説明

高周波回路装置のシールド構造

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は自動車電話、携帯電話等の高周波回路装置のシールド構造に関する。
【0002】通信の究極的な目的はいうまでもなく、いつでも、どこからでも、誰にも、直ちに意思又は情報を伝え、或いは交換できることであり、従来の固定した点相互の通信に加えて移動通信が次第に発展してきている。移動通信は、船舶、自動車及び航空機等の移動体(人を含む)と一般加入電話や事務所等との間の通信及び移動体相互間の通信であり、自動車電話、携帯電話、コードレス電話等が含まれる。
【0003】このような携帯電話等の無線装置には、準マイクロ波帯と呼ばれる800〜900MHz前後の高周波数帯域が利用されている。このような高周波を使用する送信回路、受信回路等の機能回路を同一プリント配線板上に回路構成した場合、各機能回路相互の電磁干渉による様々な障害が発生する。
【0004】そこで、このような電磁干渉による障害を防止するために高周波回路装置のシールド構造が要望されている。
【0005】
【従来の技術】図6は従来の高周波回路装置のシールド構造の分解斜視図を示しており、2は受信回路、送信回路等の複数の高周波機能回路が実装されたプリント配線板である。4はアルミニウムのダイカスト成形品から形成された下シールドケースであり、10は同様にアルミニウムのダイカスト成形品から形成された上シールドケースである。下シールドケース4の外周には溝6が形成されており、さらに高周波機能回路を分離するリブ8が形成されている。
【0006】12は金属から形成されたシールド線であり、下シールドケース4の外周壁に形成された溝6中に弾性的に嵌合する。また、板バネ14が下シールドケース4のリブ8に取り付けられる。
【0007】然して、シールド線12を下シールドケース4の溝6中に嵌合し、板バネ14をリブ8に取り付けてから、プリント配線板2を下シールドケース4と上シールドケース10で挟むようにして複数のねじ16で締結すると、板バネ14がプリント配線板2のアースパターンに圧接し、プリント配線板2に形成された各高周波機能回路間の電磁シールドを達成するようになっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述したような従来のシールド構造では、金属シールド線をケースの溝部に挿入するため、挿入部にリブを設ける必要がある。接地用の板バネをプリント配線板のアースパターンに圧接させて各高周波機能回路間の電磁シールドを行っているため、バネ形状が複雑化するという問題がある。さらに従来のシールド構造では、高密度実装における狭いスペースでの電磁的シールドが不可能であるという問題がある。
【0009】本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、狭いスペースで個々の高周波機能回路を電磁的にシールドすることのできる高周波回路装置のシールド構造を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】シールドケースに複数の高周波機能回路が実装されたプリント配線板を取り付けるとともに、内面が導電化処理された樹脂モールドケースの該内面に前記プリント配線板上に実装された各高周波機能回路を互いに分離する長溝の形成されたリブを設ける。そして、該リブの長溝中にシールド材を圧入して、該プリント配線板を前記シールドケースと樹脂モールドケースの間に挟み込んで組み立てたとき、該シールド材の先端が前記プリント配線板のアースパターンに圧接するように構成する。
【0011】
【作用】樹脂モールドケースのリブに設けた長溝中にシールド材を圧入して組み立てることにより、シールド材の先端がプリント配線板のアースパターンに圧接し、各高周波機能回路の電磁波の漏洩、浸入を防ぐことができる。このとき、シールド材は容易に樹脂モールドケースのリブに設けた溝内に圧入することができ、接地も確実にとることができる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0013】図1は本発明の実施例に係るシールド構造を採用した携帯電話機の分解斜視図である。18はシールドケース20に複数の高周波機能回路が実装されたプリント配線板21及びロジック回路が実装されたプリント配線板22を取り付けて構成した無線機・制御部一体化モジュールであり、プリント配線板22上にはキートップシート23が取り付けられている。シールドケース20は例えば樹脂モールド製であり、その表面には金属の蒸着膜又はメッキ膜等の導電化処理が施されている。
【0014】24は樹脂モールド製のリアケースであり、その内面にはプリント配線板21上に実装された各高周波機能回路を互いに分離するリブ28が設けられており、リブ28には図2に示されるように長溝29が形成されている。リブ28の長溝29中にはシールド材30が圧入されている。さらに、リアケース24のリブ33に形成した長溝中にはシールド線31が挿入される。リアケース24の内面には金属の蒸着膜又はメッキ膜等の導電化処理が施されている。
【0015】26は同じく樹脂モールド製のフロントケースであり、その内面も金属の蒸着膜又はメッキ膜等の導電化処理が施されている。36はキートップシート23をカバーするスイッチパネルであり、スイッチ部を保護するための集音を兼ねた保護カバー32がフロントケース26に回動可能に取り付けられている。34はイヤホンアセンブリである。
【0016】然して、リアケース24とフロントケース26の間に無線機・制御部一体化モジュール18を挟んで、4本のねじにより携帯電話機が一体的に組み立てられる。
【0017】次に図3乃至図5を参照して、本発明実施例に係るシールド構造について説明する。図3を参照すると、本発明実施例の概略断面図が示されており、表面を導電化処理されたシールドケース20には受信機、送信機等の複数の高周波機能回路を実装したプリント配線板21とロジック回路を実装したプリント配線板22が取り付けられている。プリント配線板21,22は多層プリント配線板であり、その内部にアース層が挿入されているため、このアース層により電磁的シールドの役目を果たすことができる。
【0018】リアケース24には支持リブ25が一体的に形成されており、この支持リブ25にプリント配線板21を搭載し、高周波機能回路が実装されたプリント配線板21をシールドケース20とリアケース24で完全に包囲するようにする。図3において、フロントケースは省略されている。図1に示すように、ねじ締結により携帯電話機を組み立てると、リアケース24のリブ28の長溝中に圧入されたシールド材30がプリント配線板21のアースパターンに圧接し、各高周波機能回路を他の高周波機能回路から電磁的にシールドすることができる。
【0019】図4を参照すると、図3のA部分拡大図が示されており、図4(A)に示すように、リアケース24のリブ28の長溝29中には銅箔を表面に形成したシールド材30が圧入され、シールド材30の先端は高周波機能回路を実装したプリント配線板21のアースパターンに圧接される。
【0020】シールド材30の構成を図5を参照して説明する。図5(A)はシールド材の正面図であり、(B)はその側面図である。シールド材30は、シリコーンスポンジゴム40に表面に銅箔42が形成されたポリイミドフィルム41を貼付して構成される。銅箔42表面には金メッキが施されている。
【0021】シールド材30は例えば次のようにして製造される。ポリイミドフィルム41表面に一様に銅箔を形成し、銅箔に金メッキを施す。次いで銅箔をエッチングにより処理して図5(B)に示すようなすだれ状パターンを形成する。
【0022】ポリイミドフィルム41の裏面にプライマー処理を施してから、裏面を上にしてポリイミドフィルム41を成形型中にセットし、その上に発泡性シリコーンゴムを流し込むことにより、ポリイミドフィルム41と発泡性シリコーンゴム40が接着し、図5に示すようなシールド材30を製造することができる。尚、銅箔42をすだれ状のパターンに形成しているのは、シールド材30を曲げやすくするためである。
【0023】図4(B)は他の構成に係るシールド材30′を採用した本発明実施例を示している。シールド材30′はカーボン入りシリコーンゴムから形成され、カーボン含有量は30〜50重量%、望ましくは約40重量%である。カーボン入りシリコーンゴムから形成されたシールド材30′は銅箔を表面に有するシールド材30よりも安価であり、電磁シールド性能も十分であることが確認された。
【0024】
【発明の効果】本発明の高周波回路装置のシールド構造は以上詳述したように構成したので、シールド材を容易に筐体に取り付けられ、狭いスペースで個々の高周波機能回路を電磁的に十分シールドできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るシールド構造を採用した携帯電話機の分解斜視図である。
【図2】リアケースへのシールド材の取り付け方を示す分解斜視図である。
【図3】本発明実施例の概略断面図である。
【図4】図3のA部分拡大図である。
【図5】図4(A)のシールド材の構成を示す図である。
【図6】従来例分解斜視図である。
【符号の説明】
20 シールドケース
21 高周波機能回路を実装したプリント配線板
22 ロジック回路を実装したプリント配線板
24 リアケース
28 リブ
30 シールド材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の高周波機能回路が実装されたプリント配線板(21)、前記プリント配線板(21)上に実装された各高周波機能回路を互いに分離する長溝(29)の形成されたリブ(28)をする内面が導電化処理された樹脂モールドケース(24)前記該リブ(28)の長溝(29)中に圧入された、長溝(29)から突出する先細形状の突出部を有するシールド材(30)とを具備し、固定手段により前記プリント配線板(21)を前記樹脂モールドケース(24)に固定したとき、該シールド材(30)の先端が前記プリント配線板(21)のアースパターンに圧接して各高周波機能回路の電磁シールドを達成することを特徴とする高周波回路装置のシールド構造。
【請求項2】 前記シールド材 (30′) をカーボン入りゴムから形成したことを特徴とする請求項1記載の高周波回路装置のシールド構造。
【請求項3】 前記シールド材(30)を表面に金属箔(42)の設けられたゴムから形成したことを特徴とする請求項1記載の高周波回路装置のシールド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】第2825670号
【登録日】平成10年(1998)9月11日
【発行日】平成10年(1998)11月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−410590
【出願日】平成2年(1990)12月14日
【公開番号】特開平4−218997
【公開日】平成4年(1992)8月10日
【審査請求日】平成9年(1997)5月9日
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【参考文献】
【文献】特開 昭62−199098(JP,A)
【文献】特表 昭58−501486(JP,A)
【文献】実開 昭55−163000(JP,U)
【文献】実開 平1−95794(JP,U)