説明

高圧放電ランプおよび照明装置

【課題】小径筒状部の外周に始動用の近接導体を設けた発光管を有するランプにおいて、発光管内に封入されたハロゲン化物との反応が少ない易電子放射性物質層を設け、始動特性の向上をはかった。
【解決手段】導入導体2A,2B表面または小径筒状部12a,12bの内表面に形成された耐ハロゲン性の易電子放射性物質層、放電容器1内に封入された金属ハロゲン化物および始動ガスを含む放電媒体とからなる発光管1Aと、この発光管1Aの導入導体2A,2Bに電気的に接続するとともに発光管1Aを保持する一対の給電部材と、一方の導入導体2A,2Bの上記易電子放射性物質層と対向する小径筒状部12a,12bの外周部分に添設されるとともに、他方の電極20a,20bと同電位になるよう給電部材に接続された近接導体5とを備えた高圧放電ランプおよびこの放電ランプを装着した照明装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外管内に発光管とともに始動補助用の近接導体が設けられたメタルハライドランプなどの高圧放電ランプおよびこの放電ランプを用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧放電ランプ、たとえばメタルハライドランプは、道路、広場や競技場などの広域照明用をはじめ店舗や車両などの照明用の他、オーバヘッドプロジェクタや液晶プロジェクタなどの光学機器用の光源として広く使用されている。
【0003】
この種高圧放電ランプにおいては始動特性の改善をはかるため、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、トリウム(Th)、ディスプロシウム(Dy)やスカンジウム(Sc)などの酸化物からなる易電子放射性物質層を電極に設けることが知られているが、これら物質は発光管内に発光用として封入されたハロゲン化物と反応して変質や消耗したり不純ガスを発生するなど、早期に発光特性の低下や短寿命化を招くなどの問題があった。
【0004】
そして、メタルハライドランプなどの高圧放電ランプ分野においても、小形高効率化や省エネルギー化が要望され、略球形状や略円筒形状をなす膨出部の両端部に連通して小径の筒状部が設けられた放電容器を有し、両小径筒状部内に先端に電極が設けられた導入導体を挿通させるとともに気密封止し、放電容器内に発光金属のハロゲン化物および希ガスからなる放電媒体を封入した発光管を給電部材を介し外管内に封装して構成されたものがある。
【0005】
このような構成のランプにおいては始動特性の改善をはかるため、たとえば特許文献1に示されているように、上記一方の小径筒状部の外周にこの筒状部内に挿通された導入導体とは異なる電位がかかる他方側の導入導体と接続した補助導体を近接導体(金属製コイル)として巻装するなどして設け、始動時、この近接導体(金属製コイル)と内方の導入導体との間で微放電を生起させた後、電極間の放電へと移行させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−110029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に示されたように小径筒状部の外周に近接導体(金属製コイル)を設けることにより始動電圧の低下がはかれたが、この構造のメタルハライドランプなどの高圧放電ランプにおいて、さらに始動特性の向上が要望され、本発明者はこの始動について究明を行い本発明の完成に至った。
【0008】
本発明は、上記小径筒状部の外周に始動用の近接導体を設けた発光管を有するランプにおいて、発光管内に封入されたハロゲン化物との反応が少ない易電子放射性物質層を設け、始動特性の向上をはかった高圧放電ランプおよびこの放電ランプを装着した照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の高圧放電ランプは、放電空間を形成する膨出部の両端に設けられた膨出部より内径の小さい一対の小径筒状部を有する透光性の放電容器、この放電容器の各小径筒状部内に挿通されるとともに気密封止された導入導体およびこの導入導体の先端部に接続された電極、上記導入導体表面または小径筒状部の内表面に形成された耐ハロゲン性の易電子放射性物質層、上記放電容器内に封入された金属ハロゲン化物および始動ガスを含む放電媒体とからなる発光管と;この発光管の導入導体に電気的に接続するとともに発光管を保持する一対の給電部材と;一方の導入導体の上記易電子放射性物質層と対向する小径筒状部の外周部分に添設されるとともに、他方の電極と同電位になるよう給電部材に接続された近接導体と;上記発光管を保持した給電部材を内部に封装した外管とを具備していることを特徴とする。
【0010】
本発明は、放電容器を構成する小径筒状部の外周にこの小径筒状部内に挿通した導入導体とは異なる電位に接続された近接導体が設けられるとともに、この近接導体が位置する内方の導入導体の表面または小径筒状部の内壁面に耐ハロゲン性の易電子放射性物質層を形成したランプである。
【0011】
このランプの始動は、一対の導入導体に設けた電極およびこれら一対の導入導体と並列的に接続された一方の導入導体と近接導体とに始動電圧が印加される。この電圧印加によって、電極間よりもインピーダンスが小さく、かつ、間に易電子放射性物質層が形成され放電を生じ易くした導入導体と近接導体との間、正しくは小径筒状部内表面と導入導体との僅かな隙間に、まず、微放電が生起する。
【0012】
この電圧印加ならびに微放電により放電容器内の電子密度が急速に増加して、この放電を電極間の放電へと導きランプを容易に始動して点灯を開始でき、その後、放電が安定してランプは通常の点灯が行われる。
【0013】
本発明は、上記易電子放射性物質を耐ハロゲン性で二次電子放射性を有する物質から選ぶことによって、ハロゲンによる変質劣化や飛散などが少なく長期に亘り放電生起を持続、すなわち、ランプの長寿命化をはかることができる。
【0014】
なお、上記易電子放射性物質層および近接導体は、一対の小径筒状部の少なくとも一方側に設けられていればよい。
【0015】
本発明および以下の各発明において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0016】
<発光管の放電容器について>
発光管の放電容器を形成する材料としては、サファイヤ、アルミニウム酸化物(アルミナ)、イットリウム−アルミニウム−ガーネットの酸化物(YAG)、イットリウム酸化物(YOX)やアルミニウム窒化物(AlN)などのセラミックス、あるいは石英ガラス、ホウケイ酸ガラスやアルミノシリケートガラスなどの酸化ケイ素を主成分とする高シリカガラスなどからなる耐熱透光性およびハロゲン化物からの耐蝕性が高いものを用いることができる。
【0017】
上記の透光性とは、放電によって発生した光を透過して外部に放出できる程度の光透過性を有し、透明に限らず光拡散性であってもよく、また、容器端部など放電による放射を主としない部分は遮光性であってもよい。
【0018】
また、放電容器の形状は、円筒形や中央部が膨出した長円形、球形あるいはこれら形状の複合体などをなし、この膨出した部分の両端には膨出部と一体成形または別途成形して接合した小径の筒状部が設けられ、この小径筒状部の端部は封止して気密に閉塞されている。
【0019】
この端部の封止部は放電容器がセラミックス製の場合は、小径筒状部内に直接導入導体を介在させたり、金属製、サーメット(セラミックスとタングステン(W)やモリブデン(Mo)などとの混合粉末を焼結した導電性のもの。)製やセラミックス製などからなり導入導体を貫通したりまたは内外に接続した栓体を小径筒状部の端部に介在させて、耐熱性接着剤などで気密に封止している。
【0020】
この耐熱性接着剤は放電容器材料および導入導体の封止部と熱膨張係数が同じか近似しているとともに熱的にも600℃程度に耐える、たとえばディスプロシウム−アルミニウム−ケイ素の酸化物(DyO−Al−SiO)などのコンパウンド剤(別名ガラスシール剤とも呼ばれている。)やモリブデン(Mo)−アルミニウム酸化物(Al)などのメタライズペースト状のセラミックス系の耐熱性接着剤などの充填剤が用いられ、封止予定部に塗布や充填され加熱、溶融して固化することにより気密に封止している。
【0021】
また、放電容器がガラス製の場合は、導入導体にこのガラスと熱膨張係数が同じか近似している材料からなる線状や箔状の封止用や外部導入導体とした部分を設け、この封止用部分を容器端部内に介在させ、この容器端部を加熱溶融して圧潰や焼絞りなどの手段で気密封止することにより閉塞している。
【0022】
さらに、ランプの定格によっても異なり制限されるものではないが、放電容器の放電空間を形成する円筒形、長円形、球形などをなす部分の内径は4〜30mm程度、内部の全長は10〜90mm程度、内容積は0.02〜20cc、好ましくは0.2〜10cc程度のものを用いることができる。
【0023】
<導入導体および電極について>
導入導体は、電極に接続してこれを支持し電極に放電電流を供給するとともに小径筒状部内に固定される機能を有する。
【0024】
導入導体は放電容器がセラミックス製の場合、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)やプラチナ(Pt)などが、ガラス製の場合はモリブデン(Mo)やタングステン(W)などの封止用金属からなる封止部材を兼ねる無空棒状、管状や箔状などに形成されている外部導入導体に、電極が設けられたタングステン(W)やドープドタングステンからなる電極軸を直接溶接した2部材あるいは両者間にモリブデン(Mo)やサーメットなどの1ないし2つの導電部材からなる給電用の中間導体を介し直列的に計2ないし4部材の複数部材を突合せ溶接などの手段で接続したものからなる。
【0025】
なお、外部導入導体の材料の選択はセラミックス放電容器や耐熱性接着剤の材料の熱膨張係数などに応じ、また、中間導体は耐ハロゲン性や熱膨張係数差の緩和がはかれる材料を適宜選ぶことが必要である。また、外部導入導体は、小径筒状部の端部から外部に直接または他の接続導体を介して導出され発光管を支持することもできる。
【0026】
また、電極の電極軸部は、放電容器に対して電極を所定の位置に固定するとともに、外部から電流を導入するために機能し、上述のようにその基端部は導入導体の先端に固着することで電気的および機械的に接続支持されている。
【0027】
電極は、容器内において一対が対峙するよう配設されており、電極軸の先端部が直接電極を兼ねても、また、表面積を大きくして放熱を良好にするために、必要に応じて先端部にタングステン(W)線やドープドタングステン線からなるコイルを巻装することができる。
【0028】
また、小径筒状部に位置する上記電極軸または中間にある給電用導体は、その外面と小径筒状部の内面との最小間隔が0.1mm以下(接触していてもよい。)となるように挿通されているのが好ましい。この間隔を小さくする(接触していてもよい。)手段としては挿通部材の一部にタングステン(W)やモリブデン(Mo)などの材料からなる線材をコイル状に巻装したり、板材をパイプ状に成形したものを巻装して対応させるようにしてもよい。
【0029】
<易電子放射性物質層について>
易電子放射性物質層は、発光用などの金属ハロゲン化物との反応が小さい耐ハロゲン性で二次電子放射性を呈するマグネシウム(Mg)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)などの酸化物のうちの少なくとも一種を含む物質で形成されたものからなり、電極および近接導体に近い導入導体表面または小径筒状部や小径筒状部から膨出部にかかる内表面の少なくとも一方に形成される。
【0030】
易電子放射性物質層は、上記物質の粉末と有機バインダとの懸濁液を吹付け、筆塗りや浸漬などで塗布したり、ゾルゲル法やスパッタ法などで形成することができ、本発明では膜状のものを含み、層(膜)厚は10nmないし100μm程度がよく、層(膜)厚が薄すぎると電子放出能力が低く、逆に厚過ぎると層内に残留する不純物の除去が困難となり、ランプ特性に悪影響を及ぼすので好ましくない。
【0031】
<放電媒体について>
放電媒体は、発光物質の金属ハロゲン化物および始動や緩衝用の希ガスなどからなり、その種類および封入量は、発光効率、演色性や色温度などの発光特性あるいはランプ電力や発光管容器の内容積などに応じて選択することができる。
【0032】
発光金属としては水銀(Hg)(アマルガムを含む)、ナトリウム(Na)、タリウム(Tl)、インジウム(In)、リチウム(Li)やセシウム(Cs)など、あるいはディスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、スカンジウム(Sc)、ネオジム(Nd)やセリウム(Ce)などの希土類金属が、また、ハロゲンとしてはヨウ素(I)、臭素(Br)、塩素(Cl)やフッ素(F)のいずれか一種または複数種を用いることができる。なお、上記ハロゲン化物は発光用のほか電気的特性調整用として封入されるものを含む。
【0033】
始動および緩衝ガスとしてアルゴン(Ar)やネオン(Ne)などが封入されるが、必要に応じてその他の希ガスを封入することができる。なお、希ガスは、点灯中、約101.3kPa(約1気圧)以上の圧力を呈するよう放電容器内に封入されている。
【0034】
<外管について>
外官は発光管を収容する外囲器であって、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスなどの硬質ガラス、半硬質ガラスや軟質ガラスなどのガラスあるいはセラミックスからなる透光性および耐熱性を有する材料で形成されたA形、AP形、B形、BT形、ED形、R形、T形などをなし、端部の開口部から上記発光管を保持したマウントを入れ、この開口部をバーナで加熱し溶融閉塞してマウントを封止した封止部が形成されている。なお、T(直管)形などの外管の場合は両端に封止部が形成されていてもよい。
【0035】
また、外管内は真空雰囲気であっても、窒素(N)やアルゴン(Ar)などの希ガスが封入された不活性ガス雰囲気であってもよい。
【0036】
<給電部材について>
給電部材は、外管の封止部内に封止られる部分がガラスとの気密性やなじみがよい封止用金属部分と、この封止用金属の一端側に接続し外管内に延在して発光管などと電気的な接続をなすとともにこれらを固定支持するサポート部材と、封止用金属の他端側に接続し外管外に導出された外部リードとからなる。
【0037】
上記サポート部材はモリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)やステンレスなどの線材や板材で略直線形状あるいは略長四角形状や略コ字形状の枠状に形成され小径筒状部の端部から導出した外部導体と電気的に接続するとともに発光管や始動補助回路部品などを管軸に沿って配設固定している。また、外部リードはモリブデン(Mo)やニッケル(Ni)系材料などの線材からなり、キャップ状口金のシェルやアイレット端子あるいはピン状の端子に接続される。
【0038】
なお、上記構成の材料、寸度などの形態は発光管の品種、電力、重量、外管材料などに合わせ適宜選べばよい。
【0039】
また、外管内のサポート部材などに、外管内を清浄にするジルコニウムZr−アルミニウム(Zr−Al)合金などのゲッタを設けておくことは構わない。
【0040】
<近接導体について>
近接導体は、一方の導入導体が挿通する小径筒状部の外周部分に添設されるとともに、他方の電極と同電位になるよう給電部材に電気的に接続されている。
【0041】
さらに詳述すると、近接導体は易電子放射性物質層と最も接近するよう、易電子放射性物質層が形成された部位と対向する小径筒状部基部の外面に近接ないしは接触する状態で1ないし数ターンコイル状に巻装や容器軸に添って設けられ捩じりや係合などの手段で係止されている。
【0042】
この近接導体は、給電部材と同質や異質の導電性材料を線状、板状やメッシュ状に加工したものを用いることができる。
【0043】
<口金について>
口金は、高圧放電ランプの本体をソケットに保持し、電源と電気的に接続する機能を果たすランプ構成要素であり、本発明においてはねじ込み形(E形など)、差込み形(G形やS形など)、ピンなし差込み形やバイポスト形の口金など既知の多様な構造を採用することができる。
【0044】
なお、外管と口金とを接合支持させるのに用いられる接着剤は、高圧放電ランプの点灯中の動作温度に耐えるものであれば特段限定されない。一般的には耐熱性のセラミックス系無機質接着剤が適するが、接着剤を用いないで、凹凸やかしめなどのメカニカル的な手段によって固定される態様でもよい。
【0045】
<その他>
発光管を囲繞してセラミックスあるいは石英ガラスや硬質ガラスからなる耐熱透光性の材料からなる中管を設けることができる。この中管により、発光管の保温が行え発光金属を容易に作用させて高効率化や高演色化など発光特性の向上がはかれるとともに万一の発光管容器破損時の防護をなすことができる。
【0046】
また、発光管および中管を電位のかからない部材に支持させることにより、点灯時に光電子作用により発光管容器内からナトリウム(Na)イオンなどが抜け出すことを防ぎ、ランプの発光効率の低下を抑制できる。
【0047】
さらに、ランプの始動補助部材として、発光管とともにエンハンサ(紫外線発生源)を外管内に設けることは差し支えなく、さらに始動性を向上することが可能となる。
【0048】
請求項2の発明の高圧放電ランプは、上記易電子放射性物質層が、マグネシウム、ランタン、セリウム、イットリウムの酸化物のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする。
【0049】
易電子放射性の酸化マグネシウム(たとえばMgO)、酸化ランタン(たとえばLa)、酸化セリウム(たとえばCeO)、酸化イットリウム(たとえばY)などを含む物質は、発光用などの金属ハロゲン化物との反応が小さい耐ハロゲン性を示すとともに二次電子放射性を呈する仕事関数の低い物質で、粒子衝突による電子放出能力が高く放電容器内の電子密度を増して放電を容易に生起させることができる。
【0050】
請求項3の発明の照明装置は、照明装置本体と;この装置本体に設けられた請求項1または2に記載の高圧放電ランプと;この高圧放電ランプを点灯させる点灯回路装置とを具備していることを特徴とする。
【0051】
始動特性の向上したランプを有しているので、通電後短時間で所定の明るさが得られるとともに始動電圧の低下による点灯回路部材の低圧化をはかることができる。
【0052】
また、上記照明装置本体とは、照明器具を含み上記照明装置から高圧放電ランプおよび点灯回路手段を除いた筐体、反射鏡、透光性カバーやレンズなどの残余の部分を指すがこれら部材全部が必須のものではない。
【0053】
この高圧放電ランプの点灯手段としては、矩形波点灯回路方式、チョークコイル式やトランス式などの磁気励起式の安定器を用いることができる。
【0054】
本発明において、照明装置は、高圧放電ランプの発光を何らかの目的で用いるあらゆる装置を含む広い概念である。たとえば、電球形高圧放電ランプ、照明器具、移動体用前照灯、光ファイバー用光源装置、画像投射装置、光化学装置、指紋判別装置などに適用することができる。
【発明の効果】
【0055】
請求項1の発明によれば、発光管容器の小径筒状部の外周に設けられた近接導体と対向する導入導体表面または小径筒状部内表面に耐ハロゲン性の易電子放射性物質層を形成したことにより、発光管内に封入された金属ハロゲン化物との反応を抑制し、ランプの始動時、電子放出能力が高いとともに所望の電子放射を長期に亘り容易に行うことができる、始動時間の短縮や始動電圧の低圧下など始動特性の向上がはかれる高圧放電ランプを提供することができる。
【0056】
請求項2の発明によれば、易電子放射性物質が、マグネシウム(Mg)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、イットリウム(Y)などの酸化物で、これら物質は上記請求項1に記載した効果を呈する。
【0057】
請求項3の発明によれば、上記請求項1または2に記載の効果を奏する高圧放電ランプを備えているので、始動特性に優れるとともに始動電圧の低圧下による耐圧(絶縁)性の低い点灯回路部材の使用が可能で材料コストの低減がはかれる照明器具などの照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の高圧放電ランプの実施形態を示す概略正面図である。
【図2】図1中の発光管部分を示す拡大断面正面図である。
【図3】(a)および(b)図は、図2中の易電子放射性物質層を形成した小径筒状部近傍部分を拡大断面して示す説明図である。
【図4】本発明の高圧放電ランプの他の実施の形態を示す要部の概略正面図である。
【図5】本発明の照明装置の実施形態を示す一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は高圧放電ランプの正面図、図2は図1中の発光管部分を示す拡大断面正面図、図3(a)は図2中の一方の小径筒状部近傍部分を拡大断面して示す説明図である。
【0060】
高圧放電ランプL1は、発光管1A、この発光管1Aを囲繞する中管75、この発光管1Aと中管75を支持するとともに給電をなす一対の給電部材4A,4Bを内部に収容した外管7およびこの外管7の端部に設けられた口金8を主体として構成されている。なお、図中の中管75は必須のものではない。
【0061】
発光管1Aは、略球状をなしている膨出部11の両端に連続的な曲面によって繋った膨出部より内径の小さい一対の小径筒状部12a,12bを連設した透光性セラミックスたとえばアルミニウム酸化物(アルミナ)からなる放電容器1を備え、この放電容器1の小径筒状部12a,12b内を貫通して膨出部11に臨む先端部に所定の間隔を隔て電極20a,20bが設けられた無空棒状や管状の導入導体2A,2Bを小径筒状部12a,12bの端部においてセラミックス系の耐熱性接着剤13,13により気密に封止された構造をしている。
【0062】
上記導入導体2A,2Bは、ニオブ(Nb)線が小径筒状部12a,12bとの気密封止部および外部導入導体21として、このニオブ(Nb)線にモリブデン(Mo)線が中間導体22として、また、このモリブデン(Mo)線にタングステン(W)線が電極軸23として接続構成されている。この接続は突合せ溶接などの手段で行われ、上記3部材が夫々一本の直線状の導入導体2A,2Bとして構成されている。
【0063】
なお、このとき小径筒状部12a,12b内を貫通する導入導体2A,2Bの外側面と小径筒状部12a,12b内壁面との隙間は0.1mm以下となっていて、隙間が大きい場合は、電極軸23や中間導体22から電極軸23にかけてモリブデン(Mo)などの細線からなるコイル25を巻装して隙間を小さくしてもよく、このコイル25の外側面が小径筒状部12a,12bの内壁面と接触していてもよい。
【0064】
また、上記各電極20a,20bは、電極軸23の先端部にタングステン(W)線を巻装したコイル状電極24として構成しているが、このコイル24は必須のものではなく、電極軸23自体の先端が電極作用を行うものであってもよい。
【0065】
また、小径筒状部12a,12b内に挿通した導入導体2A,2Bの少なくとも一方、ここでは図3に拡大して示すように下方側の導入導体2Bに巻装されたコイル25部を含む電極軸23の表面には、酸化マグネシウム(MgO)粉末を塗布した易電子放射性物質層3が形成してある。
【0066】
また、上記発光管1Aの放電容器1内には、放電媒体としてアルゴン(Ar)などを含む始動および緩衝ガスならびに発光金属としてよう化ナトリウム(NaI)、よう化タリウム(TlI)、よう化インジウム(InI)およびよう化ツリウム(TmI)などの金属ハロゲン化物と水銀(Hg)とが封入されている。
【0067】
外管7はホウケイ酸ガラスなどで形成された一端側(図において上側)が予め閉塞されたT形(直管形)をなし、他端側(下側)の開口部には発光管1Aを支持したステム4sを溶着することにより閉塞された封止部(図示しない。)が形成してある。また、外管7内は封止部形成後に排気管(図示しない。)を介し排気された真空雰囲気あるいは低圧の窒素(N)やアルゴン(Ar)などの希ガス雰囲気にしてある。なお、49はゲッタである。
【0068】
一対の給電部材4A,4Bは、上記ステム4sに気密封着された封着線(図示しない。)から延出した内部リード線41a,41bの一端側に接続され外管7内に延在するモリブデン(Mo)やステンレスなどの線材や板材からなる給電を兼ねる長尺のサポート部材42aと短尺でほぼ直線状をなすサポート部材42b部分と、他端側に接続され外管7外に延在するモリブデン線などからなる外部リード43a,43b部分とからなる。
【0069】
上記一方のサポート部材42aは、略V字形に折曲げた部分が内部リード線41aに接続され、先端側が離間して外管7軸に沿ってほぼ並行に延在するよう折曲され、延伸したその先端部がT形をなす外管7の頂部側内壁面と弾性的に当接するよう配設されている。
【0070】
また、この並行するサポート部材42aの中間部には金属板やセラミックス板などでドーナツ状や帯状などに成形した、ここでは金属板をドーナツ状にプレス成形した支持部材44a,44bが間隔を隔て直接に溶接などの手段で接続されたり、固定部材を介し取り着けられ、離間したサポート部材42a,42aを橋絡して固定保持する構成をなしている。なお、この支持部材44a,44bは可視光線や紫外線をできるだけ遮蔽しないよう形成してあるのが好ましい。
【0071】
そして、ドーナツ状の支持部材44a,44bの中央に形成した透孔内に発光管1A放電容器1の小径筒状部12a,12bが挿通や遊嵌して固定され、また、発光管1Aを囲繞した中管75が支持部材44a,44b間に上下から挟むような状態で固定部材45,…などを介し固定されている。
【0072】
また、一方のサポート部材42aに接続した支持部材44aと発光管1Aから導出された外部導入導体21とが導電体46を介し電気的に接続してあり、略直線状の他方のサポート部材42bは先端部に接続した導電体47を介し他方の外部導入導体21と電気的に接続してある。
【0073】
また、5は始動補助用の近接導体で、鉄−ニッケル(Fe−Ni)合金などの金属線や金属箔あるいはメッシュ状のものからなり一端側が給電部材4A(サポート部材42a)に固定された支持部材44aと電気的に接続され、小径筒状部12aから膨出部11を経て他方の小径筒状部12bの基部付近まで放電容器1の外壁面に沿って延在させてある。
【0074】
そして、上記近接導体5は、一方の小径筒状部12aの基部付近の外周面に
1ないし数ターン巻回して係止してあるとともに、先端部は他方の小径筒状部12b内を挿通する電極軸21などの易電子放射性物質層3の形成部位と対向する筒状部12bの基部付近の外周に1ないし数ターン巻回したコイル状部51を形成して端部を縛ったりバンド状の部材で固定するなどの手段で係止されている。
【0075】
また、6は紫外線発生源(エンハンサ)で、紫外線透過性の石英ガラスなどからなる気密容器61の端部に形成した封止部62内にモリブデン(Mo)線からなる封着線兼用のリード線63が気密封止され、気密容器61内において箔状の内部導電部材を構成する内部電極(図示しない。)が接続してある。また、この気密容器61内にはアルゴン(Ar)などの希ガスが封入されている。
【0076】
この紫外線透過性の気密容器61の外周部には鉄−ニッケル(Fe−Ni)合金などからなる線状、板状やメッシュ状をした外部導電部材を構成する外部電極64が1ないし複数回螺旋状に巻装してあり、この外部導電部材(外部電極64)の他端はサポート部材42bに、また、上記内部導電部材(内部電極(図示しない。))の他端はサポート部材42aに夫々電気的に接続している。
【0077】
すなわち、この給電部材4A,4Bの外管7内に延在するサポート部材42a,42bや支持部材44aなどの部分は、発光管1A両端の導入導体2A,2Bおよび紫外線発生源(エンハンサ)6の内外導電部材(内部電極(図示しない。),外部電極65)と電源に対し電気的に並列接続して給電を行うとともに発光管1Aを外管7軸に沿って配設保持している。また、他方の小径筒状部12bの外周に設けられた近接導体5は、一方の小径筒状部12a内に挿通された導入導体2Aと同電位となるよう接続されている。
【0078】
そして、上記外管7の封止部には、品種や用途に応じて口金8が被冠して設けられるとともに口金8の端子部に外部リード43a,43bが接続されメタルハライドランプを構成する高圧放電ランプL1が完成する。
【0079】
この放電ランプL1は、口金8部をソケットに装着して図示しない安定器などを備えた点灯回路装置からランプL1に通電される。
【0080】
この点灯回路装置に接続された放電ランプL1は、始動時、口金8に接続した外部リード43a,43b−内部リード線41a,41b−給電部材4A,4B(サポート部材42a,42b)を介し発光管1A内にある導入導体2A,2B−電極20a,20bおよび給電部材4A,4B(サポート部材42a,42b)に並列的に接続した紫外線発生源(エンハンサ)6の内部電極(図示しない。),外部電極64ならびに一方の小径筒状部12aの導入導体3A側に接続した近接導体5に高圧パルスが印加される。
【0081】
この高圧パルスの印加によって、発光管1A内の他方の小径筒状部12b内においては、外周面に巻装した近接導体5とこの近接導体5の内方に挿通された導入導体2B部分との間で微放電が起きる。
【0082】
本発明では、この近接導体5が位置する内方の導入導体2Bの電極軸23およびコイル25の表面には電子放出能力の高い易電子放射性物質層3が形成してあるので、発光管1A内の電子密度を増加させて近接導体5と導入導体2B
との間の微放電から、電極20a,20b間の放電への移行を促進することができる。
【0083】
また、そのインピーダンスが電極20a,20b間に比べ小さい紫外線発生源(エンハンサ)6の内部電極64と外部電極65との間でも絶縁破壊が起き、気密容器61内に封入したアルゴン(Ar)が励起され紫外線を発生し、この紫外線が気密容器61壁を透過して外部に放射する。
【0084】
この紫外線発生源(エンハンサ)6から放射された紫外線の一部は放電容器1の膨出部11壁を透過して放電空間内を照射するので、放電容器1内に封入されたアルゴン(Ar)などを含む始動および緩衝ガスが励起されるためランプL1の始動電圧が低下して、電極20a,20b間の放電生起を促進することができる。
【0085】
すなわち、上記近接導体5と対向する導入導体2Bの表面に易電子放射性物質層3を形成するとともに、紫外線発生源(エンハンサ)6からなる始動補助体を併せ設けたことにより、始動時、発光管1A内の電子密度を急速に高め電極20a,20b間の放電へと移行することができ、また、上記酸化マグネシウム(MgO)からなる易電子放射性物質はハロゲンによる変質劣化や飛散などが少なく長期に亘り放電生起を持続することができた。
【0086】
したがって、近接導体と対向した導入導体2Bの表面に上記耐ハロゲン性物質からなる易電子放射性物質層3を形成することにより、長期に亘りランプL1の始動時間の短縮や始動電圧の低圧下など始動特性の向上がはかれる高圧放電ランプL1ならびに電圧低下による耐圧(絶縁)性レベルの低い点灯回路部材の使用が可能となるなど安価な点灯回路装置を提供することができた。
【0087】
なお、上記始動時間とは、電圧印加から電極20a,20b間の絶縁破壊に要する時間であり、一般には数10m秒〜数秒のオーダーである、
また、上記実施の形態では、始動補助体として紫外線発生源(エンハンサ)6を併せ設けたが紫外線発生源(エンハンサ)6は必須のものではなく、小径筒状部12b外周の近接導体5と対応する導入導体2Bに易電子放射性物質層3のみを形成したランプにおいても始動特性の改善がはかれる。
【0088】
図4は本発明の高圧放電ランプの他の実施の形態を示す要部の概略正面図で、図中、図1ないし図3と同一部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0089】
このランプL2は、図2に示す発光管1Aが石英ガラスなどの硬質ガラスからなる直管(T)形の外管7内に封装されている。外管7の一端側の圧潰封止部71にはモリブデン(Mo)箔からなる封止用部材48,48が気密に封着され、この封止用部材48,48に夫々接続した内部リード線41a,41bおよびサポート部材42a,42bを兼ねる給電部材4A,4Bに発光管1Aが外管7軸に沿って支持しているとともに電気的な接続がなされている。
【0090】
さらに詳述すると、略並行して延在する一方の給電部材4Aは、先端側がほぼ直角に折り曲げられ発光管1Aの一方の小径筒状部12aから導出した外部導入導体21と、また、他方の給電部材4Bは導電体47を介し他方の小径筒状部12bから導出した外部導入導体21と接続されている。
【0091】
また、発光管1Aの両小径筒状部12a,12b内に挿通した両導入導体2A,2Bの電極軸23(図示しない。)およびコイル25(図示しない。)の表面には電子放出能力の高い上述したと同様の酸化マグネシウム(MgO)からなる易電子放射性物質層3(図示しない。)が形成してある。また、夫々の小径筒状部12a,12b基部の易電子放射性物質層3(図示しない。)と対応する外周には一端側に形成したコイル状部51が巻装され、他端側がこの小径筒状部12a,12b内を挿通する導入導体2A,2Bとは異なる電位にある給電部材4A,4Bに接続した近接導体5が設けられている。
【0092】
すなわち、図4において上方の小径筒状部12aには給電部材4B側に接続した近接導体5が、下方の小径筒状部12bには給電部材4A側に接続した近接導体5が設けられている。また、図中72は外管7の他端部に設けられた排気管チップ部、40,40は一対の給電部材4A,4Bを橋絡固定するとともに小径筒状部12a,12bを挟持した絶縁物からなるブリッジである。
【0093】
そして、この高圧放電ランプL2は、口金8部をソケットに装着して図示しない安定器などを備えた点灯回路装置を介し通電すると上記放電ランプL1と同様に始動時、口金8に接続した外部リード(図示しない。)−封止用部材48,48−給電部材4A,4B(内部リード線41a,41b、サポート部材42a,42b)を介し発光管1Aの導入導体2A,2B−電極20a,20bおよび両小径筒状部12a,20bに接続した近接導体5,5に高圧パルスが印加される。
【0094】
この高圧パルスの印加によって、小径筒状部12a,12b内を挿通する導電導体2A,2Bと、内方のこの導電導体2A,2Bとは異なる電位がかかる近接導体5,5との間の、すなわち、両方の導入導体2A,2Bの易電子放射性物質層3が形成された部位に微放電が生じ、この微放電を電極20a,20b間の放電へと移行を促進して、ランプL2を従来構成のランプより短時間で、かつ、低い始動電圧で点灯させることができる上記実施の形態のランプL1と同様な作用効果を呈する。
【0095】
また、図5は、たとえば上記高圧放電ランプL1が用いられた本発明に係わる照明装置(または器具と称される)9の実施の形態の概略を示す一部断面正面図である。
【0096】
この照明装置9は、天井91などに埋め込み設置される埋込形照明装置で、天井91側に取り付けられる器具(装置)本体92を有し、この器具(装置)本体92内に設けられたソケット93に上記高圧放電ランプL1の口金8が装着される。
【0097】
また、この器具(装置)本体92内には、ランプL1の放射光を下方に反射させる反射鏡94が配設され、この反射鏡94の開口部を覆うよう設けられた透光性のガラス板などからなるカバー部材やレンズなどからなる制光体95が配設されている。
【0098】
この照明装置9は、たとえばデパートなどの天井面に反射鏡94の開口部側を下方に向けて取付けられ、器具(装置)本体92内やあるいはこの本体92とは別置された安定器などを有する点灯回路装置(図示しない。)と電気的に接続され、点灯回路装置からの給電によりランプL1を点灯することができる。
【0099】
そして、この照明装置9は、上述した放電ランプL1が装着されているので、始動(点灯)に要する時間の短縮化や始動電圧の低圧化による耐圧(絶縁)性の低い点灯回路部材の使用が可能で装置が安価になるなどの利点がある。
【0100】
なお、本発明は上記実施の形態に限るものではない。たとえば実施の形態では、高圧放電ランプL1,L2の発光管1Aに用いた易電子放射性物質層3の形成材料として酸化マグネシウム(MgO)を用いたが、これに限らず発光用などとして封入された金属ハロゲン化物との反応が小さい耐ハロゲン性で二次電子放射性を呈する酸化ランタン(たとえばLa)、酸化セリウム(たとえばCeO)、酸化イットリウム(たとえばY)などを含む物質を主成分としたものを用いることができ、また、これら1ないし複数種の材料を混合使用しても、同様な作用効果を得ることができた。
【0101】
また、易電子放射性物質層3の形成は、たとえば粒径が10nm〜100μm程度の酸化マグネシウム(MgO)からなる粉体と酢酸ブチルブなどの有機バインダとで作った懸濁液を、電極軸23およびコイル25の表面の所定部分に筆塗り、浸漬や吹付けなどの手段で塗布した後、加熱することによりバインダを蒸発除去して形成したり、ゾルゲル法やスパッタ法などにより形成することもできる。
【0102】
また、易電子放射性物質層3の形成箇所は、導入導体2A,2Bの電極20a,20b近くの図3(a)に示す電極軸23などの表面に限らず、小径筒状部12a,12bの外周に設けられる近接導体3と対応する図3(b)に示す小径筒状部12a,12bや小径筒状部12a,12bから膨出部11にかかる容器1内表面に形成されていても上記と同様な作用効果を奏する。また、導入導体2A,2B表面と容器1内表面の両者に形成されていても同様な作用効果を奏するので、少なくとも一方の小径筒状部12a,12b側に形成されていればよい。
【0103】
また、易電子放射性物質層3および近接導体3の形成は、一方の小径筒状部12b側に限らず、両方の小径筒状部12a,12bに形成してあってもよい。
【0104】
また、この種高圧放電ランプにおいて、発光用など水銀(Hg)を封入したランプでは、始動時に水銀(Hg)−アルゴン(Ar)のペニング効果による始動電圧の低下が期待できることが知られている。
【0105】
そして、本発明の上記実施の形態では、発光用などの金属として水銀(Hg)を封入していない発光管1Aについて述べたが、水銀(Hg)を封入した発光管1Aの場合でも、もちろん本発明の適用が可能で、水銀(Hg)による効果のほか上述した作用効果を奏するランプを提供できる。
【0106】
さらに、照明装置9も上記実施の形態に限らず、他の構造をなすものであってもよい。また、用途は一般用照明器具、スポーツ、公共施設や工場などの施設用照明器具、前照灯、光ファイバー用光源装置、画像投射装置、光化学装置など発光を何らかの目的で利用する高圧放電ランプおよびこのランプを用いた照明装置(器具)に利用することができる。
【実施例1】
【0107】
ランプは図1〜3に示すものと略同構造の定格電力が150Wのメタルハライドランプである。
【0108】
発光管1Aの構造寸法仕様は、透光性アルミナセラミックス製の放電容器1は、全長約55mm、膨出部11の長さ約20.5mm、最大外径約12.8mm、最大内径約12.5mmで内容積約1.5cm、小径筒状部12a,12bの長さ約17.3mm、外径約3.0mm、内径約1.2mmである。
【0109】
また、小径筒状部12a,12b内に挿通する導入導体2A,2Bは、長さ約12.0mm、外径約1.1mmのニオブ(Nb)線からなる外部導入導体21、この外部導入導体21に接続した長さ約3.0mm、外径約0.5mmのモリブデン(Mo)線と長さ約13.0mm、外径約0.5mmのタングステン(W)線からなる中間導体22、このタングステン(W)線からなる中間導体22に接続した長さ約2.5mm、外径約0.75mmのタングステン(W)線からなる電極軸23の4部材が直列接続されたものからなる。また、上記外部導入導体21は、小径筒状部12a,12b端部の開口から約3mm挿入した位置で耐熱性接着剤13を介し気密封止されている。
【0110】
そして、この導入導体2A,2Bのモリブデン(Mo)線からなる中間導体22の外周には外径約0.3mのモリブデン(Mo)線がピッチ間隔約0.36mmで長さ約3.0mm巻回したコイル25が、また、タングステン(W)線からなる中間導体22には外径約0.3mmのタングステン(W)線がピッチ間隔約0.36mmで長さ約13.0mm巻回したコイル25が、最先端部を半球状に形成した電極軸23の先端から約1.0mmの位置に外径約0.17mmのタングステン(W)線がピッチ間隔約0.17mmで約7ターン巻回したコイル状電極24,24が約12mmの間隔を隔て設けてある。
【0111】
また、上記タングステン(W)線からなる中間導体22の、電極20a,20b寄りの部位のコイル25部を含む表面の約4,0mmの範囲にわたり、スパッタ法により酸化マグネシウム(MgO)からなる易電子放射性物質層3が形成してある。
【0112】
また、放電容器1内には放電媒体としてヨウ化ツリウム(TmI)約6mg、ヨウ化ナトリウム(NaI)約2mg、ヨウ化セシウム(CeI)約1mg、臭化カルシウム(CaBr)約1mg、ヨウ化亜鉛(ZnI)約3mgとキセノン(Xe)約1.2気圧(25℃)が封入してある。
【0113】
また、近接導体5は外径が約0.2mmのモリブデン(Mo)線からなり、一端側が一方の小径筒状部12a内を挿通する導入導体2Aと同電位となるよう接続され、他端側の先端部は小径筒状部12bの基部に巻装固定されている。
【0114】
そして、上記発光管1Aなどを図1に示す給電部材4A,4Bに取り付け、外管7内に封装して構成したメタルハライドランプL1は、始動特性の向上がはかれることを確認できた。
【符号の説明】
【0115】
L1,L2;高圧放電ランプ、 1A;発光管、 1;放電容器、
11;膨出部、 12a,12b;小径筒状部、 2A,2B;導入導体、
20a,20b;電極、 3;易電子放射性物質層、
4A,4B;給電部材、 5;近接導体、 7;外管、 9;照明装置、
91;装置本体(筺体)、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を形成する膨出部の両端に設けられた膨出部より内径の小さい一対の小径筒状部を有する透光性の放電容器、この放電容器の各小径筒状部内に挿通されるとともに気密封止された導入導体およびこの導入導体の先端部に接続された電極、上記導入導体表面または小径筒状部の内表面に形成された耐ハロゲン性の易電子放射性物質層、上記放電容器内に封入された金属ハロゲン化物および始動ガスを含む放電媒体とからなる発光管と;
この発光管の導入導体に電気的に接続するとともに発光管を保持する一対の給電部材と;
一方の導入導体の上記易電子放射性物質層と対向する小径筒状部の外周部分に添設されるとともに、他方の電極と同電位になるよう給電部材に接続された近接導体と;
上記発光管を保持した給電部材を内部に封装した外管と;
を具備していることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
上記易電子放射性物質層が、マグネシウム、ランタン、セリウム、イットリウムの酸化物のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
照明装置本体と;
この装置本体に設けられた請求項1または2に記載の高圧放電ランプと;
この高圧放電ランプを点灯させる点灯回路装置と;
を具備していることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−175856(P2011−175856A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38954(P2010−38954)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】