説明

高周波送受信器およびそれを具備するレーダ装置ならびにそれを搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶

【課題】 中間周波信号を遮断するスイッチを備えたパルス変調方式の高周波送受信器において、スイッチの出力の直流レベルを安定にすること。
【解決手段】 パルス変調方式の高周波送受信器において、ミキサー6の出力端6aに接続された、中間周波信号を後段に出力する第1の系統S1および中間周波信号を終端する終端回路としての抵抗11が接続された第2の系統S2に交互に切り替えるスイッチ7と、ミキサー6の出力端6aとスイッチ7の入力端7aとの間に直列に接続された交流結合コンデンサ12とを備えている高周波送受信器である。交流結合コンデンサ12が、ミキサー6の出力の直流成分を遮断し、スイッチ7の入力端7aの直流レベルを安定にするため、スイッチ7の第1の系統S1への出力の直流レベルを安定にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波レーダモジュールやミリ波無線通信機等に使用される高周波送受信器に関するものであり、パルス変調された送信用の高周波信号が内部の反射等により受信系に出力されるのを遮断できるスイッチを有し、このスイッチの出力の直流レベルを安定にすることができ、受信性能を高くすることができる高周波送受信器およびそれを具備するレーダ装置ならびにそれを搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ミリ波レーダモジュールやミリ波無線通信機等への応用が期待される高周波送受信器の方式として、例えば、特許文献1に開示されているようなパルス変調方式が提案されている。
【0003】
しかしながら、パルス変調方式では、パルス変調された送信用の高周波信号の一部が高周波送受信器の内部の反射等により受信系に不要な信号として出力され、これが受信性能に悪影響を及ぼすという問題点があった。
【0004】
本発明者らは既にこの問題点に対する解決策を提案している(特願2004−121920号を参照。)。その構成の例を図10にブロック回路図で示す。
【0005】
図10に示す例の高周波送受信器は、送信アンテナと受信アンテナとが一体化されたものの例であり、高周波信号を発生させる高周波発振器61と、この高周波発振器61の出力端側に接続された、その高周波信号を分岐して一方の出力端62bと他方の出力端62cとに出力する分岐器62と、分岐器62の一方の出力端62b側に接続された、その高周波信号の一部をパルス変調し、送信用高周波信号として出力するパルス変調器63と、第1,第2および第3の端子64a,64b,64cを有し、パルス変調器63の出力端63aに第1の端子64aが接続された、第1の端子64aから入力された高周波信号を第2の端子64bに出力し、第2の端子64bから入力された高周波信号を第3の端子64cに出力するサーキュレータ64と、サーキュレータ64の第2の端子64bに接続された送受信アンテナ65と、分岐器62の他方の出力端62cとサーキュレータ64の第3の端子64cとの間に接続された、分岐器62の他方の出力端62cに出力されたローカル信号LOとしての高周波信号と送受信アンテナ65で受信した高周波信号RFとを混合して中間周波信号を出力するミキサー66とを備えており、このミキサーの出力端に、その中間周波信号を後段に出力する第1の系統S1と、その中間周波信号を終端する抵抗68が接続された第2の系統S2とに交互に切り替えるスイッチ67を設けたようなものである。
【0006】
図10に示す例の高周波送受信器は、スイッチ67がミキサー66の出力端にパルス変調された送信用高周波信号がパルス変調器63から出力されたときに出力端を開状態にするという動作をすることにより、パルス変調器63のパルス化動作を開始するためのパルス化信号がパルス変調器63に入力されるのとほとんど同時に、不要な信号がミキサー66よりも後段の受信系に出力されるのを防ぐことができるといったものであり、また、そのような動作をする際、スイッチ67の第2の系統S2に接続された抵抗68が、開状態のスイッチ67に入力される不要な信号を終端する働きをするため、その不要な信号の交流成分がミキサー66とスイッチ67との間で反射して、それがスイッチ67から出力されることが抑制されるので、その不要な信号の交流成分が混入することにより、スイッチ67から出力される本来受信すべき中間周波信号の波形が崩れてしまうことが抑制されるといったものである。
【特許文献1】特開2000−258525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特願2004−121920号において提案した構成においても、本発明者らがさらに高周波送受信器の性能を高めるべく鋭意検討を重ねた結果、次に述べるようなさらに改善が望まれる問題点を見いだした。
【0008】
すなわち、スイッチ67が第2の系統S2側に閉じているときにはミキサー66の出力の直流成分による電流が抵抗68に流れ、スイッチ67が第1の系統S1側に閉じているときにはそのような電流が抵抗68に流れないために、スイッチ67の開閉によりスイッチ67の入力側の直流レベルが変動して、その結果、スイッチ67の第1の系統S1側の出力の直流レベルを変動させるために受信性能を悪化させてしまうことがあるという問題点があった。
【0009】
本発明は以上のような改善が望まれる問題点を解決すべく案出されたものであり、その目的は、パルス変調された送信用の高周波信号が内部の反射等により受信系に出力されるのを遮断できるスイッチを有しており、このスイッチの出力の直流レベルを安定にすることができ、受信性能を高くすることができる高周波送受信器を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、上記本発明の高周波送受信器を用いた高性能なレーダ装置ならびにそれを搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の高周波送受信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、該高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、該一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する変調器と、磁性体の周囲に第1の端子,第2の端子および第3の端子を有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、前記変調器の出力が前記第1の端子に入力されるサーキュレータと、該サーキュレータの前記第2の端子に接続された送受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記サーキュレータの前記第3の端子との間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、該ミキサーの出力端に接続された、前記中間周波信号を後段に出力する第1の系統および前記中間周波信号を終端する終端回路が接続された第2の系統に交互に切り替えるスイッチと、前記ミキサーの前記出力端と前記スイッチの入力端との間に直列に接続されたコンデンサとを具備することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の第2の高周波送受信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、該高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、該一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する変調器と、該変調器の出力端に一端が接続された、該一端側から他端側へ前記送信用高周波信号を通過させるアイソレータと、該アイソレータに接続された送信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、該ミキサーの出力端に接続された、前記中間周波信号を後段に出力する第1の系統および前記中間周波信号を終端する終端回路が接続された第2の系統に交互に切り替えるスイッチと、前記ミキサーの前記出力端と前記スイッチの入力端との間に直列に接続されたコンデンサとを具備することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の第1または第2の高周波送受信器は、上記構成において、前記終端回路に直流電圧が印加されることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第3の高周波送受信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、該高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、該一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する変調器と、磁性体の周囲に第1の端子,第2の端子および第3の端子を有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、前記変調器の出力が前記第1の端子に入力されるサーキュレータと、該サーキュレータの前記第2の端子に接続された送受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記サーキュレータの前記第3の端子との間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、該ミキサーの出力端に接続された、前記中間周波信号を後段に出力する第1の系統および前記中間周波信号の直流成分を遮断し交流成分を終端する第2の系統に交互に切り替えるスイッチとを具備することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の第4の高周波送受信器は、高周波信号を発生する高周波発振器と、該高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、該一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する変調器と、該変調器の出力端に一端が接続された、該一端側から他端側へ前記送信用高周波信号を通過させるアイソレータと、該アイソレータに接続された送信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、該ミキサーの出力端に接続された、前記中間周波信号を後段に出力する第1の系統および前記中間周波信号の直流成分を遮断し交流成分を終端する第2の系統に交互に切り替えるスイッチとを具備することを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の第3または第4の高周波送受信器は、上記構成において、前記第2の系統は、直列に接続されたコンデンサおよび抵抗を有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明のレーダ装置は、上記本発明の第1乃至第4のいずれかの高周波送受信器と、この高周波送受信器から出力される前記中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを具備することを特徴とするものである。
【0018】
本発明のレーダ装置搭載車両は、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることを特徴とするものである。
【0019】
本発明のレーダ装置搭載船舶は、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の第1の高周波送受信器によれば、高周波信号を発生する高周波発振器と、該高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、該一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する変調器と、磁性体の周囲に第1の端子,第2の端子および第3の端子を有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、前記変調器の出力が前記第1の端子に入力されるサーキュレータと、該サーキュレータの前記第2の端子に接続された送受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記サーキュレータの前記第3の端子との間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、該ミキサーの出力端に接続された、前記中間周波信号を後段に出力する第1の系統および前記中間周波信号を終端する終端回路が接続された第2の系統に交互に切り替えるスイッチと、前記ミキサーの前記出力端と前記スイッチの入力端との間に直列に接続されたコンデンサとを具備することから、コンデンサが、ミキサーの出力の直流成分を遮断し、スイッチが第1および第2の系統に交互に切り替わってもスイッチの入力端の直流レベルを安定にする働きをするため、スイッチの出力の直流レベルを安定にすることができ、本来受信すべき中間周波信号によるもの以外の信号レベルを安定にすることができるので、受信性能を高くすることができる高周波送受信器となる。
【0021】
また、本発明の第2の高周波送受信器によれば、高周波信号を発生する高周波発振器と、該高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、該一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する変調器と、該変調器の出力端に一端が接続された、該一端側から他端側へ前記送信用高周波信号を通過させるアイソレータと、該アイソレータに接続された送信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、該ミキサーの出力端に接続された、前記中間周波信号を後段に出力する第1の系統および前記中間周波信号を終端する終端回路が接続された第2の系統に交互に切り替えるスイッチと、前記ミキサーの前記出力端と前記スイッチの入力端との間に直列に接続されたコンデンサとを具備することから、送受別体のアンテナを用いた高周波送受信器においても、コンデンサが、ミキサーの出力の直流成分を遮断し、スイッチが第1および第2の系統に交互に切り替わってもスイッチの入力端の直流レベルを安定にする働きをするため、スイッチの出力の直流レベルを安定にすることができ、本来受信すべき中間周波信号によるもの以外の信号レベルを安定にすることができるので、受信性能を高くすることができる高周波送受信器となる。
【0022】
また、本発明の第3または第4の高周波送受信器によれば、前記終端回路に直流電圧が印加されるときには、例えば変調器に入力されるパルス変調信号のパルス幅とパルス繰り返し周期との比が50%でなかったとしても、終端回路に印加された直流電圧が、その直流電圧の大きさがスイッチの入力端における直流レベルと同じになるように設定されることにより、その直流レベルによる電流が終端回路に流れることを抑制してスイッチの入力端の直流レベルを安定にする働きをするため、そのようなパルス変調信号を用いたときでもスイッチの第1の系統側の出力の直流レベルを安定にすることができ、本来受信すべき中間周波信号によるもの以外の信号レベルを安定にすることができるので、そのようなパルス変調信号を用いたときでも受信性能を高くすることができる高周波送受信器となる。
【0023】
本発明の第3の高周波送受信器によれば、高周波信号を発生する高周波発振器と、該高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、該一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する変調器と、磁性体の周囲に第1の端子,第2の端子および第3の端子を有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、前記変調器の出力が前記第1の端子に入力されるサーキュレータと、該サーキュレータの前記第2の端子に接続された送受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記サーキュレータの前記第3の端子との間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、該ミキサーの出力端に接続された、前記中間周波信号を後段に出力する第1の系統および前記中間周波信号の直流成分を遮断し交流成分を終端する第2の系統に交互に切り替えるスイッチとを具備することから、スイッチの第2の系統が、ミキサーの出力の直流成分を遮断し、スイッチが第1および第2の系統に交互に切り替わってもスイッチの入力端の直流レベルを安定にする働きをするため、スイッチの第1の系統への出力の直流レベルを安定にすることができ、本来受信すべき中間周波信号によるもの以外の信号レベルを安定にすることができるので、受信性能を高くすることができる高周波送受信器となる。
【0024】
本発明の第4の高周波送受信器によれば、高周波信号を発生する高周波発振器と、該高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、該一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する変調器と、該変調器の出力端に一端が接続された、該一端側から他端側へ前記送信用高周波信号を通過させるアイソレータと、該アイソレータに接続された送信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、該ミキサーの出力端に接続された、前記中間周波信号を後段に出力する第1の系統および前記中間周波信号の直流成分を遮断し交流成分を終端する第2の系統に交互に切り替えるスイッチとを具備することから、送受別体のアンテナを用いた高周波送受信器においても、スイッチの第2の系統が、ミキサーの出力の直流成分を遮断し、スイッチが第1および第2の系統に交互に切り替わってもスイッチの入力端の直流レベルを安定にする働きをするため、スイッチの第1の系統への出力の直流レベルを安定にすることができ、本来受信すべき中間周波信号によるもの以外の信号レベルを安定にすることができるので、受信性能を高くすることができる高周波送受信器となる。
【0025】
また、本発明の第3または第4の高周波送受信器によれば、前記スイッチの第2の系統は、直列に接続されたコンデンサおよび抵抗を有するときには、コンデンサがミキサーの出力の直流成分を遮断するとともに抵抗がその交流成分を抵抗終端する働きをするため、スイッチが第1および第2の系統に交互に切り替わってもスイッチの入力端の直流レベルをより安定にする働きをするため、スイッチの第1の系統への出力の直流レベルを安定にすることができ、本来受信すべき中間周波信号によるもの以外の信号レベルをさらに安定にすることができるので、さらに受信性能を高くすることができる高周波送受信器となる。
【0026】
本発明のレーダ装置によれば、上記本発明の第1乃至第5のいずれかの高周波送受信器と、この高周波送受信器から出力される前記中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを具備することから、高周波送受信器の受信性能が高いため、早く確実に探知対象物を探知することができるとともに至近距離や遠方の探知対象物をも探知することができるレーダ装置となる。
【0027】
また、本発明のレーダ装置搭載車両によれば、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることから、レーダ装置が早く確実に探知対象物である他の車両を探知するため、急激な挙動を車両に起こさせることなく、車両の適切な制御や運転者への適切な警告をすることができるレーダ装置搭載車両となる。
【0028】
また、本発明のレーダ装置搭載船舶によれば、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることから、レーダ装置が早く確実に探知対象物である他の小型船舶を探知するため、急激な挙動を小型船舶に起こさせることなく、小型船舶の適切な制御や操縦者への適切な警告をすることができるレーダ装置搭載小型船舶となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
はじめに、本発明の第1〜第4の高周波送受信器およびそれらを用いたレーダ装置について、図面を参照しつつ以下に詳細に説明する。
【0030】
図1〜図4はそれぞれ本発明の第1〜第4の高周波送受信器の実施の形態の一例を模式的に示すブロック回路図である。また、図5は非放射性誘電体線路の基本的な構成を示す部分破断斜視図である。また、図6は図1および図3に示す高周波送受信器の高周波伝送部の構成を模式的に示す平面図である。また、図7は図2および図4に示す高周波送受信器の高周波伝送部の構成を模式的に示す平面図である。また、図8は図6および図7に示す高周波送受信器の高周波伝送部における半導体素子を実装する基板の例を示す模式的な平面図である。また、図9は高周波送受信器の中間周波信号出力の測定結果の例を示す図であり、(a)は本発明の第3の高周波送受信器の実施例についての中間周波信号出力電圧波形の測定結果の一例を示す線図、(b)はその比較用としての高周波送受信器の中間周波信号出力電圧波形の測定結果の一例を示す線図である。
【0031】
図1〜図4において、1は高周波発振器、2は分岐器、3は変調器、4はサーキュレータ、5は送受信アンテナ、6はミキサー、7はスイッチ、8はアイソレータ、9は送信アンテナ、10は受信アンテナ、11は終端回路としての抵抗、12は交流結合コンデンサ、13は直流電圧源、14はチョークインダクタ、15はテブナン終端用の抵抗、16は交流結合コンデンサ、17は増幅器、18はコンデンサ、19は抵抗である。また、2aは入力端、2bは一方の出力端、2cは他方の出力端、3a,8aは入力端、3b,8bは出力端、4aは第1の端子、4bは第2の端子、4cは第3の端子である。
【0032】
図5において、51,52は平板導体、53は誘電体線路である。また、図6〜図8において、1は高周波発振器、2は分岐器、3は変調器、4はサーキュレータ、5は送受信アンテナ、6はミキサー、8はアイソレータ、9は送信アンテナ、10は受信アンテナ、21,31は平板導体、22,32は第1の誘電体線路、23,33は第2の誘電体線路、24,34は磁性体としてのフェライト板、25,35は第3の誘電体線路、26,36は第4の誘電体線路、27,37は第5の誘電体線路、28,38a,38bは無反射終端器、39は第6の誘電体線路、40は基板、43は高周波検波用素子、3aは入力端、3bは出力端、24a,34aは第1の端子、24b,34bは第2の端子、24c,34cは第3の端子である。なお、図6および図7において、上側の平板導体は図示していない。
【0033】
本発明の第1の高周波送受信器の実施の形態の一例は、図1に示すように、高周波信号を発生する高周波発振器1と、この高周波発振器1に接続された、その高周波信号を分岐して一方の出力端2bと他方の出力端2cとに出力する分岐器2と、一方の出力端2bに接続された、この一方の出力端2bに分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する変調器3と、磁性体の周囲に第1の端子4a,第2の端子4bおよび第3の端子4cを有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、変調器3の出力が第1の端子4aに入力されるサーキュレータ4と、このサーキュレータ4の第2の端子4bに接続された送受信アンテナ5と、分岐器2の他方の出力端2cとサーキュレータ4の第3の端子4cとの間に接続された、他方の出力端2cに分岐された高周波信号と送受信アンテナ5で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー6と、このミキサー6の出力端6aに接続された、中間周波信号を後段に出力する第1の系統S1および中間周波信号を終端する終端回路としての抵抗11が接続された第2の系統S2に交互に切り替えるスイッチ7と、ミキサー6の出力端6aとスイッチ7の入力端7aとの間に直列に接続された交流結合コンデンサ12とを備えている構成である。
【0034】
また、本発明の第2の高周波送受信器の実施の形態の一例は、図2に示すように、高周波信号を発生する高周波発振器1と、この高周波発振器1に接続された、高周波信号を分岐して一方の出力端2bと他方の出力端2cとに出力する分岐器2と、一方の出力端2bに接続された、この一方の出力端2bに分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する変調器3と、この変調器3の出力端3bに一端8aが接続された、この一端8a側から他端8b側へ送信用高周波信号を通過させるアイソレータ8と、このアイソレータ8に接続された送信アンテナ9と、分岐器2の他方の出力端2c側に接続された受信アンテナ10と、分岐器2の他方の出力端2cと受信アンテナ10との間に接続された、他方の出力端2cに分岐された高周波信号と受信アンテナ10で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー6と、このミキサー6の出力端6aに接続された、中間周波信号を後段に出力する第1の系統S1および中間周波信号を終端する終端回路としての抵抗11が接続された第2の系統S2に交互に切り替えるスイッチ7と、ミキサー6の出力端6aとスイッチ7の入力端7aとの間に直列に接続された交流結合コンデンサ12とを備えている構成である。
【0035】
上記構成において、スイッチ7および抵抗11は、パルス化された送信用高周波信号の送信前後で、その送信用高周波信号の出力状態が不安定な時には第2の系統S2側に閉状態となって中間周波信号を抵抗11で終端し、その出力状態が安定してから第1の系統S1側に閉状態となって中間周波信号を後段の受信回路へ通過させるように動作する。また、交流結合コンデンサ12は、ミキサー6の出力端6aとスイッチ7の入力端7aとを交流結合するためのものであり、これにより、スイッチ7の入力端7aにおける直流レベルを、ミキサー6の出力端6aの直流レベルとは独立に一定にする働きをする。具体的にスイッチ7としては、SPDT(Single Port Double Throw;シングル・ポート・ダブル・スロウ)と呼ばれる単極二系統のスイッチである例えばCMOSやGaAs等の半導体スイッチを用いればよい。また、スイッチ7として、アナログIC、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)、メカニカルスイッチまたはMEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ)スイッチ等を用いても構わない。
【0036】
図1および図2に示す本発明の高周波送受信器の実施の形態の例は、上記のようなスイッチ7、抵抗11および交流結合コンデンサ12の働きにより、図10に示す高周波送受信器と同様にパルス変調器3から出力された送信用高周波信号の一部がサーキュレータ4の第1の端子4aおよび第3の端子4cから漏洩し、その漏洩した高周波信号に対応するミキサー6から出力される不要な信号を遮断して、その遮断した不要な信号を適切に終端させることができる。しかしながら、本発明の高周波送受信器においては、ミキサー6の出力端6aとスイッチ7の入力端7aとの間に接続された交流結合コンデンサ12により、スイッチ7が第1および第2の系統S1,S2に交互に切り替わってもスイッチ7の入力端7aの直流レベルを安定にすることができるため、スイッチ7の第1の系統S1側の出力端の直流レベルを安定にすることができ、本来受信すべき中間周波信号によるもの以外の信号レベルを安定にすることができるので、受信性能を高くすることができる。
【0037】
また、本発明の第1および第2の高周波送受信器の実施の形態の例は、それぞれ図1および図2に示すように、好ましい構成として、終端回路としての抵抗11に直流電圧を印加する直流電圧源13を、チョークインダクタ14および抵抗15を介して接続している。
【0038】
この構成において、抵抗11に近い側から順にチョークインダクタ14,抵抗15,直流電圧源13を接続すればよい。このようにすれば、チョークインダクタ14を境に、抵抗11側の直流および交流の回路と、抵抗15側の直流のみの回路とに分離することができ、スイッチ7の入力端7aの直流レベルを抵抗11および抵抗15の抵抗値の比で制御することができるとともに、第2の系統S2側に入力される信号の交流成分を抵抗11で終端することができる。
【0039】
このような終端方法は、例えば変調器3に入力されるパルス変調信号のパルス幅とパルス繰り返し周期との比が50%でないようなときに特に有効である。すなわち、そのようなパルス変調信号を用いるときには、交流結合用コンデンサ12から出力される信号の直流レベルがゼロ(0)とはならないから、スイッチ7を第2の系統S2側に閉じたときに抵抗11にその直流レベルに応じた直流電流が流れてしまい、その直流レベルを安定に維持することができなくなるが、上記構成によれば、抵抗11のスイッチ7側の電圧を、スイッチ7が第1の系統S1側に閉状態となっているときに、交流結合用コンデンサ12から出力される信号の直流レベルに合うように直流電圧源13の電圧ならびに抵抗11および抵抗15の抵抗値の比を設定することにより、交流結合用コンデンサ12から出力される信号の直流レベルによる電流が抵抗11に流れることを抑制してスイッチ7の入力端7aの直流レベルを安定にすることができるため、そのようなパルス変調信号を用いたときでもスイッチ7の第1の系統S1側の出力の直流レベルを安定にすることができ、本来受信すべき中間周波信号によるもの以外の信号レベルを安定にすることができるので、そのようなパルス変調信号を用いたときでも受信性能を高くすることができる。
【0040】
次に、本発明の第3の高周波送受信器の実施の形態の一例は、図3に示すように、高周波信号を発生する高周波発振器1と、この高周波発振器1に接続された、高周波信号を分岐して一方の出力端2bと他方の出力端2cとに出力する分岐器2と、一方の出力端2bに接続された、この一方の出力端2bに分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する変調器3と、磁性体の周囲に第1の端子4a,第2の端子4bおよび第3の端子4cを有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、変調器3の出力が第1の端子4aに入力されるサーキュレータ4と、このサーキュレータ4の第2の端子4bに接続された送受信アンテナ5と、分岐器2の他方の出力端2cとサーキュレータの第3の端子4cとの間に接続された、他方の出力端2cに分岐された高周波信号と送受信アンテナ5で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー6と、このミキサー6の出力端6aに接続された、中間周波信号を後段に出力する第1の系統S1および中間周波信号の直流成分を遮断し交流成分を終端する第2の系統S2に交互に切り替えるスイッチ7とを備えている構成である。
【0041】
また、本発明の第4の高周波送受信器の実施の形態の一例は、図4に示すように、高周波信号を発生する高周波発振器1と、この高周波発振器1に接続された、高周波信号を分岐して一方の出力端2bと他方の出力端2cとに出力する分岐器2と、一方の出力端2bに接続された、この一方の出力端2bに分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する変調器3と、この変調器3の出力端3bに一端8aが接続された、この一端8a側から他端8b側へ送信用高周波信号を通過させるアイソレータ8と、このアイソレータ8に接続された送信アンテナ9と、分岐器2の他方の出力端2c側に接続された受信アンテナ10と、分岐器2の他方の出力端2cと受信アンテナ10との間に接続された、他方の出力端2cに分岐された高周波信号と受信アンテナ10で受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー6と、このミキサー6の出力端6aに接続された、中間周波信号を後段に出力する第1の系統S1および中間周波信号の直流成分を遮断し交流成分を終端する第2の系統S2に交互に切り替えるスイッチ7とを備えている構成である。
【0042】
上記構成において、スイッチ7は、パルス化された送信用高周波信号の送信前後で、その送信用高周波信号の出力状態が不安定な時には第2の系統S2側に閉状態となって中間周波信号をその直流成分は遮断し交流成分は終端して、その出力状態が安定してから第1の系統S1側に閉状態となって中間周波信号を後段の受信回路へ通過させるように動作する。また、交流結合コンデンサ12は、ミキサー6の出力端6aとスイッチ7の入力端7aとを交流結合するためのものであり、これにより、スイッチ7の入力端7aにおける直流レベルを、ミキサー6の出力端6aの直流レベルとは独立に一定にする働きをする。具体的にスイッチ7としては、上記図1または図2に示す高周波送受信器と同様にSPDT(Single Port Double Throw;シングル・ポート・ダブル・スロウ)と呼ばれる単極二系統のスイッチを用いればよい。また、スイッチ7として、アナログIC、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ(FET)、メカニカルスイッチまたはMEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ)スイッチ等を用いても構わない。
【0043】
また、本発明の第3および第4の高周波送受信器の実施の形態の例は、それぞれ図3および図4に示すように、好ましい構成として、スイッチ7は、第2の系統S2にコンデンサ17および抵抗18が直列に接続されている。
【0044】
このようにスイッチ7の第2の系統S2を開放終端とするかまたはコンデンサ17を接続することにより、その開放終端またはコンデンサ17はスイッチ7が第2の系統S2側に閉状態となっているときに直流電流を遮断するため、スイッチ7の入力端7aの直流レベルを安定にする働きをする。また、第2の系統S2にコンデンサ17および抵抗18が直列に接続されている場合には、スイッチ7の第2の系統S2を通る信号のうち直流成分は抵抗18側に通さず交流成分のみを抵抗18で抵抗終端し、スイッチ7の第2の系統S2から交流結合コンデンサ12側への反射を抑制することができるため、そのような反射がミキサー6の出力端6aから出力される信号の波形に悪影響を及ぼさないようにすることができる利点がある。なお、そのような反射がミキサー6側で吸収される等により出力端6aから出力される信号の波形に悪影響が及ばないときには、必ずしもスイッチ7の第2の系統S2にコンデンサ17および抵抗18を接続する必要はなくて、第2の系統S2が開放終端でも構わない。この場合には、スイッチ7としてSPDTスイッチの代わりに単極1系統であるSPST(Single Pole Single Throw;シングル・ポール・シングル・スロウ)スイッチを用い、第2の系統S2の終端がスイッチ7の外部に現れないようにしても電気的には変わりはないが、本発明の第3および第4の高周波送受信器のように第2の系統S2の終端がスイッチ7の外側に出るようにすれば、例えばミキサー6から出力される信号波形等に応じて適当な終端回路を第2の系統S2に接続することができるので、様々な用途の送受信に対応することができるものとなる。
【0045】
図3および図4にそれぞれ示す本発明の第3および第4の高周波送受信器の実施の形態の例は、上記構成とすることから、スイッチ7の第2の系統S2が、ミキサー6の出力の直流成分を遮断し、スイッチ7が第1および第2の系統S1,S2に交互に切り替わってもスイッチ7の入力端7aの直流レベルを安定にする働きをするため、スイッチ7の出力の直流レベルを安定にすることができ、本来受信すべき中間周波信号によるもの以外の信号レベルを安定にすることができるので、受信性能を高くすることができる。また、スイッチ7の第2の系統S2が直列に接続されたコンデンサ17および抵抗18を有するときには、コンデンサ17がミキサー6の出力の直流成分を遮断するとともに抵抗18がその交流成分を抵抗終端する働きをするため、スイッチ7が第1および第2の系統S1,S2に交互に切り替わってもスイッチ7の入力端7aの直流レベルをより安定にする働きをするため、スイッチ7の第1の系統S1への出力の直流レベルを安定にすることができ、本来受信すべき中間周波信号によるもの以外の信号レベルをさらに安定にすることができるので、さらに受信性能を高くすることができる。
【0046】
なお、本発明の第1、第2、第3および第4の高周波送受信器の実施の形態の例は、それぞれ図1、図2、図3および図4に示すように、好ましい構成として、スイッチ7の第1の系統S1側の出力端に交流結合コンデンサ16を介して増幅器17を接続している。また、増幅器17にはゲインを時間的に制御するゲイン制御回路を設けるのが望ましい。この構成により、交流結合コンデンサ16により増幅器17はスイッチ7側の直流レベルを変動させることなく適当な入力端の直流レベルを設定することができ、また、増幅器17は中間周波信号の信号強度の時間的推移に応じてゲインを時間的に大きくしたり小さくしたりして中間周波信号を受信しやすい適当な受信レベルにまで増幅するため、送信相手もしくはレーダ探知の探知対象物までの距離が変わってアンテナでの受信レベルが変わっても受信しやすい受信レベルにすることができるので、近距離から遠距離まで広い範囲で送受信することができるものとなる。
【0047】
また、本発明の第1、第2、第3および第4の高周波送受信器の実施の形態の例は、具体的には、ミリ波帯の高周波信号を送受信する高周波送受信器として例示するならば、そのミリ波帯の高周波信号を伝送するミリ波信号伝送部M1,M2において、高周波用伝送線路として非放射性誘電体線路を用いるとよい。
【0048】
その非放射性誘電体線路の基本的な構成は、図5に部分破断斜視図で示すように、所定の間隔aをもって平行配置された平行平板導体51,52の間に、断面形状が長方形等の矩形状の誘電体線路53を配置した構成であり、この間隔aが高周波信号の波長λに対してa≦λ/2であれば、外部から誘電体線路53へのノイズの侵入をなくし、かつ外部への高周波信号の放射をなくして、誘電体線路53中で高周波信号を効率良く伝搬させることができる。なお、高周波信号の波長λは使用周波数における空気中(自由空間)での波長である。
【0049】
すなわち、図1および図3のそれぞれにブロック回路図で示す本発明の第1および第3の高周波送受信器の実施の形態の例におけるミリ波伝送部M1は、図6に平面図で示すように、高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で平行に配置された平板導体21(他方の平板導体は図示していない。)間に、第1の誘電体線路22の一端が接続された、高周波ダイオードから出力された高周波信号を周波数変調するとともに高周波信号として第1の誘電体線路22を伝搬させて出力する高周波発振器1と、第1の誘電体線路22の他端に接続された、その高周波信号をパルス信号に応じて入力端3a側に反射するかまたは出力端3b側に透過させる変調器3と、変調器3の出力端3bに一端が接続された第2の誘電体線路23と、平板導体21に平行に配設されたフェライト板24の周縁部に、それぞれ高周波信号の入出力端子とされた第1の端子24a,第2の端子24bおよび第3の端子24cを有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、第1の端子24aが第2の誘電体線路23の他端に接続されたサーキュレータ4と、サーキュレータ4のフェライト板24の周縁部に放射状に配置され、かつ第2の端子24bおよび第3の端子24cにそれぞれの一端が接続された第3の誘電体線路25および第4の誘電体線路26と、第3の誘電体線路25の他端に接続された送受信アンテナ5と、中途を第1の誘電体線路22の中途に近接もしくは接合させた、第1の誘電体線路22を伝搬する高周波信号の一部を分岐して伝搬させる第5の誘電体線路27と、第5の誘電体線路27の高周波発振器1側の一端に接続された無反射終端器28と、第4の誘電体線路26の他端と第5の誘電体線路27の他端との間に接続された、第5の誘電体線路27から入力される高周波信号と送受信アンテナ5で受信してサーキュレータ4から入力される高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー6とを備えている構成とすればよい。なお、第1の誘電体線路22と第5の誘電体線路27とを近接もしくは接合させた部分が分岐器2を構成している。なお、第1の端子24a,第2の端子24b,第3の端子24cは、それぞれ図1および図3における第1の端子4a,第2の端子4b,第3の端子4cに対応している。
【0050】
また、図2および図4のそれぞれにブロック回路図で示す本発明の第2および第4の高周波送受信器の実施の形態の例におけるミリ波伝送部M2は、図7に平面図で示すように、高周波信号の波長の2分の1以下の間隔で平行に配置された平板導体31(他方の平板導体は図示していない。)間に、第1の誘電体線路32の一端が接続された、高周波ダイオードから出力された高周波信号を周波数変調するとともに第1の誘電体線路32を伝搬させて出力する高周波発振器1と、第1の誘電体線路32の他端に接続された、その高周波信号をパルス信号に応じて入力端3a側に反射するかまたは出力端3b側に透過させる変調器3と、変調器3の出力端3bに一端が接続された第2の誘電体線路33と、平板導体31に平行に配設されたフェライト板34の周縁部に、それぞれ高周波信号の入出力端子とされた第1の端子34a,第2の端子34bおよび第3の端子34cを有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、第1の端子34aが第2の誘電体線路33の他端に接続されたサーキュレータ4と、サーキュレータ4のフェライト板34の周縁部に放射状に配置され、かつ第2の端子34bおよび第3の端子34cにそれぞれの一端が接続された第3の誘電体線路35および第4の誘電体線路36と、第3の誘電体線路35の他端に接続された送信アンテナ9と、中途を第1の誘電体線路32の中途に近接もしくは接合させた、第1の誘電体線路32を伝搬する高周波信号の一部を分岐して伝搬させる第5の誘電体線路37と、第4の誘電体線路36の他端に接続された無反射終端器38aと、第5の誘電体線路37の高周波発振器1側の一端に接続された無反射終端器38bと、一端が受信アンテナ10に接続された第6の誘電体線路39と、第5の誘電体線路37の他端と第6の誘電体線路39の他端との間に接続された、第5の誘電体線路37から入力される高周波信号と受信アンテナ10で受信して第6の誘電体線路39から入力される高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサー6とを備えている構成とすればよい。なお、第1の誘電体線路32および第5の誘電体線路37は、それらの近接部もしくは接合部において分岐器2を構成している。なお、第1の端子34a,第2の端子34b,第3の端子34cは、それぞれ図2および図4における第1の端子4a,第2の端子4b,第3の端子4cに対応している。
【0051】
また、上記各構成において、変調器3は、図8に斜視図で示すように、基板40の表面に形成されたチョーク型バイアス供給線路41の途中の途切れた部位に形成された接続端子42に高周波変調用素子としての半導体素子43を接続した高周波変調部を、第1の誘電体線路22,32と第2の誘電体線路23,33との間に、第1の誘電体線路22,32から出力される高周波信号が半導体素子43に入射するように挿入すればよい。
【0052】
また、変調器3は、半導体素子43としてIII−V族化合物半導体を含む材料から成る半導体素子を用いるとよい。III−V族化合物半導体を含む材料としては、砒化ガリウム(GaAs)、インジウム・燐(InP)およびインジウム・アンチモン(InSb)の他、砒化ガリウム(GaAs)にインジウム(In)もしくはアルミニウム(Al)を含んだ砒化インジウム・ガリウム(InGaAs)、砒化ガリウム・アルミニウム(GaAlAs)、砒化インジウム・ガリウム・アルミニウム(InGaAlAs)もしくは砒化インジウム・アルミニウム・ガリウム(InAlGaAs)、またはこれら、砒化インジウム(InAs)、砒化アルミニウム(AlAs)および砒化インジウム・アルミニウム(InAlAs)の混晶もしくは多層超格子(MQW)を用いればよい。また、これらのいずれかの材料から成る半導体素子としては、ダイオード、バイポーラトランジスタまたは電界効果トランジスタ(FET)を用いればよい。この場合には、このようなIII−V族化合物半導体を含む材料から成る半導体素子は、キャリアの移動度が大きくてライフタイムが短いため、変調器3において、この半導体素子に変調電流を流す際、変調器3の変調電流を過渡状態から速やかに定常状態に収束させることができるので、この変調電流に対応するパルス化された送信用高周波信号も速やかに定常状態に収束させることができ、パルス化された送信用高周波信号を出力した後、早いタイミングでスイッチ7を第1の系統S1側に閉(オン)状態にしても、送信用高周波信号にパルスの立ち上がり直後に発生する不要な信号が混入した中間周波信号がミキサー6の後段に出力されることがなくなり、中間周波信号が遮断されることにより送受信することができなくなる時間を短縮することができる。
【0053】
なお、変調器3の動作に特に高速が要求されない場合には、III−V族化合物半導体の他に、シリコン(Si)やシリコン・ゲルマニウム(SiGe)混晶等を用いても構わない。
【0054】
また、本発明の高周波送受信器における変調器3には、このような透過形の変調器が好適である。また、透過型の変調器の代わりに、高周波信号を透過させたり反射したりすることができる半導体スイッチやMEMS(Micro Electro Mechanical System:微小電気機械システム)スイッチ等のスイッチを用いてもよい。
【0055】
また、図6に平面図で示すミリ波伝送部M1において、ミキサー6は、中途を電磁結合するように近接もしくは接合させた第4の誘電体線路26および第5の誘電体線路27のそれぞれの他端に、高周波検波用素子としてのショットキーバリアダイオード44を実装した基板45を、ショットキーバリアダイオード44に高周波信号が入射するように配置して構成すればよい。なお、基板45は基板40と同様のものを用いればよい。
【0056】
また、図7に平面図で示すミリ波伝送部M2において、ミキサー6は、中途を電磁結合するように近接もしくは接合させた第5の誘電体線路37および第6の誘電体線路39のそれぞれの他端に、高周波検波用素子としてのショットキーバリアダイオード44を実装した基板45を、ショットキーバリアダイオード44に高周波信号が入射するように配置して構成している。なお、基板45は基板40と同様のものを用いればよい。
【0057】
次に、上記本発明の第1〜第4の高周波送受信器において、各構成要素は、上記以外に詳細には、次のように構成すればよい。
【0058】
非放射性誘電体線路の構成要素である第1〜第6の誘電体線路22,23,25〜27,32,33,35〜37,39の材質には、四フッ化エチレン,ポリスチレン等の樹脂、または低比誘電率のコーディエライト(2MgO・2Al・5SiO)セラミックス,アルミナ(Al)セラミックス,ガラスセラミックス等のセラミックスが好ましく、これらはミリ波帯域の高周波信号において低損失である。
【0059】
また、第1〜第6の誘電体線路22,23,25〜27,32,33,35〜37,39の断面形状は基本的には矩形状であるが、矩形の角部を丸めた形状であってもよく、高周波信号の伝送に使用される種々の断面形状のものを使用することができる。
【0060】
また、フェライト板24,34の材質には、フェライトの中でも、例えば高周波信号に対しては、亜鉛・ニッケル・鉄酸化物(ZnNiFe)が好適である。
【0061】
また、フェライト板24,34の形状は、通常は円板状とされるが、その他、平面形状が正多角形状であってもよい。その場合は、接続される誘電体線路の本数をn本(nは3以上の整数)とすると、その平面形状は正m角形(mは3以上のnより大きい整数)とするのがよい。
【0062】
また、平板導体21,31および図示していない他方の平板導体の材質には、高い電気伝導度および良好な加工性等の点で、Cu,Al,Fe,Ag,Au,Pt,SUS(ステンレススチール),真鍮(Cu−Zn合金)等の導体が好適である。あるいは、セラミックス,樹脂等から成る絶縁部材の表面にこれらの導体層を形成したものでもよい。
【0063】
また、無反射終端器28,38a,38bは、それが接続されている誘電体線路の端部に対して、両側の側面(平板導体21,31および図示していない他方の平板導体の内面と対向しない面)の上下端部に、膜状の抵抗体または電波吸収体を付着させて構成すればよい。その際、抵抗体の材質としては、ニッケルクロム合金またはカーボンが好適である。また、電波吸収体の材質としては、パーマロイまたはセンダストが好適である。これらの材質を用いれば、効率良くミリ波信号を減衰させることができる。また、これら以外の材質で、ミリ波信号を減衰させることができるものを用いても構わない。
【0064】
また、基板40,45は、四フッ化エチレン,ポリスチレン,ガラスセラミックス,ガラスエポキシ樹脂,エポキシ樹脂、いわゆる液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂等から成る板状の基体の一主面に、アルミニウム(Al),金(Au),銅(Cu)等から成るストリップ導体等によるチョーク型バイアス供給線路41を形成したものが使用される。
【0065】
また、各回路要素間を接続し高周波信号を伝送する高周波用伝送線路としては、非放射性誘電体線路の他にも、導波管,誘電体導波管,ストリップ線路,マイクロストリップ線路,コプレーナ線路,スロット線路,同軸線路等の高周波用伝送線路を、使用する周波数帯域や用途に応じて選択して用いても構わない。また、使用する周波数帯域は、ミリ波帯以外に、マイクロ波帯またはそれ以下の周波数帯であっても有効である。
【0066】
次に、本発明の高周波送受信器を用いたレーダ装置ならびにそれを搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶について説明する。
【0067】
本発明のレーダ装置の実施の形態の一例は、上記本発明の第1〜第4のいずれかの高周波送受信器(この例では第3の高周波送受信器)と、この高周波送受信器から出力される中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを備えている構成である。
【0068】
上記構成において、距離情報検出器は、検出した中間周波信号の信号処理をして、このレーダ装置から探知対象物までの距離および方向を含む距離情報を出力するためのものである。例えば、距離情報検出器は、中間周波信号を、位置情報として演算する微分回路,積分回路,二乗回路等を備えた演算回路と、この演算回路の出力を判別する判別回路と、これら演算回路および判別回路と高周波送受信器とを一連のシーケンスに従って動作させるコンピュータとを具備するようなものである。演算回路や判別回路には、演算増幅器(オペアンプ)やコンパレータ等を組み合わせた回路を用いればよい。また、必要に応じて、スイッチ,増幅器またはフィルタ等を用いればよい。また、それらの演算や判別の過程において、アナログ信号を一端ディジタル信号に変換し、ディジタル信号でそれらの演算や判別を処理し、必要に応じてディジタル信号をアナログ信号に変換する、A−D変換器およびD−A変換器を用いてもよい。その際、A−D変換されたディジタル信号を演算する演算回路には、例えば、高速フーリエ変換(FFT)等をするディジタルシグナルプロセッサ(DSP)を用いればよい。
【0069】
本発明のレーダ装置の実施の形態の一例によれば、構成要素である高周波送受信器に本発明の第3の高周波送受信器を用いており、その受信性能が高いため、早く確実に探知対象物を探知することができるとともに至近距離や遠方の探知対象物をも探知することができる。なお、本発明のレーダ装置は、本発明の第1,第2および第4のいずれかの高周波送受信器を用いても同様の効果を有するレーダ装置を構成することができることは言うまでもない。なお、本発明の高周波送受信器は、レーダ装置の他にも、例えば、このような高周波送受信器を、例えば無線LANで使用される無線装置の物理層(フィジカルレイヤー)である、いわゆるフィジカル・メディア・ディペンダント(PMD)装置として用い、このPMD装置と、さらにその上位層の装置であるフィジカル・メディア・アタッチメント(PMA)装置,メディア・アクセス・コントローラ(MAC)装置,その他の装置とからなる構成として無線装置に用いてもよい。
【0070】
また、本発明のレーダ装置搭載車両は、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いる構成である。
【0071】
本発明のレーダ装置搭載車両は、このような構成としたことから、従来のレーダ装置搭載車両と同様に、レーダ装置で検出された距離情報に基づいて車両の挙動を制御したり、運転者に例えば路上の障害物や他の車両等を探知したことを音,光もしくは振動で警告したりすることができるが、本発明のレーダ装置搭載車両においては、探知対象物である路上の障害物や他の車両等をレーダ装置が早く確実に探知するため、急激な挙動を車両に起こさせることなく、車両の適切な制御や運転者への適切な警告をすることができる。
【0072】
なお、本発明のレーダ装置搭載車両は、具体的には、汽車,電車,自動車等旅客や貨物を輸送するための車はもちろんのこと、自転車,原動機付き自転車,遊園地の乗り物,ゴルフ場のカート等にも用いることができる。
【0073】
また、本発明のレーダ装置搭載小型船舶は、上記本発明のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いる構成である。
【0074】
本発明のレーダ装置搭載小型船舶は、このような構成としたことから、従来のレーダ装置搭載車両と同様に、小型船舶において、レーダ装置で検出された距離情報に基づいて小型船舶の挙動を制御したり、操縦者に例えば暗礁等の障害物,他の船舶もしくは他の小型船舶等を探知したことを音,光もしくは振動で警告したりするように動作するが、本発明のレーダ装置搭載小型船舶においては、探知対象物である暗礁等の障害物,他の船舶もしくは他の小型船舶等をレーダ装置が早く確実に探知するため、急激な挙動を小型船舶に起こさせることなく、小型船舶の適切な制御や操縦者への適切な警告をすることができる。
【0075】
なお、本発明のレーダ装置搭載小型船舶は、具体的には、小型船舶の免許もしくは免許なしで操縦することができる船舶であって、総トン数20トン未満の船舶である手漕ぎボート,ディンギー,水上オートバイ,船外機搭載の小型バスボート,船外機搭載のインフレータブルボート(ゴムボート),漁船,遊漁船,作業船,屋形船,トーイングボート,スポーツボート,フィッシングボート,ヨット,外洋ヨット,クルーザーまたは総トン数20トン以上のプレジャーボートに用いることができる。
【0076】
かくして、本発明によれば、パルス変調された送信用の高周波信号が内部の反射等により受信系に出力されるのを遮断できるスイッチを有しており、このスイッチの出力の直流レベルを安定にすることができ、受信性能を高くすることができる高周波送受信器、およびそれを用いた、探知対象物を早く確実に探知することができる高性能なレーダ装置、ならびにその高性能なレーダ装置を搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶を提供することができる。
【実施例】
【0077】
図3に示すような回路構成でミリ波レーダを構成した。ミリ波レーダのミリ波信号伝送部M1を構成する基本的な構成要素であるNRDガイドは、図5に示すように、平行平板導体41,42として厚さが6mmの2枚のAl板を間隔aを1.8mmとして配置し、それらの間に、断面形状が1.8mm(高さ)×0.8mm(幅)の矩形状であり、比誘電率が4.8のコージェライトセラミックスから成る誘電体線路43を配置したものを用いた。また、ミリ波信号伝送部M1を構成するミリ波回路は図6に示すような回路に構成した。
【0078】
また、ミリ波信号伝送部M1から出力された中間周波信号を伝送する回路は次の通り設計した。交流結合コンデンサ12,16およびコンデンサ18の容量値は、それぞれ0.1,0.01,0.47マイクロファラッド(μF)とし、抵抗19の抵抗値は50Ωとした。また、スイッチ7としては応答時間が15ナノ秒(ns)程度であるSPDT・アナログCMOS半導体スイッチを用い、これを約5ボルト(V)で動作させるようにした。また、増幅器17としては利得の制御範囲が数十デシベル(dB)程度であるローノイズ可変利得増幅器を用いた。また、その前段に前置増幅器としてローノイズ増幅器(図示せず)を用いた。これらの増幅器はいずれもデュアルインラインパッケージ(DIP)にパッケージングされた半導体デバイスを使用した。なお、この実施例のミリ波レーダでは中間周波信号を数十デシベル(dB)の範囲で増幅することができるが、以下に説明する測定においては全てトータルの増幅度は常に最大に設定された状態とした。
【0079】
また、比較用のミリ波レーダとして、上記構成と同じミリ波レーダに対してコンデンサ18を取り外して抵抗19が直接にスイッチ7の第2の系統S2に接続されたものも構成した。
【0080】
そして、これら、コンデンサ18について構成が異なるミリ波レーダをいくつか試作して動作させ、それぞれについて中間周波信号の出力電圧(増幅器17の出力端子の電圧)を測定した。このとき、測定にはサンプリングオシロスコープを用い、その測定結果は中間周波信号の出力電圧の時間変化の実測値として得た。なお、このとき、スイッチ7は変調器3に入力されるパルス変調信号に応じて、変調器3から送信用高周波信号が出力される時を含む時間帯に第2の系統S2に接続された状態となり、それ以外の時間帯に第1の系統S1に接続された状態となるように動作させた。なお、上記測定は、ミリ波レーダはいずれも探知対象物がない状態として、送受信アンテナ5から送信された高周波信号がその送受信アンテナ5に全く戻らないような状態で行なった。
【0081】
図9はこの実施例のミリ波レーダについて、中間周波信号の出力電圧の測定結果の例を示しており、(a)は本発明の実施例のミリ波レーダの中間周波信号出力電圧波形の測定結果の一例を示す線図、(b)はその比較用としてのミリ波レーダの中間周波信号出力電圧波形の測定結果の一例を示す線図である。図9において、横軸は時間を、縦軸は電圧を表している。また、同図においては、変調器3に入力されたパルス変調用信号の電圧波形と、異なる複数のミリ波信号の周波数での中間周波信号の出力電圧の電圧波形とを、同じ時間軸上に表している。なお、同図において、左寄りの縦の実線はレーダ探知を開始する時である探知開始時を表しており、ミリ波レーダの動作との関係においては、探知開始時よりも前(図中の縦の実線の左側)に出力されたパルス状の送信用高周波信号を探知開始時よりも後(図中の縦の実線の右側)に受信するという対応となっている。なお、中間周波信号出力電圧波形としては、探知対象物が何もない状態で測定しているので、レーダ探知を行なう時間帯において何も波形が現れていなくて、かつ出力レベルが一定であるほど良い特性を表している。
【0082】
図9から、(a)に示す本発明の実施例のミリ波レーダの中間周波信号出力電圧波形は、図9(b)に示すその比較用としてのミリ波レーダの中間周波信号出力電圧波形に比べて、探知開始後からの中間周波信号の出力レベルの変動が小さくなっていることが分かり、このことから、スイッチ7が第2の系統S2側に接続されているときにコンデンサ18によって抵抗19側に直流電流が遮断されたため、スイッチ7が第1および第2の系統S1,S2の間で交互に接続されてもスイッチ7の入力端7aの直流レベルが安定に維持されたから、スイッチ7から出力されて、コンデンサ16を介して増幅器17から出力された中間周波信号の直流レベルも安定に維持されたことが分かる。
【0083】
また、本発明の第1の高周波送受信器を備えたミリ波レーダについても同様の測定を行なったところ、抵抗11に直流電流が流れないようにすることができるため、同様にスイッチ7から出力されて、コンデンサ16を介して増幅器17から出力される中間周波信号の直流レベルも安定に維持されることが分かった。
【0084】
また、本発明の第2および第4の高周波送受信器についても同様の作用効果があることが分かった。
【0085】
従って、本発明の高周波送受信器によれば、本来受信すべき中間周波信号によるもの以外の信号レベルを安定にすることができるので、受信性能を高くすることができることが確認された。
【0086】
かくして、本発明によれば、パルス変調された送信用の高周波信号が内部の反射等により受信系に出力されるのを遮断できるスイッチを有しており、このスイッチの出力の直流レベルを安定にすることができ、受信性能を高くすることができる高周波送受信器となった。また、それを用いたレーダ装置は、探知対象物を早く確実に探知することができる高性能なレーダ装置となった。従って、その高性能なレーダ装置を搭載したレーダ装置搭載車両およびレーダ装置搭載小型船舶を提供することが可能となった。
【0087】
なお、本発明は上記実施の形態の例または実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。例えば、抵抗11または抵抗15としてポテンショメータ等の可変抵抗器を用いてもよい。この場合には、変調信号の波形に応じて直流レベルを安定にすることができる高周波送受信器となる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1の高周波送受信器の実施の形態の一例を模式的に示すブロック回路図である。
【図2】本発明の第2の高周波送受信器の実施の形態の一例を模式的に示すブロック回路図である。
【図3】本発明の第3の高周波送受信器の実施の形態の一例を模式的に示すブロック回路図である。
【図4】本発明の第4の高周波送受信器の実施の形態の一例を模式的に示すブロック回路図である。
【図5】非放射性誘電体線路の基本的な構成を示す部分破断斜視図である。
【図6】図1および図3に示す高周波送受信器のミリ波伝送部の構成を模式的に示す平面図である。
【図7】図2および図4に示す高周波送受信器のミリ波伝送部の構成を模式的に示す平面図である。
【図8】図6および図7に示す高周波送受信器の高周波伝送部における半導体素子を実装する基板の例を示す模式的な平面図である。
【図9】高周波送受信器の中間周波信号出力の測定結果の例を示す図であり、(a)は本発明の第3の高周波送受信器の実施例であるミリ波レーダの中間周波信号出力電圧波形の測定結果の一例を示す線図、(b)はその比較用としてのミリ波レーダの中間周波信号出力電圧波形の測定結果の一例を示す線図である。
【図10】従来の高周波送受信器の例を模式的に示すブロック回路図である。
【符号の説明】
【0089】
1:高周波発振器
2:分岐器
2a:入力端
2b:一方の出力端
2c:他方の出力端
3:変調器
3a:入力端
3b:出力端
4:サーキュレータ
4a:第1の端子
4b:第2の端子
4c:第3の端子
5:送受信アンテナ
6:ミキサー
6a:出力端
7:スイッチ
7a:入力端
8:アイソレータ
8a:入力端
8b:出力端
9:送信アンテナ
10:受信アンテナ
11:終端回路としての抵抗
12:交流結合コンデンサ
13:直流電圧源
14:チョークインダクタ
15:テブナン終端用の抵抗
16:交流結合コンデンサ
17:増幅器
18:コンデンサ
19:抵抗
21,31:平板導体
22,32:第1の誘電体線路
23,33:第2の誘電体線路
24,34:フェライト板
24a,34a:第1の端子
24b,34b:第2の端子
24c,34c:第3の端子
25,35:第3の誘電体線路
26,36:第4の誘電体線路
27,37:第5の誘電体線路
28,38a,38b:無反射終端器
39:第6の誘電体線路
40,45:基板
41:チョーク型バイアス供給線路
42:接続端子
43:高周波変調用素子(PINダイオード)
44:高周波検波用素子(ショットキーバリアダイオード)
S1:第1の系統
S2:第2の系統
51、52:平板導体
53:誘電体線路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波信号を発生する高周波発振器と、該高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、該一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する変調器と、磁性体の周囲に第1の端子,第2の端子および第3の端子を有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、前記変調器の出力が前記第1の端子に入力されるサーキュレータと、該サーキュレータの前記第2の端子に接続された送受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記サーキュレータの前記第3の端子との間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、該ミキサーの出力端に接続された、前記中間周波信号を後段に出力する第1の系統および前記中間周波信号を終端する終端回路が接続された第2の系統に交互に切り替えるスイッチと、前記ミキサーの前記出力端と前記スイッチの入力端との間に直列に接続されたコンデンサとを具備することを特徴とする高周波送受信器。
【請求項2】
高周波信号を発生する高周波発振器と、該高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、該一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する変調器と、該変調器の出力端に一端が接続された、該一端側から他端側へ前記送信用高周波信号を通過させるアイソレータと、該アイソレータに接続された送信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、該ミキサーの出力端に接続された、前記中間周波信号を後段に出力する第1の系統および前記中間周波信号を終端する終端回路が接続された第2の系統に交互に切り替えるスイッチと、前記ミキサーの前記出力端と前記スイッチの入力端との間に直列に接続されたコンデンサとを具備することを特徴とする高周波送受信器。
【請求項3】
前記終端回路に直流電圧が印加されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の高周波送受信器。
【請求項4】
高周波信号を発生する高周波発振器と、該高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、該一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する変調器と、磁性体の周囲に第1の端子,第2の端子および第3の端子を有し、この順に一つの端子から入力された高周波信号を隣接する次の端子より出力する、前記変調器の出力が前記第1の端子に入力されるサーキュレータと、該サーキュレータの前記第2の端子に接続された送受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記サーキュレータの前記第3の端子との間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記送受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、該ミキサーの出力端に接続された、前記中間周波信号を後段に出力する第1の系統および前記中間周波信号の直流成分を遮断し交流成分を終端する第2の系統に交互に切り替えるスイッチとを具備することを特徴とする高周波送受信器。
【請求項5】
高周波信号を発生する高周波発振器と、該高周波発振器に接続された、前記高周波信号を分岐して一方の出力端と他方の出力端とに出力する分岐器と、前記一方の出力端に接続された、該一方の出力端に分岐された高周波信号を変調して送信用高周波信号を出力する変調器と、該変調器の出力端に一端が接続された、該一端側から他端側へ前記送信用高周波信号を通過させるアイソレータと、該アイソレータに接続された送信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端側に接続された受信アンテナと、前記分岐器の前記他方の出力端と前記受信アンテナとの間に接続された、前記他方の出力端に分岐された高周波信号と前記受信アンテナで受信した高周波信号とを混合して中間周波信号を出力するミキサーと、該ミキサーの出力端に接続された、前記中間周波信号を後段に出力する第1の系統および前記中間周波信号の直流成分を遮断し交流成分を終端する第2の系統に交互に切り替えるスイッチとを具備することを特徴とする高周波送受信器。
【請求項6】
前記第2の系統は、直列に接続されたコンデンサおよび抵抗を有することを特徴とする請求項4または請求項5記載の高周波送受信器。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の高周波送受信器と、この高周波送受信器から出力される前記中間周波信号を処理して探知対象物までの距離情報を検出する距離情報検出器とを具備することを特徴とするレーダ装置。
【請求項8】
請求項7記載のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることを特徴とするレーダ装置搭載車両。
【請求項9】
請求項7記載のレーダ装置を備え、このレーダ装置を探知対象物の検出に用いることを特徴とするレーダ装置搭載小型船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−94247(P2006−94247A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278626(P2004−278626)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】