説明

高圧放電ランプ

【課題】
第1の給電部材と第2の給電部材のサーメット部分との間を良好に接合して、しかも所要の接合強度が得られるとともに発光の色特性が安定する高圧放電ランプを提供する。
【解決手段】
高圧放電ランプは、電極部材2、耐ハロゲン性金属の軸部3a、コイル部3bを備えた第1の給電部材3およびサーメット部分4aを含み、第1の給電部材の直径とほぼ同じ直径の第2の給電部材4を備え、第1の給電部材は透光性セラミックス放電容器1の小径筒部の内面との間にわずかな隙間を形成しているとともにその基端部から第1の給電部材の直径よりも小径の突出部3cを軸方向に形成し、第2の給電部材はサーメット部分の先端が第1の給電部材の突出部の周囲を包囲するとともにその包囲部の外径が第1の給電部材の外径とほぼ同等で、第1の給電部材の基端と第2の給電部材の先端とが接合した一対の電極構体EMを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性セラミックス放電容器を備えたものにおいて、電極構体を改良した高圧放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
放電空間を画成する包囲部およびこの包囲部の両端から管軸方向に延在する一対の小径筒部を一体に成形した透光性セラミックス放電容器を備えた高圧放電ランプにおいて、電極構体を以下のように構成したものは既知である(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、電極構体は、電極部材、耐ハロゲン性金属の第1の給電部材およびサーメット部分を含んだ第2の給電部材を備え、かつ上記各部材が軸方向に上記の順に直列に突合せ溶接されて透光性セラミックス放電容器の小径筒部に挿通し、電極部材は先端が放電空間に臨み、第1の給電部材は透光性セラミックス放電容器の小径筒部の内面との間にわずかな隙間を形成している。また、上記サーメット部分は、第1の給電部材よりも外径が小さく、かつサーメット部分の第1の給電部材との溶接部近傍表面にはアルミナ層が形成された構成となっている。
【0003】
特許文献1に記載された高圧放電ランプにおいては、第1の給電部材と第2の給電部材のサーメット部分との溶接界面における導通不良の発生が抑制されるために、溶接界面の異常発熱による小径筒部のクラックを防止できる旨記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−179007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、本発明者の追試によれば、特許文献1に記載されている高圧放電ランプは、次のように作用することが分かった。すなわち、サーメット部分104aの外径が第1の給電部材103の径より小さいために、サーメット部分と小径筒部の内面との間に比較的大きな環状の空隙が形成される。そして、点灯時間の進展に伴って液相状態の放電媒体が放電空間から徐々に移動して上記空隙内に貯留されていく。これに伴って、放電に有効に作用する放電媒体の量が減少していく。その結果、高圧放電ランプの発光の色特性が点灯時間の進展に伴って大きく変化してしまうという問題がある。
【0006】
これに対して、特許文献1において従来技術として記載されているところの図10の(a)電極構体の分解正面図、(b)は同じく一部断面正面図に示す電極構体構造において、サーメット部分104aの径が第1の給電部材103の径と同じ構成の場合には、上述のような空隙は形成されない。しかしながら、第1の給電部材103とサーメット部分104aの間を良好に溶接することが困難である。その結果、前述のように溶接界面に導通不良が発生しやすいとともに、第1の給電部材103とサーメット部分104aとの間の接合強度が低下するという問題がある。また、サーメット部分104aの先端104a1が溶接の際に溶融して図10(b)に示すように盛り上がって先端104a1の径が第1の給電部材103およびサーメット部分104aの径より大きくなってしまうために、透光性セラミックス放電容器の小径筒部の中へ挿入できなくなるという問題もある。
【0007】
本発明は、第1の給電部材と第2の給電部材のサーメット部分との間を良好に接合して、しかも所要の接合強度が得られるとともに発光の色特性が安定する高圧放電ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高圧放電ランプは、放電空間を包囲する包囲部および包囲部の両端に配置され包囲部より内径が小さい小径筒部を備えた透光性セラミック放電容器と;電極部材、耐ハロゲン性金属の軸部およびこの軸部の周囲に形成したコイル部を備えた第1の給電部材およびサーメット部分を含み、第1の給電部材の直径とほぼ同じ直径の第2の給電部材を備え、かつ上記電極部材、第1および第2の給電部材が軸方向に上記の順に直列接続して透光性セラミックス放電容器の小径筒部に挿通し、電極部材は先端が放電空間に臨み、第1の給電部材は透光性セラミックス放電容器の小径筒部の内面との間にわずかな隙間を形成しているとともにその基端部から第1の給電部材の直径よりも小径の突出部を軸方向に形成し、第2の給電部材はサーメット部分の先端が第1の給電部材の突出部の周囲を包囲するとともにその包囲部の外径が第1の給電部材の外径とほぼ同等で、第1の給電部材の基端と第2の給電部材の先端とが接合した一対の電極構体と;電極構体の第2の給電部材と小径筒部の間に進入して透光性セラミック放電容器を気密にシールするシール材と;セラミックス放電容器内に封入された放電媒体と;を具備していることを特徴としている。
【0009】
本発明の高圧放電ランプは、上記のように透光性セラミック放電容器、一対の電極構体、シール材および放電媒体を具備して構成されており、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0010】
<透光性セラミックス放電容器について> 透光性セラミックス放電容器は、単結晶の金属酸化物、例えばサファイヤと、多結晶の金属酸化物、例えば半透明の気密性アルミニウム酸化物、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)、イットリウム酸化物(YOX)と、多結晶非酸化物、例えばアルミニウム窒化物(AlN)のような光透過性および耐熱性を備えた材料からなる放電容器である。なお、透光性とは、放電によって発生した可視光を透過して外部に導出できる程度に光透過性であることをいい、透明であるのが好ましいが、要すれば光拡散性であってもよい。そして、少なくとも包囲部が透光性を備えていればよい。
【0011】
また、透光性セラミックス放電容器は、放電空間を包囲する包囲部と、この包囲部の端部に連通して配設された一対の小径筒部とを備えている。なお、好適には包囲部と小径筒部とが一体的に成形され、かつ焼結することによって透光性セラミックス放電容器が一体化されている。しかし、所望により焼き嵌め構造や複数の構成部品を溶接して形成した構造であってもよい。
【0012】
包囲部は、その内部に放電を包囲して放電空間を画成するために、包囲部の内面を連続的な曲面に形成することが許容される。さらに、包囲部内部の主要部を俵形、楕円球状や球状などをなした中空にすることができる。なお、包囲部の「主要部」とは、小径筒部と接している側の端部近傍を除いた残余の大部分であって、放電による発光が主として透過する部分をいう。
【0013】
小径筒部は、その内部に後述する電極部材を支持する後述する第1の給電部材が挿通し、第1の給電部材の周囲にキャピラリーと称するわずかな隙間を形成することにより、その内部に蒸発しない液相状態で滞留する金属ハロゲン化物や水銀などの放電媒体が入り込み、その放電空間側の表面部に最冷部を形成することができる。また、上記キャピラリーは、その長さ方向に温度勾配が形成されることにより、シール部の温度を所要値まで低下するように構成することができるので、透光性セラミックス放電容器の封止に対して効果的に寄与する。
【0014】
また、小径筒部は、その肉厚について特段限定されない。例えば、肉厚が一定でもよいし、管軸方向に複数の異なる肉厚領域に区分されていてもよい。
【0015】
なお、透光性セラミックス放電容器の点灯中の外表面における温度が850〜1200℃になるように高圧放電ランプが設計されているのが好ましい。
【0016】
<一対の電極構体について> 一対の電極構体は、電極部材、第1の給電部材およびサーメット部分を含んだ第2の給電部材を上記の順に備え、放電空間を挟んで対向するように構成されている。すなわち、電極部材は、第1の給電部材の先端に接続する。第1の給電部材の基端は、第2の給電部材におけるサーメット部分の先端に接続する。そして、第2の給電部材の部分で透光性セラミックス放電容器の小径筒部にシール材により固定される。
【0017】
(電極部材について) 電極部材は、その先端が放電空間に臨み、また基端が第1の給電部材の先端に接続する。そして、タングステン(W)、レニウム(Re)あるいはレニウム−タングステン合金などの耐ハロゲン性および耐火性を有する金属からなる。なお、所望により上記タングステンとして、例えば純タングステン、ドープ剤(例えばスカンジウム(Sc)、アルミニウム(Al)、カリウム(K)およびケイ素(Si)などのグループから選択された一種または複数種)を含有するドープドタングステン、酸化トリウムを含有するトリエーテッドタングステンなどを選択的に採用することができる。
【0018】
また、電極部材は、後述する第1の給電部材と一体をなして形成されていることを許容する。しかし、第1の給電部材と別体に形成後に溶接などの接合手段を用いて一体化されていてもよい。
【0019】
さらに、電極部材は、軸部と、その周囲に耐火性金属の細線を密巻したコイル部とを備えて構成されていることを許容する。なお、上記コイル部は、電極の熱容量および表面積を増加するので、電極の温度過昇を防止する。
【0020】
(第1の給電部材について) 第1の給電部材は、耐ハロゲン性金属により構成されて軸部およびこの軸部の周囲に形成したコイル部を備え、その先端に接続する電極部材を支持し、かつこれに給電する手段として機能するとともに、その基端部から第1の給電部材の直径よりも小径の突出部が軸方向へ延在して形成されている。
【0021】
上記耐ハロゲン性金属としては、点灯中高温になる電極部材に隣接するために、併せて耐火性を有していることが好ましく、例えばタングステン(W)またはモリブデン(Mo)などの高融点金属を用いるのがよい。なお、タングステンを用いる場合、電極部材と第1の給電部材とは1本のタングステン棒材によって一体に連続して構成することが許容される。したがって、この場合、電極部材と第1の給電部材との間には見かけ上境界が存在しない。しかし、所望により電極部材と第1の給電部材とを別体により形成し、突合せ溶接などの手段により接合することもできる。
【0022】
上記突出部は、第1の給電部材の基端部における耐ハロゲン性金属と同種または異種の耐ハロゲン性金属により形成されている。好適には第2の給電部材におけるサーメット部分に含まれる金属と同種の耐ハロゲン性金属、例えばモリブデンにより形成されている。したがって、第1の給電部材の基端部がタングステンにより形成されている場合、モリブデンからなる突出部を上記基端部に例えば溶接することができる。サーメット部分がモリブデンとアルミナセラミックスとの混合焼結体からなる場合、突出部3cがモリブデンであれば、サーメット部分4aとの結合が良好になる。しかし、所望により突出部をタングステンで形成することもできる。この場合、耐ハロゲン性金属軸部は、タングステンおよびモリブデンのいずれであってもよい。
【0023】
また、上記突出部は、好適には第1の給電部材の中心軸上に突出するように構成される。しかし、所望により中心軸から偏心した位置から突出してもよい。ただし、このような場合であっても、なるべく中心軸に接近しているのが好ましい。突出部が小径であるとは、後述から明らかなように第2の給電導体より直径が小さいことを意味する。また、突出部は、電極部材の軸方向に適当な長さを有している。しかし、突出部の直径および長さの好適な範囲があり、これらについては後述する。
【0024】
また、第1の給電部材は、その少なくとも軸方向の一部の領域において、透光性セラミックス放電容器の当該領域に対向する小径筒部の内面との間にいわゆるキャピラリーと称されるわずかな隙間を形成する。
【0025】
さらに、第1の給電部材は、軸部と、この軸部の周囲に耐火性金属の細線を適当なピッチで巻回して形成したコイル部とを備えている。この構成により、キャピラリーの大きさを所定値に規定して、キャピラリーの内部に進入する液相状態の放電媒体の進入量を制限することができる。なお、後述する好適な突出部の直径を規定する数式および第2の給電部材の直径の関係において、第1の給電導体の直径には、上記コイル部を含むものとする。
【0026】
(第2の給電導体について) 第2の給電導体は、少なくともサーメット部分を含んでいるとともに、電極構体の中でシール材と協働して透光性セラミックス放電容器をシールする。上記サーメット部分は、第2の給電部材の先端部に位置して第1の給電部材と後述するような態様で接合して、一体化された電極構体を形成するのに寄与する。また、所望によりサーメット部分を、シール材と協働して透光性セラミックス放電容器をシールするのに寄与させることができる。この場合、第2の給電部材の全体をサーメットにより形成することができる。
【0027】
なお、サーメットは、セラミックスと導電性耐火金属の混合焼結体であり、導電性を有し、かつ第1の給電部材の耐火性金属およびセラミックスのそれぞれの熱膨張率の中間に位置する熱膨張率を有している。セラミックスとしては、透光性セラミックス放電容器を構成しているセラミックスと同質または近似の組成であるのがよい。例えば、透光性セラミックス放電容器が透光性アルミナセラミックスからなる場合には、アルミナセラミックスを用いるのが好ましい。この場合、導電性耐火金属としては、モリブデンを用いるのが好ましい。
【0028】
また、第2の給電導体は、透光性セラミックス放電容器をシールするための手段としてサーメット部分とは別の構成を備えていることを許容する。サーメット部分とは別の構成としては、熱膨張率がサーメットのそれよりさらに透光性セラミックス放電容器のセラミックスの熱膨張率に近似したものである材料であるのが好ましい。例えば、透光性セラミックス放電容器を構成するセラミックスの種類に応じてニオブ(Nb)、タンタル(Ta)および白金(Pt)などのグループから選択して用いることができる。なお、透光性セラミックス放電容器が透光性アルミナセラミックスからなる場合にはニオブが好適である。この場合、ニオブは、サーメット部分より第2の給電部材の基端側に位置する。なお、サーメットとニオブは突合せ溶接などの既知の接合手段を用いて接合することができる。
【0029】
さらに、第2の給電部材は、その直径が第1の給電部材のそれとほぼ同じになっている。
【0030】
(第1および第2の給電部材間の接合について) 第1および第2の給電部材間における接合の態様は、次のとおりである。すなわち、第1の給電部材の基端部から突出した第1の給電部材の直径よりも小径の突出部の周囲を第2の給電部材におけるサーメット部分の先端が包囲した状態で第1の給電部材と第2の給電部材とが接合している。このような態様を実現するための電極構体の製造方法は、本発明において特段限定されないが、好適には以下の製造方法により実現することができる。
【0031】
第1の給電部材における突出部の先端を第2の給電部材の先端に適度の圧力を作用させて当接しながら適当な加熱手段を用いて上記当接部近傍をサーメット部分の溶融温度以上に加熱する。なお、サーメットの溶融温度は、突出部を形成している耐ハロゲン性金属のそれより低いので、接合部を加熱すると、やがてサーメット部分が溶融しだす。しかし、突出部を形成している耐ハロゲン性金属は溶融温度がさらに高いので、軟化していない。
【0032】
サーメット部分が溶融すると、突出部が外部からそこに作用している圧力により押し込まれてサーメット部分の先端部に入り込むか、溶融したサーメットが突出部の周囲に流れ込むか、あるいはそれらが同時的に進行する。その結果、突出部の周囲をサーメット部分の先端が包囲するので、加熱を停止して、サーメットが固化すれば、第1および第2の給電部材が以下に説明するような態様で突合せ溶接される。
【0033】
そうして、第1の給電部材の基端と第2の給電部材のサーメット部分の先端が接合し、突出部の周囲はサーメットにより包囲され、その包囲部の外径が第1の給電部材の直径とほぼ同一になる。すなわち、見かけ上第1の給電部材の基端と第2の給電部材の先端が直接接合しているように見える程度となる。なお、本発明においては、上記包囲部の直径が第1の給電部材の直径よりいくらか小さくなっているような態様であってもよい。なぜなら、このような態様においても突出部の周囲をサーメット部分の先端が包囲することにより、その包囲部の直径が突出部のそれより大きくなって、所期の作用、効果を奏するからである。なお、上記の突合せ溶接を行うには既知の各種溶接手段を用いることができる。例えば、抵抗溶接、プラズマ溶接、TIG溶接などである。
【0034】
<シール材について> シール材は、高融点フリットガラスなどからなり、透光性セラミックス放電容器における小径筒部の開放端側の内面と、この領域に対向する第2の給電部材の部分との間に進入して透光性セラミックス放電容器を気密に封止する。この封止を行うには、一般的な方法として採用されているように、小径筒部の端部において、給電部材の周囲にシール材のペレットを施与して、加熱溶融させることができる。
【0035】
そうして、高温で溶融したシール材が小径筒部の内面と第2の給電部材との間に形成されるわずかな隙間に進入して固化するので、シールが形成される。なお、シール材は、第2の給電部材のシールに機能する部位、例えばサーメット部分やニオブ部分を被覆するので、シールに機能する部位がニオブのように耐ハロゲンに劣る物質であっても問題ない。
【0036】
<放電媒体について> 本発明において、放電媒体の構成は特段限定されない。メタルハライドランプを得る場合には、金属ハロゲン化物および希ガスを少なくとも含んで構成されている。また、ランプ電圧形成用の媒体として水銀を含めることができる。ランプ電圧形成用の媒体として水銀を用いる場合、金属ハロゲン化物には主として発光金属のハロゲン化物が用いられる。
【0037】
また、ランプ電圧形成用の媒体として水銀を用いないで、いわゆる水銀フリーにする場合には、金属ハロゲン化物に発光金属のハロゲン化物に加えて、蒸気圧が高くて可視光領域の発光が少ない金属、例えば亜鉛(Zn)やアルミニウム(Al)などのハロゲン化物を水銀に代えて封入することができる。
【0038】
発光金属のハロゲン化物の好ましい一態様としては、ナトリウム(Na)およびタリウム(Tl)のハロゲン化物の少なくとも一種ならびに希土類金属のハロゲン化物を含むことができる。この態様におけるさらに好ましい形態としては、ナトリウム(Na)、タリウム(Tl)およびツリウム(Tm)のハロゲン化物を発光金属ハロゲン化物の主成分として含むことである。この場合、Na、TlおよびTmのハロゲン化物の封入比率については比較的自由に設定することができる。
【0039】
また、金属ハロゲン化物としてカルシウム(Ca)ハロゲン化物を上記発光金属またはその他の発光金属のハロゲン化物と一緒に封入することができる。この場合の封入比率は、1〜40質量%とする。カルシウム(Ca)ハロゲン化物は、これを添加することにより、赤および青の色度の調整に効果的に作用する。なお、Caに加えるか、代えてインジウム(In)、リチウム(Li)およびルビジウム(Rb)のいずれか一種または複数種のハロゲン化物を適量添加して発光の色度を調整することも許容される。
【0040】
始動ガスおよび緩衝ガスとして希ガスを封入する場合、特定の希ガスに限定されない。例えば、ネオンとアルゴンの混合ガスを封入することができる。一般には、8.0〜80kPa程度を封入することが好ましい。8.0kPa未満では、パッシェン曲線にもあるように放電開始が困難となる。80kPa超では、始動電圧が高くなり、口金の耐圧を超えてしまう。
【0041】
<定格電力について> 本発明において、高圧放電ランプの定格電力については特段限定されないが、好ましくは70W以上の範囲である。電極構体の製作が比較的容易で、視感も効果的であることから最適には100〜1000Wである。
【0042】
<本発明の実施に際しての好適な構成について>) 本発明においては、以下の構成の一部または全部を実施することにより、より好ましい効果を得ることができる。
【0043】
1.第1の給電部材に形成された突出部の軸方向の長さをLP(mm)としたとき、長さLPが数式0.03≦LP≦1.0を満足するように構成する。
【0044】
上記数式の範囲内であれば、第1および第2の給電部材間の接合が良好に得られ、突出部の周囲を包囲するサーメット部分の先端の外径が第1の給電部材の外径とほぼ同等になり、より一層導通が良好で、かつ高圧放電ランプの発光の色特性が安定する。なお、より一層好適には0.05≦LP≦0.5である。この範囲であれば、第2の給電部材を溶融して、第1の給電部材と同径にする溶接条件を容易に設定でき、溶接時の歩留まりをさらに向上させることができる。
【0045】
これに対して、突出部の突出長さLPが0.03mm未満であると、次の問題が生じやすくなる。すなわち、第1の給電部材の突出部と第2の給電部材のサーメット部分とを突合せて接合する際に、突出部の周囲を包囲したサーメットの外径が第1の給電部材の外径より大きくなりやすくなる。このようになると、電極構体を小径筒部内に挿入できなくなる。
【0046】
また、突出部の突出長さLPが1.0mmを超えると、次の問題が生じやすくなる。すなわち、突出部の周囲を包囲するサーメットの先端の直径が小さくなるか、サーメットで包囲されない部分が形成される。その結果、上記先端または突出部の周囲に形成される空隙が大きくなる。空隙が大きすぎると、特許文献1における前述したのと同様な問題が発生しやすくなる。
【0047】
2.第1の給電部材における突出部の直径をd1とし、基端部の直径をD1としたとき、比d1/D1が数式0.3≦d1/D1≦0.95を満足するように構成する。
【0048】
上記数式の範囲内であれば、加えて電極構体の曲げ強度を大きくすることができる。なお、より一層好適には0.5≦d1/D1≦0.8である。この範囲であれば、溶接条件を容易に設定でき、溶接時の歩留まりをさらに向上させることができる。
【0049】
これに対して、比d1/D1が0.3未満であると、突出部の直径が小さくなりすぎて電極構体の曲げ強度が小さくなる。
【0050】
また、比d1/D1が0.95を超えると、第1および第2の給電部材間の接合が困難になり、曲げ強度が低下するとともに、接合部に導通不良が生じやすくなる。
【0051】
3.第1の給電部材に接合する第2の給電部材におけるサーメット部分の長さをLCとし、電極部材と第1の給電部材の長さとの和をLESとしたとき、比LC/LESが数式0.1≦LC/LES≦0.44を満足するように構成する。
【0052】
第2の給電部材がサーメット部分とシール部分、例えばニオブ部分とを直列関係に含む構成において、上記数式の範囲内であれば、第1および第2の給電部材間の溶接により突出部の周囲をサーメット部分の先端が包囲しやすくなる。その結果、上記溶接が容易、かつ確実になる。なお、より一層好適には0.1≦LC/LES≦0.40である。この範囲であれば、加えてサーメットに吸着された不純ガスが放出してランプ特性が低下するのを抑制できるので好都合である。
【0053】
これに対して、比LC/LESが0.1未満であると、第1および第2の給電部材間の溶接が困難であるばかりか、サーメット部分の質量が少なくなって突出部の周囲をサーメット部分の先端で包囲するのが困難になる。
【0054】
また、比LC/LESが0.44を超えると、第2の給電部材が長くなり、熱容量も大きくなることから、第2の給電部材の全長に占める割合が大きいと、サーメットに吸着された不純ガスが多くなり、高圧放電ランプの特性が低下させる要因になる。
【0055】
4.シール材の小径筒部内における放電側の先端と第1および第2の給電部材間の溶接点との距離が4.5mm以下であるように構成する。なお、上記溶接点は、第1の給電部材の基端と第2の給電部材におけるサーメット部分の先端との接合部である。
【0056】
上記の範囲内であれば、加えていわゆるキャピラリーの長さを所定値範囲とすることができる。
【0057】
これに対して、上記距離が4.5mmを超えると、キャピラリーの長さを所定値範囲にするのが困難になる。
【0058】
5.透光性セラミックス放電容器の小径筒部の内部に進入しているシール材の放電空間側の表面と第1の給電部材および第2の給電部材の溶接部との間の距離をLSとしたとき、距離LSが4.5mm以下であるように構成する。
【0059】
距離LSが上記の範囲内であれば、始動時のグロー放電によって溶接部が損傷して電極構体が上記溶接部で折損して高圧放電ランプが短寿命になるのを回避しやすくなる。
【0060】
これに対して、距離LSが4.5mmを超えると、始動時のグロー放電によって溶接部が損傷して電極構体が上記溶接部で折損して高圧放電ランプが短寿命になりやすくなる。また、上記溶接部が高温に晒され、そのヒートサイクルにより溶接部が折損しやすくなる。
【0061】
6.透光性セラミックス放電容器を包囲する外管を具備するように構成する。
【0062】
外管は、その内部に発光管を気密に収納させるための手段である。外管内雰囲気として、真空または不活性ガス、例えば窒素(N)やアルゴン(Ar)などを封入することができる。
【0063】
外管の材質としては、硬質ガラス、半硬質ガラスおよび石英ガラスなどが一般である。しかし、要すれば、発光管と同じ透光性セラミックス製の外管であってもよい。
【0064】
また、外管には常法にしたがって口金などを装着し、また内部に収納する発光管を支持するための支持枠などを適宜配設することが許容される。
【発明の効果】
【0065】
本発明によれば、耐ハロゲン性金属の軸部、この軸部の周囲に形成したコイル部および軸部の基端から軸方向に突出する第1の給電部材の直径よりも小径の突出部を備えた第1の給電部材と、サーメット部分を備えた第2の給電部材とが接合した一対の電極構体を具備し、第1の給電部材と第2の給電部材のサーメット部分との間の上記接合を突合せ溶接により形成する場合には、見かけ上第1の給電部材の基端と第2の給電部材の先端が直接接合しているように見え、サーメット部分の先端が第1の給電部材の突出部の周囲を包囲するとともに先端の外径が第1の給電部材の外径とほぼ同等で良好に接合した高圧放電ランプを提供することができる。また、第1の給電部材の突出部を所定の態様とすることによって、所要の接合強度が得られるとともに発光の色特性が安定する高圧放電ランプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0067】
図1ないし図3は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第1の形態を示し、図1は一部切欠正面図、図2(a)は発光管の拡大断面図、(b)は(a)の○で囲んだ部分をさらに拡大して示す要部拡大断面図、図3(a)は電極構体の分解正面図、(b)は同じく一部断面正面図である。
【0068】
本形態において、高圧放電ランプは、400W形であり、発光管IT、外管OT、シュラウドガラスSG、支持部材SF、UVエンハンサUVE、ゲッタGa、Gbおよび口金Bを具備している。
【0069】
発光管ITは、図2に示すように、透光性セラミックス放電容器1、一対の電極構体EM、EM、一対のシール材5、5および透光性セラミックス放電容器1の内部に封入された放電媒体を備えている。
【0070】
透光性セラミックス放電容器1は、図2にその詳細を示すように、包囲部1aおよび包囲部1aの両端に連通して配設された一対の小径筒部1b、1bを備え、内部に放電空間1cを有している。そして、包囲部1aおよび一対の小径筒部1b、1bは、鋳込み成形により一体化されている。
【0071】
包囲部1aは、2つの球体が、その一部が互いに重なるように軸方向に離間して両端部の半球状の部分を形成し、半球状の部分の間を直線で結んでなるほぼ俵形の形状をなしている。
【0072】
一対の小径筒部1b、1bは、全体としてそれぞれ細長いパイプ状をなしている。そして、小径筒部1bの中心部には管軸方向に貫通して包囲部1a内に連通する細長い孔が形成されている。なお、本形態において、上記細長い孔は、その内径が一定である。
【0073】
一対の電極構体EM、EMは、図3に示すようにそれぞれ直列に接続した電極部材2、第1の給電部材3および第2の給電部材4を備えて構成されている。そして、透光性セラミックス放電容器1の一対の小径筒部1b、1bの内部に挿通している。
【0074】
電極部材2は、軸部2aおよびコイル部2bからなり、透光性セラミックス放電容器1の包囲部1aの内部に形成された放電空間1cに臨んでいる。軸部2aは、タングステン棒からなる。コイル部2bは、タングステン細線を軸部2aの周囲に数ターン密巻して形成されている。そうして、軸部2aの先端は、コイル部2bの先端面から少し突出している。
【0075】
第1の給電部材3は、耐ハロゲン性金属軸3a、コイル部3bおよび突出部3cからなる。耐ハロゲン性金属軸3aは、その先端部が電極部材2に突合せ溶接により接続し、また基端部から軸方向へ突出した小径の突出部3cを有している。コイル部3bは、耐ハロゲン性金属の細線を耐ハロゲン性金属軸3aの周囲に巻回して形成されている。また、第1の給電部材3におけるコイル部3bの外周面とこれに対向する小径筒部1bの内面との間にわずかな隙間が形成されている。突出部3cは、耐ハロゲン性金属軸3aの基端から軸方向へ延在して形成されている。また、突出部3cは、耐ハロゲン性金属軸3aの外径より小さな直径を有している。
【0076】
第2の給電部材4は、先端側のサーメット部分4aおよび基端側のニオブ部分4bを突合せ溶接して備えている。サーメット部分4aは、サーメットの棒状部からなり、その先端4a1が第1の給電部材3の基端から突出して形成された突出部3cの周囲を包囲している。ニオブ部分4bは、ニオブの棒状体からなり、その基端部が小径筒部1bの開放端部を通過して透光性セラミックス放電容器1から外部へ延在している。
【0077】
一対のシール材5、5は、それぞれDy−SiO−Alからなるフリットガラスと称されるセラミックス封止用コンパウンドを加熱して溶融し、固化することにより形成されている。そうして、一対のシール材5、5は、透光性セラミックス放電容器1の小径筒部1b、1bの開放端側の部分と、これに対向する第2の給電部材4のニオブ部分4bの全体およびサーメット部分4aの基端部の周囲に介在して透光性セラミックス放電容器1を気密に封止していて、いわゆる給電部材挿入封止構造を提供する。
【0078】
そうして、一対の第2の給電部材4、4のニオブ部分4bは、シール材5により被覆されるので、透光性セラミックス放電容器1の小径筒部1b、1b内に露出しない。また、一対の電極構体EM、EMは、シール材5により透光性セラミックス放電容器1の内部の所定位置に固定して支持されている。
【0079】
なお、シール材5を形成するには、常法にしたがうことができ、まず透光性放電容器1を縦位置にセットする。次に、セラミックス封止用コンパウンドのリング状フリットガラス(図示しない。)を、そのとき上側に位置して封止しようとする例えば小径筒部1b側において、ニオブ部分4bの外部露出部に挿通させてから、小径筒部1bの端面上に載置させ、リング状ペレットを加熱して溶融させる。
【0080】
そうすれば、溶融したシール材5が第2の給電部材4のニオブ部分4bと小径筒部1bの内面との間のわずかな隙間に進入して固化する。そして、シール材5は、第2の給電部材4におけるニオブ部分4bの小径筒部1b内に挿入されている部分の全体およびサーメット部分4aの基端側の一部を被覆して透光性セラミックス放電容器1の一端側をシールする。
【0081】
次に、透光性セラミックス放電容器1を180°反転して、他方の小径筒部1b側についても上記と同様の手順でシール材5を形成して透光性セラミックス放電容器1の他端側をシールする。なお、後者の封止の前に、後述する放電媒体が透光性の内部に封入される。
【0082】
放電媒体は、一例として希ガス、金属ハロゲン化物および水銀からなり、透光性セラミックス放電容器1内に封入されている。なお、金属ハロゲン化物および水銀は、蒸発する分より過剰に封入されているので、その一部が点灯時に小径筒部1b、1b内に形成されるわずかな隙間内に液相状態で滞留する。そして、点灯中下側となる例えば小径筒部1b内に液相状態で滞留している放電媒体の表層部付近に最冷部が形成される。ハロゲン化金属は、いずれも主として発光金属のハロゲン化物であり、例えばNaI、TlI、InIおよびTmIからなる。
【0083】
外管OTは、図1に示すように、硬質ガラスからなるBT形バルブを用いている。そして、内部に発光管IT、シュラウドガラスSGおよび支持部材SFなどの部材を所定の位置に収納している。また、外管OTは、図1において下部に位置するネック部にフレアステム6を封着して備えている。フレアステム6は、一対の内部導入線7a、7bを外管OT内へ気密に突出させて備えている。
【0084】
発光管ITは、図1において左側の第2の給電部材4が接続導体8を介して内部導入線7aに接続している。また、発光管ITは、右側の第2の給電部材4が、接続導体9を介して内部導入線7bに接続している。
【0085】
シュラウドガラスSGは、石英ガラス製の円筒体からなり、発光管ITの周囲を離間状態にして包囲するとともに、後述する支持プレート12a、12bを介して発光管ITを支持部材SFに支持させている。支持爪10は、支持プレート12a、12bを支持部材SFに固定する。
【0086】
支持部材SFは、支持枠11、一対の支持プレート12a、12bおよび一対のスプリング片13、13からなる。支持枠11は、ステンレス鋼棒を縦長の変形ロ字形に屈曲し、内部導入線7aに接続している。一対の支持プレート12a、12bは、ステンレス鋼板をほぼ円盤状に形成してなり、周縁に形成した係止爪を利用してシュラウドガラスSGの左右両端面を左右から挟持し、かつ支持爪10を介して支持枠11に固定している。また、一対の支持プレート12a、12bの中央部には通孔が形成されており、透光性セラミックス放電容器1の一対の小径筒部1b、1bを上記通孔に挿通させることにより、発光管ITを外管OTの管軸位置に定置しているとともに、発光管ITを主としてその管軸に直交する方向に支持している。一対のスプリング片13、13は、支持枠11の図1において左側部において、上下に分かれて溶接されていて、外管OTの頭部内面に弾性的に接触することにより、支持枠11の上部を外管OTの頭部内面に対して弾性的に支持する。
【0087】
以上から明らかなように、発光管支持部材SFは、発光管ITおよびシュラウドガラスSGを外管OTに対して所定位置に機械的に支持している。
【0088】
UVエンハンサUVEは、高圧放電ランプの始動に先立って作動して紫外線を放射して発光管ITを照射することで、高圧放電ランプの発光管IT内の電子放射を促進して高圧放電ランプの始動を容易にする手段である。そして、原理的には既知であるので、詳細構造については図示を省略するが、気密容器、導入線、内部電極、放電媒体および外部電極を具備して構成されている。気密容器は、石英ガラスなどの紫外線透過性ガラス製で、内部に細長い放電空間が形成されている。導入線は、モリブデンからなり、先端が後述する内部電極に溶接し、図1に示すように、基端が発光管支持部材SFに溶接され、したがって支持部材SFを介して内部導入線7aに接続している。上記内部電極は、モリブデン製で板状をなしていて、気密容器の放電空間内に封装されている。放電媒体は、アルゴン約1.3kPaからなり、気密容器の内部に封入されている。上記外部電極は、外径0.4mmのモリブデン線からなり、気密容器の外周に密着して5ターンほど巻き付けられているとともに、導体14を介して接続導体9に接続している。以上から明らかなように、UVエンハンサUVEは、発光管ITに並列接続している。
【0089】
ゲッタGaは、発光管支持部材SFおよび接続導体9間に接続してフレアステム6の近傍に位置するイニシャルゲッタである。ゲッタGbは、発光管支持部材SFの左側部に支持されたパフォーマンスゲッタである。
【0090】
口金Bは、E39形ねじ口金からなり、外管OTのネック部に装着されていて、前記一対の外部導入線が接続している。
【実施例1】
【0091】
図1ないし図3に示す定格電力400Wの高圧放電ランプ
透光性セラミックス放電容器:透光性アルミナセラミックス製、包囲部の最大内径20mm、
最大外径22mm、小径筒部の内径1.5mm、外径3.5mm
電極構体 :電極部材;軸部が径0.75mmのW棒、コイル部が直径0.3mm
のW細線を4ターン密巻き
第1の給電部材;耐ハロゲン性金属軸が径0.7mmのMo棒、
コイル部が直径0.35mmのMo細線でコイル径1.4mm、
突出部がMoで長さ0.15mm
第2の給電部材;サーメット部分がMo-Al2O3で外径1.4mm、
長さ4mm、ニオブ部分が外径1.4mmのNb棒
電極間距離;19mm
放電媒体 :NaI-TlI-InI3-希土類金属ヨウ化物12mg+Hg+Ar約20kPa
管壁負荷 :25〜29W/cm2

以下、本発明の高圧放電ランプを実施するための他の形態について説明する。各形態を示すそれぞれの図において、図1ないし図3に示す第1の形態と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0092】
図4および図5は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第2の形態を示し、図4は発光管の要部断面図、図5(a)は電極構体の分解正面図、(b)は同じく要部断面正面図である。
【0093】
本形態において、電極構体EMは、電極部材2の軸部2aおよび第1の給電部材3の耐ハロゲン性金属軸3aが単一のタングステン棒により一体に形成されているとともに、第1の給電部材3のコイル部3bがタングステン細線によって構成されている。その構成は第1の形態とほぼ同様である。
【0094】
また、図4中、距離LCは第2の給電部材4のサーメット部分の長さ、距離LESは電極部材2および第1の給電部材3の突出部3cを含まない長さ、距離LSはシール材5の小径筒部1b内の表面からサーメット部分4aおよび第1の給電部材3の溶接部までの長さを示している。
【実施例2】
【0095】
図4および図5に示す定格電力250Wの高圧放電ランプである。
透光性セラミックス放電容器:透光性アルミナセラミックス製、包囲部の最大内径14.0mm、
最大外径16.6mm、小径筒部の内径1.2mm、外径3.0mm
電極構体 :電極部材;軸部が径0.6mmのW棒、コイル部が直径0.2mm
のW細線を4ターン密巻き
第1の給電部材;電極部材の軸部と一体の径0.6mmのW棒、
コイル部が直径0.2mmのW細線でコイル径1.0mm、
突出部がMoでW棒の基端に溶接されていて、長さ0.15mm
第2の給電部材;サーメット部分がMo-Al2O3で外径1.0mm、
長さ4mm、ニオブ部分が外径1.0mmのNb棒
電極間距離;15mm
放電媒体 :NaI-TlI-InI3-希土類金属ヨウ化物6mg+Hg+Ar約20kPa
管壁負荷 :22〜28W/cm2

図6は、本発明の高圧放電ランプにおける寿命中の相関色温度の変化を比較例のそれとともに示す折れ線グラフである。図において、横軸は点灯時間(時間)を、縦軸は相関色温度(K)を、それぞれ示す。図中の曲線Aは本発明、曲線Bは比較例、をそれぞれ示している。なお、測定に供した高圧放電ランプは、実施例1の定格電力400Wのランプである。また、比較例は、第1の給電部材における突出部の長さを0.5mmにして、第1の給電部材の基端と、第2の給電部材の先端との間に隙間が生じている以外、本発明と同一の仕様である。本発明および比較例のデータは、ランプ5灯の平均値である。
【0096】
図から理解できるように、曲線Aに示す本発明の場合、寿命中の相関色温度の変化が、曲線Bに示す比較例のそれより顕著に少ない。
【0097】
図7は、本発明の高圧放電ランプにおいて第1の給電部材の比d1/D1を変化させた場合の電極構体の曲げ強度の変化を示す点グラフである。図において、横軸はd1/D1を、縦軸は曲げ強度(kgf)を、それぞれ示す。図中の点CはD1が1.4mm、点DはD1が1.0mm、の場合をそれぞれ示している。
【0098】
図から理解できるように、比d1/D1が0.3〜0.95の範囲内において、特に良好な曲げ強度が得られる。なお、上記曲げ強度の測定は、支点間の距離を6mmとし、市販のフォースゲージを用いて行った。
【0099】
図8は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第3の形態における電極構体を示す要部断面正面図である。
【0100】
本形態において、電極構体EMは、第2の給電部材4がサーメット部分4aのみにより構成されている。すなわち、サーメット部分4aが長くて、その先端4a1が第1の給電部材3から軸方向に突出する突出部の周囲を包囲し、中間部でシール材によりシールされて透光性セラミックス放電容器1の所定位置に支持される。
【0101】
また、電極部材2の軸部2aおよび第1の給電部材3の耐ハロゲン性金属軸3aが単一のタングステン棒からなるとともに、第1の給電部材3のコイル部3bがタングステン細線によって構成されている。
【0102】
図9は、本発明の高圧放電ランプを実施するための第4の形態を示す要部断面図である。
【0103】
本形態において、電極構体EMの構成は、第1の形態と同様であるが、透光性セラミックス放電容器1が焼き嵌め構造になっている。すなわち、透光性セラミックス放電容器1は、複数の構成部品を焼き嵌めて形成されており、包囲部1aが円筒体1a1および円筒体1a1の両端開口部に焼き嵌めされた一対の端板1a2、1a2から構成されている。また、一対の小径筒部1b、1bがそれぞれ端板1a2の中心部に形成された透孔に一端が焼き嵌めされた小径円筒体1b1により構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の高圧放電ランプを実施するための第1の形態を示す一部切欠正面図
【図2】同じく(a)は発光管の拡大断面図、(b)は(a)の○で囲んだ部分をさらに拡大して示す要部拡大断面図
【図3】同じく(a)は電極構体の分解正面図、(b)は同じく一部断面正面図
【図4】本発明の高圧放電ランプを実施するための第2の形態を示す発光管の要部断面図
【図5】同じく(a)は分解正面図、同じく(b)は要部断面正面図
【図6】折れ線グラフ
【図7】本発明の高圧放電ランプにおいて第1の給電部材の比d1/D1を変化させた場合の電極構体の曲げ強度の変化を示す点グラフ
【図8】本発明の高圧放電ランプを実施するための第3の形態における電極構体を示す要部断面正面図
【図9】本発明の高圧放電ランプを実施するための第4の形態を示す要部断面図
【図10】従来の高圧放電ランプにおける(a)は電極構体の分解正面図、(b)は同じく一部断面正面図
【符号の説明】
【0105】
EM…電極構体、2…電極部材、2a…軸部、2b…コイル部、3…第1の給電部材、3a…耐ハロゲン性金属軸、3a1…突出部、3b…コイル部、4…第2の給電部材、4a…サーメット部分、4a1…先端、4b…ニオブ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を包囲する包囲部および包囲部の両端に配置され包囲部より内径が小さい小径筒部を備えた透光性セラミック放電容器と;
電極部材、耐ハロゲン性金属の軸部およびこの軸部の周囲に形成したコイル部を備えた第1の給電部材およびサーメット部分を含み、第1の給電部材の直径とほぼ同じ直径の第2の給電部材を備え、かつ上記電極部材、第1および第2の給電部材が軸方向に上記の順に直列接続して透光性セラミックス放電容器の小径筒部に挿通し、電極部材は先端が放電空間に臨み、第1の給電部材は透光性セラミックス放電容器の小径筒部の内面との間にわずかな隙間を形成しているとともにその基端部から第1の給電部材の直径よりも小径の突出部を軸方向に形成し、第2の給電部材はサーメット部分の先端が第1の給電部材の突出部の周囲を包囲するとともにその包囲部の外径が第1の給電部材の外径とほぼ同等で、第1の給電部材の基端と第2の給電部材の先端とが接合した一対の電極構体と;
電極構体の第2の給電部材と小径筒部の間に進入して透光性セラミック放電容器を気密にシールするシール材と;
セラミックス放電容器内に封入された放電媒体と;
を具備していることを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項2】
第1の給電部材は、その突出部の軸方向の長さが0.03〜1.0mmであることを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
第1の給電部材は、その突出部の直径d1と基端部の直径D1との比d1/D1が数式0.3≦d1/D1≦0.95を満足することを特徴とする請求項1または2記載の高圧放電ランプ。
【請求項4】
第2の給電部材のサーメット部分の長さLCと電極部材および第1の給電部材の長さの和LESとの比LC/LESが数式0.1≦LC/LES≦0.44を満足することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の高圧放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−34980(P2011−34980A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247544(P2010−247544)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【分割の表示】特願2005−255594(P2005−255594)の分割
【原出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(301010951)オスラム・メルコ・東芝ライティング株式会社 (37)
【Fターム(参考)】