説明

高圧放電ランプおよび照明装置

【課題】
シュラウドの外周面に配設される補強糸を改良して、全光束の低下が少なくて、しかも万一の発光管破裂に対する外管の損傷抑止効果を向上させて、強度の方向性が小さくなる高圧放電ランプおよびこれを用いた照明装置を提供する。
【解決手段】
高圧放電ランプLは、透光性気密容器40、一対の電極5a、5bおよび少なくとも希ガスおよび発光金属のハロゲン化物を含む放電媒体を備えた定格ランプ電力が400W以下の発光管4と、これを包囲するシュラウド6と、その外周面にほぼ密着して正逆反対方向に巻回して複数ターンの螺旋状部分が形成され、かつ同一方向に巻回している螺旋状部分において隣接する2個のターンのピッチL(mm)が数式5≦L≦15を満足する耐熱無機系繊維糸からなる補強体63と、発光管、シュラウドのサポート部材7と、始動回路構成部80と、外管1と、給電部材とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光管を包囲する耐熱透光性部材からなるシュラウドおよびこれを補強する補強体を外管内に配設した高圧放電ランプおよびこの放電ランプを用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧放電ランプ、例えばメタルハライドランプは、コンパクトで、高効率、高演色が得られることから店舗、商店街、ホールやスポーツ施設などで照明用光源として多く用いられている。
【0003】
この高圧放電ランプは、高効率、高演色を得るため発光管を小形化して温度を高めるとともに金属部品の酸化を防止するため、発光管を不活性ガスや窒素ガスあるいは真空雰囲気とした外管内に封装した二重管構造となっている。しかしながら、この種の高圧放電ランプは、点灯中極希に発光管の破裂が発生する。
【0004】
そこで、発光管をシュラウドにて覆い、万一発光管が破裂して発光管を形成する透光性気密容器の破片が飛散した場合に、シュラウドによって外管に到達する破片の衝撃を和らげることにより、破片が外管に直接飛来して、さらに外管をも破損するのを抑止するようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、シュラウドの外周に耐熱性のセラミックスなどの無機繊維からなる線状やメッシュ状の補強体を巻装することにより、シュラウドの耐衝撃強度を高めることがことも知られている(特許文献2参照。)。
【0006】
さらに、シュラウドの補強体として1本の耐熱無機系繊維糸の中間部をシュラウドの一端側でその外周に巻き付けて固定してから、両端側をシュラウドの他端へ向けてそれぞれ正逆反対方向の螺旋状に巻回し、シュラウドの他端側における螺旋の終端で両端をシュラウドに固定するようにした形態も知られている。この形態の場合、正逆反対方向の一対の耐熱無機系繊維糸が交差する交差点がシュラウドの外周に180°間隔で2個形成される。
【特許文献1】特開平5−121047号公報
【特許文献2】特開2003−100253号公報(段落0060)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、水銀灯安定器適応形の高圧放電ランプのように発光管の内圧が比較的高くなる定格ランプ電力が400W以下、特に発光管のサイズが比較的大きくなる200〜400Wの高圧放電ランプにおいては、シュラウドの外周面に配設する補強体の形態によっては発光管の破裂に対して外管の損傷を充分に抑止することができなかった。
【0008】
シュラウドの外周面に配設された補強体では、その耐熱無機系繊維糸の配置間隔が密になるほどシュラウドの補強が増強されるので、発光管の破裂に対して外管が損傷を受けにくくなるが、その一方で補強体による遮光量が増大するために高圧放電ランプの全光束が低下してしまうという問題がある。
【0009】
また、発光管が破裂した場合には、その破片が無規則放射状に飛散するため、補強体による補強は、方向性の少ないことが要求されると同時に、全光束の低下が極力少ないものでなければならない。
【0010】
ところが、補強体が既知の正逆反対方向へ螺旋状に巻回する形態の場合、正逆反対方向の螺旋状部分の交差点近傍では、耐熱無機系繊維糸が密に配置されるので、強度が大きくなるが、交差点と交差点の中間部は、耐熱無機系繊維糸の配置が疎になるので、強度が相対的に小さくなる。したがって、シュラウドの外周面の円周方向に90°間隔で比較的大きな強度のむらすなわち方向性が生じてしまうという問題がある。
【0011】
また、1本の耐熱無機系繊維糸をシュラウドの一端から他端へ一重螺旋状に巻回する補強体の形態も考えられ、この場合には方向性がなくなるが、耐熱無機系繊維糸の両端をシュラウドに固定するのが困難になるという問題がある。
【0012】
本発明は、シュラウドの外周面に配設される補強体の配置構造を改良して、全光束の低下が少なくて、しかも万一の発光管破裂に対する外管の損傷抑止効果を向上させるとともに、強度の方向性が小さくなる高圧放電ランプおよびこれを用いた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の高圧放電ランプは、透光性気密容器、透光性気密容器の内部に離間対向して封装された一対の電極および少なくとも希ガスおよび発光金属のハロゲン化物を含み透光性気密容器の内部に封入された放電媒体を備えた定格ランプ電力が400W以下の発光管と;発光管を側方から包囲する耐熱透光性部材からなる円筒状のシュラウドと;シュラウドの外周面にほぼ密着して正逆反対方向に巻回してそれぞれ複数ターンの螺旋状部分が形成され、かつ同一方向に巻回している螺旋状部分において隣接する2個のターンのシュラウド長手方向のピッチL(mm)が数式5≦L≦15を満足する耐熱無機系繊維糸からなる補強体と;発光管およびシュラウドの両端部を支持するサポート部材と;始動素子を含み、サポート部材に支持された始動回路構成部と;発光管、シュラウド、補強体、サポート部材および始動回路構成部を内部に収納する外管と;外管を経由して発光管および始動回路構成部に給電する給電部材と;を具備していることを特徴としている。
【0014】
本発明において、補強体の耐熱無機系繊維糸を同一方向に巻回している螺旋状部分において隣接する2個のターンのシュラウド長手方向のピッチL(mm)が5mm未満になると、補強による発光管破裂に対する外管の損傷抑止効果はさらに増強されるが、補強体により可視光が遮光される割合が増加しすぎてしまうために、所望の全光束を得ることができなくなる。反対に、上記ピッチLが15mm超になると、所望の全光束を得ることができるが、補強体による発光管破裂に対する外管の損傷抑止効果が低下しすぎてしまう。したがって、本発明の所期の効果を奏するためには上記ピッチLが上記数式を満足する必要がある。また、上記ピッチLが数式8≦L≦12を満足する範囲であれば、より一層好ましい効果が得られる。
【0015】
また、耐熱無機系繊維糸を正逆反対方向に巻回して形成された螺旋状部分が交差することによってシュラウドの外周面に互いに分散した交差点が4個以上形成されるように補強体を構成することができる。この場合、交差点は、シュラウドの外周面に90°以下の間隔で分散配置される。なお、同一方向に巻回している耐熱無機系繊維糸の螺旋状部分において隣接する2個のターンのピッチL(mm)が前記数式を満足する範囲内で変動することが許容されている関係で、交差点の位置が円周上において均等角度間隔(例えば、交差点が4個の場合、90°間隔)を中心値としてその前後に多少偏位して配置され得る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シュラウドの外周面にほぼ密着して配設される補強体が、耐熱無機系繊維糸によってそれぞれ複数ターンの螺旋状部分が正逆反対方向に巻回して形成され、かつ同一方向に巻回している螺旋状部分において隣接する2個のターンのピッチL(mm)が数式5≦L≦15を満足することにより、全光束の低下が少なくて、極希に発生する発光管の破裂に対する外管の抑止効果を、向上させた高圧放電ランプおよびそれを備えた照明装置を提供することができる。
【0017】
また、正逆反対方向に巻回して形成された螺旋状部分による交差点が円周上に分散して4個以上形成されることにより、補強の方向性を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0019】
図1ないし図3は、本発明の高圧放電ランプを実施するための一形態としてのメタルハライドランプを示し、図1は正面図、図2は右側面図、図3はシュラウドおよび補強体の組立体であり、(a)が平面図、(b)が正/背面図、(c)が右/左側面図である。
【0020】
本発明において、高圧放電ランプLは、定格ランプ電力が200〜400Wであるが、図示の形態のメタルハライドランプは定格ランプ電力が400Wのものである。本発明の高圧放電ランプLは、発光管4、シュラウド6、補強体63、サポート部材7、始動回路構成部80、外管1および給電部材を具備している。
【0021】
〔発光管4について〕 発光管4は、透光性気密容器40、一対の電極5a、5bおよび放電媒体を備えて構成されている。
【0022】
透光性気密容器40は、高圧放電ランプの定格ランプ電力によって異なるが、本形態における石英ガラス製の場合には、肉厚が1.0mm〜2.0mm程度で、内径10〜20mm程度の直管T形の石英ガラス管の両端部にピンチシール部4a、4bを形成することによって形成されている。そして、その内部にほぼ円柱状の放電空間が形成されている。なお、ピンチシール部4a、4bの内部には、モリブデンからなる封着金属箔41a、41bが気密に埋設されている。
【0023】
しかし、透光性気密容器40は、石英ガラス製だけでなく、例えばホウケイ酸ガラスやアルミノシリケートガラスなどの酸化ケイ素を主成分とする耐熱透光性高シリカガラスあるいは透孔性のアルミナ、YAGおよびイットリアなどの多結晶または単結晶のセラミックスなどからなるものであってもよい。
【0024】
さらに、透光性気密容器40の形状は、円筒形、長円形、球形などの単一形状や複合形状をしたものからなり、端部に形成される封止部の形態はガラスの場合は圧潰封止やシュリンク(焼き絞り)封止などが、また、セラミックの場合はディスクやキャップによる封止を採用することができる。また、透光性気密容器40の封止部内に封止られる導入導体は封着金属箔に限らず、金属線などであっても差し支えない。
【0025】
一対の電極5a、5bは、好適にはタングステン(W)などを主成分とする耐熱導電性金属からなり、透光性気密容器40内の管軸方向の両端に封装されて先端部が互いに離間対向している。なお、電極間距離は、例えば15〜45mm程度に設定することができる。また、一対の電極5a、5bは、その基端部が上記封着金属箔41a、41bに溶接などにより接続され、中間部が石英ガラスに緩く支持されて配設されている。ただし、本形態において、電極5bは、透光性気密容器40の上側の端部外面に被着された遮光性の無機質保温膜により覆われて外部から透視できない。
【0026】
放電媒体は、少なくとも希ガスおよび発光金属のハロゲン化物を含み、透光性気密容器40の内部に形成された放電空間内に封入されている。希ガスは、始動ガスおよび緩衝ガスとして作用させることができる。そして、好ましくはアルゴン(Ar)ガスであるが、分圧比で10%以下、好ましくは5%以下のネオン(Ne)などの他の希ガスを混合するように封入していてもよい。
【0027】
発光金属のハロゲン化物は、特段限定されないが、例えばナトリウム(Na)、スカンジウム(Sc)、セシウム(Cs),セリウム(Ce)およびジスプロシウム(Dy)などの金属の少なくとも1種のハロゲン化物を封入することができる。これらのハロゲン化物を用いることにより、高圧放電ランプLの発光効率および/または演色性を所望の高い値に設定することができる。なお、ハロゲンとしては、ヨウ素(I)および/または臭素(Br)を用いるのがよい。
【0028】
また、放電媒体として、上記希ガスおよび発光金属のハロゲンに加えて主としてランプ電圧形成用の緩衝物質として作用する水銀(Hg)や点灯中の蒸気圧が高くてイオン化電圧が低く、しかも可視域発光が少ない金属、例えば亜鉛などのハロゲン化物などを封入することができる。
【0029】
発光管4は、以上の主な構成要素の他に外部リード線42a、42bを備えている。外部リード線42a、42bは、その先端が透光性気密容器40のピンチシール部4a、4bの内部において封着金属箔41a、41bに溶接などにより接続しているとともに、他端が透光性気密容器40の外部へ導出している。
【0030】
〔シュラウド6について〕 シュラウド6は、耐熱透光性部材、例えば石英ガラスからなり、円筒状をなしていて、発光管4を側方からほぼ同心状に包囲するように配設されている。なお、シュラウド6は、図において上下両端が開放され、かつ発光管4とシュラウド6の内面との間には適当な空間が形成されている。また、シュラウド6は、後述するサポート部材7に固定されることにより、所定の位置に支持される。
【0031】
〔補強体63について〕 補強体63は、シュラウド6の外周面にほぼ密着して配設されてシュラウド6を補強する。また、補強体63は、例えばアルミナなどを主成分とする耐熱無機系繊維糸を正逆反対方向に巻回してそれぞれ複数ターンの螺旋状部分が形成された構成となっている。すなわち、時計方向へ巻回された螺旋状部分と反時計方向へ巻回された螺旋状部分とが重ねて形成されている。さらに、補強体63は、例えば時計方向(または反時計方向)に巻回している螺旋状部分において、隣接する2個のターンのシュラウド長手方向のピッチL(mm)が数式5≦L≦15を満足するように形成されている。
【0032】
なお、上記ピッチLは、図3の(b)および(c)に示すように、時計方向の螺旋部分と反時計方向の螺旋状部分との交差点CPが形成されている部位において測定するのがよい。したがって、上下に隣接する2つの交差点CP、CPが管軸方向に一致して形成されている場合には、2つの交差点CO、CP間においてピッチLを測定することができる。しかし、上下に隣接する2つの交差点CPが管軸方向に不一致の場合には、上下いずれか一方の交差点CPにおいて隣接するターンの管軸方向におけるピッチを測定すればよい。
【0033】
本形態における補強体63の構成をさらに詳述すれば、次のとおりである。すなわち、図3に示すように、1本の耐熱無機系繊維糸を用意し、まずその中央部をシュラウド6の図の上部に巻き付けて固定してから、一方側63aを所定ピッチでシュラウド6の外周面に時計方向へ巻回しながら巻き付ける。また、他方側63bを所定ピッチでシュラウド6の外周面に反時計方向へ巻回しながら巻き付ける。なお、上記両側63a、63bの巻き付けは同時的に、かつ反対方向へ巻回していくことができる。しかし、所望により一方側63aを巻き付けた後に、他方側63bを巻き付けてもよい。そうして、正逆反対方向に巻回した複数ターンの螺旋状部分をそれぞれ形成したら、螺旋状部分の終端部において、一方側63aおよび他方側63bの中間部をシュラウド6に巻き付けて固定する。以上により、1組目の正逆反対方向の螺旋状部分が形成される。
【0034】
次に、シュラウド6の下部に巻き付けられた耐熱無機系繊維糸の一方側63aおよび他方側63bのそれぞれを、上記1組目の正逆反対方向の螺旋状部分における螺旋の終端の位置に対して90°円周方向にずれた位置から一方側63aおよび他方側63bを、それぞれ下から上側へ1組目の正逆反対方向の螺旋状部分と同様のピッチで正逆反対方向に巻き付ける。そうして、シュラウド6の上端部で巻き終わり、その終端部をシュラウド6に巻き付けて固定すれば、前記1組目の螺旋状部分に加えて2組目の正逆反対方向の螺旋状部分が1本の耐熱無機系繊維糸から形成される。なお、所望により複数本の耐熱無機系繊維糸を用いて上述とほぼ同様のピッチを有する補強体63を形成することもできる。
【0035】
以上のようにして補強体63が形成される。すなわち、本形態において、補強体63は、2組の正逆反対方向の螺旋状部分から構成されている。したがって、補強体6には、2組の時計方向の螺旋状部分と、2組の反時計方向の螺旋状部分とが含まれている。しかも、1組目の正逆反対方向に巻回されたそれぞれの螺旋状部分と、2組目の同じく螺旋状部分とが互いに90°ずれて形成されていることになる。その結果、時計方向に巻回された螺旋状部分と、反時計方向に巻回された螺旋状部分とが交差することによって形成される交差点CPが図3(a)に示すように、シュラウド6を上または下から見ると、円周上に90°間隔で4個形成される。なお、隣接する2個のターンのピッチL(mm)が数式5≦L≦15を満足するかを判定する場合において、本形態の場合、隣接する2個のターンとは、1組目の螺旋状部分のターンとこれに隣接する2組目の螺旋状部分のターンとをいう。
【0036】
また、シュラウド6の外周面の円周上に沿って補強体63の交差点を6個形成する場合には、3本の耐熱無機系繊維糸を60°円周方向にずらして上述のように巻回すれば、本発明における要件を満足する補強体6を形成することができる。
【0037】
〔サポート部材7について〕 サポート部材7は、発光管4、シュラウド6および後述する始動回路構成部80を支持する手段であり、その下方側72(ネック部13側)の部材を後述するステム2に支持した金属部材(図示しない。)などに締結などの手段によって固定するか、ステム2に植設した導入線21、22とは別に設けられ、外部導入線に接続していないサポート線(図示しない。)などに固定することにより、後述する外管1内に支持されている。すなわち、サポート部材7は、上記導入線21、22や後述する給電線などの発光管4への後述する給電部材3と相互に導電接続されていない。
【0038】
そして、上記シュラウド6は、サポート部材7中間の所定位置にシュラウド6の端面とほぼ同形のリング状に打ち抜き複数箇所に起立片61、・・・、62、…を設けた一対の離間した保持板60、60を両端部に当て起立片61、…を起立させてシュラウド6の端部を外側から抑えたり、内外面の両側から挟むようにするとともに、一部の起立片62、…をサポート部材7に溶接や加締めなどの手段で接続したりすることにより、固定保持されている。
【0039】
また、上記保持板60、60は、上記シュラウド6の両端を保持するとともにシュラウド6内の発光管4のピンチシール止部4a、4bを切起片(図示しない。)で挟持することにより発光管4を保持固定している。
【0040】
なお、サポート部材7の上方側の側面に金属製の羽根状の弾性(ばね)部材73、73を設け、この弾性(ばね)部材73、73をバルブ1のトップ部12の内周面に弾性当接することにより、上記発光管4およびシュラウド6が外管1の中心軸上にあるよう、また耐振性を高めることができる。また、図示していないがサポート部材7の下方側の側面にも弾性(ばね)部材を設け外管バルブ1のネック部13の内周面に弾性当接するようにしてもよい。また、図中77、…は、サポート部材7や後述する給電線74、75などの間を橋絡して補強する電気絶縁物からなるブリッジ部材である。
【0041】
〔始動回路構成部80について〕 始動回路構成部80は、高圧放電ランプLの始動を補助する手段であり、本形態においては例えば始動用のグロースタータ(点灯管)81、バイメタルを用いた熱応動スイッチ82および抵抗83を直列接続したものからなる。
【0042】
なお、上記グロースタータ(点灯管)81の構成は、例えば石英ガラスからなるバルブの一端部にリード線を気密に封着した封止部が形成され、バルブ内にはリード線に接続したバイメタルからなる放電電極が所定の間隔を隔て対峙しているとともにアルゴン(Ar)が所定圧力で封入されている。そして、グロースタータ81は通電時にバイメタルと放電電極間にグロー放電が生起して、このグロースタータ81のグロー放電によってアルゴンガスが紫外線を放射するように構成することができる。
【0043】
〔外管1について〕 外管1は、発光管4、シュラウド6、補強線63、サポート部材7および始動回路構成部80を内部に収納して、高圧放電ランプLを二重管構造にする手段である。本形態において、外管1は、BT形バルブからなるホウケイ酸ガラスなどの透光性硬質ガラス製であり、中央部に膨出部11を有するとともに、図において上側の閉塞されたトップ部12および下側のネック部13に小径部分を有するように形成されている。このネック部13側には導入線21、22を有するステム2を備えている。
【0044】
〔給電部材について〕 給電部材は、外管1を経由して発光管4および始動回路構成部80に給電する手段であり、本形態においては、E形口金3および給電線74、75、76などからなる。
【0045】
外管1内における電気的接続は、以下のように行われている。すなわち、外管1のネック部に装着された口金3の一方の端子が、図2に示すように、ステム2の一方の導入線21、給電線75、給電線76および発光管4の外部導入線42bを直列に介して外部から透視できない上方の電極5bに接続している。なお、給電線76は、透光性気密容器40から遠ざかるように湾曲して離した細線からなる。
【0046】
一方、口金3の他方の端子が、図1に示すように、ステム2の他方の導入線22を介して給電線74、発光管4の外部導入線42aを介して下方の電極5aに接続している。また、発光管4の一対の電極5a、5bと並列的に始動回路構成部80が接続されている。
【0047】
そして、本形態において、紫外線放射を伴うグロースタータ81の配設方向は特段限定されないが、例えばグロースタータ81が、発光管4の中心軸とほぼ同軸上にあって、しかも紫外線透過が最も多いバルブの封止部側が発光管4を指向するように給電線74、75などに取り付けられている。
【0048】
すなわち、グロースタータ81は、その放電電極に形成されたエミッタ物質がエージング時に飛散して、バルブ内面の特定箇所、例えばバルブのトップ(頂)部側にエミッタ物質などが多く被着するので、当該トップ側が不透明となっていてそこからの紫外線の放射が阻害されるので、封止部側を発光管4に向けている。
【0049】
また、本形態では発光管4およびシュラウド6はサポート部材7に支持されているが、何ら電気的に接続していない電位のかからないサポート部材7であって、発光管4内の電極5a、5bへの電気的接続は、ステム2の導入線21、22から給電線74、75などの別の給電部材により行われる。
【0050】
そうして、本形態の高圧放電ランプLは、鉛直や水平状態あるいは傾斜状態で点灯される。
【0051】
本形態の高圧放電ランプLは、以下のように始動、点灯する。すなわち、高圧放電ランプLをランプソケットに装着して、電源から安定器などを有する点灯回路装置を介し通電される。この点灯回路装置に接続された高圧放電ランプLは、始動時に、口金3の端子部(図示しない。)に電気的に接続した導入線21、22と給電線74、75を介して発光管4内にある一対の電極5a、5bおよび給電線74、75に並列的に接続したグロースタータ81などからなる始動回路構成部80の両端間に電圧が印加される。
【0052】
この電圧印加によって、グロースタータ(点灯管)81、熱応動スイッチ82、抵抗83を直列接続した始動回路構成部80の抵抗が小さくインピーダンスの低いグロースタータ81内のバイメタル電極と離間した固定電極間または離間した一対のバイメタル電極間からなる放電電極間で放電が生起し、グロースタータ81のほぼ透明な封止部側から紫外線が放射されて発光管4の両端に位置する一対の電極5a、5bに向け紫外線が照射される。そして、このグロースタータ81内のバイメタル電極が放電により加熱され、熱湾曲(応動)して他極と接触することにより放電が停止する。
【0053】
すなわち、発光管4の放電空間内に存在する一対の電極5a、5bに、電極構成金属の仕事関数以上のエネルギをもって紫外線が照射された場合、電極5a、5b表面から電子が放出され、この初期電子数が増加して電極5a、5b間に放電が生起しやすくなる。
【0054】
そして、グロースタータ81内のバイメタル電極が冷えてきて放電電極と離れた瞬間に、点灯回路装置89の安定器に高圧パルスが発生して両電極5a、5bにこの高圧パルスが印加されると放電が電極5a、5b間に生起して発光管4を短時間のうちに容易に始動するとともに、その後は安定した点灯を持続させることができる。
【0055】
なお、両電極5a、5b間で放電が生起すれば、発光管4の温度が上昇して熱応動スイッチ82が開放され、グロースタータ81を含む始動回路構成部80への電気的接続も遮断され、この点灯中はグロースタータ81に再びグロー放電が発生することがない。
【0056】
このように、本形態の高圧金属蒸気ランプLが例えば水銀灯安定器適合形である場合のように点灯時の内圧が高くても、シュラウド6の外周面に形成した補強体63が前述したように構成されているので、充分に補強されていて、極希に発光管4が破裂した際の破片が飛散したときの衝撃を緩和して外管1の損傷を効果的に抑止する。
【0057】
一方、補強体63が前述の構成であれば、発光管4から放射される可視光を遮光する程度が少ないので、全光束の低下がすくない。
【0058】
次に、図4を参照して、補強体63の同一方向に巻回している耐熱無機系繊維糸の螺旋状部分において隣接する2個のターンのピッチLと外管損傷率および全光束低下率との関係について調査した結果を説明する。図4において、横軸は交差点間ピッチLmmを、縦軸は右側が外管損傷率(%)、同左側が全光束低下率(%)を、それぞれ示す。なお、外管損傷率は、点線のグラフにより示されており、ANSI C78.389−2004による試験方法で発光管を破裂させたときに、飛散した破片によって外管が損傷する割合を%で示す。また、全光束低下率は、実線のグラフにより示されており、補強体を配設したことに伴って高圧放電ランプの全光束が補強体63を配設しない場合を100%として、それより低下した全光束を%で示す。
【0059】
図4から理解できるように、外管損傷率は、交差点CP間における隣接するターンのピッチLの変化に対して正の相関おいて非直線状に変化し、交差点間ピッチLが15mm以下であれば、発光管が破裂しても、外管の損傷がなくなることが分かった。また、全光束低下率は、交差点間ピッチLの変化に対して負の相関において非直線状に変化し、交差点間における隣接するターンのピッチLが5mm以上であれば、実用上差し支えない程度の低下となることが分かった。したがって、交差点間における隣接するターンのピッチLが数式5≦L≦15を満足する範囲内であれば、発光管が極希に破裂した際に外管が損傷することがなく、かつ全光束の低下が少ない高圧放電ランプが得られることが分かる。
【0060】
図5は、本発明の照明装置を実施するための一形態としての高天井用照明器具の概略を示す縦断面図である。図5において、照明器具9は、天井面などへの取付部をなす基台91にソケット92が取着されているとともに、このソケット92を囲みガード93が設けられている。そして、このガード93の下端には金属板やほうろう製の円錐状をし内面に反射面が形成された反射笠94が固定され、上記ソケット92に高圧放電ランプLの口金3が装着されることにより保持と電気的な接続がなされる。
【0061】
なお、本形態では上記基台91、ガード93および反射笠94などで器具本体を構成している。また、ランプの点灯回路装置89および電源スイッチ(図示しない。)は、器具本体離間した位置に設けることができる。
【0062】
このような照明器具9は、例えばスポーツ施設の天井面に反射笠94の開口部側を下方に向けて取り付けられ、電源スイッチを入れることにより電源88から点灯回路装置89、ソケットを介して高圧放電ランプLに通電される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の高圧放電ランプを実施するための一形態としてのメタルハライドランプの正面図
【図2】同じく右側面図
【図3】同じくシュラウドおよび補強体の組立体で、(a)が平面図、(b)が正/背面図、(c)が右/左側面図
【図4】補強体の同一方向に巻回している耐熱無機系繊維糸の螺旋状部分において隣接する2個のターンのピッチLと外管損傷率および全光束低下率との関係を示すグラフ
【図5】本発明の照明装置を実施するための一形態としての高天井用照明器具の概略を示す縦断面図
【符号の説明】
【0064】
1:外管、4:発光管、4a、4b:封止部、5a、5b:電極、6:シュラウド、7:サポート部材、40:透光性気密容器、63:補強体、80:始動回路構成部、L:高圧放電ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性気密容器、透光性気密容器の内部に離間対向して封装された一対の電極および少なくとも希ガスおよび発光金属のハロゲン化物を含み透光性気密容器の内部に封入された放電媒体を備えた定格ランプ電力が400W以下の発光管と;
発光管を側方から包囲する耐熱透光性部材からなる円筒状のシュラウドと;
シュラウドの外周面にほぼ密着して正逆反対方向に巻回してそれぞれ複数ターンの螺旋状部分が形成され、かつ同一方向に巻回している螺旋状部分において隣接する2個のターンのシュラウド長手方向のピッチL(mm)が数式5≦L≦15を満足する耐熱無機系繊維糸からなる補強体と;
発光管およびシュラウドを支持するサポート部材と;
始動素子を含み、サポート部材に支持された始動回路構成部と;
発光管、シュラウド、補強体、サポート部材および始動回路構成部を内部に収納する外管と;
外管を経由して発光管および始動回路構成部に給電する給電部材と;
を具備していることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
補強体は、正逆反対方向に巻回して形成された螺旋状部分が交差することにより、シュラウドの外周面には円周上に沿って互いに分散した交差点が4個以上形成されていることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
照明装置本体と;
照明装置本体に配設された請求項1または2記載の高圧放電ランプと;
高圧放電ランプを点灯する点灯回路と;
を具備していることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−194063(P2007−194063A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10793(P2006−10793)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(301010951)オスラム・メルコ・東芝ライティング株式会社 (37)