説明

高周波ユニット

【課題】高周波回路のグラウンド強化が簡単かつ確実に行える高周波ユニットの提供。
【解決手段】高周波回路が配設された回路基板1と、回路基板1を収納するシールド枠5と、シールド枠5の内部空間を仕切るシールド板6と、シールド枠5の下部開口および上部開口を蓋閉する下カバー7および上カバー8とを備え、回路基板1がシールド板6に接地されていると共に、シールド板6の脚部6aが回路基板1を貫通している高周波ユニットにおいて、下カバー7の一部を切り起こして形成した短寸な第1の舌片7bと第2の舌片7cをそれぞれ対応する脚部6aに当接させる。両舌片7b,7cは形状および大きさが同等であり、第1の舌片7bは連結桟7dの一側縁を基端として回路基板1側へ斜めに延び、第2の舌片7cは連結桟7dの他側縁を基端として回路基板1側へ斜めに延びている。また、両舌片7b,7cは基端側で連結桟7dを共有しているため一体的に揺動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド枠とカバー体とに覆われた回路基板がシールド板に接地されていると共に、カバー体の一部をシールド板に当接させてグラウンドを強化している高周波ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波回路を配設した回路基板が板金製のシールドケースに収納・保持されている高周波ユニットにおいて、従来の一般的なシールドケースは、矩形状等に組み立てられたシールド枠(枠体)と、シールド枠の内部空間を仕切るシールド板(仕切り板)と、シールド枠の上部開口と下部開口をそれぞれ蓋閉する上カバーと下カバーとによって構成されており、シールド枠とシールド板は1枚の金属板を折り曲げて形成されることが多い。回路基板はシールド枠やシールド板に保持されて端子群を下方へ突出させており、この回路基板にチューナ部やIF部等の高周波回路が配設されていると共に、高周波回路の接地部がシールド板に半田付けされている。また、下カバーの所定個所を切り起こして形成された複数の弾性舌片がシールド板に弾接させてあり、こうすることによって高周波回路のグラウンドが強化されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように概略構成された従来の高周波ユニットは、回路基板に配設された高周波回路がシールドケースに覆われているため、電磁ノイズの飛び込みや飛び出しを軽減することができる。また、シールドケース内においてもノイズ源となる回路部の電磁ノイズをシールド板で遮って別の回路部へ漏れにくくしてあり、かつシールド板に下カバーの弾性舌片を弾接させて高周波回路のグラウンドを強化しているため、電磁ノイズの影響を受けにくい構造になっている。なお、かかる高周波ユニットは、シールドケースがマザーボード上に載置固定され、端子群がマザーボード側の外部回路と接続されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−275979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した高周波ユニットにおいて、回路基板の回路設計上の制約などの理由でノイズ源となる回路部どうし(例えばチューナ部とIF部)を近接して配設しなければならないときには、両回路部間をシールド板で仕切ることはもちろん、両回路部のグラウンドを特別に強化しておく必要がある。このようなとき、細長い切り起こし片である弾性舌片をシールド板に弾接させても所要のグラウンド強化は図れないので、図4に示すように、従来の高周波ユニットでは、下カバー12に絞り加工によって形成した一対の凸部12aをそれぞれシールド板11の対応する脚部11aに当接させていた。なお、図4において、符号10はシールド枠、13は上カバー、14は回路基板、15は端子をそれぞれ示している。また、符号12bは下カバー12に形成された弾性舌片を示している。
【0006】
しかしながら、弾性に乏しい凸部12aはシールド板11の脚部11aの高さ位置のばらつきを吸収することができないため、隣接する2個所に形成された一方の凸部12aを対応する脚部11aに当接させても他方の凸部12aが対応する脚部11aと接触しない虞があり、その場合、高周波回路のグラウンド強化が不十分となるため性能劣化を余儀なくされる。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高周波回路のグラウンド強化が簡単かつ確実に行える高周波ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明では、
高周波回路が配設された回路基板と、開口を有する枠状に形成されて前記回路基板を収納する板金製のシールド枠と、前記開口を蓋閉するように前記シールド枠に嵌着させた板金製のカバー体と、前記シールド枠の内部空間を仕切る板金製のシールド板とを備え、前記回路基板が前記シールド板に接地されていると共に、前記カバー体の一部を切り起こして前記シールド板に当接させている高周波ユニットにおいて、前記カバー体が、連結桟と、この連結桟の一側縁を基端とする第1の舌片と、前記連結桟の他側縁を基端とする第2の舌片とを有し、これら第1および第2の舌片がそれぞれ前記回路基板側へ斜めに延びて前記シールド板に当接していると共に、これら第1および第2の舌片が一体的に揺動可能に形成形成されているという構成にした。
【0009】
このように構成された高周波ユニットは、基端側で連結桟を共有する第1および第2の舌片が一体的に揺動可能であり、シールド板や舌片自体の高さ位置のばらつきによって一方の舌片が該シールド板に押し込まれると、連結桟を中心とするシーソー動作が行われて他方の舌片が逆向きに押し込まれるようになっているため、両舌片をシールド板に確実に当接させることができる。また、これら第1および第2の舌片は弾性片として形成する必要はないので長さ寸法を短く設定でき、カバー体の一部を切り起こして第1および第2の舌片を形成することも容易である。したがって、カバー体に形成した短寸な第1および第2の舌片によって高周波回路の所望の回路部のグラウンド強化が確実かつ効果的に行えるようになる。
【0010】
上記の構成において、カバー体がシールド枠の下部開口を蓋閉する下カバーであると共に、シールド板の隣接する2つの脚部が回路基板を貫通して第1の舌片と第2の舌片に個別に当接していると、シールド枠の上部開口を蓋閉する上カバーに切欠きや孔を形成する必要がなくなると共に、高周波回路の隣接する2つの回路部のグラウンド強化が確実かつ効果的に行えるため好ましい。
【0011】
また、上記の構成において、第1の舌片と第2の舌片は形状および大きさが同等であることが好ましく、こうすることによって両舌片を一体的に揺動させやすくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の高周波ユニットは、シールド板や舌片自体の高さ位置のばらつきによって一方の舌片が該シールド板に押し込まれると、連結桟を中心とするシーソー動作が行われて他方の舌片が逆向きに押し込まれるようになっているため、第1および第2の舌片をシールド板に確実に当接させることができ、かつ、両舌片は弾性片として形成する必要がないので長さ寸法を短く設定できる。それゆえ、板金製のカバー体に形成した短寸な第1および第2の舌片により、高周波回路のグラウンド強化が簡単、確実かつ効果的に行えるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態例に係る高周波ユニットの外観図でシールド枠や下カバー等を示す斜視図である。
【図2】図1の要部で第1および第2の舌片を示す拡大図である。
【図3】該高周波ユニットの断面図である。
【図4】従来例に係る高周波ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態を図1〜図3を参照して説明する。これらの図に示す高周波ユニットは、チューナ部やIF部等の高周波回路(図示せず)が配設された回路基板1と、回路基板1を収納・保持しているシールドケース2と、回路基板1から導出されて外方へ突出する端子3群と、シールドケース2に固定されて外方へ突出するRFコネクタ4とによって主に構成されている。この高周波ユニットは、シールドケース2をマザーボード9(図3参照)上に載置固定して端子3群を外部回路と接続させることによって、マザーボード9上に実装されるようになっている。また、回路基板1に配設された高周波回路がシールドケース2に覆われているため、電磁ノイズの飛び込みや飛び出しが軽減されるようになっている。
【0015】
シールドケース2は、回路基板1を収納する矩形状に組み立てられた板金製のシールド枠(枠体)5と、このシールド枠5の内部空間を仕切る板金製のシールド板(仕切り板)6と、シールド枠5の下部開口を蓋閉する板金製の下カバー7と、シールド枠5の上部開口を蓋閉する板金製の上カバー8とによって構成されている。シールド枠5とシールド板6は1枚の金属板を折り曲げて形成されており、シールド枠5の下端部にはマザーボード9に固定される複数の取付脚5aが突設されている。また、シールド板6の下端部には回路基板1を貫通して下カバー7と対向する複数の脚部6aが突設されており、これら脚部6aが前記高周波回路の接地部に半田付けされていると共に、一部の脚部6aに後述する下カバー7の舌片7a〜7cが当接させてある(図3参照)。この下カバー7と上カバー8は、いずれも周縁部分の弾性を利用してシールド枠5に嵌着させてある。
【0016】
回路基板1はシールド枠5やシールド板6に保持されており、前記高周波回路にRFコネクタ4を介してアンテナ信号が供給されるようになっている。この高周波回路を構成している複数の回路部は、シールド枠5の内部空間でシールド板6によって仕切られているため、異なる回路部どうしの間で電磁ノイズの干渉が起こりにくくなっている。また、この高周波回路の接地部はシールド枠5やシールド板6に導通されている。
【0017】
下カバー7には、複数個所を切り起こすことによって弾性舌片7aと短寸な第1および第2の舌片7b,7cとが形成されている。これら舌片7a〜7cは、それぞれシールド板6の相異なる脚部6aに当接しており、これによって前記高周波回路のグラウンドを強化している。このうち第1および第2の舌片7b,7cは、ノイズ源となる2つの回路部のグラウンドを特別に強化するために形成したものであり、図3に示すように、シールド板6の隣接する2つの脚部6aに第1の舌片7bと第2の舌片7cを個別に当接させている。図1と図2に示すように、第1の舌片7bは下カバー7に形成した連結桟7dの一側縁を基端として回路基板1側へ斜めに延びる三角形状の舌片であり、第2の舌片7cは連結桟7dの他側縁を基端として回路基板1側へ斜めに延びる三角形状の舌片である。これら第1および第2の舌片7b,7cは形状および大きさが同等である。また、両舌片7b,7cは基端側で連結桟7dを共有しているため一体的に揺動可能である。
【0018】
このように本実施形態例に係る高周波ユニットの下カバー7には、基端側で連結桟7dを共有して一体的に揺動可能な第1および第2の舌片7b,7cが形成してあり、シールド板6の各脚部6aの高さ位置や舌片7b,7c自体の高さ位置のばらつきによって、一方の舌片7b(または7c)が対応する脚部6aに押し込まれると、連結桟7dを中心とするシーソー動作が行われて他方の舌片7c(または7b)が逆向きに押し込まれるようになっているため、両舌片7b,7cをそれぞれ対応する脚部6aに確実に当接させることができる。また、これら第1および第2の舌片7b,7cは、弾性片として形成する必要がないため長さ寸法を短く設定できる。それゆえ、これら第1および第2の舌片7b,7cによって高周波回路の所望の回路部のグラウンド強化を確実かつ効果的に行うことができる。なお、下カバー7の一部を切り起こして弾性舌片7aや第1および第2の舌片7b,7cを形成することは容易である。また、これら各舌片7a〜7cは下カバー7に形成されており、同様の舌片を上カバー8に形成する必要はないので、シールド性能に悪影響を及ぼす虞はない。
【0019】
なお、第1の舌片7bと第2の舌片7cは形状や大きさが相異なるものであってもよいが、本実施形態例のように、両舌片7b,7cの形状および大きさが同等であると、両舌片7b,7cを一体的に揺動させやすくなるため好ましい。
【符号の説明】
【0020】
1 回路基板
2 シールドケース
3 端子
4 RFコネクタ
5 シールド枠(枠体)
6 シールド板(仕切り板)
6a 脚部
7 下カバー
7a 弾性舌片
7b 第1の舌片
7c 第2の舌片
7d 連結桟
8 上カバー
9 マザーボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波回路が配設された回路基板と、開口を有する枠状に形成されて前記回路基板を収納する板金製のシールド枠と、前記開口を蓋閉するように前記シールド枠に嵌着させた板金製のカバー体と、前記シールド枠の内部空間を仕切る板金製のシールド板とを備え、前記回路基板が前記シールド板に接地されていると共に、前記カバー体の一部を切り起こして前記シールド板に当接させている高周波ユニットであって、
前記カバー体が、連結桟と、この連結桟の一側縁を基端とする第1の舌片と、前記連結桟の他側縁を基端とする第2の舌片とを有し、これら第1および第2の舌片がそれぞれ前記回路基板側へ斜めに延びて前記シールド板に当接していると共に、これら第1および第2の舌片が一体的に揺動可能に形成されていることを特徴とする高周波ユニット。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記カバー体が前記シールド枠の下部開口を蓋閉する下カバーであると共に、前記シールド板の隣接する2つの脚部が前記回路基板を貫通して前記第1の舌片と前記第2の舌片に個別に当接していることを特徴とする高周波ユニット。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記第1の舌片と前記第2の舌片は形状および大きさが同等であることを特徴とする高周波ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−182928(P2010−182928A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26010(P2009−26010)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】