高周波発振器
【課題】周囲の環境温度による光ファイバの熱伸縮に対してもPLL制御を正常に行うことができる高周波発振器を得る。
【解決手段】レーザ光源が発生したレーザ光を光変調器により変調し、光ファイバを介して伝送した変調後のレーザ光を光電変換器により高周波信号に変換し、変換後の高周波信号からバンドパスフィルタにより所定の通過帯域成分を取り出し、当該所定の通過帯域成分の高周波信号の周波数を変調信号として前記光変調器に帰還すると共に発振信号として出力する高周波発振器において、高周波信号の周波数が一定になるように制御するPLL制御手段と、当該高周波発振器の発振周波数の変動をPLL制御手段の予め設定した周波数引き込み範囲内に納めるように高周波信号の位相を調整する位相調整手段を備えた。
【解決手段】レーザ光源が発生したレーザ光を光変調器により変調し、光ファイバを介して伝送した変調後のレーザ光を光電変換器により高周波信号に変換し、変換後の高周波信号からバンドパスフィルタにより所定の通過帯域成分を取り出し、当該所定の通過帯域成分の高周波信号の周波数を変調信号として前記光変調器に帰還すると共に発振信号として出力する高周波発振器において、高周波信号の周波数が一定になるように制御するPLL制御手段と、当該高周波発振器の発振周波数の変動をPLL制御手段の予め設定した周波数引き込み範囲内に納めるように高周波信号の位相を調整する位相調整手段を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミリ波やマイクロ波などの高周波信号を発生する高周波発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミリ波やマイクロ波を取り出す高周波発振器として光電気発振器を用いたものがある。光電気発振器は、レーザ光源から発生されたレーザ光を光変調器で強度変調し、変調されたレーザ光を光電変換器により電気信号である高周波信号に変換し、変換後の高周波信号からバンドパスフィルタにより所定の通過帯域成分を取り出し、当該所定の通過帯域成分の高周波信号を変調信号として光変調器に帰還する構成を持つ(例えば、特許文献1参照)。したがって、発振器の出力として、強度変調されたレーザ光を得たり、光電変換された高周波信号を得たりできる。
このような光電気発振器では、光路に光ファイバ等を用いて長距離化することで、低位相雑音化を実現しているが、一方で周囲の環境温度の変動により、ファイバの熱伸縮が生じ、信号周波数が変動するという問題がある。この問題を解決する方法として、光変調器までの帰還路に位相ロックループ(Phase Lock Loop、以下「PLL」と称する)を設け、電気信号である高周波信号の位相を自動的に制御することで、信号周波数を安定化させる方法が提案できる。また、PLL制御では、基準発振器を設けることにより、信号周波数を基準発振器の周波数、あるいはこの周波数が逓倍された周波数(もしくは分周された周波数)に一致させることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−351951号公報(段落番号[0020]、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光電気発振器を用いた高周波発振器において、上述のようにPLL制御を設けることにより、ある程度の周囲の環境温度による光ファイバの熱伸縮に起因する信号周波数の変動にも対処することはできる。しかし、実際には、環境温度の変動が大きくなって光ファイバの熱伸縮が顕著となった場合、あるいは振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等により、高周波発振器はPLL制御可能な引き込み周波数範囲外で発振してしまい、信号周波数の安定化が実現できなくなるという問題がある(図3により後述する)。また、初期設定時の温度状態において、発振信号の周波数がPLL制御可能な周波数範囲の境目付近に存在していた場合には、わずかな温度変動によって信号周波数がPLL制御可能範囲外に変動してしまい、信号周波数の安定化が実現できなくなるという問題がある(図4、図5により後述する)。
【0005】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、周囲の環境温度による光ファイバの熱伸縮、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等に対してもPLL制御を正常に行うことができる高周波発振器を得ることを目的とする。
また、この発明は、PLL制御を用いない構成においても、発振周波数の変動を抑えることが可能な高周波発振器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る高周波発振器は、レーザ光源から発生されたレーザ光を光変調器により変調し、光ファイバを介して伝送した変調後のレーザ光を光電変換器により高周波信号に変換し、変換後の高周波信号からバンドパスフィルタにより所定の通過帯域成分を取り出し、当該所定の通過帯域成分の高周波信号を変調信号として光変調器に帰還すると共に発振信号として出力する高周波発振器において、高周波信号の周波数が一定になるように制御するPLL制御手段と、当該高周波発振器の発振周波数の変動をPLL制御手段の予め設定した周波数引き込み範囲内に納めるように高周波信号の位相を調整する位相調整手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、高周波発振器は、周囲の環境温度の変動により光ファイバの熱伸縮が顕著となった場合、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等が発生した場合でもPLL制御可能な周波数範囲内で発振できるため、PLL制御による支障のない信号周波数の安定化を実現できる。また、初期設定時の温度状態において、発振信号の周波数がPLL制御可能な周波数範囲の境目付近に存在していた場合にも、温度変動によって信号周波数がPLL制御可能範囲外に変動することはなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。
図1において、この高周波発振器は、大きく分けて光信号を伝送する光伝送系1と、電気信号である高周波信号(以下、「RF信号」と称する)を伝送するRF信号伝送系2(電気伝送系)とから構成されている。光伝送系1は、レーザ光源10、光学路(例えば光ファイバ)11、光変調器12、光ファイバ13および光電変換器14により構成されている。RF信号伝送系2は、バンドパスフィルタ15、PLL制御系(PLL制御手段)3、移相器18、アンプ19およびカプラ20により構成されている。また、RF信号伝送系2に含まるPLL制御系3は、移相器16、カプラ17、基準発振器21、分周器22およびPLL回路23により構成されている。
【0009】
次に、図1の高周波発振器の全体の動作について説明する。
光伝送系1において、レーザ光源10はレーザ光を発生し、発生したレーザ光を、例えば光ファイバ11によって接続され光変調器12に出力する。光変調器12は、レーザ光源10から与えられたレーザ光を、RF信号伝送系2のカプラ20から与えられるRF信号に応じて強度変調し、変調後のレーザ光を光ファイバ13に出力する。光ファイバ13は、光変調器12から出力された変調後のレーザ光を光電変換器14に伝送する。光電変換器14では、光ファイバ13により伝送された変調後のレーザ光を直接検波(自乗検波)によってRF信号に変換し、変換後のRF信号を、例えば同軸ケーブル等の電線ケーブルを介してRF信号伝送系2のバンドパスフィルタ15に伝送する。
【0010】
RF信号伝送系2において、バンドパスフィルタ15は、光電変換器14により変換されたRF信号に対して、予め設定されたバンドパスフィルタの中心周波数を含む所定の通過帯域以外の周波数帯域の信号成分やスプリアスを遮断して、所定の通過帯域に含まれている信号成分のみを通過させて移相器16に与える。移相器16は、バンドパスフィルタ15を通過したRF信号の位相を、後述するPLL回路23から出力される制御信号の電圧値に応じて調整する。カプラ17は、移相器16により位相調整されたRF信号を2つに分岐し、一方のRF信号を移相器18に出力し、他方のRF信号を分周器22に出力する。
【0011】
移相器18は、カプラ17で分岐された一方のRF信号を、予め設定された所定の位相に調整してアンプ19に出力する。なお、この移相器18の詳細な機能については後述する。電気アンプであるアンプ19は、移相器18から出力されたRF信号を増幅してカプラ20に出力する。カプラ20では、アンプ19で増幅されたRF信号を2つに分岐し、一方のRF信号を、例えば同軸ケーブル等の電線ケーブルを介して光変調器12に出力すると共に、他方のRF信号を、当該発振器の発振信号として外部に出力する。
光変調器12では、カプラ20で分岐された他方のRF信号を変調信号としてレーザ光を強度変調する。この高周波発振器は、光変調器12にRF信号を入力させることにより帰還回路を構成しているが、この帰還回路において、回路全体の損失よりも大きくなるように帰還ゲインを設定することにより、バンドパスフィルタ15で設定された所定の周波数で発振することになる。
【0012】
分周器22では、カプラ17で分岐された他方のRF信号の周波数を予め設定された値に分周してPLL回路23に出力する。PLL制御系3内に設けられた基準発振器21は、予め設定された所定の周波数の基準信号(RF信号)を発振しており、この基準信号をPLL回路23に出力している。PLL回路23では、分周器22で分周されたRF信号と基準発振器21からの基準信号の周波数とを比較し、その周波数差に応じた電圧値の制御信号を生成して移相器16に出力する。この場合、PLL回路23は、分周器22からのRF信号の周波数が基準発振器21からの基準信号の周波数より進んでいる旨を示していれば、RF信号の周波数の位相が遅くなるような電圧値の制御信号を生成する。したがって、移相器16では、この制御信号の電圧値に応じてバンドパスフィルタ15から入力されるRF信号の位相を遅らせる。一方、分周器22からのRF信号の周波数が基準信号の周波数より遅れている旨を示していれば、PLL回路23はRF信号の周波数の位相が進むような電圧値の制御信号を生成し、移相器16では、この制御信号に応じてRF信号の位相を進ませる。
【0013】
次に、図1の高周波発振器における主要な機能や効果について説明する。
まず、発振モードについて説明する。
一般に光電気発振器では、レーザ光の伝送路として電気ケーブルよりも損失の小さい光ファイバを用いることにより、伝送路の延長化を図っている。これにより、発振のQ値が増加され、通常の高周波発振器よりも位相雑音が低減される。しかし、一方で周囲の環境温度の変動により発振周波数が変動するという課題がある。図2は、この実施の形態1における高周波発振器の発振モードと、内部のバンドパスフィルタの透過スペクトルを表す模式図である。発振モードとは、発振器内全ループ長の逆数に比例する発振しうるモードのことであり、図2のように、バンドパスフィルタ(BPF)の透過スペクトルにおいて透過率が最も高いモードで発振信号が得られる。このとき、周囲の環境温度が変動すると、それに伴うループ長の変化により発振モード周波数が変動し、発振信号の周波数が変動する。そのため、PLLを用いた位相制御を行っている。
【0014】
次に、ここで使用しているPLL制御について説明する。
図3は、PLL制御の周波数引き込み範囲を表す模式図である。図3のように、PLL制御では、発振周波数設定値(基準発振器21の基準信号の周波数×分周器22の分周数)を決定し、発振周波数がこの設定値と一致するためのフィードバック回路を構成している。このとき、発振周波数を上記設定値に引き込むための周波数範囲は、PLL制御に用いている移相器16の位相シフト量の性能に比例する。つまりこの位相シフト量の性能のみで決定される。また、発振周波数が上記PLL制御の周波数引き込み範囲外に存在する場合、PLL制御は不可能となる。
【0015】
ここで、図1における高周波発振器の効果を分かりやすく説明するため、周囲の環境温度10℃〜40℃の間でPLL制御を実施する場合について述べる。そのため、ここでは、下記の前提条件1〜3が成立しているものと仮定する。
前提条件1: ファイバ長の伸縮量は、周囲の環境温度の変動範囲に比例するとし、周囲の環境温度が決まれば、そのときの発振モードも決定されるとする。
前提条件2: PLLによる周波数引き込み範囲量は、10℃〜40℃の間の発振モードの変動量と同一であるとする。
前提条件3: 周囲の環境温度が増加するとファイバ長は伸長するとし、40℃時発振モードの方が、10℃時に比べて周波数の値が小さいとする。
なお、前提条件1および前提条件3は、汎用性の高いUV樹脂やナイロン素材でコーティングされたファイバにおいては、成り立つ条件である。
【0016】
上記前提条件の下で発振モードと発振周波数設定値との関係が図4に示すような場合、発振周波数設定値と10℃時発振モード間の周波数範囲が、PLLによる周波数引き込み範囲外となる。一方、発振モードと発振周波数設定値との関係が図5に示すような場合、40℃時発振モード側の一部の周波数範囲が、PLLによる周波数引き込み範囲外となる。このような場合、図1のようにPLL用の移相器16とは別にもう一つの移相器18を設けて、発振モードと発振周波数設定値が図6のような関係になるように位相を調整する。このことで、10℃〜40℃での発振周波数の変動とPLLによる周波数引き込み範囲が一致し、PLL制御用の移相器16の位相シフト量の性能をフル活用できる。つまり周波数制御可能な温度範囲が増加するという効果が得られる。
【0017】
なお、前述の前提条件2を遵守せず、PLLによる周波数引き込み範囲量を、上記10℃〜40℃の間の発振モードの変動量に対して十分大きくすることで、従前のPLL制御を用いた構成でも、周波数安定化を実現することは可能であると考えられる。ただし、この発明で示した構成を用いることで、上記10℃〜40℃だけでなく、それ以上の温度範囲でも周波数制御が可能となるという効果が得られる。
また、前述の説明では、分かりやすくするため、周囲の環境温度を10℃〜40℃と仮定し、また前提条件1〜3が成立するものとしていたが、これらの仮定や前提条件は、成立していなくても前述した内容と同様の効果を得ることはできるため、必ずしも成立している必要はない。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0018】
また、図6では、PLL制御による周波数引き込み範囲と10℃〜40℃での発振モードの変動範囲とが一致するとしていたが、別に一致していなくても前述した内容と同様の効果を得ることはできるため、両範囲は必ずしも一致している必要はない。
また、移相器18を用いなくても、例えば同軸ケーブルの長さを調節することでも前述した内容と同様の効果を得ることができる。
【0019】
また、図1の構成例によれば、光伝送系1におけるレーザ光源10と光変調器12の間、および光変調器12と光電変換器14の間が光ファイバによって接続されているので、光伝送系1の小型化が可能になる。また、高い信頼性が得られるとともに、取り扱いが容易となり、自由性の高い配置が得られるなど効果がある。ただし、この実施の形態1では、レーザ光の伝送路の全てを光ファイバだけを用いることに限定するものではなく、例えば空間など、他のものを用いても構わない。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0020】
また、図1の構成例では、RF信号伝送系2がバンドパスフィルタ15、移相器16、カプラ17、移相器18、アンプ19およびカプラ20から構成されているが、これらは、必ずしも図1に示すとおりに配置される必要はなく、光電変換器14から光変調器12までの間であれば、どの位置に設置されてもよい。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
また、カプラ17,20の分岐比については特に言及していないが、カプラ17については、高周波発振器が発振するための条件およびPLL制御を実施するための条件、一方、カプラ20については高周波発振器が発振するための条件を満たしていれば、どのような分岐比でも構わない。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0021】
また、図1の構成例では、RF信号伝送系2がアンプ19を実装し、アンプ19がRF信号を増幅することにより、所望の信号を得ることができるようにしているが、アンプ19の代わりに、例えば、レーザ光源10から光電変換器14までの間に光信号を増幅する光アンプを実装するようにしてもよい。あるいは、アンプ19と光アンプの双方を実装するようにしてもよい。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0022】
また、図1の構成例では、RF信号伝送系2に移相器16を実装し、PLL回路23が移相器16を制御して、RF信号の位相を所望の値に調整するものについて示したが、移相器16の代わりに、図7に示すように光路の長さを所望の値に変化させる光遅延器31を光伝送系1に実装し、PLL回路23の制御信号の電圧値により光遅延器31を制御して、光路の長さを調整することにより、RF信号の位相を所望の値に調整するよう制御するようにしてもよい。なお、その場合、光遅延器31の設置位置については、光変調器12から光電変換器14までの間であれば、どの位置としても構わない。
【0023】
また、図1の構成例では、RF信号伝送系2に移相器18を実装しているが、この移相器18の代わりに、図8に示すように光路の長さを所望の値に変化させる光遅延器32を光伝送系1に実装し、光路の長さを調整することにより、RF信号の位相を所望の値に調整するようにしてもよい。なお、その場合、光遅延器32の設置位置については、光変調器12から光電変換器14までの間であれば、どの位置としても構わない。
【0024】
また、光遅延器31を設けた図7の構成において、移相器18の代わりとして、図9に示すように、光遅延器32を光伝送系1に実装し、光路の長さを調整することにより、RF信号の位相を所望の値に調整するようにしてもよい。なお、光遅延器31および光遅延器32の設置位置については、光変調器12から光電変換器14までの間であれば、どの位置としても構わない。なお、以上で示した移相器の代わりとして光遅延器を用いることは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0025】
以上のように、この実施の形態1によれば、当該高周波発振器の発振周波数の変動をPLL制御の予め設定した周波数引き込み範囲内に納めるように高周波信号の位相を調整する位相調整手段(移相器18、光遅延器32、同軸ケーブル等)を設けたので、高周波発振器は、周囲の環境温度の変動により光ファイバの熱伸縮が顕著となった場合、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等が発生し場合でもPLL制御可能な周波数範囲内で発振でき、PLL制御による支障のない信号周波数の安定化を実現できる。また、初期設定時の温度状態において、発振信号の周波数がPLL制御可能な周波数範囲の境目付近に存在していた場合にも、温度変動によって信号周波数がPLL制御可能範囲外に変動することはなくなる。
【0026】
実施の形態2.
図10は、この発明の実施の形態2による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。図において、図1に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略するものとする。図10の構成は、図1の構成に対して、温度検出器41、位相シフト量判別手段42および電圧発生手段43を設けたものである。
ここでは、この高周波発振器の動作および効果を分かりやすく説明するため、前述した実施の形態1と同様、周囲の環境温度10℃〜40℃の間でPLL制御を実施する場合について述べる。また、以下の説明において、前述した前提条件1〜3が成立しているものと仮定する。
【0027】
次に、動作について説明する。
図10において、温度検出器41は、この高周波発振器の周囲の環境温度を検出し、この検出温度を表す温度情報信号を位相シフト量判別手段42へ出力する。次に、位相シフト量判別手段42は、温度検出器41からの温度情報信号を受信すると、この温度情報信号が示す温度検出器41による検出温度に応じて、移相器18で調整するための所望の位相シフト量を判別する。ここでは、例えば、温度検出器41で検出した環境温度が25℃の場合、PLL制御を行わないときの発振信号が、図6における周囲環境温度10℃時の発振モードから周囲環境温度40℃時の発振モードまでの間のちょうど中心に発生するために必要な位相シフト量を判別する。そして、判別した位相シフト量を表す位相シフト量情報信号を電圧発生手段43へ出力する。電圧発生手段43では、位相シフト量情報信号を受信すると、この信号が指示する位相シフト量に応じた制御電圧値を生成して移相器18へ出力する。移相器18では、電圧発生手段43からの制御電圧値に応じて、カプラ17からのRF信号の位相をシフトさせる。
【0028】
次に、図10における高周波発振器の効果について説明する。
前述した実施の形態1の高周波発振器においては、例えば周囲環境温度10℃時の発振モードと、周囲環境温度40℃時の発振モードの周波数が既知であるとするなど、環境温度と発振モードとの対応があらかじめ既知であるとしていた。しかし、図10の高周波発振器では、環境温度と発振モードとの対応が既知でない場合でも、PLL制御を行わないときの発振信号の周波数とそのときの温度検出器41で検出した環境温度から、環境温度と発振モードとの対応が明確になり、実施の形態1と同様な効果を得ることができる。
また、例えば初期の設定時に対し、環境温度に対する発振モードにずれが生じて、環境温度と発振モードとの対応が不明となる場合でも、図10の高周波発振器では、環境温度と発振モードとの対応が明確になり、実施の形態1と同様な効果を得ることができる。
【0029】
また、環境温度と発振モードとの対応があらかじめ既知である場合には、図11に示すように、位相シフト量判別手段42が、出力端側に設けたカプラ51により分岐した発振信号の周波数に応じて所望の位相シフト量を判別して、この位相シフト量に応じた制御電圧値を移相器18に与えてRF信号の位相をシフトさせるようにしてもよい。これは、図11の構成でPLL制御を行わないときの発振信号周波数(発振モードに相当する)を検出することで、発振モードと環境温度との対応から、検出したときの環境温度が分かることによるものである。
【0030】
また、環境温度と発振モードとの対応があらかじめ既知であることに加えて、移相器16における印加電圧値とそのときの位相シフト量が既知である場合、この位相シフト量とPLL制御実施時の周波数から、PLL制御を行わないときの発振信号の周波数が分かるため、上記電圧値の制御信号が移相器16に印加されているときの環境温度が分かる。したがって、図12に示すように、カプラ62を用いてPLL回路23からの電圧値の制御信号の分岐し、分岐した一方の制御信号を電圧値検出器61に与え、電圧値検出器61により移相器16に印加されている電圧値を検出する。そして、位相シフト量判別手段42によりこの検出電圧値から位相器18で調整するための所望の位相シフト量を判別するようにしてもよい。
【0031】
以上のように、この実施の形態2によれば、位相調整手段は、周囲の環境温度、あるいは当該環境温度、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等に対応する変化を表わす高周波発振器の発振信号の周波数もしくはPLL制御系3における制御信号の電圧値に基づいて高周波信号を調整するための位相シフト量を判別し、判別した位相シフト量に応じた制御電圧値を生成し、その生成した制御電圧値に基づいて、移相器18において高周波信号の位相を調整するようにしている。したがって、上記実施の形態1と同様、高周波発振器は、周囲の環境温度の変動により光ファイバの熱伸縮が顕著となった場合、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等が発生した場合でもPLL制御可能な周波数範囲内で発振でき、PLL制御による支障のない信号周波数の安定化を実現できる。また、初期設定時の温度状態において、発振信号の周波数がPLL制御可能な周波数範囲の境目付近に存在していた場合にも、温度変動によって信号周波数がPLL制御可能範囲外に変動することはなくなる。
【0032】
実施の形態3.
図13は、この発明の実施の形態3による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。図において、図1に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略するものとする。図13は、図1の構成の移相器18と光ファイバ13に代えて、温度検出器41、制御信号出力部71、分岐器72、光路切り替え器73,74、光路長が異なる複数の光ファイバ75,76を設けた構成としている。
次に、動作について説明する。
ここで、この高周波発振器の動作および効果を分かりやすく説明するために、高周波発振信号の周波数を10GHzとし、移相器16で調整可能な位相シフト量を360度とする。また、周波数f[Hz]の信号の位相がΔφ[度]シフトしたときの、発振器ループ長の変動量ΔL[cm]は、ファイバの屈折率nを考慮すると、(1)式で表される。
【数1】
(1)式に、f=10GHz、Δφ=360度を代入すると、ΔL=2.1cmが得られる。そこで、光ファイバ75の長さをLmin (Lmin >4.2cm)、光ファイバ76の長さをLmin −2.1cmとする。
【0033】
また、前述した実施の形態1および実施の形態2と同様、周囲の環境温度10℃〜40℃の間でPLL制御を実施する場合について述べる。さらに、以下の説明において、前述した前提条件1〜3が成立しているものと仮定する。このとき、一般的に周囲温度が増加すると、ファイバ長は伸びるので、周囲環境温度40℃時は、環境温度10℃時に対してファイバ長が2.1cm伸張していることになる。
【0034】
温度検出器41は、この高周波発振器の周囲の環境温度を検出し、この検出した環境温度を表わす温度情報信号を制御信号出力部71へ出力する。次に、制御信号出力部71は、温度検出器41からの温度情報信号を受信すると、この温度情報信号が示す環境温度に応じて、光ファイバを切り替えるための切り替え制御信号を分岐器72へ出力する。この場合、制御信号出力部71は検出した環境温度に対する閾値を設け、例えば前述した条件の下では、温度検出器41で検出した環境温度が40℃の直前になった場合、切り替え制御信号を出力する。分岐器72では、切り替え制御信号を2つに分岐して光路切り替え器73,74へそれぞれ出力する。光路切り替え器73,74では、切り替え制御信号を受信すると、光ファイバ75,76のうちから所望の光路長の光ファイバに切り替えて光変調器12と光電変換器14の間に接続する。例えば前述した条件のもとでは、両光路切り替え器73,74は、切り替え制御信号を受信する前には長い方の光路の光ファイバ75を接続しているが、切り替え制御信号を受信した後は、短い方の光路の光ファイバ76の接続に切り替える。
【0035】
次に、図13の高周波発振器の効果について説明する。
この高周波発振器の周波数制御を説明するためのスペクトルを図14に示すが、周囲環境温度が10℃〜40℃の間にあるときは、PLL制御による周波数引き込みが可能だが、40℃以上の場合には引き込みは不可能である。このとき、前述した条件のもとでは、ファイバ長は環境温度10℃時に対して2.1cm以上伸張していることになる。そこで、図14のように、周囲環境温度が40℃になる直前に、ファイバ長が2.1cm短い方の光路へ切り替えることで、発振モードは再び発振周波数設定値と一致し、引き続きPLL制御が実施可能となる。したがって、図13のような構成とすることで、従来に対し、周波数制御可能な温度範囲を増加させることができるという効果が得られる。
【0036】
なお、前述した条件のもとで、図14のようにファイバ長が2.1cm短い光路へ切り替える場合、切り替える瞬間に実際のファイバ長がまだ2.1cm短縮していないときには、切り替え後のファイバ長が初期時に対し増加してしまい、PLL制御ができなくなる可能性がある。そこで、このような場合、実際のファイバ長の差を2.1cmよりも若干短めに設定しておけば、PLL制御ができなくなる可能性は低くなる。このように、ファイバ長を設定する場合、切り替え後も常にPLL制御ができるようにしておくことが好ましい。
【0037】
また、図15に示すように、図13の場合よりも光ファイバ77を1本追加して、光路を増やす構成としてもよい。このことで、さらに上記温度範囲を増加させることができる。この場合、光ファイバ77の長さをLmin −4.2cm、またはLmin +2.1cm程度に設定すれば、前述した条件のもとでは、周波数制御可能な温度範囲が約30℃増加することになる。同様にして、さらに光路を増やせば、周波数制御可能な温度範囲をより増加させることができる。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0038】
なお、前述の説明では、分かりやすくするため、高周波発振信号の周波数を10GHzとし、移相器16で調整可能な位相シフト量を360度としたが、これらの仮定は、成立していなくても前述した内容と同様の効果を得ることはできるため、必ずしも成立している必要はない。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
また、光ファイバ75,76,77の長さについては、前述した長さに設定しなくても、光路切り替え器73,74により光路を切り替えることで、周波数制御可能な温度範囲を増加させることができ、かつ前述したように切り替え後も常にPLL制御が可能であれば、どのような長さでも構わない。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0039】
また、環境温度と発振モードとの対応があらかじめ既知である場合には、図16に示すように、制御信号出力部71が、出力端側に設けたカプラ51により分岐した高周波発振信号の周波数に基づいて切り替え制御信号が発生するように構成して、その切り替え制御信号を光路切り替え器73,74に与えることによって光路切り替えを行うようにしてもよい。これは、図16の構成でPLL制御を行わないときの発振信号周波数(発振モードに相当する)を検出することで、発振モードと環境温度との対応から、検出したときの環境温度が分かることによるものである。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0040】
また、環境温度と発振モードとの対応があらかじめ既知であることに加えて、移相器16における印加電圧値とそのときの位相シフト量が既知である場合、この位相シフト量とPLL制御実施時の周波数から、PLL制御を行わないときの発振信号の周波数が分かるため、上記電圧値の制御信号が移相器16に印加されているときの環境温度が分かる。したがって、図17に示すように、カプラ62を用いてPLL回路23からの電圧値の制御信号を分岐し、分岐した一方の制御信号を電圧値検出器61に与え、電圧値検出器61により移相器16に印加されている電圧値を検出する。そして、制御信号出力部71により、この検出電圧値に基づいて切り替え制御信号を発生するようにし、光路切り替えを行うようにしてもよい。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0041】
以上のように、この実施の形態3によれば、位相調整手段は、それぞれ光路長が異なる複数の光ファイバと、これら複数の光ファイバを選択的に切り替える光路切り替え器73,74を設け、周囲の環境温度、あるいは当該環境温度に対応する変化を表わす出力発振信号の周波数もしくはPLL制御系3における制御信号の電圧値に基づいて切り替え制御信号を発生させ、光路切り替え器73,74がこの切り替え制御信号に応じて複数の光ファイバのうちから所望の光路長の光ファイバを選択して光変調器12と光電変換器14の間の光伝送路の一部として接続することにより、高周波信号の位相を調整するようにしている。したがって、上記各実施の形態と同様、高周波発振器は、周囲の環境温度の変動により光ファイバの熱伸縮が顕著となった場合、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等が発生した場合でもPLL制御可能な周波数範囲内で発振でき、PLL制御による支障のない信号周波数の安定化を実現できる。また、初期設定時の温度状態において、発振信号の周波数がPLL制御可能な周波数範囲の境目付近に存在していた場合にも、温度変動によって信号周波数がPLL制御可能範囲外に変動することはなくなる。
【0042】
実施の形態4.
図18は、この発明の実施の形態4による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。図において、図15に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略するものとする。図18は、図15の構成の光ファイバ75〜77の代わりに、光ファイバ82,83,84を設けると共に光変調器12と光路切り替え器73の間の光路として光ファイバ81を設けた構成としている。ここでは、光ファイバ82,83,84は長さが異なる光ファイバとする。また、高周波発振器において使用する光ファイバの長さの大部分を光ファイバ81に割当て、これに対して光ファイバ82,83,84には光ファイバ81に対して十分短い長さのファイバを割当てるように構成する。
この図18の高周波発振器の動作においては、光変調器12における変調後のレーザ光は光ファイバ81を通して光路切り替え器73に伝送される。また、光路切り替え器73,74は、分岐器72から切り替え制御信号を受信した場合に、切り替え制御信号に応じて光ファイバ82,83,84のうちから所望の光路の光ファイバを選択して光ファイバ81と光電変換器14の間に接続する。その他の動作については、前述の実施の形態3と同様である。
【0043】
次に、この図18の高周波発振器の効果について説明する。
この高周波発振器において長い光ファイバを使用する場合、その長さの大部分を光ファイバ81に割当て、残りの短い部分を光路切り替え器73,74により切り替えられる光ファイバ82,83,84に割当てる。光ファイバ82,83,84は、具体的には移相器16の位相シフト量に対応した長さ程度(前述した条件のもとでは2.1cm程度)に設定する。このことにより、図15(図16、図17も同様)の場合と同じファイバ長を使用した場合に対し、光路切り替え器73,74で切り替えるファイバ長を短尺化できるため、例えば小型化やコスト低減等のメリットが得られる。
なお、図18の例では、光ファイバの大部分の長さを、光変調器12と光路切り替え器73の間に割り当てたが、代わりに光路切り替え器74と光電変換器14の間の光ファイバに割当てても同様ある。
以上のように、この実施の形態4によれば、上記実施の形態3の構成に加え、光変調器12と光電変換器14の間で使用する光ファイバの長さの大部分を複数光路切り替え器間以外の光路に割当て、複数の光路切り替え器間の複数の光ファイバには十分短い光ファイバを割当てるようにしたので、実施の形態3の効果に加え、小型化やコスト低減等の効果が得られる。
【0044】
実施の形態5.
図19は、この発明の実施の形態5による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。図において、図1に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略するものとする。図19は、図1の構成の位相器18に代えて、温度検出器41、制御信号出力部71、分岐器72、伝送路切り替え器91,92、RF信号伝送路93,94,95を設けた構成としている。なお、RF信号伝送路93,94,95はそれぞれ長さの異なる伝送路とする。また、制御信号出力部71からの切り替え制御信号が、分岐器72により2つに分岐されて伝送路切り替え器91,92に与えられるように前述の実施の形態3の図15と類似する構成をしている。
図19の高周波発振器の動作において、光変調器12からの変調後のレーザ光は、上記実施の形態1の図1の場合と同様、光ファイバ13を通して光電変換器14に伝送される。また、温度検出器41、制御信号出力部71および分岐器72の動作は、図15の場合と同様である。伝送路切り替え器91,92は、分岐器72から制御信号出力部71が出力した切り替え制御信号を受信した場合、この制御信号に応じてRF信号伝送路93,94,95のうちから所望の長さの伝送路を選択してカプラ17とアンプ間に接続する。
【0045】
次に、図19の高周波発振器の効果について説明する。
一般的に光路切り替え器として用いられる光スイッチは、市販品でミリ秒オーダー程度の切り替え時間が生じるが、一方、例えばRF信号の伝送路切り替え器として用いることのできる半導体スイッチは、市販品でナノ秒オーダー程度の切り替え時間のものが入手可能である。したがって、経路の切り替えにRF信号用の伝送路切り替え器を用いることで、切り替え時間の短縮化が可能になるという効果が得られる。
【0046】
なお、図19の高周波発振器では、温度検出器41で検出した周囲の環境温度に基づいて制御信号出力部71で発生する切り替え制御信号を用いて伝送路切り替え器91,92を切り替えているが、前述の実施の形態3の図16または図17と同様に、周囲の環境温度、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等に対応する変化を表わす出力発振信号の周波数またはPLL制御系3における制御信号の電圧値に基づいて発生する切り替え制御信号を用いるように構成してもよい。
【0047】
以上のように、この実施の形態5によれば、位相調整手段は、それぞれ長さが異なる複数の電気信号伝送路93,94,95と、これら複数の電気信号伝送路を選択的に切り替える伝送路切り替え器91,92を設け、周囲の環境温度、あるいは当該環境温度、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等に対応する変化を表わす出力発振信号の周波数もしくはPLL制御系3における制御信号の電圧値に基づいて切り替え制御信号を発生させ、伝送路切り替え器91,92がこの切り替え制御信号に応じて複数の電気信号伝送路のうちから所望の長さ電気信号伝送路を選択して光電変換器14と光変調器12の間のRF伝送路の一部として接続することにより、高周波信号の位相を調整するようにしている。したがって、上記各実施の形態と同様、高周波発振器は、周囲の環境温度の変動により光ファイバの熱伸縮が顕著となった場合、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等が発生してもPLL制御可能な周波数範囲内で発振でき、PLL制御による支障のない信号周波数の安定化を実現できる。また、初期設定時の温度状態において、発振信号の周波数がPLL制御可能な周波数範囲の境目付近に存在していた場合にも、温度変動によって信号周波数がPLL制御可能範囲外に変動することはなくなる。
【0048】
実施の形態6.
図20は、この発明の実施の形態6による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。図において、図1に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略するものとする。図20では、図1の構成にある移相器18を設けず、またレーザ光源10の代わりに波長可変レーザ光源101を設け、さらに、温度検出器41と出力波長判別手段111を設けた構成としている。したがって、図20の場合の光伝送系1は、波長可変レーザ光源101、光変調器12、光ファイバ11,13等、光電変換器14により構成されることになる。
【0049】
この図20の高周波発振器の動作について説明する。
波長可変レーザ光源101で発生したレーザ光が光変調器12に出力される。温度検出器41は、この高周波発振器の周囲の環境温度を検出し、この検出温度を表わす温度情報信号を出力波長判別手段111へ出力する。出力波長判別手段111は、温度検出器41からの温度情報信号を受信すると、この温度情報信号が示す温度検出器41による検出温度に応じて波長可変レーザ光源101から発生させるべきレーザ光の所望の出力波長を判別し、この判別した波長を表す波長情報信号を波長可変レーザ光源101へ出力する。ここで判別されるレーザ光の所望の出力波長とは、当該高周波発振器の発振周波数の変動をPLL制御の予め設定した周波数引き込み範囲内に納めるために必要な波長である。波長可変レーザ光源101は、出力波長判別手段111からの波長情報信号を受けると、波長情報信号で指示している所望の出力波長のレーザ光を発生する。なお、その他の動作については、前述の実施の形態1と同様である。
【0050】
次に、この図20における高周波発振器の効果について説明する。
ここで、この高周波発振器の効果を分かりやすく説明するため、周囲の環境温度10℃〜40℃の間でPLL制御を実施する場合について、以下で述べる。なお、以下の説明において、前述した前提条件1および前提条件3が成立しているものと仮定する。
一般的に、前述した環境温度程度の変動が生じた場合、この高周波発振器において、周波数変動が生じるための最も大きな要因は、光ファイバの熱伸縮による長さの変動である。また、光ファイバ自身の主な材料である石英ガラスの線膨張率が1ppm/℃以下であるのに対し、光ファイバの保護被覆として多く用いられるUV樹脂やナイロン等の素材は、線膨張率が10ppm/℃以上であるものが多いため、この光ファイバの熱伸縮による長さ変動は、一般的には保護被覆の伸縮による変動が支配的となる場合が多い。ここで、高周波発振器の効果を分かりやすく説明するため、この高周波発振器内で用いるファイバ長を1000mとし、光ファイバの熱伸縮による長さ変動を10ppm/℃と仮定する。
【0051】
また、光ファイバ等の物質中を光が伝播する場合、光の速さが光の波長(周波数)により異なる現象が生じ、これを分散と呼んでいる。一般的なシングルモードファイバ(以下、SMFと称する)の分散値は、波長1.3μm付近でほぼ0であり、波長1.55μm付近で約17ps/km/nmである。この「ps/km/nm」という単位は、波長が1nm離れた2つの光がファイバ長1kmを伝播したときに生じる伝播時間の差を表している。以下の説明では、波長可変レーザ光源101で用いるレーザ波長帯を1.55μm付近とし、用いる光ファイバを一般的なSMFとして、この分散値を17ps/km/nmとする。
【0052】
このとき、1000mの光ファイバが、環境温度10℃から40℃まで変動する場合に生じるファイバ長変動量をΔL(10℃−40℃)とすると、ΔL(10℃〜40℃)は、ファイバの熱伸縮による長さ変動を10ppm/℃として(2)式のように計算できる。
ΔL(10℃−40℃)=1000×10・10(-6) ・(40−10)=0.3[m]
(2)
次に、このΔL(10℃−40℃)のファイバ長変動量分の伝播時間差を生じさせるために必要な光の波長差をΔλとすると、Δλは、ΔL(10℃−40℃)を用いて(3)式のように表すことができる。
【数2】
ここで、cは光速、nはファイバの屈折率、dSMFは用いたSMFの分散値である。
(3)式に、c=3.0×108m/s、n=1.45、dSMF=17ps/km/nmおよびΔL(10℃−40℃)=0.3mを代入すると、Δλ=85nmが得られる。
【0053】
したがって、周囲の環境温度10℃から40℃まで変動した場合でも、波長可変レーザ光源101から出力されるレーザ光の波長を85nm変化させることで、環境温度変動で生じるファイバ長変動量を、光の波長を考慮した光路長という観点で補正することが可能となる。なお、光ファイバにおいては、光の波長が小さいほど屈折率が大きくなり、光路長は長くなるため、上記の例では、環境温度10℃時は、40℃時に対してレーザ光の波長を85nm小さくすることで、前述の補正が可能となる。
【0054】
また、前述した前提条件1および前提条件3に加えて、以下の前提条件4が成立しているものと仮定する。
前提条件4: 分散による2つの波長の光の伝播時間差、つまりこの差から得られるファイバ長変動への換算量と、周囲の環境温度の変動で生じるファイバ長変動量とが1対1の対応関係であり、周囲の環境温度が変動した場合、その変動で生じるファイバ長変動量を補正するために必要なレーザ光の波長変化量を出力波長判別手段111で判別できるとする。
このとき、(2)式および(3)式と前提条件4から、周囲の環境温度が10℃〜40℃だけではなく、任意の範囲で変動した場合でも、その変動で生じるファイバ長変動量を補正するために必要なレーザ光の波長変化量を出力波長判別手段111で判別できる。したがって、この図20における高周波発振器により、周囲の環境温度が変動した場合でも、周波数を安定化させることができるという効果が得られる。
【0055】
また、例えば実施の形態3、4および5における高周波発振器では、光路切り替え器または伝送路切り替え器や、複数の光ファイバまたはRF信号伝送路が必要となるが、この図20における高周波発振器の場合は、一つの光ファイバで実施でき、ファイバ長を短尺化できるという効果が得られる。したがって、前述した実施の形態3、4および5における高周波発振器と比べて、小型化やコスト低減等のメリットがある。
【0056】
なお、前述したファイバ長や、光ファイバの熱伸縮による長さ変動については、前述した効果が得られるのであれば、別に仮定した値でなくても構わない。
また、使用する光ファイバはSMFと仮定したが、別にSMFでなくても構わない。
また、光ファイバの分散値は17ps/nm/kmで一定値と仮定したが、光ファイバによっては波長により分散値が異なる場合がある。ただし、各波長における分散値が既知であれば、(2)式および(3)式を用いることで、波長可変レーザ光源101における所望のレーザ光の波長変化量を導出することができるため、前述したように一定値でなくても構わない。
【0057】
また、前述した前提条件4では、分散による2つの波長の光の伝播時間差、つまりこの差から得られるファイバ長変動への換算量と、周囲の環境温度の変動で生じるファイバ長変動量とが1対1の対応関係であると仮定したが、周囲の環境温度が変動した場合に、その変動で生じるファイバ長変動量を補正するために必要なレーザ光の波長変化量を出力波長判別手段111で判別できるのであれば、別に前述の1対1の対応関係でなくても構わない。
また、出力波長判別手段111は、温度検出器41で検出した環境温度からレーザ光の所望の出力波長を判別しているが、これに限らず、高周波発振器の出力端側で分岐した発振信号の周波数またはPLL制御手段で位相シフトに用いる制御信号の電圧値に基づいて所望の出力波長を判別するようにしてもよい。
【0058】
以上のように、この実施の形態6によれば、レーザ光源として波長可変レーザ光源101を使用し、周囲の環境温度、あるいは当該環境温度、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等に対応する変化を表わす出力発振信号の周波数もしくはPLL制御系3における制御信号の電圧値に基づいて当該高周波発振器の発振周波数の変動をPLL制御の予め設定した周波数引き込み範囲内に納めるために必要なレーザ光の所望の出力波長を判別し、波長可変レーザ光源101からこの判別した所望の出力波長のレーザ光を発生するようにしたので、上記各実施の形態と同様な効果を奏する。また、上記実施の形態3、4および5における高周波発振器と比べて、小型化やコスト低減化を図ることができる。
【0059】
なお、上記図20における高周波発振器と同様に、波長可変レーザ光源101から出力されるレーザ光の波長を変化させることで、周囲の環境温度の変動で生じるファイバ長変動量を十分補正でき、この補正によりPLL制御を行わなくても発振信号の周波数を安定化させることができる場合には、図21に示すように、図20の構成からPLL制御系を除いた構成の高周波発振器としてもよい。このことにより、高周波発振器をより簡素化することが可能になる
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の実施の形態1による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る高周波発振器の発振モードと内部のバンドパスフィルタの透過スペクトルを表す模式図である。
【図3】PLL制御の周波数引き込み範囲を表す模式図である。
【図4】周囲環境温度の発振モードと発振周波数設定値の関係が周波数引き込み範囲外となる例を示す模式図である。
【図5】周囲環境温度の発振モードと発振周波数設定値の関係が周波数引き込み範囲外となる他の例を示す模式図である。
【図6】この発明の実施の形態1により周囲環境温度の発振モードと発振周波数設定値の関係と周波数引き込み範囲が一致した状態を示す模式図である。
【図7】この発明の実施の形態1による高周波発振器の他の構成例を示すブロック回路図である。
【図8】この発明の実施の形態1による高周波発振器のさらに他の構成例を示すブロック回路図である。
【図9】この発明の実施の形態1による高周波発振器のさらに他の構成例を示すブロック回路図である。
【図10】この発明の実施の形態2による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。
【図11】この発明の実施の形態2による高周波発振器の他の構成例を示すブロック回路図である。
【図12】この発明の実施の形態2による高周波発振器のさらに他の構成例を示すブロック回路図である。
【図13】この発明の実施の形態3による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。
【図14】この発明の実施の形態3に係る周波数制御を説明するためのスペクトルを示す模式図である。
【図15】この発明の実施の形態3による高周波発振器の他の構成例を示すブロック回路図である。
【図16】この発明の実施の形態3による高周波発振器のさらに他の構成例を示すブロック回路図である。
【図17】この発明の実施の形態3による高周波発振器のさらに他の構成例を示すブロック回路図である。
【図18】この発明の実施の形態4による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。
【図19】この発明の実施の形態5による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。
【図20】この発明の実施の形態6による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。
【図21】この発明の実施の形態6による高周波発振器の他の構成例を示すブロック回路図である。
【符号の説明】
【0061】
1 光伝送系、2 RF信号伝送系、3 PLL制御系、10 レーザ光源、11 光学路(光ファイバ)、12 光変調器、13,75〜77,81〜84 光ファイバ、14 光電変換器、15 バンドパスフィルタ、16,18 移相器、17,20,51,62 カプラ、19 アンプ、22 分周器、23 PLL回路、31,32 光遅延器、41 温度検出器、42 位相シフト量判別手段、43 電圧発生手段、61 電圧値検出器、71 制御信号出力部、72 分岐器、73,74 光路切り替え器、91,92 伝送路切り替え器、93〜95 RF信号伝送路、101 波長可変レーザ光源、111 出力波長判別手段。
【技術分野】
【0001】
この発明は、ミリ波やマイクロ波などの高周波信号を発生する高周波発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミリ波やマイクロ波を取り出す高周波発振器として光電気発振器を用いたものがある。光電気発振器は、レーザ光源から発生されたレーザ光を光変調器で強度変調し、変調されたレーザ光を光電変換器により電気信号である高周波信号に変換し、変換後の高周波信号からバンドパスフィルタにより所定の通過帯域成分を取り出し、当該所定の通過帯域成分の高周波信号を変調信号として光変調器に帰還する構成を持つ(例えば、特許文献1参照)。したがって、発振器の出力として、強度変調されたレーザ光を得たり、光電変換された高周波信号を得たりできる。
このような光電気発振器では、光路に光ファイバ等を用いて長距離化することで、低位相雑音化を実現しているが、一方で周囲の環境温度の変動により、ファイバの熱伸縮が生じ、信号周波数が変動するという問題がある。この問題を解決する方法として、光変調器までの帰還路に位相ロックループ(Phase Lock Loop、以下「PLL」と称する)を設け、電気信号である高周波信号の位相を自動的に制御することで、信号周波数を安定化させる方法が提案できる。また、PLL制御では、基準発振器を設けることにより、信号周波数を基準発振器の周波数、あるいはこの周波数が逓倍された周波数(もしくは分周された周波数)に一致させることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2005−351951号公報(段落番号[0020]、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光電気発振器を用いた高周波発振器において、上述のようにPLL制御を設けることにより、ある程度の周囲の環境温度による光ファイバの熱伸縮に起因する信号周波数の変動にも対処することはできる。しかし、実際には、環境温度の変動が大きくなって光ファイバの熱伸縮が顕著となった場合、あるいは振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等により、高周波発振器はPLL制御可能な引き込み周波数範囲外で発振してしまい、信号周波数の安定化が実現できなくなるという問題がある(図3により後述する)。また、初期設定時の温度状態において、発振信号の周波数がPLL制御可能な周波数範囲の境目付近に存在していた場合には、わずかな温度変動によって信号周波数がPLL制御可能範囲外に変動してしまい、信号周波数の安定化が実現できなくなるという問題がある(図4、図5により後述する)。
【0005】
この発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、周囲の環境温度による光ファイバの熱伸縮、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等に対してもPLL制御を正常に行うことができる高周波発振器を得ることを目的とする。
また、この発明は、PLL制御を用いない構成においても、発振周波数の変動を抑えることが可能な高周波発振器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る高周波発振器は、レーザ光源から発生されたレーザ光を光変調器により変調し、光ファイバを介して伝送した変調後のレーザ光を光電変換器により高周波信号に変換し、変換後の高周波信号からバンドパスフィルタにより所定の通過帯域成分を取り出し、当該所定の通過帯域成分の高周波信号を変調信号として光変調器に帰還すると共に発振信号として出力する高周波発振器において、高周波信号の周波数が一定になるように制御するPLL制御手段と、当該高周波発振器の発振周波数の変動をPLL制御手段の予め設定した周波数引き込み範囲内に納めるように高周波信号の位相を調整する位相調整手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、高周波発振器は、周囲の環境温度の変動により光ファイバの熱伸縮が顕著となった場合、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等が発生した場合でもPLL制御可能な周波数範囲内で発振できるため、PLL制御による支障のない信号周波数の安定化を実現できる。また、初期設定時の温度状態において、発振信号の周波数がPLL制御可能な周波数範囲の境目付近に存在していた場合にも、温度変動によって信号周波数がPLL制御可能範囲外に変動することはなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。
図1において、この高周波発振器は、大きく分けて光信号を伝送する光伝送系1と、電気信号である高周波信号(以下、「RF信号」と称する)を伝送するRF信号伝送系2(電気伝送系)とから構成されている。光伝送系1は、レーザ光源10、光学路(例えば光ファイバ)11、光変調器12、光ファイバ13および光電変換器14により構成されている。RF信号伝送系2は、バンドパスフィルタ15、PLL制御系(PLL制御手段)3、移相器18、アンプ19およびカプラ20により構成されている。また、RF信号伝送系2に含まるPLL制御系3は、移相器16、カプラ17、基準発振器21、分周器22およびPLL回路23により構成されている。
【0009】
次に、図1の高周波発振器の全体の動作について説明する。
光伝送系1において、レーザ光源10はレーザ光を発生し、発生したレーザ光を、例えば光ファイバ11によって接続され光変調器12に出力する。光変調器12は、レーザ光源10から与えられたレーザ光を、RF信号伝送系2のカプラ20から与えられるRF信号に応じて強度変調し、変調後のレーザ光を光ファイバ13に出力する。光ファイバ13は、光変調器12から出力された変調後のレーザ光を光電変換器14に伝送する。光電変換器14では、光ファイバ13により伝送された変調後のレーザ光を直接検波(自乗検波)によってRF信号に変換し、変換後のRF信号を、例えば同軸ケーブル等の電線ケーブルを介してRF信号伝送系2のバンドパスフィルタ15に伝送する。
【0010】
RF信号伝送系2において、バンドパスフィルタ15は、光電変換器14により変換されたRF信号に対して、予め設定されたバンドパスフィルタの中心周波数を含む所定の通過帯域以外の周波数帯域の信号成分やスプリアスを遮断して、所定の通過帯域に含まれている信号成分のみを通過させて移相器16に与える。移相器16は、バンドパスフィルタ15を通過したRF信号の位相を、後述するPLL回路23から出力される制御信号の電圧値に応じて調整する。カプラ17は、移相器16により位相調整されたRF信号を2つに分岐し、一方のRF信号を移相器18に出力し、他方のRF信号を分周器22に出力する。
【0011】
移相器18は、カプラ17で分岐された一方のRF信号を、予め設定された所定の位相に調整してアンプ19に出力する。なお、この移相器18の詳細な機能については後述する。電気アンプであるアンプ19は、移相器18から出力されたRF信号を増幅してカプラ20に出力する。カプラ20では、アンプ19で増幅されたRF信号を2つに分岐し、一方のRF信号を、例えば同軸ケーブル等の電線ケーブルを介して光変調器12に出力すると共に、他方のRF信号を、当該発振器の発振信号として外部に出力する。
光変調器12では、カプラ20で分岐された他方のRF信号を変調信号としてレーザ光を強度変調する。この高周波発振器は、光変調器12にRF信号を入力させることにより帰還回路を構成しているが、この帰還回路において、回路全体の損失よりも大きくなるように帰還ゲインを設定することにより、バンドパスフィルタ15で設定された所定の周波数で発振することになる。
【0012】
分周器22では、カプラ17で分岐された他方のRF信号の周波数を予め設定された値に分周してPLL回路23に出力する。PLL制御系3内に設けられた基準発振器21は、予め設定された所定の周波数の基準信号(RF信号)を発振しており、この基準信号をPLL回路23に出力している。PLL回路23では、分周器22で分周されたRF信号と基準発振器21からの基準信号の周波数とを比較し、その周波数差に応じた電圧値の制御信号を生成して移相器16に出力する。この場合、PLL回路23は、分周器22からのRF信号の周波数が基準発振器21からの基準信号の周波数より進んでいる旨を示していれば、RF信号の周波数の位相が遅くなるような電圧値の制御信号を生成する。したがって、移相器16では、この制御信号の電圧値に応じてバンドパスフィルタ15から入力されるRF信号の位相を遅らせる。一方、分周器22からのRF信号の周波数が基準信号の周波数より遅れている旨を示していれば、PLL回路23はRF信号の周波数の位相が進むような電圧値の制御信号を生成し、移相器16では、この制御信号に応じてRF信号の位相を進ませる。
【0013】
次に、図1の高周波発振器における主要な機能や効果について説明する。
まず、発振モードについて説明する。
一般に光電気発振器では、レーザ光の伝送路として電気ケーブルよりも損失の小さい光ファイバを用いることにより、伝送路の延長化を図っている。これにより、発振のQ値が増加され、通常の高周波発振器よりも位相雑音が低減される。しかし、一方で周囲の環境温度の変動により発振周波数が変動するという課題がある。図2は、この実施の形態1における高周波発振器の発振モードと、内部のバンドパスフィルタの透過スペクトルを表す模式図である。発振モードとは、発振器内全ループ長の逆数に比例する発振しうるモードのことであり、図2のように、バンドパスフィルタ(BPF)の透過スペクトルにおいて透過率が最も高いモードで発振信号が得られる。このとき、周囲の環境温度が変動すると、それに伴うループ長の変化により発振モード周波数が変動し、発振信号の周波数が変動する。そのため、PLLを用いた位相制御を行っている。
【0014】
次に、ここで使用しているPLL制御について説明する。
図3は、PLL制御の周波数引き込み範囲を表す模式図である。図3のように、PLL制御では、発振周波数設定値(基準発振器21の基準信号の周波数×分周器22の分周数)を決定し、発振周波数がこの設定値と一致するためのフィードバック回路を構成している。このとき、発振周波数を上記設定値に引き込むための周波数範囲は、PLL制御に用いている移相器16の位相シフト量の性能に比例する。つまりこの位相シフト量の性能のみで決定される。また、発振周波数が上記PLL制御の周波数引き込み範囲外に存在する場合、PLL制御は不可能となる。
【0015】
ここで、図1における高周波発振器の効果を分かりやすく説明するため、周囲の環境温度10℃〜40℃の間でPLL制御を実施する場合について述べる。そのため、ここでは、下記の前提条件1〜3が成立しているものと仮定する。
前提条件1: ファイバ長の伸縮量は、周囲の環境温度の変動範囲に比例するとし、周囲の環境温度が決まれば、そのときの発振モードも決定されるとする。
前提条件2: PLLによる周波数引き込み範囲量は、10℃〜40℃の間の発振モードの変動量と同一であるとする。
前提条件3: 周囲の環境温度が増加するとファイバ長は伸長するとし、40℃時発振モードの方が、10℃時に比べて周波数の値が小さいとする。
なお、前提条件1および前提条件3は、汎用性の高いUV樹脂やナイロン素材でコーティングされたファイバにおいては、成り立つ条件である。
【0016】
上記前提条件の下で発振モードと発振周波数設定値との関係が図4に示すような場合、発振周波数設定値と10℃時発振モード間の周波数範囲が、PLLによる周波数引き込み範囲外となる。一方、発振モードと発振周波数設定値との関係が図5に示すような場合、40℃時発振モード側の一部の周波数範囲が、PLLによる周波数引き込み範囲外となる。このような場合、図1のようにPLL用の移相器16とは別にもう一つの移相器18を設けて、発振モードと発振周波数設定値が図6のような関係になるように位相を調整する。このことで、10℃〜40℃での発振周波数の変動とPLLによる周波数引き込み範囲が一致し、PLL制御用の移相器16の位相シフト量の性能をフル活用できる。つまり周波数制御可能な温度範囲が増加するという効果が得られる。
【0017】
なお、前述の前提条件2を遵守せず、PLLによる周波数引き込み範囲量を、上記10℃〜40℃の間の発振モードの変動量に対して十分大きくすることで、従前のPLL制御を用いた構成でも、周波数安定化を実現することは可能であると考えられる。ただし、この発明で示した構成を用いることで、上記10℃〜40℃だけでなく、それ以上の温度範囲でも周波数制御が可能となるという効果が得られる。
また、前述の説明では、分かりやすくするため、周囲の環境温度を10℃〜40℃と仮定し、また前提条件1〜3が成立するものとしていたが、これらの仮定や前提条件は、成立していなくても前述した内容と同様の効果を得ることはできるため、必ずしも成立している必要はない。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0018】
また、図6では、PLL制御による周波数引き込み範囲と10℃〜40℃での発振モードの変動範囲とが一致するとしていたが、別に一致していなくても前述した内容と同様の効果を得ることはできるため、両範囲は必ずしも一致している必要はない。
また、移相器18を用いなくても、例えば同軸ケーブルの長さを調節することでも前述した内容と同様の効果を得ることができる。
【0019】
また、図1の構成例によれば、光伝送系1におけるレーザ光源10と光変調器12の間、および光変調器12と光電変換器14の間が光ファイバによって接続されているので、光伝送系1の小型化が可能になる。また、高い信頼性が得られるとともに、取り扱いが容易となり、自由性の高い配置が得られるなど効果がある。ただし、この実施の形態1では、レーザ光の伝送路の全てを光ファイバだけを用いることに限定するものではなく、例えば空間など、他のものを用いても構わない。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0020】
また、図1の構成例では、RF信号伝送系2がバンドパスフィルタ15、移相器16、カプラ17、移相器18、アンプ19およびカプラ20から構成されているが、これらは、必ずしも図1に示すとおりに配置される必要はなく、光電変換器14から光変調器12までの間であれば、どの位置に設置されてもよい。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
また、カプラ17,20の分岐比については特に言及していないが、カプラ17については、高周波発振器が発振するための条件およびPLL制御を実施するための条件、一方、カプラ20については高周波発振器が発振するための条件を満たしていれば、どのような分岐比でも構わない。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0021】
また、図1の構成例では、RF信号伝送系2がアンプ19を実装し、アンプ19がRF信号を増幅することにより、所望の信号を得ることができるようにしているが、アンプ19の代わりに、例えば、レーザ光源10から光電変換器14までの間に光信号を増幅する光アンプを実装するようにしてもよい。あるいは、アンプ19と光アンプの双方を実装するようにしてもよい。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0022】
また、図1の構成例では、RF信号伝送系2に移相器16を実装し、PLL回路23が移相器16を制御して、RF信号の位相を所望の値に調整するものについて示したが、移相器16の代わりに、図7に示すように光路の長さを所望の値に変化させる光遅延器31を光伝送系1に実装し、PLL回路23の制御信号の電圧値により光遅延器31を制御して、光路の長さを調整することにより、RF信号の位相を所望の値に調整するよう制御するようにしてもよい。なお、その場合、光遅延器31の設置位置については、光変調器12から光電変換器14までの間であれば、どの位置としても構わない。
【0023】
また、図1の構成例では、RF信号伝送系2に移相器18を実装しているが、この移相器18の代わりに、図8に示すように光路の長さを所望の値に変化させる光遅延器32を光伝送系1に実装し、光路の長さを調整することにより、RF信号の位相を所望の値に調整するようにしてもよい。なお、その場合、光遅延器32の設置位置については、光変調器12から光電変換器14までの間であれば、どの位置としても構わない。
【0024】
また、光遅延器31を設けた図7の構成において、移相器18の代わりとして、図9に示すように、光遅延器32を光伝送系1に実装し、光路の長さを調整することにより、RF信号の位相を所望の値に調整するようにしてもよい。なお、光遅延器31および光遅延器32の設置位置については、光変調器12から光電変換器14までの間であれば、どの位置としても構わない。なお、以上で示した移相器の代わりとして光遅延器を用いることは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0025】
以上のように、この実施の形態1によれば、当該高周波発振器の発振周波数の変動をPLL制御の予め設定した周波数引き込み範囲内に納めるように高周波信号の位相を調整する位相調整手段(移相器18、光遅延器32、同軸ケーブル等)を設けたので、高周波発振器は、周囲の環境温度の変動により光ファイバの熱伸縮が顕著となった場合、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等が発生し場合でもPLL制御可能な周波数範囲内で発振でき、PLL制御による支障のない信号周波数の安定化を実現できる。また、初期設定時の温度状態において、発振信号の周波数がPLL制御可能な周波数範囲の境目付近に存在していた場合にも、温度変動によって信号周波数がPLL制御可能範囲外に変動することはなくなる。
【0026】
実施の形態2.
図10は、この発明の実施の形態2による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。図において、図1に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略するものとする。図10の構成は、図1の構成に対して、温度検出器41、位相シフト量判別手段42および電圧発生手段43を設けたものである。
ここでは、この高周波発振器の動作および効果を分かりやすく説明するため、前述した実施の形態1と同様、周囲の環境温度10℃〜40℃の間でPLL制御を実施する場合について述べる。また、以下の説明において、前述した前提条件1〜3が成立しているものと仮定する。
【0027】
次に、動作について説明する。
図10において、温度検出器41は、この高周波発振器の周囲の環境温度を検出し、この検出温度を表す温度情報信号を位相シフト量判別手段42へ出力する。次に、位相シフト量判別手段42は、温度検出器41からの温度情報信号を受信すると、この温度情報信号が示す温度検出器41による検出温度に応じて、移相器18で調整するための所望の位相シフト量を判別する。ここでは、例えば、温度検出器41で検出した環境温度が25℃の場合、PLL制御を行わないときの発振信号が、図6における周囲環境温度10℃時の発振モードから周囲環境温度40℃時の発振モードまでの間のちょうど中心に発生するために必要な位相シフト量を判別する。そして、判別した位相シフト量を表す位相シフト量情報信号を電圧発生手段43へ出力する。電圧発生手段43では、位相シフト量情報信号を受信すると、この信号が指示する位相シフト量に応じた制御電圧値を生成して移相器18へ出力する。移相器18では、電圧発生手段43からの制御電圧値に応じて、カプラ17からのRF信号の位相をシフトさせる。
【0028】
次に、図10における高周波発振器の効果について説明する。
前述した実施の形態1の高周波発振器においては、例えば周囲環境温度10℃時の発振モードと、周囲環境温度40℃時の発振モードの周波数が既知であるとするなど、環境温度と発振モードとの対応があらかじめ既知であるとしていた。しかし、図10の高周波発振器では、環境温度と発振モードとの対応が既知でない場合でも、PLL制御を行わないときの発振信号の周波数とそのときの温度検出器41で検出した環境温度から、環境温度と発振モードとの対応が明確になり、実施の形態1と同様な効果を得ることができる。
また、例えば初期の設定時に対し、環境温度に対する発振モードにずれが生じて、環境温度と発振モードとの対応が不明となる場合でも、図10の高周波発振器では、環境温度と発振モードとの対応が明確になり、実施の形態1と同様な効果を得ることができる。
【0029】
また、環境温度と発振モードとの対応があらかじめ既知である場合には、図11に示すように、位相シフト量判別手段42が、出力端側に設けたカプラ51により分岐した発振信号の周波数に応じて所望の位相シフト量を判別して、この位相シフト量に応じた制御電圧値を移相器18に与えてRF信号の位相をシフトさせるようにしてもよい。これは、図11の構成でPLL制御を行わないときの発振信号周波数(発振モードに相当する)を検出することで、発振モードと環境温度との対応から、検出したときの環境温度が分かることによるものである。
【0030】
また、環境温度と発振モードとの対応があらかじめ既知であることに加えて、移相器16における印加電圧値とそのときの位相シフト量が既知である場合、この位相シフト量とPLL制御実施時の周波数から、PLL制御を行わないときの発振信号の周波数が分かるため、上記電圧値の制御信号が移相器16に印加されているときの環境温度が分かる。したがって、図12に示すように、カプラ62を用いてPLL回路23からの電圧値の制御信号の分岐し、分岐した一方の制御信号を電圧値検出器61に与え、電圧値検出器61により移相器16に印加されている電圧値を検出する。そして、位相シフト量判別手段42によりこの検出電圧値から位相器18で調整するための所望の位相シフト量を判別するようにしてもよい。
【0031】
以上のように、この実施の形態2によれば、位相調整手段は、周囲の環境温度、あるいは当該環境温度、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等に対応する変化を表わす高周波発振器の発振信号の周波数もしくはPLL制御系3における制御信号の電圧値に基づいて高周波信号を調整するための位相シフト量を判別し、判別した位相シフト量に応じた制御電圧値を生成し、その生成した制御電圧値に基づいて、移相器18において高周波信号の位相を調整するようにしている。したがって、上記実施の形態1と同様、高周波発振器は、周囲の環境温度の変動により光ファイバの熱伸縮が顕著となった場合、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等が発生した場合でもPLL制御可能な周波数範囲内で発振でき、PLL制御による支障のない信号周波数の安定化を実現できる。また、初期設定時の温度状態において、発振信号の周波数がPLL制御可能な周波数範囲の境目付近に存在していた場合にも、温度変動によって信号周波数がPLL制御可能範囲外に変動することはなくなる。
【0032】
実施の形態3.
図13は、この発明の実施の形態3による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。図において、図1に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略するものとする。図13は、図1の構成の移相器18と光ファイバ13に代えて、温度検出器41、制御信号出力部71、分岐器72、光路切り替え器73,74、光路長が異なる複数の光ファイバ75,76を設けた構成としている。
次に、動作について説明する。
ここで、この高周波発振器の動作および効果を分かりやすく説明するために、高周波発振信号の周波数を10GHzとし、移相器16で調整可能な位相シフト量を360度とする。また、周波数f[Hz]の信号の位相がΔφ[度]シフトしたときの、発振器ループ長の変動量ΔL[cm]は、ファイバの屈折率nを考慮すると、(1)式で表される。
【数1】
(1)式に、f=10GHz、Δφ=360度を代入すると、ΔL=2.1cmが得られる。そこで、光ファイバ75の長さをLmin (Lmin >4.2cm)、光ファイバ76の長さをLmin −2.1cmとする。
【0033】
また、前述した実施の形態1および実施の形態2と同様、周囲の環境温度10℃〜40℃の間でPLL制御を実施する場合について述べる。さらに、以下の説明において、前述した前提条件1〜3が成立しているものと仮定する。このとき、一般的に周囲温度が増加すると、ファイバ長は伸びるので、周囲環境温度40℃時は、環境温度10℃時に対してファイバ長が2.1cm伸張していることになる。
【0034】
温度検出器41は、この高周波発振器の周囲の環境温度を検出し、この検出した環境温度を表わす温度情報信号を制御信号出力部71へ出力する。次に、制御信号出力部71は、温度検出器41からの温度情報信号を受信すると、この温度情報信号が示す環境温度に応じて、光ファイバを切り替えるための切り替え制御信号を分岐器72へ出力する。この場合、制御信号出力部71は検出した環境温度に対する閾値を設け、例えば前述した条件の下では、温度検出器41で検出した環境温度が40℃の直前になった場合、切り替え制御信号を出力する。分岐器72では、切り替え制御信号を2つに分岐して光路切り替え器73,74へそれぞれ出力する。光路切り替え器73,74では、切り替え制御信号を受信すると、光ファイバ75,76のうちから所望の光路長の光ファイバに切り替えて光変調器12と光電変換器14の間に接続する。例えば前述した条件のもとでは、両光路切り替え器73,74は、切り替え制御信号を受信する前には長い方の光路の光ファイバ75を接続しているが、切り替え制御信号を受信した後は、短い方の光路の光ファイバ76の接続に切り替える。
【0035】
次に、図13の高周波発振器の効果について説明する。
この高周波発振器の周波数制御を説明するためのスペクトルを図14に示すが、周囲環境温度が10℃〜40℃の間にあるときは、PLL制御による周波数引き込みが可能だが、40℃以上の場合には引き込みは不可能である。このとき、前述した条件のもとでは、ファイバ長は環境温度10℃時に対して2.1cm以上伸張していることになる。そこで、図14のように、周囲環境温度が40℃になる直前に、ファイバ長が2.1cm短い方の光路へ切り替えることで、発振モードは再び発振周波数設定値と一致し、引き続きPLL制御が実施可能となる。したがって、図13のような構成とすることで、従来に対し、周波数制御可能な温度範囲を増加させることができるという効果が得られる。
【0036】
なお、前述した条件のもとで、図14のようにファイバ長が2.1cm短い光路へ切り替える場合、切り替える瞬間に実際のファイバ長がまだ2.1cm短縮していないときには、切り替え後のファイバ長が初期時に対し増加してしまい、PLL制御ができなくなる可能性がある。そこで、このような場合、実際のファイバ長の差を2.1cmよりも若干短めに設定しておけば、PLL制御ができなくなる可能性は低くなる。このように、ファイバ長を設定する場合、切り替え後も常にPLL制御ができるようにしておくことが好ましい。
【0037】
また、図15に示すように、図13の場合よりも光ファイバ77を1本追加して、光路を増やす構成としてもよい。このことで、さらに上記温度範囲を増加させることができる。この場合、光ファイバ77の長さをLmin −4.2cm、またはLmin +2.1cm程度に設定すれば、前述した条件のもとでは、周波数制御可能な温度範囲が約30℃増加することになる。同様にして、さらに光路を増やせば、周波数制御可能な温度範囲をより増加させることができる。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0038】
なお、前述の説明では、分かりやすくするため、高周波発振信号の周波数を10GHzとし、移相器16で調整可能な位相シフト量を360度としたが、これらの仮定は、成立していなくても前述した内容と同様の効果を得ることはできるため、必ずしも成立している必要はない。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
また、光ファイバ75,76,77の長さについては、前述した長さに設定しなくても、光路切り替え器73,74により光路を切り替えることで、周波数制御可能な温度範囲を増加させることができ、かつ前述したように切り替え後も常にPLL制御が可能であれば、どのような長さでも構わない。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0039】
また、環境温度と発振モードとの対応があらかじめ既知である場合には、図16に示すように、制御信号出力部71が、出力端側に設けたカプラ51により分岐した高周波発振信号の周波数に基づいて切り替え制御信号が発生するように構成して、その切り替え制御信号を光路切り替え器73,74に与えることによって光路切り替えを行うようにしてもよい。これは、図16の構成でPLL制御を行わないときの発振信号周波数(発振モードに相当する)を検出することで、発振モードと環境温度との対応から、検出したときの環境温度が分かることによるものである。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0040】
また、環境温度と発振モードとの対応があらかじめ既知であることに加えて、移相器16における印加電圧値とそのときの位相シフト量が既知である場合、この位相シフト量とPLL制御実施時の周波数から、PLL制御を行わないときの発振信号の周波数が分かるため、上記電圧値の制御信号が移相器16に印加されているときの環境温度が分かる。したがって、図17に示すように、カプラ62を用いてPLL回路23からの電圧値の制御信号を分岐し、分岐した一方の制御信号を電圧値検出器61に与え、電圧値検出器61により移相器16に印加されている電圧値を検出する。そして、制御信号出力部71により、この検出電圧値に基づいて切り替え制御信号を発生するようにし、光路切り替えを行うようにしてもよい。このことは、以降の他の実施の形態においても当てはまることである。
【0041】
以上のように、この実施の形態3によれば、位相調整手段は、それぞれ光路長が異なる複数の光ファイバと、これら複数の光ファイバを選択的に切り替える光路切り替え器73,74を設け、周囲の環境温度、あるいは当該環境温度に対応する変化を表わす出力発振信号の周波数もしくはPLL制御系3における制御信号の電圧値に基づいて切り替え制御信号を発生させ、光路切り替え器73,74がこの切り替え制御信号に応じて複数の光ファイバのうちから所望の光路長の光ファイバを選択して光変調器12と光電変換器14の間の光伝送路の一部として接続することにより、高周波信号の位相を調整するようにしている。したがって、上記各実施の形態と同様、高周波発振器は、周囲の環境温度の変動により光ファイバの熱伸縮が顕著となった場合、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等が発生した場合でもPLL制御可能な周波数範囲内で発振でき、PLL制御による支障のない信号周波数の安定化を実現できる。また、初期設定時の温度状態において、発振信号の周波数がPLL制御可能な周波数範囲の境目付近に存在していた場合にも、温度変動によって信号周波数がPLL制御可能範囲外に変動することはなくなる。
【0042】
実施の形態4.
図18は、この発明の実施の形態4による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。図において、図15に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略するものとする。図18は、図15の構成の光ファイバ75〜77の代わりに、光ファイバ82,83,84を設けると共に光変調器12と光路切り替え器73の間の光路として光ファイバ81を設けた構成としている。ここでは、光ファイバ82,83,84は長さが異なる光ファイバとする。また、高周波発振器において使用する光ファイバの長さの大部分を光ファイバ81に割当て、これに対して光ファイバ82,83,84には光ファイバ81に対して十分短い長さのファイバを割当てるように構成する。
この図18の高周波発振器の動作においては、光変調器12における変調後のレーザ光は光ファイバ81を通して光路切り替え器73に伝送される。また、光路切り替え器73,74は、分岐器72から切り替え制御信号を受信した場合に、切り替え制御信号に応じて光ファイバ82,83,84のうちから所望の光路の光ファイバを選択して光ファイバ81と光電変換器14の間に接続する。その他の動作については、前述の実施の形態3と同様である。
【0043】
次に、この図18の高周波発振器の効果について説明する。
この高周波発振器において長い光ファイバを使用する場合、その長さの大部分を光ファイバ81に割当て、残りの短い部分を光路切り替え器73,74により切り替えられる光ファイバ82,83,84に割当てる。光ファイバ82,83,84は、具体的には移相器16の位相シフト量に対応した長さ程度(前述した条件のもとでは2.1cm程度)に設定する。このことにより、図15(図16、図17も同様)の場合と同じファイバ長を使用した場合に対し、光路切り替え器73,74で切り替えるファイバ長を短尺化できるため、例えば小型化やコスト低減等のメリットが得られる。
なお、図18の例では、光ファイバの大部分の長さを、光変調器12と光路切り替え器73の間に割り当てたが、代わりに光路切り替え器74と光電変換器14の間の光ファイバに割当てても同様ある。
以上のように、この実施の形態4によれば、上記実施の形態3の構成に加え、光変調器12と光電変換器14の間で使用する光ファイバの長さの大部分を複数光路切り替え器間以外の光路に割当て、複数の光路切り替え器間の複数の光ファイバには十分短い光ファイバを割当てるようにしたので、実施の形態3の効果に加え、小型化やコスト低減等の効果が得られる。
【0044】
実施の形態5.
図19は、この発明の実施の形態5による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。図において、図1に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略するものとする。図19は、図1の構成の位相器18に代えて、温度検出器41、制御信号出力部71、分岐器72、伝送路切り替え器91,92、RF信号伝送路93,94,95を設けた構成としている。なお、RF信号伝送路93,94,95はそれぞれ長さの異なる伝送路とする。また、制御信号出力部71からの切り替え制御信号が、分岐器72により2つに分岐されて伝送路切り替え器91,92に与えられるように前述の実施の形態3の図15と類似する構成をしている。
図19の高周波発振器の動作において、光変調器12からの変調後のレーザ光は、上記実施の形態1の図1の場合と同様、光ファイバ13を通して光電変換器14に伝送される。また、温度検出器41、制御信号出力部71および分岐器72の動作は、図15の場合と同様である。伝送路切り替え器91,92は、分岐器72から制御信号出力部71が出力した切り替え制御信号を受信した場合、この制御信号に応じてRF信号伝送路93,94,95のうちから所望の長さの伝送路を選択してカプラ17とアンプ間に接続する。
【0045】
次に、図19の高周波発振器の効果について説明する。
一般的に光路切り替え器として用いられる光スイッチは、市販品でミリ秒オーダー程度の切り替え時間が生じるが、一方、例えばRF信号の伝送路切り替え器として用いることのできる半導体スイッチは、市販品でナノ秒オーダー程度の切り替え時間のものが入手可能である。したがって、経路の切り替えにRF信号用の伝送路切り替え器を用いることで、切り替え時間の短縮化が可能になるという効果が得られる。
【0046】
なお、図19の高周波発振器では、温度検出器41で検出した周囲の環境温度に基づいて制御信号出力部71で発生する切り替え制御信号を用いて伝送路切り替え器91,92を切り替えているが、前述の実施の形態3の図16または図17と同様に、周囲の環境温度、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等に対応する変化を表わす出力発振信号の周波数またはPLL制御系3における制御信号の電圧値に基づいて発生する切り替え制御信号を用いるように構成してもよい。
【0047】
以上のように、この実施の形態5によれば、位相調整手段は、それぞれ長さが異なる複数の電気信号伝送路93,94,95と、これら複数の電気信号伝送路を選択的に切り替える伝送路切り替え器91,92を設け、周囲の環境温度、あるいは当該環境温度、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等に対応する変化を表わす出力発振信号の周波数もしくはPLL制御系3における制御信号の電圧値に基づいて切り替え制御信号を発生させ、伝送路切り替え器91,92がこの切り替え制御信号に応じて複数の電気信号伝送路のうちから所望の長さ電気信号伝送路を選択して光電変換器14と光変調器12の間のRF伝送路の一部として接続することにより、高周波信号の位相を調整するようにしている。したがって、上記各実施の形態と同様、高周波発振器は、周囲の環境温度の変動により光ファイバの熱伸縮が顕著となった場合、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等が発生してもPLL制御可能な周波数範囲内で発振でき、PLL制御による支障のない信号周波数の安定化を実現できる。また、初期設定時の温度状態において、発振信号の周波数がPLL制御可能な周波数範囲の境目付近に存在していた場合にも、温度変動によって信号周波数がPLL制御可能範囲外に変動することはなくなる。
【0048】
実施の形態6.
図20は、この発明の実施の形態6による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。図において、図1に相当する部分には同一符号を付し、その説明は原則として省略するものとする。図20では、図1の構成にある移相器18を設けず、またレーザ光源10の代わりに波長可変レーザ光源101を設け、さらに、温度検出器41と出力波長判別手段111を設けた構成としている。したがって、図20の場合の光伝送系1は、波長可変レーザ光源101、光変調器12、光ファイバ11,13等、光電変換器14により構成されることになる。
【0049】
この図20の高周波発振器の動作について説明する。
波長可変レーザ光源101で発生したレーザ光が光変調器12に出力される。温度検出器41は、この高周波発振器の周囲の環境温度を検出し、この検出温度を表わす温度情報信号を出力波長判別手段111へ出力する。出力波長判別手段111は、温度検出器41からの温度情報信号を受信すると、この温度情報信号が示す温度検出器41による検出温度に応じて波長可変レーザ光源101から発生させるべきレーザ光の所望の出力波長を判別し、この判別した波長を表す波長情報信号を波長可変レーザ光源101へ出力する。ここで判別されるレーザ光の所望の出力波長とは、当該高周波発振器の発振周波数の変動をPLL制御の予め設定した周波数引き込み範囲内に納めるために必要な波長である。波長可変レーザ光源101は、出力波長判別手段111からの波長情報信号を受けると、波長情報信号で指示している所望の出力波長のレーザ光を発生する。なお、その他の動作については、前述の実施の形態1と同様である。
【0050】
次に、この図20における高周波発振器の効果について説明する。
ここで、この高周波発振器の効果を分かりやすく説明するため、周囲の環境温度10℃〜40℃の間でPLL制御を実施する場合について、以下で述べる。なお、以下の説明において、前述した前提条件1および前提条件3が成立しているものと仮定する。
一般的に、前述した環境温度程度の変動が生じた場合、この高周波発振器において、周波数変動が生じるための最も大きな要因は、光ファイバの熱伸縮による長さの変動である。また、光ファイバ自身の主な材料である石英ガラスの線膨張率が1ppm/℃以下であるのに対し、光ファイバの保護被覆として多く用いられるUV樹脂やナイロン等の素材は、線膨張率が10ppm/℃以上であるものが多いため、この光ファイバの熱伸縮による長さ変動は、一般的には保護被覆の伸縮による変動が支配的となる場合が多い。ここで、高周波発振器の効果を分かりやすく説明するため、この高周波発振器内で用いるファイバ長を1000mとし、光ファイバの熱伸縮による長さ変動を10ppm/℃と仮定する。
【0051】
また、光ファイバ等の物質中を光が伝播する場合、光の速さが光の波長(周波数)により異なる現象が生じ、これを分散と呼んでいる。一般的なシングルモードファイバ(以下、SMFと称する)の分散値は、波長1.3μm付近でほぼ0であり、波長1.55μm付近で約17ps/km/nmである。この「ps/km/nm」という単位は、波長が1nm離れた2つの光がファイバ長1kmを伝播したときに生じる伝播時間の差を表している。以下の説明では、波長可変レーザ光源101で用いるレーザ波長帯を1.55μm付近とし、用いる光ファイバを一般的なSMFとして、この分散値を17ps/km/nmとする。
【0052】
このとき、1000mの光ファイバが、環境温度10℃から40℃まで変動する場合に生じるファイバ長変動量をΔL(10℃−40℃)とすると、ΔL(10℃〜40℃)は、ファイバの熱伸縮による長さ変動を10ppm/℃として(2)式のように計算できる。
ΔL(10℃−40℃)=1000×10・10(-6) ・(40−10)=0.3[m]
(2)
次に、このΔL(10℃−40℃)のファイバ長変動量分の伝播時間差を生じさせるために必要な光の波長差をΔλとすると、Δλは、ΔL(10℃−40℃)を用いて(3)式のように表すことができる。
【数2】
ここで、cは光速、nはファイバの屈折率、dSMFは用いたSMFの分散値である。
(3)式に、c=3.0×108m/s、n=1.45、dSMF=17ps/km/nmおよびΔL(10℃−40℃)=0.3mを代入すると、Δλ=85nmが得られる。
【0053】
したがって、周囲の環境温度10℃から40℃まで変動した場合でも、波長可変レーザ光源101から出力されるレーザ光の波長を85nm変化させることで、環境温度変動で生じるファイバ長変動量を、光の波長を考慮した光路長という観点で補正することが可能となる。なお、光ファイバにおいては、光の波長が小さいほど屈折率が大きくなり、光路長は長くなるため、上記の例では、環境温度10℃時は、40℃時に対してレーザ光の波長を85nm小さくすることで、前述の補正が可能となる。
【0054】
また、前述した前提条件1および前提条件3に加えて、以下の前提条件4が成立しているものと仮定する。
前提条件4: 分散による2つの波長の光の伝播時間差、つまりこの差から得られるファイバ長変動への換算量と、周囲の環境温度の変動で生じるファイバ長変動量とが1対1の対応関係であり、周囲の環境温度が変動した場合、その変動で生じるファイバ長変動量を補正するために必要なレーザ光の波長変化量を出力波長判別手段111で判別できるとする。
このとき、(2)式および(3)式と前提条件4から、周囲の環境温度が10℃〜40℃だけではなく、任意の範囲で変動した場合でも、その変動で生じるファイバ長変動量を補正するために必要なレーザ光の波長変化量を出力波長判別手段111で判別できる。したがって、この図20における高周波発振器により、周囲の環境温度が変動した場合でも、周波数を安定化させることができるという効果が得られる。
【0055】
また、例えば実施の形態3、4および5における高周波発振器では、光路切り替え器または伝送路切り替え器や、複数の光ファイバまたはRF信号伝送路が必要となるが、この図20における高周波発振器の場合は、一つの光ファイバで実施でき、ファイバ長を短尺化できるという効果が得られる。したがって、前述した実施の形態3、4および5における高周波発振器と比べて、小型化やコスト低減等のメリットがある。
【0056】
なお、前述したファイバ長や、光ファイバの熱伸縮による長さ変動については、前述した効果が得られるのであれば、別に仮定した値でなくても構わない。
また、使用する光ファイバはSMFと仮定したが、別にSMFでなくても構わない。
また、光ファイバの分散値は17ps/nm/kmで一定値と仮定したが、光ファイバによっては波長により分散値が異なる場合がある。ただし、各波長における分散値が既知であれば、(2)式および(3)式を用いることで、波長可変レーザ光源101における所望のレーザ光の波長変化量を導出することができるため、前述したように一定値でなくても構わない。
【0057】
また、前述した前提条件4では、分散による2つの波長の光の伝播時間差、つまりこの差から得られるファイバ長変動への換算量と、周囲の環境温度の変動で生じるファイバ長変動量とが1対1の対応関係であると仮定したが、周囲の環境温度が変動した場合に、その変動で生じるファイバ長変動量を補正するために必要なレーザ光の波長変化量を出力波長判別手段111で判別できるのであれば、別に前述の1対1の対応関係でなくても構わない。
また、出力波長判別手段111は、温度検出器41で検出した環境温度からレーザ光の所望の出力波長を判別しているが、これに限らず、高周波発振器の出力端側で分岐した発振信号の周波数またはPLL制御手段で位相シフトに用いる制御信号の電圧値に基づいて所望の出力波長を判別するようにしてもよい。
【0058】
以上のように、この実施の形態6によれば、レーザ光源として波長可変レーザ光源101を使用し、周囲の環境温度、あるいは当該環境温度、振動等による光ファイバへの応力付与やRF伝送路の伸縮等に対応する変化を表わす出力発振信号の周波数もしくはPLL制御系3における制御信号の電圧値に基づいて当該高周波発振器の発振周波数の変動をPLL制御の予め設定した周波数引き込み範囲内に納めるために必要なレーザ光の所望の出力波長を判別し、波長可変レーザ光源101からこの判別した所望の出力波長のレーザ光を発生するようにしたので、上記各実施の形態と同様な効果を奏する。また、上記実施の形態3、4および5における高周波発振器と比べて、小型化やコスト低減化を図ることができる。
【0059】
なお、上記図20における高周波発振器と同様に、波長可変レーザ光源101から出力されるレーザ光の波長を変化させることで、周囲の環境温度の変動で生じるファイバ長変動量を十分補正でき、この補正によりPLL制御を行わなくても発振信号の周波数を安定化させることができる場合には、図21に示すように、図20の構成からPLL制御系を除いた構成の高周波発振器としてもよい。このことにより、高周波発振器をより簡素化することが可能になる
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の実施の形態1による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る高周波発振器の発振モードと内部のバンドパスフィルタの透過スペクトルを表す模式図である。
【図3】PLL制御の周波数引き込み範囲を表す模式図である。
【図4】周囲環境温度の発振モードと発振周波数設定値の関係が周波数引き込み範囲外となる例を示す模式図である。
【図5】周囲環境温度の発振モードと発振周波数設定値の関係が周波数引き込み範囲外となる他の例を示す模式図である。
【図6】この発明の実施の形態1により周囲環境温度の発振モードと発振周波数設定値の関係と周波数引き込み範囲が一致した状態を示す模式図である。
【図7】この発明の実施の形態1による高周波発振器の他の構成例を示すブロック回路図である。
【図8】この発明の実施の形態1による高周波発振器のさらに他の構成例を示すブロック回路図である。
【図9】この発明の実施の形態1による高周波発振器のさらに他の構成例を示すブロック回路図である。
【図10】この発明の実施の形態2による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。
【図11】この発明の実施の形態2による高周波発振器の他の構成例を示すブロック回路図である。
【図12】この発明の実施の形態2による高周波発振器のさらに他の構成例を示すブロック回路図である。
【図13】この発明の実施の形態3による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。
【図14】この発明の実施の形態3に係る周波数制御を説明するためのスペクトルを示す模式図である。
【図15】この発明の実施の形態3による高周波発振器の他の構成例を示すブロック回路図である。
【図16】この発明の実施の形態3による高周波発振器のさらに他の構成例を示すブロック回路図である。
【図17】この発明の実施の形態3による高周波発振器のさらに他の構成例を示すブロック回路図である。
【図18】この発明の実施の形態4による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。
【図19】この発明の実施の形態5による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。
【図20】この発明の実施の形態6による高周波発振器の機能構成を示すブロック回路図である。
【図21】この発明の実施の形態6による高周波発振器の他の構成例を示すブロック回路図である。
【符号の説明】
【0061】
1 光伝送系、2 RF信号伝送系、3 PLL制御系、10 レーザ光源、11 光学路(光ファイバ)、12 光変調器、13,75〜77,81〜84 光ファイバ、14 光電変換器、15 バンドパスフィルタ、16,18 移相器、17,20,51,62 カプラ、19 アンプ、22 分周器、23 PLL回路、31,32 光遅延器、41 温度検出器、42 位相シフト量判別手段、43 電圧発生手段、61 電圧値検出器、71 制御信号出力部、72 分岐器、73,74 光路切り替え器、91,92 伝送路切り替え器、93〜95 RF信号伝送路、101 波長可変レーザ光源、111 出力波長判別手段。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源から発生されたレーザ光を光変調器により変調し、光ファイバを介して伝送した変調後のレーザ光を光電変換器により高周波信号に変換し、変換後の高周波信号からバンドパスフィルタにより所定の通過帯域成分を取り出し、当該所定の通過帯域成分の高周波信号を変調信号として前記光変調器に帰還すると共に発振信号として出力する高周波発振器において、
前記高周波信号の周波数が一定になるように制御するPLL制御手段と、
当該高周波発振器の発振周波数の変動を前記PLL制御手段の予め設定した周波数引き込み範囲内に納めるように前記高周波信号の位相を調整する位相調整手段を備えたことを特徴とする高周波発振器。
【請求項2】
位相調整手段は、光電変換器と光変調器の間に設けられ、高周波信号の位相を直接変化させる移相器を有したことを特徴とする請求項1記載の高周波発振器。
【請求項3】
位相調整手段は、光変調器と光電変換器の間に設けられ、高周波信号の位相を調整する光路の長さを設定する光遅延器を有したことを特徴とする請求項1記載の高周波発振器。
【請求項4】
位相調整手段は、
当該高周波発振器の周囲の環境温度を検出する温度検出器と、
前記検出された環境温度に基づいて当該位相調整手段で調整する所望の位相シフト量を判別する位相シフト量判別手段と、
前記判別された所望の位相シフト量に応じた制御電圧値を生成する電圧発生手段を有し、
前記生成された制御電圧値に応じて高周波信号の位相を調整することを特徴とする請求項2記載の高周波発振器。
【請求項5】
位相調整手段は、
当該高周波発振器の発振信号の周波数に基づいて当該位相調整手段で調整する所望の位相シフト量を判別する位相シフト量判別手段と、
前記判別された所望の位相シフト量に応じた制御電圧値を生成する電圧発生手段を有し、
前記生成された制御電圧値に応じて高周波信号の位相を調整することを特徴とする請求項2記載の高周波発振器。
【請求項6】
位相調整手段は、
PLL制御手段で位相シフトに用いる制御信号の電圧値を検出する電圧検出器と、
前記検出された制御信号の電圧値に基づいて当該位相調整手段で調整する所望の位相シフト量を判別する位相シフト量判別手段と、
前記判別された所望の位相シフト量に応じた制御電圧値を生成する電圧発生手段を有し、
前記生成された制御電圧値に応じて高周波信号の位相を調整することを特徴とする請求項2記載の高周波発振器。
【請求項7】
位相調整手段は、
当該高周波発振器の周囲の環境温度を検出する温度検出器と、
前記検出された環境温度に基づいて切り替え制御信号を出力する制御信号出力部と、
それぞれ光路長が異なる複数の光ファイバと、
前記切り替え制御信号に応じて前記複数の光ファイバのうちから所望の光路長の光ファイバを選択して光変調器と光電変換器の間の光伝送路の一部として接続する光路切り替え器を有したことを特徴とする請求項1記載の高周波発振器。
【請求項8】
位相調整手段は、
当該高周波発振器の発振信号の周波数に基づいて切り替え制御信号を出力する制御信号出力部と、
それぞれ光路長が互いに異なる複数の光ファイバと、
前記切り替え制御信号に応じて前記複数の光ファイバのうちから所望の光路長の光ファイバ選択して光変調器と光電変換器の間の光伝送路の一部として接続する光路切り替え器を有したことを特徴とする請求項1記載の高周波発振器。
【請求項9】
位相調整手段は、
PLL制御手段で位相シフトに用いる制御信号の電圧値を検出する電圧検出器と、
前記電圧検出器で検出された電圧値に基づいて切り替え制御信号を出力する制御信号出力部と、
それぞれ光路長が異なる複数の光ファイバと、
前記切り替え制御信号に応じて前記複数の光ファイバのうちから所望の光路長の光ファイバを選択して光変調器と光電変換器の間の光伝送路の一部として接続する光路切り替え器を有したことを特徴とする請求項1記載の高周波発振器。
【請求項10】
光変調器と光電変換器の間で使用する光ファイバの長さの大部分を複数光路切り替え器間以外の光路に割当て、残りの短い部分を前記複数光路切り替え器で切り替える複数の光ファイバに割当てたことを特徴とする請求項7から請求項9のうちのいずれか1項記載の高周波発振器。
【請求項11】
位相調整手段は、
当該高周波発振器の周囲の環境温度を検出する温度検出器と、
前記検出された環境温度に基づいて切り替え制御信号を出力する制御信号出力部と、
それぞれ長さが異なる複数の電気信号伝送路と、
前記切り替え制御信号に応じて前記複数の電気信号伝送路のうちから所望の長さの電気信号伝送路を選択して光電変換器と光変調器の間のRF伝送路の一部として接続する伝送路切り替え器を有したことを特徴とする請求項1記載の高周波発振器。
【請求項12】
位相調整手段は、
当該高周波発振器の発振信号の周波数に基づいて切り替え制御信号を出力する制御信号出力部と、
それぞれ長さが異なる複数の電気信号伝送路と、
前記切り替え制御信号に応じて前記複数の電気信号伝送路のうちから所望の長さの電気信号伝送路を選択して光電変換器と光変調器の間のRF伝送路の一部として接続する伝送路切り替え器を有したことを特徴とする請求項1記載の高周波発振器。
【請求項13】
位相調整手段は、
PLL制御手段で位相シフトに用いる制御信号の電圧値を検出する電圧検出器と、
前記電圧検出器で検出された電圧値に基づいて切り替え制御信号を出力する制御信号出力部と、
それぞれ長さが異なる複数の電気信号伝送路と、
前記切り替え制御信号に応じて前記複数の電気信号伝送路のうちから所望の長さの電気信号伝送路を選択して光電変換器と記光変調器の間のRF伝送路に接続する伝送路切り替え器を有したことを特徴とする請求項1記載の高周波発振器。
【請求項14】
レーザ光源から発生されたレーザ光を光変調器により変調し、光ファイバを介して伝送した変調後のレーザ光を光電変換器により高周波信号に変換し、変換後の高周波信号からバンドパスフィルタにより所定の通過帯域成分を取り出し、当該所定の通過帯域成分の高周波信号の周波数を変調信号として前記光変調器に帰還すると共に発振信号として出力する高周波発振器において、
前記所定の通過帯域成分の高周波信号の周波数が一定になるように制御するPLL制御手段と、
当該高周波発振器の周囲の環境温度を検出する温度検出器と、
前記検出された環境温度に基づいて、当該高周波発振器の発振周波数の変動を前記PLL制御手段の予め設定した周波数引き込み範囲内に納めるために必要なレーザ光の所望の出力波長を判別する出力波長判別手段を備え、
前記レーザ光源として、前記判別された所望の出力波長のレーザ光を発生する波長可変レーザ光源を使用したことを特徴とする高周波発振器。
【請求項15】
出力波長判別手段は、温度検出器で検出された環境温度の代わりに、当該高周波発振器の発振信号の周波数に基づいてレーザ光の所望の出力波長を判別するようにしたことを特徴とする請求項14記載の高周波発振器。
【請求項16】
出力波長判別手段は、温度検出器で検出された環境温度の代りに、PLL制御手段で位相シフトに用いる制御信号の電圧値に基づいてレーザの所望の出力波長を判別するようにしたことを特徴とする請求項14記載の高周波発振器。
【請求項17】
レーザ光源から発生されたレーザ光を光変調器で変調し、光ファイバを介して伝送した変調後のレーザ光を光電変換器により高周波信号に変換し、変換後の高周波信号からバンドパスフィルタにより所定の通過帯域成分を取り出し、当該所定の通過帯域成分の高周波信号を変調信号として前記光変調器に帰還すると共に発振信号として出力する高周波発振器において、
当該高周波発振器の周囲の環境温度を検出する温度検出器と、
前記検出された環境温度に基づいて、当該高周波発振器の発振周波数の変動を抑えるために必要なレーザ光の所望の出力波長を判別し、判別した所望の出力波長を表す波長情報信号を出力する出力波長判別手段を備え、
前記レーザ光源として、入力される前記波長情報信号が指示する所望の出力波長のレーザ光を発生する波長可変レーザ光源を使用したことを特徴とする高周波発振器。
【請求項18】
出力波長判別手段は、温度検出器で検出された検出温度の代わりに、当該高周波発振器の発振信号の周波数に基づいてレーザ光の所望の出力波長を判別するようにしたことを特徴とする請求項17記載の高周波発振器。
【請求項1】
レーザ光源から発生されたレーザ光を光変調器により変調し、光ファイバを介して伝送した変調後のレーザ光を光電変換器により高周波信号に変換し、変換後の高周波信号からバンドパスフィルタにより所定の通過帯域成分を取り出し、当該所定の通過帯域成分の高周波信号を変調信号として前記光変調器に帰還すると共に発振信号として出力する高周波発振器において、
前記高周波信号の周波数が一定になるように制御するPLL制御手段と、
当該高周波発振器の発振周波数の変動を前記PLL制御手段の予め設定した周波数引き込み範囲内に納めるように前記高周波信号の位相を調整する位相調整手段を備えたことを特徴とする高周波発振器。
【請求項2】
位相調整手段は、光電変換器と光変調器の間に設けられ、高周波信号の位相を直接変化させる移相器を有したことを特徴とする請求項1記載の高周波発振器。
【請求項3】
位相調整手段は、光変調器と光電変換器の間に設けられ、高周波信号の位相を調整する光路の長さを設定する光遅延器を有したことを特徴とする請求項1記載の高周波発振器。
【請求項4】
位相調整手段は、
当該高周波発振器の周囲の環境温度を検出する温度検出器と、
前記検出された環境温度に基づいて当該位相調整手段で調整する所望の位相シフト量を判別する位相シフト量判別手段と、
前記判別された所望の位相シフト量に応じた制御電圧値を生成する電圧発生手段を有し、
前記生成された制御電圧値に応じて高周波信号の位相を調整することを特徴とする請求項2記載の高周波発振器。
【請求項5】
位相調整手段は、
当該高周波発振器の発振信号の周波数に基づいて当該位相調整手段で調整する所望の位相シフト量を判別する位相シフト量判別手段と、
前記判別された所望の位相シフト量に応じた制御電圧値を生成する電圧発生手段を有し、
前記生成された制御電圧値に応じて高周波信号の位相を調整することを特徴とする請求項2記載の高周波発振器。
【請求項6】
位相調整手段は、
PLL制御手段で位相シフトに用いる制御信号の電圧値を検出する電圧検出器と、
前記検出された制御信号の電圧値に基づいて当該位相調整手段で調整する所望の位相シフト量を判別する位相シフト量判別手段と、
前記判別された所望の位相シフト量に応じた制御電圧値を生成する電圧発生手段を有し、
前記生成された制御電圧値に応じて高周波信号の位相を調整することを特徴とする請求項2記載の高周波発振器。
【請求項7】
位相調整手段は、
当該高周波発振器の周囲の環境温度を検出する温度検出器と、
前記検出された環境温度に基づいて切り替え制御信号を出力する制御信号出力部と、
それぞれ光路長が異なる複数の光ファイバと、
前記切り替え制御信号に応じて前記複数の光ファイバのうちから所望の光路長の光ファイバを選択して光変調器と光電変換器の間の光伝送路の一部として接続する光路切り替え器を有したことを特徴とする請求項1記載の高周波発振器。
【請求項8】
位相調整手段は、
当該高周波発振器の発振信号の周波数に基づいて切り替え制御信号を出力する制御信号出力部と、
それぞれ光路長が互いに異なる複数の光ファイバと、
前記切り替え制御信号に応じて前記複数の光ファイバのうちから所望の光路長の光ファイバ選択して光変調器と光電変換器の間の光伝送路の一部として接続する光路切り替え器を有したことを特徴とする請求項1記載の高周波発振器。
【請求項9】
位相調整手段は、
PLL制御手段で位相シフトに用いる制御信号の電圧値を検出する電圧検出器と、
前記電圧検出器で検出された電圧値に基づいて切り替え制御信号を出力する制御信号出力部と、
それぞれ光路長が異なる複数の光ファイバと、
前記切り替え制御信号に応じて前記複数の光ファイバのうちから所望の光路長の光ファイバを選択して光変調器と光電変換器の間の光伝送路の一部として接続する光路切り替え器を有したことを特徴とする請求項1記載の高周波発振器。
【請求項10】
光変調器と光電変換器の間で使用する光ファイバの長さの大部分を複数光路切り替え器間以外の光路に割当て、残りの短い部分を前記複数光路切り替え器で切り替える複数の光ファイバに割当てたことを特徴とする請求項7から請求項9のうちのいずれか1項記載の高周波発振器。
【請求項11】
位相調整手段は、
当該高周波発振器の周囲の環境温度を検出する温度検出器と、
前記検出された環境温度に基づいて切り替え制御信号を出力する制御信号出力部と、
それぞれ長さが異なる複数の電気信号伝送路と、
前記切り替え制御信号に応じて前記複数の電気信号伝送路のうちから所望の長さの電気信号伝送路を選択して光電変換器と光変調器の間のRF伝送路の一部として接続する伝送路切り替え器を有したことを特徴とする請求項1記載の高周波発振器。
【請求項12】
位相調整手段は、
当該高周波発振器の発振信号の周波数に基づいて切り替え制御信号を出力する制御信号出力部と、
それぞれ長さが異なる複数の電気信号伝送路と、
前記切り替え制御信号に応じて前記複数の電気信号伝送路のうちから所望の長さの電気信号伝送路を選択して光電変換器と光変調器の間のRF伝送路の一部として接続する伝送路切り替え器を有したことを特徴とする請求項1記載の高周波発振器。
【請求項13】
位相調整手段は、
PLL制御手段で位相シフトに用いる制御信号の電圧値を検出する電圧検出器と、
前記電圧検出器で検出された電圧値に基づいて切り替え制御信号を出力する制御信号出力部と、
それぞれ長さが異なる複数の電気信号伝送路と、
前記切り替え制御信号に応じて前記複数の電気信号伝送路のうちから所望の長さの電気信号伝送路を選択して光電変換器と記光変調器の間のRF伝送路に接続する伝送路切り替え器を有したことを特徴とする請求項1記載の高周波発振器。
【請求項14】
レーザ光源から発生されたレーザ光を光変調器により変調し、光ファイバを介して伝送した変調後のレーザ光を光電変換器により高周波信号に変換し、変換後の高周波信号からバンドパスフィルタにより所定の通過帯域成分を取り出し、当該所定の通過帯域成分の高周波信号の周波数を変調信号として前記光変調器に帰還すると共に発振信号として出力する高周波発振器において、
前記所定の通過帯域成分の高周波信号の周波数が一定になるように制御するPLL制御手段と、
当該高周波発振器の周囲の環境温度を検出する温度検出器と、
前記検出された環境温度に基づいて、当該高周波発振器の発振周波数の変動を前記PLL制御手段の予め設定した周波数引き込み範囲内に納めるために必要なレーザ光の所望の出力波長を判別する出力波長判別手段を備え、
前記レーザ光源として、前記判別された所望の出力波長のレーザ光を発生する波長可変レーザ光源を使用したことを特徴とする高周波発振器。
【請求項15】
出力波長判別手段は、温度検出器で検出された環境温度の代わりに、当該高周波発振器の発振信号の周波数に基づいてレーザ光の所望の出力波長を判別するようにしたことを特徴とする請求項14記載の高周波発振器。
【請求項16】
出力波長判別手段は、温度検出器で検出された環境温度の代りに、PLL制御手段で位相シフトに用いる制御信号の電圧値に基づいてレーザの所望の出力波長を判別するようにしたことを特徴とする請求項14記載の高周波発振器。
【請求項17】
レーザ光源から発生されたレーザ光を光変調器で変調し、光ファイバを介して伝送した変調後のレーザ光を光電変換器により高周波信号に変換し、変換後の高周波信号からバンドパスフィルタにより所定の通過帯域成分を取り出し、当該所定の通過帯域成分の高周波信号を変調信号として前記光変調器に帰還すると共に発振信号として出力する高周波発振器において、
当該高周波発振器の周囲の環境温度を検出する温度検出器と、
前記検出された環境温度に基づいて、当該高周波発振器の発振周波数の変動を抑えるために必要なレーザ光の所望の出力波長を判別し、判別した所望の出力波長を表す波長情報信号を出力する出力波長判別手段を備え、
前記レーザ光源として、入力される前記波長情報信号が指示する所望の出力波長のレーザ光を発生する波長可変レーザ光源を使用したことを特徴とする高周波発振器。
【請求項18】
出力波長判別手段は、温度検出器で検出された検出温度の代わりに、当該高周波発振器の発振信号の周波数に基づいてレーザ光の所望の出力波長を判別するようにしたことを特徴とする請求項17記載の高周波発振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−91807(P2010−91807A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261835(P2008−261835)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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