説明

高圧放電ランプ

【課題】
透光性セラミックス気密容器を備えた発光管に対して紫外線発生源を始動補助に効果的な位置に配設するとともに、外管を備えたコンパクトな高圧放電ランプを提供する。
【解決手段】
高圧放電ランプは、略筒状の外管OTと、包囲部1aおよび一対の小径筒部1b1、1b2を有する透光性セラミックス気密容器1、電極2、電流導入導体3、シール部4ならびに放電媒体を備えた発光管ITと、外管内面と発光管の間に延在して発光管を支持するサポート部材SFと、小形容器、放電性ガス、小形容器の内部に封装されるとともに発光管の一方の電極と同電位となる部位に接続した内部電極23および小形容器に近接して包囲するとともに発光管の他方の電極と同電位となる部位に接続した外部電極24を備え、サポート部材と概ねにおいて対向する位置で、かつ主体部分が外管の内面と発光管の一方の小径筒部との間に配設された紫外線発生源UVEとを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性セラミックス気密容器を備えた比較的小形の高圧放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
メタルハライドランプは、金属ハロゲン化物により所望の色温度で、高演色で、しかも高効率な高圧放電ランプを得ることができるので、一般照明用および産業用の光源として広く使用されている。屋内の商業照明用などとして比較的小さなランプ電力で小形の高圧放電ランプに対する要求があり、片封止構造の石英ガラス製の発光管や両端封止構造の透光性セラミックス製の発光管を片封止構造の外管内に配設した高圧放電ランプなどが用いられている。
【0003】
透光性セラミックス製の発光管を備えた高圧放電ランプは、透光性セラミックスが耐熱性、耐食性に優れているので、石英ガラスの場合より小形化が可能となり、また相対的に高い効率と演色性を得ることができるので、小ランプ電力の高圧放電ランプにも好適である。
【0004】
一方、高圧放電ランプの始動補助を行うために、小形の紫外線発生源を外管内の発光管の下方に接近した位置に配設したものが知られている(特許文献1参照。)。この紫外線発生源は、紫外線透過性の小形容器内に紫外線放射性の放電ガスを封入し、小形容器内に封装した内部電極と小形容器をその外面に近接して包囲した外部電極との間の放電により紫外線を発生するように構成されている。そして、高圧放電ランプが紫外線発生源を具備していることにより、始動が補助される結果、始動電圧が低下するので、始動が容易になる。
【0005】
【特許文献1】特開2003−151499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高圧放電ランプの外管の太さおよび長さをなるべく縮小して小形化すれば、例えばハロゲン電球用のスポットライトやダウンライトに装着が可能になるので、商業照明用など各種用途において好ましい。
【0007】
ところが、上述した紫外線発生源を配設する高圧放電ランプの場合、従来既知の部品配置では所望の小形化が困難であるだけでなく紫外線発生源の発光管に対する始動補助のための効果的配置ができなかった。
【0008】
本発明は、透光性セラミックス気密容器を備えた発光管に対して紫外線発生源を始動補助に効果的な位置に配設するとともに、外管を備えたコンパクトな高圧放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の高圧放電ランプは、略筒状の外管と;放電空間を包囲する包囲部および包囲部の両端に連通した一対の小径筒部を有する透光性セラミックス気密容器、一対の小径筒部にその内面との間にわずかな隙間を形成しながら挿通し、先端が離間対向して透光性セラミックス気密容器内に封装された1対の電極、一対の小径筒部の内部においてそれぞれ電極の基端側に接続した一対の電流導入導体、小径筒部および電流導入導体の間で透光性セラミックス気密容器をそれぞれ封止している一対のシール部ならびに透光性セラミックス気密容器内に封入された金属ハロゲン化物および希ガスを含む放電媒体を備え外管内に配設された発光管と;外管の内面と発光管との間に延在して発光管を支持するサポート部材と;紫外線透過性の小形容器、小形容器の内部に封入されて放電時に紫外線を放射する放電性ガス、小形容器の内部に封装されるとともに発光管の一方の電極と同電位となる部位に接続した内部電極および小形容器に近接して包囲するとともに発光管の他方の電極と同電位となる部位に接続した外部電極を備え、サポート部材と概ねにおいて対向する位置で、かつ主体部分が外管の内面と発光管の一方の小径筒部との間に配設された紫外線発生源と;を具備していることを特徴としている。
【0010】
〔外管について〕 外管は、その内部に後述する発光管を収納して、例えば発光管を保温し、機械的に保護し、光拡散作用を呈し、あるいは紫外線カット作用を呈するなど所望の一つまたは複数の目的で配設される。また、外管は、多重管により構成されていることを許容する。
【0011】
したがって、外管の内部は、その目的に応じてランプ外部の雰囲気に対して気密に保持したり、外気に連通したりするように構成される。一般照明用の高圧放電ランプとしては、外管内部を真空または不活性ガス(例えば、窒素やアルゴンなど)雰囲気にするのが一般的である。
【0012】
本発明において、外管は、その形状が略筒状をなしている。外管の形状が略筒状をなしていると、ハロゲン電球用を光源とするダウンライトやスポットライトなどの照明器具に対する装着性が優れている。
【0013】
外管の構成材料は、特段限定されない。例えば、硬質ガラス、半硬質ガラスまたは石英ガラスなどを用いて外管を構成することができる。なお、石英ガラスの場合、紫外線カット性能のものや紫外線透過性のものを選択して用いることができる。また、所望により、透光性セラミックスを用いて外管を形成することもできる。
【0014】
外管に光拡散作用を付与することができる。このために、従来から所望により外管の内面に蛍光体膜やシリカ膜などの光拡散膜を形成することができる。しかし、既知のように透明質の外管であってもよいことはいうまでもない。
【0015】
また、上記のような小形の高圧放電ランプにおいて、外管の最大外径が16mmを超えると、点灯中に発光管の外管から受ける輻射熱が小さくなって、高圧放電ランプの最冷部温度が所望値にまで到達できない。その結果、所望のランプ特性を得ることができなくなる。
【0016】
外管は、発光管の周囲を覆う部分が略筒状をなしていれば、その形状は特段限定されない。したがって、一般に多用されているBT形バルブやT形バルブなどの形状を採用することができる。しかし、外管の一層のコンパクト化のためにはT形バルブが好適である。
【0017】
本発明の一態様において、外管は、その最大外径が16mm以下である。定格ランプ電力が100W以下、好適には70W以下、実際的には20W程度以上の小形の高圧放電ランプにおいて、最大外径が16mm以下であれば、小形化を図ることができるからである。なお、最大外径の下限値的には定格ランプ電力20〜30Wの場合、最大外径10mm程度までを実現することが可能である。
【0018】
また、上記のような小形の高圧放電ランプにおいて、外管の最大外径が16mmを超えると、点灯中に発光管の外管から受ける輻射熱が小さくなって、高圧放電ランプの最冷部温度が所望値にまで到達できない。その結果、所望のランプ特性を得ることができなくなる。
【0019】
〔発光管について〕 本発明において、発光管は、透光性セラミックス気密容器、一対の電極、一対の電流導入導体、一対のシール部および放電媒体を備えている。
【0020】
包囲部は、膨出していて、その内部に放電空間が形成されている。なお、透光性であるとは、放電により発生した放射のうち、所望波長域の発光成分を少なくとも所望の部位から外部へ透過させることができればよいことを意味する。また、透光度は、高圧放電ランプの正常な作動状態において、透光性セラミックス気密容器として問題なく機能する程度を有していればよい。
【0021】
小径筒部は、包囲部の両端に連通していて、後述するように内部に挿通する電極および/または電流導入導体と小径筒部の内面との間にわずかな隙間が形成される。したがって、小径筒部の長さを適切な値に設定することにより、点灯中にわずかな隙間の内部に液相のハロゲン化物が滞留して、いわゆるキャピラリーとして作用して透光性セラミックス気密容器の最冷部を形成したり、封止部の温度を所定温度に維持させたりすることができる。なお、電極および電流導入導体については後述する。
【0022】
しかし、本発明においては、小径筒部を備えているものの、小径筒部がキャピラリーを形成することを必須要件とするものではない。
【0023】
次に、透光性セラミックス気密容器の構成材料としては、例えばサファイヤなどの単結晶の金属酸化物と、多結晶の金属酸化物、例えば半透明の気密性アルミニウム酸化物、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)、イットリウム酸化物(YOX)と、多結晶非酸化物、例えばアルミニウム窒化物(AlN)などを用いることができる。透光性セラミックス気密容器の内容積すなわち放電空間の容積は、高圧放電ランプの定格ランプ電力の大きさに応じて多様な値に設定することができる。また、放電空間の形状も円筒状、球状、楕円球状など多様であることを許容する。
【0024】
(一対の電極について) 一対の電極は、透光性放電容器に封装されて先端が互いに離間して放電空間に臨んでいる。また、電極は、タングステン(W)、ドープドタングステン、トリウム入りタングステン、レニウム(Re)、レニウム−タングステン合金またはモリブデン(Mo)などの耐火性金属を用いて形成することができる。また、電極は、その基端側などの一部を異種の耐火性金属またはサーメットなどを用いて形成することができる。例えば、電極の主要部をタングステンで形成し、基端部をモリブデンまたはサーメットで形成する。さらに、電極は、好ましくは細長い電極軸部および電極軸部の先端部に配設される電極主部から構成することができる。この場合、電極主部は、電極軸の先端に配設されて主として陰極およびまたは陽極として作用する部分であり、電極の先端部を構成する。また、電極主部は、その表面積を大きくして放熱を良好にするために、必要に応じて例えばタングステンのコイルを巻装したりすることができる。
【0025】
(電流導入導体について) 電流導入導体は、一対の電極に電流を供給するための手段であり、小径筒部の開口端から内部へ挿入されて、先端が電極の基端に接続し、基端が小径筒部から外部へ露出する。電極に接続する電流導入導体を透光性セラミックス気密容器から外部へ導出させることができる。また、電流導入導体は、透光性セラミックス放電容器をシール部と協働して封止する。電流導入導体としては、透光性セラミックス気密容器の材質に応じて熱膨張係数が接近した導電性物質、例えば透光性アルミナセラミックス製の場合、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)またはサーメットなどが好適である。
【0026】
(一対のシール部について) 一対のシール部は、小径筒部と電流導入導体の間で透光性セラミックス気密容器を封止するための手段であるとともに、電極への給電路となる。シール部は、フリットガラスと称されるようなセラミックス封止用コンパウンドを加熱溶融して小径筒部と電流導入導体との間を封着する構成が一般に多用されている。しかしながら、本発明においては上記手段とは別に既知の各種シール手段を適宜採用することができる。
【0027】
(放電媒体について) 放電媒体は、少なくとも金属ハロゲン化物および始動ガスにより構成される。また、好適にはランプ電圧形成物質を含むことができる。
【0028】
金属ハロゲン化物は、金属ハロゲン化物には発光金属のハロゲン化物を含むものとする。発光金属のハロゲン化物としては、既知の各種金属およびそれらの組み合わせの金属ハロゲン化物を用いることができる。
【0029】
始動ガスは、少なくとも高圧放電ランプを始動させるときに放電を開始させるのに寄与する。しかし、具体的なガスの種類は限定されない。一般照明用の高圧放電ランプの場合、好適にはネオン(Ne)およびアルゴン(Ar)の混合ガスである。始動ガスの封入圧は、一般的には8〜80kPaである。8kPa未満では、パッシェン曲線から理解できるように始動が困難になる。また、80kPaを超えると始動電圧が高くなり、口金の耐圧を超えてしまう。
【0030】
ランプ電圧形成物質は、点灯中に一対の電極間に現れる電圧を形成するのに主体的に寄与する放電媒体であり、水銀および/または金属ハロゲン化物を用いることができる。ランプ電圧形成物質としての金属ハロゲン化物には、蒸気圧の比較的高い金属のハロゲン化物などを用いることができる。
【0031】
〔サポート部材について〕 サポート部材は、少なくとも発光管を外管内の所定位置に保持するのを確実にするための手段であり、そのために一部が外管の内面に接触、好ましくは弾性的に接触することを許容する。例えば、外管の先端部(トップ部)側において外管の内面または排気チップオフ部内面に常時接触させるか、振動または衝撃時に接触してそれらにより発光管に作用する影響を緩和するように作用するようにサポート部材を構成することができる。この場合、所望により電流導入導体をサポート部材の一部として兼用することができる。
【0032】
しかし、所望により上記サポート部材に加えて、発光管をより安定に支持するために、所望により外管の基端部(一般的には口金が装着される端部)側において、ステム部分に支持させたり、ステム部から外管内部へ導入された内部導入線または内部導入線に溶接した接続線に支持させたりすることができる。
【0033】
また、サポート部材は、単一化された構造であってもよいが、複数に分割された構造であってもよい。後者の場合、発光管の一端を支持する第1のサポート部材と、他端を支持する第2のサポート部材とでサポート部材を構成することができる。
【0034】
さらに、サポート部材は、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銅(Cu)およびアルミニウム(Al)などの金属またはそれらを主体とする合金、例えばステンレス鋼、Ni−Cu合金、真鍮などを用いて形成することができる。
【0035】
〔紫外線発生源について〕 紫外線発生源は、小形容器、放電性ガス、内部電極および外部電極を備えていて、放電時に紫外線を発生して、高圧放電ランプの始動を補助する手段であり、既知の構成であることを許容する。
【0036】
小形容器は、紫外線透過性の耐火性部材、例えば石英ガラスなどの小径円筒状カプセルにより形成することができる。放電性ガスは、アルゴン(Ar)などの放電時に紫外線放射性の放電ガスを用いることができる。内部電極は、小形容器の内部に封装されていて、例えばモリブデン箔などからなる。外部電極は、小形容器に近接、好ましくは密接してこれを包囲している。そうして、内部電極と外部電極との間に高圧放電ランプの始動電圧が印加されたときに最初に小形容器内に放電が生起して紫外線が発生する。
【0037】
本発明において、紫外線発生源は、次の態様により外管内に配設される。すなわち、紫外線発生源は、概ねにおいてサポート部材と対向する位置においてその主体部分が外管の内面と発光管の一方の小径筒部との間に配設される。
【0038】
なお、サポート部材と概ねにおいて対向する位置とは、発光管の管軸を中心としてサポート部材に正対する位置、換言すればサポート部材から180°の関係となる位置とこの位置の角度に対して±60°の範囲内の位置をいう。この角度範囲内であれば、発光管、サポート部材および紫外線発生源を所要の関係を維持して外管内に無理なく収納するとともに所要に接続することが容易になる。しかし、角度範囲は好適には180±45°の範囲内である。紫外線発生源のサポート部材に対する配置が上記サポート部材と概ねにおいて対向する位置から外れると、内部電極および外部電極の電気的接続や外管の封止が困難になる。また、上記好適な範囲内であれば、内部電極および外部電極の電気的接続および外管の封止が頗る容易になり、高圧放電ランプの製造性がさらに向上する。
【0039】
また、上記主体部分とは、紫外線発生源の小形容器の主要部分であり、紫外線発生源の物理的大きさを主として決定している。
【0040】
小形容器は、紫外線透過性の材料、例えば一端が開放された有底筒状であり、透光性セラミックス気密容器に比較してかなり小径の石英ガラス管を用いて形成することができる。小形容器の好適な大きさは次のとおりである。すなわち、最大外径は、4mm以下および外管の最大外径の1/4以下のいずれか一方の条件を満たしている。また、長さは、小形容器の最大外径の6倍以下である。これらの条件を満足することにより、最大外径16mm以下の外管内に発光管、サポート部材および紫外線発生源を所要の関係に配設しやすくなる。
【0041】
内部電極および外部電極は、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)およびニオブ(Nb)などの加工性および耐熱性に優れた金属を用いて形成することができる。
【0042】
内部電極は、小形容器の内部に封装された例えば箔状や線状の導電性の上記金属で構成することができる。内部電極を小形容器内に封装するために、先端に内部電極を接続した導入導体を小形容器の開放端をピンチシールやシュリンクシールすることができる。しかし、導入導体を延長して内部電極としてもよい。そうすれば、さらに紫外線発生源の小形化を図ることが可能になる。
【0043】
外部電極は、小形容器を包囲して内部電極と小形容器の壁面および放電性ガスを挟んで対向する。上記包囲の態様は、好適には約1〜5ターンのコイル状をなしている構成である。この範囲のターン数であれば、小形容器を包囲して放電を小形容器の内部に生起させやすいとともに、発生した紫外線を有効に外部へ放射させることができる。約1ターン未満であると、小形容器の内部全体にわたる放電を生起させにくくなる。なお、約1ターンとは、完全な1ターンだけでなく、凡そにおいて1ターンといえる程度であれば1ターン未満であってもよいことを意味する。反対に、5ターンを超えると、小形容器の外面が外部電極によって覆われる割合が増大しすぎて紫外線の導出が阻害されやすくなる。
【0044】
また、外部電極は、線状、帯状など適宜形態を有する導電体を用いることができる。
【0045】
次に、紫外線発生源の対をなす内部電極と外部電極の電気的接続の態様について説明する。内部電極は、発光管の紫外線発生源が配置される側すなわち一方の小径筒部の内部に挿通している電極と同電位となる部位、例えば外管の内部導入線やこれに接続した電流導入導体に接続する。外部電極は、発光管の他方の小径筒部内に挿通する電極と同電位になる部位、好適にはサポート部材に接続する。
【0046】
また、外部電極の一部を発光管の一方の小径筒部において、その内部に包囲部に連通する空間が形成されている部位に近接させることにより、当該小径筒部の内部空間の電位傾度が大きくなって始動促進作用を行う。このため、外部電極をして発光管に対する近接導体としても作用させることができる。なお、外部電極の上記小径筒部に対する近接部は、紫外線発生源の包囲部と他方の電極におけるのと同電位の部位に接続する部分との中間部であれば、配置と外部電極の整形が容易になり好ましい。また、小径筒部に対する近接の態様としては、近接した位置を直線状をなして延在する態様や1〜複数ターンのコイル状をなして近接する態様などであってもよい。
【0047】
〔本発明の作用について〕 本発明においては、高圧放電ランプが上記の構成を具備しているので、高圧放電ランプの始動時において、発光管の一対の電極間に始動電圧が印加されると同時に紫外線発生源の内部電極と外部電極との間にも始動電圧が印加される。
【0048】
始動電圧の印加とほぼ同時に紫外線発生源の小形容器の内部の紫外線放射性ガスが励起されて放電が生起し、それにより発生した紫外線が小形容器から外部へ放射される。そして、放射された紫外線の一部は、発光管を照射するので、紫外線照射により発光管の内部の始動ガスが励起されるため、高圧放電ランプの始動電圧が低下し、容易に始動して点灯を開始する。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、略筒状の外管内のサポート部材に概ねにおいて対向する位置で、かつ主体部分が外管の内面と発光管の一方の小径筒部との間に紫外線発生源を配設したことにより、小形の外管を用いたとしても発光管、サポート部材および紫外線発生源を外管内に機能的に収納できるとともに、紫外線発生源が小径筒部の側方に配置されるので、小径筒部の始動補助に効果的な部位に紫外線を近距離で照射することができ、その結果始動電圧が低下するばかりでなく、しかもコンパクトな高圧放電ランプを提供することができる。
【0050】
また、紫外線発生源の外部電極を小径筒部の始動補助に効果的な部位に近接させれば、外部電極を近接導体としても作用させることができ、その結果多重的な始動補助が行われるので、一層始動電圧が低下する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0052】
図1および図2は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第1の形態を示し、図1は正面図、図2は発光管の拡大断面図である。本形態の高圧放電ランプは、定格ランプ電力70W用として好適な構造であり、外管OT、発光管IT、サポート部材SF、紫外線発生源UVEおよびゲッタGを具備して構成されている。
【0053】
外管OTは、紫外線カット石英ガラス製の略円筒状をなすT形バルブからなり、その最大外径16mm以下である。そして、閉鎖された先端の中央には排気チップオフ部11が形成されている。また、基端にピンチシール部12が形成されている。ピンチシール部12には、いずれも一対の封着金属箔12a、12a、内部導入線12b、12cおよび外部導入線12d、12dが図1に示すような関係に配設されている。
【0054】
発光管ITは、図2に示すように、透光性セラミックス気密容器1、一対の電極2、2、一対の電流導入導体3、3、一対のシール部4、4および透光性セラミックス気密容器1の内部に封入された放電媒体を備えている。
【0055】
透光性セラミックス気密容器1は、透光性アルミナセラミックスからなり、包囲部1aおよび包囲部1aの両端に連通して配設された一対の小径筒部1b1、1b2を備え、内部に放電空間1cが形成されている。そして、包囲部1aおよび小径筒部1b1、1b2は、鋳込み成形により一体化されている。
【0056】
一対の電極2、2は、タングステン棒からなり、小径筒部1b1、1b2内に挿通されていている。そして、電極2の軸部と小径筒部1b1、1b2の内面との間にわずかな隙間が形成されている。電極2の先端は、包囲部1a内に突出している。
【0057】
一対の電流導入導体3、3は、図2に示すように、それぞれニオブまたはサーメットなどの単体または両部材が長手方向に接合した複合体からなる。そして、その先端が小径筒部1b1、1b2内に挿入されて電極2の基端に接続して電極2を支持するとともに、基端が小径筒部1b1、1b2から外部へ突出している。小径筒部1b2から導出された図1において上部側の電流導入導体3の基端は、外管OTの排気チップオフ部11の内部に挿入されることによって、後述するサポート部材SFの一部を兼ねていて、発光管ITのセンタリングに寄与している。
【0058】
一対のシール部4、4は、セラミックス封止用コンパウンドを加熱して溶融し、固化することにより形成されている。そうして、一対のシール部4、4は、透光性放電容器1の小径筒部1b1、1b2の端面側の部分と、これに対向する電流導入導体3、3のニオブ棒状体Nbと、の間に介在して透光性セラミックス放電容器1を気密に封止しているとともに、一対の導入導体3、3が透光性セラミックス気密容器1の内部に露出しないように小径筒部1b1、1b2内に挿入されている部分の全体を被覆している。
【0059】
放電媒体は、金属ハロゲン化物、始動ガスおよび水銀からなり、透光性放電容器1内に封入されている。なお、金属ハロゲン化物および水銀は、蒸発する分より過剰に封入されている。そして、金属ハロゲン化物の一部が安定点灯時に小径筒部1b、1b内に形成されるわずかな隙間内に液相状態で滞留する。そして、点灯中下側となる例えば小径筒部1b1内に液相状態で滞留している放電媒体の表層部付近に最冷部が形成される。
【0060】
金属ハロゲン化物は、発光金属のハロゲン化物からなり、例えばツリウム(Tm)、ナトリウム(Na)、タリウム(Tl)よび希土類金属のグループから選択された金属のハロゲン化物により構成することができる。
【0061】
サポート部材SFは、内部導入線12bが一体に延長して形成されている。そして、外管OTの内壁に接近した位置を管軸方向に沿って延在し、先端が外管OTの先端付近で屈曲され、かつ発光管ITの図1において上部の導入線3に溶接されることによって、発光管ITを支持している。
【0062】
紫外線発生源UVEは、小形容器21、導入線22、内部電極23、放電性ガスおよび外部電極24を具備して構成されている。小形容器21は、紫外線透過性石英ガラスにより最大外径4mm以下の有底筒状のカプセル状をなしていて、内部に細長い放電空間が形成されている。導入線22は、モリブデンからなり、先端が内部電極23に溶接している。内部電極23は、短冊状のモリブデン箔からなり、小形容器21の放電空間内に封装されている。放電性ガスは、例えばアルゴンからなり、小形容器21の内部に封入されている。外部電極24は、モリブデン線からなり、その先端部が小形容器21の外周に密着して数ターン巻き付けられていて、中間部がほぼ直線状に延在するとともに一方の小径筒部1b1の内部にわずかな空間が形成されている部位に対向する位置の外面にほぼ接触するように接近し、かつ基端部がサポート部材SFに溶接されている。
【0063】
また、紫外線発生源UVEは、サポート部材SFと正対する位置で、かつその主体部分が外管OTの内面と発光管ITの一方の小径筒部1b1との間に配設されている。これにより小径筒部1b1と紫外線発生源UVEとが管軸方向に沿ってほぼ平行に、かつ正対して配置される。
【0064】
ゲッタGは、サポート部材SFに溶接されており、外管OT内を清浄にする。
【実施例1】
【0065】
図1に示す高圧放電ランプにおいて、以下の仕様である。
【0066】
外管 :最大外径15mm
発光管
透光性セラミックス放電容器:透光性多結晶アルミナセラミックス製、
包囲部の内径6mm、外径7.6mm、小径筒部の内径0.8mm、外径2.4mm、
長さ36mm
紫外線発生源:小形容器の最大外径3.25mm、長さ1.5mm、放電性ガスAr、
封入圧力約2.7kPa
外部電極が直径0.2mmのMo線を3ターン形成されている。

以下、図3、図6および図7を参照して本発明を実施するためのその他の形態について説明する。なお、各図において、図1と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0067】
図3は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第2の形態を示す正面図である。本形態の高圧放電ランプは、紫外線発生源UVEの外部電極24がリボン状のMo箔である。そして、先端部が小形容器21の外周面に密着した1ターンのコイルを形成し、中間部が小径筒部1b1の前記と同様の外面部分に接触して基端部がサポート部材SFに溶接されている。その他の構成は図1に示す第1の形態におけるのと同様である。
【実施例2】
【0068】
図3に示す高圧放電ランプにおいて、以下の仕様である。
【0069】
紫外線発生源:外部電極が厚さ0.3mm、幅2mmのNb箔を1ターンより若干短く形成されている。
【0070】
その他の仕様は実施例1と同じである。

次に、実施例1および実施例2の高圧放電ランプをそれぞれ5灯製作し、始動電圧調査を行った結果について説明する。点灯には、約3.5kVのパルス電圧が出力され、かつ2次開放電圧が250V以上の電子安定器を使用した。なお、高圧放電ランプの放電開始電圧はオシロスコープで観測した。また、比較例は、紫外線発生源を具備していない以外は実施例1と同じ仕様である。仕様開始時時に実施した始動電圧調査結果を図4に示す。
【0071】
図4の表から明らかなように、本発明においては、比較例に比べて始動電圧が顕著に低下している。
【0072】
さらに、上記供試ランプを6000時間まで点灯したときの放電開始電圧を調査した結果を図5に示す。
【0073】
図5の表から明らかなように、本発明においては6000時間点灯しても全灯が始動可能であるが、比較例は2灯が不点になった。
【0074】
図6は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第3の形態を示す正面図である。本形態は、小径筒部の外周面に紫外線発生源UVEの外部電極24の中間部がコイル状に巻装されている以外は第1の形態と同様の構成である。
【0075】
図7は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第4の形態を示す正面図である。本形態は、外管OTが多重管構造になっている。すなわち、外管OTは、第1の管OT1および第2の管OT2からなる。第1の管OT1は、図1に示す第1の形態と同様の構成である。第2の管OT2は、第1の管OT1の外側に配置され、ねじ口金Bを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の高圧放電ランプを実施するための第1の形態を示す正面図
【図2】同じく発光管の拡大断面図
【図3】本発明の高圧放電ランプを実施するための第2の形態を示す正面図
【図4】実施例1および実施例2における始動電圧調査の結果を比較例のそれとともに示す表
【図5】同じく点灯6000時間における始動電圧調査の結果を示す表
【図6】本発明の高圧放電ランプを実施するための第3の形態を示す正面図
【図7】本発明の高圧放電ランプを実施するための第4の形態を示す正面図
【符号の説明】
【0077】
1…透光性セラミックス放電容器、1a…包囲部、1b1、1b2…小径筒部、1c…放電空間、2…電極、3…電流導入導体、4…シール部、11…排気チップオフ部、12…ピンチシール部、12a…封着金属箔、12b、12c…内部導入線、12d…外部導入線、21…小形容器、22…導入線、23…内部電極、24…外部電極、G…ゲッタ、IT…発光管、OT…外管、SF…サポート部材、UVE…紫外線発生源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略筒状の外管と;
放電空間を包囲する包囲部および包囲部の両端に連通した一対の小径筒部を有する透光性セラミックス気密容器、一対の小径筒部にその内面との間にわずかな隙間を形成しながら挿通し、先端が離間対向して透光性セラミックス気密容器内に封装された1対の電極、一対の小径筒部の内部においてそれぞれ電極の基端側に接続した一対の電流導入導体、小径筒部および電流導入導体の間で透光性セラミックス気密容器をそれぞれ封止している一対のシール部ならびに透光性セラミックス気密容器内に封入された金属ハロゲン化物および始動ガスを含む放電媒体を備え外管内に配設された発光管と;
外管の内面と発光管との間に延在して発光管を支持するサポート部材と;
紫外線透過性の小形容器、小形容器の内部に封入されて放電時に紫外線を放射する放電性ガス、小形容器の内部に封装されるとともに発光管の一方の電極と同電位となる部位に接続した内部電極および小形容器に近接して包囲するとともに発光管の他方の電極と同電位となる部位に接続した外部電極を備え、サポート部材と概ねにおいて対向する位置で、かつ主体部分が外管の内面と発光管の一方の小径筒部との間に配設された紫外線発生源と;
を具備していることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
外管は、最大外径が16mm以下であり;
紫外線発生源は、その小形容器の最大外径が4mm以下および外管の最大外径の1/4以下のいずれかであるとともに、小形容器の管軸方向の長さがその最大外径の6倍未満であることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
紫外線発生源は、発光管の管軸を中心としたときの角度でサポート部材の配設位置を基準として180±45°の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の高圧放電ランプ。
【請求項4】
紫外線発生源は、その外部電極がさらに透光性セラミックス気密容器の他方の小径筒部において包囲部に連通する空間が形成されている部位の外面に近接していることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の高圧放電ランプ。
【請求項5】
紫外線発生源は、その外部電極による小形容器外面の包囲の態様が約1〜5ターンであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の高圧放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−192475(P2008−192475A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26389(P2007−26389)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(301010951)オスラム・メルコ・東芝ライティング株式会社 (37)
【Fターム(参考)】