高圧放電ランプ用電極、高圧放電ランプ及び高圧放電ランプ用電極の製造方法
【課題】電極コイルのスプリングバックを防止する高圧放電ランプ用電極において、生産性が高くかつコイルの位置決め精度が高い電極を提供する。
【解決手段】電極芯棒及び電極芯棒に装着されるコイルからなる高圧放電ランプ用電極において、電極芯棒が、給電側の細径部及び先端側の太径部からなり、太径部が、細径部側の大径部、大径部よりも外径が小さく大径部と段差を形成する小径部、及び先端部を有し、コイルが段差と先端部の間に被覆される構成とした。
【解決手段】電極芯棒及び電極芯棒に装着されるコイルからなる高圧放電ランプ用電極において、電極芯棒が、給電側の細径部及び先端側の太径部からなり、太径部が、細径部側の大径部、大径部よりも外径が小さく大径部と段差を形成する小径部、及び先端部を有し、コイルが段差と先端部の間に被覆される構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高圧放電ランプの電極構造に関する。より詳しくは、プロジェクタに用いる高圧放電ランプにおける電極コイルの変形を防止するための電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は一般的な超高圧水銀ランプ等の高圧放電ランプの構造を示す図である。高圧放電ランプ6は石英ガラスからなる発光管2、発光管2の発光部2aに1.5mm以下の間隔で対向配置された電極7、発光管2の封止部2bに配置されたモリブデン箔4、及びモリブデン箔4に接続された給電用のリード5を備え、発光部2aには0.15mg/mm3以上の水銀、及び10−5μmol/mm3〜10−2μmol/mm3の範囲の臭素が封入されている。
【0003】
図10は図9の高圧放電ランプにおける電極7の構造を示す断面図である。電極7は電極芯棒70とそれに被覆されるコイル75からなる。図10(a)においては、電極芯棒70の先端側にコイル75が被覆され、電極芯棒70とコイル75の先端が溶融されてドーム状の先端部が形成されている。また、図10(b)においては、電極芯棒70は細径部71及び太径部72からなり、太径部72の先端側にコイル75が被覆され、太径部72とコイル75の先端が溶融されてドーム状の先端部が形成されている。
一般に、電極コイルは電極の温度を調整する機能を持ち、これによって放電状態、放電特性等が決まる。
【0004】
ここで、ランプ点灯中の電極温度は2000度を超える高温になり、コイル75もその熱的な影響を受ける。図10のような構成において、コイル75は、製造当初において密に巻き付けられていたとしても、高温下でスプリングバックを起こし、モリブデン箔4の方向(図10の右側)に広がってしまう。このように電極温度を調整するためのコイル75が点灯時間とともに変形することにより電極の温度条件も変化してしまい、放電特性等が個体間でばらつくという問題があった。
【0005】
このようなスプリングバックの問題への対処として、特許文献1には、コイルと細径部(軸棒)とを溶融により一体化する構成が開示されている。具体的には、同引例図4に開示されるように、軸棒(50)に対して先細り状にコイルを巻き付け(54)、その先細り部分を溶融することにより先端部(20)を形成するとともに、同文献の図9に開示されるように、コイルの先端側(122)だけでなく終端側(124)も軸棒(126)に溶融する構成が開示されている。
【特許文献1】特開2007−273174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の構成によると、確かにスプリングバック防止の効果を期待できるものの、先細り状にコイルを巻き付けるのに高度な技術を要し、さらにコイルの先端の溶融及び終端の溶融の2回の溶融工程が必要となり、生産性が悪く量産に適さないという問題があった。
また、コイルの終端位置が溶融加工の精度に依存するので終端の位置決め精度が低いという問題もあった。例えば、コイル終端の溶融工程において、コイルが溶融熱で多少延びた状態で終端が固定されてしまうことが予想される。また、加えられた熱で芯棒が再結晶化して、その部位の強度が低下することによる電極折れが危惧される。
【0007】
そこで、本発明は、電極コイルのスプリングバックを防止することができ、しかも生産性が良くかつコイル終端の位置決め精度の高い高圧放電ランプ用電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面は、電極芯棒(30)及び電極芯棒に被覆されるコイル(35)からなる高圧放電ランプ用電極であって、電極芯棒が、給電側の細径部(31)及び先端側の太径部(32)からなり、太径部が、細径部側の大径部(32a)、大径部よりも外径が小さく大径部と段差(S)を形成する小径部(32b)、及び先端部(32c)を有し、コイルが段差と先端部の間に被覆された高圧放電ランプ用電極である。
【0009】
本発明の第2の側面は、電極芯棒(30)及び電極芯棒に被覆されるコイル(35)からなる高圧放電ランプ用電極であって、電極芯棒が、給電側の細径部(31)及び先端側の太径部(32)からなり、太径部が、細径部側から先端側に向けて細くなるテーパー部(32d)、及び先端部(32c)を有し、コイルがテーパー部に被覆された高圧放電ランプ用電極である。
【0010】
上記第1及び第2の側面において、小径部(32b)又はテーパー部(32d)を切削加工によって形成する構成とした。
また、太径部(32)の先端とコイル(35)の先端とが溶融されて先端部(32c)が形成される構成とした。
【0011】
本発明の第3の側面は、発光管(2)、及び発光管内に対向配置された一対の上記第1又は第2の側面の高圧放電ランプ用電極(3)を備えた高圧放電ランプ(1)である。
【0012】
本発明の第4の側面は、高圧放電ランプ用電極の製造方法であって、細径部及び太径部からなる電極芯棒の太径部先端側を切削加工する工程(S110、S210)、切削加工された部分にコイルを被覆する工程(S120、S220)、及び太径部の先端及びコイルの先端を溶融して先端部を形成する工程(S130、S230)からなる製造方法である。
【0013】
ここで、切削加工された部分が一定の外径となるようにしてもよいし、先端側に向けて細くなるテーパー形状となるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記の構成により、生産効率が高く量産に適した構成であり、かつ、確実に電極コイルのスプリングバックを防止できる。
また、溶融加工よりも高精度な位置決めが可能な切削加工によってコイル終端位置が決まるので、その終端位置に起因する個体間のばらつきをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に本発明の高圧放電ランプ1を示す。高圧放電ランプ1は、従来例の図9とは電極3の構造のみが異なり、発光管2、モリブデン箔4及びリード5やそれらの全体的な構成は図9と同様であるのでその説明を省略する。
【実施例1】
【0016】
図2は第1の実施例の電極3の構造を示す断面図である。電極3は電極心棒30及びコイル35からなり、電極芯棒30は給電側の細径部31及び先端側の太径部32からなり、太径部32は大径部32a、小径部32b及び先端部32cからなり、コイル35は小径部32bに被覆される。これにより、大径部32aと小径部32bの段差Sによって、コイル35の細径部31方向(図の右方向)への移動が規制される。
【0017】
図3に図2の電極の製造方法を示す。
工程S100において、図4(a)のような細径部31及び太径部32からなる電極芯棒が作製される。
工程S110において、図4(b)のように、太径部32が切削加工されて小径部32bが形成され、大径部32aとの段差Sが形成される。
【0018】
工程S120において、図4(c)のように、コイル35が小径部32bに被覆され、段差Sによってその終端位置が決まる。
ここで、工程S120において、コイル35の小径部32bへの被覆は、予め巻きあげられた空芯状のコイル35を小径部32bに挿入して段差Sで止まるようにしてもよいし、コイル用の線材を小径部32bに巻き付けるようにしてもよい。
なお、本明細書ではコイルの装着について、上記の「挿入」の場合と「巻付け」の場合を含めて「被覆」と表現している。
【0019】
工程S130において、小径部32bの先端とコイル35の先端が溶融され、図4(d)のようにドーム状の先端部32cが形成される。
上記の各工程の結果として、コイル35が段差Sと先端部32cによって挟みこまれた構成の電極が製造される。
なお、図4の各図は説明のための模擬的な図であり、各部位の寸法やコイルの巻数等は図示したものに限られない。
【0020】
上記のような構成により、コイル35の終端が段差Sによって固定され、スプリングバックが防止される。これにより、寿命に亘って放電の挙動を安定させることができる。
また、上記の製造方法においては、各工程はいずれも量産に適したものであり、しかも溶融工程が工程S130の1回のみで済むので、高い生産効率ないしは量産性を担保することができる。
また、コイル35の終端位置が、高精度な位置決めが可能な切削加工によって決まるので、その終端位置に起因する固体間のばらつきをなくすことができる。
【実施例2】
【0021】
図5は第2の実施例の電極3の構造を示す断面図である。電極3は電極芯棒30及びコイル35からなり、電極芯棒30は給電側の細径部31及び先端側の太径部32からなり、太径部32はテーパー部32d及び先端部32cからなり、コイル35はテーパー部32dの先端側に被覆される。テーパー部32dによって、コイル35の細径部31方向(図の右方向)への移動が規制される。
【0022】
図6に図5の電極の製造方法を示す。
工程S200において、図7(a)のような細径部31及び太径部32からなる電極芯棒が作製・提供される。
工程S210において、図7(b)のように、太径部32に切削加工が施されてテーパー部32dが形成される。
【0023】
工程S220において、図7(c)のように、コイル35がテーパー部32dに被覆される。
なお、工程S220において、コイル35のテーパー部32dへの被覆は、予めテーパー部32dに合わせた形状に巻きあげられた空芯状のコイル35をテーパー部32dに挿入するようにしてもよいし、コイル用の線材をテーパー部32dに巻き付けるようにしてもよい。
【0024】
工程S230において、テーパー部32dの先端とコイル35の先端が溶融され、図7(d)に示すようにドーム状の先端部32cが形成される。
なお、図7の各図は説明のための模擬的な図であり、各部位の寸法やコイルの巻数等は図示したものに限られない。
【0025】
上記のような構成により、コイル35のスプリングバックがテーパー部32dによって抑制される。これにより、寿命に亘って放電の挙動を安定させることができる。
また、上記の製造方法においては、各工程はいずれも量産に適したものであり、しかも溶融工程が工程S230の1回のみで済むので、高い生産効率ないしは量産性を担保することができる。
【0026】
<変形例>
なお、電極3の構造として、実施例1で示した段差を設ける構成と実施例2で示したテーパーを設ける構成とを適宜組み合わせて種々の変形例を構成できる。即ち、コイルの終端部の(細径部方向への)移動が太径部における段差又はテーパーによって規制されていれば本発明の目的は達成できる。
【0027】
例えば、図8Aの断面図に示すように、太径部32に大径部32a及び小径部32bを構成し、大径部32aをテーパー状にしてもよい。
また、図8Bの断面図に示すように、テーパー部32dを太径部32の一部に設けてもよい。
双方とも得られる効果は上記第1又は第2の実施例と同様である。
【0028】
また、図8Cの断面図に示すように、太径部に複数の大径部32a及び小径部32bを設けて各小径部にコイルを被覆してもよいし、図8Dの断面図に示すように、太径部に複数のテーパー部32dを設けて各テーパー部にコイルを被覆してもよい。これらの場合、コイルの被覆は巻付けにより行なう。これらの変形例では上記第1又は第2の実施例と同様の効果が得られるとともに、コイルを多層巻にする場合に、その巻き方に起因する層高さ方向のばらつきを抑制できる。
なお、変形例は図8A−Dに示すものに限られない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の高圧放電ランプを示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例の電極構造を示す断面図である。
【図3】第1の実施例の電極の製造方法を示す図である。
【図4】第1の実施例の電極の製造方法を説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施例の電極構造を示す断面図である。
【図6】第2の実施例の電極の製造方法を示す図である。
【図7】第2の実施例の電極の製造方法を説明する図である。
【図8A】本発明の変形例を示す断面図である。
【図8B】本発明の変形例を示す断面図である。
【図8C】本発明の変形例を示す断面図である。
【図8D】本発明の変形例を示す断面図である。
【図9】一般的な高圧放電ランプを示す図である。
【図10】従来の電極構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1.高圧放電ランプ
2.発光管
2a.発光部
2b.封止部
3.電極
4.モリブデン箔
5.リード
30.電極芯棒
31.細径部
32.太径部
32a.大径部
32b.小径部
32c.先端部
32d.テーパー部
35.コイル
S:段差
【技術分野】
【0001】
本発明は高圧放電ランプの電極構造に関する。より詳しくは、プロジェクタに用いる高圧放電ランプにおける電極コイルの変形を防止するための電極構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図9は一般的な超高圧水銀ランプ等の高圧放電ランプの構造を示す図である。高圧放電ランプ6は石英ガラスからなる発光管2、発光管2の発光部2aに1.5mm以下の間隔で対向配置された電極7、発光管2の封止部2bに配置されたモリブデン箔4、及びモリブデン箔4に接続された給電用のリード5を備え、発光部2aには0.15mg/mm3以上の水銀、及び10−5μmol/mm3〜10−2μmol/mm3の範囲の臭素が封入されている。
【0003】
図10は図9の高圧放電ランプにおける電極7の構造を示す断面図である。電極7は電極芯棒70とそれに被覆されるコイル75からなる。図10(a)においては、電極芯棒70の先端側にコイル75が被覆され、電極芯棒70とコイル75の先端が溶融されてドーム状の先端部が形成されている。また、図10(b)においては、電極芯棒70は細径部71及び太径部72からなり、太径部72の先端側にコイル75が被覆され、太径部72とコイル75の先端が溶融されてドーム状の先端部が形成されている。
一般に、電極コイルは電極の温度を調整する機能を持ち、これによって放電状態、放電特性等が決まる。
【0004】
ここで、ランプ点灯中の電極温度は2000度を超える高温になり、コイル75もその熱的な影響を受ける。図10のような構成において、コイル75は、製造当初において密に巻き付けられていたとしても、高温下でスプリングバックを起こし、モリブデン箔4の方向(図10の右側)に広がってしまう。このように電極温度を調整するためのコイル75が点灯時間とともに変形することにより電極の温度条件も変化してしまい、放電特性等が個体間でばらつくという問題があった。
【0005】
このようなスプリングバックの問題への対処として、特許文献1には、コイルと細径部(軸棒)とを溶融により一体化する構成が開示されている。具体的には、同引例図4に開示されるように、軸棒(50)に対して先細り状にコイルを巻き付け(54)、その先細り部分を溶融することにより先端部(20)を形成するとともに、同文献の図9に開示されるように、コイルの先端側(122)だけでなく終端側(124)も軸棒(126)に溶融する構成が開示されている。
【特許文献1】特開2007−273174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の構成によると、確かにスプリングバック防止の効果を期待できるものの、先細り状にコイルを巻き付けるのに高度な技術を要し、さらにコイルの先端の溶融及び終端の溶融の2回の溶融工程が必要となり、生産性が悪く量産に適さないという問題があった。
また、コイルの終端位置が溶融加工の精度に依存するので終端の位置決め精度が低いという問題もあった。例えば、コイル終端の溶融工程において、コイルが溶融熱で多少延びた状態で終端が固定されてしまうことが予想される。また、加えられた熱で芯棒が再結晶化して、その部位の強度が低下することによる電極折れが危惧される。
【0007】
そこで、本発明は、電極コイルのスプリングバックを防止することができ、しかも生産性が良くかつコイル終端の位置決め精度の高い高圧放電ランプ用電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面は、電極芯棒(30)及び電極芯棒に被覆されるコイル(35)からなる高圧放電ランプ用電極であって、電極芯棒が、給電側の細径部(31)及び先端側の太径部(32)からなり、太径部が、細径部側の大径部(32a)、大径部よりも外径が小さく大径部と段差(S)を形成する小径部(32b)、及び先端部(32c)を有し、コイルが段差と先端部の間に被覆された高圧放電ランプ用電極である。
【0009】
本発明の第2の側面は、電極芯棒(30)及び電極芯棒に被覆されるコイル(35)からなる高圧放電ランプ用電極であって、電極芯棒が、給電側の細径部(31)及び先端側の太径部(32)からなり、太径部が、細径部側から先端側に向けて細くなるテーパー部(32d)、及び先端部(32c)を有し、コイルがテーパー部に被覆された高圧放電ランプ用電極である。
【0010】
上記第1及び第2の側面において、小径部(32b)又はテーパー部(32d)を切削加工によって形成する構成とした。
また、太径部(32)の先端とコイル(35)の先端とが溶融されて先端部(32c)が形成される構成とした。
【0011】
本発明の第3の側面は、発光管(2)、及び発光管内に対向配置された一対の上記第1又は第2の側面の高圧放電ランプ用電極(3)を備えた高圧放電ランプ(1)である。
【0012】
本発明の第4の側面は、高圧放電ランプ用電極の製造方法であって、細径部及び太径部からなる電極芯棒の太径部先端側を切削加工する工程(S110、S210)、切削加工された部分にコイルを被覆する工程(S120、S220)、及び太径部の先端及びコイルの先端を溶融して先端部を形成する工程(S130、S230)からなる製造方法である。
【0013】
ここで、切削加工された部分が一定の外径となるようにしてもよいし、先端側に向けて細くなるテーパー形状となるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記の構成により、生産効率が高く量産に適した構成であり、かつ、確実に電極コイルのスプリングバックを防止できる。
また、溶融加工よりも高精度な位置決めが可能な切削加工によってコイル終端位置が決まるので、その終端位置に起因する個体間のばらつきをなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1に本発明の高圧放電ランプ1を示す。高圧放電ランプ1は、従来例の図9とは電極3の構造のみが異なり、発光管2、モリブデン箔4及びリード5やそれらの全体的な構成は図9と同様であるのでその説明を省略する。
【実施例1】
【0016】
図2は第1の実施例の電極3の構造を示す断面図である。電極3は電極心棒30及びコイル35からなり、電極芯棒30は給電側の細径部31及び先端側の太径部32からなり、太径部32は大径部32a、小径部32b及び先端部32cからなり、コイル35は小径部32bに被覆される。これにより、大径部32aと小径部32bの段差Sによって、コイル35の細径部31方向(図の右方向)への移動が規制される。
【0017】
図3に図2の電極の製造方法を示す。
工程S100において、図4(a)のような細径部31及び太径部32からなる電極芯棒が作製される。
工程S110において、図4(b)のように、太径部32が切削加工されて小径部32bが形成され、大径部32aとの段差Sが形成される。
【0018】
工程S120において、図4(c)のように、コイル35が小径部32bに被覆され、段差Sによってその終端位置が決まる。
ここで、工程S120において、コイル35の小径部32bへの被覆は、予め巻きあげられた空芯状のコイル35を小径部32bに挿入して段差Sで止まるようにしてもよいし、コイル用の線材を小径部32bに巻き付けるようにしてもよい。
なお、本明細書ではコイルの装着について、上記の「挿入」の場合と「巻付け」の場合を含めて「被覆」と表現している。
【0019】
工程S130において、小径部32bの先端とコイル35の先端が溶融され、図4(d)のようにドーム状の先端部32cが形成される。
上記の各工程の結果として、コイル35が段差Sと先端部32cによって挟みこまれた構成の電極が製造される。
なお、図4の各図は説明のための模擬的な図であり、各部位の寸法やコイルの巻数等は図示したものに限られない。
【0020】
上記のような構成により、コイル35の終端が段差Sによって固定され、スプリングバックが防止される。これにより、寿命に亘って放電の挙動を安定させることができる。
また、上記の製造方法においては、各工程はいずれも量産に適したものであり、しかも溶融工程が工程S130の1回のみで済むので、高い生産効率ないしは量産性を担保することができる。
また、コイル35の終端位置が、高精度な位置決めが可能な切削加工によって決まるので、その終端位置に起因する固体間のばらつきをなくすことができる。
【実施例2】
【0021】
図5は第2の実施例の電極3の構造を示す断面図である。電極3は電極芯棒30及びコイル35からなり、電極芯棒30は給電側の細径部31及び先端側の太径部32からなり、太径部32はテーパー部32d及び先端部32cからなり、コイル35はテーパー部32dの先端側に被覆される。テーパー部32dによって、コイル35の細径部31方向(図の右方向)への移動が規制される。
【0022】
図6に図5の電極の製造方法を示す。
工程S200において、図7(a)のような細径部31及び太径部32からなる電極芯棒が作製・提供される。
工程S210において、図7(b)のように、太径部32に切削加工が施されてテーパー部32dが形成される。
【0023】
工程S220において、図7(c)のように、コイル35がテーパー部32dに被覆される。
なお、工程S220において、コイル35のテーパー部32dへの被覆は、予めテーパー部32dに合わせた形状に巻きあげられた空芯状のコイル35をテーパー部32dに挿入するようにしてもよいし、コイル用の線材をテーパー部32dに巻き付けるようにしてもよい。
【0024】
工程S230において、テーパー部32dの先端とコイル35の先端が溶融され、図7(d)に示すようにドーム状の先端部32cが形成される。
なお、図7の各図は説明のための模擬的な図であり、各部位の寸法やコイルの巻数等は図示したものに限られない。
【0025】
上記のような構成により、コイル35のスプリングバックがテーパー部32dによって抑制される。これにより、寿命に亘って放電の挙動を安定させることができる。
また、上記の製造方法においては、各工程はいずれも量産に適したものであり、しかも溶融工程が工程S230の1回のみで済むので、高い生産効率ないしは量産性を担保することができる。
【0026】
<変形例>
なお、電極3の構造として、実施例1で示した段差を設ける構成と実施例2で示したテーパーを設ける構成とを適宜組み合わせて種々の変形例を構成できる。即ち、コイルの終端部の(細径部方向への)移動が太径部における段差又はテーパーによって規制されていれば本発明の目的は達成できる。
【0027】
例えば、図8Aの断面図に示すように、太径部32に大径部32a及び小径部32bを構成し、大径部32aをテーパー状にしてもよい。
また、図8Bの断面図に示すように、テーパー部32dを太径部32の一部に設けてもよい。
双方とも得られる効果は上記第1又は第2の実施例と同様である。
【0028】
また、図8Cの断面図に示すように、太径部に複数の大径部32a及び小径部32bを設けて各小径部にコイルを被覆してもよいし、図8Dの断面図に示すように、太径部に複数のテーパー部32dを設けて各テーパー部にコイルを被覆してもよい。これらの場合、コイルの被覆は巻付けにより行なう。これらの変形例では上記第1又は第2の実施例と同様の効果が得られるとともに、コイルを多層巻にする場合に、その巻き方に起因する層高さ方向のばらつきを抑制できる。
なお、変形例は図8A−Dに示すものに限られない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の高圧放電ランプを示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例の電極構造を示す断面図である。
【図3】第1の実施例の電極の製造方法を示す図である。
【図4】第1の実施例の電極の製造方法を説明する図である。
【図5】本発明の第2の実施例の電極構造を示す断面図である。
【図6】第2の実施例の電極の製造方法を示す図である。
【図7】第2の実施例の電極の製造方法を説明する図である。
【図8A】本発明の変形例を示す断面図である。
【図8B】本発明の変形例を示す断面図である。
【図8C】本発明の変形例を示す断面図である。
【図8D】本発明の変形例を示す断面図である。
【図9】一般的な高圧放電ランプを示す図である。
【図10】従来の電極構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1.高圧放電ランプ
2.発光管
2a.発光部
2b.封止部
3.電極
4.モリブデン箔
5.リード
30.電極芯棒
31.細径部
32.太径部
32a.大径部
32b.小径部
32c.先端部
32d.テーパー部
35.コイル
S:段差
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極芯棒及び該電極芯棒に被覆されるコイルからなる高圧放電ランプ用電極であって、
前記電極芯棒が、給電側の細径部及び先端側の太径部からなり、
前記太径部が、前記細径部側の大径部、該大径部よりも外径が小さく該大径部と段差を形成する小径部、及び先端部を有し、前記コイルが前記段差と前記先端部の間に被覆された高圧放電ランプ用電極。
【請求項2】
電極芯棒及び該電極芯棒に装着されるコイルからなる高圧放電ランプ用電極であって、
前記電極芯棒が、給電側の細径部及び先端側の太径部からなり、
前記太径部が、前記細径部側から先端側に向けて細くなるテーパー部、及び先端部を有し、前記コイルが前記テーパー部に被覆された高圧放電ランプ用電極。
【請求項3】
請求項1又は2記載の高圧放電ランプ用電極において、前記小径部又は前記テーパー部が切削加工によって形成された高圧放電ランプ用電極。
【請求項4】
請求項1又は2記載の高圧放電ランプ用電極において、前記太径部の先端と前記コイルの先端とが溶融されて前記先端部が形成された高圧放電ランプ用電極。
【請求項5】
発光管、及び該発光管内に対向配置された一対の請求項1から4いずれか一項に記載の高圧放電ランプ用電極を備えた高圧放電ランプ。
【請求項6】
高圧放電ランプ用電極の製造方法であって、
細径部及び太径部からなる電極芯棒の該太径部先端側を切削加工する工程、
前記切削加工された部分にコイルを被覆する工程、及び
前記太径部の先端及び前記コイルの先端を溶融して先端部を形成する工程
からなる製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の製造方法において、前記切削加工された部分が一定の外径を有している製造方法。
【請求項8】
請求項6記載の製造方法において、前記切削加工された部分が先端側に向けて細くなるテーパー形状をなしている製造方法。
【請求項1】
電極芯棒及び該電極芯棒に被覆されるコイルからなる高圧放電ランプ用電極であって、
前記電極芯棒が、給電側の細径部及び先端側の太径部からなり、
前記太径部が、前記細径部側の大径部、該大径部よりも外径が小さく該大径部と段差を形成する小径部、及び先端部を有し、前記コイルが前記段差と前記先端部の間に被覆された高圧放電ランプ用電極。
【請求項2】
電極芯棒及び該電極芯棒に装着されるコイルからなる高圧放電ランプ用電極であって、
前記電極芯棒が、給電側の細径部及び先端側の太径部からなり、
前記太径部が、前記細径部側から先端側に向けて細くなるテーパー部、及び先端部を有し、前記コイルが前記テーパー部に被覆された高圧放電ランプ用電極。
【請求項3】
請求項1又は2記載の高圧放電ランプ用電極において、前記小径部又は前記テーパー部が切削加工によって形成された高圧放電ランプ用電極。
【請求項4】
請求項1又は2記載の高圧放電ランプ用電極において、前記太径部の先端と前記コイルの先端とが溶融されて前記先端部が形成された高圧放電ランプ用電極。
【請求項5】
発光管、及び該発光管内に対向配置された一対の請求項1から4いずれか一項に記載の高圧放電ランプ用電極を備えた高圧放電ランプ。
【請求項6】
高圧放電ランプ用電極の製造方法であって、
細径部及び太径部からなる電極芯棒の該太径部先端側を切削加工する工程、
前記切削加工された部分にコイルを被覆する工程、及び
前記太径部の先端及び前記コイルの先端を溶融して先端部を形成する工程
からなる製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の製造方法において、前記切削加工された部分が一定の外径を有している製造方法。
【請求項8】
請求項6記載の製造方法において、前記切削加工された部分が先端側に向けて細くなるテーパー形状をなしている製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−33733(P2010−33733A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191786(P2008−191786)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]