説明

高周波信号線路及び電子機器

【課題】容易に曲げることができると共に、信号線の特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれることを抑制できる高周波信号線路及び電子機器を提供することである。
【解決手段】誘電体素体12は、保護層14及び誘電体シート18a〜18cが積層されてなり、かつ、表面及び裏面を有する。信号線20は、誘電体素体12に設けられている線状の導体である。グランド導体22は、誘電体素体12に設けられ、かつ、誘電体シート18aを介して信号線20と対向しており、信号線20に沿って連続的に延在している。グランド導体24は、誘電体素体12に設けられ、かつ、信号線20を挟んでグランド導体22と対向しており、複数の開口30が信号線20に沿って並ぶように設けられている。信号線20に関してグランド導体22側に位置する誘電体素体12の表面が、バッテリーパック206に対して接触する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号線路及び電子機器に関し、より特定的には、信号線及び該信号線に対向するグランド導体を備えている高周波信号線路を備えた高周波信号線路及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波回路間を接続するための高周波線路としては、同軸ケーブルが一般的に用いられる。同軸ケーブルは、曲げ等の変形が容易であり、かつ、安価であることから広く用いられている。
【0003】
ところで、近年、移動体通信端末等の高周波機器の小型化が進んでいる。そのため、高周波機器において、円形の断面形状を有する同軸ケーブルを配置するスペースを確保することが困難になってきている。そこで、ストリップラインが可撓性の積層体内に形成された高周波信号線路が用いられることがある。
【0004】
トリプレート型のストリップラインは、信号線がグランド導体により挟まれた構造を有している。該高周波信号線路の積層方向の厚みは、同軸ケーブルの直径よりも小さいので、高周波信号線路は、同軸ケーブルの収容が不可能である小さなスペースに収容可能である。
【0005】
また、前記高周波信号線路に関連する発明としては、特許文献1に記載のフレキシブル基板が知られている。特許文献1に記載のフレキシブル基板では、グランド導体に開口部が設けられており、全面に形成されたグランド導体で挟まれたストリップラインと比較して容易に曲げることができるように構成されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のフレキシブル基板では、開口からフレキシブル基板の外部に電磁界が漏れるおそれがある。そのため、フレキシブル基板の周囲に誘電体や金属体等の物品が設けられていると、フレキシブル基板の信号線と物品との間で電磁界結合が発生する。その結果、フレキシブル基板の信号線の特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−123740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、容易に曲げることができると共に、信号線の特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれることを抑制できる高周波信号線路及び電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る高周波信号線路は、絶縁体層からなり、かつ、第1の主面及び第2の主面を有する素体と、前記素体に設けられている線状の信号線と、前記素体に設けられ、かつ、前記信号線と対向しているグランド導体であって、前記信号線に沿って延在する第1のグランド導体と、前記素体に設けられ、かつ、前記絶縁体層を介して前記第1のグランド導体と対向しているグランド導体であって、複数の開口が前記信号線に沿って並ぶように設けられており、該信号線からみて前記第2の主面側に設けられた第2のグランド導体と、を備えており、前記信号線からみて前記第1のグランド導体側の前記高周波信号線路の主面側は、金属物品に対する接触面であり、前記第1のグランド導体は、はんだ又は導電性接着剤を介して、前記金属物品に対して電気的に接続されること、を特徴とする。
【0010】
本発明の一形態に係る電子機器は、前記高周波信号線路と、前記高周波信号線路の前記第1の主面が接触する前記金属物品と、を備えること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容易に曲げることができると共に、信号線の特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る高周波信号線路の外観斜視図である。
【図2】図1の高周波信号線路の誘電体素体の分解図である。
【図3】図1の高周波信号線路の断面構造図である。
【図4】高周波信号線路の断面構造図である。
【図5】高周波信号線路のコネクタの外観斜視図及び断面構造図である。
【図6】高周波信号線路が用いられた電子機器をy軸方向及びz軸方向から平面視した図である。
【図7】図6(a)のCにおける断面構造図である。
【図8】第1の実施形態の第1の変形例に係る取り付け方法によって高周波信号線路をバッテリーパックに固定した際の断面構造図である。
【図9】第1の実施形態の第2の変形例に係る取り付け方法によって高周波信号線路をバッテリーパックに固定した際の断面構造図である。
【図10】第1の実施形態の第3の変形例に係る取り付け方法が適用された電子機器内部の外観斜視図である。
【図11】第1の実施形態の第1の変形例に係る高周波信号線路の積層体の分解図である。
【図12】図11の高周波信号線路をz軸方向から透視した図である。
【図13】第1の実施形態の第1の変形例に係る高周波信号線路の一部を抜き出したときの等価回路図である。
【図14】第1の実施形態の第2の変形例に係る高周波信号線路の積層体の分解図である。
【図15】第1の実施形態の第3の変形例に係る高周波信号線路の積層体の分解図である。
【図16】第1の実施形態の第4の変形例に係る高周波信号線路の積層体の分解図である。
【図17】第1の実施形態の第5の変形例に係る高周波信号線路の積層体の分解図である。
【図18】図17の高周波信号線路をz軸方向から透視した図である。
【図19】第1の実施形態の第6の変形例に係る高周波信号線路の積層体の分解図である。
【図20】図19の高周波信号線路をz軸方向から透視した図である。
【図21】本発明の第2の実施形態に係る高周波信号線路の外観斜視図である。
【図22】図21の高周波信号線路の誘電体素体の分解図である。
【図23】図21の高周波信号線路の断面構造図である。
【図24】高周波信号線路の断面構造図である。
【図25】電子機器200の断面構造図である。
【図26】高周波信号線路をバッテリーパックに貼り付ける際の断面構造図である。
【図27】第2の実施形態の第1の変形例に係る高周波信号線路の積層体の分解図である。
【図28】第2の実施形態の第2の変形例に係る高周波信号線路の積層体の分解図である。
【図29】第2の実施形態の第3の変形例に係る高周波信号線路の積層体の分解図である。
【図30】第2の実施形態の第4の変形例に係る高周波信号線路の積層体の分解図である。
【図31】第2の実施形態の第5の変形例に係る高周波信号線路の積層体の分解図である。
【図32】第2の実施形態の第6の変形例に係る高周波信号線路の積層体の分解図である。
【図33】第2の実施形態の第7の変形例に係る高周波信号線路の外観斜視図である。
【図34】図33の高周波信号線路の誘電体素体の分解図である。
【図35】図33の高周波信号線路の断面構造図である。
【図36】第2の実施形態の第8の変形例に係る高周波信号線路の外観斜視図である。
【図37】図36の高周波信号線路の誘電体素体の分解図である。
【図38】図36の高周波信号線路の断面構造図である。
【図39】第2の実施形態の第9の変形例に係る高周波信号線路の外観斜視図である。
【図40】図39の高周波信号線路の誘電体素体の分解図である。
【図41】図39の高周波信号線路の断面構造図である。
【図42】第2の実施形態の第10の変形例に係る高周波信号線路の誘電体素体の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下に、本発明の第1の実施形態に係る高周波信号線路及び電子機器について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(高周波信号線路の構成)
以下に、本発明の第1の実施形態に係る高周波信号線路の構成について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る高周波信号線路10の外観斜視図である。図2は、図1の高周波信号線路10の誘電体素体12の分解図である。図3は、図1の高周波信号線路10の断面構造図である。図4は、高周波信号線路10の断面構造図である。図5は、高周波信号線路10のコネクタ100bの外観斜視図及び断面構造図である。図1ないし図5において、高周波信号線路10の積層方向をz軸方向と定義する。また、高周波信号線路10の長手方向をx軸方向と定義し、x軸方向及びz軸方向に直交する方向をy軸方向と定義する。
【0015】
高周波信号線路10は、例えば、携帯電話等の電子機器内において、2つの高周波回路を接続するために用いられる。高周波信号線路10は、図1ないし図3に示すように、誘電体素体12、外部端子16(16a,16b)、信号線20、グランド導体22,24、ビアホール導体b1,b2,B1,B2及びコネクタ100a,100bを備えている。
【0016】
誘電体素体12は、z軸方向から平面視したときに、x軸方向に延在しており、線路部12a、接続部12b,12cを含んでいる。誘電体素体12は、図2に示す保護層14及び誘電体シート(絶縁体層)18(18a〜18c)がz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に積層されて構成されている積層体である。以下では、誘電体素体12のz軸方向の正方向側の主面を表面(第1の主面)と称し、誘電体素体12のz軸方向の負方向側の主面を裏面(第2の主面)と称す。
【0017】
線路部12aは、x軸方向に延在している。接続部12b,12cはそれぞれ、線路部12aのx軸方向の負方向側の端部及びx軸方向の正方向側の端部に接続されており、矩形状をなしている。接続部12b,12cのy軸方向の幅は、線路部12aのy軸方向の幅よりも広い。
【0018】
誘電体シート18は、z軸方向から平面視したときに、x軸方向に延在しており、誘電体素体12と同じ形状をなしている。誘電体シート18は、ポリイミドや液晶ポリマー等の可撓性を有する熱可塑性樹脂により構成されている。誘電体シート18aの厚さT1は、図4に示すように、誘電体シート18bの厚さT2よりも厚い。例えば、誘電体シート18a〜18cの積層後において、厚さT1は50〜300μmである。本実施形態では、厚さT1は150μmである。また、厚さT2は10〜100μmである。本実施形態では、厚さT2は50μmである。以下では、誘電体シート18のz軸方向の正方向側の主面を表面と称し、誘電体シート18のz軸方向の負方向側の主面を裏面と称す。
【0019】
また、誘電体シート18aは、線路部18a−a及び接続部18a−b,18a−cにより構成されている。誘電体シート18bは、線路部18b−a及び接続部18b−b,18b−cにより構成されている。誘電体シート18cは、線路部18c−a及び接続部18c−b,18c−cにより構成されている。線路部18a−a,18b−a,18c−aは、線路部12aを構成している。接続部18a−b,18b−b,18c−bは、接続部12bを構成している。接続部18a−c,18b−c,18c−cは、接続部12cを構成している。
【0020】
外部端子16aは、図1及び図2に示すように、接続部18a−bの表面の中央近傍に設けられている矩形状の導体である。外部端子16bは、図1及び図2に示すように、接続部18a−cの表面の中央近傍に設けられている矩形状の導体である。外部端子16a,16bは、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料により作製されている。また、外部端子16a,16bの表面には、金めっきが施されている。
【0021】
信号線20は、図2に示すように、誘電体素体12内に設けられている線状導体であり、誘電体シート18bの表面をx軸方向に延在している。信号線20の両端はそれぞれ、z軸方向から平面視したときに、外部端子16a,16bと重なっている。信号線20の線幅は、例えば100〜500μmである。本実施形態では、信号線20の線幅は240μmである。信号線20は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料により作製されている。
【0022】
グランド導体22(第1のグランド導体)は、図2に示すように、誘電体素体12内において信号線20よりもz軸方向の正方向側に設けられ、より詳細には、誘電体素体12の表面に最も近い誘電体シート18aの表面に設けられている。グランド導体22は、誘電体シート18aの表面においてx軸方向に延在しており、誘電体シート18aを介して信号線20と対向している。グランド導体22には、実質的に開口が設けられていない。すなわち、グランド導体22は、線路部12aにおける信号線20に沿ってx軸方向に連続的に延在する電極、所謂ベタ状の電極である。ただし、グランド導体22は線路部12aを完全に覆っている必要はなく、例えば、誘電体シート18の熱可塑性樹脂が熱圧着される際に発生するガスを逃がすためにグランド導体22の所定の位置に微小な穴などが設けられるものであってもよい。グランド導体22は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料により作製されている。
【0023】
また、グランド導体22は、線路部22a、端子部22b,22cにより構成されている。線路部22aは、線路部18a−aの表面に設けられ、x軸方向に延在している。端子部22bは、線路部18a−bの表面に設けられ、外部端子16aの周囲を囲む矩形状の環をなしている。端子部22bは、線路部22aのx軸方向の負方向側の端部に接続されている。端子部22cは、線路部18a−cの表面に設けられ、外部端子16bの周囲を囲む環状の矩形状をなしている。端子部22cは、線路部22aのx軸方向の正方向側の端部に接続されている。
【0024】
グランド導体24(第2のグランド導体)は、図2に示すように、誘電体素体12内において信号線20よりもz軸方向の負方向側に設けられ、より詳細には、誘電体シート18cの表面に設けられている。これにより、グランド導体24は、誘電体シート18b,18c間に設けられている。グランド導体24は、誘電体シート18cの表面においてx軸方向に延在しており、誘電体シート18bを介して信号線20と対向している。すなわち、グランド導体24は、信号線20を挟んでグランド導体22と対向している。グランド導体24は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料により作製されている。
【0025】
また、グランド導体24は、線路部24a、端子部24b,24cにより構成されている。線路部24aは、線路部18c−aの表面に設けられ、x軸方向に延在している。そして、線路部24aは、導体層が形成されていない複数の開口30と導体層が形成されている部分である複数のブリッジ部60とが交互に信号線20に沿って設けられることにより、はしご状をなしている。開口30は、図2及び図4に示すように、z軸方向から平面視したときに、長方形状をなしており、信号線20と重なっている。これにより、信号線20は、z軸方向から平面視したときに、開口30とブリッジ部60と交互に重なっている。また、開口30は、等間隔に並んでいる。
【0026】
端子部24bは、線路部18c−bの表面に設けられ、矩形状の環をなしている。端子部24bは、線路部24aのx軸方向の負方向側の端部に接続されている。端子部24cは、線路部18c−cの表面に設けられ、矩形状の環をなしている。端子部24cは、線路部24aのx軸方向の正方向側の端部に接続されている。
【0027】
以上のように、信号線20は、z軸方向の両側から誘電体層18a,18bを介してグランド導体22,24によって挟まれている。すなわち、信号線20及びグランド導体22,24は、トリプレート型のストリップライン構造をなしている。また、信号線20とグランド導体22との間隔は、図4に示すように誘電体シート18aの厚さT1と略等しく、例えば、50μm〜300μmである。本実施形態では、信号線20とグランド導体22との間隔は、150μmである。一方、信号線20とグランド導体24との間隔は、図4に示すように誘電体シート18bの厚さT2と略等しく、例えば、10μm〜100μmである。本実施形態では、信号線20とグランド導体24との間隔は、50μmである。すなわち、厚みT1は厚みT2よりも大きくなるように設計されている。
【0028】
以上のように、厚みT1を厚みT2よりも大きくすることで、グランド導体22と信号線20間に発生する静電容量が小さくなり、所定のインピーダンス(例えば50Ω)とするための信号線20の線幅を広くできる。これにより伝送ロスを小さくできるので、高周波信号線路の電気特性の向上が図れる。本実施形態では、グランド導体22と信号線20の間に発生する静電容量がインピーダンス設計の主であり、グランド導体24は信号の輻射を小さくするためのグランド導体としてインピーダンス設計している。すなわち、グランド導体22と信号線20とで特性インピーダンスを高く設定(例えば70Ω)し、グランド導体24を付加することによって高周波信号線路の一部に低インピーダンスが低くなる領域(例えば30Ω)を設けることにより、高周波信号線路全体のインピーダンスが所定のインピーダンス(例えば50Ω)になるように設計している。
【0029】
ビアホール導体b1は、誘電体シート18aの接続部18a−bをz軸方向に貫通しており、外部端子16aと信号線20のx軸方向の負方向側の端部とを接続している。ビアホール導体b2は、誘電体シート18aの接続部18a−cをz軸方向に貫通しており、外部端子16bと信号線20のx軸方向の正方向側の端部とを接続している。これにより、信号線20は、外部端子16a,16b間に接続されている。ビアホール導体b1,b2は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料により作製されている。
【0030】
ビアホール導体B1,B2はそれぞれ、誘電体シート18a,18bの線路部18a−a,18b−aをz軸方向に貫通しており、線路部18a−a,18b−aに複数ずつ設けられている。そして、ビアホール導体B1,B2は、互いに接続されることにより1本のビアホール導体を構成しており、グランド導体22とグランド導体24とを接続している。ビアホール導体B1,B2は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料により作製されている。
【0031】
保護層14は、誘電体シート18aの表面の略全面を覆っている。これにより、保護層14は、グランド導体22を覆っている。保護層14は、例えば、レジスト材等の可撓性樹脂からなる。
【0032】
また、保護層14は、図2に示すように、線路部14a及び接続部14b,14cにより構成されている。線路部14aは、線路部18a−aの表面の全面を覆うことにより、線路部22aを覆っている。
【0033】
接続部14bは、線路部14aのx軸方向の負方向側の端部に接続されており、接続部18a−bの表面を覆っている。ただし、接続部14bには、開口Ha〜Hdが設けられている。開口Haは、接続部14bの中央に設けられている矩形状の開口である。外部端子16aは、開口Haを介して外部に露出している。また、開口Hbは、開口Haのy軸方向の正方向側に設けられている矩形状の開口である。開口Hcは、開口Haのx軸方向の負方向側に設けられている矩形状の開口である。開口Hdは、開口Haのy軸方向の負方向側に設けられている矩形状の開口である。端子部22bは、開口Hb〜Hdを介して外部に露出することにより、外部端子として機能する。
【0034】
接続部14cは、線路部14aのx軸方向の正方向側の端部に接続されており、接続部18a−cの表面を覆っている。ただし、接続部14cには、開口He〜Hhが設けられている。開口Heは、接続部14cの中央に設けられている矩形状の開口である。外部端子16bは、開口Heを介して外部に露出している。また、開口Hfは、開口Heのy軸方向の正方向側に設けられている矩形状の開口である。開口Hgは、開口Heのx軸方向の正方向側に設けられている矩形状の開口である。開口Hhは、開口Heのy軸方向の負方向側に設けられている矩形状の開口である。端子部22cは、開口Hf〜Hhを介して外部に露出することにより、外部端子として機能する。
【0035】
コネクタ100a,100bはそれぞれ、接続部12b,12cの表面上に実装される。コネクタ100a,100bの構成は同じであるので、以下にコネクタ100bの構成を例に挙げて説明する。
【0036】
コネクタ100bは、図1及び図5に示すように、コネクタ本体102、外部端子104,106及び中心導体108及び外部導体110により構成されている。コネクタ本体102は、矩形状の板に円筒が連結された形状をなしており、樹脂等の絶縁材料により作製されている。
【0037】
外部端子104は、コネクタ本体102の板のz軸方向の負方向側の面において、外部端子16bと対向する位置に設けられている。外部端子106は、コネクタ本体102の板のz軸方向の負方向側の面において、開口Hf〜Hhを介して露出している端子部22cに対応する位置に設けられている。
【0038】
中心導体108は、コネクタ本体102の円筒の中心に設けられており、外部端子104と接続されている。中心導体108は、高周波信号が入力又は出力する信号端子である。外部導体110は、コネクタ本体102の円筒の内周面に設けられており、外部端子106と接続されている。外部導体110は、接地電位に保たれるグランド端子である。
【0039】
以上のように構成されたコネクタ100bは、外部端子104が外部端子16bと接続され、外部端子106が端子部22cと接続されるように、接続部12cの表面上に実装される。これにより、信号線20は、中心導体108に電気的に接続されている。また、グランド導体22,24は、外部導体110に電気的に接続されている。
【0040】
高周波信号線路10は、以下に説明するように用いられる。図6は、高周波信号線路10が用いられた電子機器200をy軸方向及びz軸方向から平面視した図である。図7は、図6(a)のCにおける断面構造図である。
【0041】
電子機器200は、高周波信号線路10、回路基板202a,202b、レセプタクル204a,204b、バッテリーパック(金属体)206及び筐体210を備えている。
【0042】
回路基板202aには、例えば、アンテナを含む送信回路又は受信回路が設けられている。回路基板202bには、例えば、給電回路が設けられている。バッテリーパック206は、例えば、リチウムイオン2次電池であり、その表面が金属カバーにより覆われた構造を有している。回路基板202a、バッテリーパック206及び回路基板202bは、x軸方向の負方向側から正方向側へとこの順に並んでいる。
【0043】
レセプタクル204a,204bはそれぞれ、回路基板202a,202bのz軸方向の負方向側の主面上に設けられている。レセプタクル204a,204bにはそれぞれ、コネクタ100a,100bが接続される。これにより、コネクタ100a,100bの中心導体108には、回路基板202a,202b間を伝送される例えば2GHzの周波数を有する高周波信号がレセプタクル204a,204bを介して印加される。また、コネクタ100a,100bの外部導体110は、回路基板202a,202b及びレセプタクル204a,204bを介して、グランド電位に保たれる。これにより、高周波信号線路10は、回路基板202a,202b間を電気的、物理的に接続している。
【0044】
ここで、誘電体素体12の表面(より正確には、保護層14の表面)は、図7に示すように、バッテリーパック206に対して接触している。そして、誘電体素体12の表面とバッテリーパック206とは、接着剤等により固定されている。誘電体素体12の表面は、信号線20に関してグランド導体22側に位置する主面である。よって、信号線20とバッテリーパック206との間には、ベタ状の(x軸方向に連続的に延在する)グランド導体22が位置している。
【0045】
(高周波信号線路の製造方法)
以下に、高周波信号線路10の製造方法について図2を参照しながら説明する。以下では、一つの高周波信号線路10が作製される場合を例にとって説明するが、実際には、大判の誘電体シートが積層及びカットされることにより、同時に複数の高周波信号線路10が作製される。
【0046】
まず、表面の全面に銅箔が形成された熱可塑性樹脂からなる誘電体シート18を準備する。誘電体シート18の銅箔の表面は、例えば、防錆のための亜鉛鍍金が施されることにより、平滑化されている。誘電体シート18は、20μm〜80μmの厚みを有する液晶ポリマーである。また、銅箔の厚みは、10μm〜20μmである。
【0047】
次に、フォトリソグラフィ工程により、図2に示す外部端子16及びグランド導体22を誘電体シート18aの表面に形成する。具体的には、誘電体シート18aの銅箔上に、図2に示す外部端子16(16a,16b)及びグランド導体22と同じ形状のレジストを印刷する。そして、銅箔に対してエッチング処理を施すことにより、レジストにより覆われていない部分の銅箔を除去する。その後、レジストを除去する。これにより、図2に示すような、外部端子16及びグランド導体22が誘電体シート18aの表面に形成される。
【0048】
次に、フォトリソグラフィ工程により、図2に示す信号線20を誘電体シート18bの表面に形成する。また、フォトリソグラフィ工程により、図2に示すグランド導体24を誘電体シート18cの表面に形成する。なお、これらのフォトリソグラフィ工程は、外部端子16及びグランド導体22を形成する際のフォトリソグラフィ工程と同様であるので、説明を省略する。
【0049】
次に、誘電体シート18a,18bのビアホール導体b1,b2,B1,B2が形成される位置に対して、裏面側からレーザービームを照射して、貫通孔を形成する。その後、誘電体シート18a,18bに形成した貫通孔に対して、導電性ペーストを充填する。
【0050】
次に、グランド導体22、信号線20及びグランド導体24がストリップライン構造をなすように、誘電体シート18a〜18cをz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に積み重ねる。そして、誘電体シート18a〜18cに対してz軸方向の正方向側及び負方向側から熱及び圧力を加えることにより、誘電体シート18a〜18cを軟化させて圧着・一体化するとともに、貫通孔に充填された導電性ペーストを固化して、図2に示すビアホール導体b1,b2,B1,B2を形成する。なお、各誘電体シート18は、熱圧着に代えてエポキシ系樹脂等の接着剤を用いて一体化されてもよい。また、ビアホール導体b1,b2,B1,B2は、誘電体シート18を一体化した後に、貫通孔を形成し、貫通孔に導電性ペーストを充填するかめっき膜を形成することによって形成されてもよい。
【0051】
最後に、樹脂(レジスト)ペーストを塗布することにより、誘電体シート18a上に保護層14を形成する。これにより、図1に示す高周波信号線路10が得られる。
【0052】
(効果)
以上のように構成された高周波信号線路10によれば、グランド導体24に複数の開口30が設けられているので、高周波信号線路10を容易に曲げることができる。
【0053】
また、高周波信号線路10によれば、信号線20の特性インピーダンスが所定の特性インピーダンス(例えば、50Ω)からずれることを抑制できる。より詳細には、特許文献1に記載のフレキシブル基板では、開口からフレキシブル基板の外部に電磁界が漏れるおそれがある。そのため、フレキシブル基板の周囲に誘電体や金属体等が設けられていると、フレキシブル基板の信号線と誘電体や金属体等との間で電磁界結合が発生する。その結果、フレキシブル基板の信号線の特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれてしまうおそれがある。
【0054】
一方、高周波信号線路10では、信号線20に関してグランド導体22側に位置する誘電体素体12の表面が、バッテリーパック206に対して接触しており、グランド導体24側に位置する誘電体素体12の表面はバッテリーパックなどの物品(金属体)からは離れた非接触面になっている。すなわち、信号線20とバッテリーパック206との間には、開口30が設けられたグランド導体24ではなく、実質的に開口が設けられていないグランド導体22が設けられている。これにより、信号線20とバッテリーパック206との間で電磁界結合が発生することが抑制される。その結果、高周波信号線路10では、信号線20の特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれることが抑制される。すなわち、通信端末のような電子機器において、その筐体内に設けられる搭載部品や電子部品との間、あるいは筐体とそれら部品との間に狭い隙間(空間)しかない場合であっても、グランド導体22側を物品(金属体)への接触面として、高周波信号線路10をこの隙間に配置することができるので、高周波信号線路の位置変動による特性変動を抑制しつつ、電子部品や筐体による影響を受けにくい高周波信号線路が得られる。特に、高周波信号線路10のように接着剤等により物品(金属体)に固定されていると、さらに確実に位置変動による特性変動を抑制できる。
【0055】
また、高周波信号線路10によれば、以下の理由によっても、高周波信号線路10を容易に曲げることが可能である。高周波信号線路10の特性インピーダンスZは、√(L/C)で表される。Lは、高周波信号線路10の単位長さ当たりのインダクタンス値である。Cは、高周波信号線路の単位長さ当たりの容量値である。高周波信号線路10は、Zが所定の特性インピーダンス(例えば、50Ω)となるように設計される。
【0056】
ここで、高周波信号線路10を容易に曲げることができるようにするためには、高周波信号線路10のz軸方向の厚み(以下、単に厚みと称す)を薄くすることが考えられる。ところが、高周波信号線路10の厚みを薄くすると、信号線20とグランド導体22,24との距離が小さくなり、容量値Cが大きくなってしまう。その結果、特性インピーダンスZが所定の特性インピーダンスよりも小さくなってしまう。
【0057】
そこで、信号線20のy軸方向の線幅(以下、単に線幅と称す)を細くして、信号線20のインダクタンス値Lを大きくすると共に、信号線20とグランド導体22,24との対向面積を小さくして、容量値Cを小さくすることが考えられる。
【0058】
しかしながら、細い線幅の信号線20を精度良く形成することは困難である。また、信号線20の線幅を細くすると伝送ロスが大きくなり、電気特性が劣化してしまう。
【0059】
そこで、高周波信号線路10では、開口30がグランド導体24に設けられている。これにより、信号線20とグランド導体24との対向面積が小さくなり、容量値Cが小さくなる。その結果、高周波信号線路10において、特性インピーダンスZを所定の特性インピーダンスに維持しつつ、容易に曲げることができるようになる。
【0060】
また、高周波信号線路10によれば、グランド導体24は、誘電体シート18b,18c間に設けられている。これにより、グランド導体24は、誘電体素体12の裏面において露出しない。そのため、誘電体素体12の裏面に他の物品が配置されたとしても、グランド導体24と他の物品とが直接に対向しないので、信号線20の特性インピーダンスの変動が抑制される。
【0061】
(変形例に係る取り付け方法)
以下に、第1の変形例に係る取り付け方法について説明する。図8は、第1の変形例に係る取り付け方法によって高周波信号線路10をバッテリーパック206に固定した際の断面構造図である。
【0062】
第1の変形例に係る取り付け方法では、グランド導体22は、バッテリーパック206に対して電気的に接続されている。より詳細には、保護層14には、開口Opが設けられている。これにより、グランド導体22の一部は、保護層14の開口Opを介して露出している。そして、開口Opにはんだや導電性接着剤が配置されて接続導体212が形成されることによって、グランド導体24は、バッテリーパック206に対して電気的に接続されると共に固定されている。
【0063】
以上のような取り付け方法が適用された高周波信号線路10では、グランド導体22,24は、端子部22b,22cを介して接地電位に保たれるのに加えて、金属物品であるバッテリーパック206を介して接地電位に保たれるようになる。よって、グランド導体22,24は、より安定して接地電位に保たれるようになる。このような金属物品としては、バッテリーパックに限らず、プリント配線基板(例えばグランド端子)や金属ケースなどでもよい。
【0064】
次に、第2の変形例に係る取り付け方法について説明する。図9は、第2の変形例に係る取り付け方法によって高周波信号線路10をバッテリーパック206に固定した際の断面構造図である。
【0065】
第2の変形例に係る取り付け方法では、高周波信号線路10は、バッテリーパック206の表面に沿って曲げられた状態で取り付けられている。高周波信号線路10は、容易に変形させることが可能であるので、バッテリーパック206に沿って曲げることが可能である。
【0066】
以下に、第3の変形例に係る取り付け方法について説明する。図10は、第3の変形例に係る取り付け方法が適用された電子機器200内部の外観斜視図である。
【0067】
図6に示す高周波信号線路10は、曲げられることなく、バッテリーパック206のz軸方向の負方向側の面上をx軸方向に延在している。
【0068】
一方、図10に示す高周波信号線路10では、接続部12b,12cは、線路部12aに対して曲げられている。これにより、高周波信号線路10は、バッテリーパック206のy軸方向の正方向側の側面上をx軸方向に延在している。高周波信号線路10は容易に曲げることができるため、このような配置が容易に実現できる。
【0069】
(第1の実施形態の第1の変形例に係る高周波信号線路)
以下に、第1の変形例に係る高周波信号線路の構成について図面を参照しながら説明する。図11は、第1の変形例に係る高周波信号線路10aの積層体12の分解図である。図12は、図11の高周波信号線路10aをz軸方向から透視した図である。図13は、第1の変形例に係る高周波信号線路10aの一部を抜き出したときの等価回路図である。
【0070】
高周波信号線路10と高周波信号線路10aとの相違点は、開口30の形状である。以下に、かかる相違点を中心に、高周波信号線路10aの構成について説明する。
【0071】
グランド導体24は、複数の開口30と複数のブリッジ部60とが交互に信号線20に沿って設けられることにより、はしご状をなしている。開口30は、図12に示すように、z軸方向から平面視したときに、信号線20と重なっており、信号線20に関して線対称な形状をなしている。すなわち、信号線20は、開口30のy軸方向の中央を横切っている。
【0072】
更に、信号線20が延在している方向(x軸方向)における開口30の中央を通過する直線Aであって、信号線20に直交する(すなわち、y軸方向に延びる)直線Aに関して、線対称な形状をなしている。以下により詳細に説明する。
【0073】
x軸方向における開口30の中央を含む領域を領域A1と定義する。また、ブリッジ部60に対応する領域を領域A2と定義する。また、領域A1と領域A2との間に位置する領域を領域A3と称す。領域A3は、領域A1のx軸方向の両隣に位置しており、領域A1と領域A2のそれぞれに隣接している。領域A2のx軸方向の長さ(つまりブリッジ部60の長さ)は、例えば、25〜200μmである。本実施形態では、領域A2のx軸方向の長さは、100μmである。
【0074】
直線Aは、図12に示すように、x軸方向における領域A1の中央を通過している。そして、領域A1における開口30の信号線20に直交する方向(y軸方向)の幅W1は、領域A3における開口30のy軸方向の幅W2よりも広い。すなわち、開口30は、x軸方向における開口30の中央付近において、開口30のその他の部分よりも幅が広くなる形状であって、直線Aに関して線対称な形状をなしている。そして、開口30において、y軸方向の幅が幅W1となっている領域が領域A1であり、y軸方向の幅が幅W2となっている領域が領域A3である。よって、開口30の領域A1,A3の境界には段差が存在している。幅W1は、例えば、500〜1500μmである。本実施形態では、幅W1は、900μmである。また、幅W2は、例えば、250〜750μmである。本実施形態では、幅W2は、480μmである。
【0075】
また、開口30のx軸方向の長さG1は、例えば、1〜5mmである。本実施形態では、長さG1は、3mmである。ここで、長さG1は、開口30における最大幅である幅W1よりも長い。そして、長さG1は、幅W1よりも2倍以上であることが好ましい。
【0076】
また、グランド導体24において、隣り合う開口30の間には、開口が設けられていない。より詳細には、隣り合う開口30に挟まれている領域A2内には、一様に導体層(ブリッジ部60)が広がっており、開口が存在しない。
【0077】
以上のように構成された高周波信号線路10aでは、信号線20の特性インピーダンスは、隣り合う2つのブリッジ部60間において、一方のブリッジ部60から他方のブリッジ部60に近づくにしたがって、最小値Z2、中間値Z3、最大値Z1の順に増加した後に、最大値Z1、中間値Z3、最小値Z2の順に減少するように変動する。より詳細には、開口30は、領域A1において幅W1を有しており、領域A3において幅W1よりも小さな幅W2を有している。そのため、領域A1における信号線20とグランド導体24との距離は、領域A3における信号線20とグランド導体24との距離よりも大きい。これにより、領域A1における信号線20に発生する磁界の強度が、領域A3における信号線20に発生する磁界の強度よりも大きくなり、領域A1におけるインダクタンス成分が大きくなる。つまり、領域A1においてはL性が支配的になる。
【0078】
更に、領域A2には、ブリッジ部60が設けられている。そのため、領域A3における信号線20とグランド導体24との距離は、領域A2における信号線20とグランド導体24との距離よりも大きい。これにより、領域A2における信号線20に発生する静電容量が、領域A3における信号線20に発生する静電容量よりも大きくなることに加えて、領域A2における磁界強度が領域A3における磁界強度より小さくなる。つまり、領域A2においてはC性が支配的になる。
【0079】
以上より、信号線20の特性インピーダンスは、領域A1において、最大値Z1となっている。すなわち、開口30は、信号線20の特性インピーダンスが最大値Z1となる位置において、幅W1を有している。また、信号線20の特性インピーダンスは、領域A3において、中間値Z3となっている。すなわち、開口30は、信号線20の特性インピーダンスが中間値Z3となる位置において、幅W2を有している。また、信号線20の特性インピーダンスは、領域A2において、最小値Z2となっている。
【0080】
これにより、高周波信号線路10は、図13に示す回路構成を有する。より詳細には、領域A1では、信号線20とグランド導体24との間に殆ど静電容量が発生しないので、主に、信号線20のインダクタンスL1によって特性インピーダンスZ1が発生する。また、領域A2では、信号線20とグランド導体24との間に大きな静電容量C3が発生しているので、主に、静電容量C3によって特性インピーダンスZ2が発生する。また、領域A3では、信号線20とグランド導体24との間に静電容量C3よりも小さな静電容量C2が発生しているので、信号線20のインダクタンスL2及び静電容量C2によって特性インピーダンスZ3が発生している。また、特性インピーダンスZ3は、例えば、55Ωである。特性インピーダンスZ1は、特性インピーダンスZ3よりも高く、例えば、70Ωである。特性インピーダンスZ2は、特性インピーダンスZ3よりも低く、例えば、30Ωである。また、高周波信号線路10全体の特性インピーダンスは、50Ωである。
【0081】
高周波信号線路10aによれば、信号線20の特性インピーダンスは、隣り合う2つのブリッジ部60間において一方のブリッジ部60から他方のブリッジ部60に近づくにしたがって、最小値Z2、中間値Z3、最大値Z1の順に増加した後に最大値Z1、中間値Z3、最小値Z2の順に減少するように変動している。これにより、高周波信号線路10aの薄型化が実現できるとともに、薄型であるにもかかわらず、信号線20の電極幅が広げられるので、信号線20およびグランド導体22、24において高周波電流の流れる電極部分の表面積を拡大することができ、高周波信号の伝送損失が小さくなる。また、図12に示すように、1周期(領域A1と2つの領域A2と領域A3)の長さALが1〜5mmほどと短いので、より高周波域まで不要輻射の抑制と伝送損失の改善ができる。また、領域A1の両端に領域A3を置くことで信号線20を流れる電流によって生じる強い磁界を領域A2に直接伝えないため領域A2のグランド電位が安定し、グランド導体24のシールド効果が保たれる。これにより不要輻射の発生が抑制できる。その結果、高周波信号線路10aでは、信号線20とグランド導体22、24との距離を小さくしたとしても信号線20の線幅を広くでき、特性インピーダンスを保ったまま伝送損失が小さく、不要輻射の小さい高周波信号線路10aの薄型化を図ることが可能となる。よって、高周波信号線路10aを容易に曲げることが可能となり、高周波信号線路10aを湾曲させて用いることが可能となる。
【0082】
また、高周波信号線路10aによれば、グランド導体24におけるグランド電位の安定化にともなう伝送ロスの低減、さらにはシールド特性の向上ができる。より詳細には、高周波信号線路10aでは、領域A1における開口30の幅W1は、領域A3における開口30の幅W2よりも広い。これにより、高周波信号線路10aでは、領域A1内に位置している信号線20の磁界エネルギーは、領域A3内に位置している信号線20の磁界エネルギーよりも高くなる。また、領域A2内に位置している信号線20の磁界エネルギーは、領域A3内に位置している信号線20の磁界エネルギーよりも低くなる。よって、信号線20の特性インピーダンスが、Z2、Z3、Z1、Z3、Z2・・・の順に繰り返し変動するようになる。よって、信号線20において、x軸方向に隣り合う部分における磁界エネルギーの変動が緩やかになる。その結果、単位構造(領域A1〜A3)の境界において磁界エネルギーが小さくなり、グランド導体のグランド電位の変動が抑制され、不要輻射の発生および高周波信号の伝送損失が抑制される。言い換えると、領域A3によって、ブリッジ部60における不要インダクタンス成分の発生を抑制することができ、その結果、ブリッジ部60と信号線20との間の相互インダクタンス成分を小さくすることができ、グランド電位も安定化できる。ゆえに、薄型であって、グランド導体に比較的大きな開口30を有しているにもかかわらず、不要輻射を低減できるとともに、高周波信号の伝送損失を小さくすることができる。
【0083】
また、ブリッジ部60の延伸方向にビアホール導体B1を配置することで、さらにブリッジ部60における不要インダクタンス成分の発生を抑制できる。特に、開口30のx軸方向の長さG1(すなわち、ブリッジ部60間の長さ)は領域A1における開口部の幅W1よりも長くすることで、開口30の面積をできるだけ大きくして所定の特性インピーダンスを達成しつつも、不要輻射の発生を抑えることができる。
【0084】
また、開口30は、信号線20が延在している方向(x軸方向)に周期的に配置される構造の単位構造をなしている。これにより、開口30内における信号線20の特性インピーダンスの周波数特性を開口30のx軸方向の長さにより決定することができる。すなわち、信号線20の特性インピーダンスの周波数特性は、開口30の長さG1が短くなるほど、より高周波域まで拡大できる。開口30の長さG1が長くなるほど領域A1の幅W1を狭くし開口30を細くすることができる。そのため、不要輻射を小さくし、伝送損失を小さくできるので、高周波信号線路10aのインピーダンス特性の広帯域化、安定化が図られる。
【0085】
また、以下の理由によっても、高周波信号線路10aを湾曲して用いることが可能である。高周波信号線路10では、領域A1は、開口30のy軸方向の幅が最も大きくなっているので最も撓みやすい。一方、領域A2は、開口30が設けられていないので最も撓みにくい。そのため、高周波信号線路10aが曲げられて用いられる場合には、領域A1が曲げられ、領域A2が殆ど曲げられない。そこで、高周波信号線路10aでは、誘電体シート18よりも変形しにくいビアホール導体B1,B2は領域A2に設けられている。これにより、領域A1を容易に曲げることが可能となる。
【0086】
なお、高周波信号線路10aでは、信号線20とグランド導体22との距離T1の大きさ、及び、信号線20とグランド導体24との距離T2の大きさを調整することによっても、所定の特性インピーダンスを得ることができる。
【0087】
また、高周波信号線路10aでは、以下に説明する理由により、信号線20が延在している方向における開口30の長さG1は、幅W1よりも長い。より詳細には、高周波信号線路10における高周波信号の伝送モードは、TEMモードである。TEMモードでは、高周波信号の伝送方向(x軸方向)に対して、電界及び磁界が直交して形成される。すなわち、磁界は、信号線20を中心に円を描くように発生し、電界は、信号線20からグランド導体22,24に向かって放射状に発生する。ここで、グランド導体22に開口30が設けられると、磁界は、円形を描くので、開口30においてわずかに半径が大きくなるように膨らむだけで、高周波信号線路10a外へと大きく漏れない。一方、電界の一部が高周波信号線路10a外へ放射する。したがって、高周波信号線路10aの不要輻射では、電界放射が大きな割合を示している。
【0088】
ここで、電界は、高周波信号の伝送方向(x軸方向)に対して直交しているので、開口30のy軸方向の幅W1が大きくなると、開口30から放射される電界の量が多く(不要輻射が増加)なってしまう。一方で、幅W1は大きくするほど高周波伝送線路10aの特性インピーダンスを高くすることができるが、高周波伝送線路10aは、高周波信号の伝送方向(x軸方向)に対して直交する方向に信号線20からその線幅のおよそ3倍離れた距離で電界がほぼなくなるため、それ以上幅W1を広げても特性インピーダンスをさらに高くすることができない。したがって、幅W1が大きくなるほど不要輻射が増加することを考慮すると、必要以上に幅W1を広げることは好ましくない。さらに、幅W1が高周波信号の波長の1/2近くに達するとスロットアンテナとして電磁波が輻射されてしまい、さらに不要輻射が増加してしまう。
【0089】
一方、開口30のx軸方向の長さG1は、その長さが長くなるほど信号線20のグランド導体22との対向面積を減少させることができることから、信号線20の線幅を広くすることが可能となる。これにより、信号線20における高周波抵抗値を小さくすることができるという利点を有する。
【0090】
また、長さG1が幅W1よりも大きい場合、グランド導体22における反電流(渦電流)の高周波抵抗値が小さくなる。
【0091】
以上から、長さG1は幅W1よりも長くすることが好ましく、好ましくは2倍以上とすることが好ましい。ただし、開口30のx軸方向の長さG1が高周波信号の波長の1/2に近くなると、スロットアンテナとして開口30から電磁波が輻射されることから長さG1は、波長に対して十分に短い必要があることは考慮すべきである。
【0092】
(第1の実施形態の第2の変形例に係る高周波信号線路)
以下に、第2の変形例に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。図14は、第2の変形例に係る高周波信号線路10bの積層体12の分解図である。
【0093】
高周波信号線路10bと高周波信号線路10aとの相違点は、開口30の形状である。より詳細には、高周波信号線路10aの開口30のy軸方向の幅は、図11に示すように、段階的、非連続的に変化していた。これに対して、高周波信号線路10bの開口30のy軸方向の幅は、連続的に変化している。より詳細には、開口30のy軸方向の幅は、x軸方向において開口30の中央から離れるにしたがって連続的に小さくなっている。これにより、信号線20の磁界エネルギーおよび特性インピーダンスは、連続的に変化するようになる。
【0094】
なお、高周波信号線路10bでは、図14に示すように、領域A1は、直線Aを中心として設けられており、開口30のy軸方向の幅が幅W1となっている部分を含む領域である。したがって、信号線20の特性インピーダンスは、領域A1内において最大値Z1となっている。また、領域A2は、開口30間に設けられており、ブリッジ部60が設けられている領域である。したがって、信号線20の特性インピーダンスは、領域A2内において最小値Z2となっている。また、領域A3は、領域A1と領域A2とに挟まれており、開口30のy軸方向の幅が幅W2となっている部分を含む領域である。したがって、信号線20の特性インピーダンスは、領域A3内において中間値Z3となっている。
【0095】
ここで、領域A1は、開口30のy軸方向の幅が幅W1となっている部分を含んでいればよく、領域A3は、開口30のy軸方向の幅がW2となっている部分を含んでいればよい。よって、本実施形態では、領域A1と領域A3との境界は、特に、明確に定まっているわけではない。そこで、領域A1と領域A3との境界としては、例えば、開口30のy軸方向の幅が、(W1+W2)/2となっている位置が挙げられる。
【0096】
以上のような構成を有する高周波信号線路10bにおいても、高周波信号線路10と同様に、湾曲して用いることができ、不要輻射を低減でき、更に、信号線20内における伝送損失を抑制できる。
【0097】
(第1の実施形態の第3の変形例に係る高周波信号線路)
以下に、第3の変形例に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。図15は、第3の変形例に係る高周波信号線路10cの積層体12の分解図である。
【0098】
高周波信号線路10cと高周波信号線路10aとの相違点は、グランド導体40,42の有無である。より詳細には、高周波信号線路10cでは、誘電体シート18bの表面上にグランド導体40,42が設けられている。グランド導体40は、信号線20よりもy軸方向の正方向側において、x軸方向に延在している長方形状の導体である。グランド導体40は、ビアホール導体B1,B2を介してグランド導体22,24に接続されている。また、グランド導体42は、信号線20よりもy軸方向の負方向側において、x軸方向に延在している長方形状の導体である。グランド導体42は、ビアホール導体B1,B2を介してグランド導体22,24に接続されている。
【0099】
以上のような高周波信号線路10cでは、信号線20のy軸方向の両側にもグランド導体40,42が設けられているので、信号線20からy軸方向の両側へと不要輻射が漏れることが抑制される。
【0100】
(第1の実施形態の第4の変形例に係る高周波信号線路)
以下に、第4の変形例に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。図16は、第4の変形例に係る高周波信号線路10dの積層体12の分解図である。
【0101】
高周波信号線路10dと高周波信号線路10aとの相違点は、開口30の形状と開口44a,44bの形状とが異なっている点である。より詳細には、開口44a,44bは、開口30がy軸方向の正方向側と負方向側とに2つに分断された形状をなしている。高周波信号線路10dでは、開口44a,44bの間をx軸方向に延在する線状導体46が設けられている。線状導体46は、グランド導体24の一部を構成しており、z軸方向から平面視したときに、信号線20と重なっている。
【0102】
以上のような高周波信号線路10dでは、複数の開口44aが、信号線20に沿って並ぶように設けられていると共に、複数の開口44bが、信号線20に沿って並ぶように設けられている。これにより、領域A1における信号線20の特性インピーダンスは、最大値Z1となっている。また、領域A3における信号線20の特性インピーダンスは、中間値Z3となっている。また、領域A2における信号線20の特性インピーダンスは、最小値Z2となっている。
【0103】
なお、高周波信号線路10dにおいて、線状導体46の線幅は、図16に示すように、信号線20の線幅よりも細いものとした。そのため、信号線20は、z軸方向平面視で線状導体46からはみ出している。しかしながら、線状導体46の線幅は、信号線20よりも広くてもよい。そして、信号線20は、線状導体46からはみ出していなくてもよい。すなわち、開口44a,44bは、必ずしも、信号線20に重なっていなくてもよい。同様に、開口30は、信号線20と重なっていなくてもよい。高周波信号線路10dでは、線状導体46およびグランド導体22,24に流れる高周波電流の向きと信号線20に流れる高周波電流の向きとは逆になるので、信号線20が線状導体46からはみ出していても不要輻射の抑制効果は高周波信号線路10より大きくなる。
【0104】
(第1の実施形態の第5の変形例に係る高周波信号線路)
以下に、第6の変形例に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。図17は、第5の変形例に係る高周波信号線路10eの積層体12の分解図である。図18は、図17の高周波信号線路10eをz軸方向から透視した図である。
【0105】
高周波信号線路10eと高周波信号線路10aとの第1の相違点は、ブリッジ部60における信号線20の線幅が、信号線20の特性インピーダンスが最大値Z1となる位置における信号線20の線幅よりも細い点である。高周波信号線路10eと高周波信号線路10aとの第2の相違点は、信号線20の特性インピーダンスが中間値Z3となる位置(すなわち、開口30のy軸方向の幅が幅W2である位置)と信号線20の特性インピーダンスが最大値Z1となる位置(すなわち、開口30のy軸方向の幅が幅W1である位置)との間において開口30がテーパー状をなしている点である。高周波信号線路10eと高周波信号線路10aとの第3の相違点は、信号線20の特性インピーダンスが中間値Z3となる位置(すなわち、開口30のy軸方向の幅が幅W2である位置)とブリッジ部60との間において開口30がテーパー状をなしている点である。
【0106】
まず、高周波信号線路10eにおける領域A1〜A3の定義について図18を参照しながら説明する。領域A1は、開口30において、y軸方向の幅が幅W1となっている領域である。領域A2は、ブリッジ部60に対応する領域である。領域A3は、領域A1と領域A2とに挟まれており、開口30において、y軸方向の幅が幅W2となっている領域を含む領域である。
【0107】
第1の相違点について説明する。図17及び図18に示すように、信号線20の領域A2における線幅は、線幅Wbである。一方、信号線20の領域A1における信号線20の線幅は、線幅Wbよりも太い線幅Waである。線幅Waは、例えば、100〜500μmである。本実施形態では、線幅Waは、350μmである。線幅Wbは、例えば、25〜250μmである。本実施形態では、線幅Wbは、100μmである。このように、領域A2における信号線20の線幅が、領域A1における信号線20の線幅よりも細くなることにより、信号線20とブリッジ部60とが重なる面積が小さくなる。その結果、信号線20とブリッジ部60との間に発生する浮遊容量が低減されるようになる。更に、開口30と重なっている部分の信号線20の線幅は、線幅Waであるので、かかる部分の信号線20のインダクタンス値の増加が抑制される。更に、信号線20の全体の線幅が細くなっているのではなく、信号線20の線幅が部分的に細くなっているので、信号線20の抵抗値の増加が抑制される。
【0108】
また、信号線20は、線幅が変化する部分においてテーパー状をなしている。これにより、信号線20の線幅が変化する部分における抵抗値の変動が緩やかになり、信号線20の線幅が変化する部分において高周波信号の反射が発生することが抑制される。
【0109】
第2の相違点について説明する。開口30は、開口30のy軸方向の幅が幅W2である位置と開口30のy軸方向の幅が幅W1である位置との間においてテーパー状をなしている。すなわち、領域A3のx軸方向の端部がテーパー状をなしている。これにより、グランド導体24に流れる電流の損失が低減される。
【0110】
第3の相違点について説明する。開口30は、開口30のy軸方向の幅が幅W2である位置とブリッジ部60との間において開口30がテーパー状をなしている。これにより、ブリッジ部60のy軸方向の両端がテーパー状をなすようになる。よって、ブリッジ部60のx軸方向の線幅は、信号線20と重なっている部分においてその他の部分よりも細くなる。その結果、ブリッジ部60と信号線20との間に発生する浮遊容量が低減される。また、ブリッジ部60の全体の線幅が細くなっているのではなく、ブリッジ部60の線幅が部分的に細くなっているので、ブリッジ部60の抵抗値及びインダクタンス値の増加が抑制される。
【0111】
(第1の実施形態の第6の変形例に係る高周波信号線路)
以下に、第6の変形例に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。図19は、第6の変形例に係る高周波信号線路10fの積層体12の分解図である。図20は、図19の高周波信号線路10fをz軸方向から透視した図である。
【0112】
高周波信号線路10fと高周波信号線路10aとの相違点は、浮遊導体50が設けられている点である。より詳細には、高周波信号線路10fは、誘電体シート18d及び浮遊導体50を更に備えている。誘電体シート18dは、誘電体シート18cのz軸方向の負方向側に積層される。
【0113】
浮遊導体50は、図19及び図20に示すように、長方形状をなす導体層であって、誘電体シート18dの表面上に設けられている。これにより、浮遊導体50は、グランド導体24に関して信号線20の反対側に設けられている。
【0114】
また、浮遊導体50は、z軸方向から平面視したときに、信号線20及びグランド導体24に対向している。浮遊導体50のy軸方向の幅W3は、領域A1における開口30の幅W1よりも細く、領域A3における開口30の幅W2よりも太い。これにより、ブリッジ部60は、浮遊導体50により覆われている。
【0115】
また、浮遊導体50は、信号線20やグランド導体24等の導体層と電気的に接続されておらず、浮遊電位となっている。浮遊電位は、信号線20とグランド導体24との間の電位である。
【0116】
ところで、高周波信号線路10fでは、浮遊導体50が信号線20と対向することによって、信号線20と浮遊導体50との間に浮遊容量が発生しても、信号線20の特性インピーダンスが変動しにくい。より詳細には、浮遊導体50は、信号線20やグランド導体22,24と電気的に接続されていないため、浮遊電位となっている。そのため、信号線20と浮遊導体50との間の浮遊容量と、浮遊導体50とグランド導体24との間の浮遊容量とは、直列接続されていることになる。
【0117】
ここで、浮遊導体50の幅W3は、領域A1における開口30の幅W1よりも細く、領域A3における開口30の幅W2よりも太い。そのため、グランド導体24と浮遊導体50とが対向する面積は小さく、グランド導体24と浮遊導体50との間の浮遊容量も小さい。したがって、直列接続されている信号線20と浮遊導体50との間の浮遊容量と、浮遊導体50とグランド導体24との間の浮遊容量との合成容量は、小さくなる。したがって、浮遊導体50が設けられることによって、信号線20の特性インピーダンスに発生する変動も小さい。
【0118】
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態に係る高周波信号線路及び電子機器について図面を参照しながら説明する。
【0119】
(高周波信号線路の構成)
以下に、本発明の第2の実施形態に係る高周波信号線路の構成について図面を参照しながら説明する。図21は、本発明の第2の実施形態に係る高周波信号線路10gの外観斜視図である。図22は、図21の高周波信号線路10gの誘電体素体12の分解図である。図23は、図21の高周波信号線路10gの断面構造図である。図24は、高周波信号線路10gの断面構造図である。図21ないし図24において、高周波信号線路10gの積層方向をz軸方向と定義する。また、高周波信号線路10gの長手方向をx軸方向と定義し、x軸方向及びz軸方向に直交する方向をy軸方向と定義する。
【0120】
高周波信号線路10gは、例えば、携帯電話等の電子機器内において、2つの高周波回路を接続するために用いられる。高周波信号線路10gは、図21ないし図23に示すように、誘電体素体12、外部端子16(16a,16b)、信号線20、グランド導体22,24、接着層70、カバーシート72、ビアホール導体b1,b2,B1,B2及びコネクタ100a,100bを備えている。
【0121】
誘電体素体12は、図21に示すように、z軸方向から平面視したときに、x軸方向に延在しており、線路部12a、接続部12b,12cを含んでいる。誘電体素体12は、図22に示す保護層14及び誘電体シート(絶縁体層)18(18a〜18c)がz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に積層されて構成されている積層体である。また、誘電体素体12は、可撓性を有し、2つの主面を有している。以下では、誘電体素体12のz軸方向の正方向側の主面を表面(第1の主面)称し、誘電体素体12のz軸方向の負方向側の主面を裏面(第2の主面)と称す。
【0122】
線路部12aは、x軸方向に延在している。接続部12b,12cはそれぞれ、線路部12aのx軸方向の負方向側の端部及びx軸方向の正方向側の端部に接続されており、矩形状をなしている。接続部12b,12cのy軸方向の幅は、線路部12aのy軸方向の幅よりも広い。
【0123】
誘電体シート18は、z軸方法から平面視したときに、x軸方向に延在しており、誘電体素体12と同じ形状をなしている絶縁体層である。誘電体シート18は、ポリイミドや液晶ポリマー等の可撓性を有する熱可塑性樹脂により構成されている。誘電体シート18aの厚さT1は、図24に示すように、誘電体シート18bの厚さT2よりも厚い。例えば、誘電体シート18a〜18cの積層後において、厚さT1は50μm〜300μmである。本実施形態では、厚さT1は150μmである。また、厚さT2は10μm〜100μmである。本実施形態では、厚さT2は50μmである。以下では、誘電体シート18のz軸方向の正方向側の主面を表面と称し、誘電体シート18のz軸方向の負方向側の主面を裏面と称す。
【0124】
また、誘電体シート18aは、線路部18a−a及び接続部18a−b,18a−cにより構成されている。誘電体シート18bは、線路部18b−a及び接続部18b−b,18b−cにより構成されている。誘電体シート18cは、線路部18c−a及び接続部18c−b,18c−cにより構成されている。線路部18a−a,18b−a,18c−aは、線路部12aを構成している。接続部18a−b,18b−b,18c−bは、接続部12bを構成している。接続部18a−c,18b−c,18c−cは、接続部12cを構成している。
【0125】
外部端子16aは、図21及び図22に示すように、接続部18a−bの表面の中央近傍に設けられている矩形状の導体である。外部端子16bは、図21及び図22に示すように、接続部18a−cの表面の中央近傍に設けられている矩形状の導体である。外部端子16a,16bは、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料により作製されている。また、外部端子16a,16bの表面には、金めっきが施されている。
【0126】
信号線20は、図22に示すように、誘電体素体12内に設けられている線状導体であり、誘電体シート18bの表面をx軸方向に延在している。信号線20の両端はそれぞれ、z軸方向から平面視したときに、外部端子16a,16bと重なっている。信号線20の線幅は、例えば100μm〜500μmである。本実施形態では、信号線20の線幅は240μmである。信号線20は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料により作製されている。
【0127】
グランド導体22(第1のグランド導体)は、図22に示すように、誘電体素体12内において信号線20よりも第1の主面側(すなわち、z軸方向の正方向側)に設けられ、より詳細には、誘電体素体12の表面に最も近い誘電体シート18aの表面に設けられている。グランド導体22は、誘電体シート18aの表面においてx軸方向に延在しており、誘電体シート18aを介して信号線20と対向している。グランド導体22において、信号線20と対向している部分には、開口が設けられていない。すなわち、グランド導体22は、線路部12aにおける信号線20に沿ってx軸方向に連続的に延在する電極、所謂ベタ状の電極である。ただし、グランド導体22は線路部12aを完全に覆っている必要はなく、例えば、誘電体シート18の熱可塑性樹脂が熱圧着される際に発生するガスを逃がすためにグランド導体22の所定の位置に微小な穴などが設けられるものであってもよい。グランド導体22は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料により作製されている。
【0128】
また、グランド導体22は、線路部22a、端子部22b,22cにより構成されている。線路部22aは、線路部18a−aの表面に設けられ、x軸方向に延在している。端子部22bは、線路部18a−bの表面に設けられ、外部端子16aの周囲を囲む矩形状の環をなしている。端子部22bは、線路部22aのx軸方向の負方向側の端部に接続されている。端子部22cは、線路部18a−cの表面に設けられ、外部端子16bの周囲を囲む環状の矩形状をなしている。端子部22cは、線路部22aのx軸方向の正方向側の端部に接続されている。
【0129】
グランド導体24(第2のグランド導体)は、図22に示すように、誘電体素体12内において信号線20よりも第2の主面側(すなわち、z軸方向の負方向側)に設けられ、より詳細には、誘電体シート18cの表面に設けられている。これにより、グランド導体24は、誘電体シート18b,18c間に設けられている。グランド導体24は、誘電体シート18cの表面においてx軸方向に延在しており、誘電体シート18bを介して信号線20と対向している。すなわち、グランド導体24は、信号線20を挟んでグランド導体22と対向している。グランド導体24は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料により作製されている。
【0130】
また、グランド導体24は、線路部24a、端子部24b,24cにより構成されている。線路部24aは、線路部18c−aの表面に設けられ、x軸方向に延在している。そして、線路部24aは、導体層が形成されていない複数の開口30と導体層が形成されている部分である複数のブリッジ部60とが交互に信号線20に沿って設けられることにより、はしご状をなしている。開口30は、図22及び図24に示すように、z軸方向から平面視したときに、長方形状をなしており、信号線20と重なっている。これにより、信号線20は、z軸方向から平面視したときに、開口30とブリッジ部60と交互に重なっている。また、開口30は、等間隔に並んでいる。
【0131】
端子部24bは、線路部18c−bの表面に設けられ、矩形状の環をなしている。端子部24bは、線路部24aのx軸方向の負方向側の端部に接続されている。端子部24cは、線路部18c−cの表面に設けられ、矩形状の環をなしている。端子部24cは、線路部24aのx軸方向の正方向側の端部に接続されている。
【0132】
以上のように、信号線20は、z軸方向の両側から誘電体層18a,18bを介してグランド導体22,24によって挟まれている。すなわち、信号線20及びグランド導体22,24は、トリプレート型のストリップライン構造をなしている。また、信号線20とグランド導体22との間隔は、図24に示すように誘電体シート18aの厚さT1と略等しく、例えば、50μm〜300μmである。本実施形態では、信号線20とグランド導体22との間隔は、150μmである。一方、信号線20とグランド導体24との間隔は、図24に示すように誘電体シート18bの厚さT2と略等しく、例えば、10μm〜100μmである。本実施形態では、信号線20とグランド導体24との間隔は、50μmである。すなわち、厚みT1は厚みT2よりも大きくなるように設計されている。
【0133】
ビアホール導体b1は、誘電体シート18aの接続部18a−bをz軸方向に貫通しており、外部端子16aと信号線20のx軸方向の負方向側の端部とを接続している。ビアホール導体b2は、誘電体シート18aの接続部18a−cをz軸方向に貫通しており、外部端子16bと信号線20のx軸方向の正方向側の端部とを接続している。これにより、信号線20は、外部端子16a,16b間に接続されている。ビアホール導体b1,b2は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料により作製されている。
【0134】
ビアホール導体B1,B2はそれぞれ、誘電体シート18a,18bの線路部18a−a,18b−aをz軸方向に貫通しており、線路部18a−a,18b−aに複数ずつ設けられている。そして、ビアホール導体B1,B2は、互いに接続されることにより1本のビアホール導体を構成しており、グランド導体22とグランド導体24とを接続している。ビアホール導体B1,B2は、銀や銅を主成分とする比抵抗の小さな金属材料により作製されている。
【0135】
保護層14は、誘電体シート18aの表面の略全面を覆っている。これにより、保護層14は、グランド導体22を覆っている。保護層14は、例えば、レジスト材等の可撓性樹脂からなる。
【0136】
また、保護層14は、図22に示すように、線路部14a及び接続部14b,14cにより構成されている。線路部14aは、線路部18a−aの表面の全面を覆うことにより、線路部22aを覆っている。
【0137】
接続部14bは、線路部14aのx軸方向の負方向側の端部に接続されており、接続部18a−bの表面を覆っている。ただし、接続部14bには、開口Ha〜Hdが設けられている。開口Haは、接続部14bの中央に設けられている矩形状の開口である。外部端子16aは、開口Haを介して外部に露出している。また、開口Hbは、開口Haのy軸方向の正方向側に設けられている矩形状の開口である。開口Hcは、開口Haのx軸方向の負方向側に設けられている矩形状の開口である。開口Hdは、開口Haのy軸方向の負方向側に設けられている矩形状の開口である。端子部22bは、開口Hb〜Hdを介して外部に露出することにより、外部端子として機能する。
【0138】
接続部14cは、線路部14aのx軸方向の正方向側の端部に接続されており、接続部18a−cの表面を覆っている。ただし、接続部14cには、開口He〜Hhが設けられている。開口Heは、接続部14cの中央に設けられている矩形状の開口である。外部端子16bは、開口Heを介して外部に露出している。また、開口Hfは、開口Heのy軸方向の正方向側に設けられている矩形状の開口である。開口Hgは、開口Heのx軸方向の正方向側に設けられている矩形状の開口である。開口Hhは、開口Heのy軸方向の負方向側に設けられている矩形状の開口である。端子部22cは、開口Hf〜Hhを介して外部に露出することにより、外部端子として機能する。
【0139】
接着層70は、絶縁性接着剤からなる層であり、誘電体素体12の第1の主面上に設けられている。より詳細には、接着層70は、誘電体素体12の保護層14の線路部14a上においてx軸方向に延在するように設けられている。カバーシート72は、接着層70に対して剥離可能に貼り付けられている可撓性のシートである。以上のような接着層70及びカバーシート72は、例えば、カバーシート付きの粘着テープにより構成される。
【0140】
コネクタ100a,100bはそれぞれ、接続部12b,12cの表面上に実装される。コネクタ100a,100bの構成については説明を行ったので省略する。
【0141】
高周波信号線路10gは、以下に図5、図6及び図25を参照して説明するように用いられる。図25は、電子機器200の断面構造図である。
【0142】
電子機器200は、高周波信号線路10g、回路基板202a,202b、レセプタクル204a,204b、バッテリーパック(物品)206及び筐体210を備えている。
【0143】
回路基板202aには、例えば、アンテナを含む送信回路又は受信回路が設けられている。回路基板202bには、例えば、給電回路が設けられている。バッテリーパック206は、例えば、リチウムイオン2次電池であり、その表面が絶縁体により覆われた構造を有している。回路基板202a、バッテリーパック206及び回路基板202bは、x軸方向の負方向側から正方向側へとこの順に並んでいる。
【0144】
レセプタクル204a,204bはそれぞれ、回路基板202a,202bのz軸方向の負方向側の主面上に設けられている。レセプタクル204a,204bにはそれぞれ、コネクタ100a,100bが接続される。これにより、コネクタ100a,100bの中心導体108には、回路基板202a,202b間を伝送される例えば2GHzの周波数を有する高周波信号がレセプタクル204a,204bを介して印加される。また、コネクタ100a,100bの外部導体110は、回路基板202a,202b及びレセプタクル204a,204bを介して、グランド電位に保たれる。これにより、高周波信号線路10gは、回路基板202a,202b間を電気的及び物理的に接続している。
【0145】
高周波信号線路10gは、図25に示すように、カバーシート72が剥離されて露出した接着層70を介してバッテリーパック206に固定されている。誘電体素体12の表面は、信号線20に関してグランド導体22側に位置する主面である。よって、信号線20とバッテリーパック206との間には、ベタ状の(x軸方向に連続的に延在する)グランド導体22が位置している。
【0146】
なお、高周波信号線路10gは、バッテリーパック206に貼り付けられているが、プリント配線基板や電子機器の筐体等に貼り付けられていてもよい。また、バッテリーパック10gの表面は、絶縁体により覆われているとしたが、金属等の導電体により覆われていてもよい。
【0147】
以下に、高周波信号線路10gのバッテリーパック206への貼り付け型の一例について図面を参照しながら説明する。図26は、高周波信号線路10gをバッテリーパック206に貼り付ける際の断面構造図である。
【0148】
まず、図21に示すように、カバーシート72の一部を接着層70から剥離する。そして、露出した接着層70をバッテリーパック206に貼り付ける。
【0149】
次に、図26に示すように、カバーシート72を引っ張って接着層70から剥離しながら、接着層70をバッテリーパック206に貼り付けていく。このように、高周波信号線路10gは、バッテリーパック206に対して、シールを貼り付ける要領で貼り付けられる。なお、図26では、グランド導体22,24および信号線20の構成を一部省略して図示している。
【0150】
(効果)
以上のように構成された高周波信号線路10gによれば、狭いスペースにおいて物品に固定することができる。より詳細には、高周波信号線路10gでは、高周波信号線路10gを固定するための固定金具及びねじ等の部品が不要である。その結果、電子機器の狭いスペースに高周波信号線路10gを固定することが可能となる。更に、高周波信号線路10gの固定にねじが用いられないので、バッテリーパック206に孔が形成されなくて済む。
【0151】
また、高周波信号線路10gでは、図26に示すように、カバーシート72を引っ張って接着層70から剥離しながら、接着層70をバッテリーパック206に貼り付けていく。すなわち、高周波信号線路10gは、バッテリーパック206に対して、シールを貼り付ける要領で貼り付けられる。よって、高周波信号線路10gでは、特許文献1に記載の同軸ケーブルの固定構造のようなねじ止め工程が不要である。よって、高周波信号線路10gをバッテリーパック206に対して容易に固定することが可能となる。
【0152】
また、高周波信号線路10gでは、固定金具及びねじ等の部品が不要であるので、信号線路20と固定金具及びねじ等との間で浮遊容量が発生しない。そのため、高周波信号線路10gの特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスからずれることが抑制される。
【0153】
(第2の実施形態の第1の変形例に係る高周波信号線路)
以下に、第2の実施形態の第1の変形例に係る高周波信号線路の構成について図面を参照しながら説明する。図27は、第1の変形例に係る高周波信号線路10hの積層体12の分解図である。
【0154】
図27に示す高周波信号線路10hのように、高周波信号線路10aにおいて、接着層70及びカバーシート72が設けられていてもよい。
【0155】
(第2の実施形態の第2の変形例に係る高周波信号線路)
以下に、第2の実施形態の第2の変形例に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。図28は、第2の変形例に係る高周波信号線路10iの積層体12の分解図である。
【0156】
図28に示す高周波信号線路10iのように、高周波信号線路10bにおいて、接着層70及びカバーシート72が設けられていてもよい。
【0157】
(第2の実施形態の第3の変形例に係る高周波信号線路)
以下に、第2の実施形態の第3の変形例に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。図29は、第3の変形例に係る高周波信号線路10jの積層体12の分解図である。
【0158】
図29に示す高周波信号線路10jのように、高周波信号線路10cにおいて、接着層70及びカバーシート72が設けられていてもよい。
【0159】
(第2の実施形態の第4の変形例に係る高周波信号線路)
以下に、第2の実施形態の第4の変形例に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。図30は、第4の変形例に係る高周波信号線路10kの積層体12の分解図である。
【0160】
図30に示す高周波信号線路10kのように、高周波信号線路10dにおいて、接着層70及びカバーシート72が設けられていてもよい。
【0161】
(第2の実施形態の第5の変形例に係る高周波信号線路)
以下に、第2の実施形態の第5の変形例に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。図31は、第5の変形例に係る高周波信号線路10lの積層体12の分解図である。
【0162】
図31に示す高周波信号線路10lのように、高周波信号線路10eにおいて、接着層70及びカバーシート72が設けられていてもよい。
【0163】
(第2の実施形態の第6の変形例に係る高周波信号線路)
以下に、第2の実施形態の第6の変形例に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。図32は、第6の変形例に係る高周波信号線路10mの積層体12の分解図である。
【0164】
図32に示す高周波信号線路10mのように、高周波信号線路10fにおいて、接着層70及びカバーシート72が設けられていてもよい。
【0165】
(第2の実施形態の第7の変形例に係る高周波信号線路)
以下に、第2の実施形態の第7の変形例に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。図33は、第7の変形例に係る高周波信号線路10nの外観斜視図である。図34は、図33の高周波信号線路10nの誘電体素体12の分解図である。図35は、図33の高周波信号線路10nの断面構造図である。
【0166】
高周波信号線路10nと高周波信号線路10gとの相違点は、接着層70が一部に設けられておらず、パッド74が設けられている点である。より詳細には、図33及び図34に示すように、保護層14の線路部14a及び接着層70の一部が存在していない。そして、保護層14の線路部14a及び接着層70が存在していない部分には、はんだ等により構成されたパッド74が設けられている。パッド74は、グランド導体22上に設けられており、グランド導体22と接続されている。
【0167】
以上のように構成された高周波信号線路10nは、図35に示すように、接着層70を介して、表面が金属カバーに覆われたバッテリーパック206に固定される。この際、パッド74は、バッテリーパック206の金属カバーに接触している。これにより、グランド導体22は、パッド74を介してバッテリーパック206の金属カバーに電気的に接続される。そして、金属カバーが接地電位に保たれていれば、グランド導体22は、コネクタ100a,100bを介して接地電位に保たれるのに加えて、金属カバーを介しても接地電位に保たれるようになる。すなわち、グランド導体22の電位がより安定して接地電位に近づくようになる。
【0168】
なお、パッド74は、バッテリーパック206の金属カバーの代わりに、電子機器の金属筐体やプリント配線基板のランドに接触してもよい。
【0169】
(第2の実施形態の第8の変形例に係る高周波信号線路)
以下に、第8の変形例に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。図36は、第8の変形例に係る高周波信号線路10oの外観斜視図である。図37は、図36の高周波信号線路10oの誘電体素体12の分解図である。図38は、図36の高周波信号線路10oの断面構造図である。
【0170】
高周波信号線路10oと高周波信号線路10gとの相違点は、接着層70が導電性接着剤である点である。より詳細には、図36及び図37に示すように、保護層14の線路部14aの一部が設けられていない。これにより、グランド導体22は、誘電体素体12の第1の主面上に設けられている。更に、線路部14aが設けられていない部分に接着層70及びカバーシート72が設けられている。これにより、接着層70は、グランド導体22上に設けられており、グランド導体22と接続されている。
【0171】
以上のように構成された高周波信号線路10oは、図38に示すように、接着層70を介して、表面に金属カバー(導電部)が設けられたバッテリーパック206に固定される。この際、接着層70は、バッテリーパック206の金属カバーに接触している。これにより、グランド導体22は、接着層70を介してバッテリーパック206の金属カバーに電気的に接続される。そして、金属カバーが接地電位に保たれていれば、グランド導体22は、コネクタ100a,100bを介して接地電位に保たれるのに加えて、金属カバーを介しても接地電位に保たれるようになる。すなわち、グランド導体22の電位がより安定して接地電位に近づくようになる。
【0172】
(第2の実施形態の第9の変形例に係る高周波信号線路)
以下に、第9の変形例に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。図39は、第9の変形例に係る高周波信号線路10pの外観斜視図である。図40は、図39の高周波信号線路10pの誘電体素体12の分解図である。図41は、図39の高周波信号線路10pの断面構造図である。
【0173】
高周波信号線路10pと高周波信号線路10oとの相違点は、図39及び図40に示すように、接着層70及びカバーシート72が2つに分離されている点である。
【0174】
以上のように構成された高周波信号線路10pは、図41に示すように、接着層70を介して、ランド(導電部)307を有するプリント配線基板306に固定される。ランド307は、Cu等の下地電極308にめっき309が施されることにより構成されている。接着層70は、ランド307に接触している。これにより、グランド導体22は、接着層70を介してランド307に電気的に接続される。そして、ランド307が接地電位に保たれていれば、グランド導体22は、コネクタ100a,100bを介して接地電位に保たれるのに加えて、ランド307を介しても接地電位に保たれるようになる。すなわち、グランド導体22の電位がより安定して接地電位に近づくようになる。
【0175】
また、接着層70が複数に分離されているので、高周波信号線路10pが貼り付けられる際に、高周波信号線路10pにしわやたるみが発生することが抑制される。なお、2つの接着層の両方が接地電位に保たれるようにランドなどの物品に接触する方が好ましいが、いずれか一方のみが接地電位に保たれていてもよいし、いずれも接地されていなくても構わない。
【0176】
(第2の実施形態の第10の変形例に係る高周波信号線路)
以下に、第10の変形例に係る高周波信号線路について図面を参照しながら説明する。図42は、第10の変形例に係る高周波信号線路10qの誘電体素体12の分解図である。
【0177】
高周波信号線路10qと高周波信号線路10oとの相違点は、グランド導体24が誘電体シート18bの裏面に設けられている点である。具体的には、誘電体シート18bの表面には、信号線20が設けられており、誘電体シート18bの裏面には、グランド導体24が設けられている。そして、高周波信号線路10qには、誘電体シート18cは設けられておらず、保護層15が設けられている。
【0178】
以上のように構成された高周波信号線路10qでは、誘電体シート18が2枚だけしか用いられないので、高周波信号線路10qの作製が容易である。
【0179】
(その他の実施形態)
本発明に係る電子機器が備えている高周波信号線路は、前記実施形態に係る高周波信号線路10,10a〜10qに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。
【0180】
なお、高周波信号線路10,10a〜10qでは、複数の開口30は、同じ形状を有している。しかしながら、複数の開口30の一部の形状が、その他の複数の開口30の形状と異なっていてもよい。例えば、複数の開口30の内の所定の開口30以外の開口30のx軸方向における長さは、該所定の開口30のx軸方向における長さよりも長くてもよい。これにより、所定の開口30が設けられている領域において、高周波信号線路10,10a〜10qを容易に曲げることが可能となる。
【0181】
なお、高周波信号線路10,10a〜10qに示した構成を組み合わせてもよい。
【0182】
また、高周波信号線路10a〜10qでは、信号線20の特性インピーダンスは、隣り合う2つのブリッジ部60間において、一方のブリッジ部60から他方のブリッジ部60に近づくにしたがって、最小値Z2、中間値Z3、最大値Z1の順に増加した後に、最大値Z1、中間値Z3、最小値Z2の順に減少するように変動していた。しかしながら、信号線20の特性インピーダンスは、隣り合う2つのブリッジ部60間において、一方のブリッジ部60から他方のブリッジ部60に近づくにしたがって、最小値Z2、中間値Z3、最大値Z1の順に増加した後に、最大値Z1、中間値Z4、最小値Z2の順に減少するように変動してもよい。すなわち、中間値Z3と中間値Z4とが異なっていてもよい。例えば、開口30,31,44a,44は直線Aを介して線対称ではない形状であってもよい。ただし、中間値Z4は、最小値Z2よりも大きくかつ、最大値Z1よりも小さい必要がある。
【0183】
また、隣り合う2つのブリッジ部60間において、最小値Z2の値は異なっていてもよい。すなわち、高周波信号線路10a〜10qが全体として所定の特性インピーダンスに合わせられていれば全ての最小値Z2の値が同じである必要はない。ただし、一方のブリッジ部60側の最小値Z2は中間値Z3よりも低い必要があり、他方のブリッジ部60側の最小値Z2は中間値Z4よりも低い必要がある。
【0184】
また、接着層70及びカバーシート72は、誘電体素体12の第2の主面に更に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0185】
以上のように、本発明は、高周波信号線路及び電子機器に有用であり、特に、狭いスペースにおいて物品に高周波信号線路を固定することができる点において優れている。
【符号の説明】
【0186】
10,10a〜10q 高周波信号線路
12 誘電体素体
14,15 保護層
16a,16b 外部端子
18a〜18d 誘電体シート
20 信号線
22,24,40,42 グランド導体
30 開口
70 接着層
72 カバーシート
100a,100b コネクタ
102 コネクタ本体
104,106 外部端子
108 中心導体
110 外部導体
200 電子機器
202a,202b 回路基板
204a,204b レセプタクル
206 バッテリーパック
210 筐体
212 接続導体
306 プリント配線基板
307 ランド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体層からなり、かつ、第1の主面及び第2の主面を有する素体と、
前記素体に設けられている線状の信号線と、
前記素体に設けられ、かつ、前記信号線と対向しているグランド導体であって、前記信号線に沿って延在する第1のグランド導体と、
前記素体に設けられ、かつ、前記絶縁体層を介して前記第1のグランド導体と対向しているグランド導体であって、複数の開口が前記信号線に沿って並ぶように設けられており、該信号線からみて前記第2の主面側に設けられた第2のグランド導体と、
を備えており、
前記信号線からみて前記第1のグランド導体側の前記高周波信号線路の主面側は、金属物品に対する接触面であり、
前記第1のグランド導体は、はんだ又は導電性接着剤を介して、前記金属物品に対して電気的に接続されること、
を特徴とする高周波信号線路。
【請求項2】
前記素体は、前記第1のグランド導体を覆う保護層を、更に有していること、
を特徴とする請求項1に記載の高周波信号線路。
【請求項3】
前記素体に取り付けられ、かつ、前記信号線に電気的に接続されている信号端子及び前記第1のグランド導体及び前記第2のグランド導体に電気的に接続されているグランド端子を有しているコネクタを、
更に備えていること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の高周波信号線路。
【請求項4】
前記複数の開口は、等間隔に並んでいること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の高周波信号線路。
【請求項5】
前記第2のグランド導体は、前記複数の開口とブリッジ部とが交互に前記信号線に沿って設けられることにより、はしご状をなしており、
前記信号線の特性インピーダンスは、隣り合う2つの前記ブリッジ部間において一方の前記ブリッジ部から他方の前記ブリッジ部に近づくにしたがって、最小値、第1の中間値、最大値の順に増加した後に最大値、第2の中間値、最小値の順に減少するように変動していること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の高周波信号線路。
【請求項6】
前記素体は、可撓性を有していること、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の高周波信号線路。
【請求項7】
前記第1の主面上に設けられている接着層と、
前記接着層に対して剥離可能に貼り付けられているカバー層と、
を更に備えており、
前記カバー層が剥離されて露出した前記接着層を介して前記金属物品に対して固定されること、
を特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の高周波信号線路。
【請求項8】
前記金属物品には、導電部が設けられており、
前記第1のグランド導体は、前記導電部に対して前記はんだ又は導電性接着剤を介して電気的に接続されること、
を特徴とする請求項7に記載の高周波信号線路。
【請求項9】
前記金属物品は、接地電位に保たれていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の高周波信号線路。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の高周波信号線路と、
前記高周波信号線路の前記第1の主面が接触する前記金属物品と、
を備えること、
を特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2013−84931(P2013−84931A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−204126(P2012−204126)
【出願日】平成24年9月18日(2012.9.18)
【分割の表示】特願2012−513788(P2012−513788)の分割
【原出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】