説明

高周波ノイズ生成回路及び高周波ノイズ生成方法

【課題】高周波クロック信号源を用いることなく、安価な構成により高周波ノイズを生成する。
【解決手段】低周波クロック信号を生成Slする低周波クロック信号源2と、前記低周波クロック信号Slが伝搬する第1のプリント基板配線3と、前記低周波クロック信号SlによるクロストークノイズN1,N2,N3,N4,・・,Nnが生ずる程度に前記第1のプリント基板配線3に近接した少なくとも1つの近接部4−1,4−2,4−3,4−4,・・,4−nを有する第2のプリント基板配線5と、前記第2のプリント基板配線5に設けられ、前記クロストークノイズN1,N2,N3,N4,・・,Nnの組み合わせからなるノイズ集合信号Snを利用して高周波ノイズ信号Snを生成するノイズ生成回路6とを有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波ノイズを生成するための回路に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIテスト等において、所定の周波数を有するノイズが意図的に生成されて利用される場合がある。このようなノイズを生成する際には、先ずその生成源となる信号が用意され、この生成源となる信号の周波数は、生成しようとするノイズの周波数に対応している必要がある。即ち、高周波ノイズを生成させるためには、その生成源となる高周波の信号が必要となる。このようなノイズの生成源となる信号を供給するものとして、低周波クロック信号源や高周波クロック信号源がある。
【0003】
図6において、一般的な低周波クロック信号源100の構造が示されている。この低周波クロック信号源100は、水晶振動子101と発振回路102とを有して構成され、水晶振動子101の発振に対して発振回路102がパルス成形、振幅の最適化等を施した信号を、低周波クロック信号Slとして出力するものである。
【0004】
図7において、一般的な高周波クロック信号源200の構造が示されている。通常、水晶振動子201は、数十MHzまでの周波数しか発生できないため、それ以上の周波数を有する高周波クロック信号Shを生成させるために、PLL回路204が利用される。PLL回路204は、位相検出器205と、分周回路206と、VCO207とを有して構成され、水晶振動子201と発振回路202とから出力された低周波クロック信号を分周回路206により分周した信号と、VCO207から出力された高周波クロック信号を分周回路206により分周した信号とを、位相検出器205で位相調整することで、所望の周波数の高周波クロック信号Shを生成するものである。
【0005】
ノイズを生成するための回路として、次のような従来発明が開示されている。第1の従来発明に係る回路は、初期値が設定可能なNビットカウンタと、複数のリングオシレータ発振器とを有し、複数のリングオシレータ発振器のうちのNビットカウンタの出力に応じた台数のリングオシレータ発振器を動作させて発生ノイズ量を定量的にコントロールするものである(特許文献1参照)。
【0006】
第2の従来発明に係る回路は、振幅確率分布、交叉率分布、パルス継続時間分布、及びパルス間隔分布を同時に指定して、所定のグループ順序ループを繰り返すことにより、周期性擬似雑音を発生させるものである(特許文献2参照)。
【0007】
第3の従来発明に係る回路は、予め不規則ノイズ信号の波形データを任意に組み合わせ、任意のエンベロープ波形で発生するためのゲートが組み込まれ、外部から与えられるパラメータに基づいて前記ノイズ信号の波形データ、エンベロープ波形の特性を選択可能とするゲート回路装置と、指定されるノイズ特性に基づくパラメータを発生して前記ゲート回路装置に与え、前記指定のノイズ特性を有する復号ノイズの波形データを前記ゲート回路装置に生成させる制御装置と、前記ゲート回路装置から出力される復号ノイズの波形データをアナログ信号に変換するディジタル・アナログ変換器とを具備するものであり、これによりガウス性ノイズ、非ガウス性ノイズのいずれも生成可能で、その特性を容易に制御できるとされている(特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2001−264394号公報
【特許文献2】特開2005−6233号公報
【特許文献3】特開2006−80879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、高周波クロック信号源200(図7参照)は、低周波クロック信号源100(図6参照)に比べてその構造が複雑であり、高価であるという欠点を有するものである。そのため、高周波クロック信号源200を用いることなく、高周波ノイズを生成することができる回路が求められていた。このような要望に対しては、上記いずれの従来発明も対処できるものではない。
【0009】
そこで、本発明は、高周波クロック信号源を用いることなく、安価な構成により高周波ノイズを生成することができる回路及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題の解決を図る本発明は、低周波クロック信号を生成する低周波クロック信号源と、前記低周波クロック信号が伝搬する第1のプリント基板配線と、前記低周波クロック信号によるクロストークノイズが生ずる程度に前記第1のプリント基板配線に近接した少なくとも1つの近接部を有する第2のプリント基板配線と、前記第2のプリント基板配線に設けられ、前記クロストークノイズの組み合わせからなるノイズ集合信号を利用して高周波ノイズ信号を生成するノイズ生成回路とを有して構成される高周波ノイズ生成回路である。
【0011】
また、本発明は、第1のプリント基板配線に低周波クロック信号を伝搬させ、第2のプリント基板配線に前記第1のプリント基板配線に近接する少なくとも1つの近接部を設け、これら近接部において生じたクロストークノイズの組み合わせからなるノイズ集合信号を利用して、高周波ノイズ信号を生成する高周波ノイズ生成方法である。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明によれば、高周波クロック信号源を用いることなく、安価な構成により高周波ノイズを生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1において、本発明に係る高周波ノイズ生成回路1の基本的な構成が示されている。この高周波ノイズ生成回路1は、低周波クロック信号Slを生成する低周波クロック信号源2と、前記低周波クロック信号が伝搬する第1のプリント基板配線3と、前記低周波クロック信号SlによるクロストークノイズN1,N2,N3,N4,・・,Nnが生ずる程度に前記第1のプリント基板配線3に近接した複数の近接部4−1,4−2,4−3,4−4,・・,4−nを有する第2のプリント基板配線5と、前記第2のプリント基板配線5に設けられ、前記クロストークノイズN1,N2,N3,N4,・・,Nnの組み合わせからなるノイズ集合信号Snに基づいて高周波ノイズ信号Shを生成するノイズ生成回路6とを有して構成される。
【0014】
このように、前記低周波クロック信号Slが伝搬する前記第1のプリント基板配線3に、意図的に前記第2のプリント基板配線5を複数の箇所で近接させてクロストークノイズN1,N2,N3,N4,・・,Nnを発生させ、これらのクロストークノイズN1,N2,N3,N4,・・,Nnのノイズ集合信号Snを、高周波ノイズ信号Shの生成源とすることにより、高価な高周波クロック信号源を用いることなく、高周波ノイズ信号Shを生成することができる。
【0015】
以下に、本発明のより具体的な実施の形態を示す。
【0016】
発明の実施の形態1.
図2において、本実施の形態に係る高周波ノイズ生成回路1が示されている。この高周波ノイズ生成回路1は、前記低周波クロック信号源2と、前記第1のプリント基板配線3と、前記第2のプリント基板配線5と、前記ノイズ生成回路6と、第1の終端抵抗部11と、第2の終端抵抗部12とを有して構成されている。
【0017】
前記第1の終端抵抗部11は、前記第1のプリント基板配線3の前記低周波クロック信号源2とは反対側の端部に設けられ、所定の抵抗器を挟んでGNDに接続されるものであり、この端部における信号の反射を抑えるものである。
【0018】
前記第2の終端抵抗部12は、前記第2のプリント基板配線5の前記ノイズ生成回路6とは反対側の端部に設けられ、所定の抵抗器を挟んでGNDに接続されるものであり、この端部における信号の反射を抑えるものである。
【0019】
図3において、前記第2のプリント基板配線5に設けられた前記近接部4−1,4−2,4−3,4−4,・・,4−nの構造を説明するための一部拡大図が示されている。図3(a)に示すように、前記第1のプリント基板配線3上の点20から点21までの区間と、前記第2のプリント基板配線5上の点30から点31までの区間とが、所定のクリアランスCをもって平行に配線されている。このクリアランスCは、前記第2のプリント基板配線5が前記第1のプリント基板配線3を伝搬する前記低周波クロック信号Slによるクロストークノイズの影響を受け得る距離である。例えば、前記低周波クロック信号Slの振幅の30%程度の振幅を持つノイズを前記第2のプリント基板配線5に発生させることは、通常において可能である。また、前記近接部4−1,4−2,4−3,4−4,・・,4−n以外の場所ではクロストークノイズが発生しないように十分なクリアランスが設けられている。また、前記点30(20)から点31(21)までの区間の配線長をDとし、図3(b)に示すように、1つの近接部4−1から次の近接部4−2までの前記第1のプリント基板配線3の配線長をL1、前記第2のプリント基板配線5の配線長をL2とする。前記配線長L1は、前記点22から前記点20までの配線の長さであり、前記配線長L2は、前記点32から前記点30までの配線の長さである。
【0020】
図4において、前記近接部4−1,4−2,4−3,4−4,・・,4−nにおける前記両プリント基板配線3,5の信号波形に関するタイムチャートが示されている。前記近接部4−1における信号波形において、前記低周波クロック信号Slの立ち上がりエッジがこの近接部4−1を通過する際には、前記第2のプリント基板配線5に上向きのノイズが発生し、前記低周波クロック信号Slの立ち下がりエッジが通過する際には、下向きのノイズが発生する。この時発生するノイズのパルス幅は、この近接部4−1の配線長D(図3(a)参照)と、前記低周波クロック信号Slのエッジ部分の時間とにより決定する。例えば、前記配線長Dの往復信号伝搬時間に比べてエッジが長いか等しい場合には、前記クロストークノイズのパルス幅はエッジ部分の時間の2倍の時間となる。一方、前記配線長Dの往復信号伝搬時間に比べてエッジが短い場合には、その差分の時間をエッジ部分の時間の2倍の時間に足したものとなる。ここでは、前者の場合で説明する。
【0021】
ある近接部4−nから次の近接部4−(n+1)までの前記第1のプリント基板配線3と前記第2のプリント基板配線5との配線長の差を、前記クロストークノイズのパルス幅Wnと同じだけ前記第2のプリント基板配線5に持たせた場合、即ちL2=L1+Wn(図3(b)参照)とした場合、図4中4−2信号波形として示すように、前記近接部4−1で発生したノイズパルスと前記近接部4−2で発生したノイズパルスとが連続する。これと同様に近接部4−9まで配線した場合、図中4−9信号波形として示すように、ノイズパルスは前記低周波クロック信号Slの1周期分連続したものとなり、前記低周波クロック信号S1の周期の9倍の周波数を持つ前記ノイズ集合信号Snを得ることができる。
【0022】
このように、前記近接部4−1,4−2,4−3,4−4,・・,4−nの配線長Dと前記低周波クロック信号Slのエッジ部分の時間とにより、前記クロストークノイズのパルス幅が決定される。従って、前記低周波クロック信号Slのエッジ部分の時間は固定的であると仮定すると、前記近接部4−1,4−2,4−3,4−4,・・,4−nの前記配線長Dと、各プリント基板配線3,5の近接部4−1,4−2,4−3,4−4,・・,4−n間の前記配線長L1,L2(前記近接部4−1,4−2,4−3,4−4,・・,4−nの数)とを調整することにより、前記高周波ノイズ信号Shの生成源となる前記ノイズ集合信号Snの周波数を調整することができる。
【0023】
以上のように、本実施の形態によれば、安価な低周波クロック信号源2とプリント基板配線3,5のみにより、高周波ノイズ信号Shの生成源となるノイズ集合信号Snを生成することができる。
【0024】
発明の実施の形態2.
本実施の形態は、上記実施の形態1における第2の終端抵抗部22に替えて、図5に示す第2の終端抵抗部40を用いたものである。上記実施の形態1においては、GND電位を中心とした前記ノイズ集合信号Shを生成することができるが、本実施の形態によれば、抵抗器41,42の抵抗値を調整することにより、前記ノイズ集合信号Snの振幅を調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る高周波ノイズ生成回路の基本的な構造を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る高周波ノイズ生成回路の構造を示す図である。
【図3】(a)及び(b)近接部の構造を説明するための一部拡大図である。
【図4】各近接部における第1及び第2のプリント基板配線の信号波形に関するタイムチャートを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る第2の終端抵抗部の構造を示す図である。
【図6】従来の一般的な低周波クロック信号源の構造を示す図である。
【図7】従来の一般的な高周波クロック信号源の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0026】
1 高周波ノイズ生成回路
2 低周波クロック信号源
3 第1のプリント基板配線
4−1,4−2,4−3,4−4,・・,4−n 近接部
5 第2のプリント基板配線
6 ノイズ生成回路
11 第1の終端抵抗部
12 第2の終端抵抗部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低周波クロック信号を生成する低周波クロック信号源と、
前記低周波クロック信号が伝搬する第1のプリント基板配線と、
前記低周波クロック信号によるクロストークノイズが生ずる程度に前記第1のプリント基板配線に近接した少なくとも1つの近接部を有する第2のプリント基板配線と、
前記第2のプリント基板配線に設けられ、前記クロストークノイズの組み合わせからなるノイズ集合信号を利用して高周波ノイズ信号を生成するノイズ生成回路と、
を有して構成される高周波ノイズ生成回路。
【請求項2】
前記第2のプリント基板配線の前記近接部の配線長、及び/又は、前記近接部間の配線長は、生じさせようとする前記ノイズ集合信号の形状に基づいて設計されている、
請求項1記載の高周波ノイズ生成回路。
【請求項3】
前記第2のプリント基板配線の端部には、該端部における信号の反射を抑制する抵抗器が設けられ、
該抵抗器の抵抗値は、生じさせようとする前記ノイズ集合信号の波形に基づいて設定されている、
請求項1又は2記載の高周波ノイズ生成回路。
【請求項4】
第1のプリント基板配線に低周波クロック信号を伝搬させ、第2のプリント基板配線に前記第1のプリント基板配線に近接する少なくとも1つの近接部を設け、これら近接部において生じたクロストークノイズの組み合わせからなるノイズ集合信号を利用して、高周波ノイズ信号を生成する、
高周波ノイズ生成方法。
【請求項5】
前記第2のプリント基板配線の前記近接部の配線長、及び/又は、前記近接部間の配線長を調整することにより、前記ノイズ集合信号の波形を調整する、
請求項4記載の高周波ノイズ生成方法。
【請求項6】
前記第2のプリント基板配線の端部に設けられ該端部における信号の反射を抑制する抵抗器の抵抗値を調整することにより、前記ノイズ集合信号の波形を調整する、
請求項4又は5記載の高周波ノイズ生成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−253489(P2009−253489A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96772(P2008−96772)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)