説明

高圧放電ランプ

【課題】
水平点灯時に生じる放電アークの湾曲によって発光効率が低下するのを抑制した高圧放電ランプを提供する。
【解決手段】
高圧放電ランプは、内部に放電空間1dが形成されるとともに放電空間の管軸方向の中間部において放電空間の内径を実質的に狭める凸部1bが配設された包囲部1aを備えている透光性セラミックス放電容器1と、透光性セラミックス放電容器の内部に気密に導入された給電入導体3と、透光性セラミックス放電容器の管軸方向の両端内部に先端が望むように配設され給電導体に接続した一対の電極2、2と、透光性セラミックス放電容器内に封入された放電媒体とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性セラミックス放電容器を備えた高圧放電ランプの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アルミナセラミックスなどの透光性セラミックスを用いた透光性セラミックス放電容器を備えた高効率で高演色のセラミックメタルハライドランプが広く普及しつつあるが、省エネルギーの観点からさらなる効率の改善が要求されている。これらのセラミックメタルハライドランプは、現在のところ、特にランプ電力35W〜150W程度の比較的低電力の製品が店舗照明などの屋内照明に多用されているが、高効率の特長を活かして、今後道路、トンネルなどの屋外照明にも普及すると考えられる。
【0003】
しかし、屋外照明ではランプを水平方向で点灯する場合も多く、この場合、ランプの効率は、垂直方向で点灯させた場合に比べて、大幅に低下するという問題がある。この傾向は、ランプ電力が大きくなり、ランプの電極間距離が増加した場合に起こりやすい。
【0004】
すなわち、ランプを水平点灯させた場合、発光管内に生じる対流による効果でアークが上方へ湾曲するため、発光管の温度分布が不均一となり、特に発光管中央下部の温度が低下して、ランプ効率が低下し、また発光管黒化を助長するなどして寿命中の光束維持率が低下する。
【0005】
この問題に対して、石英製発光管自体をアークの湾曲する方向に湾曲させる技術が知られている(非特許文献1参照。)。
【0006】
また、発光管を比較的細長くし、電極間距離と発光管内径を最適化することで、水平点灯時の効率低下を改善する技術も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
なお、閃光放電ランプの早期破損あるいは光束維持率改善のために、セラミック発光管内面に深さは1〜30μmが好適とされている熱膨張緩衝用凹部を設ける技術が知られている(特許文献2参照。)。また、セラミック発光管の本管部と細管部の境界付近に凸部を設ける技術が開示されている(特許文献2参照。)。
【0008】
【非特許文献1】J. of IES, F. Koury et al. “A newgeneration of metal halide lamps”, pp.106-110, 1975
【特許文献1】特開2005−085769号公報
【特許文献2】特開2003−109533号公報
【特許文献3】特開2003−317660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、非特許文献1に開示されている技術は、発光管形状が非対称となるため、ランプの使用上において点灯方向規制が必要となる問題、あるいはランプ製造工程が複雑になるなどの問題がある。
【0010】
また、特許文献1に開示されている技術では、発光管を細長く構成すると、垂直点灯時に色分離が顕著となるだけでなく、効率が大きく低下するという問題がある。さらに、発光管を細長く構成した場合、相対的に電極間距離も増加するため、ランプの始動電圧が上昇するなど始動性が低下する問題がある。
【0011】
なお、特許文献2に開示されている技術は、凸部が放電空間の内径を実質的に狭めるものではない。また、特許文献2に開示されている技術は、当該凸部は電極先端より(発光管端部方向)後方に位置しており、アークとの干渉するものでない。
【0012】
本発明は、水平点灯時に生じる放電アークの湾曲によって発光効率が低下するのを抑制した高圧放電ランプを提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、水平点灯時だけでなく、あらゆる点灯方向でも高効率、高演色を実現する高圧放電ランプを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の高圧放電ランプは、内部に放電空間が形成されるとともに放電空間の管軸方向の中間部において放電空間の内径を実質的に狭める凸部が配設された包囲部を備えている透光性セラミックス放電容器と;透光性セラミックス放電容器の内部に気密に導入された給電入導体と;透光性セラミックス放電容器の管軸方向の両端内部に先端が望むように配設され給電導体に接続した一対の電極と;透光性セラミックス放電容器内に封入された放電媒体と;を具備していることを特徴としている。
【0015】
本発明は、以下の態様を許容する。
【0016】
<透光性セラミックス放電容器について> 透光性セラミックス放電容器は、単結晶の金属酸化物、例えばサファイヤと、多結晶の金属酸化物、例えば半透明の気密性アルミニウム酸化物、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)、イットリウム酸化物(YOX)と、多結晶非酸化物、例えばアルミニウム窒化物(AlN)のような光透過性および耐熱性を備えた材料からなる放電容器である。なお、透光性とは、放電によって発生した可視光を透過して外部に導出できる程度に光透過性であることをいい、透明であるのが好ましいが、要すれば光拡散性であってもよい。そして、少なくとも包囲部が透光性を備えていればよい。
【0017】
また、透光性セラミックス放電容器は、少なくとも放電空間を包囲する包囲部を備えている。また、好ましくは包囲部に加えて包囲部の端部に連通して配設された小径筒部を備えている。そして、包囲部と小径筒部とは、一体的な成形により一体化するのが好適であるが、材料断面の熱的または光学的な不均質構造を特に問題としないのであれば、複数のパーツを接合して透光性セラミックス放電容器を形成する焼き嵌め構造や溶接構造などであってもよい。
【0018】
包囲部は、その内部に放電を包囲して放電空間を画成する部分であり、またその内部に放電空間の内径を、隣接する部位における内径より実質的に狭める凸部が配設されている。この凸部は、好適には環状である。しかし、放電空間の内径を実質的に狭める作用があれば環の一部が切除されたような形状であってもよい。
【0019】
そうして、本発明においては、凸部が配設されていることにより、当該凸部により実質的な内径が隣接する部位の内径より小さくなる。したがって、当該凸部の先端により最小内径が決まる。この最小内径をD1とし、包囲部の最大内径をD2としたとき、比D1/D2が数式0.2≦D1/D2≦0.8を満足することが好ましい。ただし、この場合、後述する一対の電極間距離をLとしたとき、比D2/Lが数式0.3≦D2/L≦1.5を同時に満足する必要がある。
【0020】
なお、上記各数式を満足する範囲内であれば、水平点灯はもとより垂直点灯においても本発明の目的を充分、かつ頗る効果的に満足する。しかし、比D1/D2が0.2未満であると、透光性セラミックス放電容器を製造する際、凸部近傍での結晶粒径の制御、結晶欠陥あるいは発泡の抑制が困難であり、機械的強度および化学的強度が不足しやすい。また、これらの問題が解決され、透光性セラミックス放電容器が製造できたとしても、比D1/D2が0.2未満になると、凸部により放電アークが細く規制されすぎて、ランプ効率が低下するだけでなく、凸部の温度が上昇しすぎて、セラミックスが昇華し、透光性セラミックス放電容器の早期破損、白濁や黒化による光束維持率時低下の問題が発生する。
【0021】
一方、D1/D2が0.8を超えると、放電アークの湾曲に対する規制効果が薄れ、水平点灯時の効率低下が顕著になる。
【0022】
また、比D2/Lが0.3未満、または1.5を超えると、ランプ効率および光束維持率時が低下する。
【0023】
凸部の配設位置は、包囲部の管軸方向の中間部、換言すれば一対の電極間に形成される放電アークの湾曲を凸部により規制できるような電極間距離の中間位置である。また、凸部の数は、1個または複数個であることを許容する。
【0024】
さらに、凸部の管軸方向に沿った幅W(mm)は、好ましくは数式1.0≦W≦10を満足する範囲である。幅Wが1.0mm未満では、凸部の機械的強度が極端に低下し、ランプ点灯中に当該凸部が破損し、早期に効果が消滅しやすい。また、透光性セラミックス放電容器の製造が困難となり、製造歩留まりが大幅に低下し、コスト増加、品質ばらつき増大の原因になりやすい。
【0025】
一方、幅Wが10mmを超えると、凸部自体の熱容量が大きくなりやすく、透光性セラミックス放電容器の温度低下による効率低下、黒化による光束維持率時低下などの問題が生じやすくなる。また、凸部自体の熱容量が大きくなると、高圧放電ランプを消灯しても、凸部の放熱により長い時間を要し、再点灯時間が増大する問題もある。
【0026】
さらにまた、凸部の管軸に直交する方向から見た形状は、その輪郭がU字状に限らない。発明の効果は、凸部の形状に依存するものではないので、例えば三角形状や半円形状などであってもよい。また、凸部を管軸方向から見たときに、環状になっていれば、放電アークの湾曲規制がより効果的になるばかりでなく、発光管製造がより単純化され、コスト低減、品質の安定化のメリットがある。しかし、所望により環が円周方向に部分的に切断されたり、凸部の先端の輪郭が凹凸をなしていたりするような構造であってもよい。
【0027】
そうして、本発明においては、透光性セラミックス放電容器における包囲部の管軸方向の中間部内面に凸部が形成されていることにより、特にランプを水平点灯した際に発生する放電アークの上方湾曲を防止し、発光効率を向上し、また発光管温度分布を均一化して、寿命中の光束維持率を改善する効果を有する。
【0028】
次に、透光性セラミックス放電容器が既知の小径筒部を備える場合、小径筒部は、その内部に後述する電極および電極に接続する給電導体が挿通し、給電導体の周囲にキャピラリーと称するわずかな隙間を形成して、その内部に最冷部が形成されるとともに、透光性セラミックス放電容器を封止するのに寄与する。なお、小径筒部の断面は、好ましくはほぼ円形である。
【0029】
さらに、透光性セラミックス放電容器の点灯中の外表面における温度が850〜1200℃になるように設計されているのが好ましい。
【0030】
<給電導体について> 給電導体は、透光性セラミックス放電容器の内部に気密に導入され、後述する電極に接続して給電する。そして、電極を所定の位置に支持する。給電入導体を透光性セラミックス放電容器の内部に気密に導入するために、透光性セラミックス放電容器の開口部と一緒にシールすることができる。
【0031】
また、透光性セラミックス放電容器が小径筒部を備えている場合、給電導体は、その一部と小径筒部との間にキャピラリーと称するわずかな隙間を形成することができる。この場合、給電導体のシール部分と、小径筒部との間にわずかな隙間を形成する部分とを形成するために、給電導体を第1および第2の給電導体により次のように構成することができる。
【0032】
第1の給電部材は、耐ハロゲン性導電体により構成され、その先端に接続する電極を支持し、かつこれに給電する手段として機能する。上記耐ハロゲン性導電体としては、点灯中高温になる電極部材に隣接するために、併せて耐火性を有していることが好ましく、例えばタングステン(W)またはモリブデン(Mo)などの高融点金属またはサーメットなどを用いるのがよい。なお、タングステンを用いる場合、電極と第1の給電部材とは1本のタングステン棒材によって一体に連続して構成することが許容される。したがって、この場合、電極部材と第1の給電部材との間には見かけ上境界が存在しない。しかし、所望により電極部材と第1の給電部材とを別体により形成し、突合せ溶接などの手段により接合することもできる。
【0033】
また、第1の給電部材は、その少なくとも軸方向の一部の領域において、透光性セラミックス放電容器の当該領域に対向する小径筒部の内面との間にいわゆるキャピラリーと称されるわずかな隙間を形成する。
【0034】
さらに、第1の給電部材は、軸部と、この軸部のキャピラリーを形成する部分の周囲に耐火性金属の細線を適当なピッチで巻回して形成したコイル部とを備えていることを許容する。この構成により、キャピラリーの大きさを所定値に規定して、キャピラリーの内部に進入する液相状態の放電媒体の進入量を制限することができる。また、所望によりコイル部に代えて耐火性金属やセラミックスなどからなるスリーブを装着することもできる。
【0035】
第2の給電導体は、シール材と協働して透光性セラミックス放電容器をシールする。また、第2の給電導体を複数の部材の直列接合体により構成することができる。この場合、第1の給電部材に接合する部分をサーメットにより形成し、シール材で透光性セラミックス放電容器とともにシールされる部分を透光性セラミックス放電容器およびシール材の熱膨張率に接近した熱膨張率を有する金属で形成するのがよい。
【0036】
なお、サーメットは、セラミックスと導電性耐火金属の混合焼結体であり、導電性を有し、かつ第1の給電部材の耐火性金属およびセラミックスのそれぞれの熱膨張率の中間に位置する熱膨張率を有している。セラミックスとしては、透光性セラミックス放電容器を構成しているセラミックスと同質または近時の組成であるのがよい。例えば、透光性セラミックス放電容器が透光性アルミナセラミックスからなる場合には、アルミナセラミックスを用いるのが好ましい。この場合、導電性耐火金属としては、モリブデンを用いるのが好ましい。
【0037】
また、第2の給電導体のシール部分として、例えば透光性セラミックス放電容器を構成するセラミックスの種類に応じてニオブ(Nb)、タンタル(Ta)および白金(Pt)などのグループから選択して用いることができる。なお、透光性セラミックス放電容器が透光性アルミナセラミックスからなる場合にはニオブが好適である。
【0038】
さらに、第2の給電部材は、その直径が好ましくは第1の給電部材のそれとほぼ同じになっている。
【0039】
なお、上述のシールに用いるシール材は、高融点フリットガラスなどからなり、透光性セラミックス放電容器における例えば小径筒部の開放端側の内面と、この領域に対向する第2の給電部材の部分との間に進入して透光性セラミックス放電容器を気密に封止する。この封止を行うには、一般的な方法として採用されているように、小径筒部の端部において、給電部材の周囲にシール材のペレットを施与して、加熱溶融させることができる。
【0040】
そうして、高温で溶融したシール材が小径筒部の内面と第2の給電部材との間に形成されるわずかな隙間に進入して固化するので、シールが形成される。なお、シール材は、第2の給電部材のシールに機能する部位、例えばサーメット部分やニオブ部分を被覆するので、シールに機能する部位がニオブのように耐ハロゲンに劣る物質であっても問題ない。
【0041】
<一対の電極について> 一対の電極は、その先端が透光性セラミックス放電容器の包囲部に望むように給電導体に接続して封装される。
【0042】
また、電極は、タングステン(W)、ドープドタングステン、モリブデン(Mo)、サーメットなどの導電性にして、かつ耐火性の物質を単体で、または適宜組み合わせて用いて形成することができる。さらに、電極は、好ましくは細長い電極軸部および電極軸部の先端部に配設される電極主部から構成することができる。この場合、電極主部は、電極軸の先端に配設されて主として陰極およびまたは陽極として作用する部分であり、電極の先端部を構成する。また、電極主部は、その表面積を大きくして放熱を良好にするために、必要に応じてタングステンのコイルを巻装することができる。
【0043】
さらに、電極は、上述のように、その先端部が、包囲部内を臨む位置にあるが、包囲部内を臨むとは、包囲部内に位置している態様と、包囲部内に連通している小径筒部内に位置している態様とを含む概念である。
【0044】
<放電媒体について> 本発明において、放電媒体の構成は特段限定されない。メタルハライドランプを得る場合には、金属ハロゲン化物および希ガスを少なくとも含んで構成されている。また、ランプ電圧形成用の媒体として水銀を含めることができる。ランプ電圧形成用の媒体として水銀を用いる場合、金属ハロゲン化物には主として発光金属のハロゲン化物が用いられる。
【0045】
また、ランプ電圧形成用の媒体として水銀を用いないで、いわゆる水銀フリーにする場合には、金属ハロゲン化物に発光金属のハロゲン化物に加えて、蒸気圧が高くて可視光領域の発光が少ない金属、例えば亜鉛(Zn)やアルミニウム(Al)などのハロゲン化物を水銀に代えて封入することができる。
【0046】
発光金属のハロゲン化物の好ましい一態様は、金属ハロゲン化物は少なくともツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)のハロゲン化物の1種あるいは複数種を含み、かつこれらのハロゲン化金属の合計重量比がハロゲン化金属の総重量に対して35wt%以上である。上記のように希土類金属ハロゲン化物を規定量封入することで、ランプ効率が飛躍的に向上する効果を有するため、上述の凸部の効果、すなわち水平点灯時の効率改善効果とあいまって、点灯方向によらない高効率なランプが実現できる。
【0047】
また、放電媒体にナトリウム(Na)およびタリウム(Tl)のハロゲン化物の少なくとも一種ならびに希土類金属のハロゲン化物を含むことができる。この態様におけるさらに好ましい形態としては、ナトリウム(Na)、タリウム(Tl)およびツリウム(Tm)のハロゲン化物を発光金属ハロゲン化物の主成分として含むことである。この場合、Na、TlおよびTmのハロゲン化物の封入比率については比較的自由に設定することができる。
【0048】
また、金属ハロゲン化物としてカルシウム(Ca)ハロゲン化物を上記発光金属またはその他の発光金属のハロゲン化物と一緒に封入することができる。この場合の封入比率は、1〜40質量%とする。カルシウム(Ca)ハロゲン化物は、これを添加することにより、赤および青の色度の調整に効果的に作用する。なお、Caに加えるか、代えてインジウム(In)、リチウム(Li)およびルビジウム(Rb)のいずれか一種または複数種のハロゲン化物を適量添加して発光の色度を調整することも許容される。
【0049】
始動ガスおよび緩衝ガスとして希ガスを封入する場合、特定の希ガスに限定されない。例えば、ネオンとアルゴンの混合ガスを封入することができる。一般には、8.0〜80kPa程度を封入することが好ましい。8.0kPa未満では、パッシェン曲線にもあるように放電開始が困難となる。80kPa超では、始動電圧が高くなり、口金の耐圧を超えてしまう。
【0050】
<本発明におけるその他の構成について〕 本発明において、以下に述べる構成は必須要件ではないが、所望により適宜選択して採用することができる。
【0051】
1.(外管について) 外管は、その内部に透光性セラミックス放電容器、一対の電極および放電媒体を含む発光管を所定の位置に収納する手段である。外管は、発光管を機械的に保護し、発光管の作動温度を所望の範囲に維持する。一般的には、発光管の管軸が外管の管軸に一致するように配置する。外管の内部は、真空ないし低圧の大気または不活性ガス、例えば希ガスや窒素を封入することができる。なお、外管は、適当な透光性、気密性、耐熱性および加工性を備えている材料、例えば硬質ガラスを用いて構成することができる。また、外管は、既知の各種形状を適宜選択的に採用することができる。
【0052】
また、外管は、片封止および両端封止のいずれの構造をも所望に応じて選択的に採用することができる。なお、「片封止」とは、外管の一端にのみピンチシール部が形成されていて、他端が封止部を形成しないで閉塞されている構造をいう。これに対して、「両端封止」とは、外管の両端にピンチシール部が形成されている構造をいう。なお、外管が片封止構造であると、汎用ランプソケットを用いる一般照明用として都合がよい。
【0053】
2.(シュラウドガラスについて) シュラウドガラスは、外管内において、発光管を離間して包囲して発光管の万一の破裂に対して破裂片の飛散から保護する。
【0054】
3.(UVエンハンサまたは始動器について) 高圧放電ランプの始動性を良好にするために、UVエンハンサまたは始動器を外管内に配設することができる。UVエンハンサは、小形で紫外線透過性の気密容器内に一方の電極を封装するとともに紫外線放射性の希ガスなどを封入し、他方の電極を気密容器の外面に密接して配設したものである。そして、金属蒸気放電ランプの始動に先立って放電開始し、発生した紫外光を発光管の電極近傍に照射する。これにより発光管内の放電媒体が励起されて始動しやすくなる。
【0055】
始動器は、グロースタータ、バイメタルスイッチまたは非線形コンデンサなどのスイッチング手段を備えて構成されていて、外管内に配設されて、電源投入時に急速なスイッチング動作を行い、発生した高電圧パルスを発光管の電極間に印加して、金属蒸気放電ランプの始動を容易にする。例えば水銀灯安定器を用いて始動し、かつ安定に点灯するように構成する場合に、始動器を内蔵することができる。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、水平点灯時だけでなく、あらゆる点灯方向でも高効率、高演色を実現する高圧放電ランプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
以下、図面を参照して本発明の金属蒸気放電ランプを実施するための形態を説明する。
【0058】
(第1の形態)
図1は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第1の形態における発光管を示す断面図である。本形態の高圧放電ランプは、定格ランプ電力150W用として好適な構造であり、発光管ITは、透光性セラミックス放電容器1、電極2、給電導体3、シール部4および透光性セラミックス放電容器1の内部に封入された放電媒体を備えている。
【0059】
透光性セラミックス放電容器1は、透光性アルミナセラミックスからなり、包囲部1a、凸部1b、一対の小径筒部1c、1cを備えている。そして、包囲部1a、凸部1bおよび一対の小径筒部1c、1cは、鋳込み成形により一体化されている。
【0060】
包囲部1aは、2つの球体が、その一部が互いに重なるように軸方向に離間して、両端部の半球状の部分を形成し、半球状の部分の間を直線で結んでなるほぼ俵形の形状をなしていて、その内部に放電空間1dが形成されている。
【0061】
凸部1bは、包囲部の内面から放電空間1d内に突出して形成されている。また、凸部1bは、放電空間の管軸方向の中間部、図示においては中央部において形成され、放電空間の内径を実質的に狭めるように環状をなしたものが1個配設されている。
【0062】
小径筒部1cは、パイプ状をなし、先端が対応する包囲部1aの半球状部分の中央部に接続している。
【0063】
電極2は、その一対が透光性セラミックス放電容器1内に封装されており、それぞれタングステン棒2aおよび先端部近傍に巻装されたコイル部2bを備えている。コイル部2bは、タングステン棒の周囲に直径0.1mmのタングステン細線を5ターン巻き付けて形成されている。そして、電極2の少なくとも先端が放電空間1dに臨んでいる。
【0064】
給電導体3は、その一対が透光性セラミックス放電容器1内に気密に導入されている。そして、サーメット棒状体SMおよびニオブ棒状体Nbの直列接続体からなる。サーメット棒状体SMは、その先端に電極2の軸部2aの基端部が溶接などにより一体に接続されている。また、サーメット棒状体SMの基端は、ニオブ棒状体Nbの先端に溶接などにより一体に接続されている。ニオブ棒状体Nbの基端は、小径筒部の開口端から外部へ突出している。
【0065】
そうして、サーメット棒状体SMと透光性セラミックス放電容器1の小径筒部1cの内面との間にキャピラリーと称されるわずかな隙間が形成されている。
【0066】
シール部4は、透光性セラミックス放電容器1の一対の小径筒部1cの外部開放端部近傍において、小径筒部1cと給電導体3におけるニオブ棒状体Nbとの間をシールしている。そして、その先端部はさらにサーメット体SMの基端部をも包囲している。また、シール部4は、いずれもDy−SiO−Alからなるセラミックス封止用コンパウンドを加熱して溶融し、固化することにより形成されている。
【0067】
そうして、一対のシール部4、4は、いわゆる給電導体挿入封止構造を提供する。以上の封止により、一対の電極2、2を透光性セラミックス放電容器1の所定の位置に固定している。
【0068】
なお、シール部4を形成するには、透光性セラミックス放電容器1を縦位置にセットし、さらにセラミックス封止用コンパウンドのリング状フリットガラス(図示しない。)を、そのとき上側に位置して封止しようとする例えば小径筒部1cの端面の上に載置して、リング状ペレットを加熱して溶融させて給電導体3および給電導体3のニオブ棒状体Nbの全体を被覆する。次に、透光性セラミックス放電容器1を180°反転して、他方の小径筒部1c側についても上記と同様にシール部4を形成する。
【0069】
放電媒体は、始動ガスおよびバッファガス、下記のハロゲン化金属、ならびにバッファ蒸気としての水銀からなり、透光性セラミックス放電容器1内に封入されている。なお、金属ハロゲン化物および水銀は、蒸発する分より過剰に封入されているので、その一部が安定点灯時に小径筒部2c、2c内に形成されるわずかな隙間内のコイル部Mo2、Mo2に形成された隙間内に液相状態で滞留している。そして、点灯中下側となる例えば小径筒部1c内に液相状態で滞留している放電媒体の表層部付近に最冷部が形成される。
【0070】
ハロゲン化金属は、Na、Ti、TmおよびInのヨウ化物の比率を用いた。
を含んでいる。残余のハロゲン化物は、例えばナトリウム(Na)、タリウム(Tl)および希土類金属などの発光金属から選択された金属のハロゲン化物により構成することができる。
【実施例1】
【0071】
図1に示す定格ランプ電力150Wのメタルハライドランプである。
透光性セラミックス放電容器:包囲部の最大内径D2が13mm、肉厚0.8mm、
凸部が突出高さ4mm、管軸方向の幅2mm、
凸部での放電空間の最少内径D1が5.4mm、
比D1/D2=0.415、小径筒部の内径約1mm
一対の電極 :軸部が直径0.6mmのW棒、
コイル部が直径0.1mmのW細線5ターン、電極間距離15mm
放電媒体 :Ar約6.7kPa+NaI:TlI:TmI:InI=30:15:50:5(wt%)5mg+Hg
外管 :内部が約1.3Paで、上記の構成を有する発光管を収納する

[比較例]
透光性セラミックス放電容器が凸部を備えていない以外は実施例1と同じ仕様である。

図2は、実施例1のランプ特性を比較例のそれと対比して示す表である。図に示すデータは、それぞれ同一仕様のランプ5本を電子安定器(点灯周波数20Hzの矩形波点灯)を使用して水平点灯および垂直点灯させた場合の点灯100時間および12000時間におけるデータの平均値である。
【0072】
図に示すように、比較例は、特に水平点灯時のランプ効率低下し、光束維持率が大幅に低下する。これに対して、実施例1は、これらの問題が大幅に改善されており、点灯方向を変化させた場合の初特性および光束維持率に優れることが分かる。この効果は、本発明が包囲部の内面に凸部を配設していることによるものであるのが明らかであり、凸部により水平点灯時に発生する放電アークの湾曲が抑制された結果によるものと推定される。
【0073】
図3は、本発明において、透光性セラミックス放電容器におけるD2を固定し、内径D1を変化させて高圧放電ランプを水平点灯したときの発光効率および光束維持率の関係を示す表である。なお、高圧放電ランプは図1に示す第1の形態であり、さらに電極間距離Lを15mmに固定しており、発光効率は点灯100時間後のデータ、光束維持率は点灯12000時間後のデータである。
【0074】
図から理解できるように、比D1/D2が0.2〜0.8の範囲内では高い発光効率および良好な光束維持率が得られることが分かる。しかし、0.2未満になると、凸部1bによって放電アークが細く規制されすぎて、発光効率が低下する。また、加えて凸部1bの温度が上昇しすぎて透光性セラミックス放電容器1が昇華し、発光管の早期破損、白濁、黒化による光束維持率が低下する。
【0075】
一方、比D1/D2が0.8を超えると、凸部1bによる放電アークの湾曲に対する規制の効果が薄れ、水平点灯時の発光効率低下が顕著になる。
【0076】
図4は、本発明において、透光性セラミックス放電容器におけるD1およびD2を固定し、電極間距離Lを変化させて高圧放電ランプを水平点灯したときの発光効率および光束維持率の関係を示す表である。なお、高圧放電ランプは図1に示す第1の形態であり、図5と同様に発光効率は点灯100時間後のデータ、光束維持率は点灯12000時間後のデータである。また、電極間距離Lを変化させたことで発光管の表面積が変化するので、その影響を避けるために管壁負荷を一定とした。
【0077】
図から理解できるように、比D2/Lが0.3〜1.5の範囲内において、本発明の効果が顕著になる。しかし、比D2/Lが0.3未満および1.5超の範囲では、発光効率および光束維持率が低下することが分かる。
【実施例2】
【0078】
放電媒体 :Ar約6.7kPa+NaI:TlI:TmI:InI=30:10:30:15(wt%)5mg+Hg
その他は実施例1と同じである。

図5は、実施例2の水平点灯および垂直点灯での点灯100時間および12000時間におけるランプ特性を示す表である。
【0079】
図から理解できるように、本発明においては、放電媒体の構成を、金属ハロゲン化物が少なくともツリウム(Tm)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、サマリウム(Sm)のハロゲン化物の1種あるいは複数種を含み、かつこれらのハロゲン化金属の合計重量比がハロゲン化金属の総重量に対して35wt%以上とすることで、点灯姿勢の如何にかかわらず、優れたランプ特性を得られることが分かる。
【0080】
以下、本発明の高圧放電ランプを実施するための他の形態について図を参照して説明する。なお、各図において、図1と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0081】
図6は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第2の形態を示す断面図である。
【0082】
第2の形態は、主として凸部1bの管軸方向の幅が相対的に増加している。このように凸部1bの幅が増加すれば、透光性セラミックス放電容器の管軸方向の長さ、すなわち管長および電極間距離が延長された場合に、水平点灯時における放電アークの上方への湾曲がより一層効果的に抑制される効果を有する。
【0083】
図7は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第3の形態を示す断面図である。
【0084】
第3の形態は、凸部1bの数が複数個、例えば2個形成されており、このように凸部1bの数が複数になれば、水平点灯時における放電アークの上方への湾曲がより一層効果的に抑制される効果を有する。
【0085】
図8は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第4の形態を示す断面図である。
【0086】
第4の形態は、透光性セラミック放電容器1が焼き嵌め構造を備えている。図示の例の焼き嵌め構造は、2つの成形部品AおよびBを焼き嵌めて構成されている。成形部品Aは、円筒部11、凸部12、端板部13および一方の小径筒部14が一体成形されている。成形部品Bは、端板部15および他方の小径筒部16が一体成形されている。そして、成形部品Aの円筒部11と、成形部品Bの端板部15との間が気密に焼き嵌めされている。
【0087】
給電導体3は、電極2の軸部2aと一体のタングステン棒状体WBおよびタングステン棒状体WBの周囲に巻装したタングステン細線のコイル部WCと、これらの基端に接続したニオブ棒状体Nbとによって構成されている。
【0088】
図9は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第5の形態を示し、図9(a)は発光管の断面図、図9(b)は透光性セラミック放電容器の断面図である。
【0089】
第5の形態は、凸部1bの肉厚が包囲部1aのその他の部分とほぼ均一になるように形成されている。したがって、凸部1bの幅が大きくなったとしても、凸部の熱容量が大きくなりすぎるのを回避することができる。
【0090】
図10は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第6の形態を示し、図10(a)は発光管の断面図、図10(b)は透光性セラミック放電容器の断面図である。
【0091】
第6の形態は、凸部1bの形状が包囲部1aのその他の部分と緩やかな曲面で連続するように形成されている。したがって、包囲部1aの形状に伴う歪が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の高圧放電ランプを実施するための第1の形態における発光管を示す断面図
【図2】実施例1のランプ特性を比較例のそれと対比して示す表
【図3】本発明において、透光性セラミックス放電容器におけるD2を固定し、内径D1を変化させて高圧放電ランプを水平点灯したときの発光効率および光束維持率の関係を示す表
【図4】本発明において、透光性セラミックス放電容器におけるD1およびD2を固定し、電極間距離Lを変化させて高圧放電ランプを水平点灯したときの発光効率および光束維持率の関係を示す表
【図5】実施例2の水平点灯および垂直点灯での点灯100時間および12000時間におけるランプ特性を示す表
【図6】本発明の高圧放電ランプを実施するための第2の形態を示す断面図
【図7】本発明の高圧放電ランプを実施するための第3の形態を示す断面図
【図8】本発明の高圧放電ランプを実施するための第4の形態を示す断面図
【図9】本発明の高圧放電ランプを実施するための第5の形態を示し、図9(a)は発光管の断面図、図9(b)は透光性セラミック放電容器の断面図
【図10】本発明の高圧放電ランプを実施するための第6の形態を示し、図10(a)は発光管の断面図、図10(b)は透光性セラミック放電容器の断面図
【符号の説明】
【0093】
1…透光性セラミックス放電容器、1a…包囲部、1b…凸部、1c…小径筒部、1d…放電空間、2…電極、3…給電導体、4…シール部、D1…凸部での放電空間の最少内径、D2…包囲部の最大内径、IT…発光管、W…凸部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に放電空間が形成されるとともに放電空間の管軸方向の中間部において放電空間の内径を実質的に狭める凸部が配設された包囲部を備えている透光性セラミックス放電容器と;
透光性セラミックス放電容器の内部に気密に導入された給電導体と;
透光性セラミックス放電容器の管軸方向の両端内部に先端が臨むように配設され給電導体に接続した一対の電極と;
透光性セラミックス放電容器内に封入された放電媒体と;
を具備していることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
放電空間の内面に配設された凸部は、環状であることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
放電空間の内面に配設された凸部の先端で決まる放電空間の最小内径をD1、包囲部内面の最大内径をD2、電極間距離をLとしたとき、下式をともに満足することを特徴とする請求項1または2記載の高圧放電ランプ。
0.2≦D1/D2≦0.8
0.3≦D2/L≦1.5
【請求項4】
放電空間の内面に配設された凸部の管軸方向の幅をW(mm)としたとき、下式を満足することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の高圧放電ランプ。
1.0≦W≦10

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−87767(P2007−87767A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274911(P2005−274911)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(301010951)オスラム・メルコ・東芝ライティング株式会社 (37)
【Fターム(参考)】