説明

高周波電磁発振を発生させる発振器回路

高周波電磁発振を発生させる発振器回路が、少なくとも1つの入力と少なくとも1つの出力とを有する増幅器構成と、増幅器構成の少なくとも1つの出力に接続される水晶振動子と、少なくとも1つの入力が、水晶振動子と、水晶振動子に接続された少なくとも1つの、増幅器構成の出力とに接続され、少なくとも1つの出力が、増幅器構成の入力または少なくとも1つの入力に反結合されたバンドパス・フィルタ構成とを含む。バンドパス・フィルタ構成の振幅−周波数特性および/または位相−周波数特性を、増幅器構成および水晶振動子の振幅−周波数特性および位相−周波数特性の関数として設計することにより、水晶振動子の選択された高調波に対してのみ発振条件が満たされ、この選択された、水晶振動子の高調波によって形成される高周波電磁発振をバンドパス・フィルタ構成の出力において利用することができる。この発振器回路は、シンプルに構成され、干渉の影響を少なくともほぼ受けない動作が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電磁発振を発生させる発振器回路に関する。
【背景技術】
【0002】
モノグラフ「Halbleiter−Schaltungstechnik」(半導体回路)(U.Tietze、Ch.Schenkら、第8版、Springer−Verlag、1986年)のセクション15.2.2、450〜451頁によれば、ピアース発振器は、水晶振動子を用いた基本周波数発振器として設計されている。この種の基本周波数発振器では、その回路構成が水晶振動子の基本波で発振する。
【0003】
さらに、上記モノグラフ「Halbleiter−Schaltungstechnik」のセクション15.2.3、452〜454頁によれば、30MHzを超える周波数の水晶振動子は製造が困難である。水晶の安定性を有するこの種の発振器で高い周波数を発生させる方法として、このモノグラフでは、水晶振動子を高調波で励振することを提案している。これは、奇数次の高調波であれば水晶振動子が共振点を有するからである。上記モノグラフによれば、水晶を高調波で励振するためには、所望の周波数の付近で利得が最大になる増幅器が必要である。そのために、所望の高調波に同調するよう調整された付加LC共振回路の使用が提案されている。これに対応して修正されたハートレー発振器とコルピッツ発振器が提案されている。
【0004】
これらの提案された発振器は、LC共振回路を備えている点が不利である。この種の共振回路は比較的製造コストが高く、現代的な半導体集積回路に比べてかなり広いスペースが必要である。また、そのような共振回路は、この種の半導体集積回路に外付けしなければならない部品であって、スペースの点でもコストの点でも好ましくない。
【0005】
さらに、厳密には、この種の発振器においては、不要な共振周波数はすべて、あるいは少なくとも発振器の所望の周波数より低い、水晶振動子の共振周波数をすべて、個別のLC直列共振回路で減衰させなければならない。たとえば、5次高調波を動作させるのであれば、基本波と3次高調波を、適切に調整されたLC直列共振回路で減衰させなければならない。実際には、基本波を抑制し、3次高調波で動作する、高調波だけの発振器がよくある。
【0006】
アナログ信号処理回路段とデジタル信号処理回路段を混成構造で含む回路構成では、CMOS半導体集積技術で製造される水晶発振器のほとんどで、「ジッタ」とも呼ばれる、不安定性の急激な上昇が見られる。これは、半導体基板電位または供給電圧に関して干渉が増えることによるものであり、いずれの種類の干渉も、たとえば、集積回路内のデジタル信号が原因である可能性がある。この種の発振器を用いてクロック信号を生成する場合は、このクロック信号に上述の不安定性が現れ、これは下段の位相ロック・ループ(PLL)では完全には除去できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、シンプルな構造を有し、上述の干渉の影響を少なくともほとんど受けない動作が可能な発振器回路を作成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明に従い、高周波電磁発振を発生させる発振器回路によって達成され、この回路は、
少なくとも1つの入力と少なくとも1つの出力を有する増幅器構成と、
その増幅器構成の少なくとも1つの出力に接続された水晶振動子と、
少なくとも1つの入力が、水晶振動子と、水晶振動子に接続された少なくとも1つの、増幅器構成の出力とに接続され、少なくとも1つの出力が、増幅器構成の入力または少なくとも1つの入力に反結合されたバンドパス・フィルタ構成とを含み、
バンドパス・フィルタ構成の振幅−周波数特性および/または位相−周波数特性を、増幅器構成および水晶振動子の振幅−周波数特性および位相−周波数特性に応じて設計することにより、水晶振動子の選択された高調波に対してのみ発振条件が満たされ、この選択された、水晶振動子の高調波によって形成される高周波電磁発振をバンドパス・フィルタ構成の出力において利用することができる。
【0009】
本発明による発振器回路は、この種の、半導体集積回路として構成された発振器回路に部品を外付けすることなく、特に、発振器回路に水晶振動子を接続するために設けられた端子(すなわち、発振器回路の水晶端子)に外部部品を付加することなく、水晶振動子の選択された高調波の発生(オーバトーン発振)を可能にする。多くの場合、この種の水晶振動子の高調波の直接発生と、その高調波の、本発明による発振器回路とともに用いられる信号処理構成でのクロック信号としての利用は、より低い水晶振動子周波数によるPLLを用いた周波数合成を不要にする。PLLを用いずにクロック信号を生成する場合、基本波モードで動作して、対応するクロック信号を生成する、同じ周波数の水晶振動子(基本波水晶振動子)と比較して、本発明による発振器回路は、この種の高調波で動作する水晶振動子(オーバトーン水晶振動子)の、コスト効率の高い利用を可能にする。
【0010】
さらに、本発明による発振器回路は、この種の、半導体集積回路として構成された発振器回路において半導体基板電位または供給電圧の強い干渉がある場合でも、「ジッタ」と呼ばれる不安定性の影響を少なくともほとんど受けない発振の発生、およびこれによるクロック信号の生成を可能にする。したがって、本発明による発振器回路は、特に、アナログ信号処理回路段とデジタル信号処理回路段を混成構造で含む半導体集積回路での利用に好適である。
【0011】
本発明による発振器回路の別の有利な実施形態では、増幅器構成が、いずれの場合にも、少なくともほぼ対称な入力および出力(差動入力および差動出力)の少なくとも1対を有し、第1の基準電位に関して少なくともほぼ対称に動作する電磁発振(差動信号)を処理するよう設計される。ここでは第1の基準電位として増幅器構成の直流動作点を選択することが好ましい。ここでは、増幅器構成の直流動作点と発振器回路の直流動作点が、全体を通して一致することが好ましい。
【0012】
本発明による発振器回路の別のさらなる実施形態では、増幅器構成が、2つの電界効果トランジスタを備えた差動増幅器回路を含み、これら2つの電界効果トランジスタのソース端子同士が結合され、各電界効果トランジスタのゲート端子が増幅器構成の差動入力の一方に結合され、各電界効果トランジスタのドレイン端子が増幅器構成の差動出力の一方を形成し、この各ドレイン端子がさらに、それぞれ、少なくとも1つの電解効果トランジスタ(出力負荷トランジスタ)を含む負荷経路を介して、第2の基準電位を保持する端子に結合される。ここでは第2の基準電位としてアース電位を選択することが好ましい。
【0013】
増幅器構成は、ここでは、出力負荷トランジスタのゲート端子に供給される制御電圧を生成する制御電圧生成段を含むことが好ましい。詳細には、制御電圧生成段は、ここでは、定電流源と、ドレイン端子とゲート端子の間をブリッジされた電解効果トランジスタとを含む直列回路を含むことが好ましい。
【0014】
本発明による発振器回路のさらなる有利な実施形態は、増幅器構成が、3つの電界効果トランジスタを有する動作点調整段を含み、第1の電界効果トランジスタが第1の負荷経路に配置され、第2の電界効果トランジスタが第2の負荷経路に配置され、そのそれぞれのトランジスタがそこで出力負荷トランジスタに直列に接続され、第3の電界効果トランジスタが、制御電圧生成段の定電流源と電解効果トランジスタを含む直列回路に直列に接続され、動作点調整段の3つの電解効果トランジスタのうちの第1の電解効果トランジスタのゲート端子が増幅器構成の第1の差動出力に接続され、動作点調整段の3つの電解効果トランジスタのうちの第2の電解効果トランジスタのゲート端子が増幅器構成の第2の差動出力に接続され、動作点調整段の3つの電解効果トランジスタのうちの第3の電解効果トランジスタのゲート端子が出力負荷トランジスタのゲート端子に接続され、動作点調整段の3つの電解効果トランジスタが、そのソース端子により、第2の基準電位を保持する端子に配線されることにより、さらに特徴付けられる。
【0015】
本発明による発振器回路の別の有利な実施形態によれば、増幅器構成が、
増幅器構成の各差動入力と、
この差動入力と結合された増幅器構成を含む差動増幅器回路の電解効果トランジスタのゲート端子と、
この電解効果トランジスタのドレイン端子によって形成される差動出力との間にハイパス回路をいずれの場合にも含むオフセット補償装置を含む。このハイパス回路の制限周波数は、発振器回路の周波数動作範囲に比べると小さい。
【0016】
本発明によるこの発振器回路の好ましいさらなる実施形態では、各ハイパス回路がコンデンサを含み、このコンデンサを介して、増幅器構成の差動入力が、増幅器構成を含む差動増幅器回路の電界効果トランジスタのゲート端子に結合され、各ハイパス回路がさらにオーム抵抗素子を含み、このオーム抵抗素子を介して、増幅器構成を含む差動増幅器回路の電解効果トランジスタのゲート端子が、この電解効果トランジスタのドレイン端子によって形成される、増幅器構成の差動出力に結合される。
【0017】
本発明による発振器回路の別の実施形態によれば、増幅器構成が補助始動回路(auxiliary starting circuit)に結合され、発振器回路が動作状態に入るときのあらかじめ決められた時間の間に、増幅器構成を含む差動増幅器回路の、ソース端子同士を結合された電解効果トランジスタのゲート端子に、補助始動回路によって差動電圧が供給される。
【0018】
補助始動回路は、
増幅器構成を含む差動増幅器回路の、ソース端子同士を結合された電解効果トランジスタのうちの第1の電解効果トランジスタのゲート端子と、第3の基準電位との間に配置された第1の電界効果トランジスタと、
増幅器構成を含む差動増幅器回路の、ソース端子同士を結合された電解効果トランジスタのうちの第2の電解効果トランジスタのゲート端子と、第3の基準電位との間に配置された第2の電界効果トランジスタと、
発振器回路が動作状態に入るときに、少なくともほとんどパルス形状またはステップ形状である始動信号を供給する始動信号入力と、
遅延段とを含み、
始動信号入力が、補助始動回路の第1の電解効果トランジスタのゲート端子に直接結合され、かつ、遅延段を介して、補助始動回路の第2の電解効果トランジスタのゲート端子に結合されることが好ましい。ここでは第3の基準電位として、供給電圧端子に出力される供給電圧を選択することが好ましい。
【0019】
本発明による発振器回路の別の有利な実施形態では、増幅器構成によって差動信号の形で発生する電磁発振を供給するために、水晶振動子が、二端子回路の形をとり、いずれの場合にもその一方の端子が、いずれの場合にも、増幅器構成の差動出力対の一方の出力に接続される。
【0020】
本発明による発振器回路の別の有利な実施形態では、バンドパス・フィルタ構成が、いずれの場合にも、少なくともほぼ対称な入力および出力(差動入力および差動出力)の少なくとも1対を有し、第4の基準電位に関して少なくともほぼ対称に動作する電磁発振(差動信号)を処理するよう設計される。この第4の基準電位として、バンドパス・フィルタ構成の直流動作点を選択することが好ましい。
【0021】
ここでは、バンドパス・フィルタ構成の直流動作点と発振器回路の直流動作点が、全体を通して一致することが好ましい。したがって、この場合は全体を通して、バンドパス・フィルタ構成の第4の基準電位が増幅器構成の第1の基準電位と類似し、発振器回路の直流動作点と類似する。
【0022】
本発明による発振器回路のさらなる有利な実施形態によれば、バンドパス・フィルタ構成が、バンドパス・フィルタ構成の差動入力の少なくとも1対において、水晶振動子の端子に接続されている、増幅器構成の差動出力対に少なくとも接続され、バンドパス・フィルタ構成の差動出力の少なくとも1対において、増幅器構成の差動入力の少なくとも1対に接続される。
【0023】
本発明によるこの発振器回路のさらなる有利な実施形態によれば、バンドパス・フィルタ構成が、少なくとも2つの低性能バンドパス段のカスコード接続として設計される。高性能バンドパス段が1つだけでも設計は可能であろう。ただし、この種の高性能バンドパス段は、低性能バンドパス段より消費電力が多くなる。さらに、中間周波数帯のバンドパス・フィルタ構成を遵守しながら高性能バンドパス段を必要な精度で製造するのは、半導体集積回路の製造の一般的な許容誤差では困難である。したがって、上述の好ましい開発によって、製造を簡素化し、発振器回路の電力要件を低減する。
【0024】
バンドパス段は、詳細には次のように有利に設計される。すなわち、各バンドパス段は、ソース端子同士を結合された2つの電界効果トランジスタを有する差動増幅器回路と、1対の差動入力と、1対の差動出力とを有し、差動入力の各入力がハイパス回路の1つを介して一方の電解効果トランジスタのゲート端子に結合され、電解効果トランジスタの各ドレイン端子がバンドパス段の差動出力の一方を形成し、この各ドレイン端子がさらに、ローパス回路の1つを介して、第5の基準電位を保持する端子に接続され、カスケード接続で配置されるバンドパス段のうちの第1のバンドパス段の差動入力が、水晶振動子の端子に接続される、バンドパス・フィルタ構成の差動入力を形成し、カスケード接続で配置されるバンドパス段のうちの最終のバンドパス段の差動出力が、増幅器構成の差動入力に接続される、バンドパス・フィルタ構成の差動出力を形成する。第5の基準電位としてアース電位を選択することが好ましい。したがって、第2の基準電位が第5の基準電位と一致することが好ましい。
【0025】
本発明による発振器回路の有利な開発によれば、ハイパス回路および/またはローパス回路がRC回路として設計される。これらは、半導体集積技術によって高い周波数を発生させるために、発振器回路のその他の部品を用いて共通半導体本体上に構成できる。
【0026】
このRC回路は、切り替え可能なオーム抵抗を備えることが好ましい。それによって、本発明により、上記RC回路を用いて構成したハイパス回路および/またはローパス回路のフィルタ特性曲線を変更することが可能である。詳細には、有利な構成は、基準抵抗を有するRC回路において、切り替え可能なオーム抵抗の抵抗値をトリミングする付加トリミング回路によって達成される。多くの場合、半導体集積回路の外側に配置されるのが一般的な、この種の基準抵抗が存在するケースはいくらでもあり、特に、アナログ信号とデジタル信号が一緒に処理される回路構成では存在するものなので、本発明による発振器回路に付加的に用意する必要はない。トリミングは、トリミング回路により、特に発振器回路の始動中または始動直後(すなわち、供給電圧の電源投入中または投入直後)に行われる。ここで高精度の外部基準抵抗との比較が行われ、不具合があると、RC回路内のトリミングされるべきオーム抵抗が適切な抵抗値に切り替えられ、その結果として、それらの抵抗値の、製造に伴うばらつきを最小限に抑えることができる。
【0027】
別の実施形態によれば、本発明による発振器回路は変換器回路を含み、この変換器回路は、バンドパス・フィルタ構成の少なくとも1対の差動出力に結合され、それらの差動出力から出力された差動信号を、第4の基準電位に関して非対称に動作する電磁発振に変換する。結果として、発振器回路は、差動信号を処理するように設計できるが、その出力信号(配信される発振)は、非対称に動作する信号として供給できる。
【0028】
差動信号を処理する、本発明による発振器回路を設計することは、「ジッタ」と呼ばれる先述の不安定性の一因である、半導体基板電位または供給電圧に先述のように作用する干渉の影響を受けにくくするための特に有利な方法であることがわかる。発振器回路をこのように設計することにより、それらの不安定性に対する耐性がかなり向上する。
【0029】
本発明による発振器回路のさらなる有利な一実施形態はさらに、以下によって特徴づけられる。すなわち、変換器回路が、
ソース端子同士を結合された電界効果トランジスタを有する差動増幅器として設計され、変換される差動信号が供給される入力段と、
ゲート端子同士を結合された電界効果トランジスタを有し、変換器回路の入力段の第1の差動出力信号を第1の中間信号にミラーリングするよう設計された第1のカレントミラー(current mirror)段と、
ゲート端子同士を結合された電界効果トランジスタを有し、変換器回路の入力段の第2の差動出力信号を第2の中間信号にミラーリングするよう設計された第2のカレントミラー段と、
ゲート端子同士を結合された電界効果トランジスタを有し、変換器回路の第1のカレントミラー段の第1の中間信号を第3の中間信号にミラーリングするよう設計された第3のカレントミラー段と、
電流ノードとして設計され、第3の中間信号から第2の中間信号を減算する減算回路と、
出力ドライバ回路とを含み、
第3のカレントミラー段がさらに補助スイッチオン段と補助スイッチオフ段と第4のカレントミラー段に結合され、
補助スイッチオン段が、第3のカレントミラー段の入力辺(input arm)に第1のカスコード電界効果トランジスタを有し、
補助スイッチオフ段が第1のカスケード段を含み、
第1のカスケード段が、
第2のカレントミラー段に組み込まれ、第2のカレントミラー段と一緒に、変換器回路の入力段の第2の差動出力信号によって動作し、少なくとも複数のセグメントをまたいで第2の中間信号に本質的に比例する第4の中間信号を出力する第1の電界効果トランジスタと、
電界効果トランジスタとして設計される、第4のカレントミラー段の入力トランジスタと、
第4のカレントミラー段の入力辺にある第2のカスケード電界効果トランジスタとを含む直列回路を有し、
第4のカレントミラー段が、第4の中間信号を第5の中間信号にミラーリングし、第5の中間信号を第3のカレントミラー段に供給し、
電界効果トランジスタとして設計され、第4の中間信号を供給する入力トランジスタと、
電界効果トランジスタとして設計され、第5の中間信号を出力する出力トランジスタとを含み、
第1および第2のカスコード電界効果トランジスタの互いに結合されたゲート端子に共通カスコード・バイアス電圧を供給するためにカスコード・バイアス電圧生成回路が設けられる。
【0030】
このように設計した変換器回路によって、発振器回路の出力信号(すなわち、発振器回路によって供給される発振)のエッジのしゅん度を高めることができる。それによって、この出力信号に対する、「ジッタ」と呼ばれる先述の不安定性の一因である、半導体基板電位または供給電圧に先述のように作用する干渉の影響をさらに低減することができる。
【0031】
本発明のさらなる一実施形態では、カスコード・バイアス電圧生成回路が、第6の基準電位を保持する端子と第7の基準電位を保持する端子との間に配置される、第1および第2の電界効果トランジスタと定電流源とを含む直列回路を含み、この第1の電界効果トランジスタのドレイン端子が第2の電界効果トランジスタのソース端子に接続され、この第1および第2の電界効果トランジスタのゲート端子が、互いに接続され、さらに第2の電界効果トランジスタのドレイン端子に接続され、さらに第1および第2のカスコード電界効果トランジスタのゲート端子に接続されて、共通カスコード・バイアス電圧を供給する。ここでは、第6の基準電位を、第2の基準電位と等価になるように選択し、第7の基準電位を、第3の基準電位と等価になるように選択することが好ましく、したがって、第6の基準電位がアース電位に一致することが好ましく、第7の基準電位が供給電圧に一致することが好ましい。
【0032】
以下、本発明について、図面に示す実施例を参照してさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本明細書では、対応する要素に常に同じ参照符号を付けている。
【0034】
水晶振動子を有する基本周波数発振器の形での、図1によるピアース発振器の、交流等価回路図の形での概略回路図では、水晶振動子は、参照符号1が付けられ、その2つの端子がそれぞれ、反転増幅器4の入力2と出力3に接続されている。負荷抵抗5は、水晶振動子1と並行して切り替えられる。増幅器4の入力2と出力3は、2つのコンデンサ6および7を介してアース端子8に配線される。
【0035】
非常に一般的な観点では、振動性システムは、フィードバック・ループを有し、フィードバック・ループの伝達関数が、開ループ時(すなわち、伝達関数の総和が1以上であり、その位相応答が360°の倍数に等しいとき)に「発振条件」を満たすことで特徴づけられる。この振動性システムにおける不要な共振周波数は、その周波数において、伝達関数の総和を1より小さくし、かつ/またはその位相応答を360°の倍数からずらすことによって抑制できる。
【0036】
図2は、図1によるピアース発振器を、水晶振動子1の高調波で動作するよう変更したものを示す。その動作のために、共振回路コンデンサ9および共振回路インダクタ10の直列回路によって形成されるLC直列共振回路を、水晶振動子と並行して、外部から切り替える。直列共振回路9、10は、水晶振動子の基本波発振に同調するよう調整される。結果として、この基本波発振は、増幅器4の入力2と出力3の間で短絡される。その結果、この基本波発振の周波数において伝達関数の総和が1より小さくなり、発振条件が満たされなくなる。
【0037】
先述のとおり、厳密には水晶振動子のすべての不要な共振周波数、あるいは少なくとも水晶振動子の所望の高調波の周波数より低いすべての共振周波数(したがって、発振器の所望の周波数より低いすべての共振周波数)を個別のLC直列共振回路によって減衰させなければならない。たとえば、水晶振動子の5次高調波で動作している間は、基本波発振と3次高調波とをそれぞれ、適切に調整されたLC直列共振回路によって減衰させなければならない。実際には、基本波発振を抑制し、3次高調波で動作する、高調波だけの発振器がよくある。それ以外の発振器回路は複雑になりすぎるからであろう。
【0038】
図3は、本発明による発振器回路の実施形態の一例の概略回路図である。この回路は、差動入力と呼ばれる対称の入力対12、13と、差動出力と呼ばれる対称の出力対14、15とを有する増幅器構成11を含む。水晶振動子1は、その端子16、17で、対称の出力対14、15に接続される。バンドパス・フィルタ構成18の対称な入力対19、20がそれぞれ水晶振動子1の端子16および17に接続され、さらに増幅器構成11の対称な出力対14、15に接続される。バンドパス・フィルタ構成18の対称な出力対21、22が増幅器構成11の対称な入力対12、13に反結合され、それによって、振動性システムのフィードバック・ループが閉じる。差動入力と差動出力を用いた設計の結果として、発振器回路は、(差動信号として認識される)電磁発振を処理するために、増幅器構成11、水晶振動子1、およびバンドパス・フィルタ構成18によって形成され、第1の基準電位に関して少なくともほぼ対称に動作する。第1の基準電位は、ここでは増幅器構成11の直流動作点と一致し、バンドパス・フィルタ構成18の直流動作点とも一致することが好ましく、したがって、発振器回路全体の直流動作点と一致することが好ましい。
【0039】
図3による発振器回路では、増幅器構成11は伝達関数を備え、その周波数応答は、接続される水晶振動子1の特性に依存する。増幅器構成11の伝達関数の振幅−周波数特性は、水晶振動子1の共振周波数の範囲で最大になる。それは、この範囲で水晶振動子1のインピーダンスが最大になるからである。バンドパス・フィルタ構成18の振幅−周波数特性および/または位相−周波数特性を、増幅器構成11および水晶振動子1の振幅−周波数特性および位相−周波数特性の関数として設計することにより、発振器回路において、水晶振動子1の選択された高調波に対してのみ発振条件が満たされ、この、水晶振動子1の高調波が選択された結果として形成される高周波電磁発振が、バンドパス・フィルタ構成18の出力21、22において利用可能になる。言い換えると、バンドパス・フィルタ構成18が水晶振動子1の選択された高調波に同調するよう調整され、増幅器構成11の利得係数(すなわち、振幅−周波数特性)が、水晶振動子の選択された高調波でのみ、開ループ時に増幅器構成11、水晶振動子1、およびバンドパス・フィルタ構成18の伝達関数の総和が1以上になるだけの大きさになるよう設計される。さらに、水晶振動子1の、この選択された高調波において、位相条件が満たされなければならない。これにより、発振器回路は、正確に、水晶振動子1の選択された高調波で発振する。
【0040】
図3では、発振器回路の出力信号は、バンドパス・フィルタ構成18の出力21、22から、変換器回路23を介して取り出される。変換器回路23は、バンドパス・フィルタ構成18の差動出力21、22から出力される差動信号を、バンドパス・フィルタ構成18の直流動作点に関して非対称に動作する電磁発振に変換するよう動作する。そのために、バンドパス・フィルタ構成18の差動出力対21、22がそれぞれ変換器回路23の差動入力対24、25に結合される。非対称に動作する電磁発振は、変換器回路23の1つの出力26から出力される。この出力信号は、方形波信号の形をとることが好ましい場合がある。
【0041】
図3の矢印27は、図示した発振器回路における信号の流れの方向を表している。
【0042】
増幅器構成11の機能をより詳細に説明するために、図4に概略的に示した水晶振動子1の等価回路図を簡単に説明する。これによれば、水晶振動子は、それ自体がよく知られている形であるコンデンサ28、インダクタ29、およびオーム抵抗30を含む直列共振回路と、終端コンデンサ31との並列回路を含む電気的二端子回路として表される。ここでは、コンデンサ28およびインダクタ29は水晶振動子の機械的特性によって決まり、オーム抵抗は水晶振動子での減衰量によって決まり、終端コンデンサ31は電極およびリード線のサイズによって決まる。コンデンサ28、インダクタ29、およびオーム抵抗30を含む直列共振回路の共振時には、端子16と端子17で測定される水晶振動子1のインピーダンスが非常に低くなり、それよりわずかに高い周波数で終端コンデンサ31とともに形成される、いわゆる並列共振では、水晶振動子1のインピーダンスが著しく上昇する。
【0043】
図5で、複数の共振周波数を有し、オーバトーン水晶振動子の形をとる水晶振動子1の場合は、水晶のすべてのオーバトーン発振で水晶振動子1のインピーダンスの総和のそのような変化が見られる。図5は、基本波発振用に加えて3次および5次高調波発振用の付加素子を有するオーバトーン水晶振動子の等価回路図を簡略化したものである。図5では、コンデンサ32、インダクタ33、およびオーム抵抗34を含む直列回路が3次高調波周波数での直列共振を示す直列共振回路を形成し、コンデンサ35、インダクタ36、およびオーム抵抗37を含む直列回路が5次高調波周波数での直列共振を示す直列共振回路を形成する(それより高い高調波周波数についても同様)。
【0044】
この、水晶振動子1の応答は、水晶振動子1のすべての並列共振において利得の総和の顕著なピークを得るために、以下で説明する増幅器構成11で用いられる。この種の増幅器構成11の実施形態の一例の概略回路図を図6に示す。この増幅器構成11は、2つの電界効果トランジスタ38および39を含む差動入力段を備え、電界効果トランジスタ38および39は、それぞれのソース端子40および41が互いに接続され、それらがさらに定電流源42の第1の端子43に接続される。定電流源42の第2の端子44が供給電圧端子45に接続される。供給電圧端子45では、好ましくは第3の基準電位を形成する供給電圧が供給される。
【0045】
電界効果トランジスタ38および39のゲート端子がそれぞれ、増幅器構成11の第1および第2の対称な(差動)入力12および13を形成する。電界効果トランジスタ38および39のドレイン端子がそれぞれ、増幅器構成11の第1および第2の対称な(差動)入力14および15を形成する。これらはそれぞれ、破線で示したように、端子16および17を介して水晶振動子1に接続される。これらのドレイン端子、すなわち、増幅器構成11の出力14および15はそれぞれ、いずれの場合も、電界効果トランジスタ(出力負荷トランジスタ)46および47をそれぞれ含む負荷経路を介して、第2の基準電位を保持する端子にさらに結合される。アース端子8でのアース電位が、ここでは第2の基準電位として選択される。出力負荷トランジスタ46および47を流れる負荷電流を設定する制御電圧が、共通制御電圧端子48を介して、出力負荷トランジスタ46および47のゲート端子に供給される。
【0046】
図4から6の矢印27も、図示した回路における信号の流れの方向を表している。
【0047】
増幅器構成11の差動入力段の電界効果トランジスタ38および39の負荷は、出力負荷トランジスタ46および47と水晶振動子1で形成される。周波数が低い場合、この回路の利得は高く、トランジスタの形状寸法で決まる。この利得は、出力負荷トランジスタ46および47のオーム抵抗と水晶振動子1の終端コンデンサ31で決まるカットオフ周波数から徐々に低下する。
【0048】
水晶振動子1の各直列共振において、すなわち、図5に示した等価回路図における基本波発振用またはいずれかの高調波発振用の直列共振回路のうちの1つによる直列共振のすべてにおいて、増幅器構成11および水晶振動子1を含む組み合わせの利得は、水晶振動子1のインピーダンスの総和の降伏(breaking down)の結果として急激に低下し、その後、終端コンデンサ31とともに形成される以下に示す並列共振の高インピーダンスによって急激に上昇する。並列共振の範囲では、終端コンデンサ31の効果が無くなる。これは、終端コンデンサ31が、水晶振動子1によって形成される並列共振回路の一部になるからである。水晶振動子1の終端コンデンサ31と出力負荷トランジスタ46および47のオーム抵抗によって形成されるローパス応答は、各並列共振の範囲では無効になる。
【0049】
図7は、水晶振動子1をオーバトーン水晶振動子の形で有する、図6に示した増幅器構成の伝達関数をグラフで表したものである(図8に含まれる部分図a)からc)の表題として、このグラフ表現を「図8」とする)。
【0050】
図7の部分図a)の上半分は、増幅器構成11と水晶振動子1の組み合わせの位相−周波数特性の一例であり、共振周波数が16MHz(基本波発振)と48MHz(3次高調波発振)である水晶振動子の場合を示している。図7の部分図a)の下半分では、ヘルツ(Hz)単位の対数周波数尺度(freq)に対して度(deg)単位の位相(Phase)をプロットしている。図7の部分図a)の下半分は、増幅器構成11と水晶振動子1の組み合わせの、対応する振幅−周波数特性の一例を、ヘルツ(Hz)単位の対数周波数尺度(freq)に対してdBV単位の利得(Gain)をプロットして示している。
【0051】
図7の部分図b)は、例として示した水晶振動子1の3次高調波周波数の付近について、部分図a)の特性の48MHzにおける詳細を示している。部分図b)の上半分では、振幅−周波数特性(Gain)の詳細を示し、部分図b)の下半分では、位相−周波数特性(Phase)の詳細を示している。
【0052】
図7の部分図c)は、例として示した水晶振動子1の基本波発振周波数の付近について、部分図a)の特性の16MHzにおける詳細を示している。部分図c)の上半分では、振幅−周波数特性(Gain)の詳細を示し、部分図c)の下半分では、位相−周波数特性(Phase)の詳細を示している。
【0053】
これらの図では、説明したローパス応答が共振範囲の外側に現れているのが見られる。これは、回路の位相応答にも反映されている。位相は、水晶振動子1の共振点の外側で−90°にあり、直列共振時に0°に上昇し、さらに最大+90°まで上昇する。ただし、これは、水晶振動子1が無限の高品質を有する場合(すなわち、図4または5に示した、水晶振動子1の等価回路図のオーム抵抗30、34、37が、ゼロになる場合)にのみ理論的に到達可能であるという話である。このことは、水晶振動子1の品質が高いほど、ある制限内で、利得が高くなるという意味でもある。位相の値は、直列共振時を超えるこの最大値から、並列共振周波数で最初0°に戻り、その後さらに−90°の値まで降下する。これは上述のローパス応答によるものである。
【0054】
重要な意味があるのは、増幅器構成11と水晶振動子1を含む相互接続の位相−周波数特性がゼロを通過すること(zero transition)である。これは、発振条件の2つの必要な部分条件の1つがここで満たされることによるものである。位相−周波数特性が直列共振時にゼロを通過する場合は、上述の相互接続の利得が特に低くなり、位相−周波数特性が並列共振時にゼロを通過する場合は、利得が特に高くなる。図7の部分図a)およびb)の振幅−周波数特性(Gain)の挙動からうかがわれるように、水晶振動子1の基本波発振においても、3次高調波発振においても、発振条件は、増幅器構成11の出力14、15の信号がその入力12、13に直列反結合されることによって満たされる。このことに該当する周波数を、部分図b)およびc)でそれぞれM2およびM3とマーキングした。
【0055】
図8は、本発明による発振器回路で用いるために、図6に示した回路に改良を施した増幅器構成49の実施形態の一例の概略回路図である。この図では、図6に示した増幅器構成11の概略回路図に、制御電圧生成段50、動作点調整段51、およびオフセット補償装置52が追加されている。図8の、改良された増幅器構成49のうち、図6で既に知られている素子には同じ参照符号を付けている。
【0056】
改良された増幅器構成49の制御電圧生成段50は、制御電圧を生成するよう動作し、この制御電圧は、出力負荷トランジスタ46および47を流れる負荷電流を設定するために、共通制御電圧端子48を介して、出力負荷トランジスタ46および47のゲート端子に供給される。そのために、制御電圧生成段50は、定電流源54と、ドレイン端子とゲート端子の間をブリッジされた電解効果トランジスタ55とを含む直列回路を含む。この、ドレイン端子とゲート端子の間をブリッジされた電界効果トランジスタ55のソース端子は、別の電界効果トランジスタ56のドレイン−ソース経路を介してアース端子8に接続される。ドレイン端子とゲート端子の間をブリッジされた電界効果トランジスタ55のゲート端子とアース端子8との間に平滑コンデンサ57が挿入される。さらに、制御電圧生成段50の別の電界効果トランジスタ56のゲート端子が、ドレイン端子とゲート端子の間をブリッジされた電界効果トランジスタ55のドレイン端子に接続される。定電流源54の、電界効果トランジスタ55、56と反対側にある端子53が、供給電圧端子45に接続される。
【0057】
図8に示した実施形態の例では、制御電圧生成段50の別の電界効果トランジスタ56が、同時に動作点調整段51の要素でもある。動作点調整段51はさらに、第1の電界効果トランジスタ58と第2の電界効果トランジスタ59を含み、第1の電界効果トランジスタ58のドレイン−ソース経路が、そこにある出力負荷トランジスタ46を有する第1の負荷経路に直列接続され、第2の電界効果トランジスタ59のドレイン−ソース経路が、そこにある出力負荷トランジスタ47を有する第2の負荷経路に直列接続される。動作点調整段51の第1の電界効果トランジスタ58のゲート端子が、増幅器構成49の第1の差動出力14に接続される。動作点調整段51の第2の電界効果トランジスタ59のゲート端子が、増幅器構成49の第2の差動出力15に接続される。動作点調整段51の第1および第2の電界効果トランジスタ58、59のソース端子が、アース電位を第2の基準電位として保持するアース端子8に接続される。動作点調整段51は、増幅器構成49の差動出力14、15の電圧の直流動作点の調整を動作させる。
【0058】
図8に示した実施形態の例では、オフセット補償装置52が、オーム抵抗60およびコンデンサ61を含む第1のハイパス回路を含む。この第1のハイパス回路60、61は、増幅器回路49の第1の差動入力12と、増幅器構成49を含み、第1の差動入力12に結合され、増幅器構成49の差動入力段でもある、差動増幅器回路の第1の電界効果トランジスタ38のゲート端子と、この第1の電界効果トランジスタ38のドレイン端子によって形成される差動出力14との間に挿入される。オフセット補償装置52はさらに、オーム抵抗62およびコンデンサ63を含む第2のハイパス回路を含む。この第2のハイパス回路62、63は、増幅器構成49の第2の差動入力13と、第2の差動入力13に結合される、増幅器構成49の差動入力段の第2の電界効果トランジスタ39のゲート端子と、この第2の電界効果トランジスタ39のドレイン端子によって形成される差動出力15との間に挿入される。第1のハイパス回路60、61の制限周波数と、第2のハイパス回路62、63の制限周波数は、発振器回路の周波数動作範囲に比べると小さく、したがって、水晶振動子1の選択された高調波の周波数の環境での位相シフトの一因にはならない。
【0059】
この発振器回路の差動回路構成は、少なくとも理論的には完全に対称なので、ビルドアップ(build-up)は、水晶振動子1の端子16、17に熱雑音または非対称干渉が外部から加えられた結果としてのみ起こる。このビルドアップ継続時間は、図9に示すように、本発明による発振器回路で用いられる増幅器構成49を拡張することによって、大幅に短縮できる。
【0060】
図9は、本発明による発振器回路で用いるために、図8に示した回路に改良を施した増幅器構成64の実施形態の一例の概略回路図である。この図では、図8に示した増幅器構成49の概略回路図に、補助始動回路65が追加されている。図9の、改良された増幅器構成64のうち、図8を参照して既に説明されている素子には同じ参照符号を付けている。
【0061】
図9による実施形態の例によれば、補助始動回路65は、第1の電界効果トランジスタ66と、第2の電界効果トランジスタ67と、始動信号入力68と、遅延段69とを含む。補助始動回路65の第1の電界効果トランジスタ66は、増幅器構成64の差動入力段の第1の電界効果トランジスタ38のゲート端子と、第3の基準電位を保持する端子との間に配置される。この、第3の基準電位を保持する端子は、図9では、供給電圧を保持する供給電圧端子45によって形成される。補助始動回路65の第2の電界効果トランジスタ67は、増幅器構成64の差動入力段の第2の電界効果トランジスタ39のゲート端子と、供給電圧端子45との間に配置される。始動信号入力68は、補助始動回路65の第1の電解効果トランジスタ66のゲート端子に直接結合され、かつ、遅延段69を介して、補助始動回路65の第2の電解効果トランジスタ67のゲート端子に結合される。
【0062】
発振器回路が動作状態に入るときに、少なくともほとんどパルス形状またはステップ形状である始動信号が、外部から始動信号入力68に加えられる。この始動信号は、補助始動回路65の第1の電解効果トランジスタ66のゲート端子に直接供給され、かつ、時間遅延を介して、補助始動回路65の第2の電解効果トランジスタ67のゲート端子に供給される。結果として、発振器回路が動作状態に入るときのあらかじめ決められた時間の間、増幅器構成64の差動入力段の電界効果トランジスタ38、39のゲート端子に差動電圧が供給され、その結果として、限られた時間、干渉が故意に発生させられ、それによって、差動発振器回路であらかじめ決まっている対称が短時間無効になる。
【0063】
図10は、本発明による発振器回路におけるバンドパス・フィルタ構成18の実施形態の一例を示す。これによれば、3つのバンドパス段70、71、および72のカスケード接続が、バンドパス・フィルタ構成18の対称な入力19、20と対称な出力21、22の間に配置される。バンドパス・フィルタ構成18の目的は、水晶振動子1と増幅器構成11、49、および64の相互接続において発振条件を満たす、水晶振動子1のすべての共振周波数から所望の共振周波数だけを選択し、不要な共振周波数をすべて抑制することである。バンドパス・フィルタ構成18の振幅−周波数特性および/または位相−周波数特性を、増幅器構成11、49、および64の振幅−周波数特性および位相−周波数特性と、水晶振動子1の振幅−周波数特性および位相−周波数特性との関数として設計し、それによって、発振器回路全体としての発振条件(すなわち、発振のための位相および/または利得の条件)が、水晶振動子の選択された高調波周波数に対してのみ満たされ、不要な共振周波数に対しては満たされないようにする。このようにして選択された水晶振動子1の高調波が、バンドパス・フィルタ構成18の出力で利用可能な高周波電磁発振を形成する。
【0064】
図10に示すように、バンドパス・フィルタ構成18を3段で設計する場合は、バンドパス・フィルタ構成18を単一バンドパス段で設計するより、個々のバンドパス段70、71、および72を低い性能で設計できる。それによって、3つのバンドパス段70、71、および72をすべてまとめての消費電力(したがって、バンドパス・フィルタ構成18の全体の消費電力)を、バンドパス・フィルタ構成18を高性能の単一バンドパス段として設計した場合より低く抑えることができる。ただし、このようにバンドパス段70、71、および72を設計すると、発振条件を満たすことが、主にバンドパス・フィルタ構成18の位相−周波数特性によって妨げられる。すなわち、発振器回路の発振のための位相条件は、水晶振動子1の選択された高調波の範囲でのみ満たされ、増幅器構成11、49、および64の残りの共振周波数、および水晶振動子1の残りの共振周波数では満たされない。一方、このように設計されたバンドパス・フィルタ構成18の振幅−周波数特性は、周波数に対する変化が小さいので、増幅器構成11、49、および64の共振周波数、および水晶振動子1の選択された高調波周波数の近傍の水晶振動子1の共振周波数の範囲で発振器回路の発振のための利得条件を満たすことはできる。したがって、このように設計されたバンドパス・フィルタ構成18の振幅−周波数特性は、それ自体では、周波数選択を行うのに十分ではない。
【0065】
図10によるバンドパス・フィルタ構成18では、第1のバンドパス段70が、第1の対称な入力73と、第2の対称な入力74と、第1の対称な出力75と、第2の対称な出力76とを備える。第2のバンドパス段71は、第1の対称な入力77と、第2の対称な入力78と、第1の対称な出力79と、第2の対称な出力80とを備える。第3のバンドパス段72は、第1の対称な入力81と、第2の対称な入力82と、第1の対称な出力83と、第2の対称な出力84とを備える。
【0066】
第1のバンドパス段70の第1の差動(対称な)入力73は、バンドパス・フィルタ構成18の第1の対称な入力19を形成する。第1のバンドパス段70の第2の差動(対称な)入力74は、バンドパス・フィルタ構成18の第2の対称な入力20を形成する。第1のバンドパス段70の第1の対称な出力75は、第1の接続点85で、第2のバンドパス段71の第1の対称な入力77に接続される。第1のバンドパス段70の第2の対称な出力76は、第2の接続点86で、第2のバンドパス段71の第2の対称な入力78に接続される。第2のバンドパス段71の第1の対称な出力79は、第3の接続点87で、第3のバンドパス段72の第1の対称な入力81に接続される。第2のバンドパス段71の第2の対称な出力80は、第4の接続点88で、第3のバンドパス段72の第2の対称な入力82に接続される。第3のバンドパス段72の第1の差動(対称な)出力83は、バンドパス・フィルタ構成18の第1の対称な出力21を形成する。第3のバンドパス段72の第2の差動(対称な)出力84は、バンドパス・フィルタ構成18の第2の対称な出力22を形成する。
【0067】
矢印27は、ここでも、図示した回路における信号の流れの方向を表している。
【0068】
図11は、図10によるバンドパス・フィルタ構成18の実施形態の例の中の1つのバンドパス段の実施形態の例として、第1のバンドパス段70を示している。このバンドパス段70は、第1の電界効果トランジスタ89と第2の電界効果トランジスタ90とを含む差動増幅器回路を含み、これらの電界効果トランジスタは、それぞれのソース端子を互いに連結することによって結合され、さらにこの連結において、第1の定電流源92の第1の端子91に結合される。第1の定電流源92の第2の端子93は、供給電圧端子45に連結される。第1のバンドパス段70の第1の電界効果トランジスタ89のドレイン端子が、第1のバンドパス段70の第2の出力76を形成する。第1のバンドパス段70の第2の電界効果トランジスタ90のドレイン端子が、第1のバンドパス段70の第1の出力75を形成する。
【0069】
第1のバンドパス段70では、第1の差動入力73は、第1のハイパス回路を介して、第1の電界効果トランジスタ89のゲート端子に結合される。この第1のハイパス回路は第1のハイパス・コンデンサ94と第1のハイパス抵抗95とを含み、第1のハイパス・コンデンサ94を介して、第1の差動入力73が第1の電界効果トランジスタ89のゲート端子に結合され、第1のハイパス抵抗95は、その第1の端子96が第1の電界効果トランジスタ89のゲート端子に接続される。第2の差動入力74はさらに、第2のハイパス回路を介して、第2の電界効果トランジスタ90のゲート端子に結合される。この第2のハイパス回路は第2のハイパス・コンデンサ97と第2のハイパス抵抗98とを含み、第2のハイパス・コンデンサ97を介して、第2の差動入力74が第2の電界効果トランジスタ90のゲート端子に結合され、第2のハイパス抵抗98は、その第1の端子99が第1の電界効果トランジスタ90のゲート端子に接続される。第1のハイパス抵抗95と第2のハイパス抵抗98は、それぞれの第2の端子100および101で互いに接続され、さらに、直接バイアス電圧生成段103の出力端子102に接続される。第1のバンドパス段70の直接バイアス電圧生成段103は第2の定電流源104を含み、第2の定電流源104は第3の電界効果トランジスタ105に直列に接続され、第3の電界効果トランジスタ105はゲート端子とドレイン端子の間を短絡される。この直列回路は、供給電圧端子45とアース端子8の間に配置される。第3の電界効果トランジスタ105のゲート端子とドレイン端子の接続は、ここでは、ハイパス回路に直接バイアス電圧を供給するための、直接バイアス電圧生成段103の出力端子102を形成する。
【0070】
図11に示した第1のバンドパス段70では、第2の出力76を形成する第1の電界効果トランジスタ89のドレイン端子がさらに、第1のローパス回路を介してアース端子8に接続される。アース端子8は、第5の基準電位(ここではアース電位)を保持する端子を形成する。第1のバンドパス段70の第1の出力75を形成する第2の電界効果トランジスタ90のドレイン端子は、第2のローパス回路を介してアース端子8に接続される。第1のローパス回路は、第1のローパス・コンデンサ106と第1のローパス抵抗107とを含む並列回路を含み、第2のローパス回路は、第2のローパス・コンデンサ108と第2のローパス抵抗109とを含む並列回路を含む。これらのローパス回路は、バンドパス段70の第1の電界効果トランジスタ89および第2の電界効果トランジスタ90を含む差動増幅器回路の出力負荷を形成する。
【0071】
ローパス・コンデンサ106、108は、第1のバンドパス段70(および残りのバンドパス段)において、必ずしも明示的な部品として存在しなくてもよく、ローパス抵抗107、109の寄生容量、あるいは第1のバンドパス段70の出力75、76に接続される下流回路段(たとえば、この例では第2のバンドパス段71)の入力インピーダンスの形をとる場合もある。
【0072】
ハイパス回路とローパス回路がRC回路の形をとるという事実のおかげで、半導体集積技術により、これらの回路を、半導体基板上で発振器回路の他の半導体素子と容易に組み合わせることができる。
【0073】
図12は、オーバトーン水晶振動子の形で水晶振動子1を有する(具体的には図8または9による)増幅器構成49および64の伝達関数の例と、(具体的には図10または11による)バンドパス・フィルタ構成18の伝達関数の例をグラフで表し、さらに、バンドパス・フィルタ構成18から増幅器構成49および64へのフィードバックがある場合に、それによって形成される発振器回路の実施形態の一例の全体の伝達関数を示す図である(図12に含まれる部分図a)からc)の表題として、このグラフ表現を「図12」とする)。
【0074】
図12の部分図a)の上半分は、増幅器構成49および64と水晶振動子1の組み合わせの位相−周波数特性の一例であり、共振周波数が16MHz(基本波発振)と48MHz(3次高調波発振)である水晶振動子1の場合を示している。図12の部分図a)の下半分では、ヘルツ(Hz)単位の対数周波数尺度(freq)に対して度(deg)単位の位相(Phase)をプロットしている。図12の部分図a)の下半分は、増幅器構成49および64と水晶振動子1の組み合わせの、対応する振幅−周波数特性の一例を、ヘルツ(Hz)単位の対数周波数尺度(freq)に対してdBV単位の利得(Gain)をプロットして示している。増幅器構成49および64のオフセット補償装置52のハイパス特性は、特に、部分図a)の下半分の振幅−周波数特性において明らかである。
【0075】
図12の部分図b)の上半分は、部分図a)に示すように設計された水晶振動子1に合わせて設計されたバンドパス・フィルタ構成18の位相−周波数特性の一例である。図12の部分図b)の下半分でも、ヘルツ(Hz)単位の対数周波数尺度(freq)に対して度(deg)単位の位相(Phase Bandpass)をプロットしている。図12の部分図b)の下半分は、バンドパス・フィルタ構成18の、対応する振幅−周波数特性の一例を、ヘルツ(Hz)単位の対数周波数尺度(freq)に対してdBV単位の利得(Gain Bandpass)をプロットして示している。部分図b)の下半分の振幅−周波数特性から、バンドパス・フィルタ構成18による増幅器構成49および64の減衰が、水晶振動子1の基本波発振に対しても、5次高調波発振に対しても、発振条件の一部としての利得条件が満たされるのを防ぐには不十分であることが明らかである。逆に、バンドパス・フィルタ構成18の位相応答、すなわち、位相−周波数特性は、水晶振動子1の基本波発振周波数において位相が90°よりかなり大きく、水晶振動子1の3次高調波発振周波数において位相が0°近辺であり、水晶振動子1の5次高調波発振周波数において位相が−90°に十分近いという点において、発振条件の一部としての位相条件が満たされるのを防ぐために望ましく、かつ、必須の特性を示している。これをよりわかりやすくするために、部分図b)の両半分において、該当する周波数にマーキングを施した。M4は3次高調波発振、M5は基本波発振、M6は5次高調波発振を示している。
【0076】
図12の部分図c)は、上述の設計例に関し、水晶振動子1を含む増幅器構成49および64とバンドパス・フィルタ構成18の、フィードバック・ループが開いている場合の、位相−周波数特性(Phase)を上半分に示し、対応する振幅−周波数特性(Gain)を下半分に示している。ここでも、図12の部分図c)の下半分では、ヘルツ(Hz)単位の対数周波数尺度(freq)に対して°(deg)単位およびdBV単位でプロットしている。
【0077】
図13は、図3に示した、本発明による発振器回路の上述の設計例の、オーバトーン水晶振動子の形で水晶振動子1を有し、バンドパス・フィルタ構成18から増幅器構成49および64へのフィードバックがある場合の全体の伝達関数を、図12に示したグラフの細部において、グラフで表した図である(図13に含まれる部分図a)からc)の表題として、このグラフ表現を「図13」とする)。図13の部分図a)は、例として示した水晶振動子1の基本波発振周波数の付近について、図12の部分図c)の全体の伝達関数の16MHzにおける詳細を示している。図13の部分図b)は、例として示した水晶振動子1の3次高調波発振周波数の付近について、図12の部分図c)の全体の伝達関数の48MHzにおける詳細を示し、図13の部分図c)は、この水晶振動子1の5次高調波発振周波数の付近について、図12の部分図c)の全体の伝達関数の80MHzにおける詳細を示している。部分図a)、b)、c)の上半分では、振幅−周波数特性(Gain)の詳細を示し、部分図a)、b)、c)の下半分では、位相−周波数特性(Phase)の詳細を示している。図12の部分図a)、b)、c)の下半分でも、ヘルツ(Hz)単位の対数周波数尺度(freq)に対して、利得(Gain)をdBV単位でプロットし、位相(Phase)を(deg)単位でプロットしている。
【0078】
具体的には図13に示した詳細なグラフから明らかなように、増幅器構成49および64と下流のバンドパス・フィルタ構成18との接続によって、所望の3次高調波発振周波数においてのみ、発振に関する利得条件と位相条件の両方が満たされ(図13の部分図b)のM1)、図13の部分図a)による基本波発振周波数と、図13の部分図c)による5次高調波発振周波数においては満たされない。
【0079】
図14は、差動信号を、バンドパス・フィルタ構成18の直流動作点に関して(したがって、好ましくは、発振器回路全体としての直流動作点に関して)非対称に動作する電磁発振に変換するために、本発明による発振器回路で用いられる単純な変換器回路23の実施形態の一例の概略回路図である。
【0080】
この目的のために、図14による変換器回路23は、ソース端子同士を結合された電界効果トランジスタ110および111を有する差動増幅器の形で入力段を含み、変換される差動信号は、バンドパス・フィルタ構成18の対称な出力21、22から電界効果トランジスタ110および111のゲート端子を介して入力段に供給される。ここでは、第1の電界効果トランジスタ110のゲート端子が、変換器回路23の第1の差動入力24を形成し、第2の電界効果トランジスタ111のゲート端子が、変換器回路23の第2の差動入力25を形成する。電界効果トランジスタ110および111のソース端子同士の連結点に変換器回路23の第1の定電流源112の第1の端子113が接続され、その第2の端子114が供給電圧端子45に接続される。第2の電界効果トランジスタ111のドレイン端子が、変換器回路23の入力段の第1の出力端子116を形成して、変換器回路23の入力段の第1の差動出力信号を供給する。第1の電界効果トランジスタ110のドレイン端子が、変換器回路23の入力段の第2の出力端子115を形成して、変換器回路23の入力段の第2の差動出力信号を供給する。
【0081】
変換器回路23はさらに、変換器回路23の入力段の第1の出力端子116において第1の差動出力信号を第1の中間信号にミラーリングする第1のカレントミラー段を含む。この第1のカレントミラー段は、ゲート端子同士を結合された、第1および第2の電界効果トランジスタ117および118を含む。第1のカレントミラー段の第1の電界効果トランジスタ117は、ここでは、第1のカレントミラー段の入力トランジスタを形成し、ドレイン端子とゲート端子の間を短絡される。電界効果トランジスタ117、118のソース端子は、ともにアース端子8に接続される。第2の電界効果トランジスタ118のドレイン端子が、変換器回路23の第1のカレントミラー段117、118の出力端子119を形成し、出力端子119に、第1の中間信号が供給される。
【0082】
変換器回路23はさらに、変換器回路23の入力段の第2の出力端子115において第2の差動出力信号を第2の中間信号にミラーリングする第2のカレントミラー段を含む。この第2のカレントミラー段は、ゲート端子同士を結合された、第1および第2の電界効果トランジスタ120および121を含む。第2のカレントミラー段の第1の電界効果トランジスタ120は、ここでは、第2のカレントミラー段の入力トランジスタを形成し、ドレイン端子とゲート端子の間を短絡される。電界効果トランジスタ120、121のソース端子は、ともにアース端子8に接続される。第2の電界効果トランジスタ121のドレイン端子が、変換器回路23の第2のカレントミラー段120、121の出力端子122を形成し、出力端子122に、第2の中間信号が供給される。
【0083】
変換器回路23はさらに、変換器回路23の第1のカレントミラー段117、118の第1の出力端子119において第1の中間信号を第3の中間信号にミラーリングする第3のカレントミラー段を含む。この第3のカレントミラー段は、ゲート端子同士を結合された、第1および第2の電界効果トランジスタ123および124を含む。第3のカレントミラー段の第1の電界効果トランジスタ123は、ここでは、第3のカレントミラー段の入力トランジスタを形成し、ドレイン端子とゲート端子の間を短絡される。第3のカレントミラー段の電界効果トランジスタ123、124のソース端子は、ともに、供給電圧端子45に接続される。第2の電界効果トランジスタ124のドレイン端子が、変換器回路23の第3のカレントミラー段123、124の出力端子125を形成し、出力端子125に、第3の中間信号が供給される。
【0084】
最後に、変換器回路23は、第3の中間信号から第2の中間信号を減算する減算回路を含む。この減算回路は、変換器回路23の、第2のカレントミラー段120、121の出力端子122と、第3のカレントミラー段123、124の出力端子125の間の電流ノード126の形をとる。この電流ノード126は、出力ドライバ回路127を介して変換器回路23の出力26に結合され、直流動作点に関して非対称に動作する電磁発振を増幅して供給する。
【0085】
図14に示した変換器回路23は、供給された差動入力信号を十分大きな利得で増幅することによって、電界効果トランジスタの設計によって決まる2つの電圧電位の間で切り替わる、少なくともほぼ方形波である信号への変換を実現する。この信号は、用いた電界効果トランジスタがCMOSタイプであれば、「デジタル(CMOSレベルで非対称に動作する信号)」とも呼ばれる。
【0086】
ただし、この回路の場合は、第3のカレントミラー段の電界効果トランジスタ123および124のゲート端子同士の接続点の動作時の電圧が比較的小さい振れ幅でしかない。この電圧の、電圧電位の高いほうへの振れは、第1の電界効果トランジスタ123のしきい値電圧によって制限される。この電圧の、電圧電位の低いほうへの振れは、この第1の電界効果トランジスタ123の設計と、変換器回路23の第1のカレントミラー段の第2の電界効果トランジスタ118を流れる電流の可能な最大値とによって制限される。この、変換器回路23の第1のカレントミラー段の第2の電界効果トランジスタ118を流れる電流の可能な最大値は、変換器回路23の第2の差動入力25での電圧電位が負の可能な最大値になり、同時に、変換器回路23の第1の差動入力24での電圧電位が正の可能な最大値になったときに現れる。
【0087】
上述の、変換器回路23の第3のカレントミラー段の電界効果トランジスタ123および124のゲート端子同士の接続点における電圧の振れ幅が比較的狭くなるように制限されるという事実により、第3のカレントミラー段の電界効果トランジスタ123および124のゲート端子同士の接続点における電圧電位が可能な最大値になったときに第2の電界効果トランジスタ124がゆっくりと不完全に通電が遮断され、それによって、変換器回路23の、第2の差動入力25における電圧電位と第1の差動入力24における電圧電位との差が正になっているときに変換器回路23の電流ノード126を放電する、第2の中間信号を形成する電流が、変換器回路23の第3のカレントミラー段の第2の電界効果トランジスタ124の入力インピーダンスが高くなったことに対して、ただちにではなく、ある程度遅れて動作する。それに対応して、この、第2の中間信号を形成する電流が電流ノード126を再充電するだけでなく、この電流の一部が、横流として、上述の第2の電界効果トランジスタ124を流れる。結果として、電流ノード126の放電が遅延される。
【0088】
変換器回路23の、第2の差動入力25における電圧電位と第1の差動入力24における電圧電位との差が正になろうとしているときは、第3のカレントミラー段の電界効果トランジスタ123および124のゲート端子同士の接続点における電圧の振れが、電圧電位の低いほうに制限があるために、第2の電界効果トランジスタ124が、ただちにではなく、ある程度遅れて通電され、そのゲート端子における電圧電位が可能な最低値になり、これによって、この第2の電界効果トランジスタ124は電流ノード126の充電を、速度を遅くして行う。
【0089】
上述の過程を経て、電流ノード126における信号のエッジのしゅん度は比較的小さくなり、それによって、少なくともほぼ方形波の信号を形成することを意図された、変換器23の出力26に出力される電磁発振のエッジのしゅん度が、結局、比較的小さくなる。このようにエッジのしゅん度が比較的小さくなることの一因は、上述の干渉によって、変換器回路23の出力26に出力される電磁発振の「ジッタ」が増えることである。
【0090】
図15は、差動信号を非対称に動作する電磁発振に変換するために、図14による変換器回路23に改良が施され、本発明による発振器回路で用いられる変換器回路128の実施形態の一例の概略回路図である。図14で既に説明された素子には同じ参照符号を付けている。
【0091】
改良された変換器回路128では、第3のカレントミラー段123、124が、第3のカレントミラー段123、124の入力辺に第1のカスコード電界効果トランジスタ129を備えた補助スイッチオン段に結合される。そのために、この第1のカスコード電界効果トランジスタ129のドレイン−ソース経路が、第3のカレントミラー段123、124の第1の電界効果トランジスタ123のドレイン−ソース経路に直列に接続される。ここで、第1の電界効果トランジスタ123のドレイン端子が第1のカスコード電界効果トランジスタ129のソース端子に接続され、第1のカスコード電界効果トランジスタ129のドレイン端子が、変換器回路128の第1のカレントミラー段117、118の出力端子119に接続される。第3のカレントミラー段123、124の第1の電界効果トランジスタ123のゲート端子は、この回路では、第1のカスコード電界効果トランジスタ129のドレイン端子に接続される。
【0092】
さらに、改良された変換器128では、第3のカレントミラー段123、124が補助スイッチオフ段に結合される。この補助スイッチオフ段は、供給電圧端子45とアース端子8の間に接続された、第1の電界効果トランジスタ130と、電界効果トランジスタの形の、第4のカレントミラー段の入力トランジスタ131と、第4のカレントミラー段の入力辺にある第2のカスコード電界効果トランジスタ132とを含む直列回路を有する第1のカスケード段を含む。第1のカスケード段の第1の電界効果トランジスタ130は、そのソース端子がアース端子8に接続され、そのゲート端子が変換器回路128の第2のカレントミラー段120、121の第1の電界効果トランジスタ120のゲート端子に接続される形で第2のカレントミラー段120、121に挿入され、この第2のカレントミラー段120、121とともに、変換器回路128の入力段110、111の第2の差動出力信号によって動作する。第1のカスケード段の第1の電界効果トランジスタ130は、ここでは、そのドレイン端子において、第4の中間信号を供給する。この第4の中間信号は、少なくとも複数のセクションにまたがり、本質的に第2の中間信号に比例する。第2のカスコード電界効果トランジスタ132は、そのドレイン−ソース経路が第4のカレントミラー段の入力トランジスタ131のドレイン−ソース経路に直列に接続される。ここでは、第4のカレントミラー段の入力トランジスタ131のドレイン端子が、第2のカスコード電界効果トランジスタ132のソース端子に接続される。第4のカレントミラー段の入力トランジスタ131のゲート端子は、第2のカスコード電界効果トランジスタ132のドレイン端子に接続される。
【0093】
改良された変換器回路128の補助スイッチオフ段の第4のカレントミラー段は、第1のカスケード段の第1の電界効果トランジスタ130によって供給される第4の中間信号を第5の中間信号にミラーリングし、これを第3のカレントミラー段123、124に供給するために設けられ、第4の中間信号を供給するために、電界効果トランジスタの形で入力トランジスタ131を含み、第5の中間信号を供給するために、電界効果トランジスタの形で出力トランジスタ133を含む。第4のカレントミラー段131、133の入力トランジスタ131と出力トランジスタ133は、それぞれのゲート端子で互いに接続される。さらに、第4のカレントミラー段131、133の入力トランジスタ131と出力トランジスタ133は、それぞれのソース端子を供給電圧端子45に接続される。第4のカレントミラー段131、133の出力トランジスタ133のドレイン端子は、第3のカレントミラー段123、124のゲート端子に接続される。
【0094】
最後に、改良された変換器回路128では、第1および第2のカスコード電界効果トランジスタ129および132の互いに結合されたゲート端子に共通カスコード・バイアス電圧を供給するために、カスコード・バイアス電圧生成回路が設けられる。このカスコード・バイアス電圧生成回路は、第1の電界効果トランジスタ134と、第2の電界効果トランジスタ135と、第2の定電流源136とを含む直列回路を含む。この直列回路は、第6の基準電位(ここではアース電位)を保持する端子(ここではアース端子8)と、第7の基準電位(ここでは供給電圧)を保持する端子(ここでは供給電圧端子45)の間に配置される。この第1の電界効果トランジスタ134は、ここでは、そのドレイン端子が第2の電界効果トランジスタ135のソース端子に接続される。この第1および第2の電界効果トランジスタ134、135のゲート端子が、互いに接続され、この第2の電界効果トランジスタ135のドレイン端子に接続され、第2の定電流源136の第1の端子に接続され、共通カスコード・バイアス電圧を供給するために、第1および第2のカスコード電界効果トランジスタ129および132のゲート端子に接続される。カスコード・バイアス電圧生成回路の第1の電界効果トランジスタ134のソース端子が供給電圧端子45に接続され、第2の定電流源136の第2の端子がアース端子8に接続される。
【0095】
図15による改良された変換器回路128は、第3のカレントミラー段の電界効果トランジスタ123および124のゲート端子同士の接続点における信号の電圧の振れが動作時に大きくなり、そのエッジのしゅん度も高まることにより、先述の干渉の影響を低減し、電流ノード126における信号のエッジのしゅん度を高め、それによって、変換器回路128の出力26に出力される電磁発振のエッジのしゅん度を高める。改良された変換器回路128の第1のカスコード電界効果トランジスタ129は、変換器回路128の第1のカレントミラー段117、118の第2の電界効果トランジスタ118を流れる電流(すなわち、第1の中間信号の電流)の負荷インピーダンスを高め、それによって、電圧電位の低いほうへの電圧の振れを大きくし、第3のカレントミラー段123、124の電界効果トランジスタ123および124のゲート端子同士の接続点における減衰信号のエッジのしゅん度を高める。その結果として、変換器回路128の第3のカレントミラー段123、124の第2の電界効果トランジスタ124の通電がより速く行われ、インピーダンスが低くなる。
【0096】
変換器回路128の第3のカレントミラー段123、124の第2の電界効果トランジスタ124の急しゅんなスイッチオフは、補助スイッチ段の第4のカレントミラー段131、133の出力トランジスタ133とその制御信号によって実現される。この制御信号も、第4のカレントミラー段131、133のトランジスタ131、133の互いに結合されたゲート端子において、第1のカスケード段130、131、132によって急しゅんになる。第4のカレントミラー段131、133の出力トランジスタ133によって、第3のカレントミラー段123、124のゲート端子同士の接続点が、供給電圧端子45における正の供給電圧まで充電され、第3のカレントミラー段123、124の第2の電界効果トランジスタ124が非常に高い抵抗率に切り替わり、これによって、第2のカレントミラー段120、121の第2の電界効果トランジスタ121が電流ノード126を最大限の速さで放電できる。カスコード・バイアス電圧は、改良された変換器回路128のカスコード・バイアス電圧生成回路の、第1および第2の電界効果トランジスタ134、135のそれぞれと、第2の定電流源136からの定電流とによって設定される。改良された変換器回路128は、その出力26において、供給電圧とアース電位の間で切り替わる非常に良好な方形波信号を出力する。この信号は、「デジタル(CMOSレベルで非対称に動作する信号)」とも呼ばれる。
【0097】
ここまで説明した回路構成はすべて、「CMOSプロセス」または「Nウェル/Pウェル・プロセス」で構成できる。nMOSトランジスタをpMOSトランジスタと取り替え、pMOSトランジスタをnMOSトランジスタと取り替え、供給電圧電位を平衡させた相補的な構成ももちろん可能である。
【0098】
図面の注釈
図7
表題:図7による増幅器動作原理の伝達関数
オーバトーン
基本波周波数
図12
表題:増幅器とバンドパスの伝達関数と全体の伝達関数
増幅器
オフセット補償
バンドパス伝達関数
全体の伝達関数
図13
表題:図4による、発振器ループが開いている場合の全体の伝達関数
基本波周波数
オーバトーン
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】ピアース発振器の形で、水晶振動子の基本波発振によって動作する水晶発振器の概略回路図である。
【図2】ピアース発振器の形で、水晶振動子の高調波発振と、基本波発振の抑制とによって動作する水晶発振器の概略回路図である。
【図3】本発明による発振器回路の実施形態の一例の概略回路図である。
【図4】基本周波数水晶の等価回路図である。
【図5】オーバトーン水晶振動子の等価回路図である。
【図6】本発明による発振器回路の、単純な増幅器構成の実施形態の一例の概略回路図である。
【図7】オーバトーン水晶振動子を用いた、図6による増幅器構成の伝達関数をグラフで表した図である。
【図8】本発明による発振器回路の、改良された増幅器構成の実施形態の一例の概略回路図である。
【図9】本発明による発振器回路の、さらに改良された増幅器構成の実施形態の一例の概略回路図である。
【図10】本発明による発振器回路における、3つのバンドパス段のカスケード接続によるバンドパス・フィルタ構成の実施形態の一例を示す図である。
【図11】図10によるバンドパス・フィルタ構成の実施形態の例に含まれる、バンドパス段の実施形態の一例を示す図である。
【図12】オーバトーン水晶振動子を有する(具体的には図8または9による)増幅器構成の伝達関数の例と、(具体的には図10または11による)バンドパス・フィルタ構成の伝達関数の例をグラフで表し、さらに、バンドパス・フィルタ構成から増幅器構成へのフィードバックがある場合に、それによって形成される発振器回路の実施形態の一例の全体の伝達関数を示す図である。
【図13】図3に示した、本発明による発振器回路の実施形態の一例の、オーバトーン水晶振動子を有し、バンドパス・フィルタ構成から増幅器構成へのフィードバックがある場合の全体の伝達関数の例を、図12に示したグラフの細部において、グラフで表した図である。
【図14】本発明による発振器回路で用いられる、差動信号を非対称に動作する電磁発振に変換する単純な変換器回路の実施形態の一例の概略回路図である。
【図15】本発明による発振器回路で用いられる、差動信号を非対称に動作する電磁発振に変換する改良された変換器回路の実施形態の一例の概略回路図である。
【符号の説明】
【0100】
1 水晶振動子
2 反転増幅器4の入力
3 反転増幅器4の出力
4 反転増幅器
5 負荷抵抗
6 増幅器4の入力2とアース端子8の間のコンデンサ
7 増幅器4の出力3とアース端子8の間のコンデンサ
8 アース端子
9 (LC直列共振回路の)共振回路コンデンサ
10 (LC直列共振回路の)共振回路インダクタ
11 図6による増幅器構成
12 増幅器構成11、49、および64の第1の対称な(差動)入力
13 増幅器構成11、49、49、および64の第2の対称な(差動)入力
14 増幅器構成11、49、および64の第1の対称な(差動)出力
15 増幅器構成11、49、および64の第2の対称な(差動)出力
16 水晶振動子1の第1の端子
17 水晶振動子1の第2の端子
18 バンドパス・フィルタ構成18
19 バンドパス・フィルタ構成18の第1の対称な入力
20 バンドパス・フィルタ構成18の第2の対称な入力
21 バンドパス・フィルタ構成18の第1の対称な出力
22 バンドパス・フィルタ構成18の第2の対称な出力
23 変換器回路
24 変換器回路23および128の第1の差動入力
25 変換器回路23および128の第2の差動入力
26 変換器回路23および128の出力
27 発振器回路の信号の流れの方向を示す矢印
28 水晶振動子1(基本波発振)の等価回路図のコンデンサ
29 水晶振動子1(基本波発振)の等価回路図のインダクタンス
30 水晶振動子1(基本波発振)の等価回路図のオーム抵抗
31 水晶振動子1の等価回路図の終端コンデンサ
32 水晶振動子1(3次高調波発振)の等価回路図のコンデンサ
33 水晶振動子1(3次高調波発振)の等価回路図のインダクタ
34 水晶振動子1(3次高調波発振)の等価回路図のオーム抵抗
35 水晶振動子1(5次高調波発振)の等価回路図のコンデンサ
36 水晶振動子1(5次高調波発振)の等価回路図のインダクタ
37 水晶振動子1(5次高調波発振)の等価回路図のオーム抵抗
38 増幅器構成11、49、および64の差動入力段の第1の電界効果トランジスタ
39 増幅器構成11、49、および64の差動入力段の第2の電界効果トランジスタ
40 第1の電界効果トランジスタ38のソース端子
41 第2の電界効果トランジスタ39のソース端子
42 定電流源
43 定電流源42の第1の端子
44 定電流源42の第2の端子
45 供給電圧端子
46 第1の電界効果トランジスタ38に接続された第1の出力負荷トランジスタ
47 第2の電界効果トランジスタ39に接続された第2の出力負荷トランジスタ
48 出力負荷トランジスタ46および47用の制御電圧端子
49 図8による改良された増幅器構成
50 改良された増幅器構成49の制御電圧生成段
51 改良された増幅器構成49の動作点調整段
52 改良された増幅器構成49のオフセット補償装置
53 供給電圧端子45に接続された、制御電圧生成段50の定電流源54の端子
54 制御電圧生成段50の定電流源
55 ドレイン端子とゲート端子の間をブリッジされた、制御電圧生成段50の電界効果トランジスタ
56 制御電圧生成段50の別の電界効果トランジスタ
57 制御電圧生成段50の平滑コンデンサ
58 動作点調整段51の第1の電界効果トランジスタ
59 動作点調整段51の第2の電界効果トランジスタ
60 第1のハイパス回路のオーム抵抗
61 第1のハイパス回路のコンデンサ
62 第2のハイパス回路のオーム抵抗
63 第2のハイパス回路のコンデンサ
64 図9による改良された増幅器構成
65 図9による改良された増幅器構成64の補助始動回路
66 補助始動回路65の第1の電界効果トランジスタ
67 補助始動回路65の第2の電界効果トランジスタ
68 補助始動回路65の始動信号入力
69 補助始動回路65の遅延段
70 図10によるバンドパス・フィルタ構成18の第1のバンドパス段
71 図10によるバンドパス・フィルタ構成18の第2バンドパス段
72 図10によるバンドパス・フィルタ構成18の第3のバンドパス段
73 第1のバンドパス段70の第1の対称な入力
74 第1のバンドパス段70の第2の対称な入力
75 第1のバンドパス段70の第1の対称な出力
76 第1のバンドパス段70の第2の対称な出力
77 第2のバンドパス段71の第1の対称な入力
78 第2のバンドパス段71の第2の対称な入力
79 第2のバンドパス段71の第1の対称な出力
80 第2のバンドパス段71の第2の対称な出力
81 第3のバンドパス段72の第1の対称な入力
82 第3のバンドパス段72の第2の対称な入力
83 第3のバンドパス段72の第1の対称な出力
84 第3のバンドパス段72の第2の対称な出力
85 75と77の間の第1の接続点
86 76と78の間の第2の接続点
87 79と81の間の第3の接続点
88 80と82の間の第4の接続点
89 第1のバンドパス段70の第1の電界効果トランジスタ
90 第1のバンドパス段70の第2の電界効果トランジスタ
91 定電流源92の第1の端子
92 第1のバンドパス段70の第1の定電流源
93 第1の定電流源92の第2の端子
94 第1のバンドパス段70の第1のハイパス回路の第1のハイパス・コンデンサ
95 第1のバンドパス段70の第1のハイパス回路の第1のハイパス抵抗
96 第1のハイパス回路の第1のハイパス抵抗95の第1の端子(第1のバンドパス段70)
97 第1のバンドパス段70の第2のハイパス回路の第2のハイパス・コンデンサ
98 第1のバンドパス段70の第2のハイパス回路の第2のハイパス抵抗
99 第2のハイパス回路の第2のハイパス抵抗98の第1の端子(第1のバンドパス段70)
100 第1のハイパス回路の第1のハイパス抵抗95の第2の端子(第1のバンドパス段70)
101 第2のハイパス回路の第2のハイパス抵抗98の第2の端子(第1のバンドパス段70)
102 第1のバンドパス段70の直接バイアス電圧生成段103の出力端子102
103 第1のバンドパス段70の直接バイアス電圧生成段103
104 第1のバンドパス段70の直接バイアス電圧生成段103の第2の定電流源104
105 第1のバンドパス段70の直接バイアス電圧生成段103の第3の電界効果トランジスタ105
106 第1のバンドパス段70の第1のローパス回路の第1のローパス・コンデンサ
107 第1のバンドパス段70の第1のローパス回路の第1のローパス抵抗
108 第1のバンドパス段70の第2のローパス回路の第2のローパス・コンデンサ
109 第1のバンドパス段70の第2のローパス回路の第2のローパス抵抗
110 変換器回路23および128の入力段の第1の電界効果トランジスタ
111 変換器回路23および128の入力段の第2の電界効果トランジスタ
112 変換器回路23および128の第1の定電流源
113 変換器回路23および128の第1の定電流源112の第1の端子
114 変換器回路23および128の第1の定電流源112の第2の端子
115 変換器回路23および128の入力段の第2の出力端子
116 変換器回路23および128の入力段の第1の出力端子
117 変換器回路23および128の第1のカレントミラー段117、118の第1の電界効果トランジスタ
118 変換器回路23および128の第1のカレントミラー段117、118の第2の電界効果トランジスタ
119 変換器回路23および128の第1のカレントミラー段117、118の出力端子
120 変換器回路23および128の第2のカレントミラー段120、121の第1の電界効果トランジスタ
121 変換器回路23および128の第2のカレントミラー段120、121の第2の電界効果トランジスタ
122 変換器回路23および128の第2のカレントミラー段120、121の出力端子
123 変換器回路23および128の第3のカレントミラー段123、124の第1の電界効果トランジスタ
124 変換器回路23および128の第3のカレントミラー段123、124の第2の電界効果トランジスタ
125 変換器回路23および128の第3のカレントミラー段123、124の出力端子
126 変換器回路23および128の電流ノード(減算回路)
127 変換器回路23および128の出力ドライバ回路
128 改良された変換器回路
129 改良された変換器回路128の第1のカスコード電界効果トランジスタ
130 改良された変換器回路128の補助スイッチオフ段の第1のカスケード段の第1の電界効果トランジスタ
131 改良された変換器回路128の補助スイッチオフ段の第4のカレントミラー段131、133の入力トランジスタ
132 改良された変換器回路128の補助スイッチオフ段の第4のカレントミラー段131、133の入力辺にある第2のカスコード電界効果トランジスタ
133 改良された変換器回路128の補助スイッチオフ段の第4のカレントミラー段131、133の出力トランジスタ

134 改良された変換器回路128のカスコード・バイアス電圧生成段の第1の電界効果トランジスタ
135 改良された変換器回路128のカスコード・バイアス電圧生成段の第2の電界効果トランジスタ
136 改良された変換器回路128のカスコード・バイアス電圧生成段の第2の定電流源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電磁発振を発生させる発振器回路であって、
少なくとも1つの入力と少なくとも1つの出力を有する増幅器構成と、
前記増幅器構成の少なくとも1つの出力に接続された水晶振動子と、
少なくとも1つの入力が、前記水晶振動子と、前記水晶振動子に接続された、前記増幅器構成の少なくとも1つの出力とに接続され、少なくとも1つの出力が、前記増幅器構成の入力または少なくとも1つの入力に反結合されたバンドパス・フィルタ構成とを含み、
前記バンドパス・フィルタ構成の振幅−周波数特性および/または位相−周波数特性を、前記増幅器構成および前記水晶振動子の振幅−周波数特性および位相−周波数特性に応じて設計することにより、前記水晶振動子の選択された高調波に対してのみ発振条件が満たされ、前記選択された水晶振動子の高調波によって形成される高周波電磁発振を前記バンドパス・フィルタ構成の出力において利用することができる発振器回路。
【請求項2】
前記増幅器構成が、いずれの場合にも、少なくともほぼ対称な入力および出力(差動入力および差動出力)の少なくとも1対を有し、第1の基準電位に関して少なくともほぼ対称に動作する電磁発振(差動信号として知られる)を処理するよう設計されることを特徴とする、請求項1に記載の発振器回路。
【請求項3】
前記増幅器構成が、2つの電界効果トランジスタを備えた差動増幅器回路を含み、前記2つの電界効果トランジスタのソース端子同士が結合され、前記2つの各電界効果トランジスタのゲート端子が前記増幅器構成の差動入力の一方に結合され、前記2つの各電界効果トランジスタのドレイン端子が前記増幅器構成の差動出力の一方を形成し、前記各ドレイン端子がさらに、それぞれ、少なくとも1つの電解効果トランジスタ(出力負荷トランジスタ)を含む負荷経路を介して、第2の基準電位を保持する端子に結合されることを特徴とする、請求項2に記載の発振器回路。
【請求項4】
前記増幅器構成が、前記出力負荷トランジスタのゲート端子に供給される制御電圧を生成する制御電圧生成段を含むことを特徴とする、請求項3に記載の発振器回路。
【請求項5】
前記制御電圧生成段が、定電流源と、ドレイン端子とゲート端子の間をブリッジされた電解効果トランジスタとを含む直列回路を含むことを特徴とする、請求項4に記載の発振器回路。
【請求項6】
前記増幅器構成が、3つの電界効果トランジスタを有する動作点調整段を含み、前記3つのうちの第1の電界効果トランジスタが第1の負荷経路に配置され、前記3つのうちの第2の電界効果トランジスタが第2の負荷経路に配置され、前記2つの各電界効果トランジスタがその配置場所で前記出力負荷トランジスタに直列に接続され、前記3つのうちの第3の電界効果トランジスタが、前記制御電圧生成段の定電流源と電解効果トランジスタを含む直列回路に直列に接続され、前記動作点調整段の前記3つのうちの第1の電解効果トランジスタのゲート端子が前記増幅器構成の第1の差動出力に接続され、前記動作点調整段の前記3つのうちの第2の電解効果トランジスタのゲート端子が前記増幅器構成の第2の差動出力に接続され、前記動作点調整段の前記3つのうちの第3の電解効果トランジスタのゲート端子が前記出力負荷トランジスタのゲート端子に接続され、前記動作点調整段の前記3つの電解効果トランジスタが、前記3つの電解効果トランジスタのソース端子により、前記第2の基準電位を保持する端子に配線されることを特徴とする、請求項5に記載の発振器回路。
【請求項7】
前記増幅器構成が、
前記増幅器構成の各差動入力と、
前記差動入力と結合された前記増幅器構成を有する前記差動増幅器回路の電解効果トランジスタのゲート端子と、
前記電解効果トランジスタのドレイン端子によって形成される差動出力との間にハイパス回路をいずれの場合にも含むオフセット補償装置を含み、
前記ハイパス回路の制限周波数が、前記発振器回路の周波数動作範囲に比べると小さいことを特徴とする、請求項3に記載の発振器回路。
【請求項8】
前記各ハイパス回路がコンデンサを含み、前記コンデンサを介して、前記増幅器構成の差動入力が、前記増幅器構成を含む前記差動増幅器回路の電界効果トランジスタのゲート端子に結合され、前記各ハイパス回路がさらにオーム抵抗素子を含み、前記オーム抵抗素子を介して、前記増幅器構成を含む前記差動増幅器回路の電解効果トランジスタのゲート端子が、前記電解効果トランジスタのドレイン端子によって形成される、前記増幅器構成の差動出力に結合されることを特徴とする、請求項7に記載の発振器回路。
【請求項9】
請求項3に記載の発振器回路であって、前記増幅器構成が補助始動回路に結合され、前記発振器回路が動作状態に入るときのあらかじめ決められた時間の間に、前記増幅器構成を含む前記差動増幅器回路の、ソース端子同士を結合された電解効果トランジスタのゲート端子に、前記補助始動回路によって差動電圧が供給されることを特徴とする発振器回路。
【請求項10】
請求項9に記載の発振器回路であって、前記補助始動回路が、好ましくは、
前記増幅器構成を含む前記差動増幅器回路の、ソース端子同士を結合された電解効果トランジスタのうちの第1の電解効果トランジスタのゲート端子と、第3の基準電位との間に配置された第1の電界効果トランジスタと、
前記増幅器構成を含む前記差動増幅器回路の、ソース端子同士を結合された電解効果トランジスタのうちの第2の電解効果トランジスタのゲート端子と、第3の基準電位との間に配置された第2の電界効果トランジスタと、
前記発振器回路が動作状態に入るときに、少なくともほとんどパルス形状またはステップ形状である始動信号を供給する始動信号入力と、
遅延段とを含み、
前記始動信号入力が、前記補助始動回路の第1の電解効果トランジスタのゲート端子に直接結合され、かつ、前記遅延段を介して、前記補助始動回路の第2の電解効果トランジスタのゲート端子に結合されることを特徴とする発振器回路。
【請求項11】
前記増幅器構成によって差動信号の形で発生する電磁発振を供給するために、前記水晶振動子が、二端子回路の形をとり、いずれの場合にも前記水晶振動子の一方の端子が、いずれの場合にも、前記増幅器構成の差動出力対の一方の出力に接続されることを特徴とする、請求項2に記載の発振器回路。
【請求項12】
前記バンドパス・フィルタ構成が、いずれの場合にも、少なくともほぼ対称な入力および出力(差動入力および差動出力として知られる)の少なくとも1対を有し、第4の基準電位に関して少なくともほぼ対称に動作する電磁発振(差動信号として知られる)を処理するよう設計されることを特徴とする、請求項1に記載の発振器回路。
【請求項13】
前記バンドパス・フィルタ構成が、前記バンドパス・フィルタ構成の差動入力の少なくとも1対において、前記水晶振動子の端子に接続されている、前記増幅器構成の差動出力対に少なくとも接続され、前記バンドパス・フィルタ構成の差動出力の少なくとも1対において、前記増幅器構成の差動入力の少なくとも1対に接続されることを特徴とする、請求項12に記載の発振器回路。
【請求項14】
前記バンドパス・フィルタ構成が、少なくとも2つの低性能バンドパス段のカスケード接続として設計されることを特徴とする、請求項13に記載の発振器回路。
【請求項15】
前記各バンドパス段が、ソース端子同士を結合された2つの電界効果トランジスタを有する差動増幅器回路と、1対の差動入力と、1対の差動出力とを有し、前記各差動入力が前記ハイパス回路の1つを介して前記電解効果トランジスタのうちの一方の電界効果トランジスタのゲート端子に結合され、前記電解効果トランジスタの各ドレイン端子が前記バンドパス段の差動出力の一方を形成し、前記各ドレイン端子がさらに、前記ローパス回路の1つを介して、第5の基準電位を保持する端子に接続され、カスケード接続で配置される前記バンドパス段のうちの第1のバンドパス段の差動入力が、前記水晶振動子の端子に接続される、前記バンドパス・フィルタ構成の差動入力を形成し、カスケード接続で配置される前記バンドパス段のうちの最終のバンドパス段の差動出力が、前記増幅器構成の差動入力に接続される、前記バンドパス・フィルタ構成の差動出力を形成するよう、前記バンドパス段が設計されることを特徴とする、請求項14に記載の発振器回路。
【請求項16】
前記ハイパス回路および/または前記ローパス回路がRC回路の形をとることを特徴とする、請求項15に記載の発振器回路。
【請求項17】
前記RC回路が切り替え可能なオーム抵抗を備えることを特徴とする、請求項16に記載の発振器回路。
【請求項18】
基準抵抗を有するRC回路において、前記切り替え可能なオーム抵抗の抵抗値をトリミングするトリミング回路を特徴とする、請求項17に記載の発振器回路。
【請求項19】
前記バンドパス・フィルタ構成の少なくとも1対の差動出力に結合され、前記差動出力から出力された差動信号を、前記第4の基準電位に関して非対称に動作する電磁発振に変換する変換器回路を特徴とする、請求項12に記載の発振器回路。
【請求項20】
前記変換器回路が、
ソース端子同士を結合された電界効果トランジスタを有する差動増幅器として設計され、変換される差動信号が供給される入力段と、
ゲート端子同士を結合された電界効果トランジスタを有し、前記変換器回路の前記入力段の第1の差動出力信号を第1の中間信号にミラーリングするよう設計された第1のカレントミラー段と、
ゲート端子同士を結合された電界効果トランジスタを有し、前記変換器回路の前記入力段の第2の差動出力信号を第2の中間信号にミラーリングするよう設計された第2のカレントミラー段と、
ゲート端子同士を結合された電界効果トランジスタを有し、前記変換器回路の前記第1のカレントミラー段の前記第1の中間信号を第3の中間信号にミラーリングするよう設計された第3のカレントミラー段と、
電流ノードとして設計され、前記第3の中間信号から前記第2の中間信号を減算する減算回路と、
出力ドライバ回路とを含み、
前記第3のカレントミラー段がさらに補助スイッチオン段と補助スイッチオフ段と前記第4のカレントミラー段に結合され、
前記補助スイッチオン段が、前記第3のカレントミラー段の入力辺に第1のカスコード電界効果トランジスタを有し、
前記補助スイッチオフ段が第1のカスケード段を含み、
前記第1のカスケード段が、
前記第2のカレントミラー段に組み込まれ、前記第2のカレントミラー段と一緒に、前記変換器回路の前記入力段の前記第2の差動出力信号によって動作し、少なくとも複数のセグメントをまたいで前記第2の中間信号に本質的に比例する第4の中間信号を出力する第1の電界効果トランジスタと、
電界効果トランジスタとして設計される、第4のカレントミラー段の入力トランジスタと、
前記第4のカレントミラー段の入力辺にある第2のカスコード電界効果トランジスタとを含む直列回路を有し、
前記第4のカレントミラー段が、前記第4の中間信号を第5の中間信号にミラーリングし、前記第5の中間信号を前記第3のカレントミラー段に供給し、
電界効果トランジスタとして設計され、前記第4の中間信号を供給する入力トランジスタと、
電界効果トランジスタとして設計され、前記第5の中間信号を出力する出力トランジスタとを含み、
前記第1および第2のカスコード電界効果トランジスタの互いに結合されたゲート端子に共通カスコード・バイアス電圧を供給するためにカスコード・バイアス電圧生成回路が設けられることを特徴とする、請求項19に記載の発振器回路。
【請求項21】
前記カスコード・バイアス電圧生成回路が、第6の基準電位を保持する端子と第7の基準電位を保持する端子との間に配置される、第1および第2の電界効果トランジスタと定電流源とを含む直列回路を含み、前記第1の電界効果トランジスタのドレイン端子が前記第2の電界効果トランジスタのソース端子に接続され、前記第1および第2の電界効果トランジスタのゲート端子が、互いに接続され、さらに前記第2の電界効果トランジスタのドレイン端子に接続され、さらに前記第1および第2のカスコード電界効果トランジスタのゲート端子に接続されて、前記共通カスコード・バイアス電圧を供給することを特徴とする、請求項20に記載の発振器回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2006−510254(P2006−510254A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558296(P2004−558296)
【出願日】平成15年12月4日(2003.12.4)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005868
【国際公開番号】WO2004/054090
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】