説明

高圧処理により持続性放出制御型の固形医薬組成物を製造する方法

本発明は、少なくとも一つの有効成分と少なくとも一つの高分子を包含する組成物を高圧処理することによる、持続性放出制御型の単位用量固形医薬組成物を製造する方法に関する。本発明はまたその得られた固形医薬組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの有効成分と少なくとも一つの高分子を包含する組成物を高圧処理することにより、持続性放出制御型の固形医薬組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間および動物の医薬分野において、有効成分を持続性で制御型放出する性質を有する組成物は頻繁に使用される。これにより、単回投与において、数時間から、ある種の埋め込み形態、特に眼科の挿入物の場合は最長数ヶ月の間持続する効果を得ることが可能となる。
そのような性質を有する組成物を得るために異なる種類の剤形が発展し、該組成物を製造するために種々の方法が用いられる。
【0003】
一般には、有効成分を高分子と混合する。特異的な製造方法を適用することで当該高分子はその有効成分を含むマトリクスを形成する。従って、有効成分を持続性で制御型放出する性質(または放出の動力学)は、一方でそのマトリクス形成に用いられた高分子と、そして他方では具体的な特性を有するマトリクスを得るために使用された製造方法と密接に関係する。特に、高分子が互いに溶融し、均一な高分子マトリクスを形成して自ら空間的に編成されるように、用いた方法がその高分子のガラス転移温度に達することが好ましい。
【0004】
「ガラス転移温度」とは、高分子が柔らかく柔軟な状態から硬く(可塑性)または脆い状態へと移る温度をさす。こうして、その有効成分を高分子マトリクス内でよく分離させるためには、製造方法においてガラス転移温度より高い温度で熱処理して高分子を軟化させなければならず、高分子に穴や小孔のない圧縮形態を帯びさせることでマトリクスを製造し、その後温度をガラス転移温度より低下させて高分子を再び硬化させ、例えばガス、水蒸気、酸素、水等の外部からの攻撃に耐えるようにしなければならない。
組成物にその有効成分の持続性放出制御型の性質を付与することのできる製造方法はいくつかよく知られている。
【0005】
乾燥形態での圧縮方法が知られていて、二重のまたは直接的に可能な圧縮である。「二重圧縮」の語は、二重圧縮および小型化圧縮として知られている技術をさす。この方法は多くの欠点がある。特に、有効成分の周辺にマトリクスを形成するのに大量の高分子を必要とする。加えて、圧縮はガラス転移温度に到達することができないので、高分子が互いによく溶融することができない。結果として、生成したマトリクスは粒子間および有効成分を包む高分子中に多数の小孔を有し、これが持続性かつ制御された有効成分放出に影響を与える。
【0006】
さらに、溶媒を用いて造粒し、続いて圧縮する方法が知られている。この方法は、造粒の間(溶媒中に可溶化させる高分子の全部若しくは一部により、そして可塑剤の使用により)にガラス転移温度を低下させ、よって有効成分を覆う皮膜の形成が可能である。しかし、圧縮の間に作用する力が高分子を十分に溶融させず、理想的なマトリクスを得ることはできない。この方法は実際のところ遅延型の持続性形態を製造することができるが、しかしこれらの溶解時間は一般に8時間に満たない。
【0007】
最後に熱時押し出し法が知られている。この種の方法は持続性放出組成物の製造に最もよく用いられている。連続的に断片を形成するため、温度を上げてあらかじめ軟化させた可塑性高分子よりなる組成物を口金から押し出す方法である。その間高温が適用され、ガラス転移温度に到達することが可能なので、それにより有効成分の周辺に遮蔽皮膜を形成させ粒子間の小孔のないマトリクスを製造することが可能となる。この方法によって、有意な時間経過中に持続性かつ制御された有効成分放出を可能とする組成物を得ることができる。しかしながら、この方法では熱に敏感な有効成分は持続性放出形態の製剤化ができないので、高温でも安定な有効成分にのみ適用可能という欠点がある。実際、本法は一般に150℃を超える高温の適用が必要である。
【0008】
高圧処理は有効成分および組成物の殺菌方法に利用される。仏国出願FR00 01059号は3x10および6x10Paの間の高圧処理による少なくともひとつの有効成分の殺菌方法を記載している。さらに、仏国出願FR02 05458号は、200および1000MPaの間の高圧処理を用い、分解を伴わずに少なくともひとつの有効成分を含む微粉化またはナノ分散化形態の医薬組成物を殺菌する方法を記載する。高圧処理による食品や医薬等の殺菌は既に当業者によく知られている。一方、持続性かつ制御された有効成分放出を可能とする組成物の製造方法において高圧処理はこれまで用いられたことがなかった。
【0009】
本発明は上記で議論した製造方法の固有の欠点を改めるものである。
本発明の主題は少なくともひとつの有効成分を持続的にかつ制御放出する固形医薬組成物の製造方法であって、該方法は少なくともひとつの有効成分とひとつの高分子を含む固体組成物を高圧処理することを含む。
発明者等は、高圧処理による固形医薬組成物の製造は、少なくともひとつの有効成分を持続的にかつ制御放出することのできる均一な組成物を得ることを可能とすることを示した。
【0010】
定義
「組成物」とは任意の固形の組成物を意味する。固形組成物は特に、一方では錠剤、埋め込み剤、挿入剤、ローゼンジ、坐剤等の単位用量剤であり、他方では散剤のような粉末の固体よりなる。「挿入剤」とは、眼への作用を目的として結膜嚢への挿入を意図した、適切な大きさと形状の固体若しくは半固体の無菌製剤を特に意味する(例えば、Inserenda Ophtalmica, monograph 830, European Pharmacopoeia, 2004, 第4版参照)。
【0011】
「持続性放出」は、8時間から12時間または数ヶ月(埋め込み剤の場合)の間、一定の若しくはプログラムされた方法で、ひとつ以上の有効成分を生体が利用可能とすることと理解すべきである。本出願の枠内で「制御放出」の表現は直線的動態(ゼロ次動態)に従って有効成分の放出を特徴付け、つまり、有効成分は溶媒中へ時間内に一定速度で放出される。
「高圧」は一般に100MPaを超える圧における処理を意味する。
「熱に敏感」とは、数時間による高温処理、例えば、100℃で15時間によりその生物活性の一部若しくは全部が消失する有効成分を意味する。
【0012】
持続性放出制御型の医薬組成物の製造方法
従って、本発明は少なくともひとつの有効成分と少なくともひとつの高分子を含む組成物の高圧処理により、持続的にかつ制御放出する固形医薬組成物を製造する方法に関する。
より正確には、当該方法は少なくともひとつの有効成分と少なくともひとつの高分子を含む固体組成物を10を超える圧力と熱処理に付す工程を含む。熱処理は一般に10℃を超える温度で行われる。その工程の時間は一般に1分又はそれ以上である。
【0013】
好ましくは、その固体組成物は10および10Paの間、より好ましくは10および6x10Paの間、さらに好ましくは2.5x10および5x10Paの間の高圧に付される。
好ましく、はその熱処理の温度は10℃から150℃の間、より好ましくは20℃から120℃の間、さらに好ましくは45℃から100℃の間、さらにもっと好ましくは60℃と90℃の間である。
好ましくは当該工程の時間は1分間から1時間、より好ましくは1分間から30分間の間である。
こうして、特に好ましい態様では、当該方法は少なくともひとつの有効成分と少なくともひとつの高分子を含む固体組成物を、10および6x10Paの間の圧、および20℃から120℃の間の温度で1分間から30分間の時間処理する工程を含む。
【0014】
より具体的には、満足すべき性質のマトリクスを得るため、製造方法の課程においてその高分子のガラス転移温度に到達することが望まれる。実際、ガラス転移温度に達すると高分子の挙動が「融解」して塑性体としての挙動とともに可鍛性となり、粒子間の小孔のない(若しくはほとんどない)均一なマトリクスを形成する。高分子のガラス転移温度は高分子の性質または使用される高分子に依存する。高分子のガラス転移温度は、その高分子供給者により文書で与えられる。実際のところ、これらの温度は使用される高分子の性質(分子量、架橋、置換基およびその位置、配列等)、およびそれらを用いて使用する方法(使用される溶媒、製造方法)に大きく依存する。その値が知られていない場合は、示差熱分析(DTA)や示差走査熱量測定(DSC)により決定される;これらの方法は当業者によく知られている〔例えば、「薬学熱分析−技術と応用」、9〜14頁、29〜31頁、Ford, J.およびTimmins P.、第2版、Tailor & Francis, ISBN 0748407618参照〕。ここで高分子のガラス転移温度は当該高分子における結晶形および非結晶形の比率に依存することに特に留意すべきである。
【0015】
本発明の方法に従う組成物は任意の種類の有効成分を含んでもよい。例えば、その組成物は少なくともひとつの有効成分を含むことができ、その有効成分は特に、抗生物質類、非ステロイド性および非コルチコステロイド性抗炎症剤類、ホルモンおよびホルモン類似体類、抗ガン剤類、抗ウイルス剤類、中枢神経系薬物(抗偏頭痛、鎮静、睡眠薬、抗パーキンソン、抗うつ剤)類に属することができる。好ましくは、その組成物は特に抗生物質の類に属する少なくともひとつの有効成分を含む。最終的に、その組成物は特に好ましくは、フシジン酸を含む。
【0016】
該組成物はさらに、生体適合性のある少なくともひとつの高分子を含む。有効成分の性質および/または投与方法に依存して、その生体適合性のある高分子は水溶性でも非水溶性でもよい。異なるタイプの高分子が特に本発明の方法の実施に適合され、それらは例えば特に以下のようなものに属する高分子である;アクリル酸誘導体、ポリカーボフィリック誘導体、セルロース誘導体、ビニル誘導体(エチレン分子と関連する、またはしない酢酸ビニル、ビニルアルコール、フタル酸酢酸ビニル)またはビニルピロリジン、ガム類(ラック、アドラガンテ、キサンタン、グアー、アラビアガム、トラガカント、スクレログルカン、カラギーナン)、多糖類、ポリオキシエチレン誘導体、ポリエチレン-ポリプロピレングリコール(ポロキサマー)、デキストラン誘導体、ゼラチン誘導体、糖およびフェノール誘導体、アルギン酸誘導体、シリコン誘導体、乳酸およびグリコール酸誘導体、ポリ無水物誘導体、ポリブタジエン誘導体、グルタミン酸誘導体、ポリオルトエステル誘導体、および/またはイオン交換樹脂誘導体。好ましくはセルロース誘導体ファミリーに属する高分子である。特に好ましくはヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはエチルセルロースである。
【0017】
有効成分と高分子のそれぞれの比率はその用いられる有効成分と高分子の性質に依存する。従って水性の媒体に対する溶解度が極めて低い有効成分が存在する場合は組成物中に大量の高分子を導入する必要はない。実際、媒体中に固体の有効成分が溶解する速度は、当該媒体に対するその溶解度に比例する。その結果、媒体に対する溶解度が低い有効成分はその媒体中への溶解速度は低く、その有効成分の放出はゆっくりと持続性となる。個々の比率の決定は当業者の技術範囲内にある。
【0018】
該組成物は任意で、その他薬学的に許容される種々の賦形剤をさらに含む。薬学的に許容される「賦形剤」とは、有効成分の生物学的活性の性質を変更することなく組成物の成型を容易にすることのできる全ての化合物を意味する。薬学的に許容される賦形剤には、溶媒、可塑剤、滑沢剤、分散媒、吸収抑制剤、フロー剤等が含まれる。該組成物は好ましくは、可塑剤、滑沢剤および/またはフロー剤をさらに含む。
こうして、特にその高分子が圧縮性に難がある場合は、該組成物は任意で少なくともひとつの可塑剤をさらに含む。本発明の方法の実施においては特に異なるタイプの可塑剤が適用され、例えばポリエチレングリコール誘導体、植物油または鉱物油、フタル酸若しくはセバシン酸誘導体、トリアセチン、トリエチルクエン酸エステル、および脂肪物質が適用される。好ましくは該可塑剤は植物油である。特に好ましくはヒマシ油である。
【0019】
その上、該組成物は任意で、少なくともひとつの滑沢剤をさらに含む。本発明の方法の実施においては特に異なるタイプの滑沢剤が適用され、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ロイシン、グリシン、ラウリル硫酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、グリセロールベネート、水素化植物油、ポリエチレングリコール、シリコン、タルク、ステアリン酸亜鉛、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセロールが適用される。好ましい滑沢剤は水素化植物油である。
好ましくは、固体組成物は組成物全体重量に対する重量比で、10から40%の有効成分、特にフシジン酸;および50から90%の高分子および任意でひとつ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。より好ましくは、固体組成物は組成物全体重量に対する重量比で、20から30%の有効成分、特にフシジン酸および60から80%の高分子および任意でひとつ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0020】
好ましい態様によると、本発明の方法に従う当該固体組成物は、フシジン酸25%、ヒドロキシエチルセルロース1%、ヒドロキシプロピルメチルセルロース65.5%、エチルセルロース5%、水素化植物油3%およびヒマシ油0.5%を含み、ここで百分率は組成物全体重量に対する重量比で表されている。特に好ましい当該固体組成物は眼科挿入物である。該挿入物は結膜嚢へ直接挿入することができる。にもかかわらず、動物におけるこの高圧処理固形組成物のどのような使用の前においても、該組成物を任意で殺菌(放射線またはその他)および/またはパック化(サッシェまたはブリスター包装)してもよい。
【0021】
少なくとも一つの有効成分、少なくとも一つの高分子および任意で一つ以上の賦形剤を含み、本発明の方法に従属する組成物は固形物である。有利には、高圧処理に先立って組成物を形成する異なる化合物(少なくとも一つの有効成分、少なくとも一つの高分子および任意の賦形剤)を混合して粉体の固形物を形成する。その粉体固形物は粒状固形物を形成させるため、当業者によく知られた造粒技術を用いて任意に粒状化する。最後にその粉体または粒状固形物を当業者によく知られた技術により任意で加圧し、型で作り、成型して固形の単位用量を得る。
好ましくは固形の単位用量へと変換する前にその組成物を形成する異なる化合物を混合して造粒する。
【0022】
それから固形物(粉体、粒状物または単位用量)を加圧処理して持続性で有効成分を制御放出する組成物を得る。
高圧処理は組成物の寸法を相似的に縮小するようにして適用される。「相似的」(または縮小)とは全ての空間的方向において比例した縮小または拡大による目的物の変形を意味する。従って、相似的縮小はいかなる形状変化も含まない。そのような形状変化を伴わない縮小は等方圧、即ち、処理の工程において適用される圧が固形剤の表面積のあらゆる点において等しい圧の適用により得られる。
【0023】
高圧処理は、熱処理のため好ましくは高温型の等方圧器具を用いて実施される。例えば、NovaSwiss(登録商標)により市販されている、工業的規模の熱等方圧器が本発明の実施には適している。
一般に高圧の使用は具体的な温度と組み合わせられる。温度の選択は高分子若しくは使用された高分子の性質と直接相関する。適切な温度の適用は使用された高分子の変性、特にその物理的特性の変更を可能とする。実際、高分子のガラス転移温度を超える温度の適用は高分子の溶融と有効成分周辺の後者の縮合により、均一な密閉されたマトリクスの形成を可能とする。
【0024】
その上、本発明者等は高圧の適用により先行技術の熱時押出し工程と比較して高分子のガラス転移温度を低くできることを観察した。熱に敏感な有効成分を作用させることが可能なり、それ故に熱に敏感な有効成分を少なくとも一つ含む組成物の製造に本発明の方法を適用することができるので、この温度低下は重要である。
高圧と適切な温度を組み合わせて適用することは、結果的に得られる組成物の多孔率を大きく低下させる。特に、粒子内および粒子間の孔数の低下、表面積/体積比の減少および組成物密度の上昇が認められる。これらの変更は有効成分の放出の時間的特性、および水と気体の組成物中の貫通における大きな減少に直接影響する。
【0025】
こうして、本発明の方法は、混合してから実質上高分子マトリクス中で任意で粒子化および/または圧縮しそれから任意で加圧して有効成分を混ぜ込んだ後に、高圧処理の効果により多数の粒子間孔の封じ込めに影響し、高分子マトリクスの連続性と堅固度を確保するであろう。この連続性と堅固度は高分子マトリクスに対して、有効成分の溶解を引き延ばし規制することを可能とする性質を付与する。得られた概念は、溶融押出しにより得られた生成物と少なくとも同程度の持続性を有する溶解を可能とする。
この工程では、溶融押出し技術のそれと比べて非常に低い温度でよいという利点がある。
加えて、粒状化において異なる溶媒と高分子を用いる粒状化段階を経由させ、使用する高分子の種類と性質に応じて広汎な性質を提供することを可能とする。
【0026】
持続性放出制御型の固形医薬組成物
本発明の別の主題は、本発明の方法により得られる持続性放出制御型の医薬組成物に関する。
本発明の特段の態様に従うと、当該固形医薬組成物は少なくとも一つの有効成分と少なくとも一つの高分子を含む。
該医薬組成物は、少なくとも一つの当該有効成分に対し、少なくとも8時間、好ましくは、少なくとも12時間、さらに好ましくは、1、2、若しくは数ヶ月の期間、持続性でかつ制御された放出を可能とする。
【0027】
好ましい態様に従うと、本発明の医薬組成物は有効成分としてフシジン酸を含む。有利には、該医薬組成物はヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、およびエチルセルロースよりなる群から選択される少なくとも一つの高分子を含む。
好ましくは、その医薬組成物は25%のフシジン酸、1%ヒドロキシエチルセルロース、65.5%ヒドロキシメチルプロピルセルロース、5%エチルセルロース、3%水素化植物油および0.5%ヒマシ油を含む。
本発明はその非制限的な例として提供される以下の図および実施例から、より容易に理解することができる。
【実施例】
【0028】
実施例1 高圧処理固形剤と非処理固形剤との技術的特性比較
25%フシジン酸を65.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、5%エチルセルロース、1%ヒドロキシエチルセルロース、3%水素化植物油および0.5%ヒマシ油で連続的に造粒し、それからその直径を下表に示す管状形のフシジン酸用量単位固形物を得るため加圧して固形剤を得る。造粒及び加圧の工程は慣用的な器具類を用いて実施される。
【0029】
本発明によれば、器具「ピロートHPタウト イノックス7000バール」〔参照7-1000-097、Novaswiss(登録商標)より販売〕を用いて固形物を処理する。そのために、固形物を密閉したプラスチック容器内に入れ静水圧容器内の水中に沈める。それから、温度80℃静水圧5.10Paを10分間適用して固形物を処理する。より正確には、当該実施の方法は、規定圧増加5分間の第一相、続いて温度80℃、静水圧5x10Pa、10分間の平坦な第二相、そして50秒間の脱圧相よりなる。
10分間の静止相のみが持続性放出制御型のプロフィール改善に影響を与える。
【0030】
得られた処理済み固形剤の特性を未処理固形剤と比較する。特に、処理済みおよび未処理の固形剤につき、質量、厚さ、直径、表面積、体積および表面積/体積比を当業者によく知られた方法で計算した。得られた結果の詳細を以下の表1に示す。

【表1】

【0031】
予想通り、処理済み固形剤の寸法は高圧処理の適用により縮小した。
表面積および体積の測定により、未処理固形剤よりも処理済み固形剤の方がこれらふたつのパラメータ比は高いことが示される。結果として、表面積/体積比の増加は表面積よりも体積の方が早く減少することを示す。この増加は有効成分上の高分子マトリクスの有意な縮小を特徴づける。処理済み組成物の質量は変化しないので、表面積/体積比の増加には、外部媒体と処理済み固形剤との接触の減少が含まれる。接触面積が減少するので、有効成分の放出は延長され遅延化する。
【0032】
有効成分上の高分子の縮小および外部媒体と接触する表面積の減少に伴う効果は、溶解時間の増加につながる。これは粒子間細孔の消失に必然的に起因していて、処置の間に適応された温度により高分子が変性し、当該高分子により高分子封入膜下で有効成分は完全に分離される。
【0033】
実施例2 高圧処理固形剤と非処理固形剤との溶解特性比較
当該高圧処理および未処理固形剤を37℃でpH7.5のリン酸緩衝溶媒1リットルに溶解する(35%ソーダでpH7.5に調節したリン酸二水素カリウム6.8g/L)。当該溶液を回転数100rpmの羽根でかき混ぜる。
【0034】
有効成分の測定はHPLCを用いて行った。測定はC18クロマシル〔Kromasil(登録商標)〕逆層カラムを使用し、移動相は体積比でメタノール9、水9、リン酸溶液(10g/L)16.4およびアセトニトリル65.6よりなる混合物を用いて行った。検出は紫外線分光器を用いて波長235nmで行った(フシジン酸の保持時間は5.98分)。フシジン酸についてシンク条件が確かめられたことに留意する必要がある。ここで「シンク条件」とは、溶媒の飽和と有効成分の溶出により溶解を調べることなく、薬学的製剤の溶解をもたらすことのできる実験条件をいう。
この条件下では、薬学的製剤中に通常存在する有効成分の3倍の量を定義した溶媒体積中に可溶化することができるであろう。
【0035】
得られた結果を本出願に添付した図1に示す。
処理済み固形剤中に含まれる有効成分の放出が、未処理固形剤の場合と比較して少なくとも2時間持続化されることが観察される。同様に、この持続性放出が溶解プロフィールの0次への変換を伴うことが観察される。換言すると、処理済み固形剤から放出される有効成分の量が時間とともに直線的であることを意味する。これに対して、未処理の固形剤の場合は放出プロフィールは時間とともに不規則である。同様に、有効成分の放出速度を時間とともに表すと、0次放出の製剤の場合はこの速度は一定でありそれ故水平な直線が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1はリン酸緩衝液中の溶解により、本発明の組成物および高圧処理をしない組成物中に含まれる有効成分の放出プロフィール分析を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの有効成分と少なくとも一つの高分子を含む固形組成物に対して、約10Paより高い圧と10℃を超える温度における熱による処理を少なくとも1分間行う工程を含む、持続性放出制御型の固形医薬組成物を製造する方法。
【請求項2】
少なくとも一つの有効成分と少なくとも一つの高分子を含む当該固形組成物を、10Paと10Paの間の圧で処理することを特徴とする、請求項1の製造方法。
【請求項3】
熱処理が10℃と150℃の間で行われることを特徴とする、請求項1または2の製造方法。
【請求項4】
当該工程が1分間から1時間の間行われることを特徴とする、請求項1から3のいずれかの製造方法。
【請求項5】
少なくとも一つの有効成分と少なくとも一つの高分子を含む当該固形組成物に対して、10Paと6x10Paの間の圧と20℃から120℃の間の温度における熱による処理を1分間から30分間の間行うことを特徴とする、請求項1から4のいずれかの製造方法。
【請求項6】
少なくとも一つの有効成分と少なくとも一つの高分子を含む当該固形組成物が、錠剤、埋め込み剤、挿入剤、ローゼンジ、坐剤および例えば散剤のような粉体固形剤からなる群より選択される固形剤であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかの製造方法。
【請求項7】
当該少なくとも一つの有効成分が、抗生物質類、非ステロイド性およびコルチコステロイド性抗炎症剤類、ホルモン類およびホルモン同族類、抗ガン剤類、抗ウイルス剤類および中枢神経系薬剤類に属する有効成分よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれかの製造方法。
【請求項8】
当該少なくとも一つの有効成分が、抗生物質類に属する有効成分より選択されることを特徴とする、請求項7の製造方法。
【請求項9】
当該少なくとも一つの有効成分がフシジン酸であることを特徴とする、請求項8の製造方法。
【請求項10】
当該少なくとも一つの高分子が、アクリル酸エステル誘導体、ポリカーボフィリック誘導体、セルロース誘導体、ビニル誘導体またはビニルピロリドン、ガム、多糖類誘導体、ポリオキシエチレン誘導体、ポリエチレン-ポリプロピレングリコール誘導体、デキストラン誘導体、ゼラチン誘導体、糖およびフェノール誘導体、アルギン酸誘導体、シリコン誘導体、乳酸およびグリコール酸誘導体、ポリ無水物誘導体、ポリブタジエン誘導体、グルタミン酸誘導体、ポリオルトエステル誘導体、およびイオン交換樹脂誘導体よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から9のいずれかの製造方法。
【請求項11】
当該少なくとも一つの高分子が、セルロース誘導体類に属することを特徴とする、請求項10の製造方法。
【請求項12】
少なくとも一つの有効成分と少なくとも一つの高分子を含む当該固形組成物が、ヒドロキシエチルセルロ−ス、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよび/またはエチルセルロースを含むことを特徴とする、請求項11の製造方法。
【請求項13】
少なくとも一つの有効成分と少なくとも一つの高分子を含む当該固形組成物が、薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1から12のいずれかの製造方法。
【請求項14】
賦形剤が可塑剤、滑沢剤およびフロー剤よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項13の製造方法。
【請求項15】
可塑剤がポリエチレングリコール誘導体、植物油若しくは鉱物油、フタル酸若しくはセバシン酸誘導体、トリアセチン、トリエチルクエン酸、および脂肪物質よりなる群から選択されることを特徴とする、請求項14の製造方法。
【請求項16】
可塑剤が植物油である、請求項14または15の製造方法。
【請求項17】
滑沢剤が、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ロイシン、グリシン、ラウリル硫酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、グリセロールベネート、水素化植物油、ポリエチレングリコール、シリコン、タルク、ステアリン酸亜鉛、モノステアリン酸グリセリン、およびパルミトステアリン酸グリセロールよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項14の製造方法。
【請求項18】
少なくとも一つの有効成分と少なくとも一つの高分子を含む当該固形組成物が、25%のフシジン酸、1%のヒドロキシエチルセルロ−ス、65.5%のヒドロキシプロピルメチルセルロース、5%のエチルセルロース、3%の水素化植物油および0.5%のヒマシ油を含むことを特徴とする、請求項13の製造方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれかの方法により得られる、持続性放出制御型の固形医薬組成物。
【請求項20】
眼科用挿入剤であることを特徴とする、請求項19の固形医薬組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2008−526719(P2008−526719A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548863(P2007−548863)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/FR2005/003203
【国際公開番号】WO2006/072685
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(596079585)
【氏名又は名称原語表記】CEVA SANTE ANIMALE
【Fターム(参考)】