説明

高圧媒体用導管の接続構造

本発明による高圧媒体導管用接続構造は、第2導管2内へ挿入された接続部材3を備えた第1導管1を含み、しかも、前記接続部材3と第2導管とが、直接、またはシール14を介して、互いに協働する円筒形シール面4,5を備えており、前記接続部材3の壁厚が、そのシール面4の少なくとも一部で減じられ、第2導管2のシール面5領域の壁厚の50%未満になされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1導管が、第2導管内に挿入された接続部材を有し、かつ、接続部材と第2導管とが、互いに、直接または介挿シールを介して、協働する円筒形シール面を有する高圧媒体用導管の接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の導管接続構造は、例えば内燃機関、特にディーゼル機関の例えばコモンレール噴射方式の燃料噴射装置の個別構成部品を相互接続するために必要である。コモンレール噴射方式の燃料噴射装置は、自動車に用いられるだけでなく、定置機関、建設機械、農業機械、機関車、船舶等の大型ディーゼル機関にも使用される。これらの用途の場合、燃料供給用の高圧導管は、噴射装置の他の構成部品、例えばコモンレール噴射方式の噴射ノズルと密封接続され、その場合、導管は、特に接続箇所は、これらの装置内を支配する高圧を考慮して相応に構成しなければならない。平滑な接続面を有する接続構造を十分に密封するには、かなりの加圧力が必要であり、この加圧力は、密封されるべき内圧の最大3倍の印加圧を生じさせなければならない。このように構成するには多額の費用がかかり、加えて、かなりのスペースが必要となる。円筒形シール面の場合、軸線方向の加圧力を加えることと並んで、第1導管の接続部材と、接続部材が挿入される第2導管との互いに協働するシール面が、半径方向に十分な力で互いに押圧されることで、液体、特に周囲への燃料の漏出が防止される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、第1導管の接続部材と接続部材が挿入される第2導管との間に半径方向で十分に高いシール力が得られ、しかも、導管接続構造の密封性が、ディーゼル機関の噴射装置内を支配する圧力を考慮して少なくとも2000バールの内圧時にも保証されるような導管接続構造を提供することである。

導管接続構造の構造面の出費と所要スペースとは、しかし、通常の標準を越えてはならず、しかも、費用は許容可能な限度内に収まるようにする。導管接続構造は、さらに、変化の著しい内圧に適応できるように構成されねばならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題の解決のために、本発明は、事実上、接続部材が、そのシール面の少なくとも一部領域で、第2導管のシール面の領域における該第2導管の壁厚の50%未満の薄い壁厚になされている。互いに協働するシール面領域で、内側部分の壁厚、すなわち第2導管内へ挿入された接続部材の壁厚が、外側部分の壁厚、すなわち第2導管の壁厚よりも著しく薄くされていることで、導管内を支配する内圧を密封性の維持に利用することができる。内側部分は、壁厚が小さくなされているため、内圧により外側部分よりも大きく拡張し、もって、内側部分が外側部分に対して押しつけられる。その場合に発生する加圧力は、支配的な内圧に、直接、依存するため、その時々に必要な加圧力が自動的に調節される。
【0005】
基本的に確認された点は、内側部分の壁厚を外側部分の壁厚の50%未満にすることで、低弾性の材料でも十分な密封性が得られるということである。好適例は内側接続部材の小さな壁厚であるが、その場合、当然、壁厚を薄くし過ぎてその部分の安定性を損なわないようにしなければならない。したがって、接続部材の壁厚は、シール面の少なくとも一部の領域で第2導管のシール面領域の壁厚の40%未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満または5%未満に選択するのが好ましい。
【0006】
この構成は、さらに次のように形成するのが好ましい。すなわち、接続部材のシール面が接続部材の中空円筒形延長部に形成され、前記中空円筒形延長部は、第2導管内径の、好適には70%〜95%、さらに好適には85%〜90%の内径を有し、また、第2導管内径の好適には少なくとも1/3、さらに好適には1/3〜2/3の軸線方向長さにわたって延在する。このような寸法にすることによって最適シールが得られるのは、特に次のようなディーゼル機関燃料噴射装置、すなわち、好適な構成に合致するものだが、第1導管が燃料用の高圧供給管として構成され、第2導管が内燃機関用、特にディーゼル機関用燃料噴射装置の噴射燃料溜まりとして構成されているような噴射装置である。
【0007】
中空円筒形延長部の安定性を損なうことなく密封性を高めるには、好適な構成により次のようにする。すなわち、中空円筒形延長部の内壁が、その自由端に円錐形欠除部を有し、しかも、前記円錐形欠除部が、好ましくは10°〜60°の、さらに好ましくは30°の円錐角を有するようにするのである。中空円筒形延長部は、円錐形欠除部箇所で弾性が増すことで、第2導管のシール面への前記延長部の密着性が高まる。
互いに協働するシール面間に液体クッションが形成され、それが漏れ箇所となるのを防止するために、さらに、接続部材のシール面に少なくとも一つの環状溝を設けておくのが好ましい。接続部材のシール面に複数の環状溝を設けておく場合には、さらに、これらの複数の環状溝を連通する1つの軸線方向溝を設けておくのが好ましい。
【0008】
必要に応じて、接続部材と第2導管との協働シール面間に環状シールを配置することができ、その場合には、中空円筒形延長部が、その外面に円筒形段差部を有するようにし、第2導管のシール面と段差部との間に形成された環状空所内に環状シールを配置するように構成できる。導管内を支配する内圧の作用により、環状シールは、円筒形段差部の肩に押しつけられて変形することで、接続部材および第2導管の対向位置のシール面に高い加圧力を及ぼし、それによって抜群の密封効果が保証される。環状シールは、この場合、合成材料製、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製であり、金属製支持リングに当てつけられる。環状シールは、円形、楕円形、ひし形または台形の横断面形状を有することができる。その場合、台形横断面の環状シールを使用するのであれば、第2導管室内に向いた面に環状凹部を有する形式のものを用いることにより、シール面に対する環状シール効果加圧力が向上する。
【0009】
以下で、本発明を図面に略示した2実施例について詳説する。
図1には、第2導管2と結合された第1導管1が示されており、しかも、第1導管1が接続部材3を含み、接続部材3が第2導管2内へ挿入されている。接続部材3と第2導管2とは、互いに協働する円筒形シール面4,5を各々有している。第2導管2は、ディーゼル機関用コモンレール噴射系における噴射装置の噴射体として構成されている。噴射体2内には燃料溜まり6が設けられ、そこには、例えば2000バールの高圧燃料が溜められる。高圧ポンプによる燃料供給は、導管1を介して行われ、導管1は、高圧導管として構成され、接続片1bと、ねじ接続体1aとを介して接続部材3の密封円錐形部分7内に押し込まれている。燃料は、長手方向孔8と棒状フィルタ9とを介して燃料溜まり6に達し、ここから、磁石弁制御式噴射弁(図示せず)により機関燃焼室内へ噴射される。接続部材3は、プラグねじ10によって噴射体2内の所定位置に保持される。
【0010】
円筒形接続部材3は、円筒形孔として構成された燃料溜まり6内へ突入し、円筒形延長部11を含み、延長部11の長さaは、燃料溜まり6の内径bの約1/3〜2/3である。接続部材3の周面には、単数または複数の環状溝12が設けられ、これらの環状溝が縦溝を介して互いに連通しており、場合により発生する可能性のある漏れ燃料は、接続手段(図示せず)を介して無圧で排出される。
【0011】
接続部材3の直径は、燃料溜まり6の内径より僅かに小さいか、僅かに大きいか、内径に等しいかである。このことによって、組み立ておよび位置決めが簡単に可能になる。接続部材3の直径が燃料溜まり6の直径に比較して僅かに大きい場合は、接続部材3の冷却およびまたは噴射体2の加熱により、軸線方向力を要せずに組み立てが可能である。運転時、燃料溜まり6内を支配する高い燃料圧は、噴射体2と接続部材3との材料の弾性的な挙動により、円筒形シール面4,5の領域で両シール部分を拡径させる。この拡径の結果、接続部材3は、壁厚が薄いために著しく弾性変形し、それにより噴射体2の内壁に密着する。その際に生じる加圧力は、直接、そのときの燃料圧力に依存する。環状溝12が無圧で外部へ解放されていることにより、シール面に液圧クッションが形成されることはなく、したがって、組立体の密封性が損なわれることも確実になくなる。
【0012】
燃料溜まり6と円筒形延長部11とのシール面4,5の加工は、加工痕が軸線方向よりも、むしろ半径方向に延在するとよい。そうすることで、漏れの発生が効果的に防止される。
中空円筒形延長部11の、燃料溜まり6側の端部には、さらに、円錐角αを有する円錐形欠除部を設けることができ、この箇所での弾性がさらに高まるため、加圧力が一層高くなる。
本発明による構成の場合、プラグねじ10は、燃料溜まり6の横断面積と燃料圧力との積として与えられる力を僅かに超える軸線方向力を作用させるだけでよい。
【0013】
図2は、同じく、コモンレール噴射方式のディーゼル機関噴射装置の噴射ノズルを従断して示した図である。接続部材3は、燃料溜まり側の端部に円筒形段差部13を有している。この段差部13に環状合成材料部材14が押しはめられており、この合成材料部材が、金属製支持リング15を介して肩16に当てつけられている。燃料溜まり6内を支配する燃料圧力の作用によって、合成材料部材14は支持リング15および肩16に押しつけられる。このため、合成材料部材14が変形することで、燃料溜まり6の内壁および接続部材3の段差部13に高い加圧力を作用させる。それによって、抜群のシール効果がえられよう。
【0014】
環状合成材料部材14の横断面形は、方形または長方形でよい。また、好ましくは、図2a,2b,2c,2dに部分図で示されているように、円形、楕円形、ひし形、台形いずれかの横断面を用いてもよい。図2aに示した合成材料部材の台形横断面に見られる凹所により、側壁への押圧は、さらに高められる。支持リングと環状合成材料部材の組み立ては、円錐形の延長部17によって補助される。合成材料部材14の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が特に適する。
図示の組立体は、コモンレール式噴射装置の構成部品に限定されず、広く、高い液圧下にある容器、管、器具の接続に効果的に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】導管接続構造の第1実施例。
【図2】導管接続構造の第2実施例。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導管(1)が、第2導管(2)の内部に挿入された接続部材(3)を有し、該接続部材(3)と前記第2導管(2)とが、直接、または、介挿されたシール(14)を介して、互いに協働する円筒形シール面(それぞれ4,5)を有する高圧媒体用導管の接続構造において、
前記接続部材(3)が、そのシール面(4)の少なくとも一部領域で、前記第2導管(2)のシール面(5)の領域における該第2導管(2)の壁厚の50%未満の薄い壁厚になされていることを特徴とする高圧媒体用導管の接続構造。
【請求項2】
前記接続部材(3)の前記壁厚が、該接続部材(3)のシール面(4)の少なくとも一部領域で、前記第2導管(2)のシール面(5)の領域における該第2導管(2)の壁厚の40%未満、好ましくは30%未満、特に好ましくは20%未満であることを特徴とする請求項1に記載された高圧媒体用導管の接続構造。
【請求項3】
前記接続部材(3)の前記壁厚が、該接続部材(3)のシール面(4)の少なくとも一部領域で、前記第2導管(2)のシール面(5)の領域における該第2導管(2)の壁厚の15%未満、好ましくは10%未満、特に好ましくは5%未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載された高圧媒体用導管の接続構造。
【請求項4】
前記接続部材(3)の前記シール面(4)が、前記接続部材(3)の中空円筒形延長部(11)に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された高圧媒体用導管の接続構造。
【請求項5】
前記中空円筒形延長部(11)が、前記第2導管(2)の内径(b)の70%〜95%、好ましくは85%〜90%の内径を有する請求項4に記載された高圧媒体用導管の接続構造。
【請求項6】
前記中空円筒形延長部(11)の内壁が、その自由端に円錐形欠除部を有することを特徴とする請求項4または請求項5に記載された高圧媒体用導管の接続構造。
【請求項7】
前記円錐形欠除部が、10°〜60°、好ましくは30°の円錐角(α)を有するように形成されている請求項6に記載された高圧媒体用導管の接続構造。
【請求項8】
前記接続部材(3)の前記シール面(4)が少なくとも一つの環状溝(12)を有することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載された高圧媒体用導管の接続構造。
【請求項9】
前記接続部材(3)の前記シール面(4)が複数の環状溝(12)を有し、これらの環状溝が少なくとも一つの軸線方向溝によって互いに連通せしめられていることを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載された高圧媒体用導管の接続構造。
【請求項10】
前記中空円筒形延長部(11)が、前記第2導管(2)の内径(b)の少なくとも1/3、好ましくは1/3〜2/3の軸線方向長さ(a)に亘って延在していることを特徴とする請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載された高圧媒体用導管の接続構造。
【請求項11】
前記中空円筒形延長部(11)が、その外面に円筒形段差部(13)を有し、かつ、環状シール(14)が、前記第2導管(2)のシール面(4)と前記段差部(13)との間に形成された環状空所に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載された高圧媒体用導管の接続構造。
【請求項12】
前記環状シール(14)が、合成材料、特にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で形成され、かつ、金属製支持リング(15)に当てつけられている請求項11に記載された高圧媒体用導管の接続構造。
【請求項13】
前記環状シール(14)が、円形、楕円形、ひし形または台形の横断面形状を有する請求項11または請求項12に記載された高圧媒体用導管の接続構造。
【請求項14】
台形横断面形状を与えられた前記環状シール(14)が、前記第2導管(2)の室内に向いた表面に環状凹所を有する請求項13に記載された高圧媒体用導管の接続構造。
【請求項15】
前記第1導管(1)が、燃料用高圧供給管、または、高圧供給管用の接続部材(13)として形成され、前記第2導管(2)が、内燃機関用、特にディーゼル機関用燃料噴射系の噴射燃料溜まりとして形成されていることを特徴とする請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載された高圧媒体用導管の接続構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図2a】
image rotate

【図2b】
image rotate

【図2c】
image rotate

【図2d】
image rotate


【公表番号】特表2008−507658(P2008−507658A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522868(P2007−522868)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【国際出願番号】PCT/AT2005/000285
【国際公開番号】WO2006/010182
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(503471891)ロバート ボッシュ ゲーエムベーハー (15)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】