説明

高圧放電灯、画像投影装置

【課題】封止加熱のために飛散する金属酸化膜の飛散を抑制して高圧放電灯の長寿命化を図る。
【解決手段】放電空間14内に対向する一対の電極151,152を配置し、電極151,152は金属箔171,172の一端と接合され、金属箔171,172の他端には電気導入線が接合されており、この金属箔171,172の部分にて気密を維持するよう封止部131,132で封着している。金属箔171,172は少なくとも一面に金属酸化膜よりなる被覆膜21を形成し、被覆膜21を覆うシリカ膜22を形成した。これにより、封止加熱のために飛散する被覆膜21の金属酸化膜の飛散を抑制し、金属酸化膜による被覆膜による長寿命化の効果を十分に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高効率、高出力、高集光効率で、且つコンパクトな設計が要求される、例えば液晶プロジェクタのような画像投影装置の光源として使用される高圧放電灯およびこれを用いた画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高圧放電灯は、透光性の気密容器の内部に形成された放電空間に水銀、ハロゲン、希ガス等を含む放電媒体を封入し、気密容器の両端部に形成された封止部に、端部にタングステン電極を接合した例えばモリブデンからなる金属箔が封着されている。前記金属箔は少なくとも一面に酸化チタン、酸化ランタン及び酸化タンタルから選ばれた少なくとも一種の金属酸化膜よりなる被覆膜が形成されており、被覆膜より金属箔近傍に封止部を形成するシリカガラス中の不純物として存在するアルカリ金属陽イオンや発光金属として封入されているハロゲン金属の陽イオンが金属箔近傍に移動して集積するが、金属酸化物からなる被覆膜によって陽イオンによる劣化が抑制され、長寿命が得られる。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2003−86135公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、長寿命に効果をもたらしている金属被覆膜は、封止のための加熱により飛散し、封止後には金属箔表面を満足に被覆してなく、金属酸化膜の効果が十分に得られない、という問題があった。
【0004】
この発明の目的は、封止加熱のために飛散する金属酸化膜の飛散を抑制し、金属酸化膜による被覆膜による長寿命化の効果を十分に得られることができる高圧放電灯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の高圧放電灯は、対向配置された一対の電極を有する放電空間と、前記電極は金属箔の一端と接合され、また前記金属箔の他端には電気導入線が接合されており、この前記金属箔の部分にて気密を維持するよう封着された封止部を有しており、安定点灯時の点灯圧が40atm以上であるものにあって、前記金属箔は少なくとも一面に金属酸化膜よりなる被覆膜が形成され、前記金属酸化膜を覆うシリカ膜を形成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、封止加熱のために飛散する金属酸化膜の飛散を抑制し、金属酸化膜による被覆膜による長寿命化の効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0008】
図1は、この発明の高圧放電灯の一実施形態について説明するための側面図である。図1において、11は透明な石英ガラス製のバルブであり、ほぼ楕円形状の発光管部12とその長手方向の両端部に発光管部12と同材料で形成されたバルブ11内を気密の封止部131,132からなる。発光管部12には、その長手方向にほぼ円柱状の放電空間14が形成されており、この放電空間14には封止部131,132の内部から延出された、例えばタングステン材で形成される電極151,152が例えば2.3mm程度の間隔をおいてその先端が対向するように配置されている。電極151,152の軸径はφ0.4mmで、その一端にφ0.2mmのコイル161,162が数ターン巻きつけてある。放電空間14には、例えば水銀(Hg)とアルゴン(Ar)ガスとDy−Nd−In−Cs系ハロゲン化金属を含む放電媒体が封入されている。Hg量はランプ電圧が60V以上となる所定量が封入されている。
【0009】
封止部131,132は、圧潰して形成されており、その内部にはモリブデン(Mo)製の金属箔171,172が封着され気密を保っている。金属箔171,172の厚さは28μm、幅は3mmで、長さは20mm程度である。金属箔171,172は、図2に示すように膜厚50〜1000nmの酸化チタン膜21が被膜されており、それを覆うシリカ膜22が500〜1200nm被覆されている。
【0010】
この金属箔171,172のそれぞれの一端は、電極151,152に溶接されており、他端はモリブデン製のワイヤ181,182に一端がそれぞれ溶接により接続される。ワイヤ181の他端は、15μm程度のニッケル線にプラチナを被覆してφ0.4mm程度とした導入線を介して、ワイヤ182の他端は、楕円反射鏡と封止部131付近を、例えばアルミナ接着剤で固定した口金を介してそれぞれランプ外の点灯装置19からの電力供給を受けている。
【0011】
この放電灯は、直流点灯方式のランプ電力250Wで点灯され、光出力は70〜80lm/Wのランプ効率を有し、例えばプロジェクタ用光源などに使用され、楕円または放物面形状のおいてはスクリーンに到達する光量が10lm/Wを超えるような効率が得られる。点灯中の動作圧力が6MPaを超えるように設計されている。
【0012】
図3は、上記した金属箔171,172上に酸化チタン膜21とシリカ膜22を形成した高圧放電灯をサンプルAとし、金属箔171,172のみとした場合の高圧放電灯をサンプルBとし、それぞれ10個のサンプル品のリーク、破損の発生の寿命試験を行った場合の結果を示すものである。
【0013】
すなわち、点灯時間を2000時間した場合、サンプルBでは金属箔171,172を起点としたリーク、破損の発生が10個中1個に、サンプルAでは10個中0個の結果が得られた。また、点灯時間を2500時間した場合でも、サンプルBは金属箔171,172を起点としたリーク、破損の発生が10個中3個に、サンプルAでは10個中1個という結果が得られた。
【0014】
従って、金属箔171,172上に酸化チタン膜21とシリカ膜22を形成した場合には、ランプの長寿命化を図ることができることが確認できた。
【0015】
このように、金属箔171,172上に酸化チタン膜21を形成し、さらに酸化チタン膜21を覆うシリカ膜22を形成することにより、封止加熱時の酸化チタン膜21の飛散を抑制することで寿命の向上を図ることができる。
【0016】
図4は、図1に構成の高圧放電灯が液晶プロジェクタに搭載された場合の、この発明の画像撮影装置について説明するための説明図である。
図4において、31は液晶プロジェクタであり、この液晶プロジェクタ31は本体32を有し、本体32の前面側には投影開口33が形成される。また、本体32内には光源34が配設され、この光源34は高圧放電灯35と高圧放電灯35に光学的に対向した反射手段としてのリフレクタ36にて形成される。そして、光源34の照射方向の前方には、表示手段としての液晶パネル37が配設され、この液晶パネル37の前方の投影開口33に対応して投影手段としての投影レンズ38が配設されている。投影開口33の前方には、スクリーン39が配設される。
【0017】
さらに、高圧放電灯35には点灯回路40が接続され液晶パネル37には液晶駆動回路41が接続され、点灯回路40および液晶駆動回路41は商用交流電源42が接続される。点灯回路40は高圧放電灯35を直流で点灯するもであっても、交流で点灯するものであっても構わない。
【0018】
上記した構成の画像撮影装置は、まず、点灯回路40で光源34の高圧放電灯35を点灯させる。高圧放電灯35からの光は、直接あるいはリフレクタ36で反射されて液晶パネル37方向に照射される。液晶パネル37は、液晶駆動回路41で表示が変化して、光源34からの光を透過して投影レンズ38で投影させてスクリーン39に映像を映し出す。
【0019】
このように、この発明の画像撮影装置は、この発明の高圧放電灯を光源のランプとしたことにより、ランプの長寿命化が実現でき、延いては液晶撮影装置全体の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施形態について説明するための構成図。
【図2】図1の要部の拡大断面図。
【図3】この発明の効果について説明するための説明図。
【図4】この発明の画像撮影装置に関する一実施形態について説明するためのシステム構成図。
【符号の説明】
【0021】
11 バルブ
12 発光管部
131,132 封止部
14 放電空間
151,152 電極
161,162 タングステンコイル
171,172 金属箔
181,182 ワイヤ
19 点灯装置
21 酸化チタン膜
22 シリカ膜
51 液晶プロジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された一対の電極を有する放電空間と、前記電極は金属箔の一端と接合され、また前記金属箔の他端には電気導入線が接合されており、この前記金属箔の部分にて気密を維持するよう封着された封止部を有しており、安定点灯時の点灯圧が40atm以上である放電灯において、
前記金属箔は少なくとも一面に金属酸化膜よりなる被覆膜が形成され、該被覆膜を覆うシリカ膜を形成したことを特徴とする高圧放電灯。
【請求項2】
請求項1に記載の高圧放電灯と、
前記高圧放電灯を光源とし、該光源から放射される光に基づき画像を投影する画像投影装置本体と、を具備したことを特徴とする画像投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−294413(P2006−294413A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−113571(P2005−113571)
【出願日】平成17年4月11日(2005.4.11)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】