説明

高圧放電灯点灯装置、それを用いた高圧放電灯の点灯方法、及び照明器具

【課題】複数の適合ランプを持つ高圧放電灯点灯装置において、接続された高圧放電灯の仕様を、高圧放電灯の点灯開始直後に判別する。
【解決手段】複数の仕様の高圧放電灯を適合ランプとする高圧放電灯点灯装置において、接続された高圧放電灯に電流を投入する電流供給回路、電流供給回路の出力電流を制御する制御部及び高圧放電灯のランプ電圧を検出するランプ電圧検出回路を備え、制御部は、出力電流がベース電流部分とベース電流部分よりも電流値の高い一時的なピーク電流部分を有するように電流供給回路を制御し、ピーク電流部分に対応するランプ電圧パラメータから、接続された高圧放電灯の仕様を特定し、特定された仕様の高圧放電灯に対して設定された出力電流を電流供給回路に出力させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高圧放電灯点灯装置に関し、より具体的には、複数の高圧放電灯を適合ランプとする高圧放電灯点灯装置、それを用いた高圧放電灯の点灯方法及び照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、異なる種類又は異なる定格電力の高圧放電灯を点灯するためにそれぞれ専用の高圧放電灯点灯装置(以下、「点灯装置」という)が使用されていた。例えば、定格電力100W前後の高圧放電灯といった場合に、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ等の種類、及び70W、100W、150W等の定格電力の高圧放電灯があり、それぞれの組合せごとに専用の点灯装置が用いられていた。そして、点灯装置の開発費用・在庫品種の削減によるコストダウンや、点灯装置設置後のランプ種類の変更による照度調整・光色変更などの要求から、複数の種類又は定格電力の高圧放電灯を点灯することが出来る点灯装置が求められている。
【0003】
特許文献1には、点灯装置に接続された高圧放電灯について、点灯開始後の所定期間におけるランプ電圧の変化率を見て、高圧放電灯の定格電力を判別し、その判別結果に基づいて選択された出力特性によって高圧放電灯を点灯させる点灯装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−310676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高圧放電灯は通常、点灯開始後に徐々にランプ電圧が上昇していき、安定点灯(定格電力での点灯)に到達するのに数分〜十数分かかる。特許文献1のような複数の定格電力に対応した点灯装置で点灯する場合、接続された高圧放電灯に許容されるランプ電流以上のランプ電流を投入すると高圧放電灯にダメージを与えてしまうため、接続された高圧放電灯の定格電力の判別が完了するまでは、接続が想定されている高圧放電灯(以下、「適合ランプ」という)のうち最も許容ランプ電流の低い高圧放電灯(通常は、最も定格電力の低い高圧放電灯)に合わせてランプ電流を投入することになる。従って、接続された高圧放電灯が適合ランプのうちの定格電力が最も低い高圧放電灯以外である場合は、専用の点灯装置で点灯した場合よりも低い電流で点灯開始することになり、光束立ち上がりが遅くなり、即ち、安定点灯到達までにより長時間を要してしまう。
【0006】
また、特許文献1では、定格電力の異なるメタルハライドランプの定格電力を判別する方法が開示されているものの、メタルハライドランプと高圧ナトリウムランプ等といったように添加物の異なる高圧放電灯の種類の相違を判別する方法は開示されていない。
【0007】
そこで、本発明は、複数の適合ランプを持つ高圧放電灯点灯装置において、接続された高圧放電灯の仕様(種類、定格電力、又は種類及び定格電力)を高圧放電灯の点灯開始直後に判別することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面は、複数の仕様の高圧放電灯を適合ランプとする高圧放電灯点灯装置であって、接続された高圧放電灯に電流を投入する電流供給回路、電流供給回路の出力電流を制御する制御部及び高圧放電灯のランプ電圧を検出するランプ電圧検出回路を備え、制御部は、出力電流がベース電流部分とベース電流部分よりも電流値の高い一時的なピーク電流部分を有するように電流供給回路を制御し、ピーク電流部分に対応するランプ電圧パラメータから、接続された高圧放電灯の仕様を特定し、特定された仕様の高圧放電灯に対して設定された出力電流を電流供給回路に出力させるように構成された高圧放電灯点灯装置である。
【0009】
本発明の第2の側面は、接続された高圧放電灯に電流を投入する電流供給回路、電流供給回路の出力電流を制御する制御部及び高圧放電灯のランプ電圧を検出するランプ電圧検出回路を備えた、複数の仕様の高圧放電灯を適合ランプとする高圧放電灯点灯装置を用いた高圧放電灯の点灯方法であって、制御部が、ベース電流部分とベース電流部分よりも電流値の高い一時的なピーク電流部分を有する初期電流を電流供給回路に出力させるステップ、ピーク電流部分に対応するランプ電圧パラメータから、接続された高圧放電灯の仕様を判別するステップ、及び判別された仕様の高圧放電灯に対して設定された出力電流を電流供給回路に出力させるステップを備える点灯方法である。
【0010】
上記第1及び第2の側面において、ランプ電圧パラメータを、ベース電流部分の期間のランプ電圧に対するピーク電流部分の期間のランプ電圧の比率とすることができる。
また、電流供給回路が交流電流供給回路である場合であってピーク電流部分とその直後のベース電流部分の極性が異なる場合には、ランプ電圧パラメータを、ピーク電流部分からベース電流部分への極性反転時のランプ電圧のオーバーシュート量又はアンダーシュート量としてもよい。
また、ランプ電圧パラメータをピーク電流部分の期間におけるランプ電圧の変化率としてもよい。
【0011】
また、電流供給回路を交流電流供給回路として、出力電流の1ユニットが、半サイクルのベース電流部分及びベース電流部分よりも周波数の高い1サイクルの高周波電流部分からなり、1サイクルの高周波電流部分の少なくとも後半の半サイクルがピーク電流部分となるようにしてもよい。
【0012】
本発明の第3の側面は、上記第1の側面の高圧放電灯点灯装置、適合ランプのいずれかである高圧放電灯、及び高圧放電灯が取り付けられるリフレクタを備えた照明器具である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例による高圧放電灯点灯装置の回路構成図である。
【図2A】本発明の実施例における高圧放電灯点灯装置の出力電流の一例を示す図である。
【図2B】本発明の実施例における高圧放電灯点灯装置の出力電流の一例を示す図である。
【図2C】本発明の実施例における高圧放電灯点灯装置の出力電流の一例を示す図である。
【図2D】本発明の実施例における高圧放電灯点灯装置の出力電流の一例を示す図である。
【図2E】本発明の実施例における高圧放電灯点灯装置の出力電流の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施例による高圧放電灯点灯装置を説明する図である。
【図4A】本発明の実施例における70Wメタルハライドランプのランプ電流を示す図である。
【図4B】図4Aに対応するランプ電圧を示す図である。
【図5A】本発明の実施例における150Wメタルハライドランプのランプ電流を示す図である。
【図5B】図5Aに対応するランプ電圧を示す図である。
【図6A】本発明の実施例における150W高圧ナトリウムランプのランプ電流を示す図である。
【図6B】図6Aに対応するランプ電圧を示す図である。
【図7】本発明の点灯方法のフローチャートである。
【図8】本発明の実施例における照明器具の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に本発明の実施例による高圧放電灯点灯装置(以下、「点灯装置」という)の回路構成を示す。点灯装置は、交流入力を直流化する整流平滑回路10、整流平滑回路10の出力電圧を降下して高圧放電灯(以下、「ランプ」という)60への電流を制限する降圧チョッパ回路20、降圧チョッパ回路20の出力を交流電流に変換してランプ60に投入するフルブリッジ回路40、降圧チョッパ回路20及びフルブリッジ回路40を制御する制御回路30、並びにイグナイタ50からなる。なお、本明細書では、整流平滑回路10、降圧チョッパ回路20及びフルブリッジ回路40を含んだ部分を電流供給回路というものとする。但し、点灯装置外部から直流電圧が供給される場合には整流平滑回路10は不要であるので、この場合は、回路20及びフルブリッジ回路40を含んだ部分を電流供給回路というものとする。
【0015】
降圧チョッパ回路20は、点灯開始後から安定点灯到達前の所定期間においては、ランプ電流が所定値となるように制御回路30によってPWM制御される。具体的には、ランプ電流検出抵抗33によって検出されるランプ電流がプロセッサ(マイクロコンピュータ)35に記憶された設定値と一致するようにPWM制御回路34によってトランジスタ21がPWM制御される。これにより、所望の電流値又は電流値変動を持つランプ電流を生成することができる。
【0016】
なお、上記所定期間経過後は、降圧チョッパ回路20はランプ電力が所定値となるように制御回路30によってPWM制御される。具体的には、ランプ電圧検出抵抗31及び32(ランプ電圧検出回路)によって検出されるランプ電圧とランプ電流検出抵抗33によって検出されるランプ電流の積(即ち、ランプ電力)がプロセッサ35に記憶された設定値と一致するようにPWM制御回路34によってトランジスタ21がPWM制御される。
【0017】
フルブリッジ回路40では、ブリッジ制御回路45が、プロセッサ35において設定された反転タイミングでトランジスタ41及び44とトランジスタ42及び43とが交互にオン・オフ駆動する。これにより、所望の反転タイミングで極性が切り替わるランプ電流波形を形成できる。
【0018】
なお、イグナイタ回路50はランプ始動時に動作し、ランプ点灯開始後は非動作状態となる。本発明はランプ点灯開始後の動作に関するものであり、イグナイタ回路50の動作は発明の本質ではないのでその説明を省略する。
【0019】
上記より、電流供給回路は、プロセッサ35、PWM制御回路34及びブリッジ制御回路45(以下、これらの3構成要素をまとめて「制御部」という)によって、降圧チョッパ回路20の出力電流値を制御するとともにフルブリッジ回路40の極性反転タイミングを制御することにより、所望の波形の出力電流をランプ60に投入することができる。
【0020】
本発明の実施例においては、制御部は、上記出力電流がベース電流部分とそのベース電流部分よりも電流値の高い一時的なピーク電流部分を有するように電流供給回路を制御し、ピーク電流部分に対応するランプ電圧パラメータから、接続された高圧放電灯の仕様を特定し、特定された仕様の高圧放電灯に対して設定された出力電流を電流供給回路に出力させるように構成される。なお、ベース電流部分の周波数は50Hz〜1kHz程度を想定している。また、本発明において、高圧放電灯の「仕様」とは、高圧放電灯の種類、定格電力、又は種類及び定格電力のいずれかをいうものとする。
【0021】
図2Aから2Eに、本発明の実施例で用いる出力電流波形を示す。
図2Aの出力電流波形においては、出力電流の1ユニットが、半サイクルのベース電流部分及びベース電流部分よりも周波数の高い1サイクルの高周波電流部分からなり、1サイクルの高周波電流部分の後半の半サイクルがベース電流部分よりも高いピーク電流部分を構成する。なお、高周波電流部分の周波数は500Hz〜10kHz程度を想定している。
【0022】
図2Aでは、1サイクルの高周波電流部分の後半の半サイクルがベース電流部分よりも高いピーク電流部分となる波形を示したが、図2Dに示すように、1サイクルの高周波電流部分の前半及び後半の半サイクルがベース電流部分よりも高いピーク電流部分となる波形としてもよい。
【0023】
図2Bの出力電流波形では、出力電流の1ユニットが、半サイクルのベース電流部分及びベース電流部分に重畳されたピーク電流部分からなる。
図2Cの出力電流波形では、出力電流の1ユニットが、1サイクル以上のベース電流部分及び半サイクルのピーク電流部分からなる。
図2A〜2Dでは交流点灯用の例を示したが、本発明は直流点灯方式にも適用することができ、図2Eに示すようなランプ電流波形を用いることができる。なお、直流点灯方式の場合は、図1の回路構成からフルブリッジ回路40を省略した回路構成を用いればよい。
【0024】
図3は、70Wメタルハライドランプ、150Wメタルハライドランプ及び150W高圧ナトリウムランプにおけるランプ電圧に対する設定ランプ電流をそれぞれ示す。70Wメタルハライドランプ、150Wメタルハライドランプ及び150W高圧ナトリウムランプについて、点灯開始直後のランプ電圧が低い状態における立ち上がり時の初期電流の実効値は、それぞれ1.5A、3.0A及び3.3Aが推奨される。なお、それぞれの高圧放電灯の安定点灯時の定格電流はそれぞれ0.78A、1.58A及び1.50Aである。
【0025】
メタルハライドランプでは、ランプ発光管のダメージを抑制するため、初期電流は定格電流の2倍以下にすることが推奨されている。一方、高圧ナトリウムランプでは、初期電流が2倍よりも小さいと発光管温度が上昇せず、発光管内部のナトリウムが蒸発しないためにランプ電圧がいつまでも上昇しない場合がある。そのため、高圧ナトリウムランプでは、初期電流は定格電流の2倍よりも大きい電流を流す必要がある。
なお、図3における各設定ランプ電流の曲線部分(高ランプ電圧側)は、電流供給回路(特に、降圧チョッパ回路20)で定電力制御が行われていることを意味するが、本発明は設定ランプ電流の直線部分(低ランプ電圧側)に相当する定電流制御において実施されるものとする。
【0026】
図4A、5A及び6Aは、それぞれ70Wメタルハライドランプ、150Wメタルハライドランプ及び150W高圧ナトリウムランプについて、図2Aの出力電流を投入した場合のランプ電流波形である。また、上記3仕様の高圧放電灯を判別する場合に、ランプ仕様の判別完了前は、ランプへのダメージをなくすためにこれらの適合ランプのうち最も定格電流の小さい70Wメタルハライドランプ用の初期ランプ電流を投入することが望ましい。従って、図4A、5A及び6Aの電流波形は、実効値が1.5A、ベース電流値が約1.0A、ピーク値が約3.5Aでほぼ同じ波形となる。
【0027】
なお、図2Aの出力電流波形を用いるのは、ピーク電流期間をベース電流期間に対して短く設定できるので電流の実効値とピーク値との比率を大きくすることができ、また、ピーク電流前後の電流反転時の電流差が大きくなるので、後述するランプ電圧の過渡的な応答を識別し易くなるためである。
【0028】
図4B、5B及び6Bは、それぞれ図4A、5A及び6Aのランプ電流に対応する70Wメタルハライドランプ、150Wメタルハライドランプ及び150W高圧ナトリウムランプのランプ電圧の波形である。以下に、ランプ仕様の判別方式の実施例を示す。
【0029】
実施例1.
実施例1の判別方式は、ランプ電圧パラメータを、ベース電流部分の期間のランプ電圧(以下、「ベース電圧」という)に対するピーク電流部分の期間のランプ電圧(以下、「ピーク電圧」という)の比率とするものである。
図4B、5B及び6Bについて、ベース電圧に対するピーク電圧の比率は、70Wメタルハライドランプ、150Wメタルハライドランプ、150W高圧ナトリウムランプの順に約2倍、約3倍、約1.2倍と顕著な差が出る。従って、プロセッサ35において、この比率に基づいてランプ仕様を特定することができる。
【0030】
本実施例は、ベース電圧に対するピーク電圧の比率が検出できればよいので、図2A〜2Eの全ての出力電流波形で実施することができる。
【0031】
実施例2の判別方式は、ランプ電圧パラメータを、ピーク電流部分からベース電流部分への電流反転時のランプ電圧のオーバーシュート量又はアンダーシュート量とするものである。
図4B、5B及び6Bについて、上記ランプ電圧のオーバーシュート量(各図A部参照)は、70Wメタルハライドランプ、150Wメタルハライドランプ、150W高圧ナトリウムランプの順に、約5V、約20V、約−数V(即ち、アンダーシュート)と顕著な差が出る。従って、プロセッサ35において、このオーバーシュート量に基づいてランプ仕様を特定することができる。
【0032】
本実施例は、ピーク電流直後の反転を必要とするので、図2A、2C及び2Dの出力電流波形で実施することができる。また、図2Bのタイプの電流波形であっても、ピーク電流部分がベース電流部分の最後端に重畳されるようにすれば本実施例を実施できる。
【0033】
実施例3.
実施例3の判別方式は、ランプ電圧パラメータをピーク電流部分の期間におけるランプ電圧の変化率とするものである。
図4B、5B及び6Bについて、ピーク電流部分の期間におけるランプ電圧の変化率は、ピーク電流期間をtとすると、70Wメタルハライドランプ、150Wメタルハライドランプ、150W高圧ナトリウムランプの順に、約−8V/t、約−12/t、約−1V/tとなる。従って、プロセッサ35において、この変化率に基づいてランプ仕様を特定することができる。
【0034】
本実施例は、ピーク電流以降直後のランプ電圧の変動が検出できればよいので、図2A〜2Eの全ての出力電流波形で実施することができる。但し、極性反転直後のピーク電流部分に対して顕著な差がでるのであれば、図2A、2C及び2Dの出力電流波形が好適であり、図2Dの出力電流波形がより好適となる。
【0035】
さらに、判別精度を高めるために実施例1から3を適宜組み合わせて実施してもよいし、出力電流波形を切り替えながら、各電流波形において実施例1から3のいずれかを実施してランプ仕様を判別してもよい。なお、それぞれのランプに対応する各ランプ電圧パラメータはプロセッサ35内のメモリに予め記憶されているものとする。
【0036】
図7は本発明の実施例による高圧放電灯の点灯方法を示すフローチャートである。
ステップS1において、制御部が、ベース電流部分とベース電流部分よりも電流値の高い一時的なピーク電流部分を有する初期電流を電流供給回路に出力させる。即ち、電流供給回路は、図2A〜2Dのような波形の出力電流を初期電流としてランプ60に投入する。前述したように、制御部は、適合ランプのうち、最も定格電流の小さなランプのために設定された初期電流を設定電流として選択する。実施例で示した具体例では、70Wメタルハライドランプ用の実効値1.5Aが選択される。
【0037】
ステップS2において、制御部が、ピーク電流部分に対応するランプ電圧パラメータから、接続されたランプの仕様を判別する。具体的には、実施例1〜3に示したように、ベース電圧に対するピーク電圧の比率、ピーク電流部分からベース電流部分への電流反転時のランプ電圧のオーバーシュート量若しくはアンダーシュート量又はランプ電圧パラメータをピーク電流部分の期間におけるランプ電圧の変化率、又はこれらの組合せをランプ電圧パラメータとして、ランプ仕様が判別される。この判別のタイミングは点灯開始直後(但しアーク放電移行後)に行うことができる。但し、点灯開始直後の過渡的な状態を避けてランプ電圧がある程度上昇してからステップS2を実行してもよい。
【0038】
ステップS3において、制御部が、判別された仕様のランプに対して設定された出力電流を電流供給回路に出力させる。例えば、接続されたランプが70Wメタルハライドランプであると判別された場合には、ステップS1の初期電流による点灯を継続する。一方、接続されたランプが150Wメタルハライドランプ又は150W高圧ナトリウムランプであると判別された場合には、判別された仕様に対応した実効電流値3.0A又は3.3Aでの点灯に切り替わる。
【0039】
以上のように、本発明によると、複数の適合ランプを持つ点灯装置において、点灯開始直後(例えば、グロー放電からアーク放電に移行してから数秒後)あるいは点灯開始後の早い時期にランプ仕様を判別することができる。従って、複数の適合ランプを持つ点灯装置において、適合ランプの中でも定格電力が高いランプが装着された場合でも、専用の点灯装置によって点灯される場合と同等の速さの光束立ち上がりを確保することができる。
【0040】
図8に上記点灯装置を利用した照明器具を示す。照明器具は、上記点灯装置71、適合ランプのいずれかであるランプ60が取り付けられるリフレクタ72を備える。なお、図8は本発明の照明器具を模擬的に図示したものであり、寸法、配置などは図面通りではない。
本発明の照明器具によると、複数の適合ランプを持つ照明器具において、適合ランプの中でも定格電力が高いランプが装着された場合でも、専用の照明器具を用いた場合と同等の安定点灯到達時間を達成することができる。
【0041】
上記に本発明の最も好適な実施例を示したが、本発明は発明の趣旨を逸脱することなく以下のように変形可能である。
(1)上記実施例ではメタルハライドランプ及び高圧ナトリウムランプを用いたが、本発明は無水銀ランプなど他の種類の高圧放電灯にも適用できる。
【0042】
(2)上記実施例では、ランプ仕様判別後も図2A〜2Eのような波形の電流をランプに投入する構成を示したが、ランプ仕様判別後は標準的な(ピーク電流部分がない)矩形波を投入してもよい。
【0043】
(3)上記実施例では、初期電流としてベース電流部分とピーク電流部分が周期的に繰り返される構成を示したが、ピーク電流部分はベース電流部分に対して不規則に挿入されるようにしてもよい。
【0044】
(4)上記実施例において、整流平滑回路10、降圧チョッパ回路20、制御回路30、フルブリッジ回路40、及びイグナイタ回路50の具体例を示したが、これらは上述した機能を達成できるものであれば当業者に周知の他の回路構成であってもよい。例えば、図1では、整流平滑回路10としていわゆるコンデンサインプット型の回路を示しているが、昇圧チョッパ回路(力率改善回路)を用いてもよい。また、降圧チョッパ回路20をフォワード型等の他の構成のDC/DCコンバータとしてもよく、それはDC出力電流の制御ができればよい。また、フルブリッジ回路40をプッシュプル型等の他の構成のDC/ACコンバータとしてもよく、出力電流の極性反転制御ができるものであればよい。
【符号の説明】
【0045】
10.整流平滑回路
20.降圧チョッパ回路
30.制御回路
31、32.ランプ電圧検出抵抗(ランプ電圧検出回路)
33.ランプ電流検出抵抗
34.PWM制御回路
35.プロセッサ
40.フルブリッジ回路
45.ブリッジ制御回路
60.高圧放電灯(ランプ)
71.高圧放電灯点灯装置(点灯装置)
72.リフレクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の仕様の高圧放電灯を適合ランプとする高圧放電灯点灯装置であって、接続された高圧放電灯に電流を投入する電流供給回路、該電流供給回路の出力電流を制御する制御部及び前記高圧放電灯のランプ電圧を検出するランプ電圧検出回路を備え、
前記制御部は、前記出力電流がベース電流部分と該ベース電流部分よりも電流値の高い一時的なピーク電流部分を有するように前記電流供給回路を制御し、該ピーク電流部分に対応するランプ電圧パラメータから、前記接続された高圧放電灯の仕様を特定し、特定された仕様の高圧放電灯に対して設定された出力電流を前記電流供給回路に出力させるように構成された高圧放電灯点灯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高圧放電灯点灯装置において、前記ランプ電圧パラメータは、前記ベース電流部分の期間のランプ電圧に対する前記ピーク電流部分の期間のランプ電圧の比率である、高圧放電灯点灯装置。
【請求項3】
請求項1に記載の高圧放電灯点灯装置において、前記電流供給回路が交流電流供給回路であり、前記ピーク電流部分とその直後のベース電流部分の極性が異なる場合に、前記ランプ電圧パラメータは、前記ピーク電流部分から前記ベース電流部分への極性反転時のランプ電圧のオーバーシュート量又はアンダーシュート量である、高圧放電灯点灯装置。
【請求項4】
請求項1に記載の高圧放電灯点灯装置において、前記ランプ電圧パラメータは、前記ピーク電流部分の期間におけるランプ電圧の変化率である、高圧放電灯点灯装置。
【請求項5】
請求項1に記載の高圧放電灯点灯装置において、前記電流供給回路が交流電流供給回路であり、前記出力電流の1ユニットが、半サイクルの前記ベース電流部分及び該ベース電流部分よりも周波数の高い1サイクルの高周波電流部分からなり、該1サイクルの高周波電流部分の少なくとも後半の半サイクルがピーク電流部分となる、高圧放電灯点灯装置。
【請求項6】
接続された高圧放電灯に電流を投入する電流供給回路、該電流供給回路の出力電流を制御する制御部及び前記高圧放電灯のランプ電圧を検出するランプ電圧検出回路を備えた、複数の仕様の高圧放電灯を適合ランプとする高圧放電灯点灯装置を用いた高圧放電灯の点灯方法であって、
前記制御部が、ベース電流部分と該ベース電流部分よりも電流値の高い一時的なピーク電流部分を有する初期電流を前記電流供給回路に出力させるステップ、
前記制御部が、該ピーク電流部分に対応するランプ電圧パラメータから、前記接続された高圧放電灯の仕様を判別するステップ、及び
前記制御部が、判別された仕様の高圧放電灯に対して設定された出力電流を前記電流供給回路に出力させるステップ
を備える点灯方法。
【請求項7】
請求項6に記載の点灯方法において、前記ランプ電圧パラメータは、前記ベース電流部分の期間のランプ電圧に対する前記ピーク電流部分の期間のランプ電圧の比率である、点灯方法。
【請求項8】
請求項6に記載の点灯方法において、前記出力電流が交流電流であり、前記ピーク電流部分とその直後のベース電流部分の極性が異なる場合に、前記ランプ電圧パラメータは、前記ピーク電流部分から前記ベース電流部分への極性反転時のランプ電圧のオーバーシュート量又はアンダーシュート量である、点灯方法。
【請求項9】
請求項6に記載の点灯方法において、前記ランプ電圧パラメータは、前記ピーク電流部分の期間におけるランプ電圧の変化率である、点灯方法。
【請求項10】
請求項6に記載の点灯方法において、前記出力電流が交流電流であり、前記出力電流の1ユニットが、半サイクルの前記ベース電流部分及び該ベース電流部分よりも周波数の高い1サイクルの高周波電流部分からなり、該1サイクルの高周波電流部分の少なくとも後半の半サイクルがピーク電流部分となる、点灯方法。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の高圧放電灯点灯装置、前記適合ランプのいずれかである高圧放電灯、及び前記高圧放電灯が取り付けられるリフレクタを備えた照明器具。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−25923(P2013−25923A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157656(P2011−157656)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】