説明

高圧放電ランプおよび照明器具

【課題】
発光管を内蔵した内管と、これを包囲する外管との口金に対する固定構造を改良して、内管および外管の口金に対する固定が容易、かつ確実で組立の生産性に優れた高圧放電ランプおよびこれを用いた照明器具を提供する。
【解決手段】
高圧放電ランプは、内管固定部32、外管固定部33および受電部31を備えた口金Bと、発光管LTを内蔵し基端部を口金の内管固定部に挿入することによって口金Bに固定された内管ITと、内管を包囲するとともに基端部の外面が口金Bの外管固定部33に接着することによって口金Bに固定された外管OTとを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された口金を備えた高圧放電ランプおよびこれを用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
発光管を内蔵し基端部が口金に固定された内管を包囲する外管を具備した高圧放電ランプは既知である(特許文献1参照)。この高圧放電ランプは、内管の基端部にピンチシール部が形成されていて、発光管が内管の内部に気密に収納されている。外管は、有底筒状をなし、基端が開口している。また、口金は、その上面に環状溝が形成されるとともに、環状溝によって中央部に残った円柱状部分にはその直径方向に形成された直線状溝によって2分され、かつ環状溝と直線状溝が連通している。
【0003】
そうして、内管は、そのピンチシール部が接着剤によって直線状溝内に接着されることで口金に固定されている。また、外管は、その基端部の内外両面が接着剤によって環状溝内に接着されることで口金に固定されている。
【0004】
前記高圧放電ランプは、接着剤から放出された水分が蒸発して外管の内面に付着することで外管が曇り、製品の外観を阻害する問題があることから、口金に外管と内管との間の空間と高圧放電ランプの外部空間とを連通する通気孔を形成している。
【0005】
【特許文献1】特開2006−331663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の高圧放電ランプは、外管の内外両面に対して接着剤を均一に塗布しにくい、接着剤から放出された水分が口金から外部へ抜けるまで時間を要する、接着時の内管の位置出しが難しいという理由から、組立の生産性が悪いという問題がある。
【0007】
本発明は、発光管を内蔵した内管と、これを包囲する外管との口金に対する固定構造を改良して、内管および外管の口金に対する固定が容易、かつ確実で組立の生産性に優れた高圧放電ランプおよびこれを用いた照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高圧放電ランプは、内管固定部、外管固定部および受電部を備えた口金と;発光管を内蔵し基端部を口金の内管固定部に挿入することによって口金に固定された内管と;内管を包囲するとともに基端部の外面が口金の外管固定部の内側に接着することによって口金に固定された外管と;を具備していることを特徴としている。
【0009】
上基本発明の構成を以下説明する。
【0010】
〔口金について〕 口金は、高圧放電ランプの本体をソケットに保持し、電源と電気的に接続する機能を果たすランプ構成要素であると一般的に定義されているが、本発明においては上記に加えて内管固定持部、外管固定部および受電部を備えていれば、その余の構造は自由である。したがって、本発明において、口金は既知の多様な構造を採用することができる。
【0011】
また、口金は、内管固定持部、外管固定部および受電部を機能的な位置に配置するために、好ましくは耐熱性絶縁物製の口金基体を配設することができる。なお、口金基体は、例えばステアタイトなどのセラミックスにより一体的に形成される。また、内管を内管固定部に固定する際の補助部材として金属クリップを用いることが許容される。
【0012】
(内管固定部について) 内管固定部は、後述する内管の基端部をそこに挿入により内管を口金に固定する部位である。なお、「挿入により固定する」とは、接着剤を使用することなしに内管を挿入する行為だけで内管を口金に固定することのできる態様である。基端部を挿入して内管を固定する内管固定部の態様として、基端部を直接的に固定してもよいし、例えば金属クリップなどの固定補助部材を介在させて間接的に固定してもよい。後者の場合、固定補助部材を内管の基端部に装着してもよいし、内管固定部の例えば内部に装着してもよい。
【0013】
また、内管の基端部が後述するようにピンチシール部を構成している態様においては、当該ピンチシール部の両扁平面を内管固定部に対する固定に利用すると好都合である。例えば、両扁平面を主として挟持して固定するように離間対向する一対の起立舌片を口金の底部から上方へ突出させて形成し、両起立舌片がピンチシール部の両側面を直接的または間接的に挟持するように構成することができる。さらに、離間対向する一対の起立舌片の外面に基底部に向って間隔が広がる、好適には切頭円錐面の一部をなすようなテーパー面を形成することにより、このテーパー面を外管の基端部を口金内に挿入する際のガイドとして、またセンタリングのガイドとして利用することができる。
【0014】
(外管固定部について) 外管固定部は、その内側に後述する外管の基端部の外面を接着して外管を口金に固定する部位である。口金の先端部に、好ましくは内管固定部と同心関係に包囲するように環状周壁を形成して、外管固定部を構成することができる。この態様においては、環状周壁の内面と外管の基端部の外面との間を接着剤で固定する。なお、接着剤は、外管の基端部の全周に施与してもよいし、周面に対して断続的に施与してもよい。また、接着剤は、外管の基端部の外面に施与してもよいし、外管固定部の内側の接着面に施与してもよい。
【0015】
そうして、接着剤が外管の基端部の外面に施与されて接着されることにより、接着剤が内管と外管との間の空間に実質的に露出しないようになるので、上記空間内に接着剤からの水分が放出されるようなことがなくなる。このため、上記空間内に放出された水分を外部へ発散させるための連通孔を口金に形成する必要がなくなるし、また水分が連通孔を経由して外部へ放散されるまで留置する必要がない。
【0016】
(受電部について) 受電部は、高圧放電ランプに投入する電力を電源から受電して高圧放電ランプ本体に供給する手段であり、既知の各種口金形態における受電部を適宜所望により選択的に採用することができる。なお、差込み形、ねじ込み形、ピンなし差込み形、バイポスト形などの口金は、主として受電部の構造が相違している。
【0017】
次に、高圧放電ランプには主にねじ込み形口金が使用されているので、この口金における受電部について以下説明する。すなわち、ねじ込み形口金における受電部は、口金シェルおよびセンターコンタクトが絶縁基体の所定の位置に互いに絶縁関係を保持して配設されることによって構成されていて、内管から導出された一対の外部リード線の一方が口金シェルに、他方がセンターコンタクトに、それぞれ接続される。
【0018】
(金属クリップについて) 金属クリップは、内管の基端部、例えばピンチシール部と内管固定部との結合を補助する手段であり、所望に応じて採用される。そして、予め内管の基端部に装着されるか、内管固定部に装着される。
【0019】
そうして、内管の基端部が口金の内管固定部に挿入された際に、金属クリップは、内管固定部と内管との機械的な結合を補助して、内管の口金からの離脱を阻止するのに効果的である。
【0020】
〔発光管について〕 本発明において、発光管は、透光性気密容器、一対の電極、一対の電流導入導体および放電媒体を備えている。
【0021】
透光性気密容器は、透光性セラミックスまたは石英ガラスなどの透孔性にして耐熱性の物質からなり、包囲部および一対の封止体を備えている。
【0022】
包囲部は、膨出していて、その内部に放電空間として利用される。なお、透光性であるとは、放電により発生した放射のうち、所望波長域の発光成分を少なくとも所望の部位から外部へ透過させることができればよいことを意味する。また、透光度は、高圧放電ランプの正常な作動状態において、透光性気密容器として問題なく機能する程度を有していればよい。
【0023】
封止体は、包囲部の両端に連設されていて、後述するように電極を支持するととともに、透光性気密容器を封止する。透光性気密容器が透光性セラミックスからなる場合、一般的には封止体が小径筒部により形成されている。小径筒部からなる封止体は、その内部に挿通する電極および/または電流導入導体と小径筒部の内面との間にわずかな隙間が形成される。したがって、小径筒部の長さを適切な値に設定することにより、点灯中にわずかな隙間の内部に液相のハロゲン化物が滞留して、いわゆるキャピラリーとして作用して透光性気密容器の最冷部を形成したり、封止部の温度を所定温度に維持させたりすることができる。
【0024】
しかし、本発明においては、封止体を備えているものの、封止体がキャピラリーを形成することを必須要件とするものではない。
【0025】
次に、透光性気密容器が透光性セラミックスにより形成される場合、例えばサファイヤなどの単結晶の金属酸化物と、多結晶の金属酸化物、例えば半透明の気密性アルミニウム酸化物、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)、イットリウム酸化物(YOX)と、多結晶非酸化物、例えばアルミニウム窒化物(AlN)などを用いることができる。
【0026】
透光性気密容器の内容積すなわち放電空間の体積は、高圧放電ランプの定格ランプ電力の大きさに応じて多様な値に設定することができる。また、放電空間の形状も円筒状、球状、楕円球状など多様であることを許容する。
【0027】
(一対の電極について) 一対の電極は、透光性気密容器に封装されて先端が互いに離間して放電空間に臨んでいる。また、電極は、タングステン(W)、ドープドタングステン、トリウム入りタングステン、レニウム(Re)、レニウム−タングステン合金(Re−W)またはモリブデン(Mo)などの耐火性金属を用いて形成することができる。また、電極は、その基端側などの一部を異種の耐火性金属またはサーメットなどを用いて形成することができる。例えば、電極の主要部をタングステンで形成し、基端部をモリブデンまたはサーメットで形成する。さらに、電極は、好ましくは細長い電極軸部および電極軸部の先端部に配設される電極主部から構成することができる。この場合、電極主部は、電極軸の先端に配設されて主として陰極およびまたは陽極として作用する部分であり、電極の先端部を構成する。また、電極主部は、その表面積を大きくして放熱を良好にするために、必要に応じて例えばタングステンのコイルを巻装したりすることができる。
【0028】
(電流導入導体について) 電流導入導体は、一対の電極に電流を供給するための手段であり、封止体から透光性気密容器の内部へ導入されて、先端が電極の基端に直接または間接に接続し、基端が封止体から外部へ露出する。また、透光性気密容器が透光性セラミックスからなる場合、電流導入導体は、例えばセラミックス封止用コンパウンドのシール部および小径筒部からなる封止体と協働して透光性気密容器を封止する。電流導入導体としては、透光性気密容器の材質に応じて熱膨張係数が接近した導電性物質、例えば透光性アルミナセラミックス製の場合、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)またはサーメットなどが好適である。石英ガラスの場合には、モリブデンが好適である。
【0029】
(放電媒体について) 放電媒体は、少なくとも金属ハロゲン化物および始動ガスにより構成される。また、好適にはランプ電圧形成物質を含むことができる。
【0030】
金属ハロゲン化物は、少なくとも発光金属のハロゲン化物を含むものとする。発光金属のハロゲン化物としては、既知の各種発光金属およびそれらの組み合わせの金属ハロゲン化物を用いることができる。
【0031】
始動ガスは、少なくとも高圧放電ランプを始動させるときに放電を開始させるのに寄与する。しかし、具体的なガスの種類は限定されない。一般照明用の高圧放電ランプの場合、好適にはネオン(Ne)およびアルゴン(Ar)の混合ガスである。始動ガスの封入圧は、一般的には8〜80kPaである。8kPa未満では、パッシェン曲線から理解できるように始動が困難になる。また、80kPaを超えると始動電圧が高くなり、口金の耐圧を超えてしまう。
【0032】
ランプ電圧形成物質は、主として緩衝体として点灯中に一対の電極間に現れる電圧を形成するのに主体的に寄与する放電媒体であり、水銀および/または金属ハロゲン化物を用いることができる。ランプ電圧形成物質としての金属ハロゲン化物には、蒸気圧の比較的高い金属のハロゲン化物などを用いることができる。
【0033】
〔内管について〕 内管は、その内部に発光管を内蔵していて、基端部が口金に挿入されることにより、接着剤を使用することなしに口金に固定される。発光管を内蔵する態様は、外部に対して気密および連通のいずれであってもよい。発光管は、内管に対して好ましくは軸中心の位置に支持され、かつ一対の電極が内管から導出される一対の外部リード線に接続する。
【0034】
また、内管は、発光管を所要に始動するために必要に応じて始動用の部品要素、例えば紫外線発生源、高電圧パルス発生器または近接導体などを内部の所定位置に収納することができる。
【0035】
さらに、内管は、その基端部が、口金に挿入した際に内管を固定するのに耐えるように構成されている。例えば、内管の基端部に形成されたシール部を口金に挿入したり、外部リード線を挿入したりすることで、内管は口金に固定されるように構成することを許容する。内管のシール部は、例えば既述のようにピンチシール部として形成される。ピンチシール部の扁平面の両側端縁に凸条を形成することにより、内管の基端部を口金に挿入した際に凸条間に形成される平坦部を固定するように構成すれば、内管の位置決めが容易、かつ確実になる。
【0036】
さらにまた、内管の材質は、特段限定されない。しかし、内管を石英ガラスで形成することにより、耐熱性が向上するので、小形化を図ることができる。また、内管は、外管で覆われるので、指で直接内管を触れることがなくなり、内管が汚損することもない。
【0037】
さらにまた、内管の内部を外部に対して気密に保持したり、外気に連通したりするように構成される。一般照明用の高圧放電ランプとしては、外管内部を真空または不活性ガス(例えば、窒素やアルゴンなど)雰囲気にするのが一般的である。
【0038】
〔外管について〕 外管は、その内部に内管を収納して、内管および発光管を機械的および触指による汚損などに対して保護する。外管の材質は、特段限定されない。例えば、硬質ガラスや半硬質ガラスにより外管を形成することができる。
【0039】
また、外管は、内管と分離していて、口金の外管固定部に接着剤を用いて固定される。そのために、外管の基端は、開放されているが、その余の形状および構造は問わない。例えば、T形、BT形、R形など各種形状の管を所望に応じて適宜選択して採用することがきる。
【0040】
接着剤は、高圧放電ランプの点灯中の動作温度に耐えるものであれば特段限定されない。一般的には耐熱性の無機質接着剤が好適である。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、外管の基端部の外面が口金の外管固定部の内側に接着されることで外管が口金に固定され、内管の基端部が口金の内管固定部に挿入されることで内管が口金に固定されるため、外管と内管との間に形成される空間内には接着剤が実質的に露出しなくなり、接着剤に含有されていた水分が上記空間内に放出されないから、外管内面に曇を生じて高圧放電ランプの外観が阻害されるようなことがないばかりでなく、組立の生産性が良好な高圧放電ランプおよびこれを備えた照明器具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0043】
図1ないし図6は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第1の形態を示し、図1は高圧放電ランプの正面図、図2は発光管を内蔵した内管の正面図、図3は発光管の拡大断面図、図4は(a)が高圧放電ランプの正面断面略図、(b)が口金部の拡大正面断面図、図5は各部の分解断面略図・正面略図、図6は口金基体の(a)が正面断面図、(b)が平面図、(c)が側面断面図である。
【0044】
本形態の高圧放電ランプは、定格ランプ電力70W用として好適な構造であり、図5に分解して示すように、外管OT、内管IT、発光管LTおよび口金Bを具備して構成されている。
【0045】
外管OTは、本形態において硬質ガラス製の有底筒状をなすT形バルブからなる。したがって、本形態において、外管OTの基端部は、開口縁部により構成されている。なお、外管OTの頭部の外面に遮光物質を塗布してキャップ状のグレアカット膜を形成すれば、照明器具に別設の遮光キャップを配設する必要がなくなる。このため、照明器具の構造が簡単になってその分安価になるとともに、高圧放電ランプの着脱操作が頗る容易になる。
【0046】
内管ITは、本形態において石英ガラス製であり、閉鎖された先端部の中央には排気チップオフ部11が形成されている。また、基端部にはピンチシール部12が形成されている。ピンチシール部12には、いずれも一対の封着金属箔12a、12aが気密に埋設され、内部リード線12b、12cおよび外部導入線12d、12dが封着金属箔12aの両端部に接続している。なお、ピンチシール部12の両扁平面の側縁部には一対の突条12e、12eが形成され、それらの間に一段低い平坦面12fが形勢されている。
【0047】
したがって、本形態において、内管ITの基端部は、ピンチシール部12により構成されている。なお、本形態において、内管ITの内部には、発光管LTに加えて紫外線発生源UVE、サポート部材SFおよびゲッタGなどの付帯的構成要素が後述するように配設されている。しかし、図4および図5においてはこれらの付帯的構成要素は図示を省略されている。
【0048】
発光管LTは、図3に示すように、透光性気密容器1、一対の電極2、2、一対の電流導入導体3、3、一対のシール部4、4および透光性セラミックス気密容器1の内部に封入された放電媒体を備えている。
【0049】
透光性気密容器1は、本形態において透光性多結晶アルミナセラミックスからなり、包囲部1aおよび包囲部1aの両端に連通して配設された一対の封止体1b1、1b2としての小径筒部を備え、内部に放電空間1cが形成されている。そして、包囲部1aおよび封止体1b1、1b2は、鋳込み成形により一体化されている。
【0050】
一対の電極2、2は、タングステン棒からなり、封止体1b1、1b2内に挿通されていている。そして、電極2の軸部と封止体1b1、1b2の小径筒部の内面との間にキャピラリーと称されるわずかな隙間が形成されている。電極2の先端は、包囲部1a内に突出している。
【0051】
一対の電流導入導体3、3は、図2に示すように、それぞれニオブまたはサーメットなどの単体または両部材が長手方向に接合した複合体からなる。そして、その先端が封止体1b1、1b2内に挿入されて電極2の基端に接続して電極2を支持するとともに、基端が封止体1b1、1b2から外部へ突出している。封止体1b2から導出された図1において上部側の電流導入導体3の基端は、外管OTの排気チップオフ部11の内部に挿入されることによって、後述するサポート部材SFの一部を兼ねていて、発光管ITのセンタリングに寄与している。
【0052】
一対のシール部4、4は、セラミックス封止用コンパウンドを加熱して溶融し、次いで固化させることにより形成されている。そうして、一対のシール部4、4は、透光性放電容器1の封止体1b1、1b2の端面側の部分と、これに対向する電流導入導体3、3のニオブ棒状体Nbと、の間に介在して透光性気密容器1を気密に封止しているとともに、一対の導入導体3、3が透光性気密容器1の内部に露出しないように封止体1b1、1b2内に挿入されている部分の全体を被覆している。
【0053】
放電媒体は、金属ハロゲン化物、始動ガスおよび水銀からなり、透光性気密容器1内に封入されている。なお、金属ハロゲン化物および水銀は、蒸発する分より過剰に封入されている。そして、金属ハロゲン化物の一部が安定点灯時に封止体1b、1b内に形成されるわずかな隙間内に液相状態で滞留する。そして、点灯中下側となる例えば封止体1b1内に液相状態で滞留している放電媒体の表層部付近に最冷部が形成される。
【0054】
金属ハロゲン化物は、発光金属のハロゲン化物からなり、例えばツリウム(Tm)、ナトリウム(Na)、タリウム(Tl)よび希土類金属のグループから選択された金属のハロゲン化物により構成することができる。
【0055】
サポート部材SFは、図1に示すように、内部リード線12bが一体に延長して形成されている。そして、外管OTの内壁に接近した位置を管軸方向に沿って延在し、先端が外管OTの先端付近で屈曲され、かつ発光管ITの図1において上部の電流導入導体3に溶接されることによって、発光管ITを支持している。
【0056】
紫外線発生源UVEは、図1に示すように、小形容器21、導入線22、内部電極23、放電性ガスおよび外部電極24を具備して構成されている。小形容器21は、紫外線透過性石英ガラスにより有底筒状のカプセル状をなしていて、内部に細長い放電空間が形成されている。導入線22は、モリブデンからなり、先端が内部電極23に溶接している。内部電極23は、短冊状のモリブデン箔からなり、小形容器21の放電空間内に封装されている。放電性ガスは、例えばアルゴンからなり、小形容器21の内部に封入されている。外部電極24は、モリブデン線からなり、その先端部が小形容器21の外周に密着して数ターン巻き付けられていて、中間部がほぼ直線状に延在するとともに一方の小径筒部1b1の内部にわずかな空間が形成されている部位に対向する位置の外面にほぼ接触するように接近し、かつ基端部がサポート部材SFに溶接されている。
【0057】
また、紫外線発生源UVEは、サポート部材SFと正対する位置で、かつその主体部分が内管ITの内面と発光管LTの一方の小径筒部1b1との間に配設されている。これにより封止体1b1と紫外線発生源UVEとが管軸方向に沿ってほぼ平行に、かつ正対して配置される。
【0058】
ゲッタGは、図1に示すように、サポート部材SFに溶接されており、内管IT内を清浄にする。
【0059】
口金Bは、図4ないし図6に示すように、口金基体30、受電部31および金属クリップMCを備えている。
【0060】
口金基体30は、ステアタイトの成形体からなり、内管固定持部32、外管固定部33および受電部絶縁体34を一体的に備えている。
【0061】
内管固定持部32は、口金基体30の上面にその中心を挟んで突設した一対の起立舌片32a、32aにより構成されている。そして、一対の起立舌片32a、32aの対面している平坦な内面間の隙間に内管ITのピンチシール部12における表裏一対の扁平面の中間部に形成された図1および図2に示す平坦部12fを挿入することにより、後述する金属クリップMCに補助されて内管ITが口金Bに固定される。そして、本形態においては、ピンチシール部12の扁平面の両側縁に形成された一対の凸条12e、12eが起立舌片32aの両側から外部に露出して内管ITのセンタリングを行う。
【0062】
外管固定部33は、一対の起立舌片32a、32aを同心的に包囲するように形成された環状周壁により構成されている。この環状周壁の内側にわずかな隙間を形成して外管OTの基端部が挿入される。また、内管固定持部31の一対の起立舌片32a、32aの背面が切頭円錐体形状の一部を構成していて、この切頭円錐体形状部分と環状周壁との間に先細りの溝が形成されている。したがって、一対の起立舌片32a、32aの背面が環状周壁の内部に外管OTの基端部を挿入した際のガイド作用およびセンタリング作用を行う。
【0063】
外管OTの基端部の外面と外管固定部33の環状周壁の内面とは接着剤CBによって接着されている。なお、接着剤CBは、本形態において、外管OTの基端部の外管固定部33への固定に先立ち予め上記基端部の外面に塗布される。接着剤CBは、外管OTの内面側には塗布されない。外管OTを外管固定部33に取り付ける際に接着剤CBが外管OTの内側に若干量食み出して内側に侵入することがあるが、外管OTに曇りなどの不具合が発生しない程度であれば問題ない。なお、使用される接着剤が0.45〜1.75gであれば、十分な密着強度が得られるとともに、外管OTの内部に接着剤が実質的に進入することもない。また、本形態によれば、外管OTと口金Bとの間の密着強度は10Nm以上の値が得られることが実証された。
【0064】
受電部絶縁体34は、口金基体30の内管固定部32および外管固定部33から図4において下方へ突出して形成されている。そして、中心部に内管固定部32の底部に連通する中心孔34aが形成されている。
【0065】
受電部31は、いずれも導電性金属からなる外周にねじ溝を形成した口金シェル31aおよびセンターコンタクト31bからなり、口金基体30の受電部絶縁体34の外面に配設されている。
【0066】
口金シェル31aは、口金基体30の図4において下部に形成された受電部絶縁体34の外側に嵌合され、その開口縁をポンチで加締めて開口縁の一部を受電部絶縁体34に形成した一対の凹部34b、34bの内部へ押し込むことにより、受電部絶縁体34に装着されている。そして、口金基体30の受電部絶縁体34に外管固定部32の底部に連通した通孔34cが形成され、この通孔34cから導出された内管ITの外部リード線12bの一方が溶接または加締め付けにより口金シェル34aに接続している。なお、通孔34cは、図6に示すように中心孔34aの点対称位置に一対形成されているが、組立機による自動組立の利便のためであり、1個でも差し支えない。
【0067】
センターコンタクト33bは、受電部絶縁体33の中央先端に配設されている。そして、受電部絶縁体34の中心孔34a内に挿通された内管ITの外部リード線12bの他方が例えばろう付けにより接続している。
【0068】
金属クリップMCは、図5に示すように、1枚のリボン状金属ばね材を変形U字状に屈曲させて構成されている。そして、U字の底部の幅がほぼピンチシール部12の厚みになっていて、両脚部の中間に内管固定部32の起立舌片32aの内面への当接部35aとピンチシール部12の外面への当接部35bがそれぞれ形成されている。また、両脚部の先端に起立舌片32aの内面への係止部35cが形成されている。なお、図5において、外管OT、内管IT、口金Bおよび金属クリップMCの倍率は、構造が分かりやすいようにそれぞれ変えてある。
【0069】
そうして、金属クリップMCは、予めピンチシール部12に装着されてから内管ITと一緒に内管固定部32に挿入される。挿入の際に金属クリップMCは、その当接部35aが起立舌片32aの内面を弾接し、係止部35cがピンチシール部12の外面に弾接して内管ITを口金Bに対して定置するとともに、さらに係止部35cが起立舌片32aの内面に抜け止め方向に係止する。
【0070】
図7は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第2の形態を示す正面図である。なお、図において図1と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。本形態は、外管OTの頭部にグレアカット膜GC(斜線部分)を備えている点において第1の形態と異なる。
【0071】
グレアカット膜GCは、Fe−Cu−Zn合金粉末のペーストを外管OT頭部のゲッタGより上方位置において、その外面に塗布し、乾燥して形成したもので、膜厚が約180μmである。
【0072】
図8は、本発明の照明器具を実施するための一形態を示す要部断面正面図である。
【0073】
本形態において、照明器具は、照明器具本体40、高圧放電ランプHDLおよび点灯装置からなり、屋内用および屋外用の各種照明器具を含む概念である。また、照明器具は、一般照明用および特殊照明用のいずれであってもよい。なお、特殊照明用とは、一般照明用以外の各種用途を含む。
【0074】
照明器具本体40は、照明器具から高圧放電ランプHDLおよび点灯装置を除外した残余の部分からなる。本形態において、照明器具が屋内照明用のスポットライトであり、照明器具本体40は、取付台41、支柱42、基体43、ソケット44、反射板45、遮光キャップ46および全面ガラス47を主な構成要素として構成されている。なお、基体43は、支柱42に対して水平面内および鉛直面内の回動が可能になっている。
【0075】
高圧放電ランプHDLは、図1ないし図6に示す本発明の高圧放電ランプである。なお、図7に示す形態の高圧放電ランプを用いる場合には、遮光キャップ46は不要である。
【0076】
点灯装置は、照明器具本体40とは別置きで、例えば天井裏に配設される。そして、高圧放電ランプHDLを点灯する回路手段であり、電子化されているものおよびコアおよび巻線を主体とするもののいずれであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の高圧放電ランプを実施するための第1の形態を示す正面図
【図2】同じく発光管を内蔵した内管の正面図
【図3】同じく発光管の拡大断面図
【図4】同じく(a)が高圧放電ランプの正面断面略図、(b)が口金部の拡大正面断面図
【図5】同じく各部の分解断面略図・正面略図
【図6】同じく口金基体の(a)が正面断面図、(b)が平面図、(c)が側面断面図
【図7】本発明の高圧放電ランプを実施するための第2の形態を示す正面図
【図8】本発明の照明器具を実施するための一形態を示す要部断面正面図
【符号の説明】
【0078】
1…透光性セラミックス放電容器、3…電流導入導体、LT…発光管、11…排気チップオフ部、12…ピンチシール部、31…受電部、31a…口金シェル、31b…センターコンタクト、32…内管固定部、32a…起立舌片、33…外管固定部、34…受電部絶縁体、34a…中央孔、34b…凹部、34c…通孔、MC…金属クリップ、30…口金基体、IT…内管、LT…発光管、OT…外管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管固定部、外管固定部および受電部を備えた口金と;
発光管を内蔵し基端部を口金の内管固定部に挿入することによって口金に固定された内管と;
内管を包囲するとともに基端部の外面が口金の外管固定部の内側に接着することによって口金に固定された外管と;
を具備していることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
内管は、口金の内管固定部に挿入されたときに金属クリップの介在により口金に固定されていることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
口金は、その外管固定部が、口金の先端部に形成された環状周壁により構成されており;
外管は、その基端部が環状周壁の内部に挿入され、かつ基端部の外面と環状周壁の内面との間で接着されている;
ことを特徴とする請求項1または2記載の高圧放電ランプ。
【請求項4】
内管と外管の間の空間に接着剤が実質的に露出していないことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の高圧放電ランプ。
【請求項5】
内管は、その基端部にピンチシール部が形成されており;
口金は、その内管固定部が内管のピンチシール部を挟持する離間対向する一対の起立舌片により構成され、外管固定部が内管固定部を同心関係に包囲するように配設された環状周壁により構成されていて;
外管は、その基端部が口金の環状周壁内に挿入されて接着されている;
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の高圧放電ランプ。
【請求項6】
照明器具本体と;
照明器具本体に装着された請求項1ないし5のいずれか一記載の高圧放電ランプと;
高圧放電ランプを点灯する点灯装置と;
を具備していることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−210699(P2008−210699A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47588(P2007−47588)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(301010951)オスラム・メルコ・東芝ライティング株式会社 (37)
【Fターム(参考)】