高周波磁界発生素子、磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置
【課題】記録密度を向上できる高周波磁界発生素子、磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る高周波磁界発生素子は、第1固定層と、第1自由層と、第2自由層と、を備える。第1固定層は、磁化の方向が固定であって磁化の方向に第1方向と平行な成分が含まれる。第1自由層は、第1固定層と積層される。第1自由層は、磁化の方向が可変であって磁化の方向に第1方向と直交する成分が含まれる。第2自由層は、第1固定層と積層される。第2自由層は、磁化の方向が可変であって磁化の方向に第1方向と直交する成分が含まれる。第1固定層は、第1自由層と第2自由層との間に設けられる。第1自由層の磁化及び第2自由層の磁化は、第1自由層、第2自由層及び第1固定層に流れる電流により発振する。第1自由層の発振における磁化の回転方向は、第2自由層の発振における磁化の回転方向に対して逆である。
【解決手段】実施形態に係る高周波磁界発生素子は、第1固定層と、第1自由層と、第2自由層と、を備える。第1固定層は、磁化の方向が固定であって磁化の方向に第1方向と平行な成分が含まれる。第1自由層は、第1固定層と積層される。第1自由層は、磁化の方向が可変であって磁化の方向に第1方向と直交する成分が含まれる。第2自由層は、第1固定層と積層される。第2自由層は、磁化の方向が可変であって磁化の方向に第1方向と直交する成分が含まれる。第1固定層は、第1自由層と第2自由層との間に設けられる。第1自由層の磁化及び第2自由層の磁化は、第1自由層、第2自由層及び第1固定層に流れる電流により発振する。第1自由層の発振における磁化の回転方向は、第2自由層の発振における磁化の回転方向に対して逆である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高周波磁界発生素子、磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁化状態を利用して情報の記録再生を行う磁気記録技術は、大容量、高速及び安価といった特徴を有している。近年、さらなる記録密度の向上等の観点から、特定の周波数の高周波磁界に対する磁性体の応答である磁気共鳴を用いて磁化の操作及び検出を行い、記録密度を向上させる以下のような手法が提案されている。
【0003】
例えば、マイクロ波アシスト磁気記録方式は、磁気記録媒体の共鳴周波数付近の高周波磁界を媒体に印加し、同時に磁界を印加することにより、保磁力以下の磁界で磁化反転を行う技術である。
このような磁気記録においては、記録密度のさらなる向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−123669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、記録密度を向上できる高周波磁界発生素子、磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る高周波磁界発生素子は、第1固定層と、第1自由層と、第2自由層と、を備える。
第1固定層は、磁化の方向が固定であって前記磁化の方向に第1方向と平行な成分が含まれる。
第1自由層は、前記第1固定層と積層される。第1自由層は、磁化の方向が可変であって前記磁化の方向に前記第1方向と直交する成分が含まれる。
第2自由層は、前記第1固定層と積層される。第2自由層は、磁化の方向が可変であって前記磁化の方向に前記第1方向と直交する成分が含まれる。
前記第1固定層は、前記第1自由層と前記第2自由層との間に設けられる。
前記第1方向は、第1固定層、第1自由層及び第2自由層の積層の方向に対して平行である。
前記第1自由層の前記磁化及び前記第2自由層の前記磁化は、前記第1自由層、前記第2自由層及び前記第1固定層に流れる電流により発振する。
前記第1自由層の前記発振における前記磁化の回転方向は、前記第2自由層の前記発振における前記磁化の回転方向に対して逆である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(a)〜(b)は、第1の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
【図2】(a)〜(b)は、第2の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
【図3】(a)〜(b)は、第3の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
【図4】(a)〜(b)は、第4の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
【図5】(a)〜(b)は、第5の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
【図6】(a)〜(b)は、第6の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
【図7】(a)〜(d)は、高周波磁界を例示する模式的斜視図である。
【図8】磁界強度のシミュレーションモデルを例示する模式図である。
【図9】(a)〜(b)は、磁界強度の計算結果を例示する図である。
【図10】(a)〜(b)は、磁界強度の計算結果を例示する図である。
【図11】(a)〜(b)は、2つの自由層の同期方法を例示する模式図である。
【図12】第7の実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
【図13】第7の実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
【図14】第7の実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
【図15】第7の実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
【図16】第7の実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
【図17】第7の実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
【図18】第8の実施形態に係る磁気再生ヘッドを例示する模式図である。
【図19】第9の実施形態に係る磁気記録再生ヘッドの構成を例示する模式的斜視図である。
【図20】第10の実施形態に係る磁気記録装置の構成を例示する模式的斜視図である。
【図21】(a)〜(b)は、第10の実施形態に係る磁気記録装置の一部の構成を例示する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本実施形態に係る高周波磁界発生素子は、例えば、発生した磁界により情報の記録及び再生を行う磁気ヘッドに用いることができる。また、本実施形態に係る高周波磁界発生素子は、例えば、不揮発性メモリにも用いることができる。このように、本実施形態に係る高周波磁界発生素子は、高周波の磁界を発生する任意の用途に用いることができる。以下では、本実施形態に係る高周波磁界発生素子が、磁気ヘッドに用いられる場合について説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1(a)〜(b)は、第1の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
図1(a)には、第1の実施形態に係る高周波磁界発生素子STO1の層構造が表され、図1(b)には、高周波磁界発生素子STO1を用いた回路構成が表されている。
なお、以下の説明においては、高周波磁界発生素子STOを単に「STO」とする。
【0010】
図1(a)に表したように、STO1は、互いに積層された第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、を備える。
【0011】
第1固定層103aの磁化mg11の方向は固定である。磁化mg11の方向は、第1方向と平行な成分を含む。実施形態において、第1方向は+X方向(単に、「X方向」ともいう。)である。すなわち、第1方向は、第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、の積層方向に対して平行である。
なお、+X方向と反対の方向は−X方向である。X方向と直交する方向の一つはY方向である。X方向及びY方向に直交する方向はZ方向である。
第1固定層103aの磁化mg11は、例えば+X方向を向く。
【0012】
第1固定層103aには面直方向に容易軸を持つ、CoPt、FePtなどのPt系の磁性体、CoCr系の磁性体、TbFe、TbCoなどの希土類元素系の磁性体を用いることができる。
【0013】
第1自由層101aは、第1固定層103aとX方向と平行な方向に積層される。STO1では、第1自由層101aは、第1固定層103aと−X方向に積層される。
第1自由層101aの磁化mg21の方向は可変である。磁化mg21の方向は、X方向と直交する成分を含む。
【0014】
第1固定層103aと第1自由層101aとの間には第1中間層102aが設けられる。第1中間層102aはスピントルクの輸送が行える材料であればよい。一例としてCuなどの金属、MgOなどの絶縁体材料が挙げられる。
STO1において、第1固定層103a、第1自由層101a及び第1中間層102aは第1積層体SB1を構成する。
【0015】
第2自由層101bは、第1固定層103aとX方向と平行な方向に積層される。STO1では、第2自由層101bは、第1固定層103aと+X方向に積層される。
第2自由層101bの磁化mg22の方向は可変である。磁化mg22の方向は、X方向と直交する成分を含む。
【0016】
第1自由層101a及び第2自由層101bには発振時に高い磁界を発生する目的で、NiFe、CoFeといった飽和磁化の高い材料を用いることができる。さらに、異方性磁界の調整、飽和磁束密度の調整のため、Al、Si、Bなどの材料を混ぜる、また、複数の材料を積層してもよい。
【0017】
第1固定層103aと第2自由層101bとの間には第2中間層102bが設けられる。第2中間層102bの材料は第1中間層102aと同じでよい。STO1において、第1固定層103a、第2自由層101b及び第2中間層102bは第2積層体SB2を構成する。
【0018】
STO1において第1積層体SB1は、第1固定層103aを共通として、第2積層体SB2と並んで配置される。
【0019】
図1(b)に表したように、STO1の第1自由層101aには第1導電部104aが接続され、第2自由層101bには第2導電部104bが接続される。第1導電部104a及び第2導電部104bには、第1電流印加機構105aが接続される。
【0020】
第1電流印加機構105aから印加される電流iは、第1導電部104aから第1積層体SB1及び第2積層体SB2を+X方向に流れ、第2導電部104bから第1電流印加機構105aに戻る。この電流iによって第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化が発振する。
【0021】
すなわち、第1自由層101a及び第2自由層101bに電流iが流れると、スピントルクによって磁化mg21及びmg22の方向が回転する。
【0022】
STO1において、+X方向に電流iが流れると、第1自由層101aの発振における磁化mg21の回転方向RT1は、第2自由層101bの発振における磁化mg22の回転方向RT2に対して逆になる。
【0023】
また、STO1において、−X方向に電流iが流れると、回転方向RT1及び回転方向RT2は+X方向に電流iが流れた場合とは反対になる。この場合であっても、回転方向RT1は回転方向RT2に対して逆になる。
【0024】
すなわち、STO1では、いずれの方向に電流iが流れても、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0025】
なお、第1固定層103aの磁化mg11の方向は−X方向を向いていてもよい。磁化mg11の方向が−X方向を向いていても、いずれの電流iが流れても、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0026】
(第2の実施形態)
図2(a)〜(b)は、第2の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
図2(a)には、第2の実施形態に係るSTO2の層構造が表され、図2(b)には、STO2を用いた回路構成が表されている。
【0027】
図2(a)に表したように、STO2は、互いに積層された第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、第2固定層103bと、を備える。
第1固定層103a、第1自由層101a及び第2自由層101bは、STO1と同じである。第1中間層102a及び第2中間層102bもSTO1と同じである。
【0028】
第2固定層103bの磁化mg12の方向は固定である。磁化mg12の方向は、第1方向と平行な成分を含む。第1方向は、第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、第2固定層103bと、の積層方向(+X方向または−X方向)に対して平行である。
第2固定層103bの磁化mg12は、例えば−X方向を向く。
第2固定層103bと第1自由層101aとの間には第3中間層102cが設けられる。
【0029】
STO2において、第2固定層103b、第1自由層101a及び第3中間層102cは第1積層体SB1を構成する。STO2において、第1固定層103a、第2自由層101b及び第2中間層102bは第2積層体SB2を構成する。
STO2において第1積層体SB1は、第1中間層102aを介してX方向と平行な方向に第2積層体SB2と並んで配置される。
【0030】
図2(b)に表したように、STO2の第2固定層103bには第1導電部104aが接続され、第2自由層101bには第2導電部104bが接続される。第1導電部104a及び第2導電部104bには、第1電流印加機構105aが接続される。
【0031】
第1電流印加機構105aから印加される電流iは、第1導電部104aから第1積層体SB1及び第2積層体SB2を+X方向に流れ、第2導電部104bから第1電流印加機構105aに戻る。この電流iによって第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化が発振する。
【0032】
すなわち、STO2において、+X方向に電流iが流れると、第1自由層101aの発振における磁化mg21の回転方向RT1は、第2自由層101bの発振における磁化mg22の回転方向RT2に対して逆になる。
【0033】
また、STO2において、−X方向に電流iが流れると、回転方向RT1及び回転方向RT2は+X方向に電流iが流れた場合とはそれぞれ反対になる。
STO2では、いずれの方向に電流iが流れても、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0034】
なお、第1固定層103aの磁化mg11の方向は−X方向を向いていてもよい。また、第2固定層103bの磁化mg12の方向は+X方向を向いていてもよい。磁化mg11の方向が磁化mg12の方向に対して反対を向いていれば、いずれの電流iが流れても、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
第2の実施形態によれば、2つの固定層からの寄与により、発振に要する電流量を少なくすることができるという利点がある。
【0035】
(第3の実施形態)
図3(a)〜(b)は、第3の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
図3(a)には、第3の実施形態に係るSTO3の層構造が表され、図3(b)には、STO3を用いた回路構成が表されている。
【0036】
図3(a)に表したように、STO3は、第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、第2固定層103bと、第3固定層103cと、を備える。
第1固定層103a、第1自由層101a、第2自由層101b及び第2固定層103bは、STO2と同じである。第1中間層102a、第2中間層102b及び第3中間層102cもSTO2と同じである。
【0037】
第3固定層103cの磁化mg13の方向は固定である。磁化mg13の方向は、第1方向と平行な成分を含む。第1方向は、第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、第2固定層103bと、第3固定層103cと、の積層方向に対して平行である。第3固定層103cの磁化mg13は、例えば−X方向を向く。
第3固定層103cと第2自由層101bとの間には第4中間層102dが設けられる。
【0038】
STO3において、第2固定層103b、第1自由層101a、第1固定層103a、第1中間層102a及び第3中間層102cは第1積層体SB1を構成する。STO3において、第1固定層103a、第2自由層101b、第3固定層103c、第2中間層102b及び第4中間層102dは第2積層体SB2を構成する。
STO3において第1積層体SB1は、第1固定層103aを共通として、X方向と平行な方向に第2積層体SB2と並んで配置される。
【0039】
図3(b)に表したように、STO3の第2固定層103bには第1導電部104aが接続され、第3固定層103cには第2導電部104bが接続される。第1導電部104a及び第2導電部104bには、第1電流印加機構105aが接続される。
【0040】
第1電流印加機構105aから印加される電流iは、第1導電部104aから第1積層体SB1及び第2積層体SB2を+X方向に流れ、第2導電部104bから第1電流印加機構105aに戻る。この電流iによって第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化が発振する。
【0041】
すなわち、STO3において、+X方向に電流iが流れると、第1自由層101aの発振における磁化mg21の回転方向RT1は、第2自由層101bの発振における磁化mg22の回転方向RT2に対して逆になる。
【0042】
また、STO3において、−X方向に電流iが流れると、回転方向RT1及び回転方向RT2は+X方向に電流iが流れた場合とはそれぞれ反対になる。
STO3では、いずれの方向に電流iが流れても、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0043】
なお、第1固定層103aの磁化mg11の方向は−X方向を向いていてもよい。また、第2固定層103bの磁化mg12の方向は+X方向を向いていてもよい。また、第3固定層103cの磁化mg13の方向は+X方向を向いていてもよい。磁化mg11の方向が磁化mg12及びmg13の方向に対して反対であれば、いずれの電流iが流れても、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
第3の実施形態によれば、第1自由層101a、第2自由層101bに働くスピントルク量が同等になるため、2つの自由層の発振周波数が近くなるという利点がある。
【0044】
(第4の実施形態)
図4(a)〜(b)は、第4の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
図4(a)には、第4の実施形態に係るSTO4の層構造が表され、図4(b)には、STO4を用いた回路構成が表されている。
【0045】
図4(a)に表したように、STO4は、第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、第2固定層103bと、を備える。
第1固定層103aの磁化mg11の方向は固定である。磁化mg11の方向は、X方向と平行な成分を含む。第1固定層103aの磁化mg11は、例えば−X方向を向く。
【0046】
第1自由層101aは、第1固定層103aとX方向と平行な方向に積層される。STO4では、第1自由層101aは、第1固定層103aと+X方向に積層される。
第1自由層101aの磁化mg21の方向は可変である。磁化mg21の方向は、X方向と直交する成分を含む。
【0047】
第1固定層103aと第1自由層101aとの間には第1中間層102aが設けられる。STO4において、第1固定層103a、第1自由層101a及び第1中間層102aは第1積層体SB1を構成する。
【0048】
第2固定層103bの磁化mg12の方向は固定である。磁化mg12の方向は、X方向と平行な成分を含む。第2固定層103bの磁化mg12は、例えば+X方向を向く。
【0049】
第2自由層101bは、第2固定層103bとX方向と平行な方向に積層される。STO4では、第2自由層101bは、第2固定層103bと−X方向に積層される。
第2自由層101bの磁化mg22の方向は可変である。磁化mg22の方向は、X方向と直交する成分を含む。
【0050】
第2固定層103bと第2自由層101bとの間には第2中間層102bが設けられる。STO4において、第2固定層103b、第2自由層101b及び第2中間層102bは第2積層体SB2を構成する。
STO4において第1積層体SB1は、X方向と平行な方向に第2積層体SB2と並んで配置される。
【0051】
図4(b)に表したように、STO4には、第1導電部104a、第2導電部104b及び第3導電部104cが設けられる。
第2導電部104bは、第1自由層101aと第2自由層101bとの間に設けられる。第1導電部104aと第2導電部104bとの間に第1積層体SB1が設けられ、第3導電部104cと第2導電部104bとの間に第2積層体SB1が設けられる。
【0052】
STO4には、第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化発振を励起するために必要なスピントルク電流を印加するための第1電流印加機構105a及び第2電流印加機構105bが接続される。
【0053】
第1電流印加機構105aから印加される電流i1は、第1導電部104aから第1積層体SB1を+X方向に流れ、第2導電部104bから第1電流印加機構105aに戻る。この電流i1によって第1自由層101aの磁化が発振する。
第2電流印加機構105bから印加される電流i2は、第3導電部104aから第2積層体SB2を−X方向に流れ、第2導電部104bから第2電流印加機構105bに戻る。この電流i2によって第2自由層101bの磁化が発振する。
【0054】
すなわち、STO4において、第1積層体SB1に+X方向の電流i1が流れ、第2積層体SB2に−X方向の電流i2が流れると、第1自由層101aの発振における磁化mg21の回転方向RT1は、第2自由層101bの発振における磁化mg22の回転方向RT2に対して逆になる。
【0055】
また、STO4において、第1積層体SB1に−X方向の電流i1が流れ、第2積層体SB2に+X方向の電流i2が流れると、回転方向RT1及び回転方向RT2は、+X方向に電流i1が流れ、−X方向に電流i2が流れた場合とは反対になる。
STO4では、電流i1及びi2が互いに逆向きに流れることで、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0056】
なお、第1固定層103aの磁化mg11の方向は+X方向を向いていてもよい。また、第2固定層103bの磁化mg12の方向は−X方向を向いていてもよい。磁化mg11の方向が磁化mg12の方向に対して反対であって、電流i1の方向が電流i2の方向に対して反対であれば、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0057】
STO4には2つの電流印加機構(第1電流印加機構105a及び第2電流印加機構105b)から独立して電流i1及びi2が印加されるため、電流i1及びi2をそれぞれ調整して第1積層体SB1及び第2積層体SB2の発振を個別に制御することができる。
【0058】
(第5の実施形態)
図5(a)〜(b)は、第5の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
図5(a)には、第5の実施形態に係るSTO5の層構造が表され、図5(b)には、STO5を用いた回路構成が表されている。
【0059】
図5(a)に表したように、STO5は、第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、第2固定層103bと、を備える。
STO5に含まれる第1固定層103a、第1自由層101a、第2自由層101b及び第2固定層103bはSTO4と同じであるが、配置が相違する。
STO5では、第1自由層101aは、第1固定層103aと−X方向に積層される。第2自由層101bは、第2固定層103bと+X方向に積層される。
【0060】
STO5において第1積層体SB1は、X方向と平行な方向に第2積層体SB2と並んで配置される。第1固定層103aは第2固定層103bと離間している。
【0061】
図5(b)に表したように、STO5には、第1導電部104a、第2導電部104b及び第3導電部104cが設けられる。
第2導電部104bは、第1固定層103aと第2固定層103bとの間に設けられる。第1導電部104aと第2導電部104bとの間に第1積層体SB1が設けられ、第3導電部104cと第2導電部104bとの間に第2積層体SB1が設けられる。
【0062】
STO5には、第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化発振を励起するために必要なスピントルク電流を印加するための第1電流印加機構105a及び第2電流印加機構105aが接続される。
【0063】
第1電流印加機構105aから印加される電流i1は、第1導電部104aから第1積層体SB1を+X方向に流れ、第2導電部104bから第1電流印加機構105aに戻る。この電流i1によって第1自由層101aの磁化が発振する。
第2電流印加機構105bから印加される電流i2は、第3導電部104aから第2積層体SB2を−X方向に流れ、第2導電部104bから第2電流印加機構105bに戻る。この電流i2によって第2自由層101bの磁化が発振する。
【0064】
すなわち、STO5において、第1積層体SB1に+X方向の電流i1が流れ、第2積層体SB2に−X方向の電流i2が流れると、第1自由層101aの発振における磁化mg21の回転方向RT1は、第2自由層101bの発振における磁化mg22の回転方向RT2に対して逆になる。
【0065】
また、STO5において、第1積層体SB1に−X方向の電流i1が流れ、第2積層体SB2に+X方向の電流i2が流れると、回転方向RT1及び回転方向RT2は、+X方向に電流i1が流れ、−X方向に電流i2が流れた場合とはそれぞれ反対になる。
STO5では、電流i1及びi2が互いに逆向きに流れることで、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0066】
なお、第1固定層103aの磁化mg11の方向は+X方向を向いていてもよい。また、第2固定層103bの磁化mg12の方向は−X方向を向いていてもよい。磁化mg11の方向が磁化mg12の方向に対して反対であって、電流i1の方向が電流i2の方向に対して反対であれば、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0067】
STO5では、STO5と同様に、電流i1及びi2をそれぞれ調整して第1積層体SB1及び第2積層体SB2の発振を個別に制御することができる。
【0068】
(第6の実施形態)
図6(a)〜(b)は、第6の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
図6(a)には、第6の実施形態に係るSTO6の層構造が表され、図6(b)には、STO6を用いた回路構成が表されている。
【0069】
図6(a)に表したように、STO6は、第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、第2固定層103bと、を備える。
STO6に含まれる第1固定層103a、第1自由層101a、第2自由層101b及び第2固定層103bはSTO4と同じであるが、第2固定層103bの磁化mg12の方向が相違する。
STO6では、第2固定層103bの磁化mg12の方向は、第1固定層103aの磁化mg11の方向と同じであり、例えば−X方向を向く。
【0070】
図6(b)に表したように、STO6には、第1導電部104a、第2導電部104b及び第3導電部104cが設けられる。
第2導電部104bは、第1自由層101aと第2自由層101bとの間に設けられる。第1導電部104aと第2導電部104bとの間に第1積層体SB1が設けられ、第3導電部104cと第2導電部104bとの間に第2積層体SB1が設けられる。第1導電部104a及び第3導電部104bには、第1電流印加機構105aが接続される。
【0071】
第1電流印加機構105aから印加される電流iは、第1導電部104aから第1積層体SB1及び第2積層体SB2を+X方向に流れ、第2導電部104bから第1電流印加機構105aに戻る。この電流iによって第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化が発振する。
【0072】
すなわち、STO6において、第1積層体SB1に+X方向の電流i1が流れ、第2積層体SB2に+X方向の電流i2が流れると、第1自由層101aの発振における磁化mg21の回転方向RT1は、第2自由層101bの発振における磁化mg22の回転方向RT2に対して逆になる。
【0073】
また、STO6において、第1積層体SB1に−X方向の電流i1が流れ、第2積層体SB2に−X方向の電流i2が流れると、回転方向RT1及び回転方向RT2は、+X方向に電流i1が流れ、+X方向に電流i2が流れた場合とはそれぞれ反対になる。
STO6では、電流i1及びi2が互いに同じ向きに流れることで、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0074】
なお、第1固定層103aの磁化mg11の方向及び第2固定層103bの磁化mg12の方向は+X方向を向いていてもよい。磁化mg11の方向が磁化mg12の方向と同じであって、電流i1の方向が電流i2の方向と同じであれば、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
第6の実施形態によれば、第1固定層103aの磁化方向及び第2固定層103bの磁化方向が同一であるため、外部磁界により簡便に磁化配置が実現可能である、また、第1自由層101aと第2自由層101bを近接して配置することができる。
【0075】
上記説明したいずれのSTO1〜STO6であっても、第1自由層101aの発振における磁化mg21の回転方向RT1が、第2自由層101bの発振における磁化mg22の回転方向RT2に対して逆になる。
このように、磁化mg21の回転方向RT1と磁化mg22の回転方向RT2とが互いに逆になると、高周波磁界の例えばXY平面内の成分が強め合うように働き、記録媒体に強い高周波磁界を印加することが可能になる。
【0076】
図7(a)〜(d)は、高周波磁界を例示する模式的斜視図である。
図7(a)〜(d)では、説明の便宜上、第1自由層101a及び第2自由層101bによるXY平面での面内磁界502の変化を表している。XY平面に平行な面には記録媒体501(例えば、垂直磁気記録媒体)が設けられている。
図7(a)〜(d)では、第1自由層101a及び第2自由層101bの回転する磁化mg21及びmg22が1/4回転ずつ変化した状態を例示している。
ここで、XYZ方向において、それぞれ原点Oから離れる方向を表す場合には「+」、原点Oに近づく方向を表す場合には「−」を付して表すものとする。
【0077】
第1自由層101aの磁化mg21の回転方向RT1は、第2自由層101bの磁化mg22の回転方向RT2に対して逆である。また、21の回転周期は磁化mg22の回転周期と一致している。
【0078】
図7(a)に表したように、第1自由層101aの磁化mg21が記録媒体501の面(XY面)と垂直な方向であって記録媒体501に向かう方向(−Z方向)に向いており、第2自由層101bの磁化mg22が記録媒体501の面(XY面)と垂直な方向であって記録媒体501から離れる方向(+Z方向)に向いているとき、記録媒体501の面(XY面)における第1自由層101aと第2自由層101bとの間には+X方向に向く面内磁界502が発生する。
【0079】
次に、図7(b)は、図7(a)に表した磁化mg21及びmg22がそれぞれ回転方向RT1及びRT2に1/4回転した状態を例示している。
この場合、第1自由層101aの磁化mg21の方向は記録媒体501の面(XY面)と平行な方向(−Y方向)に向き、第2自由層101bの磁化mg22の方向は記録媒体501の面(XY面)と平行な方向(−Y方向)に向く。これにより、記録媒体501の面(XY面)における第1自由層101aと第2自由層101bとの間には+Y方向に向く面内磁界502が発生する。
【0080】
次に、図7(c)は、図7(b)に表した磁化mg21及びmg22がそれぞれ回転方向RT1及びRT2に1/4回転した状態を例示している。
この場合、第1自由層101aの磁化mg21の方向は記録媒体501の面(XY面)と垂直な方向(+Z方向)に向き、第2自由層101bの磁化mg22の方向は記録媒体501の面(XY面)と垂直な方向(−Z方向)に向く。これにより、記録媒体501の面(XY面)における第1自由層101aと第2自由層101bとの間には−X方向に向く面内磁界502が発生する。
【0081】
次に、図7(d)は、図7(c)に表した磁化mg21及びmg22がそれぞれ回転方向RT1及びRT2に1/4回転した状態を例示している。
この場合、第1自由層101aの磁化mg21の方向は記録媒体501の面(XY面)と平行な方向(+Y方向)に向き、第2自由層101bの磁化mg22の方向は、記録媒体501の面(XY面)と平行な方向(+Y方向)に向く。これにより、記録媒体501の面(XY面)における第1自由層101aと第2自由層101bとの間には−Y方向に向く面内磁界502が発生する。
【0082】
上記のように、第1自由層101aの磁化mg21が回転方向RT1に連続して回転し、第2自由層101bの磁化mg22が回転方向RT2に連続して回転することによって、図4(a)〜(d)に表したように面内磁界502の向きが連続して変化する。その結果、面内磁化は、記録媒体501の面(XY面)に沿って回転方向RT3に回転する。
これによって、記録媒体501の面(XY面)では高周波磁界の面内成分が強め合うように働き、強い高周波磁界を印加することが可能になる。
【0083】
次に、実施形態に係る高周波磁界発生素子の磁界強度について説明する。
図8は、磁界強度のシミュレーションモデルを例示する模式図である。
図8に表したように、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)をX方向に離間して配置し、記録媒体501に接近させる。第1自由層101aの磁化mg21の方向及び第2自由層101bの磁化mg22の方向は、それぞれ発振により回転する。
【0084】
第1自由層101a及び第2自由層101bは、CoFeなどの材料の典型的な値である飽和磁化1000erg/cm3を有する。第1自由層101a及び第2自由層101b形状は、直径40nm、厚さ10nmの円柱ピラー型である。
【0085】
シミュレーションでは、第1自由層101a及び第2自由層101bを記録媒体501の表面と5nmの間をあけて配置し、記録媒体501の表面に印加される高周波磁界を、第1自由層101a及び第2自由層101bの直下を通る媒体表面上のX軸に平行な線1001上で計算する。
【0086】
図9(a)〜図10(b)は、磁界強度の計算結果を例示する図である。
図9(a)〜図10(b)において、横軸はX軸に平行な線1001上の位置、縦軸は磁界強度(エルステッド:Oe)である。
図9(a)は、第1の参考例に係る高周波磁界発生素子の磁界強度の計算結果である。図9(a)には、YZ平面上を時計回りに回転する1つの自由層(第1自由層101a)から発生する高周波磁界を計算し、時計回り成分CW1と反時計回り成分CCW1とに分解した結果が示されている。この結果から、自由層(第1自由層101a)の中心直下で支配的な回転方向が切り替わっているのがわかる。自由層(第1自由層101a)の端から数nmの範囲で強い高周波磁界が得られ、その最大値はおよそ1100(エルステッド:Oe)であった。
【0087】
図9(b)及び図10(a)は、第2の参考例に係る高周波磁界発生素子の磁界強度の計算結果を例示する図である。
図9(b)には、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の磁化を位相差180°で同じ向きに回転させたときに発生する高周波磁界の時計回り成分CW2と反時計回り成分CCW2とを計算した結果が示されている。
図10(a)には、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の磁化を位相差0°で同じ向きに回転させたときに発生する高周波磁界の時計回り成分CW3と反時計回り成分CCW3とを計算した結果が示されている。
【0088】
図9(b)に表したように、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の磁化を位相差180°で同じ向きに回転させた場合、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の間で時計回り成分CW2と反時計回り成分CCW2とが同等に発生し、その最大値はおよそ1400(Oe)であった。
時計回り成分CW2の強度は、反時計回り成分CCW2の強度とほとんど差がないため、共鳴を利用した再生ヘッドの動作原理の一つである、磁界の回転方向を用いた共鳴の有無の検出は困難である。
【0089】
図10(a)に表したように、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の磁化を位相差0°で同じ向きに回転させた場合、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)がまったく同じ動きをしている。したがって、1つの厚い自由層のように働き、図15に表した第1の参考例と同様に、自由層の端で強い高周波磁界が得られ、その最大値はおよそ1600(Oe)であった。
【0090】
図10(b)は、実施形態に係る高周波磁界発生素子の磁界強度の計算結果を例示する図である。
図10(b)には、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の磁化を互いに逆向きに回転させたときに発生する高周波磁界の時計回り成分CW4と反時計回り成分CCW4とを計算した結果が示されている。2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の磁化は、同期して互いに逆向きに回転している。
この場合、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の間で反時計回り成分CCW4の強度が強くなり、その最大値はおよそ2200(Oe)であった。
【0091】
上記のように、実施形態に係る高周波磁界発生素子では、発生する高周波磁界の強度が大きく、回転方向の選択性が優れており、高周波磁界の広がりも狭い。このような特性は共鳴を利用した磁気記録にとって有用である。
【0092】
次に、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の同期について説明する。
2つの自由層の同期の同期としては、(1)印加する電流に高周波成分を重畳して自由層の周波数を印加高周波電流の周波数に一致させる手法、(2)外部から高周波磁界を加えて自由層の周波数を印加高周波磁界の周波数に一致させる手法、(3)2つの自由層の間に働く磁気的・電気的な相互作用(2つの自由層に流れる電流による相互作用、スピン流を介した相互作用及びダイポール相互作用の少なくとも1つ)を利用する、などが挙げられる。
【0093】
図11(a)〜(b)は、2つの自由層の同期方法を例示する模式図である。
なお、図11(a)では、一例として図4(a)及び(b)に例示したSTO4についての同期方法を表している。また、図11(a)〜(b)では、説明の便宜上、STO4の構成として、第1自由層101a、第2自由層101b、第1導電部104a、第2導電部104b及び第3導電部104cのみを表している。
【0094】
図11(a)では、上記(1)の同期方法を例示している。図11(a)に表したように、STO4には、第1電流印加機構105a及び第2電流印加機構105bから電流i1及びi2が印加される。この電流i1及びi2は、直流電流(I0)に高周波電流(IRF)が重畳されたものである。
【0095】
STO4に印加する高周波電流と第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の発振とを同期させるためには、外部から印加する高周波電流の周波数と第1自由層101a及び第2自由層101bの発振周波数とが近い必要がある。そのため、第1自由層101a及び第2自由層101bの発振周波数が電流に依存していることを利用し、印加する直流電流により発振周波数を調整しておき、印加高周波電流に同期させる。さらに、面内(+Y方向)に磁化を持つ固定層を第1自由層101a及び第2自由層101bと第2導電部104bとの間に挿入する、または外部磁界などにより第1固定層103a及び第2固定層103bにX方向と直交する成分を持たせることで、スピントルクの面内成分を、第1自由層101a及び第2自由層101bに働くようにすることにより、図7で説明した位相の条件を満たすようにすることができる。
【0096】
図11(b)では、上記(2)の同期方法を例示している。図11(b)に表したように、第1自由層101a及び第2自由層101bの近傍には、高周波伝送線路603が配置される。この高周波伝送線路603に、高周波電源604を用いて高周波信号を印加することにより、高周波磁界605が、第1自由層101a及び第2自由層101bに印加される。この場合も、外部から印加する高周波磁界と第1自由層101a及び第2自由層101bの発振周波数が近い必要があるため、印加する直流電流により第1自由層101a及び第2自由層101bの発振周波数を調整する。これにより、第1自由層101a及び第2自由層101bの発振周波数を印加高周波磁界に同期させる。
【0097】
高周波伝送線路603は、第1自由層101a及び第2自由層101bの+Z方向側に設置してあるため、高周波電流から発生する電流磁界は、第1自由層101a及び第2自由層101bに対しY方向に印加される。この磁界と第1自由層101a及び第2自由層101bの発振とが同期することにより、図7で説明した位相の条件を満たすようにすることができる。
【0098】
(第7の実施形態)
図12〜図17は、第7の実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
図12に表した磁気ヘッド801には、第1の実施形態に係るSTO1が用いられている。
磁気ヘッド801は、STO1と、主磁極701と、を備える。主磁極701は、磁気記録媒体に記録磁界を印加するものである。主磁極701は、記録媒体501に対向する第1面701aと、第1面701aと交わる第2面701bと、を有する。
【0099】
磁気ヘッド801において、STO1は、主磁極701の第2面701bと対向して設けられる。STO1における第2導電部104bは、主磁極701と電気的に接続される。
【0100】
磁気ヘッド801には、主磁極701を磁化させる主磁極コイル702と、主磁極701と対向するリターンパス704aと、リターンパス704aを磁化させるリターンパスコイル707aと、が設けられる。
【0101】
磁気ヘッド801の構成では、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の間において高周波磁界は増強されるため、高周波磁界と書き込み磁界703との間の距離が離れている。そのため、記録媒体501の移動(+X方向への移動)に対して上流側(−X方向)に第1自由層101a及び第2自由層101bを配置し、媒体に高周波磁界を印加した後、書き込み磁界が印加される。
【0102】
XY平面上の+Z方向に向く磁化に磁気共鳴をひき起こすためには、XY平面上で反時計回りの高周波磁界を発生させる必要がある。このような高周波磁界は、第1自由層101aの磁化がYZ平面上を時計回り、第2自由層101bの磁化が反時計回りで回転しているときに第1自由層101a及び第2自由層101bの間に近接する媒体表面上で発生する。
【0103】
この磁気ヘッド801においては、電流印加機構105aから電流iを+X方向に印加することにより上記の発振が達成される。この発生した高周波磁界を磁性体が吸収することにより、保磁力以下の磁界での磁化操作が可能である。
【0104】
また、XY平面上の−Z方向に向く磁化に磁気共鳴をひき起こすためには、第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の回転方向をそれぞれ変化させる必要がある。第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の回転方向を逆にする方法としては、以下の2つが挙げられる。
【0105】
<1>電流の方向を逆にする。書き込む向きに応じて第1自由層101a及び第2自由層101bに印加する電流の向きを逆にする。これにより、第1自由層101a及び第2自由層101bの発振による磁化の回転方向は逆になる。
【0106】
<2>第1固定層103a及び第2固定層103bの磁化の方向を逆にする。主磁極701から出る磁界は記録媒体501に印加されると同時に第1自由層101a及び第2自由層101bにも印加される。
【0107】
第1固定層103aの保磁力を主磁極701から第1固定層103aに印加される磁界より低く調整することにより、書き込む向きに応じて第1固定層103aの磁化の方向が変わる。これにより、第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の回転方向が逆になる。
【0108】
第1自由層101a及び第2自由層101bに印加される磁界を調整するには、リターンパス704a及び704bに設置されたリターンパスコイル707a及び707bに通電してもよい。
【0109】
図13に表した磁気ヘッド802には、第2の実施形態に係るSTO2が用いられている。
磁気ヘッド802において、STO2は、主磁極701の第2面701bと対向して設けられる。STO2における第2導電部104bは、主磁極701と電気的に接続される。
磁気ヘッド802におけるその他の構成及び動作は、磁気ヘッド801と同様である。
【0110】
図14に表した磁気ヘッド803には、第3の実施形態に係るSTO3が用いられている。
磁気ヘッド803において、STO3は、主磁極701の第2面701bと対向して設けられる。STO3における第2導電部104bは、主磁極701と電気的に接続される。
磁気ヘッド803におけるその他の構成及び動作は、磁気ヘッド802と同様である。
【0111】
図15に表した磁気ヘッド804には、第4の実施形態に係るSOT4が用いられている。STO4は、主磁極701と共に配置される。磁気ヘッド804では、第1自由層101aと第2自由層101bとの間に第2導電部104bが設けられる。第2導電部104bは、主電極701とが電気的に接続される。
【0112】
磁気ヘッド804には、主磁極701を磁化させる主磁極コイル702と、主磁極701と対向するリターンパス704a及び704bと、リターンパス704a及び704bを磁化させるリターンパスコイル707a及び707bと、が設けられる。
【0113】
また、主磁極701と第1自由層101a及び第2自由層101bとの間には、流れる電流のスピンを減じる中間層705a及び705bが設けられる。これは主磁極701からの電流が第1自由層101a及び第2自由層101bにトルクを与えないようにするためである。中間層705a及び705bには、Ruなどのスピン拡散長が比較的短い材料を用いることができる。
【0114】
磁気ヘッド804では、主磁極コイル702に通電することにより主磁極701に書き込み磁界703が発生する。
【0115】
ここで、XY平面上にある、単層、または複数の層から構成される記録媒体501の媒体磁化706(ここでは+Z方向)を、書き込み磁界703により−Z方向に操作することを考える。
【0116】
XY平面上の+Z方向に向いた磁化に磁気共鳴を起こすためには、XY平面上で反時計回りの高周波磁界を発生させる必要がある。このような高周波磁界は、第1自由層101aの磁化がYZ平面上を時計回り、第2自由層101bの磁化が反時計回りで回転しているとき、2つの自由層101a及び101bの間に近接する媒体表面上で発生する。
【0117】
磁気ヘッド804の構造(第1固定層103aの磁化:−X方向、第2固定層103bの磁化:+X方向)においては、電流を第1固定層103aから第1自由層101aへ、また第2固定層103bから第2自由層101bへ流すことにより上記の発振が達成される。
発生する高周波磁界の周波数を媒体磁化706の共鳴周波数と一致させておくことにより、高周波磁界の吸収が起こり、保磁力以下の磁界での磁化操作が可能になる。
【0118】
また、複数の層から成る磁気媒体を使用する際、各層が異なる共鳴周波数を持つように設計することにより、印加する高周波磁界の周波数を調整することによって、選択した層にのみ共鳴を起こすことができる。結果として選択した層のみの反転磁界を低下させることができ、他の層の磁化に影響を与えることなく、選択した層の磁化の操作(書き込み)が可能である。
【0119】
次に、−Z方向に向いた媒体磁化706を、書き込み磁界703により+Z方向に操作することを考える。
XY平面上の−Z方向に向いた磁化に磁気共鳴をひき起こすためには、上記の例とは逆にXY平面上で時計回りの高周波磁界を発生させる必要がある。したがって、第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の回転方向もそれぞれ変化させる必要がある。第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の回転方向を逆にする方法としては、上記<1>及び<2>の2つが用いられる。
【0120】
なお、第1固定層103a及び第2固定層103bのそれぞれの磁化の方向、電流の方向は上記に限定されず、第1自由層101aの磁化の回転方向が第2自由層101bの磁化の回転方向と逆になる限り、自由に選択することができる。
【0121】
図16に表した磁気ヘッド805には、第5の実施形態に係るSTO5が用いられている。
STO5は、主磁極701と共に配置される。磁気ヘッド805では、第1固定層103aと第2固定層103bとの間に第2導電部104bが設けられる。第2導電部104bは、主電極701と電気的に接続される。
磁気ヘッド805におけるその他の構成及び動作は、磁気ヘッド804と同様である。
【0122】
図17に表した磁気ヘッド806には、第6の実施形態に係るSTO6が用いられる。
磁気ヘッド806において、STO6は、主磁極701の第2面701bと対向して設けられる。STO6における第2導電部104bは、主磁極701と電気的に接続される。
磁気ヘッド806におけるその他の構成及び動作は、磁気ヘッド801と同様である。
【0123】
(第8の実施形態)
図18は、第8の実施形態に係る磁気再生ヘッドを例示する模式図である。
図18に表したように、実施形態に係る磁気再生ヘッド900は、上記説明したいずれかの実施形態に係る高周波磁界発生素子と、この高周波磁界発生素子に流れる電流から高周波成分を検出する検出部902と、を備える。
図18に表した磁気再生ヘッド900では、一例として図4(a)及び(b)に表したSTO4が用いられている。
【0124】
STO4に電流を印加する第1電流印加機構105aには、高周波分離回路901aが直列に接続されている。また、STO4に電流を印加する第2電流印加機構105bには、高周波分離回路901bが直列に接続されている。検出部902は、第1高周波分離回路901a及び第2高周波分離回路901bで分離した高周波信号に基づき、記録媒体501に記録された磁気情報を電気信号に変換する。
【0125】
磁気再生ヘッド900に用いられるSTO4は、2つの磁性体層の磁化の相対角に応じて抵抗が変化する磁気抵抗効果素子と同様の構造になっている。そのため、第1自由層101a及び第2自由層101bの発振時には、第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の向きに応じてGHzレベルで抵抗が変化し、その結果として高周波信号が発生する。この高周波信号を、第1高周波分離回路901a及び第2高周波分離回路901bで直流信号から分離する。分離した高周波信号を検出部902に入力することにより。第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の運動を電気的に検出する。
【0126】
図18に示す配置(第1固定層の磁化:−X方向、第2固定層の磁化:+X方向)においては、電流を第1固定層103aから第1自由層101aへ、また第2固定層103bから第2自由層101bへ流すことによりXY平面上で反時計回りの高周波磁界を発生させる。
【0127】
この時、単層、または複数の層からなる記録媒体501の媒体磁化706が+Z方向を向いている場合、磁気共鳴がおき、エネルギーが媒体に吸収される。一方、媒体磁化706が−Z方向を向いている場合、磁気共鳴は起きない。
【0128】
この磁気共鳴の有無に起因する第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の運動の変化を、検出部902によって検出することにより、媒体磁化706の向きを検出することが可能である。
【0129】
実施形態に係る磁気ヘッド700及び800、並びに磁気再生ヘッド900は、例えば複数の層からなる記録媒体501に対する多層記録及び多層再生に適用することもできる。
【0130】
多層記録及び多層再生を行うには、複数の記録層が記録面に直交する方向に積層された記録媒体501を用いる。記録媒体501の各記録層には、それぞれ異なる磁気共鳴周波数が設定されている。例えば、各記録層の材料を変えることによって、各記録層それぞれの磁気共鳴周波数を変えることができる。
【0131】
実施形態に係る磁気ヘッド700及び800を用いて多層記録を行うには、実施形態に係る高周波磁界発生素子の電流i、i1及びi2に、記録を行う記録層の磁気共鳴周波数とほぼ等しい高周波信号を重畳する。これにより、高周波磁界発生素子から高周波磁界が発生する。
【0132】
この高周波磁界は、複数の記録層のうちの高周波磁界発生素子から発生する高周波磁界の周波数とほぼ等しい磁気共鳴周波数を有する記録層に対して作用する。これにより、複数の記録層のうち特定の記録層のみに書き込みが行われる。
【0133】
実施形態に係る磁気再生ヘッド900を用いた多層再生を行うには、多層記録と同様に読み出し対象の記録層に設定された磁気共鳴周波数とほぼ等しい高周波信号を電流i、i1及びi2に重畳する。これにより、複数の記録層のうち特定の記録層に書き込まれた情報のみを検出部902で取り出すことができる。
【0134】
(第9の実施形態)
図19は、第9の実施形態に係る磁気記録再生ヘッドの構成を例示する模式的斜視図である。
図19に表したように、本実施形態に係る磁気記録再生ヘッド52は、書き込みヘッド部60と再生ヘッド部70とを有している。
【0135】
書き込みヘッド部60は、主磁極61と、環流磁極62と、それらの間に設けられたスピントルク発振子10と、を有している。スピントルク発振子10には、上記説明した実施形態に係るいずれかの高周波磁界発生素子が適用される。
【0136】
再生ヘッド部70は、第1磁気シールド層72aと、第2磁気シールド層72bと、第1磁気シールド層72aと第2磁気シールド層72bとの間に設けられた磁気再生素子71と、を含む。
磁気再生素子71としては、上記説明した実施形態に係るいずれかの高周波磁界発生素子を利用することが可能である。なお、再生分解能をあげるために、磁気再生素子71は、2枚の磁気シールド層、すなわち、第1及び第2磁気シールド層72a、72bの間に設置される。
上記の再生ヘッド部70の各要素、及び、上記の書き込みヘッド部60の各要素は、図示しないアルミナ等の絶縁体により分離される。
【0137】
そして、図19に表したように、磁気記録再生ヘッド52の主磁極媒体対向面61sに対向して磁気記録媒体80が設置される。そして、主磁極61は、磁気記録媒体80に記録磁界(書き込み磁界)を印加する。なお、磁気記録再生ヘッド52の主磁極媒体対向面61sは、磁気記録再生ヘッド52に対して設置される磁気記録媒体80に対向した主磁極61の主面とすることができる。
【0138】
図19に表したように、磁気記録媒体80は、媒体基板82と、その上に設けられた磁気記録層81と、を有する。書き込みヘッド部60から印加される磁界により、磁気記録層81の磁化83が所定の方向に制御され、書き込みがなされる。なお、この時、磁気記録媒体80は、媒体移動方向85の方向に、磁気記録再生ヘッド52に対して相対的に移動する。
一方、再生ヘッド部70は、磁気記録層81の磁化の方向を読み取る。
【0139】
図19に表したように、スピントルク発振子10として上記説明した実施形態に係る高周波磁界発生素子が適用されるため、第1自由層101a及び第2自由層101bに電流を流すことで高周波磁界を発生させることができる。第1自由層101a及び第2自由層101bに流す電流の密度(駆動電流密度)は、所望の発振状態になるよう適宜調整される。
【0140】
主磁極61及び環流磁極62は、FeCo、CoFe、CoNiFe、NiFe、CoZrNb、FeN、FeSi、FeAlSi等の、比較的、飽和磁束密度の大きい軟磁性層で構成されている。
【0141】
また、主磁極61は、主磁極媒体対向面61sの側の部分と、それ以外の部分の材料を別々の材料としても良い。すなわち、例えば、磁気記録媒体80やスピントルク発振子10に発生する磁界を大きくするため、主磁極媒体対向面61sの側の部分の材料を、飽和磁束密度の特に大きいFeCo、CoNiFe、FeN等とし、それ以外の部分は、特に透磁率が高いNiFe等にしても良い。また、磁気記録媒体80やスピントルク発振子10に発生する磁界を大きくするため、主磁極61の主磁極媒体対向面61sの側の形状を、バックギャップ部より小さくしても良い。これにより、磁束が主磁極媒体対向面61sの側の部分に集中し、高強度の磁界を発生することが可能となる。
【0142】
主磁極61のコイル63には、Ti、Cuなどの電気抵抗が低く、酸化されにくい材料を用いることができる。
【0143】
このような構成を有する本実施形態に係る磁気記録再生ヘッド52によれば、低電流密度で安定して発振が可能であり、かつ、面内高周波磁界の強度の高いスピントルク発振子による安定した高周波磁界が得られ、高密度の磁気記録を実現できる磁気記録ヘッドが提供できる。
【0144】
(第10の実施形態)
図20は、第10の実施形態に係る磁気記録装置の構成を例示する模式的斜視図である。
図21(a)〜(b)は、第10の実施形態に係る磁気記録装置の一部の構成を例示する模式的斜視図である。
図20に表したように、実施形態に係る磁気記録装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。同図において、記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ4に装着され、図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。本実施形態に係る磁気記録装置150は、複数の記録用媒体ディスク180を備えたものとしても良い。
【0145】
記録用媒体ディスク180に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダ3は、薄膜状のサスペンション154の先端に取り付けられている。ここで、ヘッドスライダ3は、例えば、前述した実施形態に係る磁気記録再生ヘッド52をその先端付近に搭載している。
【0146】
磁気記録装置150には、磁気記録再生ヘッド52に適用される上記説明した実施形態に係る高周波磁界発生素子の第1自由層101a及び第2自由層101bに電流を与える電流供給部105が設けられる。
【0147】
記録用媒体ディスク180が回転すると、サスペンション154による押付け圧力とヘッドスライダ3の媒体対向面(ABS)で発生する圧力とがつりあい、ヘッドスライダ3の媒体対向面は、記録用媒体ディスク180の表面から所定の浮上量をもって保持される。なお、ヘッドスライダ3が記録用媒体ディスク180と接触するいわゆる「接触走行型」としても良い。
【0148】
サスペンション154は、図示しない駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、アクチュエータアーム155のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石及び対向ヨークからなる磁気回路とから構成することができる。
【0149】
アクチュエータアーム155は、軸受部157の上下2箇所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。その結果、磁気記録ヘッドを記録用媒体ディスク180の任意の位置に移動可能となる。
【0150】
図21(a)は、本実施形態に係る磁気記録装置の一部の構成を例示しており、ヘッドスタックアセンブリ160の拡大斜視図である。また、図21(b)は、ヘッドスタックアセンブリ160の一部となる磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ:HGA)158を例示する斜視図である。
図21(a)に表したように、ヘッドスタックアセンブリ160は、軸受部157と、この軸受部157から延出したヘッドジンバルアセンブリ158と、軸受部157からHGAと反対方向に延出しているとともにボイスコイルモータのコイル162を支持した支持フレーム161を有している。
【0151】
また、図21(b)に表したように、ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延出したアクチュエータアーム155と、アクチュエータアーム155から延出したサスペンション154と、を有している。
【0152】
サスペンション154の先端には、既に説明した実施形態に係る磁気記録再生ヘッド52を具備するヘッドスライダ3が取り付けられている。
【0153】
すなわち、実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ)158は、実施形態に係る磁気記録ヘッドと、前記磁気記録ヘッドが搭載されたヘッドスライダ3と、前記ヘッドスライダ3を一端に搭載するサスペンション154と、前記サスペンション154の他端に接続されたアクチュエータアーム155と、を備える。
【0154】
サスペンション154は、信号の書き込み及び読み取り用、浮上量調整のためのヒーター用、スピントルク発振子用のリード線(図示しない)を有し、このリード線とヘッドスライダ3に組み込まれた磁気ヘッドの各電極とが電気的に接続される。また、図示しない電極パッドが、ヘッドジンバルアセンブリ158に設けられる。本具体例においては、電極パッドは8個設けられる。すなわち、主磁極61のコイル用の電極パッドが2つ、磁気再生素子71用の電極パッドが2つ、DFH(ダイナミックフライングハイト)用の電極パッドが2つ、スピントルク発振子10用の電極パッドが2つ、設けられる。
【0155】
そして、磁気記録ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う、信号処理部190が設けられる。信号処理部190は、例えば、図23に例示した磁気記録装置150の図面中の背面側に設けられる。信号処理部190の入出力線は、ヘッドジンバルアセンブリ158の電極パッドに接続され、磁気記録ヘッドと電気的に結合される。
【0156】
このように、実施形態に係る磁気記録装置150は、磁気記録媒体(記録用媒体ディスク180)と、上記のヘッドスタックアセンブリ160と、前記ヘッドスタックアセンブリ160に搭載された磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部190と、前記磁気ヘッドの前記第1自由層101a及び前記第2自由層101bに電流を与える電流供給部105と、を備える。電流供給部105として、第1電流印加機構105a及び第2電流印加機構105bが用いられる。
【0157】
本実施形態に係る磁気記録装置150によれば、上記の実施形態のスピントルク発振子及び上記の実施形態に係る磁気記録ヘッドを用いることで、低電流密度で安定して発振が可能であり、かつ、面内高周波磁界の強度の高いスピントルク発振子による安定した高周波磁界が得られ、高密度の磁気記録を実現できる磁気記録装置が提供できる。
【0158】
以上説明したように、実施形態に係る高周波磁界発生素子、磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置によれば、記録密度の向上を図ることができる。
【0159】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、高周波磁界発生素子、磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置に含まれる各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0160】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての高周波磁界発生素子、磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0161】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0162】
101a…第1自由層、101b…第2自由層、102a…第1中間層、102b…第2中間層、102c…第3中間層、102d…第4中間層、103a…第1固定層、103b…第2固定層、103c…第3固定層、104a…第1導電部、104b…第2導電部、104c…第3導電部、105…電流供給部、105a…第1電流印加機構、105b…第2電流印加機構、150…磁気記録装置、190…信号処理部、501…記録媒体、603…高周波伝送線路、604…高周波電源、605…高周波磁界、700…磁気ヘッド、701,702…主磁極、701a…第1面、701b…第2面、702…主磁極コイル、703…書き込み磁界、704a,704b…リターンパス、705a,705b…中間層、706…媒体磁化、707a,707b…リターンパスコイル、801〜806…磁気ヘッド、900…磁気再生ヘッド、901a…高周波分離回路、901b…高周波分離回路、902…検出部、RT1,RT2,RT3…回転方向、SB1…第1積層体、SB2…第2構造体、STO1〜STO6…高周波磁界発生素子、i,i1,i2…電流、mg11,mg12,mg21,mg22…磁化
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、高周波磁界発生素子、磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁化状態を利用して情報の記録再生を行う磁気記録技術は、大容量、高速及び安価といった特徴を有している。近年、さらなる記録密度の向上等の観点から、特定の周波数の高周波磁界に対する磁性体の応答である磁気共鳴を用いて磁化の操作及び検出を行い、記録密度を向上させる以下のような手法が提案されている。
【0003】
例えば、マイクロ波アシスト磁気記録方式は、磁気記録媒体の共鳴周波数付近の高周波磁界を媒体に印加し、同時に磁界を印加することにより、保磁力以下の磁界で磁化反転を行う技術である。
このような磁気記録においては、記録密度のさらなる向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−123669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、記録密度を向上できる高周波磁界発生素子、磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る高周波磁界発生素子は、第1固定層と、第1自由層と、第2自由層と、を備える。
第1固定層は、磁化の方向が固定であって前記磁化の方向に第1方向と平行な成分が含まれる。
第1自由層は、前記第1固定層と積層される。第1自由層は、磁化の方向が可変であって前記磁化の方向に前記第1方向と直交する成分が含まれる。
第2自由層は、前記第1固定層と積層される。第2自由層は、磁化の方向が可変であって前記磁化の方向に前記第1方向と直交する成分が含まれる。
前記第1固定層は、前記第1自由層と前記第2自由層との間に設けられる。
前記第1方向は、第1固定層、第1自由層及び第2自由層の積層の方向に対して平行である。
前記第1自由層の前記磁化及び前記第2自由層の前記磁化は、前記第1自由層、前記第2自由層及び前記第1固定層に流れる電流により発振する。
前記第1自由層の前記発振における前記磁化の回転方向は、前記第2自由層の前記発振における前記磁化の回転方向に対して逆である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(a)〜(b)は、第1の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
【図2】(a)〜(b)は、第2の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
【図3】(a)〜(b)は、第3の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
【図4】(a)〜(b)は、第4の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
【図5】(a)〜(b)は、第5の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
【図6】(a)〜(b)は、第6の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
【図7】(a)〜(d)は、高周波磁界を例示する模式的斜視図である。
【図8】磁界強度のシミュレーションモデルを例示する模式図である。
【図9】(a)〜(b)は、磁界強度の計算結果を例示する図である。
【図10】(a)〜(b)は、磁界強度の計算結果を例示する図である。
【図11】(a)〜(b)は、2つの自由層の同期方法を例示する模式図である。
【図12】第7の実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
【図13】第7の実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
【図14】第7の実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
【図15】第7の実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
【図16】第7の実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
【図17】第7の実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
【図18】第8の実施形態に係る磁気再生ヘッドを例示する模式図である。
【図19】第9の実施形態に係る磁気記録再生ヘッドの構成を例示する模式的斜視図である。
【図20】第10の実施形態に係る磁気記録装置の構成を例示する模式的斜視図である。
【図21】(a)〜(b)は、第10の実施形態に係る磁気記録装置の一部の構成を例示する模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本実施形態に係る高周波磁界発生素子は、例えば、発生した磁界により情報の記録及び再生を行う磁気ヘッドに用いることができる。また、本実施形態に係る高周波磁界発生素子は、例えば、不揮発性メモリにも用いることができる。このように、本実施形態に係る高周波磁界発生素子は、高周波の磁界を発生する任意の用途に用いることができる。以下では、本実施形態に係る高周波磁界発生素子が、磁気ヘッドに用いられる場合について説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1(a)〜(b)は、第1の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
図1(a)には、第1の実施形態に係る高周波磁界発生素子STO1の層構造が表され、図1(b)には、高周波磁界発生素子STO1を用いた回路構成が表されている。
なお、以下の説明においては、高周波磁界発生素子STOを単に「STO」とする。
【0010】
図1(a)に表したように、STO1は、互いに積層された第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、を備える。
【0011】
第1固定層103aの磁化mg11の方向は固定である。磁化mg11の方向は、第1方向と平行な成分を含む。実施形態において、第1方向は+X方向(単に、「X方向」ともいう。)である。すなわち、第1方向は、第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、の積層方向に対して平行である。
なお、+X方向と反対の方向は−X方向である。X方向と直交する方向の一つはY方向である。X方向及びY方向に直交する方向はZ方向である。
第1固定層103aの磁化mg11は、例えば+X方向を向く。
【0012】
第1固定層103aには面直方向に容易軸を持つ、CoPt、FePtなどのPt系の磁性体、CoCr系の磁性体、TbFe、TbCoなどの希土類元素系の磁性体を用いることができる。
【0013】
第1自由層101aは、第1固定層103aとX方向と平行な方向に積層される。STO1では、第1自由層101aは、第1固定層103aと−X方向に積層される。
第1自由層101aの磁化mg21の方向は可変である。磁化mg21の方向は、X方向と直交する成分を含む。
【0014】
第1固定層103aと第1自由層101aとの間には第1中間層102aが設けられる。第1中間層102aはスピントルクの輸送が行える材料であればよい。一例としてCuなどの金属、MgOなどの絶縁体材料が挙げられる。
STO1において、第1固定層103a、第1自由層101a及び第1中間層102aは第1積層体SB1を構成する。
【0015】
第2自由層101bは、第1固定層103aとX方向と平行な方向に積層される。STO1では、第2自由層101bは、第1固定層103aと+X方向に積層される。
第2自由層101bの磁化mg22の方向は可変である。磁化mg22の方向は、X方向と直交する成分を含む。
【0016】
第1自由層101a及び第2自由層101bには発振時に高い磁界を発生する目的で、NiFe、CoFeといった飽和磁化の高い材料を用いることができる。さらに、異方性磁界の調整、飽和磁束密度の調整のため、Al、Si、Bなどの材料を混ぜる、また、複数の材料を積層してもよい。
【0017】
第1固定層103aと第2自由層101bとの間には第2中間層102bが設けられる。第2中間層102bの材料は第1中間層102aと同じでよい。STO1において、第1固定層103a、第2自由層101b及び第2中間層102bは第2積層体SB2を構成する。
【0018】
STO1において第1積層体SB1は、第1固定層103aを共通として、第2積層体SB2と並んで配置される。
【0019】
図1(b)に表したように、STO1の第1自由層101aには第1導電部104aが接続され、第2自由層101bには第2導電部104bが接続される。第1導電部104a及び第2導電部104bには、第1電流印加機構105aが接続される。
【0020】
第1電流印加機構105aから印加される電流iは、第1導電部104aから第1積層体SB1及び第2積層体SB2を+X方向に流れ、第2導電部104bから第1電流印加機構105aに戻る。この電流iによって第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化が発振する。
【0021】
すなわち、第1自由層101a及び第2自由層101bに電流iが流れると、スピントルクによって磁化mg21及びmg22の方向が回転する。
【0022】
STO1において、+X方向に電流iが流れると、第1自由層101aの発振における磁化mg21の回転方向RT1は、第2自由層101bの発振における磁化mg22の回転方向RT2に対して逆になる。
【0023】
また、STO1において、−X方向に電流iが流れると、回転方向RT1及び回転方向RT2は+X方向に電流iが流れた場合とは反対になる。この場合であっても、回転方向RT1は回転方向RT2に対して逆になる。
【0024】
すなわち、STO1では、いずれの方向に電流iが流れても、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0025】
なお、第1固定層103aの磁化mg11の方向は−X方向を向いていてもよい。磁化mg11の方向が−X方向を向いていても、いずれの電流iが流れても、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0026】
(第2の実施形態)
図2(a)〜(b)は、第2の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
図2(a)には、第2の実施形態に係るSTO2の層構造が表され、図2(b)には、STO2を用いた回路構成が表されている。
【0027】
図2(a)に表したように、STO2は、互いに積層された第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、第2固定層103bと、を備える。
第1固定層103a、第1自由層101a及び第2自由層101bは、STO1と同じである。第1中間層102a及び第2中間層102bもSTO1と同じである。
【0028】
第2固定層103bの磁化mg12の方向は固定である。磁化mg12の方向は、第1方向と平行な成分を含む。第1方向は、第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、第2固定層103bと、の積層方向(+X方向または−X方向)に対して平行である。
第2固定層103bの磁化mg12は、例えば−X方向を向く。
第2固定層103bと第1自由層101aとの間には第3中間層102cが設けられる。
【0029】
STO2において、第2固定層103b、第1自由層101a及び第3中間層102cは第1積層体SB1を構成する。STO2において、第1固定層103a、第2自由層101b及び第2中間層102bは第2積層体SB2を構成する。
STO2において第1積層体SB1は、第1中間層102aを介してX方向と平行な方向に第2積層体SB2と並んで配置される。
【0030】
図2(b)に表したように、STO2の第2固定層103bには第1導電部104aが接続され、第2自由層101bには第2導電部104bが接続される。第1導電部104a及び第2導電部104bには、第1電流印加機構105aが接続される。
【0031】
第1電流印加機構105aから印加される電流iは、第1導電部104aから第1積層体SB1及び第2積層体SB2を+X方向に流れ、第2導電部104bから第1電流印加機構105aに戻る。この電流iによって第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化が発振する。
【0032】
すなわち、STO2において、+X方向に電流iが流れると、第1自由層101aの発振における磁化mg21の回転方向RT1は、第2自由層101bの発振における磁化mg22の回転方向RT2に対して逆になる。
【0033】
また、STO2において、−X方向に電流iが流れると、回転方向RT1及び回転方向RT2は+X方向に電流iが流れた場合とはそれぞれ反対になる。
STO2では、いずれの方向に電流iが流れても、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0034】
なお、第1固定層103aの磁化mg11の方向は−X方向を向いていてもよい。また、第2固定層103bの磁化mg12の方向は+X方向を向いていてもよい。磁化mg11の方向が磁化mg12の方向に対して反対を向いていれば、いずれの電流iが流れても、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
第2の実施形態によれば、2つの固定層からの寄与により、発振に要する電流量を少なくすることができるという利点がある。
【0035】
(第3の実施形態)
図3(a)〜(b)は、第3の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
図3(a)には、第3の実施形態に係るSTO3の層構造が表され、図3(b)には、STO3を用いた回路構成が表されている。
【0036】
図3(a)に表したように、STO3は、第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、第2固定層103bと、第3固定層103cと、を備える。
第1固定層103a、第1自由層101a、第2自由層101b及び第2固定層103bは、STO2と同じである。第1中間層102a、第2中間層102b及び第3中間層102cもSTO2と同じである。
【0037】
第3固定層103cの磁化mg13の方向は固定である。磁化mg13の方向は、第1方向と平行な成分を含む。第1方向は、第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、第2固定層103bと、第3固定層103cと、の積層方向に対して平行である。第3固定層103cの磁化mg13は、例えば−X方向を向く。
第3固定層103cと第2自由層101bとの間には第4中間層102dが設けられる。
【0038】
STO3において、第2固定層103b、第1自由層101a、第1固定層103a、第1中間層102a及び第3中間層102cは第1積層体SB1を構成する。STO3において、第1固定層103a、第2自由層101b、第3固定層103c、第2中間層102b及び第4中間層102dは第2積層体SB2を構成する。
STO3において第1積層体SB1は、第1固定層103aを共通として、X方向と平行な方向に第2積層体SB2と並んで配置される。
【0039】
図3(b)に表したように、STO3の第2固定層103bには第1導電部104aが接続され、第3固定層103cには第2導電部104bが接続される。第1導電部104a及び第2導電部104bには、第1電流印加機構105aが接続される。
【0040】
第1電流印加機構105aから印加される電流iは、第1導電部104aから第1積層体SB1及び第2積層体SB2を+X方向に流れ、第2導電部104bから第1電流印加機構105aに戻る。この電流iによって第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化が発振する。
【0041】
すなわち、STO3において、+X方向に電流iが流れると、第1自由層101aの発振における磁化mg21の回転方向RT1は、第2自由層101bの発振における磁化mg22の回転方向RT2に対して逆になる。
【0042】
また、STO3において、−X方向に電流iが流れると、回転方向RT1及び回転方向RT2は+X方向に電流iが流れた場合とはそれぞれ反対になる。
STO3では、いずれの方向に電流iが流れても、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0043】
なお、第1固定層103aの磁化mg11の方向は−X方向を向いていてもよい。また、第2固定層103bの磁化mg12の方向は+X方向を向いていてもよい。また、第3固定層103cの磁化mg13の方向は+X方向を向いていてもよい。磁化mg11の方向が磁化mg12及びmg13の方向に対して反対であれば、いずれの電流iが流れても、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
第3の実施形態によれば、第1自由層101a、第2自由層101bに働くスピントルク量が同等になるため、2つの自由層の発振周波数が近くなるという利点がある。
【0044】
(第4の実施形態)
図4(a)〜(b)は、第4の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
図4(a)には、第4の実施形態に係るSTO4の層構造が表され、図4(b)には、STO4を用いた回路構成が表されている。
【0045】
図4(a)に表したように、STO4は、第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、第2固定層103bと、を備える。
第1固定層103aの磁化mg11の方向は固定である。磁化mg11の方向は、X方向と平行な成分を含む。第1固定層103aの磁化mg11は、例えば−X方向を向く。
【0046】
第1自由層101aは、第1固定層103aとX方向と平行な方向に積層される。STO4では、第1自由層101aは、第1固定層103aと+X方向に積層される。
第1自由層101aの磁化mg21の方向は可変である。磁化mg21の方向は、X方向と直交する成分を含む。
【0047】
第1固定層103aと第1自由層101aとの間には第1中間層102aが設けられる。STO4において、第1固定層103a、第1自由層101a及び第1中間層102aは第1積層体SB1を構成する。
【0048】
第2固定層103bの磁化mg12の方向は固定である。磁化mg12の方向は、X方向と平行な成分を含む。第2固定層103bの磁化mg12は、例えば+X方向を向く。
【0049】
第2自由層101bは、第2固定層103bとX方向と平行な方向に積層される。STO4では、第2自由層101bは、第2固定層103bと−X方向に積層される。
第2自由層101bの磁化mg22の方向は可変である。磁化mg22の方向は、X方向と直交する成分を含む。
【0050】
第2固定層103bと第2自由層101bとの間には第2中間層102bが設けられる。STO4において、第2固定層103b、第2自由層101b及び第2中間層102bは第2積層体SB2を構成する。
STO4において第1積層体SB1は、X方向と平行な方向に第2積層体SB2と並んで配置される。
【0051】
図4(b)に表したように、STO4には、第1導電部104a、第2導電部104b及び第3導電部104cが設けられる。
第2導電部104bは、第1自由層101aと第2自由層101bとの間に設けられる。第1導電部104aと第2導電部104bとの間に第1積層体SB1が設けられ、第3導電部104cと第2導電部104bとの間に第2積層体SB1が設けられる。
【0052】
STO4には、第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化発振を励起するために必要なスピントルク電流を印加するための第1電流印加機構105a及び第2電流印加機構105bが接続される。
【0053】
第1電流印加機構105aから印加される電流i1は、第1導電部104aから第1積層体SB1を+X方向に流れ、第2導電部104bから第1電流印加機構105aに戻る。この電流i1によって第1自由層101aの磁化が発振する。
第2電流印加機構105bから印加される電流i2は、第3導電部104aから第2積層体SB2を−X方向に流れ、第2導電部104bから第2電流印加機構105bに戻る。この電流i2によって第2自由層101bの磁化が発振する。
【0054】
すなわち、STO4において、第1積層体SB1に+X方向の電流i1が流れ、第2積層体SB2に−X方向の電流i2が流れると、第1自由層101aの発振における磁化mg21の回転方向RT1は、第2自由層101bの発振における磁化mg22の回転方向RT2に対して逆になる。
【0055】
また、STO4において、第1積層体SB1に−X方向の電流i1が流れ、第2積層体SB2に+X方向の電流i2が流れると、回転方向RT1及び回転方向RT2は、+X方向に電流i1が流れ、−X方向に電流i2が流れた場合とは反対になる。
STO4では、電流i1及びi2が互いに逆向きに流れることで、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0056】
なお、第1固定層103aの磁化mg11の方向は+X方向を向いていてもよい。また、第2固定層103bの磁化mg12の方向は−X方向を向いていてもよい。磁化mg11の方向が磁化mg12の方向に対して反対であって、電流i1の方向が電流i2の方向に対して反対であれば、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0057】
STO4には2つの電流印加機構(第1電流印加機構105a及び第2電流印加機構105b)から独立して電流i1及びi2が印加されるため、電流i1及びi2をそれぞれ調整して第1積層体SB1及び第2積層体SB2の発振を個別に制御することができる。
【0058】
(第5の実施形態)
図5(a)〜(b)は、第5の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
図5(a)には、第5の実施形態に係るSTO5の層構造が表され、図5(b)には、STO5を用いた回路構成が表されている。
【0059】
図5(a)に表したように、STO5は、第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、第2固定層103bと、を備える。
STO5に含まれる第1固定層103a、第1自由層101a、第2自由層101b及び第2固定層103bはSTO4と同じであるが、配置が相違する。
STO5では、第1自由層101aは、第1固定層103aと−X方向に積層される。第2自由層101bは、第2固定層103bと+X方向に積層される。
【0060】
STO5において第1積層体SB1は、X方向と平行な方向に第2積層体SB2と並んで配置される。第1固定層103aは第2固定層103bと離間している。
【0061】
図5(b)に表したように、STO5には、第1導電部104a、第2導電部104b及び第3導電部104cが設けられる。
第2導電部104bは、第1固定層103aと第2固定層103bとの間に設けられる。第1導電部104aと第2導電部104bとの間に第1積層体SB1が設けられ、第3導電部104cと第2導電部104bとの間に第2積層体SB1が設けられる。
【0062】
STO5には、第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化発振を励起するために必要なスピントルク電流を印加するための第1電流印加機構105a及び第2電流印加機構105aが接続される。
【0063】
第1電流印加機構105aから印加される電流i1は、第1導電部104aから第1積層体SB1を+X方向に流れ、第2導電部104bから第1電流印加機構105aに戻る。この電流i1によって第1自由層101aの磁化が発振する。
第2電流印加機構105bから印加される電流i2は、第3導電部104aから第2積層体SB2を−X方向に流れ、第2導電部104bから第2電流印加機構105bに戻る。この電流i2によって第2自由層101bの磁化が発振する。
【0064】
すなわち、STO5において、第1積層体SB1に+X方向の電流i1が流れ、第2積層体SB2に−X方向の電流i2が流れると、第1自由層101aの発振における磁化mg21の回転方向RT1は、第2自由層101bの発振における磁化mg22の回転方向RT2に対して逆になる。
【0065】
また、STO5において、第1積層体SB1に−X方向の電流i1が流れ、第2積層体SB2に+X方向の電流i2が流れると、回転方向RT1及び回転方向RT2は、+X方向に電流i1が流れ、−X方向に電流i2が流れた場合とはそれぞれ反対になる。
STO5では、電流i1及びi2が互いに逆向きに流れることで、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0066】
なお、第1固定層103aの磁化mg11の方向は+X方向を向いていてもよい。また、第2固定層103bの磁化mg12の方向は−X方向を向いていてもよい。磁化mg11の方向が磁化mg12の方向に対して反対であって、電流i1の方向が電流i2の方向に対して反対であれば、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0067】
STO5では、STO5と同様に、電流i1及びi2をそれぞれ調整して第1積層体SB1及び第2積層体SB2の発振を個別に制御することができる。
【0068】
(第6の実施形態)
図6(a)〜(b)は、第6の実施形態に係る高周波磁界発生素子を例示する模式図である。
図6(a)には、第6の実施形態に係るSTO6の層構造が表され、図6(b)には、STO6を用いた回路構成が表されている。
【0069】
図6(a)に表したように、STO6は、第1固定層103aと、第1自由層101aと、第2自由層101bと、第2固定層103bと、を備える。
STO6に含まれる第1固定層103a、第1自由層101a、第2自由層101b及び第2固定層103bはSTO4と同じであるが、第2固定層103bの磁化mg12の方向が相違する。
STO6では、第2固定層103bの磁化mg12の方向は、第1固定層103aの磁化mg11の方向と同じであり、例えば−X方向を向く。
【0070】
図6(b)に表したように、STO6には、第1導電部104a、第2導電部104b及び第3導電部104cが設けられる。
第2導電部104bは、第1自由層101aと第2自由層101bとの間に設けられる。第1導電部104aと第2導電部104bとの間に第1積層体SB1が設けられ、第3導電部104cと第2導電部104bとの間に第2積層体SB1が設けられる。第1導電部104a及び第3導電部104bには、第1電流印加機構105aが接続される。
【0071】
第1電流印加機構105aから印加される電流iは、第1導電部104aから第1積層体SB1及び第2積層体SB2を+X方向に流れ、第2導電部104bから第1電流印加機構105aに戻る。この電流iによって第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化が発振する。
【0072】
すなわち、STO6において、第1積層体SB1に+X方向の電流i1が流れ、第2積層体SB2に+X方向の電流i2が流れると、第1自由層101aの発振における磁化mg21の回転方向RT1は、第2自由層101bの発振における磁化mg22の回転方向RT2に対して逆になる。
【0073】
また、STO6において、第1積層体SB1に−X方向の電流i1が流れ、第2積層体SB2に−X方向の電流i2が流れると、回転方向RT1及び回転方向RT2は、+X方向に電流i1が流れ、+X方向に電流i2が流れた場合とはそれぞれ反対になる。
STO6では、電流i1及びi2が互いに同じ向きに流れることで、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
【0074】
なお、第1固定層103aの磁化mg11の方向及び第2固定層103bの磁化mg12の方向は+X方向を向いていてもよい。磁化mg11の方向が磁化mg12の方向と同じであって、電流i1の方向が電流i2の方向と同じであれば、回転方向RT1と回転方向RT2とは互いに逆向きになる。
第6の実施形態によれば、第1固定層103aの磁化方向及び第2固定層103bの磁化方向が同一であるため、外部磁界により簡便に磁化配置が実現可能である、また、第1自由層101aと第2自由層101bを近接して配置することができる。
【0075】
上記説明したいずれのSTO1〜STO6であっても、第1自由層101aの発振における磁化mg21の回転方向RT1が、第2自由層101bの発振における磁化mg22の回転方向RT2に対して逆になる。
このように、磁化mg21の回転方向RT1と磁化mg22の回転方向RT2とが互いに逆になると、高周波磁界の例えばXY平面内の成分が強め合うように働き、記録媒体に強い高周波磁界を印加することが可能になる。
【0076】
図7(a)〜(d)は、高周波磁界を例示する模式的斜視図である。
図7(a)〜(d)では、説明の便宜上、第1自由層101a及び第2自由層101bによるXY平面での面内磁界502の変化を表している。XY平面に平行な面には記録媒体501(例えば、垂直磁気記録媒体)が設けられている。
図7(a)〜(d)では、第1自由層101a及び第2自由層101bの回転する磁化mg21及びmg22が1/4回転ずつ変化した状態を例示している。
ここで、XYZ方向において、それぞれ原点Oから離れる方向を表す場合には「+」、原点Oに近づく方向を表す場合には「−」を付して表すものとする。
【0077】
第1自由層101aの磁化mg21の回転方向RT1は、第2自由層101bの磁化mg22の回転方向RT2に対して逆である。また、21の回転周期は磁化mg22の回転周期と一致している。
【0078】
図7(a)に表したように、第1自由層101aの磁化mg21が記録媒体501の面(XY面)と垂直な方向であって記録媒体501に向かう方向(−Z方向)に向いており、第2自由層101bの磁化mg22が記録媒体501の面(XY面)と垂直な方向であって記録媒体501から離れる方向(+Z方向)に向いているとき、記録媒体501の面(XY面)における第1自由層101aと第2自由層101bとの間には+X方向に向く面内磁界502が発生する。
【0079】
次に、図7(b)は、図7(a)に表した磁化mg21及びmg22がそれぞれ回転方向RT1及びRT2に1/4回転した状態を例示している。
この場合、第1自由層101aの磁化mg21の方向は記録媒体501の面(XY面)と平行な方向(−Y方向)に向き、第2自由層101bの磁化mg22の方向は記録媒体501の面(XY面)と平行な方向(−Y方向)に向く。これにより、記録媒体501の面(XY面)における第1自由層101aと第2自由層101bとの間には+Y方向に向く面内磁界502が発生する。
【0080】
次に、図7(c)は、図7(b)に表した磁化mg21及びmg22がそれぞれ回転方向RT1及びRT2に1/4回転した状態を例示している。
この場合、第1自由層101aの磁化mg21の方向は記録媒体501の面(XY面)と垂直な方向(+Z方向)に向き、第2自由層101bの磁化mg22の方向は記録媒体501の面(XY面)と垂直な方向(−Z方向)に向く。これにより、記録媒体501の面(XY面)における第1自由層101aと第2自由層101bとの間には−X方向に向く面内磁界502が発生する。
【0081】
次に、図7(d)は、図7(c)に表した磁化mg21及びmg22がそれぞれ回転方向RT1及びRT2に1/4回転した状態を例示している。
この場合、第1自由層101aの磁化mg21の方向は記録媒体501の面(XY面)と平行な方向(+Y方向)に向き、第2自由層101bの磁化mg22の方向は、記録媒体501の面(XY面)と平行な方向(+Y方向)に向く。これにより、記録媒体501の面(XY面)における第1自由層101aと第2自由層101bとの間には−Y方向に向く面内磁界502が発生する。
【0082】
上記のように、第1自由層101aの磁化mg21が回転方向RT1に連続して回転し、第2自由層101bの磁化mg22が回転方向RT2に連続して回転することによって、図4(a)〜(d)に表したように面内磁界502の向きが連続して変化する。その結果、面内磁化は、記録媒体501の面(XY面)に沿って回転方向RT3に回転する。
これによって、記録媒体501の面(XY面)では高周波磁界の面内成分が強め合うように働き、強い高周波磁界を印加することが可能になる。
【0083】
次に、実施形態に係る高周波磁界発生素子の磁界強度について説明する。
図8は、磁界強度のシミュレーションモデルを例示する模式図である。
図8に表したように、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)をX方向に離間して配置し、記録媒体501に接近させる。第1自由層101aの磁化mg21の方向及び第2自由層101bの磁化mg22の方向は、それぞれ発振により回転する。
【0084】
第1自由層101a及び第2自由層101bは、CoFeなどの材料の典型的な値である飽和磁化1000erg/cm3を有する。第1自由層101a及び第2自由層101b形状は、直径40nm、厚さ10nmの円柱ピラー型である。
【0085】
シミュレーションでは、第1自由層101a及び第2自由層101bを記録媒体501の表面と5nmの間をあけて配置し、記録媒体501の表面に印加される高周波磁界を、第1自由層101a及び第2自由層101bの直下を通る媒体表面上のX軸に平行な線1001上で計算する。
【0086】
図9(a)〜図10(b)は、磁界強度の計算結果を例示する図である。
図9(a)〜図10(b)において、横軸はX軸に平行な線1001上の位置、縦軸は磁界強度(エルステッド:Oe)である。
図9(a)は、第1の参考例に係る高周波磁界発生素子の磁界強度の計算結果である。図9(a)には、YZ平面上を時計回りに回転する1つの自由層(第1自由層101a)から発生する高周波磁界を計算し、時計回り成分CW1と反時計回り成分CCW1とに分解した結果が示されている。この結果から、自由層(第1自由層101a)の中心直下で支配的な回転方向が切り替わっているのがわかる。自由層(第1自由層101a)の端から数nmの範囲で強い高周波磁界が得られ、その最大値はおよそ1100(エルステッド:Oe)であった。
【0087】
図9(b)及び図10(a)は、第2の参考例に係る高周波磁界発生素子の磁界強度の計算結果を例示する図である。
図9(b)には、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の磁化を位相差180°で同じ向きに回転させたときに発生する高周波磁界の時計回り成分CW2と反時計回り成分CCW2とを計算した結果が示されている。
図10(a)には、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の磁化を位相差0°で同じ向きに回転させたときに発生する高周波磁界の時計回り成分CW3と反時計回り成分CCW3とを計算した結果が示されている。
【0088】
図9(b)に表したように、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の磁化を位相差180°で同じ向きに回転させた場合、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の間で時計回り成分CW2と反時計回り成分CCW2とが同等に発生し、その最大値はおよそ1400(Oe)であった。
時計回り成分CW2の強度は、反時計回り成分CCW2の強度とほとんど差がないため、共鳴を利用した再生ヘッドの動作原理の一つである、磁界の回転方向を用いた共鳴の有無の検出は困難である。
【0089】
図10(a)に表したように、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の磁化を位相差0°で同じ向きに回転させた場合、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)がまったく同じ動きをしている。したがって、1つの厚い自由層のように働き、図15に表した第1の参考例と同様に、自由層の端で強い高周波磁界が得られ、その最大値はおよそ1600(Oe)であった。
【0090】
図10(b)は、実施形態に係る高周波磁界発生素子の磁界強度の計算結果を例示する図である。
図10(b)には、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の磁化を互いに逆向きに回転させたときに発生する高周波磁界の時計回り成分CW4と反時計回り成分CCW4とを計算した結果が示されている。2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の磁化は、同期して互いに逆向きに回転している。
この場合、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の間で反時計回り成分CCW4の強度が強くなり、その最大値はおよそ2200(Oe)であった。
【0091】
上記のように、実施形態に係る高周波磁界発生素子では、発生する高周波磁界の強度が大きく、回転方向の選択性が優れており、高周波磁界の広がりも狭い。このような特性は共鳴を利用した磁気記録にとって有用である。
【0092】
次に、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の同期について説明する。
2つの自由層の同期の同期としては、(1)印加する電流に高周波成分を重畳して自由層の周波数を印加高周波電流の周波数に一致させる手法、(2)外部から高周波磁界を加えて自由層の周波数を印加高周波磁界の周波数に一致させる手法、(3)2つの自由層の間に働く磁気的・電気的な相互作用(2つの自由層に流れる電流による相互作用、スピン流を介した相互作用及びダイポール相互作用の少なくとも1つ)を利用する、などが挙げられる。
【0093】
図11(a)〜(b)は、2つの自由層の同期方法を例示する模式図である。
なお、図11(a)では、一例として図4(a)及び(b)に例示したSTO4についての同期方法を表している。また、図11(a)〜(b)では、説明の便宜上、STO4の構成として、第1自由層101a、第2自由層101b、第1導電部104a、第2導電部104b及び第3導電部104cのみを表している。
【0094】
図11(a)では、上記(1)の同期方法を例示している。図11(a)に表したように、STO4には、第1電流印加機構105a及び第2電流印加機構105bから電流i1及びi2が印加される。この電流i1及びi2は、直流電流(I0)に高周波電流(IRF)が重畳されたものである。
【0095】
STO4に印加する高周波電流と第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の発振とを同期させるためには、外部から印加する高周波電流の周波数と第1自由層101a及び第2自由層101bの発振周波数とが近い必要がある。そのため、第1自由層101a及び第2自由層101bの発振周波数が電流に依存していることを利用し、印加する直流電流により発振周波数を調整しておき、印加高周波電流に同期させる。さらに、面内(+Y方向)に磁化を持つ固定層を第1自由層101a及び第2自由層101bと第2導電部104bとの間に挿入する、または外部磁界などにより第1固定層103a及び第2固定層103bにX方向と直交する成分を持たせることで、スピントルクの面内成分を、第1自由層101a及び第2自由層101bに働くようにすることにより、図7で説明した位相の条件を満たすようにすることができる。
【0096】
図11(b)では、上記(2)の同期方法を例示している。図11(b)に表したように、第1自由層101a及び第2自由層101bの近傍には、高周波伝送線路603が配置される。この高周波伝送線路603に、高周波電源604を用いて高周波信号を印加することにより、高周波磁界605が、第1自由層101a及び第2自由層101bに印加される。この場合も、外部から印加する高周波磁界と第1自由層101a及び第2自由層101bの発振周波数が近い必要があるため、印加する直流電流により第1自由層101a及び第2自由層101bの発振周波数を調整する。これにより、第1自由層101a及び第2自由層101bの発振周波数を印加高周波磁界に同期させる。
【0097】
高周波伝送線路603は、第1自由層101a及び第2自由層101bの+Z方向側に設置してあるため、高周波電流から発生する電流磁界は、第1自由層101a及び第2自由層101bに対しY方向に印加される。この磁界と第1自由層101a及び第2自由層101bの発振とが同期することにより、図7で説明した位相の条件を満たすようにすることができる。
【0098】
(第7の実施形態)
図12〜図17は、第7の実施形態に係る磁気ヘッドを例示する模式図である。
図12に表した磁気ヘッド801には、第1の実施形態に係るSTO1が用いられている。
磁気ヘッド801は、STO1と、主磁極701と、を備える。主磁極701は、磁気記録媒体に記録磁界を印加するものである。主磁極701は、記録媒体501に対向する第1面701aと、第1面701aと交わる第2面701bと、を有する。
【0099】
磁気ヘッド801において、STO1は、主磁極701の第2面701bと対向して設けられる。STO1における第2導電部104bは、主磁極701と電気的に接続される。
【0100】
磁気ヘッド801には、主磁極701を磁化させる主磁極コイル702と、主磁極701と対向するリターンパス704aと、リターンパス704aを磁化させるリターンパスコイル707aと、が設けられる。
【0101】
磁気ヘッド801の構成では、2つの自由層(第1自由層101a及び第2自由層101b)の間において高周波磁界は増強されるため、高周波磁界と書き込み磁界703との間の距離が離れている。そのため、記録媒体501の移動(+X方向への移動)に対して上流側(−X方向)に第1自由層101a及び第2自由層101bを配置し、媒体に高周波磁界を印加した後、書き込み磁界が印加される。
【0102】
XY平面上の+Z方向に向く磁化に磁気共鳴をひき起こすためには、XY平面上で反時計回りの高周波磁界を発生させる必要がある。このような高周波磁界は、第1自由層101aの磁化がYZ平面上を時計回り、第2自由層101bの磁化が反時計回りで回転しているときに第1自由層101a及び第2自由層101bの間に近接する媒体表面上で発生する。
【0103】
この磁気ヘッド801においては、電流印加機構105aから電流iを+X方向に印加することにより上記の発振が達成される。この発生した高周波磁界を磁性体が吸収することにより、保磁力以下の磁界での磁化操作が可能である。
【0104】
また、XY平面上の−Z方向に向く磁化に磁気共鳴をひき起こすためには、第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の回転方向をそれぞれ変化させる必要がある。第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の回転方向を逆にする方法としては、以下の2つが挙げられる。
【0105】
<1>電流の方向を逆にする。書き込む向きに応じて第1自由層101a及び第2自由層101bに印加する電流の向きを逆にする。これにより、第1自由層101a及び第2自由層101bの発振による磁化の回転方向は逆になる。
【0106】
<2>第1固定層103a及び第2固定層103bの磁化の方向を逆にする。主磁極701から出る磁界は記録媒体501に印加されると同時に第1自由層101a及び第2自由層101bにも印加される。
【0107】
第1固定層103aの保磁力を主磁極701から第1固定層103aに印加される磁界より低く調整することにより、書き込む向きに応じて第1固定層103aの磁化の方向が変わる。これにより、第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の回転方向が逆になる。
【0108】
第1自由層101a及び第2自由層101bに印加される磁界を調整するには、リターンパス704a及び704bに設置されたリターンパスコイル707a及び707bに通電してもよい。
【0109】
図13に表した磁気ヘッド802には、第2の実施形態に係るSTO2が用いられている。
磁気ヘッド802において、STO2は、主磁極701の第2面701bと対向して設けられる。STO2における第2導電部104bは、主磁極701と電気的に接続される。
磁気ヘッド802におけるその他の構成及び動作は、磁気ヘッド801と同様である。
【0110】
図14に表した磁気ヘッド803には、第3の実施形態に係るSTO3が用いられている。
磁気ヘッド803において、STO3は、主磁極701の第2面701bと対向して設けられる。STO3における第2導電部104bは、主磁極701と電気的に接続される。
磁気ヘッド803におけるその他の構成及び動作は、磁気ヘッド802と同様である。
【0111】
図15に表した磁気ヘッド804には、第4の実施形態に係るSOT4が用いられている。STO4は、主磁極701と共に配置される。磁気ヘッド804では、第1自由層101aと第2自由層101bとの間に第2導電部104bが設けられる。第2導電部104bは、主電極701とが電気的に接続される。
【0112】
磁気ヘッド804には、主磁極701を磁化させる主磁極コイル702と、主磁極701と対向するリターンパス704a及び704bと、リターンパス704a及び704bを磁化させるリターンパスコイル707a及び707bと、が設けられる。
【0113】
また、主磁極701と第1自由層101a及び第2自由層101bとの間には、流れる電流のスピンを減じる中間層705a及び705bが設けられる。これは主磁極701からの電流が第1自由層101a及び第2自由層101bにトルクを与えないようにするためである。中間層705a及び705bには、Ruなどのスピン拡散長が比較的短い材料を用いることができる。
【0114】
磁気ヘッド804では、主磁極コイル702に通電することにより主磁極701に書き込み磁界703が発生する。
【0115】
ここで、XY平面上にある、単層、または複数の層から構成される記録媒体501の媒体磁化706(ここでは+Z方向)を、書き込み磁界703により−Z方向に操作することを考える。
【0116】
XY平面上の+Z方向に向いた磁化に磁気共鳴を起こすためには、XY平面上で反時計回りの高周波磁界を発生させる必要がある。このような高周波磁界は、第1自由層101aの磁化がYZ平面上を時計回り、第2自由層101bの磁化が反時計回りで回転しているとき、2つの自由層101a及び101bの間に近接する媒体表面上で発生する。
【0117】
磁気ヘッド804の構造(第1固定層103aの磁化:−X方向、第2固定層103bの磁化:+X方向)においては、電流を第1固定層103aから第1自由層101aへ、また第2固定層103bから第2自由層101bへ流すことにより上記の発振が達成される。
発生する高周波磁界の周波数を媒体磁化706の共鳴周波数と一致させておくことにより、高周波磁界の吸収が起こり、保磁力以下の磁界での磁化操作が可能になる。
【0118】
また、複数の層から成る磁気媒体を使用する際、各層が異なる共鳴周波数を持つように設計することにより、印加する高周波磁界の周波数を調整することによって、選択した層にのみ共鳴を起こすことができる。結果として選択した層のみの反転磁界を低下させることができ、他の層の磁化に影響を与えることなく、選択した層の磁化の操作(書き込み)が可能である。
【0119】
次に、−Z方向に向いた媒体磁化706を、書き込み磁界703により+Z方向に操作することを考える。
XY平面上の−Z方向に向いた磁化に磁気共鳴をひき起こすためには、上記の例とは逆にXY平面上で時計回りの高周波磁界を発生させる必要がある。したがって、第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の回転方向もそれぞれ変化させる必要がある。第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の回転方向を逆にする方法としては、上記<1>及び<2>の2つが用いられる。
【0120】
なお、第1固定層103a及び第2固定層103bのそれぞれの磁化の方向、電流の方向は上記に限定されず、第1自由層101aの磁化の回転方向が第2自由層101bの磁化の回転方向と逆になる限り、自由に選択することができる。
【0121】
図16に表した磁気ヘッド805には、第5の実施形態に係るSTO5が用いられている。
STO5は、主磁極701と共に配置される。磁気ヘッド805では、第1固定層103aと第2固定層103bとの間に第2導電部104bが設けられる。第2導電部104bは、主電極701と電気的に接続される。
磁気ヘッド805におけるその他の構成及び動作は、磁気ヘッド804と同様である。
【0122】
図17に表した磁気ヘッド806には、第6の実施形態に係るSTO6が用いられる。
磁気ヘッド806において、STO6は、主磁極701の第2面701bと対向して設けられる。STO6における第2導電部104bは、主磁極701と電気的に接続される。
磁気ヘッド806におけるその他の構成及び動作は、磁気ヘッド801と同様である。
【0123】
(第8の実施形態)
図18は、第8の実施形態に係る磁気再生ヘッドを例示する模式図である。
図18に表したように、実施形態に係る磁気再生ヘッド900は、上記説明したいずれかの実施形態に係る高周波磁界発生素子と、この高周波磁界発生素子に流れる電流から高周波成分を検出する検出部902と、を備える。
図18に表した磁気再生ヘッド900では、一例として図4(a)及び(b)に表したSTO4が用いられている。
【0124】
STO4に電流を印加する第1電流印加機構105aには、高周波分離回路901aが直列に接続されている。また、STO4に電流を印加する第2電流印加機構105bには、高周波分離回路901bが直列に接続されている。検出部902は、第1高周波分離回路901a及び第2高周波分離回路901bで分離した高周波信号に基づき、記録媒体501に記録された磁気情報を電気信号に変換する。
【0125】
磁気再生ヘッド900に用いられるSTO4は、2つの磁性体層の磁化の相対角に応じて抵抗が変化する磁気抵抗効果素子と同様の構造になっている。そのため、第1自由層101a及び第2自由層101bの発振時には、第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の向きに応じてGHzレベルで抵抗が変化し、その結果として高周波信号が発生する。この高周波信号を、第1高周波分離回路901a及び第2高周波分離回路901bで直流信号から分離する。分離した高周波信号を検出部902に入力することにより。第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の運動を電気的に検出する。
【0126】
図18に示す配置(第1固定層の磁化:−X方向、第2固定層の磁化:+X方向)においては、電流を第1固定層103aから第1自由層101aへ、また第2固定層103bから第2自由層101bへ流すことによりXY平面上で反時計回りの高周波磁界を発生させる。
【0127】
この時、単層、または複数の層からなる記録媒体501の媒体磁化706が+Z方向を向いている場合、磁気共鳴がおき、エネルギーが媒体に吸収される。一方、媒体磁化706が−Z方向を向いている場合、磁気共鳴は起きない。
【0128】
この磁気共鳴の有無に起因する第1自由層101a及び第2自由層101bの磁化の運動の変化を、検出部902によって検出することにより、媒体磁化706の向きを検出することが可能である。
【0129】
実施形態に係る磁気ヘッド700及び800、並びに磁気再生ヘッド900は、例えば複数の層からなる記録媒体501に対する多層記録及び多層再生に適用することもできる。
【0130】
多層記録及び多層再生を行うには、複数の記録層が記録面に直交する方向に積層された記録媒体501を用いる。記録媒体501の各記録層には、それぞれ異なる磁気共鳴周波数が設定されている。例えば、各記録層の材料を変えることによって、各記録層それぞれの磁気共鳴周波数を変えることができる。
【0131】
実施形態に係る磁気ヘッド700及び800を用いて多層記録を行うには、実施形態に係る高周波磁界発生素子の電流i、i1及びi2に、記録を行う記録層の磁気共鳴周波数とほぼ等しい高周波信号を重畳する。これにより、高周波磁界発生素子から高周波磁界が発生する。
【0132】
この高周波磁界は、複数の記録層のうちの高周波磁界発生素子から発生する高周波磁界の周波数とほぼ等しい磁気共鳴周波数を有する記録層に対して作用する。これにより、複数の記録層のうち特定の記録層のみに書き込みが行われる。
【0133】
実施形態に係る磁気再生ヘッド900を用いた多層再生を行うには、多層記録と同様に読み出し対象の記録層に設定された磁気共鳴周波数とほぼ等しい高周波信号を電流i、i1及びi2に重畳する。これにより、複数の記録層のうち特定の記録層に書き込まれた情報のみを検出部902で取り出すことができる。
【0134】
(第9の実施形態)
図19は、第9の実施形態に係る磁気記録再生ヘッドの構成を例示する模式的斜視図である。
図19に表したように、本実施形態に係る磁気記録再生ヘッド52は、書き込みヘッド部60と再生ヘッド部70とを有している。
【0135】
書き込みヘッド部60は、主磁極61と、環流磁極62と、それらの間に設けられたスピントルク発振子10と、を有している。スピントルク発振子10には、上記説明した実施形態に係るいずれかの高周波磁界発生素子が適用される。
【0136】
再生ヘッド部70は、第1磁気シールド層72aと、第2磁気シールド層72bと、第1磁気シールド層72aと第2磁気シールド層72bとの間に設けられた磁気再生素子71と、を含む。
磁気再生素子71としては、上記説明した実施形態に係るいずれかの高周波磁界発生素子を利用することが可能である。なお、再生分解能をあげるために、磁気再生素子71は、2枚の磁気シールド層、すなわち、第1及び第2磁気シールド層72a、72bの間に設置される。
上記の再生ヘッド部70の各要素、及び、上記の書き込みヘッド部60の各要素は、図示しないアルミナ等の絶縁体により分離される。
【0137】
そして、図19に表したように、磁気記録再生ヘッド52の主磁極媒体対向面61sに対向して磁気記録媒体80が設置される。そして、主磁極61は、磁気記録媒体80に記録磁界(書き込み磁界)を印加する。なお、磁気記録再生ヘッド52の主磁極媒体対向面61sは、磁気記録再生ヘッド52に対して設置される磁気記録媒体80に対向した主磁極61の主面とすることができる。
【0138】
図19に表したように、磁気記録媒体80は、媒体基板82と、その上に設けられた磁気記録層81と、を有する。書き込みヘッド部60から印加される磁界により、磁気記録層81の磁化83が所定の方向に制御され、書き込みがなされる。なお、この時、磁気記録媒体80は、媒体移動方向85の方向に、磁気記録再生ヘッド52に対して相対的に移動する。
一方、再生ヘッド部70は、磁気記録層81の磁化の方向を読み取る。
【0139】
図19に表したように、スピントルク発振子10として上記説明した実施形態に係る高周波磁界発生素子が適用されるため、第1自由層101a及び第2自由層101bに電流を流すことで高周波磁界を発生させることができる。第1自由層101a及び第2自由層101bに流す電流の密度(駆動電流密度)は、所望の発振状態になるよう適宜調整される。
【0140】
主磁極61及び環流磁極62は、FeCo、CoFe、CoNiFe、NiFe、CoZrNb、FeN、FeSi、FeAlSi等の、比較的、飽和磁束密度の大きい軟磁性層で構成されている。
【0141】
また、主磁極61は、主磁極媒体対向面61sの側の部分と、それ以外の部分の材料を別々の材料としても良い。すなわち、例えば、磁気記録媒体80やスピントルク発振子10に発生する磁界を大きくするため、主磁極媒体対向面61sの側の部分の材料を、飽和磁束密度の特に大きいFeCo、CoNiFe、FeN等とし、それ以外の部分は、特に透磁率が高いNiFe等にしても良い。また、磁気記録媒体80やスピントルク発振子10に発生する磁界を大きくするため、主磁極61の主磁極媒体対向面61sの側の形状を、バックギャップ部より小さくしても良い。これにより、磁束が主磁極媒体対向面61sの側の部分に集中し、高強度の磁界を発生することが可能となる。
【0142】
主磁極61のコイル63には、Ti、Cuなどの電気抵抗が低く、酸化されにくい材料を用いることができる。
【0143】
このような構成を有する本実施形態に係る磁気記録再生ヘッド52によれば、低電流密度で安定して発振が可能であり、かつ、面内高周波磁界の強度の高いスピントルク発振子による安定した高周波磁界が得られ、高密度の磁気記録を実現できる磁気記録ヘッドが提供できる。
【0144】
(第10の実施形態)
図20は、第10の実施形態に係る磁気記録装置の構成を例示する模式的斜視図である。
図21(a)〜(b)は、第10の実施形態に係る磁気記録装置の一部の構成を例示する模式的斜視図である。
図20に表したように、実施形態に係る磁気記録装置150は、ロータリーアクチュエータを用いた形式の装置である。同図において、記録用媒体ディスク180は、スピンドルモータ4に装着され、図示しない駆動装置制御部からの制御信号に応答する図示しないモータにより矢印Aの方向に回転する。本実施形態に係る磁気記録装置150は、複数の記録用媒体ディスク180を備えたものとしても良い。
【0145】
記録用媒体ディスク180に格納する情報の記録再生を行うヘッドスライダ3は、薄膜状のサスペンション154の先端に取り付けられている。ここで、ヘッドスライダ3は、例えば、前述した実施形態に係る磁気記録再生ヘッド52をその先端付近に搭載している。
【0146】
磁気記録装置150には、磁気記録再生ヘッド52に適用される上記説明した実施形態に係る高周波磁界発生素子の第1自由層101a及び第2自由層101bに電流を与える電流供給部105が設けられる。
【0147】
記録用媒体ディスク180が回転すると、サスペンション154による押付け圧力とヘッドスライダ3の媒体対向面(ABS)で発生する圧力とがつりあい、ヘッドスライダ3の媒体対向面は、記録用媒体ディスク180の表面から所定の浮上量をもって保持される。なお、ヘッドスライダ3が記録用媒体ディスク180と接触するいわゆる「接触走行型」としても良い。
【0148】
サスペンション154は、図示しない駆動コイルを保持するボビン部などを有するアクチュエータアーム155の一端に接続されている。アクチュエータアーム155の他端には、リニアモータの一種であるボイスコイルモータ156が設けられている。ボイスコイルモータ156は、アクチュエータアーム155のボビン部に巻き上げられた図示しない駆動コイルと、このコイルを挟み込むように対向して配置された永久磁石及び対向ヨークからなる磁気回路とから構成することができる。
【0149】
アクチュエータアーム155は、軸受部157の上下2箇所に設けられた図示しないボールベアリングによって保持され、ボイスコイルモータ156により回転摺動が自在にできるようになっている。その結果、磁気記録ヘッドを記録用媒体ディスク180の任意の位置に移動可能となる。
【0150】
図21(a)は、本実施形態に係る磁気記録装置の一部の構成を例示しており、ヘッドスタックアセンブリ160の拡大斜視図である。また、図21(b)は、ヘッドスタックアセンブリ160の一部となる磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ:HGA)158を例示する斜視図である。
図21(a)に表したように、ヘッドスタックアセンブリ160は、軸受部157と、この軸受部157から延出したヘッドジンバルアセンブリ158と、軸受部157からHGAと反対方向に延出しているとともにボイスコイルモータのコイル162を支持した支持フレーム161を有している。
【0151】
また、図21(b)に表したように、ヘッドジンバルアセンブリ158は、軸受部157から延出したアクチュエータアーム155と、アクチュエータアーム155から延出したサスペンション154と、を有している。
【0152】
サスペンション154の先端には、既に説明した実施形態に係る磁気記録再生ヘッド52を具備するヘッドスライダ3が取り付けられている。
【0153】
すなわち、実施形態に係る磁気ヘッドアセンブリ(ヘッドジンバルアセンブリ)158は、実施形態に係る磁気記録ヘッドと、前記磁気記録ヘッドが搭載されたヘッドスライダ3と、前記ヘッドスライダ3を一端に搭載するサスペンション154と、前記サスペンション154の他端に接続されたアクチュエータアーム155と、を備える。
【0154】
サスペンション154は、信号の書き込み及び読み取り用、浮上量調整のためのヒーター用、スピントルク発振子用のリード線(図示しない)を有し、このリード線とヘッドスライダ3に組み込まれた磁気ヘッドの各電極とが電気的に接続される。また、図示しない電極パッドが、ヘッドジンバルアセンブリ158に設けられる。本具体例においては、電極パッドは8個設けられる。すなわち、主磁極61のコイル用の電極パッドが2つ、磁気再生素子71用の電極パッドが2つ、DFH(ダイナミックフライングハイト)用の電極パッドが2つ、スピントルク発振子10用の電極パッドが2つ、設けられる。
【0155】
そして、磁気記録ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う、信号処理部190が設けられる。信号処理部190は、例えば、図23に例示した磁気記録装置150の図面中の背面側に設けられる。信号処理部190の入出力線は、ヘッドジンバルアセンブリ158の電極パッドに接続され、磁気記録ヘッドと電気的に結合される。
【0156】
このように、実施形態に係る磁気記録装置150は、磁気記録媒体(記録用媒体ディスク180)と、上記のヘッドスタックアセンブリ160と、前記ヘッドスタックアセンブリ160に搭載された磁気ヘッドを用いて磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しを行う信号処理部190と、前記磁気ヘッドの前記第1自由層101a及び前記第2自由層101bに電流を与える電流供給部105と、を備える。電流供給部105として、第1電流印加機構105a及び第2電流印加機構105bが用いられる。
【0157】
本実施形態に係る磁気記録装置150によれば、上記の実施形態のスピントルク発振子及び上記の実施形態に係る磁気記録ヘッドを用いることで、低電流密度で安定して発振が可能であり、かつ、面内高周波磁界の強度の高いスピントルク発振子による安定した高周波磁界が得られ、高密度の磁気記録を実現できる磁気記録装置が提供できる。
【0158】
以上説明したように、実施形態に係る高周波磁界発生素子、磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置によれば、記録密度の向上を図ることができる。
【0159】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、高周波磁界発生素子、磁気ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置に含まれる各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0160】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての高周波磁界発生素子、磁気記録ヘッド、磁気ヘッドアセンブリ及び磁気記録装置も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0161】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0162】
101a…第1自由層、101b…第2自由層、102a…第1中間層、102b…第2中間層、102c…第3中間層、102d…第4中間層、103a…第1固定層、103b…第2固定層、103c…第3固定層、104a…第1導電部、104b…第2導電部、104c…第3導電部、105…電流供給部、105a…第1電流印加機構、105b…第2電流印加機構、150…磁気記録装置、190…信号処理部、501…記録媒体、603…高周波伝送線路、604…高周波電源、605…高周波磁界、700…磁気ヘッド、701,702…主磁極、701a…第1面、701b…第2面、702…主磁極コイル、703…書き込み磁界、704a,704b…リターンパス、705a,705b…中間層、706…媒体磁化、707a,707b…リターンパスコイル、801〜806…磁気ヘッド、900…磁気再生ヘッド、901a…高周波分離回路、901b…高周波分離回路、902…検出部、RT1,RT2,RT3…回転方向、SB1…第1積層体、SB2…第2構造体、STO1〜STO6…高周波磁界発生素子、i,i1,i2…電流、mg11,mg12,mg21,mg22…磁化
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁化の方向が固定であって前記磁化の方向に第1方向と平行な成分が含まれる第1固定層と、
前記第1固定層と積層され、磁化の方向が可変であって前記磁化の方向に前記第1方向と直交する成分が含まれる第1自由層と、
前記第1固定層と積層され、磁化の方向が可変であって前記磁化の方向に前記第1方向と直交する成分が含まれる第2自由層と、
を備え、
前記第1固定層は、前記第1自由層と前記第2自由層との間に設けられ、
前記第1方向は、前記第1固定層、前記第1自由層及び前記第2自由層の積層の方向に対して平行であり、
前記第1自由層、前記第2自由層及び前記第1固定層に流れる電流により、前記第1自由層の前記磁化及び前記第2自由層の前記磁化が発振し、前記第1自由層の前記発振における前記磁化の回転方向は、前記第2自由層の前記発振における前記磁化の回転方向に対して逆である高周波磁界発生素子。
【請求項2】
前記第1自由層の前記磁化及び前記第2自由層の前記磁化は、前記電流に重畳された高周波信号に同期して発振する請求項1記載の高周波磁界発生素子。
【請求項3】
前記第1自由層の前記磁化及び前記第2自由層の前記磁化は、前記電流による相互作用、スピン流を介した相互作用及びダイポール相互作用の少なくとも1つにより同期して回転する請求項1記載の高周波磁界発生素子。
【請求項4】
前記第1自由層の前記磁化及び前記第2自由層の前記磁化は、外部から印加される高周波磁界の周波数に同期して回転する請求項1記載の高周波磁界発生素子。
【請求項5】
磁化の方向が固定であって前記磁化の方向に第1方向と平行な成分が含まれる第1固定層と、
前記第1固定層と積層され、磁化の方向が可変であって前記磁化の方向に前記第1方向と直交する成分が含まれる第1自由層と、
磁化の方向が固定であって前記磁化の方向に前記第1方向と平行な成分が含まれる第2固定層と、
前記第2固定層と積層され、磁化の方向が可変であって前記磁化の方向に前記第1方向と直交する成分が含まれる第2自由層と、
を備え、
前記第1方向は、前記第1固定層、前記第1自由層及び前記第2自由層の積層の方向に対して平行であり、
前記第1固定層及び前記第1自由層に流れる電流により、前記第1自由層の前記磁化は発振し、
前記第2固定層及び前記第2自由層に流れる電流により、前記第2自由層の前記磁化は発振し、
前記第1自由層の前記発振における前記磁化の回転方向は、前記第2自由層の前記発振における前記磁化の回転方向に対して逆である高周波磁界発生素子。
【請求項6】
前記第1自由層の前記磁化及び前記第2自由層の前記磁化は、前記第1自由層に流れる前記電流及び前記第2自由層に流れる前記電流にそれぞれ重畳された高周波信号に同期して発振する請求項5記載の高周波磁界発生素子。
【請求項7】
前記第1自由層の前記磁化及び前記第2自由層の前記磁化は、前記第1自由層に流れる前記電流及び前記第2自由層に流れる前記電流による相互作用、スピン流を介した相互作用及びダイポール相互作用の少なくとも1つにより同期して回転する請求項5記載の高周波磁界発生素子。
【請求項8】
前記第1自由層の前記磁化及び前記第2自由層の前記磁化は、外部から印加される高周波磁界の周波数に同期して回転する請求項5記載の高周波磁界発生素子。
【請求項9】
前記発振により回転する前記第1自由層の磁化の方向及び前記発振により回転する前記第2自由層の磁化の方向が磁気記録媒体の記録面に平行のとき、前記第1自由層の磁化の方向と前記第2自由層の磁化の方向とは互いに同じになり、前記発振により回転する前記第1自由層の磁化の方向及び前記発振により回転する前記第2自由層の磁化の方向が前記記録面に垂直のとき、前記第1自由層の磁化の方向と前記第2自由層の磁化の方向とは互いに逆になる請求項1〜8のいずれか1つに記載の高周波磁界発生素子。
【請求項10】
前記第1自由層と前記第2自由層との間に設けられた導電部をさらに備え、
前記第1自由層は、前記導電部と前記第1固定層との間に設けられ、
前記第2自由層は、前記導電部と前記第2固定層との間に設けられた請求項5〜8のいずれか1つに記載の高周波磁界発生素子。
【請求項11】
前記第1固定層と前記第2固定層との間に設けられた導電部をさらに備え、
前記第1固定層は、前記導電部と前記第1自由層との間に設けられ、
前記第2固定層は、前記導電部と前記第2自由層との間に設けられた請求項5〜8のいずれか1つに記載の高周波磁界発生素子。
【請求項12】
主磁極と、
前記主磁極に記録磁界を発生させる記録用コイル、
前記主磁極と共に配置された請求項1〜9のいずれか1つに記載の高周波磁界発生素子と、
を備えた磁気ヘッド。
【請求項13】
前記主磁極と対向するリターンパスをさらに備え、
前記高周波磁界発生素子の少なくとも一部が、前記主磁極と前記リターンパスとの間に配置された請求項12記載の磁気ヘッド。
【請求項14】
前記高周波磁界発生素子は、前記第1自由層と前記第2自由層との間に設けられた導電部をさらに有し、
前記第1自由層は、前記導電部と前記第1固定層との間に設けられ、
前記第2自由層は、前記導電部と前記第2固定層との間に設けられており、
前記主磁極は、前記導電部と電気的に接続されている請求項12または13に記載の磁気ヘッド。
【請求項15】
前記高周波磁界発生素子は、前記第1固定層と前記第2固定層との間に設けられた導電部をさらに有し、
前記第1固定層は、前記導電部と前記第1自由層との間に設けられ、
前記第2固定層は、前記導電部と前記第2自由層との間に設けられており、
前記主磁極は、前記導電部と電気的に接続されている請求項12または13に記載の磁気ヘッド。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の高周波磁界発生素子と、
前記高周波磁界発生素子に流れる電流から高周波成分を検出する検出部と、
を備えた磁気ヘッド。
【請求項17】
請求項12〜15のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドが搭載されたヘッドスライダと、
前記ヘッドスライダを一端に搭載するサスペンションと、
前記サスペンションの他端に接続されたアクチュエータアームと、
を備えた磁気ヘッドアセンブリ。
【請求項18】
磁気記録媒体と、
請求項17記載の磁気ヘッドアセンブリと、
前記磁気ヘッドアセンブリに搭載された前記磁気ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しとの少なくともいずれかを行う信号処理部と、
前記第1自由層及び前記第2自由層に電流を与える電流供給部と、
を備えたことを特徴とする磁気記録装置。
【請求項1】
磁化の方向が固定であって前記磁化の方向に第1方向と平行な成分が含まれる第1固定層と、
前記第1固定層と積層され、磁化の方向が可変であって前記磁化の方向に前記第1方向と直交する成分が含まれる第1自由層と、
前記第1固定層と積層され、磁化の方向が可変であって前記磁化の方向に前記第1方向と直交する成分が含まれる第2自由層と、
を備え、
前記第1固定層は、前記第1自由層と前記第2自由層との間に設けられ、
前記第1方向は、前記第1固定層、前記第1自由層及び前記第2自由層の積層の方向に対して平行であり、
前記第1自由層、前記第2自由層及び前記第1固定層に流れる電流により、前記第1自由層の前記磁化及び前記第2自由層の前記磁化が発振し、前記第1自由層の前記発振における前記磁化の回転方向は、前記第2自由層の前記発振における前記磁化の回転方向に対して逆である高周波磁界発生素子。
【請求項2】
前記第1自由層の前記磁化及び前記第2自由層の前記磁化は、前記電流に重畳された高周波信号に同期して発振する請求項1記載の高周波磁界発生素子。
【請求項3】
前記第1自由層の前記磁化及び前記第2自由層の前記磁化は、前記電流による相互作用、スピン流を介した相互作用及びダイポール相互作用の少なくとも1つにより同期して回転する請求項1記載の高周波磁界発生素子。
【請求項4】
前記第1自由層の前記磁化及び前記第2自由層の前記磁化は、外部から印加される高周波磁界の周波数に同期して回転する請求項1記載の高周波磁界発生素子。
【請求項5】
磁化の方向が固定であって前記磁化の方向に第1方向と平行な成分が含まれる第1固定層と、
前記第1固定層と積層され、磁化の方向が可変であって前記磁化の方向に前記第1方向と直交する成分が含まれる第1自由層と、
磁化の方向が固定であって前記磁化の方向に前記第1方向と平行な成分が含まれる第2固定層と、
前記第2固定層と積層され、磁化の方向が可変であって前記磁化の方向に前記第1方向と直交する成分が含まれる第2自由層と、
を備え、
前記第1方向は、前記第1固定層、前記第1自由層及び前記第2自由層の積層の方向に対して平行であり、
前記第1固定層及び前記第1自由層に流れる電流により、前記第1自由層の前記磁化は発振し、
前記第2固定層及び前記第2自由層に流れる電流により、前記第2自由層の前記磁化は発振し、
前記第1自由層の前記発振における前記磁化の回転方向は、前記第2自由層の前記発振における前記磁化の回転方向に対して逆である高周波磁界発生素子。
【請求項6】
前記第1自由層の前記磁化及び前記第2自由層の前記磁化は、前記第1自由層に流れる前記電流及び前記第2自由層に流れる前記電流にそれぞれ重畳された高周波信号に同期して発振する請求項5記載の高周波磁界発生素子。
【請求項7】
前記第1自由層の前記磁化及び前記第2自由層の前記磁化は、前記第1自由層に流れる前記電流及び前記第2自由層に流れる前記電流による相互作用、スピン流を介した相互作用及びダイポール相互作用の少なくとも1つにより同期して回転する請求項5記載の高周波磁界発生素子。
【請求項8】
前記第1自由層の前記磁化及び前記第2自由層の前記磁化は、外部から印加される高周波磁界の周波数に同期して回転する請求項5記載の高周波磁界発生素子。
【請求項9】
前記発振により回転する前記第1自由層の磁化の方向及び前記発振により回転する前記第2自由層の磁化の方向が磁気記録媒体の記録面に平行のとき、前記第1自由層の磁化の方向と前記第2自由層の磁化の方向とは互いに同じになり、前記発振により回転する前記第1自由層の磁化の方向及び前記発振により回転する前記第2自由層の磁化の方向が前記記録面に垂直のとき、前記第1自由層の磁化の方向と前記第2自由層の磁化の方向とは互いに逆になる請求項1〜8のいずれか1つに記載の高周波磁界発生素子。
【請求項10】
前記第1自由層と前記第2自由層との間に設けられた導電部をさらに備え、
前記第1自由層は、前記導電部と前記第1固定層との間に設けられ、
前記第2自由層は、前記導電部と前記第2固定層との間に設けられた請求項5〜8のいずれか1つに記載の高周波磁界発生素子。
【請求項11】
前記第1固定層と前記第2固定層との間に設けられた導電部をさらに備え、
前記第1固定層は、前記導電部と前記第1自由層との間に設けられ、
前記第2固定層は、前記導電部と前記第2自由層との間に設けられた請求項5〜8のいずれか1つに記載の高周波磁界発生素子。
【請求項12】
主磁極と、
前記主磁極に記録磁界を発生させる記録用コイル、
前記主磁極と共に配置された請求項1〜9のいずれか1つに記載の高周波磁界発生素子と、
を備えた磁気ヘッド。
【請求項13】
前記主磁極と対向するリターンパスをさらに備え、
前記高周波磁界発生素子の少なくとも一部が、前記主磁極と前記リターンパスとの間に配置された請求項12記載の磁気ヘッド。
【請求項14】
前記高周波磁界発生素子は、前記第1自由層と前記第2自由層との間に設けられた導電部をさらに有し、
前記第1自由層は、前記導電部と前記第1固定層との間に設けられ、
前記第2自由層は、前記導電部と前記第2固定層との間に設けられており、
前記主磁極は、前記導電部と電気的に接続されている請求項12または13に記載の磁気ヘッド。
【請求項15】
前記高周波磁界発生素子は、前記第1固定層と前記第2固定層との間に設けられた導電部をさらに有し、
前記第1固定層は、前記導電部と前記第1自由層との間に設けられ、
前記第2固定層は、前記導電部と前記第2自由層との間に設けられており、
前記主磁極は、前記導電部と電気的に接続されている請求項12または13に記載の磁気ヘッド。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の高周波磁界発生素子と、
前記高周波磁界発生素子に流れる電流から高周波成分を検出する検出部と、
を備えた磁気ヘッド。
【請求項17】
請求項12〜15のいずれか1つに記載の磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドが搭載されたヘッドスライダと、
前記ヘッドスライダを一端に搭載するサスペンションと、
前記サスペンションの他端に接続されたアクチュエータアームと、
を備えた磁気ヘッドアセンブリ。
【請求項18】
磁気記録媒体と、
請求項17記載の磁気ヘッドアセンブリと、
前記磁気ヘッドアセンブリに搭載された前記磁気ヘッドを用いて前記磁気記録媒体への信号の書き込みと読み出しとの少なくともいずれかを行う信号処理部と、
前記第1自由層及び前記第2自由層に電流を与える電流供給部と、
を備えたことを特徴とする磁気記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2013−105517(P2013−105517A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251144(P2011−251144)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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