説明

高圧放電ランプ

【課題】従来の高圧放電ランプと比較して、点灯後から明るくなるまでの時間が格段に早く、また、より低い電圧でグロー放電を開始することにより、点灯電圧の低い高圧放電ランプの提供。
【解決手段】発光管内に封入された放電媒体に接触する部分の少なくとも一部が、マイエナイト型化合物からなる高圧放電ランプ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高圧放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧放電ランプ(高輝度放電ランプ、HIDランプ等とも呼ばれる。)は発光部が小さく、大光束、高効率、長寿命などの特徴を備えており、体育館や工場の高天井、道路塔やグランドの照明、自動車用のヘッドライトやプロジェクタ用の光源等に使用されている。
【0003】
高圧放電ランプとして、例えば特許文献1には、金属箔を特定形状とした放電灯バルブ構造について記載されている。また、例えば特許文献2には、陽極側の封着金属箔の長さを所定範囲に規定することにより、陽極側の電流導入導体と封着金属箔の温度を低減してその部分の石英ガラスのクラックを防止するメタルハライド放電ランプについて記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−255720号公報
【特許文献2】特開2008−77891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような高圧放電ランプはランプ内の圧力を高圧状態で使用するために、点灯後のランプ内の圧力が高圧になるまで時間がかかり、電球や蛍光ランプのように点灯してすぐには明るくならない。
【0006】
また、より低い電圧でグロー放電を開始させることができれば、省力化を図ることができ、また、点灯回路を簡便で安価なものとすることができるので好ましい。
【0007】
従って本発明の目的は、従来の高圧放電ランプと比較して、点灯した後、グロー放電からアーク放電に移行するまでの時間、すなわち点灯後から明るくなるまでの時間が格段に早く、また、より低い電圧でグロー放電を開始するため、点灯電圧が低い、高圧放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討を重ね、発光管内の特定個所がマイエナイト型化合物からなる高圧放電ランプが、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は次の(i)〜(iii)である。
(i)電極または電極と導通された部分であって、かつ発光管内に封入された放電媒体に接触する部分の少なくとも一部が、マイエナイト型化合物からなる高圧放電ランプ。
(ii)上記(i)の高圧放電ランプであって、前記マイエナイト型化合物として電子密度が1.0×1015cm-3以上のマイエナイト型化合物を使用して高圧放電ランプを構成したことを特徴とする高圧放電ランプ。
(iii)上記(i)の高圧放電ランプであって、前記マイエナイト型化合物として電子密度が1.0×1015cm-3未満のマイエナイト型化合物を使用して高圧放電ランプを構成したことを特徴とする高圧放電ランプ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の高圧放電ランプと比較して、点灯後から明るくなるまでの時間が格段に早く、また、より低い電圧でグロー放電を開始することにより、点灯電圧が低い高圧放電ランプを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明について説明する。
本発明は、電極または電極と導通された部分であって、発光管内に封入された放電媒体に接触する部分の少なくとも一部が、マイエナイト型化合物からなる高圧放電ランプである。
このような高圧放電ランプを、以下では「本発明のランプ」ともいう。
【0012】
本発明のランプには、水銀が発光する高圧水銀ランプ、各種金属が発光するメタルハライドランプ、ナトリウムが発光する高圧ナトリウムランプが含まれる。
【0013】
以下、図面を参照して、本発明のランプの形態について説明する。
図1および図2は、本発明のランプの好ましい形態を示す。図1は正面図、図2は発光管の拡大平面図である。
【0014】
本発明のランプ1は、図1および図2に示すように、発光管10を内部に収納する外管20、絶縁チューブ22および口金24を備えている。そして、発光管10は、陽極12A、陰極12B、一対の金属箔14A、14B、一対のリード線16A、16Bおよび放電媒体18を備えている。
【0015】
<発光管>
本発明のランプ1が備える発光管10について説明する。
発光管10は、発光部10cおよび一対の封止部10a、10bを備えている。
発光部10cは中空で、その中空の部分が放電空間10dとなる。放電空間10dは放電媒体18で満たされている。
一対の封止部10a、10bは発光部10cに隣接し一体となっており、発光部10cの管軸方向の両端に延在している。
【0016】
また、封止部10a、10bは、発光部10cを封止するとともに、後述する陽極12Aおよび陰極12Bの基端部が埋設されている。これを実現するために、一対の封止部10a、10bには後述する金属箔14A、14Bが気密に埋設されている。そして、金属箔14Aおよび金属箔14Bの各々における発光部10c側の一端部に、陽極12Aおよび陰極12Bの軸部の基端部が接続され、他端部に後述するリード線16Aおよびリード線16Bが接続されている。このような構成によって、図示しない好ましくは電子化された点灯回路から陽極12Aおよび陰極12B間に給電できる。上記の金属箔14A、14Bと陽極12Aおよび陰極12Bならびにリード線16A、16Bとの接続は、例えば溶接により行うことができる。
【0017】
発光管10の形状は特に限定されないが、発光管10における発光部10cの外面は、管軸方向の中央部が最も大きく両端方向に順次小さくなっていく形状となっている。例えば楕円球状や紡錘状などが挙げられる。また、封止部10a、10bは円筒状であることが好ましい。
放電空間10dの形状は特に限定されないが、略円柱状、球形または楕円球形などとすることができる。
【0018】
発光部10cの管軸方向の長さは特に限定されないが、7.4〜8.2mmが好ましい。
放電空間10dの大きさ等は特に限定されないが、内径は2.2〜2.9mmが好ましく、外径は5.6〜6.9mmが好ましく、肉厚は1.7〜2.5mmが好ましい。また、放電空間10dの内容積は特に限定されないが、本発明のランプがメタルハライドランプの場合、0.1cc以下であることが好ましく0.05cc以下であることがより好ましい。
【0019】
発光管10は、少なくとも発光部10cの外部へ発光を導出しようとする部位である導光部分が透光性を有することが好ましい。また、通常の高圧放電ランプの通常の作動温度に耐える程度の耐熱性を有することが好ましい。
発光管10が石英またはアルミナからなると、上記透光性および耐熱性を備えるので好ましい。また、発光管10における放電媒体18に接触する部分、例えば発光部10cの内面に、電極と導通したマイエナイト型化合物層を形成することが好ましい。例えば、発光部10c内面の陰極近傍に陰極と導通したマイエナイト型化合物の層を設けること、発光部10c内面の陽極近傍に陽極と導通したマイエナイト型化合物の層を設けること、前記陰極近傍と前記陽極近傍との両方に上記マイエナイト型化合物の層を設けること、などを採用できる。
マイエナイト型化合物については、後に詳細に説明する。
【0020】
<陰極および陽極>
陰極12Bは、陰極主部12Bxおよび陰極軸部12Byからなる。陰極主部12Bxは、陰極12Bの放電空間10dに露出し、放電媒体18に接する部分であり、先端部を含む。先端の形状は特に限定されないが、発熱しやすいので放熱しやすい構造であることが好ましい。例えば、球状や円柱状か、またはコイルを巻回して構成されているのが好ましい。
【0021】
陰極軸部12Byは、陰極12Bにおける陰極主部12Bx以外の部分であり、陰極12Bにおける中間部および基端部からなる。中間部は封止部10bに緩く支持され、基端部は金属箔14Bに接続されているので、封止部10bにクラックが生じ難いように比較的細く構成される。陰極軸部12Byの太さ等は特に限定されないが、断面直径0.25〜0.40mmが好ましい。
【0022】
陽極12Aも、上記の陰極12Bと同様の構成とすることができる。
【0023】
本発明のランプ1において陽極12Aおよび陰極12Bの材質は特に限定されず、例えばタングステンやレニウム等の耐火金属により形成することができるが、陰極12Bにおける陰極主部12Bxの少なくとも一部がマイエナイト型化合物からなることが好ましく、陰極主部12Bxにおける先端がマイエナイト型化合物からなることがより好ましい。また、陰極主部12Bxがマイエナイト型化合物からなることが好ましい。また、陰極12Bの全体がマイエナイト型化合物からなることが好ましい。陰極主部12Bxを耐火金属によって形成し、その表面のみをマイエナイト型化合物によって形成することも好ましい。また、陰極主部12Bxを、耐火金属に粒子状のマイエナイト型化合物を含有させた材料で形成することも好ましい。また、陰極表面をマイエナイト型化合物で構成する場合であって、陰極表面に耐火金属表面が存在しない場合、発光管を製造するに際してはマイエナイト型化合物として導電性マイエナイトを使用することがより好ましい。
マイエナイト型化合物については、後に詳細に説明する。
【0024】
陽極12Aおよび陰極12Bの陽極軸部12Ayおよび陰極軸部12Byの封止部10a、10bに含まれる部分の長さ、すなわち発光部10cと封止部10a、10bとの境界から金属箔14A、14Bの端までの長さは、3〜7mmの範囲であるのが好ましい。金属箔14A、14Bのクラックが生じ難くなるからである。
【0025】
<金属箔>
金属箔14Aは陽極12Aと接合されて発光部10cを封止するために封止部10aに気密に埋設される。金属箔14Bも同様に陰極12Bと接合されて封止部10bに気密に埋設される。
【0026】
金属箔14A、14Bの軸方向の長さは特に限定されないが、10〜19mm程度であることが好ましく、12〜16mmであることがより好ましい。封止部10a、10bにクラックが生じ難くなるからである。
金属箔14A、14Bの厚さは特に限定されないものの、50μm以下が好ましい。
【0027】
金属箔14A、14Bの材質は特に限定されないが、例えばモリブデン(Mo)またはレニウム−タングステン合金(Re−W)などを用いることができる。
【0028】
金属箔14A、14Bを封止部10a、10bに埋設する方法は特に限定されない。例えば減圧封止法、ピンチシール法などを単独で、または組み合わせて採用することができる。
一対の金属箔14A、14Bは、管軸方向の中間部がそれぞれの封止部10a、10bの材料(例えば石英やアルミナ)の溶融によって封止部10a、10bに密着することで発光管10を封止する。
【0029】
<リード線>
本発明にランプにおいてリード線16A、16Bは、その先端が発光管10の両端の封止部10a、10b内において金属箔14A、14Bの他端に溶接され、基端側が外部へ導出されている。
【0030】
図1において、発光管10から左方へ導出された陰極12B側のリード線16Bは、中間部が外管20に沿って折り返され、口金24内に導入されて側縁側に位置する一方の口金端子26に接続している。また、発光管10から右方へ導出された陽極12A側のリード線16Aは、封止管内を管軸に沿って延在して口金24内に導入されて中央側に位置する他方の口金端子(図示されていない。)に接続している。
【0031】
また、リード線16A、16Bの材質は特に限定されないが、例えばモリブデン、タングステン、Fe−Ni−Co合金などを用いることができる。
【0032】
<放電媒体>
本発明のランプ1において放電媒体18は不活性ガスおよび発光材料を含む。
不活性ガスは、始動ガスおよび緩衝ガスとして作用するガスであれば特に限定されず、例えばヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)およびラドン(Rn)からなる群から選択される少なくとも一種を用いることができる。
【0033】
発光材料の種類は、本発明のランプの種類によって異なる。
例えば本発明のランプがナトリウムランプの場合、発光材料としてナトリウムを用いる。また、本発明のランプが水銀ランプの場合、発光材料として水銀を用いる。
また、本発明のランプがメタルハライドランプの場合、発光材料として金属ハライドを用いることができ、さらに水銀を用いてもよい。
【0034】
ここで金属ハライドについて説明する。
金属ハライドは可視光を発光するものであり、ナトリウム、スカンジウムおよび希土類金属からなる群から選択された少なくとも1種のハロゲン化物である。
また、金属ハライドとして、さらにランプ電圧を形成するのに効果的な媒体であるハロゲン化物を含んでもよい。また、ここでハロゲン化物を構成するハロゲンの種類は限定されないが、ヨウ素が好ましい。ヨウ化物および臭化物のように異なるハロゲンの化合物を併用することもできる。
【0035】
本発明のランプが水銀を含まないメタルハライドランプの場合、不活性ガスを1気圧以上に封入することが好ましい。また、キセノンを7〜18気圧で封入すると、光色立ち上がり特性および光束立ち上がり特性が向上し好ましい。
【0036】
<外管>
本発明のランプ1は外管20を備える。外管20は、石英ガラスまたはハイシリケートガラスなどからなり、その内部に発光管10の少なくとも主要部を収納する。そして、発光管10から外部へ放射される紫外線を遮断し、機械的に保護し、かつ発光管10を手で触れることで人の指紋や脂肪が付いて失透の原因とならないようにしたり、あるいは発光管10を保温したりする。
また、外管20の内部は、その目的に応じて外気に対して気密に封止してもよいし、不活性ガスが封入されていてもよい。不活性ガスとして窒素を封入することが好ましい。
さらに、外管20の外面または内面に遮光膜を形成することもできる。
【0037】
外管20を形成する際は、その両端を発光管10の両端から管軸方向に延在する封止部10a、10bにガラス溶着させることによって外管20を発光管10で支持するように構成することが好ましい。外管20は両端の縮径部3が発光管10の封止部10a、10bにガラス溶着している。
【0038】
<絶縁チューブ>
本発明のランプ1は絶縁チューブ22を備える。絶縁チューブ22は、リード線16Bの発光管10に平行に延在している部位を被覆している。
絶縁チューブ22は耐熱性絶縁物からなる。例えばセラミックスからなることが好ましい。
【0039】
<口金>
本発明のランプ1は口金24を備える。口金24は、本発明のランプを図示しない点灯回路に接続したり、加えて機械的に支持したりする。
口金24は、発光管10の陽極12A側の封止部10aを、封止管を介して支持しているので、金属箔14Aが口金24に接近した位置に配置される。
また、金属箔14Aとリード線16Aとの接合部が口金24内に位置していると、冷却効果がさらに良好になり好ましい。
【0040】
<マイエナイト型化合物>
次にマイエナイト型化合物について説明する。
上記のように、本発明のランプ1は発光管10の放電空間10dの内部に封入された放電媒体18に接触する部分であって、かつ電極または電極と導通された部分の少なくとも一部がマイエナイト型化合物からなる。中でも、陰極12Bにおける放電媒体18に接触する部分(陰極主部12Bx)の少なくとも一部がマイエナイト型化合物からなることが好ましい。発光管中のマイエナイト型化合物は後述の導電性マイエナイトとなっていると考えられる。たとえ、導電性の低いまたは導電性のないマイエナイト型化合物を使用して発光管を製造しても、発光管中のマイエナイト型化合物は発光管の発光により導電性マイエナイトに変化すると考えられる。
【0041】
導電性を有するマイエナイト型化合物は、オージェ過程を経たイオン励起の二次電子放出特性、すなわちポテンシャル放出において優れた特性をもつので、低電圧放電中の二次電子放出係数が高い。すなわち、導電性を有するマイエナイト型化合物は電子放出特性、特には低電圧放電中のイオン励起の二次電子放出特性に優れているので、放電開始のための電圧を低減することによって、点灯回路を簡便で安価なものとして、始動性に優れた高圧放電ランプを作製できる。
また、熱電子放出においても、通常の金属電極と同程度に良好な熱電子放出特性を示すので、熱陰極型電子管の電極材料としても用いることができる。
特に、導電性を有するマイエナイトを放電空間の内部に配置すると、二次電子放出係数が高いので放電電圧がより低下するという効果も奏する。そして、高圧放電ランプが省電力化され、放電用の回路をより安価にできる。なお、後述の導電性マイエナイトの仕事関数は概略2eVであるので、ポテンシャル放出による二次電子放出係数が大きい。
【0042】
本発明においてマイエナイト型化合物とは、ケージ(籠)構造を有する12CaO・7Al23(以下「C12A7」ともいう。)およびC12A7と同等の結晶構造を有する化合物(同型化合物)である。
そして、そのケージの中に酸素イオンを包接しており、C12A7結晶格子の骨格と骨格により形成されるケージ構造が保持される範囲で、骨格またはケージ中の陽イオンまたは陰イオンの一部が置換された化合物であってもよい。このケージ中に包接されている酸素イオンを、通例に従い、以下ではフリー酸素イオンともいう。
また、本発明においてマイエナイト型化合物は、フリー酸素イオンの一部または全てが電子で置換され、または置換された電子の一部がさらに陰イオンで置換されたものであってもよい。また、このようにフリー酸素イオンの一部または全てが電子で置換されて、電子密度が1.0×1015cm-3以上となったものであることが好ましい。このような電子密度となったマイエナイト型化合物を「導電性マイエナイト」ともいう。また、電子密度が1.0×1015cm-3未満であるものを「非導電性マイエナイト」ともいう。
また、本発明においてマイエナイト型化合物は、Ca、AlおよびO(酸素)からなるC12A7結晶の結晶構造を有している限り、Ca、AlおよびOから選ばれる少なくとも1種の原子の一部ないし全部が他の原子や原子団に置換されていてもよい。例えばCaの一部はMg、Sr、Baなどの原子で置換されていてもよく、Alの一部はSi、Ge、Bなどで置換されていてもよい。前記マイエナイト型化合物が、12CaO・7Al23化合物、12SrO・7Al23化合物、これらの混晶化合物またはこれらの同型化合物であることが好ましい。また、フリー酸素原子は陰イオンに置換されていてもよい。陰イオンとしてはハロゲンイオン、水素陰イオン、酸素イオン、水酸イオンなどが挙げられる。
【0043】
前記マイエナイト型化合物として、具体的には下記の(1)〜(4)などの化合物が例示されるが、これらに限定されない。
(1)C12A7化合物の骨格のCaの一部がマグネシウムやストロンチウムに置換された混晶である、カルシウムマグネシウムアルミネート(Ca1-yMgy12Al1433やカルシウムストロンチウムアルミネートCa12-zSrzAl1433 。なお、yやzは0.1以下が好ましい。
(2)シリコン置換型マイエナイトであるCa12Al10Si435
(3)ケージ中のフリー酸素イオンがH-、H2-、H2-、O-、O2-、OH-、F-、Cl-、Br-、S2-またはAu-などの陰イオンによって置換された、例えば、Ca12Al1432:2OH-またはCa12Al1432:2F-。このようなマイエナイト型化合物は、耐熱性が高いため、400℃を超えるような封着などを必要とする場合に適している。
(4)陽イオンと陰イオンがともに置換された、例えばワダライトCa12Al10Si432:6Cl-
【0044】
導電性マイエナイトの電子密度は1.0×1015cm-3以上であるが、1.0×1019cm-3以上であることが好ましく、1.0×1021cm-3以上であることがより好ましい。二次電子放出能がより高くなり放電電圧がより低下するからである。また、電子密度が高すぎると、導電性マイエナイトの製造が煩雑となるので、7.0×1021cm-3以下であることが好ましく、4.6×1021cm-3以下であることがより好ましく、2.3×1021cm-3以下であることがさらに好ましい。
【0045】
導電性マイエナイトの電子密度は、電子スピン共鳴装置を用いて測定したスピン密度の測定値を意味する。ただし、ここでのスピン密度の測定値が1019cm-3を超えた場合は、導電性マイエナイトのケージ中の電子による光吸収の強度を分光光度計を用いて測定し、2.8eVでの吸収係数を求めた後、この吸収係数が電子密度に比例することを利用して、導電性マイエナイトの電子密度を定量することができる。また、導電性マイエナイトが粉末等であり、光度計によって透過スペクトルを測定し難い場合、積分球を使用して光拡散スペクトルを測定し、クベルカムンク法によって求めた値から導電性マイエナイトの電子密度を定量できる。
【0046】
本発明のランプにおけるマイエナイト型化合物からなる部分、例えば陰極主部におけるマイエナイト型化合物を含む部分やマイエナイト型化合物自体は、二次電子放出係数γが0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.2以上であることがさらに好ましい。二次電子が多いと放電媒体中で、放電媒体の分子または原子の電離が容易となり、放電開始電圧が低下されるからである。例えば放電ガスがXeを含む場合であると、Xeの励起によって生じた二次電子によって、より低い印加電圧で放電ガスが電離されるために、放電が生じてランプが点灯されるとともに、点灯直後からXeによる発光が得られるため、ランプの始動性が良好となる。
ここで、二次電子放出係数γはマイエナイト型化合物の電子密度を調整することで調整することができる。例えば電子密度を1.0×1019/cm3とすると、イオンのエネルギーを600eVとしたときに、Xeイオンの二次電子放出係数γを約0.15とすることができる。また、例えば電子密度を1.0×1021/cm3とすると、二次電子放出係数γを約0.18とすることができる。
【0047】
マイエナイト型化合物は、例えば、以下のように製造することができる。
初めに炭酸カルシウムと酸化アルミニウムとを、CaOおよびAl23の酸化物換算のモル比で12:7程度(例えば11.8:7.2〜12.2:6.8)となるように調合し、常温、常圧の空気中で1200〜1350℃程度の温度で6時間程度保持し、固相反応させた後室温まで冷却する。このようにしてマイエナイト型化合物を製造することができる。
【0048】
また、さらに、以下のような処理を行うことで非導電性マイエナイトから導電性マイエナイトを製造することができる。
上記のようにして得られた非導電性のマイエナイト型化合物の焼結物をタングステンカーバイド製遊星ミルなどを用いて粉砕した後、加圧成形してペレット状にし、再び1200〜1350℃に加熱して焼結体を得る。次に得られた焼結体をカーボン、金属チタン、金属カルシウム、金属アルミニウム等の粉末または破片状の還元剤と共に蓋付き容器に入れ、容器内を低酸素分圧に保った状態で、600〜1415℃に保持し、その後冷却すると導電性マイエナイト粒子を得ることができる。この温度が1415℃以下であるとマイエナイト型化合物が溶融し難く、安価な装置で処理できるので好ましい。600℃以上であると、非導電性マイエナイトのケージ中からフリー酸素イオンを引き抜く反応の速度が比較的速く、導電性マイエナイトを比較的早く得られるので好ましい。カーボン、金属チタン、金属カルシウム、金属アルミニウム等の還元剤からなる蓋付き容器(例えばカーボン製の蓋付き容器)に前記焼結体を入れて処理しても、同様に導電性マイエナイトを得ることができる。また、ここで容器内の酸素分圧を調整することで、得られる導電性マイエナイトの電子密度を調整することができる。
【0049】
また、非導電性のマイエナイト型化合物は、プラズマに暴露されると導電性マイエナイトに変化する。プラズマが非導電性マイエナイトの結晶体の表面に接触することより(すなわち、プラズマ処理により)、非導電性マイエナイトの結晶体の主に表面部分が導電性マイエナイトに変化する。したがって、プラズマ処理により、非導電性マイエナイトから導電性マイエナイトを製造できる。プラズマ処理の条件により導電性マイエナイトに変化する部分の表面からの深さが変化する。表面部分のみが導電性マイエナイトに変化したマイエナイト型化合物の結晶体は本発明の発光ランプの製造に使用することができる。
このようなプラズマとしては、放電ガス中で生成した放電プラズマを用いることが簡便なため好ましい。放電ガスとしては、前記放電媒体と同様に不活性ガスが使用でき、アルゴン、キセノン、ヘリウム、ネオンおよびクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも1種の希ガスが好ましい。アルゴン、キセノンまたはそれらの混合ガスがより好ましく、アルゴンがさらに好ましい。放電ガスは、他の不活性なガスと併用することもできる。
プラズマ処理としてはグロー放電により発生させたプラズマを用いた処理が好ましい。この場合の雰囲気圧力(放電ガスの圧力)としては、通常のグロー放電プラズマが発生する圧力、すなわち0.1〜1000Pa程度の圧力が好ましい。グロー放電を用いたプラズマ処理としては、例えばスパッタ装置を用いたプラズマ処理が挙げられる。スパッタ装置のターゲットに非導電性マイエナイトの結晶体を使用してスパッタ処理を行うことにより、発生したプラズマがターゲットである非導電性マイエナイトの結晶体に接触し、その表面が導電性マイエナイトに変化する。このようなプラズマ処理法では、非導電性マイエナイト中のフリー酸素イオンが、選択スパッタリングにより効果的に電子に置換される。
【0050】
本発明のランプの製造方法は特に限定されない。導電性または非導電性のマイエナイト型化合物からなる部分以外については、従来公知の方法で製造することができる。導電性または非導電性のマイエナイト型化合物からなる部分については、例えば、通常用いられるウェットプロセスによって、粉末状のマイエナイト型化合物を溶媒等と混合した後、スプレーコートやディップコートを用いて所望の前記箇所に塗布する方法を用いたり、真空蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、溶射などの物理蒸着法を用いてマイエナイト型化合物を所望の前記箇所に付ける。具体的には、例えば粉末状のマイエナイト型化合物およびバインダーからなるスラリーを調製し、ディップコートなどにより発光管の内壁に塗布した後、200〜800℃で20〜30分間保持する熱処理を行ってバインダーを除去することで、発光管内壁にマイエナイト型化合物を配置する。
【0051】
ここで粉末状のマイエナイト型化合物を得るためには、例えばマイエナイト型化合物を金属やセラミックスなどのハンマ、ローラまたはボールなどを用いて材料に機械的に圧縮およびせん断および摩擦力を加えて粉砕する。この際、タングステンカーバイドのボールを使った遊星ミルを用いると、マイエナイト型化合物の粗粒に異物が混入せず、50μm以下の粒径を持つ粗粒にすることが可能である。このようにして得られたマイエナイト型化合物は、ボールミルやジェットミルを用いて平均粒径20μm以下のさらに細かい粒子に粉砕することが可能である。これらの20μm以下の粒子を有機溶媒またはビヒクルと混合してスラリーまたはペーストを作製することも可能であるが、50μm以下に粗粉砕したマイエナイト型化合物を有機溶媒と混合してビーズ粉砕を行うと、より細かい、円換算径が5μm以下のマイエナイト型化合物粉末の分散した分散溶液が作製できる。ビーズ粉砕には、例えば酸化ジルコニウムビーズを用いることができる。また、上記粉砕時に溶媒として、炭素原子数が1もしくは2の水酸基を有する化合物である、例えばアルコール類、エーテルを使用した場合、マイエナイト型化合物がこれらと反応し、分解してしまうおそれがある。このためアルコール系またはエーテル系の溶媒としては、炭素数原子数3以上のものが好ましい。これらを用いると粉砕が容易に行えるのでこれらの溶媒を単独または混合して用いられる。
【0052】
粉末状のマイエナイト型化合物を、上記のようなウェットプロセスや物理蒸着法等の方法や、CVD等の化学蒸着法やゾルゲル法を適用して発光管の発光部の内壁や電極(好ましくは陰極)における所望の箇所に塗布した後、発光管を低酸素分圧の雰囲気中で500〜1415℃に保持すると、粉末状のマイエナイト型化合物の付着性が良好となり好ましい。また、このような熱処理を行うと、マイエナイト型化合物の導電性が高まり、高い電子放出特性を発現するので好ましい。
【0053】
このような熱処理においては、酸素分圧を、下記式(a)で示されるPO2よりも低くすることが好ましい。式(a)においてTは雰囲気ガス温度であり、酸素分圧(PO2)の単位はPaである。
O2=105×exp[{−7.9×104/(T+273)}+14.4] ・・・式(a)
【0054】
また、上記の粉末状のマイエナイト型化合物に代えて、マイエナイト型化合物と同等の組成を有する原料混合粉、仮焼粉、ガラス、非晶質物の粉末、すなわち粉末状のマイエナイト型化合物の前駆体を用いて同様に処理すると、前記熱処理の過程でマイエナイト型化合物を得ることができ、作製工程を少なくすることができるので好ましい。この場合、上記で式(a)を用いて説明した発光管を低酸素分圧の雰囲気中で保持する温度は、上記と同様に500〜1415℃であってよいが、800〜1415℃とすることが好ましく、950〜1300℃とすることがより好ましい。ここで電極が多孔質体であると、マイエナイト型化合物の付着性が高まり、耐久性が向上するので好ましい。
なお、ここで用いる原料混合粉としては、C12A7化合物を構成する単体元素の化合物、例えば炭酸カルシウム、酸化アルミニウムを所定の組成比で混合して用いてもよく、また、CaとAlとの比が例えば3:1や1:1のカルシウムアルミネート化合物を用いてもよい。また、2種以上のCa/Al比のカルシウムアルミネート化合物を用いてもよい。
【0055】
発光管中のマイエナイト型化合物が配置された電極や電極に導通した部分がプラズマに暴露されると、非導電性のマイエナイト型化合物は導電性マイエナイトに変化し、また導電性のマイエナイト型化合物ではさらに導電性が高まる。すなわち、本発明のランプは使用することによって、発光管内部のマイエナイト型化合物が導電性マイエナイトに変化し、また導電性がより高まることにより性能が高まる。したがって、発光ランプを製造する際に使用するマイエナイト型化合物としては、導電性マイエナイトと非導電性マイエナイトとのいずれも使用できる。ただし、非導電性マイエナイトを使用する場合は、製造された発光ランプが当初から発光することができるものである必要がある。そのため、電極表面等が非導電性マイエナイトで覆われ、耐火金属などからなる導電性の表面が存在しない場合、当初の発光が困難になるおそれが考えられる。この場合は、ある程度以上の導電性を有する非導電性マイエナイトを使用することが好ましい。また、電極表面等に小面積であっても部分的に導電性の表面(例えば、耐火金属の表面)が存在し当初の発光が可能である場合は、電極表面等の広い面積を非導電性マイエナイトで覆うことができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明を説明する。
(Al還元バルク電子密度1021/cm−3のγ)
炭酸カルシウムと酸化アルミニウムをモル比で12:7となるように混合して、大気中で1300℃で6時間保持し12CaO・7Al23化合物を作製した。この粉末を1軸プレス機を用いて成型体とし、該成型体を空気中で1350℃で3時間保持して、焼結体を作製した。この焼結体は白色であり、電流電圧計を用いて導電性を測定したところ、導電性は示さない絶縁体であった。この焼結体を金属アルミニウムと一緒に蓋付きアルミナ容器に入れ、真空炉中で1300℃まで昇温して10時間保持した後、室温まで徐冷した。得られた熱処理物は黒茶色を呈し、X線回折測定によりマイエナイト型化合物であることが確認された。日立製U3500を用いて測定した光吸収スペクトルから、電子密度が1.4×1021/cm−3であることがわかった。van der Pauwの方法により120S/cmの電気伝導率を有することがわかった。また、得られた熱処理物の電子スピン共鳴(以下ESR)シグナルをJEOL社 JES−TE300で測定したところ、1021/cm3超の高い電子濃度の導電性マイエナイト型化合物に特徴的なg値1.994を有する非対称形であることがわかった。ここで得られたものは導電性マイエナイトであり、以下試料Aともいう。
【0057】
次に試料Aを、二次電子放出特性測定装置内にターゲットとして設置した。装置内の真空度を約10-5Paとして、Ne+またはXe+を、加速電圧600eVとして照射したところ、図3に示すような二次電子放出特性が得られた。コレクタ電圧が概略70V以上のときγ値が飽和することから、放出された二次電子のすべてが捕獲されたことを示している。図3に示すように、このときの二次電子放出係数γの値は、コレクタ電圧が70Vで、Ne+励起による場合は0.31で、Xe+励起による場合は0.22であった。
【0058】
次に、図4に示すオープンセル放電測定装置を用いて、試料Aの放電開始電圧および二次電子放出係数を測定した。
【0059】
<放電開始電圧測定試験(その1)>
初めに、陰極として試料Aおよび陽極として金属Moを、約0.4mmの間隔で対向させた状態で真空チャンバ内に設置した。ここで陰極および陽極の設置には、シリカガラス製の試料用治具を用いた。次に、真空チャンバ内を約10-4Paまで排気した後、キセノンガスを導入した。そして、1kHzの交流電圧を印加して放電開始電圧を測定したところ、Pd積が約1.05torr・cmのとき308Vであった。ここで、Pは真空チャンバ内のガス圧、dは陰極−陽極間の距離である。
次に、陰極と陽極とを入れ換えて(すなわち、陰極として金属Moを用い、陽極として試料Aを用いて)、同様の測定を行った。その結果、同一のPd積のときの放電開始電圧は334Vであった。これより、試料Aを陰極として用いることで26Vの電圧低減効果が得られることが分かった。
【0060】
<二次電子放出係数測定試験(その1)>
次に、上記のように陰極として試料Aまたは金属Moを用いた場合の各々について、圧力を種々変化させて、図5に示すようなパッシェンカーブを得た。パッシェンの法則から、試料Aの二次電子放出係数(γMo(Xe))と、金属Moの二次電子放出係数(γA(Xe))との比(γA(Xe)/γMo(Xe))を求めたところ、2.0であった。
【0061】
<放電開始電圧測定試験(その2)>
次に、キセノンガスに代えてアルゴンガスを導入して、上記の放電開始電圧測定試験(その1)と同様に放電開始電圧を測定した。その結果、Pd積が約0.89torr・cm のとき、試料Aを陰極として用いた場合の放電開始電圧は238V、金属Moを陰極として用いた場合の放電開始電圧は256Vであり、18Vの電圧低減効果が得られることが分かった。
【0062】
<二次電子放出係数測定試験(その2)>
同様にキセノンガスに代えてアルゴンガスを導入して、上記の二次電子放出係数測定試験(その1)と同様の操作を行った。その結果、試料Aおよび金属Moについてパッシェンカーブを得た。その結果、γA(Ar) /γMo(Ar)の値は1.8であった。
【0063】
次に、粉末状のマイエナイト型化合物である試料を作成し、上記と同様の放電開始電圧測定試験を行った。
初めに、炭酸カルシウムと酸化アルミニウムをモル比で12:7となるように混合して、大気中で1300℃で6時間保持しC12A7化合物を作製した。この粉末を1軸プレス機を用いて成型体とし、該成型体を、空気中で、1350℃で3時間保持して、焼結密度が99%超の焼結体を作製した。この焼結体は、白色で、導電性を示さない絶縁体であった。この焼結体を蓋付のカーボン坩堝内に保持した後、窒素を通じた管状炉に入れ、1300℃で3時間保持した後、室温まで冷却した。得られた化合物は、緑色を呈していた。該化合物について、X線回折、光拡散反射スペクトル、ESRの測定を行って、該化合物が、約1020/cm3の電子濃度を有する導電性マイエナイトであることを確認した(以下、試料Bともいう)。
【0064】
次に、導電性マイエナイトを、2−プロパノールおよび直径0.1mmの酸化ジルコニアビーズとともに粉砕容器に入れた。これら質量比は試料B:2−プロパノール:酸化ジルコニアビーズ=1:9:75とした。この粉砕容器を600回転/時の回転速度で24時間保持した後、内容物をろ過して試料Bを含むスラリーを作製した。また、遠心沈降機を用いて当該スラリー中における試料Bの濃度を調整し、スラリーAを得た。このスラリーAにおける導電性マイエナイト(試料B)の平均粒径を粒径分布測定装置(Microtrac社製、UPA150)を用いて測定しところ、800nmであった。
【0065】
次に、スピンコート法によって金属モリブデン板上にスラリーAをコートし、試料Bの粒子が表面に付着した金属モリブデン板(以下、試料Cともいう)を得た。試料Cの表面を光学顕微鏡を用いて観察して、粒子の単位面積当りの存在個数(数密度)を計測したところ、粒子の数密度は約0.06個/μm2であった。
このような試料Cを用いて、上記と同様な放電開始電圧測定試験、および熱電子放出測定試験に供した。
【0066】
<放電開始電圧測定試験(その3)>
陰極として試料Cおよび陽極として金属Moを、約0.7mmの間隔で対向させた状態で真空チャンバ内に設置した。次に、真空チャンバ内を約10-4Paまで排気した後、アルゴンガスを導入した。そして、1kHzの交流電圧を印加して放電開始電圧を測定したところ、Pd積が約1.79torr・cmのとき214Vであった。
次に、陰極と陽極とを入れ換えて同様の測定を行った。その結果、同一のPd積のときの放電開始電圧は200Vであった。これより、試料Cを陰極として用いることで14Vの電圧低減効果が得られたことが分かった。
【0067】
<熱電子放出測定試験>
陰極として試料Cおよび陽極として金属Cuを、約0.15mmの間隔で対向させた状態で真空チャンバ内に設置した。真空チャンバ内をターボ分子ポンプを用いて排気したのち、試料Cを510Kの温度で加熱して約1時間保持した。1時間保持後の真空度は4×10−4Paであった。さらに試料Cを380K、420K、470Kまたは510Kの各々の温度に保持しながら、直流高電圧電源を用いて、陰極と陽極間に電圧を印加して、試料Cからの電子放出を観察した。結果を図6に示す。図6に示すように、いずれの温度で加熱した場合でも、試料Cから熱電子が放出されていることを確認できた。したがって、試料Cを電極とする高圧放電ランプは機能を発揮できることを確認できた。
【0068】
試料A(導電性マイエナイト)を用いて図1および図2を用いて説明した本発明のランプを製造することができる。この態様の本発明のランプは、マイエナイト型化合物の電子放出特性が優れているため、放電効率が高く、放電電圧が低く、化学的に安定で、耐酸化性にも優れ、耐スパッタ性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、本発明のランプの好適実施例を示す概略正面図である。
【図2】図2は、本発明のランプの好適実施例における発光管の概略拡大平面図である。
【図3】図3は、実施例において測定した、導電性マイエナイトのコレクタ電圧と二次電子放出係数(γ)との関係図である。
【図4】図4は、オープンセル放電測定装置を説明するための図である。
【図5】図5は、実施例における放電開始電圧および二次電子放出係数測定結果を示す図である。
【図6】図6は、実施例における熱電子放出測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 本発明のランプ
10 発光管
10a 封止部
10b 封止部
10c 発光部
10d 放電空間
12A 陽極
12Ax 陽極主部
12Ay 陽極軸部
12B 陰極
12Bx 陰極主部
12By 陰極軸部
14A、14B 金属箔
16A、16B リード線
18 放電媒体
20 外管
22 絶縁チューブ
24 口金
26 口金端子
3 縮径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極または電極と導通された部分であって、かつ発光管内に封入された放電媒体に接触する部分の少なくとも一部が、マイエナイト型化合物からなる高圧放電ランプ。
【請求項2】
電極または電極と導通された部分が、陰極または陰極と導通した部分である、請求項1に記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の高圧放電ランプであって、前記マイエナイト型化合物として電子密度が1.0×1015cm-3以上のマイエナイト型化合物を使用して高圧放電ランプを構成したことを特徴とする高圧放電ランプ。
【請求項4】
前記マイエナイト型化合物の電子密度が、1.0×1019cm-3以上である請求項3に記載の高圧放電ランプ。
【請求項5】
請求項1または2に記載の高圧放電ランプであって、前記マイエナイト型化合物として電子密度が1.0×1015cm-3未満のマイエナイト型化合物を使用して高圧放電ランプを構成したことを特徴とする高圧放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−48817(P2012−48817A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330238(P2008−330238)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】