間17から信号が漏れて十分な高周波特性を得ることができない。
【0005】
そこで、この問題を解消するため、編み込んだ紐状の金属細線をゴムチューブに被覆したものや、単に金属細線を編んで紐状に形成したもので構成されるシールドワイヤ18をシールドケース11とフタ16との間に介挿して隙間17を無くし、回路14間あるいは個々の回路14と外部との間の遮蔽を行っている。さらに説明すると、図4(b)に示すようにシールドケース11の上面11aには、外縁11bより所定寸法H3内側で、全周に渡って連続する遮蔽用の溝19が外縁11bに沿って形成されており、この溝19に上述した構成のシールドワイヤ18を嵌合し、シールドワイヤ18の表出部分を押さえ付けてフタ16をシールドケース11に固定していた。
【0006】
ところで、上記の構造において、離れた回路14A,14C間を配線するには、図3(a),(b)に示すようにシールドワイヤ18が嵌合する溝19の内側に回路14A,14C間を結ぶように配線用の溝20を形成し、この溝20に同軸ケーブル等のケーブル21を通して行っていた。
【0007】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の配線構造では、遮蔽用の溝19と配線用の溝20はシールドケース11の上面11aに別々に形成していたので、加工が2度手間となり、加工に無駄な時間を要していた。また、各溝19,20はシールドケース11の外縁11bより所定寸法H3内側で並行に形成されており、各溝19,20間および溝19,20と開口部13との間にはある程度の幅を必要とするので、シールドケース11の外縁11bから開口部13までの幅H4が大きくなって開口部13の面積が減少し、これに伴って開口部13内に取り付けられるプリント板15の実装面積が減少してスペース効率の低下を招いていた。さらに、溝19,20に嵌合される線材としては、遮蔽用のシールドワイヤ18と配線用のケーブル21の2種類を必要としていた。
【0008】
そこで、本考案は上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、遮蔽と信号配線を1種類の線材で行え、シールドケース内で離れた回路間を配線する場合、遮蔽の溝の一部を配線の溝として共用でき、プリント板の実装面積を増大させてスペース効率の向上が図れる高周波シールドケースの配線構造を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本考案による高周波シールドケースの配線構造は、区画形成された複数の開口部3の各々に回路4を形成するプリント板5が取り付けられたシールドケース1と、前記各開口部を覆うように前記シールドケースに取付固定されるフタ8と、前記開口部が形成された前記シールドケースの上面1aの外縁1bに沿って全周に形成され、かつ配線対象となる前記プリント板の前記開口部に連通する溝6と、外周7aが導電性を有し、前記溝に嵌合された状態で前記フタの押圧により変形する外導体と、その内部に前記外導体から絶縁された信号ライン用配線材とを有する線材7とを備えたことを特徴としている。
【0010】
【作用】
シールドケース1の上面1aには、個々に回路4を形成するプリント板5が取り付けられた複数の開口部3が区画形成されているとともに、外縁1bに沿って全周に溝6が形成されている。この溝6は配線対象となるプリント板5の開口部3に連通しており、この溝6には外周7aが導電性を有する線材7が嵌合している。そして、開口部3を覆うようにシールドケース1に対してフタ8が取付固定されると、このフタ8の押圧によって線材7が変形し、線材7の外周7aがフタ8および溝6と適正に接触して各回路4と外部との間が遮蔽される。
【0011】
【実施例】
図1は本考案による高周波シールドケースの配線構造の一実施例を示す図、図2(a)は同配線構造の平面図、図2(b)は図2(a)におけるA−A線断面図である。
例えば矩形状に型成形あるいは切削成形された金属製のシールドケース1には、周囲が所定厚さの壁2で囲まれて区画された複数の開口部3(3A,3B,3C)が形成されている。個々の開口部3の底面3aには、所定の回路4(4A,4B,4C)を構成するプリント板5(5A,5B,5C)がネジ等により着脱可能に取り付けられている。
【0012】
また、シールドケース1の上面1aには、各回路4と外部との間の遮蔽するとともに、所望の回路4間の配線を行うための溝6が形成されている。さらに説明すると、この溝6は配線対象となる回路4(例えば回路4Aと回路4C)が形成されたプリント板5の開口部3に分岐して連通するべく、外縁1bより所定幅H1内側で、シールドケース1の外縁1bに沿って全周に連続して形成されており、この溝6には線材としての遮蔽・配線兼用ケーブル7が嵌合している。
【0013】
遮蔽・配線兼用ケーブル7は信号の伝送が可能で、外周7aが導電性を有し、溝5に嵌合した際にフタ8の押圧力によって変形するもので、シールドワイヤの性能を有しており、例えば中心導体が銅線等で構成され、柔軟性を得るための材質としてエラストマー樹脂、シリコン、ウレタンゴム等が使用され、外周7aが金属細線を編み込んだ編紐で構成されている。
【0014】
次に、上記の構成は、シールドケース1内の離れた回路4間を配線する場合に適用され、本実施例では、回路4が3つで構成されているので、回路4Aと回路4C間の配線を例にとって説明する。
【0015】
まず、配線対象となる回路4Aと回路4C間の溝6Aに遮蔽・配線兼用ケーブル7Aを嵌合して配線する。次に、溝6Aの分岐点6a,6bに位置する遮蔽・配線兼用ケーブル7Aの表面に突き当てるようにして残りの溝6Bに別の遮蔽・配線兼用ケーブル7Bを嵌合する。この状態で、開口部3を覆うようにシールドケース1に対してフタ8を取付固定する。そして、フタ8の押圧により遮蔽・配線兼用ケーブル7A,7Bが変形し、各ケーブル7A,7Bの導電性を有する外周7a部分がフタ8および溝6と適正に接触してアースされる。
【0016】
この結果、各回路4A,4B,4Cと外部との間が遮蔽され、遮蔽・配線兼用ケーブル7Aにより配線された所望の回路4間(回路4Aと回路4C間)で相互に信号の伝送が可能となる。
【0017】
従って、上述した実施例では、各回路間および各回路と外部との間の遮蔽と、所望の回路間の配線を1種類の線材6で行うことができる。また、シールドケース1内の離れた回路4間を配線する場合、回路14間の配線にシールドワイヤの性能を有するケーブルを使用して遮蔽用と配線用の溝6の一部を共用することができる。これにより、溝6の加工を従来に比べて短縮でき、余計な加工時間を削減することができる。
【0018】
また、従来のように遮蔽用と配線用の溝を並行して形成する必要がなく、溝の一部を遮蔽用と配線用に共用できるので、シールドケース1の外縁1bから開口部3までの外周壁の厚みを抑えて開口部3に取り付けられるプリント板5の実装面積を増大させることができる。
【0019】
ところで、上述した実施例では、シールドケース1の上面1aに対し、3つの開口部3A,3B,3Cを横に並べて形成し、各開口部3A,3B,3Cに回路4A,4B,4Cを構成するプリント板5A,5B,5Cを取り付けた場合を例にとって説明したが、シールドケース1の縦横に複数のプリント板を並べて形成してもよい。
【0020】
【考案の効果】
以上説明したように、本考案の高周波シールドケースの配線構造によれば、遮蔽と配線を1種類の線材で行うことができる。また、シールドケース内の離れた回路間を配線する場合には、遮蔽の溝の一部を配線の溝として共用できるので、従来に比べて溝の加工に要する余計な時間を削減でき、シールドケースの外縁から開口部までの外周壁の厚みを抑えてプリント板の実装面積を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案による高周波シールドケースの配線構造の一実施例を示す分解斜視図
【図2】(a)同配線構造の平面図
(b)(a)におけるA−A線断面図
【図3】(a)従来の高周波シールドケースの配線構造の一例を示す平面図
(b)(a)におけるB−B線断面図
【図4】(a)シールドケースとフタの接触面の拡大断面図
(b)接触面にシールドワイヤを介挿した状態の断面図
【符号の説明】
1…シールドケース、1a…上面、1b…外縁、3…開口部、4…回路、5…プリント板、6…溝、7…線材(遮蔽・配線兼用ケーブル)、8…フタ。

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 区画形成された複数の開口部(3)の各々に回路(4)を形成するプリント板(5)が取り付けられたシールドケース(1)と、前記各開口部を覆うように前記シールドケースに取付固定されるフタ(8)と、前記開口部が形成された前記シールドケースの上面(1a)の外縁(1b)に沿って全周に形成され、かつ配線対象となる前記プリント板の前記開口部に連通する溝(6)と、外周(7a)が導電性を有し、前記溝に嵌合された状態で前記フタの押圧により変形する外導体と、その内部に前記外導体から絶縁された信号ライン用配線材とを有する線材(7)とを備えたことを特徴とする高周波シールドケースの配線構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】実開平5−95096
【公開日】平成5年(1993)12月24日
【考案の名称】高周波シールドケースの配線構造
【国際特許分類】
【出願番号】実願平4−34997
【出願日】平成4年(1992)5月26日
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)