説明

高周波測定装置への妨害信号の影響を低減する方法、および、高周波測定装置

本発明は、高周波測定装置への妨害信号の影響を低減する方法、とりわけ、高周波測定装置の受信装置により検出されたアナログ測定信号(22)を該アナログ測定信号(22)のための評価ユニットの少なくとも1つのアナログディジタル変換器(28)に供給するようにした高周波測位装置を動作させるための方法に関する。
本発明によれば、前記少なくとも1つのアナログディジタル変換器(28)のサンプリングレートは妨害信号と相関する妨害信号測定値に応じて変化させられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波測定装置への妨害信号の影響を低減する方法、とりわけ、請求項1の上位概念による高周波測位装置を動作させる方法、および、請求項12の上位概念による高周波測定装置に関するものである。
【0002】
従来技術
例えばレーダー原理に従って動作する高周波測定装置は、例えば穿孔の際に生じる破損を防ぐために、とりわけ、壁、屋根、または床の中の物体の測位に使用される。このような装置の別の利用分野は、例えば、橋梁におけるコンクリートのオーバーラップ、コンクリートの気孔、または材料不均質のような同様の建築上の欠陥の位置同定である。同様に、このような装置は容量性の測定装置としても形成することができ、セキュリティ技術において、人の存在ないしその正確な位置を監視するエリアモニタリングにおいて使用される。このように、警察または軍隊での使用において、壁を通して人の位置同定を行うことが可能である。
【0003】
このような測定装置のさらに別の使用分野は、例えば自動車分野において駐車支援または運転者支援システムとして使用されているような、高周波による距離測定である。さらに、このような高周波測定装置は、例えば建物の内部構造のような建築物領域内での距離測定にも適用しうる。ここで、特に、手工業者向けの手持ち式距離測定装置が可能である。通常これらすべての装置が動作する周波数領域は、数百メガヘルツから100ギガヘルツ超までの間、すなわち、マイクロ波領域にある。
【0004】
しかしながら、まさに1〜5GHzの領域では、例えば携帯電話(GSM,GPRS,UMTS,DECT)、無線ネットワーク(WLAN,Bluetooth,ワイヤレスDSL)または電子レンジによる妨害が増大する。これらの妨害源は、上記の高周波測定装置の測定を著しく劣化させたり、または、測定をほぼ完全に不可能にしてしまう。それゆえ、もはや物または人の損傷を伴う誤測定を排除することができなくなってしまう。
【0005】
たしかに、従来使用されてきた誤測定を防ぐ方法は、巧妙な測定データ収集によっていくつかの妨害源を除去することができるが、これは妨害源が比較的少数である場合に限られており、しかもこれらの妨害源が同時にアクティブでなければならない。しかしながら、これらの方法は、例えば新しい無線技術のような新たな妨害源が発生した場合には、うまく行かなくなる。
【0006】
DE 102 07 424 A1からは、封包された物体の位置を測定する方法および測定装置が公知である。この方法および測定装置では、少なくとも1つのセンサ装置を用いて、調査すべき媒質に入り込む検出信号を発生させ、この検出信号を評価することにより、特に、インピーダンス測定により、媒質内に封包された物体に関する情報を手に入れる。DE 102 07 424 A1の方法では、媒質に封包された物体に起因する容量変化がごく小さい場合でも測定信号に十分に大きな変化が生じるように、GHz領域の測定周波数が使用される。プラスティック管の場合、誘電性オクルージョンによるオクルージョン信号は一般にサブピコファラッド領域内にあるため、容量性センサに、1マクロアンペアより小さな変位電流でなく、例えば1ボルトの交流電圧を印加し、さらに測定周波数を100KHzとした場合、測定すべき容量の小さな変化を生じさせる。
【0007】
DE 102 07 424 A1の装置では、例えば隣接する送信設備によって発生させられる外部EMC妨害のレベルを求めるために、装置内部の基準測定値が使用される。このようなEMC妨害は、DE 102 07 424 A1の方法により、後でその時点の測定信号から算出される。
【0008】
DE 102 33 835 A1からは、既知のまたは特定可能な妨害パルス間隔を有するパルス妨害信号により歪曲された測定信号から妨害を除去する方法が公知である。DE 102 33 835 A1の方法によれば、パルス状に発信する妨害源の妨害の除去は、少なくとも3つの連続する個々の測定値を妨害パルス間隔とは異なる時間間隔で求め、これら少なくとも3つの個々の測定値から妨害の除去された測定量を求めることにより達成される。
【0009】
本発明の課題は、高周波測定装置に対する外部妨害源の影響を低減することにより、高周波測定装置の誤測定と機能障害を防ぐことである。
【0010】
発明の利点
高周波測定装置に対する妨害信号の影響を低減する本発明による方法では、高周波測定装置の受信器により検出されたアナログ測定信号は、さらなる信号評価のために、少なくとも測定装置の評価ユニットのアナログディジタル変換器に供給される。上記の少なくとも1つのアナログディジタル変換器のサンプリングレートは、妨害信号の影響、すなわち、このような高周波測定装置により検出される妨害信号の強度をできるだけ広範囲にわたって低減するために、妨害信号と相関する妨害信号測定値に応じて変化させられる。
【0011】
高周波測定装置の評価ユニットのアナログディジタル変換器のサンプリングレートが固定されていると、例えば「バースト領域」で動作する他の機能サービス(TDMA方式、携帯電話など)が一時的に高周波測定装置の測定信号と重畳したり、さらには、一時的に高周波測定装置の受信および評価ユニットに同期して動作することにより、受信および評価ユニットの有効信号が歪曲されてしまうことさえ起こり得る。それゆえ、このようにしてサンプリングされた受信信号は、測定結果の歪曲につながり得るので、もはや無制限には使用できない。
【0012】
例えば位置測定のような本来の測定の前に例えば外部妨害放射を適切に測定すれば、有効信号に対する妨害信号の影響を低減するために、妨害の存在および強度に関する情報を得ることができる。この情報が、例えば、妨害源の存在を示していれば、本発明による方法に従って、測定信号に対する、すなわち、有効信号に対する評価ユニットのアナログディジタル変換器のサンプリングレートを変更してそのつど測定し直すことにより、有効信号に対する、すなわち、位置測定に対する妨害の影響が減少しているか否かを確認することができる。
【0013】
このように、本発明による方法は、アナログディジタル変換器において、できるだけ外部妨害のパルスの間に測定が行われるように、高周波測定装置の受信器のサンプリングレートを調整することにより、パルス状にサンプリングされる妨害信号の影響を除去する。
【0014】
請求項1による本発明の方法の有利な実施形態および発展形態は従属請求項において実施されている特徴から明らかとなる。
【0015】
有利には、本発明による方法では、妨害信号と相関する妨害信号測定値が閾値を超えた場合に、少なくとも1つのアナログディジタル変換器のサンプリングレートが変更される。妨害信号の強度に基づいて、高周波測定装置による測定が有効か否か、またはそもそも可能であるのか否かを決定することができる。妨害信号測定値が明らかに閾値を超えていれば、アナログディジタル変換器のサンプリングレートが変更され、改めて測定を行うことができる。
【0016】
有利には、本発明による方法は、妨害信号と相関する妨害信号測定値を測定装置の受信ユニットを用いて測定する。このために、例えば、高周波測定装置内に設けられた送信器をスイッチオフし、外部妨害信号のみが高周波測定装置の受信器によって検出されるようにしてもよい。したがって、妨害信号の影響を求めるための付加的なユニットは不要である。
【0017】
妨害信号と相関する測定値が事前設定可能な閾値を超えた場合には、サンプリングレートを変えて妨害信号の測定を繰り返す。この閾値は、例えば、受信ユニットの固有雑音またはこの固有雑音と相関する量であってよい。妨害信号の測定はその後、妨害信号のレベル、すなわち、相応する妨害信号測定値が事前設定可能な閾値よりも低くなるサンプリングレートが求められるか、これが可能でない場合には、最も低い妨害信号レベルを有する、すなわち、最も低い妨害信号測定値を有するサンプリングレートが求められるまで、サンプリングレートを変えて繰り返される。
【0018】
サンプリングレートの低下は測定期間の延長ないしは測定信号の分解能の低下を生じさせるので、妨害信号レベルの測定の際には、有利には、アナログディジタル変換器の可能な最大のサンプリングレートで始めて、漸次サンプリングレートを低下させる。
【0019】
妨害信号レベルの測定の際には、すなわち、妨害信号測定値を求める際には、妨害信号の決まった周波数線に注意するか、または、受信器の帯域幅全体にわたって個々の妨害信号の振幅を積算してもよい。有利には、周波数スペクトルの全体が分析に使用される。これにより、例えば、現在はまだ占有されていない周波数帯域で送信されることになるかもしれない将来の妨害源も考慮される。妨害信号測定の際に得られた周波数スペクトルは評価され、妨害信号レベルが量子化される。その際、例えば、周波数スペクトルを積分し、続いて、それにより得られた妨害信号測定値を予め決められた閾値と、例えば、受信器の固有雑音と比較してもよい。
【0020】
こうして、例えば有効信号の本来の測定の前に、例えば物体の測位のための測定の前に、高周波測定装置により検出された妨害信号の影響を低減するための相応の測定を行うことができる。測定が可能か否は、妨害信号の強度に基づいて、すなわち、妨害信号測定値に基づいて決定することができる。
【0021】
本発明による方法の択一的な実施形態においては、有効信号の測定の間、すなわち、例えば物体の測位のために実行されるような活動化された送受信器による測定の間、アナログディジタル変換器のサンプリングレートを変化させることにより、測定結果に対する妨害信号の影響を低減するようしてもよい。
【0022】
本発明による方法は、とりわけ、高周波測定装置を、特に物体の測位のための手持ち式測定装置を、動作させるために使用される。これに相応して、このような測定装置は装置の受信器により受信された測定信号のための少なくとも1つのアナログディジタル変換器を有しており、この測定信号はさらなる信号処理のためにサンプリングされる。本発明による方法によれば、少なくとも1つのアナログディジタル変換器のサンプリングレートは可変調整可能である。
【0023】
有利には、本発明によるこのような高周波測定装置では、少なくとも1つのアナログディジタル変換器のサンプリングレートの変更はマイクロコントローラによって制御されている。こうして、例えば、このような装置がスイッチオンされる度に、その時点の妨害信号レベルを検出し、高周波測定装置に対する妨害信号の影響を低減するために上記のようにしてサンプリングレートを最適化するルーチンを、自動的にまたは手動で開始することができる。
【0024】
このような高周波測定装置の1つまたは複数の測定周波数は0.1GHz〜10GHzの範囲内にあり、特に1GHz〜5GHzの周波数が、有利には、1.5GHz〜3.5GHzの周波数帯域内の周波数が利用される。このように高い周波数によれば、例えば、材料のごく小さな差異であっても測位装置により検出されることが可能である。これは、有利には、媒質内に封包された物体を検出する際に利用しうる。
【0025】
本発明による方法または本発明による方法に従って動作する高周波測定装置は、できるだけ妨害源の妨害パルス間に測定が行われるように、受信器のサンプリングレートを調整することにより、パルス状に放射される妨害信号の影響を低減する。その際、サンプリングレートは、受信ユニットのディジタル出力データ内に妨害放射の最小値が見つかるように、ないしは、妨害信号の影響が完全に除去されるように、変化させられる。本発明による方法ないし本発明による測定装置の別の利点は、実施例の図と付属説明とから明らかになる。
【0026】
図面
図面には、以下の説明においてより詳細に解説される本発明による方法の実施例が示されている。図面の個々の図とその説明ならびに請求項には、多数の特徴が組み合わされて含まれている。当業者はこれらの特徴を個別に考察することも、別の有意義な組合せにまとめることもできる。したがって、これらの有意義な組合せも開示されているものと見なされる。
【0027】
図1は、基礎となる方法を明確にするために、本発明による測定装置の基本構造を簡潔な概略図で示したものである。
【0028】
図1は、本発明による測定装置の例として、高周波をベースとした測位装置の基本構造を示している。この測位装置はギガヘルツ領域の高周波パルス(マイクロ波、レーダー)を送出する。高周波パルスは境界面で完全にまたは部分的に反射され、測定装置の受信器によりパルス応答として再び記録され、評価される。
【0029】
タイムベース10により制御されるパルス発生器12は、図1による測定装置の送信ユニット19において、短時間の広スペクトル電圧パルスを発生させる。この電圧パルスは詳細には図示されていないウェーブカプラを介して送信ユニットのアンテナ装置14へ入力結合される。アンテナ14は、送信ユニット19の近傍にある境界面で部分的に反射する相応する電磁放射16を放射する。
【0030】
高周波測定装置を媒質の近傍に、例えば、壁18の近傍に近づけると、壁18の表面17における反射だけでなく、媒質内に封包された物体20における相応する反射も得られる。このように反射した測定信号22は、とりわけ受信アンテナ24を包含した受信器23を介して、測定装置により再び検出される。受信器は、アンテナ14と、場合によって設けられているカプラ、フィルタ、または受信ユニット23の増幅器とから、アナログ信号30を受け取る。なお、このカプラ、フィルタ、増幅器は、図1においては、図式的に1つの構成ユニット26としてまとめられている。アナログ信号30は測定装置の少なくとも1つのアナログディジタル変換器28においてサンプリングされる。
【0031】
このようなサンプリングが行われる速度をサンプリングレートと呼ぶ。例えば、25KHzのサンプリングレートは1秒あたり25000個の測定値に相当する。アナログディジタル変換器28におけるサンプリング、つまり、入来アナログ信号30のディジタル出力信号32への変換は、タイムベース10によって予め決められた送信ユニット19ないし受信ユニット23の基準クロック(例えば8MHz)よりも明白に遅くてよい。この時間のあいだ、雑音抑制のためのデータをアナログディジタル変換器がディジタル化するまで、例えば、これらのデータを平均してもよい。
【0032】
本発明による方法では、受信アンテナ24により検出された戻りの測定信号30はまず測定装置の受信器23の構成ユニット26の高周波増幅器において増幅される。続いて、所定の時点に測定信号30の電圧信号のサンプリングが行われる。電圧の測定が行われる時点はサンプリングパルスによって予め設定される。電圧信号は大きさに関しても位相に関しても評価され、これを以てパルス発生器により発生させられた電圧の位相に対する反射した電圧の位相の算出が実行されるので、送信信号の発生器16とアナログディジタル変換器28のためのサンプリングパルスの発生器とが位相結合されていることが重要である。これはタイムベース10の使用により保証される。
【0033】
アナログディジタル変換器28の後、ディジタル化された測定信号32は、さらなる信号処理と評価のために、図1には図示されていないディジタル信号プロセッサに転送される。このディジタル信号プロセッサは、サンプリングパルスだけでなく励起パルスも発生させるため、タイムベース10の制御だけでなく別の信号処理も行う。
【0034】
サンプリングレートが受信側で固定的に設定されていると、高周波測位装置において、例えば携帯電話のようなバーストモードで動作する他の無線サービスがサンプリングされた測定信号と時間的に重なり合う、ないしは、サンプリングされた測定信号と時間的に同期して走ることにより、測定信号が歪曲されてしまうということが起こりうる。したがって、このようにサンプリングされた受信信号30は、測定結果を歪曲し兼ねないので、もはや使用できない。
【0035】
発生する妨害放射は、大まかに、連続的に放射する妨害源(CWまたはCDMA、符合分割多重アクセス)か、または、パルス状に放射する妨害源(TDMA、時分割多重アクセス)かに区分される。そこで、本発明による方法は、できるだけ外部妨害源のパルス間においてのみ測定を行うことにより、すなわち、アナログディジタル変換を行うことにより、パルス状に放射する妨害の測定信号に対する影響を除去する。
【0036】
このために、例えば、本来の位置測定の前に、高周波測定装置の送信器ないし送信装置19がスイッチオフされる。これにより、外部妨害信号のみが受信装置23によって受信される。有効測定の前に外部妨害放射を測定すれば、妨害周波数の存在と強さに関する情報を得ることができる。これらの情報が妨害源の存在を示していれば、本発明による方法に従って、アナログディジタル変換器28のサンプリングレートが変更され、妨害の影響が低減したか否かの確認のため再び測定が行われる。その際、受信装置のディジタル出力データ32内に妨害放射の最小値が見つかるまで、または、妨害が事前設定可能な閾値よりも低くなるまで、アナログディジタル変換器28のサンプリングレートを変化させることができる。
【0037】
これに関しては、例えば、妨害放射の周波数スペクトルの特定の周波数線だけを考察してもよい。しかし、択一的に、受信装置のスペクトル帯域幅全体にわたって測定を行い、妨害信号測定値を得るために妨害信号の振幅を積算してもよい。有利には、本発明による方法では、妨害信号の周波数スペクトル全体が分析に使用される。これは、現時点ではまだ周波数帯域を占有していない将来的に現れる妨害源も考慮することができるという利点を有している。
【0038】
妨害信号レベルの値を求めるために、このようにして検出された妨害放射の周波数スペクトルを例えば積分してもよい。そして、この妨害信号測定値を、例えばディジタル信号プロセッサのルーチンにおいて、例えば受信装置の固有雑音などの前もって決められた閾値と比較してもよい。測定が有意味であるか、可能であるか、または無意味であるかは、妨害信号の強度に基づいて、すなわち、妨害信号測定値に基づいて決定することができる。
【0039】
妨害信号測定値が例えば決められた閾値を明らかに超えている場合には、アナログディジタル変換器のサンプリングレートは自動ルーチンにより変更され、妨害信号レベルの測定が行われる。これは、相応する妨害信号測定値が所定の閾値よりも低くなるサンプリングレートが見つかるか、前もって決めることのできる時間内にこれが達成できない場合には、一定の時間インターバルにおいて最も低い妨害信号レベルを生じさせるサンプリングレート、すなわち、最も低い妨害信号測定値を生じさせるサンプリングレートが求められるまで、1回以上行ってよい。
【0040】
サンプリングレートの低下は測定期間の延長を生じさせるので、理想的には、アナログディジタル変換器の可能な最大のサンプリングレートで始めて、漸次サンプリングレートを低下させる。アナログディジタル変換器のサンプリングレートの変更は、有利には、マイクロコントローラ34が行う。
【0041】
妨害信号の影響の低減をもたらすアナログディジタル変換器28のサンプリングレートがこのようにして決定されていれば、本発明による測定装置の送信装置19を再び活動化させることができ、その結果、例えば、アンテナ14を介したパルス16の送信による位置測定と受信アンテナ24を用いた戻りの測定信号22の検出を実行することができる。
【0042】
本発明による方法では、その時点における妨害信号の影響を可能なかぎり低減するアナログディジタル変換器の最適サンプリングレートに測定装置を直ちに合わせるために、相応する高周波測定装置のスイッチオン後に本方法が自動的に実行されるようにしてもよい。しかし、妨害信号測定値の算出と、妨害信号の影響を低減するためのサンプリングレートの最適化は、例えば、このような測定装置の使用者によるキャリブレーション測定においても、場合によっては手動でも活動化させることができる。
【0043】
択一的には、本来の測定プロセスの最中に、高周波測定装置のアナログディジタル変換器のサンプリングレートの適応を行うようにしてもよい。このことは、例えば、媒質内に封包された物体の測位などの本来の測定の前には、別個の妨害信号測定は行われず、直接活動化された送信装置と活動化された受信装置とによって処理されることを意味する。その際、アナログディジタル変換器のサンプリングレートは、位置測定の最中に、例えば可能な最大のサンプリングレートから始めて漸次低下させられ、最良の測定結果をもたらすサンプリングレート、すなわち、最良の有効信号をもたらすサンプリングレートがディジタル信号プロセッサによって選択される。位置測定において、例えばパターン認識法を使用すれば、良好な測定結果を得るための基準が容易に立てられる。
【0044】
上に説明した本発明による方法を用いれば、パルス妨害源を効果的に抑制すること、ないしは、高周波測定装置の測定結果に対する影響を最小化することができる。
【0045】
連続的に放射する妨害源は測定装置の信号処理によって効果的に抑制される。もっとも、雑音のような信号を伴うこのような妨害源は信号レベルの上昇をもたらすので、例えば増幅器またはA/D変換器のような受信装置内のコンポーネントが過変調になってしまい兼ねない。そこで、クリッピングのために、つまり、過変調を防ぐために、増幅器、A/D変換器、または測定信号の評価に使用される他の構成素子の前に、図1において構成素子34として示されているような可変調整可能な抵抗を挿入してもよい。この構成素子は、例えば、VCR素子(voltage controlled resistor)またはDCA素子(digital controlled amplifier)であってよい。
【0046】
VCR素子またはDCA素子の制御は、上で説明した妨害信号測定値の測定および最小化のための方法を用いて、測定装置に少なくとも1つのアナログディジタル変換器のさまざまなサンプリングレートで妨害信号を測定させることにより行うことができる。このようにして、測定信号はつねに歪みなしにサンプリングされる。
【0047】
ここに説明したパルス状にまたは連続的に放射する妨害源の妨害信号の影響を防止または低減する方法を用いれば、高周波測定装置は広範囲にわたって歪曲のない最適化された測定結果を供給することができる。さらに、妨害源が補償可能でない場合には、制御回路が誤測定からの確実な保護を可能にする。というのも、制御回路は、このような測定装置の使用者に対して、例えば、妨害についての警告も行うことができ、場合によっては、自動スイッチングにより測定が許可されないようにすることができるからである。
【0048】
本発明による方法および本発明による測定装置は図示された実施形態に限定されない。本方法は、特に、ただ1つのアナログディジタル変換器のサンプリングレートの変更に限定されない。これに相応して、複数の変換器も動作させてよい。
【0049】
本発明による方法および相応する測定装置は媒質内に封包された物体の測位のための測定に限定されない。
【0050】
原則的に、本発明による方法はどのような高周波測定装置においても使用可能である。このような高周波測定装置には、とりわけ、測位のための高周波測定装置の他に、エリアモニタリングと人の監視のための装置も、または、壁を通して生物を位置同定するための装置も属している。本発明による方法の別の使用分野は、例えば自動車分野において駐車支援または運転者支援システムとして使用されているような高周波による距離測定であり、また建設業で使用される移動式距離測定にも使用しうる。通常これらの装置が動作する周波数領域はマイクロ波領域内にある。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明による測定装置の基本構造を簡潔な概略図で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波測定装置への妨害信号の影響を低減する方法、とりわけ、高周波測定装置の受信装置により検出されたアナログ測定信号(22)を該アナログ測定信号(22)のための評価ユニットの少なくとも1つのアナログディジタル変換器(28)に供給するようにした高周波測位装置を動作させるための方法であって、
妨害信号と相関する妨害信号測定値に応じて、前記少なくとも1つのアナログディジタル変換器(28)のサンプリングレートを変化させることを特徴とする、高周波測定装置への妨害信号の影響を低減する方法。
【請求項2】
妨害信号と相関する妨害信号測定値が閾値を超えた場合には、前記少なくとも1つのアナログディジタル変換器のサンプリングレートを変更することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
妨害信号と相関する妨害信号測定値を前記測定装置の受信ユニット(23)により測定することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
妨害信号と相関する妨害信号測定値が事前設定可能な閾値を超えた場合には、前記少なくとも1つのアナログディジタル変換器のサンプリングレートを変えて妨害信号の測定を繰り返すことを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
妨害の影響が最小となるサンプリングレートが得られるまで、前記少なくとも1つのアナログディジタル変換器(28)のサンプリングレートを変えて妨害信号の測定を繰り返すことを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項6】
高いサンプリングレートから始めてより低いサンプリングレートへと前記少なくとも1つのアナログディジタル変換器(28)のサンプリングレートを変化させることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
妨害信号の測定の際、前記受信装置(23)の帯域幅で検出可能な妨害信号周波数のスペクトル全体を、妨害信号と相関する測定値を求めるために使用することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
妨害信号の測定の際、前記受信装置(23)の帯域幅内の選択的な妨害信号周波数を、妨害信号と相関する測定値を求めるために使用することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
妨害信号の測定の際に検出された周波数スペクトルを評価し、評価の結果として得られた妨害信号と相関する測定値を事前設定可能な閾値と比較することを特徴とする、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
物体(20)の測位のための測定の前に、妨害信号を求めるための少なくとも1つの測定を実行することを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
受信ブランチにおける評価すべき測定信号のクリッピングを防ぐために、測定信号(30)の信号振幅に影響を及ぼす前記受信装置(23)の可変調整可能な素子(34)を、妨害信号と相関する信号測定値に応じて調整することを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
とりわけ、測定信号(16)を形成し送信する送信装置(19)と戻りの測定信号(22)を検出する受信装置(23)と、制御装置および評価装置を包含した、前記受信装置(23)により検出された測定信号(22)のための少なくとも1つのアナログディジタル変換器(28)とを備えてなる物体(20)の測位のための手持ち式測定装置である高周波測定装置であって、前記受信装置(23)により検出された測定信号(22)がさらなる信号処理のためにサンプリングされる形式の高周波測定装置において、
前記少なくとも1つのアナログディジタル変換器のサンプリングレートが可変調整可能であることを特徴とする、高周波測定装置。
【請求項13】
前記送信装置(19)により形成される測定信号(16)が1つより多くの測定周波数を有していることを特徴とする、請求項12記載の高周波測定装置。
【請求項14】
前記送信装置(19)により形成される測定信号の少なくとも1つの測定周波数が100MHzから10000MHzまでの範囲内に、とりわけ、1000MHzから5000MHzまでの範囲内に、有利には1500MHzから3500MHzまでの範囲内にあることを特徴とする、請求項12記載の高周波測定装置。
【請求項15】
前記少なくとも1つのアナログディジタル変換器(28)のサンプリングレートの変更を制御するマイクロコントローラ(36)が設けられていることを特徴とする、請求項12記載の高周波測定装置。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−501108(P2008−501108A)
【公表日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513896(P2007−513896)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/051707
【国際公開番号】WO2005/116683
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】