高圧放電灯点灯装置
【課題】高圧放電灯の外管放電を適性に回避する安全な高圧放電灯点灯装置を得ることを目的とする。
【解決手段】この発明に係る高圧放電灯点灯装置は、発光管とこの発光管を保持・保護する外管とを有する高圧放電灯と、この高圧放電灯に電力を供給する給電部と、高圧放電灯に始動用高電圧を供給する始動パルス発生回路と、給電部及び始動パルス発生回路を制御する制御回路とを備えた高圧放電灯点灯装置において、発光管の温度上昇下降特性と相関のある温度特性を有する給電部の回路部品と温度的に結合し、所定の温度以上で通電又は遮断するサーマルスイッチと、このサーマルスイッチが通電又は遮断した時に、始動パルス発生回路を駆動しないようにする信号合成手段とを備えたものである。
【解決手段】この発明に係る高圧放電灯点灯装置は、発光管とこの発光管を保持・保護する外管とを有する高圧放電灯と、この高圧放電灯に電力を供給する給電部と、高圧放電灯に始動用高電圧を供給する始動パルス発生回路と、給電部及び始動パルス発生回路を制御する制御回路とを備えた高圧放電灯点灯装置において、発光管の温度上昇下降特性と相関のある温度特性を有する給電部の回路部品と温度的に結合し、所定の温度以上で通電又は遮断するサーマルスイッチと、このサーマルスイッチが通電又は遮断した時に、始動パルス発生回路を駆動しないようにする信号合成手段とを備えたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ等の高圧放電灯の外管内放電を的確に回避する安全な高圧放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ等の高圧放電灯は、寿命末期になると放電が不安定になり光束が低下し、更には、立ち消え等の問題が発生する。従来の高圧放電灯は、図13に示すように、点灯制御されて点灯中の放電灯が立ち消えした場合、直後もしくは短時間後、再始動モードに移行してパルスを印加していたため、発光管(内管)では放電できず、外管内での放電の可能性が高くなっていた。外管内のリード線間で放電が起こると大電流が流れ、外管が割れたり、インバータが破壊する恐れがある。
【0003】
高圧放電灯は、安定点灯している状態から消灯すると、消灯直後において高圧放電灯の発光管が非常に高温、高圧となっているため、絶縁破壊電圧が安定点灯時の電圧から短時間で急激に上昇し、その後、時間と共に高圧放電灯の発光管温度が低下し、絶縁破壊電圧も低下することが知られている。
【0004】
このように、高圧放電灯は、始動の際、数kv乃至数十kvの高電圧を印加する必要があり、そして、始動失敗の際、始動を繰り返すように構成されているので、放電灯の故障、寿命などにより始動困難なときは、長時間高電圧が繰り返し発生して点灯装置に損傷を与えたり、感電させたりする恐れがある。
【0005】
そこで、点灯装置等に損傷を与えたり、感電させたりする恐れの少ない放電灯を提供することを目的として、図14に示すように、放電灯103に電力を供給する給電部101と、放電灯103に始動用高電圧を供給する始動用高電圧発生手段102と、放電灯103に供給される電流を検出する電流検出手段104と、放電灯103の状態を監視して給電部101と始動用高電圧発生手段102を制御する監視制御部105とを備え、監視制御部105は、始動の際、先ず始動用高電圧発生手段102を駆動し、始動状態を電流検出手段104の出力により監視し、始動失敗の場合、再度始動用高電圧発生手段102を駆動し始動状態を電流検出手段104の出力により監視するというシーケンスを所定回数まで繰り返し、なおかつ、始動失敗のときは始動用高電圧発生手段102の駆動を停止すると共に給電部101による給電を停止する放電灯点灯装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、放電灯はランプ交換などの目的で接続端子を介して点灯装置に接続されているのが一般的である。接続端子による接触状態が不十分であると次のような問題が生じる。交流電源を投入した直後の始動時には放電灯が点灯可能である接触状態であったとしても、点灯途中で接触状態が不良になって放電灯が立ち消えする場合がある。放電灯が立ち消えした直後には、放電灯の電極間にイオンが残留しており、残留イオンが消失するには数10msec程度の時間を要する。残留イオンの消失前に高電圧パルスが印加されると、接続端子の接触状態が不十分であるときには点灯状態に至らず微放電が開始され、この微放電が継続して接続端子に電流が流れ続けることになる。このような電流が流れると接続端子に対する電気的ストレスが大きくなり、発火・発煙が生じることがある。そこで、再始動時に放電灯内の残留イオンが消失してから高電圧パルスを発生させることによって放電灯に微放電が生じるのを防止し、接続端子などに大きな電気的ストレスがかからないようにした放電灯点灯装置がある。
【0007】
図15は電源電圧に高電圧パルスを重畳させて放電灯を始動させる始動パルス発生回路7を備えた放電灯点灯装置の回路図である。図において、始動パルス発生回路7は、交流電源ACの両端間に接続された一対の抵抗R1、R2の直列回路と、抵抗R2に並列接続されたコンデンサC1と、安定器Lの一次巻線N1に直列接続されたコンデンサC2およびスイッチング素子Q1(例えば、トライアック)と、両抵抗R1、R2の接続点とスイッチング素子Q1の制御端子(ゲート)との間に接続された電圧応答型のトリガ素子Q2(例えば、ダイアック)及び抵抗R3とを備える。従って、図16(a)のような交流電源ACの電圧を抵抗R1、R2によって分圧した電圧がトリガ素子Q2のブレークオーバ電圧を超えると、トリガ素子Q2がオンになり、抵抗R3を介してスイッチング素子Q1の制御端子に電流が流れる。するとスイッチング素子Q1がオンになり、交流電源ACから安定器Lの一次巻線N1を介してコンデンサC2に図16(b)に示すような充電電流Icが流れる。コンデンサC2が充電されると充電電流は停止し、スイッチング素子Q1はオフになる。安定器Lには時刻t1においてスイッチング素子Q1がオンになった時点から時刻t2においてスイッチング素子Q2がオフになる時点まで、コンデンサc2への充電電流Icが流れることになる。この充電電流Icは交流電源ACの各半サイクルごとに流れる。コンデンサc2への充電電流Icは安定器Lの一次巻線N1を通して流れるから、安定器Lの二次巻線N2には一次巻線N1への印加電圧を昇圧した電圧が発生する。安定器Lの二次巻線N2に高電圧パルスが発生し、この高電圧パルスが交流電源ACの電圧に重畳されることによって、図16(c)のような電圧VDLが放電灯DLに印加される。このようにして、放電灯DLに高電圧を印加することによって放電灯DLは始動する。
【0008】
放電灯DLが点灯した状態では高電圧パルスを発生させる必要がないから、放電灯DLが点灯したことを点灯判別回路OCによって検出して始動パルス発生回路7からの高電圧パルスの発生を停止させる。点灯判別回路OCは、一次巻線が放電灯DLと直列接続された電流トランスCTと、電流トランスCTの二次巻線を全波整流する整流器DB1と、整流器DB1の出力を平滑化するコンデンサC3と、コンデンサC3の両端電圧が所定電圧以上であるときにオンになるトランジスタQ3と、コンデンサC3の両端電圧に応じてトランジスタQ3にベース電流を与える抵抗R4、R5と、トランジスタQ3のコレクタ−エミッタ間に直流側端が接続された全波整流器DB2とを備え、コンデンサC3と抵抗R5との接続点の間に、コンデンサC3の充電電荷の放電時間を調節するための抵抗R6を挿入している。コンデンサC3と抵抗R6とによる時定数は、放電灯DLの消灯後に残留イオンが消失する時間に応じて適宜設定される。コンデンサC3及び抵抗R6によって遅延手段が構成される。
【0009】
図17に示すように、時刻t3で交流電源ACを投入したときには、放電灯DLが不点灯状態であって、図17(a)のようにランプ電流IDLが流れていないから、電流トランスCTの一次巻線には電流は流れない。従って、図17(b)のようにコンデンサC3の両端に電圧が発生せず、図17(c)のようにトランジスタQ3がオフであって、始動パルス発生回路7が動作する。図17(d)のように放電灯DLが点灯するまで高電圧パルスがが繰り返し発生する。放電灯DLが時刻t4で点灯すると、図17(a)のようにランプ電流IDLが流れ、図17(b)のようにコンデンサC3が充電されて両端電圧が上昇するから、図17(c)のようにトランジスタQ3がオンになって、図17(d)のように始動パルス発生回路7からの高電圧パルスの発生が停止する。
【0010】
放電灯DLの点灯状態において、図17(a)に示すように、時刻t5で立ち消えなどによって不点灯状態に移行すると、コンデンサC3の充電電荷は図17(b)のようにコンデンサC3と抵抗R6とによって決定された時定数に従って放電する。時刻t6においてコンデンサC3の端子電圧がトランジスタQ3のオン状態を維持できなくなるまで低下すると、図17(c)のようにトランジスタQ3がオフになって図17(d)のように始動パルス発生回路7から高電圧パルスが再び発生し、放電灯DLを再始動しようとする。ここで、コンデンサC3と抵抗R6とによって決定される時定数は、放電灯DLが点灯状態から不点灯状態に移行した後、放電灯DLの内部の残留イオンが消失する程度の時間よりも長い間、トランジスタQ3がオン状態に保たれるように設定される。従って、放電灯DLが点灯状態から不点灯状態に移行して残留イオンが消失する前に始動パルス発生回路7から高電圧パルスが発生して放電灯DLに微放電が生じることが防止される(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2778257号公報
【特許文献2】特開平5−174985号公報
【特許文献3】特開平11−176583号公報
【特許文献4】特開平11−054290号公報
【特許文献5】特開平10−270182号公報
【特許文献6】実開平04−119998号公報
【特許文献7】特開平10−106767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の放電灯点灯装置(特許文献1)は、監視制御部105は、始動の際、先ず始動用高電圧発生手段102を駆動し、始動状態を電流検出手段104の出力により監視し、始動失敗の場合、再度始動用高電圧発生手段102を駆動し始動状態を電流検出手段104の出力により監視するというシーケンスを所定回数まで繰り返し、なおかつ、始動失敗のときは始動用高電圧発生手段102の駆動を停止すると共に給電部101による給電を停止するようにしているが、内管が高温・高圧のときに高電圧パルスを印加するため、内管が放電せずに外管内放電を引き起こす恐れがある。
【0013】
また、高電圧パルスの印加を、外管放電が起こっても持続させないように通常の始動時より短い間隔で印加、停止を行うことは想定していない。
【0014】
従来の放電灯点灯装置(特許文献2)は、放電灯DLが立ち消えした直後には放電灯DLの電極間にイオンが残留しており、残留イオンの消失前に高電圧パルスが印加されると、接続端子の接触状態が不十分であるときには点灯状態に至らずに微放電が開始され、この微放電が継続して接続端子に電流が流れ続け、接続端子に対する電気的ストレスが大きくなり、発火・発煙が生じることがあるので、放電灯DLが点灯状態から不点灯状態に移行したとき残留イオンが消失してから始動パルス発生回路7から高電圧パルスを発生させて再始動させ、放電灯DLに微放電が生じることを防止している。しかし、立ち消え後残留イオンは数10msec程度の時間で消失するので、残留イオンが消失してから高電圧パルスを発生させて再始動させる場合、数10msec程度の時間では発光管(内管)の温度は未だ高く、内管が放電せずに外管内放電を引き起こす恐れがある。
【0015】
また、高電圧パルスの印加を、外管放電が起こっても持続させないように通常の始動時より短い間隔で印加、停止を行うことは想定していない。
【0016】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、高圧放電灯の外管放電を適性に回避する安全な高圧放電灯点灯装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明に係る高圧放電灯点灯装置は、発光管とこの発光管を保持・保護する外管とを有する高圧放電灯と、この高圧放電灯に電力を供給する給電部と、高圧放電灯に始動用高電圧を供給する始動パルス発生回路と、給電部及び始動パルス発生回路を制御する制御回路とを備えた高圧放電灯点灯装置において、発光管の温度上昇下降特性と相関のある温度特性を有する給電部の回路部品と温度的に結合し、所定の温度以上で通電又は遮断するサーマルスイッチと、このサーマルスイッチが通電又は遮断した時に、始動パルス発生回路を駆動しないようにする信号合成手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る高圧放電灯点灯装置は、発光管の温度上昇下降特性と相関のある温度特性を有する給電部の回路部品と温度的に結合し、所定の温度以上で通電又は遮断するサーマルスイッチと、このサーマルスイッチが通電又は遮断した時に、始動パルス発生回路を駆動しないようにする信号合成手段とを備えた構成にしたので、消灯後のランプ温度が高い状態で高電圧パルスをランプに印加すると、内管で放電せずに外管内で異常放電が起こる危険を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1を示す図で、高圧放電灯点灯装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1を示す図で、高圧放電灯の一例を示す構成図である。
【図3】実施の形態1を示す図で、制御のフローチャート図である。
【図4】実施の形態1を示す図で、通常始動制御時に印加するパルス波形を示す図である。
【図5】実施の形態1を示す図で、再始動時の始動制御時に印加するパルス波形を示す図である。
【図6】実施の形態1を示す図で、消灯後の内管の放電可能電圧の変化を示す図である。
【図7】実施の形態1を示す図で、消灯後の高圧放電灯(密閉相当器具使用)の消灯後の外管中心部の温度の変化を示す図である。
【図8】実施の形態1を示す図で、高圧放電灯(100W、裸点灯)の発光管最高温度部と外管中心部の温度特性を示す図である。
【図9】実施の形態1を示す図で、再始動時始動制御において正常に点灯しない場合の不連続なアーク放電を示す図である。
【図10】実施の形態2を示す図で、高圧放電灯点灯装置の構成を示すブロック図である。
【図11】実施の形態2を示す図で、ランプ点灯時と消灯時のランプ温度と点灯装置の発熱部温度の変化を示す図である。
【図12】実施の形態3を示す図で、高圧放電灯点灯装置の構成を示すブロック図である。
【図13】従来の高圧放電灯点灯装置の制御のフローチャート図である。
【図14】従来の高圧放電灯点灯装置の構成を示すブロック図である。
【図15】従来の電源電圧に高電圧パルスを重畳させて放電灯を始動させる始動パルス発生回路7を備えた放電灯点灯装置の回路図である。
【図16】従来の放電灯点灯装置の動作説明図である。
【図17】従来の放電灯点灯装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1乃至9は実施の形態1を示す図で、図1は高圧放電灯点灯装置の構成を示すブロック図、図2は高圧放電灯の一例を示す構成図、図3は制御のフローチャート図、図4は通常始動制御時に印加するパルス波形を示す図、図5は再始動時の始動制御時に印加するパルス波形を示す図、図6は消灯後の内管の放電可能電圧の変化を示す図、図7は消灯後の高圧放電灯(密閉相当器具使用)の消灯後の外管中心部の温度の変化を示す図、図8は高圧放電灯(100W、裸点灯)の発光管最高温度部と外管中心部の温度特性を示す図、図9は再始動時始動制御において正常に点灯しない場合の不連続なアーク放電を示す図である。
【0021】
図1に示すように、高圧放電灯点灯装置は、交流電源1が投入されると、制御電源回路10が制御電源を生成して、制御回路9(マイクロコンピューター)が動作し、昇圧インバータ3、降圧インバータ4、矩形波回路6、始動パルス発生回路7に制御信号を送り、それぞれが動作を開始する。昇圧インバータ3は、整流回路2で整流された出力を規定の電圧に昇圧し、降圧インバータ4は高圧放電灯8に流れる電流が規定の電流になるように出力を調整する。矩形波回路6は、高圧放電灯8に規定の周波数の交流矩形波電圧を出力する。始動パルス発生回路7は、高圧パルスを発生させて高圧放電灯8を始動させる。また、電流検出抵抗5のより高圧放電灯8の電流を検出し、点灯判別を行う。
高圧放電灯8に電力を供給する給電部は、交流電源1、整流回路2、昇圧インバータ3、降圧インバータ4、矩形波回路6で構成される。
【0022】
図2は高圧放電灯の一例のメタルハライドの構成を示す図である。図に示すように、高圧放電灯8は、発光管11(内管)にセラミック又は石英ガラスが使用されており、内部に一対の電極が封着されている。また、発光管11内を高真空にした後、アルゴンガス又はキセノンガス等の始動用ガスとともに、水銀・ナトリウム・金属ハロゲン化合物等の発光用の金属物質(添加物)が封入されている。
【0023】
外管12は、例えば硬質ガラスが使用されており(石英ガラスも使用される)、内部は高真空又は高真空後に窒素ガス等の不活性ガスが封入されている。外管12の役割は下記の通りである。
(1)発光管11の保持(保護)
(2)発光管11の保温
(3)リード線13a,9b等の酸化防止
(4)紫外線のカット
【0024】
E26口金14は、高圧放電灯8を器具内に保持し、点灯装置との電気的接続を行っている。図2のメタルハライドは、片口金である。E26口金14から外管12内に、発光管11の一方の電極に接続するリード線13a、発光管11の他方の電極に接続するリード線13bが設けられ、リード線13bには外管12内の不純ガスを吸収するゲッター15が取り付けられる。
【0025】
本実施の形態は、制御回路9(マイクロコンピューター)の始動パルス発生回路7の制御に特徴があり、以下に説明する方法により、高圧放電灯8が立ち消えした場合の再始動時始動制御を行うものである。以下、高圧放電灯8が立ち消えした場合の再始動時始動制御方法を、図3のフローチャートにより説明する。
【0026】
ステップS1において、点灯スイッチ(図示せず)をオンにして電源を投入する。始動パルス発生回路7による始動制御では、始動パルス発生回路7は、例えば図4に示すような、30秒駆動、30秒停止のパルス状の高電圧を発生して高圧放電灯8に印加する(ステップS2)。次に、ステップS3において、高圧放電灯8の点灯時間をカウントする点灯時間カウンタのリセットを行う。ステップS4において、降圧インバータ4からの交流電力により高圧放電灯8は点灯されて点灯制御され、点灯時間カウンタにより高圧放電灯8の点灯時間がカウントアップされる(ステップS5)。
【0027】
点灯中の高圧放電灯8の立ち消えを監視し(ステップS6)、高圧放電灯8が立ち消えした場合は、高圧放電灯8の点灯時間カウンタが10分を超えたかを判定する(ステップS7)。点灯時間カウンタが10分を超えていない場合は、ステップS2の始動制御に戻る。
【0028】
これは、点灯時間カウンタが10分を超えていない場合、即ち、点灯初期でランプ温度が未だ低い時は、高圧放電灯8の立ち消え直後に高電圧パルスを印加して再始動しても内管で放電が起こり、外管で放電が起こる恐れがないからである。
【0029】
高圧放電灯8の点灯時間カウンタが10分を超えた場合は、カウントがリセットされ(ステップS8)、そして1だけカウントアップするとともに統計的に発光管が再始動しやすくなる時間(150W以下の低電力高圧放電灯では、例えば5分程度)点灯を停止する(ステップS6)。
【0030】
以下、高圧放電灯8が立ち消えしてから、例えば5分程度点灯を停止する理由、効果について説明する。
図6は消灯後の内管の放電可能電圧の変化を示す図で、高圧放電灯8は、安定点灯している状態から消灯すると、消灯直後において高圧放電灯8の発光管11が非常に高温、高圧となっているため、内管の放電可能電圧が安定点灯時の電圧から短時間で急激に上昇し、その後、時間と共に高圧放電灯8の発光管温度が低下して、内管の放電可能電圧も低下する。消灯後5分で、内管の放電可能電圧は4kv程度となる。
【0031】
消灯後の高圧放電灯8の内管の放電可能電圧は、発光管温度が関係するが、図7は消灯後の高圧放電灯(100W、密閉相当器具使用)の消灯後の外管中心部の温度の変化の一例を示す図であり、100Wのランプを1時間連続点灯後消灯したときの外管中心部表面温度の変化を測定したものである。ランプを1時間連続点灯した時の外管表面温度は338℃で、5分冷却(停止)した時の外管表面温度は193℃であり、5分間の冷却で、約57%温度が下がる。
【0032】
また、図8は高圧放電灯(100W、裸点灯)の発光管最高温度部と外管中心部の温度特性の一例を示す図で、周囲温度26℃において、エージング15分後の冷却特性を測定したものである。点灯後10分で、発光管11、外管12とも安定温度近くになる。点灯後15分の発光管表面温度は900℃以上、外管中心部表面温度は200℃以上になる。消灯5分後の再始動時は、発光管表面温度は280℃、外管中心部表面温度は100℃である。
【0033】
ところで、高圧放電灯8は図2に示す構造であり、外管内のリード線13aとリード線13bの絶縁距離と、E26口金14の異極間の沿面距離の制約から、高圧放電灯8に印加する高電圧は、5kv以下にする必要がある。
【0034】
また、発光管11が始動できる最低電圧は3kvである。
【0035】
従って、高圧放電灯8の消灯後、内管の放電可能電圧が5kvを下回った時点からは何時でも、3〜5kvの高圧パルスを高圧放電灯8に印加すれば、外管内で放電が起こることなく、発光管11が放電し正常点灯させることができる。
【0036】
しかし、製品としては、消灯後の停止期間はできるだけ短くしたい。そこで、内管の放電可能電圧が5kvを下回ったら、直ちに再始動させることが望ましい。停止期間は、図6より、内管の放電可能電圧が約4kvとなる5分程度が適していると言える。
【0037】
高圧放電灯8が立ち消えしてから、例えば5分程度点灯を停止することにより、製品の価値を下げることなく、かつ外管内での放電を抑え、発光管11が放電し正常点灯させることができる。
【0038】
図3に戻り、ステップS10における、始動パルス発生回路7による再始動時始動制御では、始動パルス発生回路7は図5に示すように、仮に外管放電が起こっても持続させないように、ステップS2よりも短い間隔の、例えば10秒駆動、10秒停止のパルス状の高電圧を発生して高圧放電灯8の封入ガスの絶縁破壊を行う。そして、60秒間のパルス印加の後に、例えば60秒間の休止期間を設ける。これにより、発光管11グロー放電での加熱を抑え、スムーズに始動させることができる。
【0039】
ステップS10で、高圧放電灯8の点灯判別を行い、正常に点灯している場合は、ステップS4に戻る。正常に点灯していない場合は、ステップS12で不連続なアーク放電数(図9参照)が、例えば1024を超えたかを判定し、超えない場合はステップS10に戻り、超えた場合はステップS13でカウント数kが3であるかどうかを判断し、今はカウント数が1であるからステップS9に戻る。
【0040】
ステップS9で、1だけカウントアップし再び再始動時始動制御を行う(ステップS10)。点灯判別を行い(ステップS11)、正常に点灯している場合は、ステップS4に戻る。正常に点灯していない場合は、ステップS12で不連続なアーク放電数が、例えば1024を超えたかを判定し、超えない場合はステップS10に戻り、超えた場合はステップS13でカウント数kが3であるかどうかを判断し、今はカウント数が2であるから再度ステップS9に戻る。
【0041】
ステップS9で、1だけカウントアップし再び再始動時始動制御を行う(ステップS10)。点灯判別を行い(ステップS11)、正常に点灯している場合は、ステップS4に戻る。正常に点灯していない場合は、ステップS12で不連続なアーク放電数が、例えば1024を超えたかを判定し、超えない場合はステップS10に戻り、超えた場合はステップS13でカウント数kが3であるかどうかを判断し、今はカウント数が3であるから、ステップS14で点灯装置は保護停止となる。
【0042】
上記のように、高圧放電灯8が点灯初期に立ち消えした場合は、ランプ温度が低く内管が放電可能であるから直ちに再始動して、不要な停止は行わないことにより、製品の価値を高めることができる。
【0043】
また、高圧放電灯8がランプ温度が安定するまで点灯した後に立ち消えした場合は、直ちに高電圧パルスを印加して再始動すると内管で放電せずに、外管内放電を引き起こす恐れがあるが、立ち消え後5分程度の停止を行うことにより、外管内での異常放電を回避できる。
【0044】
また、再始動時の高電圧パルスの印加を、通常の始動時より短い間隔で印加、停止を行うことにより、外管放電が起こっても持続させないようにすることができる。
【0045】
また、不連続なアーク放電を検出した場合に直ちに停止せず、例えば3回再始動モードを試行し、異常判別を確実にし、誤動作を防ぐことができる。
【0046】
実施の形態2.
図10、11は実施の形態2を示す図で、図10は高圧放電灯点灯装置の構成を示すブロック図、図11はランプ点灯時と消灯時のランプ温度と点灯装置の発熱部温度の変化を示す図である。
実施の形態1では、マイクロコンピューターにより、点灯時間カウンタにより高圧放電灯8の点灯時間をカウントして、点灯時間が所定時間より短い場合は、立ち消え後直ちに通常の始動制御を行い、点灯時間が所定時間より長い場合は、始動パルス発生回路7が所定の停止期間後にパルス印加を開始し、このパルス印加は通常の始動時より短い間隔で印加、停止を行うように制御する例を示したが、本実施の形態では、ランプの温度上昇下降特性と相関のある温度特性を有する点灯装置の回路部品温度を検知して、回路部品温度が一定温度を超える場合は、始動パルス発生回路を駆動しないようにし、ランプが消灯して回路部品温度が下がり、所定時間後に一定温度以下になると始動パルス発生回路を駆動するようにしたものである。
【0047】
ランプ温度と点灯装置の例えば昇圧インバータ3内の部品であるトランジスタQ5の温度とは相関があり、ランプ点灯中とランプ消灯後のそれぞれの温度は、例えば図11に示すように変化する。このようにランプ温度とトランジスタQ5の温度とは変化が近似している。
【0048】
図10により、高圧放電灯点灯装置の構成を図1と異なる部分のみ説明する。昇圧インバータ3の一回路部品であるトランジスタQ5と温度的にカップリングされたサーマルスイッチS1を設ける。温度的にカップリング(結合)されたとは、トランジスタQ5の熱がサーマルスイッチS1に効率良く伝達するように結合されたことをいう。このサーマルスイッチS1は、ランプ温度が例えば200℃に相当するトランジスタQ5の温度Th(図11の点線)以上で通電するように設定する。そして、サーマルスイッチS1が通電した時には始動パルス発生回路7を駆動しないようにする信号合成手段16を備える。
【0049】
トランジスタQ5の温度がTh以上であれば、サーマルスイッチS1はオンになり、制御回路9から始動パルス発生回路7への制御信号がGNDに短絡され、始動パルス発生回路7は動作しない。ランプが消灯し、温度が下がってくるとトランジスタQ5の温度も下がり、所定時間後トランジスタQ5の温度がTh以下になるとサーマルスイッチS1はオフし、始動パルス発生回路7に制御回路9からの信号が供給されるようになり、始動パルス発生回路7を駆動する。
【0050】
サーマルスイッチS1は、トランジスタQ5の温度Th以上で通電するように設定したが、逆にトランジスタQ5の温度Th以上で遮断するように設定してもよい。この場合は、信号合成手段16は、サーマルスイッチS1が遮断した時に始動パルス発生回路7を駆動しないように動作する。
【0051】
本実施の形態によれば、昇圧インバータ3の一回路部品であるトランジスタQ5と温度的にカップリングされたサーマルスイッチS1を設け、サーマルスイッチS1は、ランプ温度が例えば200℃に相当するトランジスタQ5の温度Th(図11の点線)以上で通電するように設定し、サーマルスイッチS1が通電した時には始動パルス発生回路7を駆動しないようにする信号合成手段16を備えることにより、消灯後のランプ温度が高い状態で高電圧パルスをランプに印加すると、内管で放電せずに外管内で異常放電が起こる危険を回避できる。
【0052】
実施の形態3.
図12は実施の形態3を示す図で、高圧放電灯点灯装置の構成を示すブロック図である。
図において、電流検出抵抗5からの電流検出信号をコンパレータ17(点灯判別手段)で判別して、点灯時に1レベルとなる信号とし、この信号の変化を利用して(コンパレータ17に直列にカップリングコンデンサ20を接続することにより信号の変化を通す)点灯タイマ回路18(例えば555シリーズタイマICを使用した回路)のリセットを行う。
【0053】
点灯タイマ回路18の出力は、リセット後カウンタが例えば10分(第1の所定時間)になるまで、Lレベルとし、この信号で再始動遅延回路であるCR遅延回路(他の遅延回路でもよい)のコンデンサCtに電荷が貯まらないよう放電しておく。再始動遅延回路19は点灯時に1となる信号でコンデンサCtを充電、消灯時にコンデンサCt→抵抗Rtの経路での放電を行い、その時定数によりQtを飽和領域に維持できる時間、QtのドレインをGND電位に保持する。この再始動遅延回路19で制御回路9から出力される始動パルス発生回路駆動信号をコンデンサCt、抵抗Rtの時定数時間(第2の所定時間)GND電位に保持、遮断する。ダイオードDは消灯時にコンデンサCtの電荷がコンパレータ17側に逆流するのを防ぎ、充電用抵抗R1がダイオードDに直列に接続されている。
【0054】
本実施の形態によれば、ランプの点灯時間が10分(第1の所定時間)を超える場合、消灯時にコンデンサCt、抵抗Rtの時定数時間(第2の所定時間)始動パルス発生回路7は停止するので、ランプが高温・高圧の状態で始動パルスがランプに印加されないため、内管で放電せずに外管内で異常放電が起こる危険を回避できる。
【0055】
また、ランプの点灯時間が10分以内の場合、コンデンサCtに電荷がないため再始動遅延回路は働かず、直ぐに始動パルスが発生するので、ランプ温度が低い状態での必要のない停止期間を無くすことができる。
【符号の説明】
【0056】
1 交流電源、2 整流回路、3 昇圧インバータ、4 降圧インバータ、5 電流検出抵抗、6 矩形波回路、7 始動パルス発生回路、8 高圧放電灯、9 制御回路、10 制御電源回路、11 発光管、12 外管、13a,13b リード線、14 E26口金、15 ゲッター、16 信号合成手段、17 コンパレータ、18 点灯タイマ回路、19 再始動遅延回路。
【技術分野】
【0001】
この発明は、水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ等の高圧放電灯の外管内放電を的確に回避する安全な高圧放電灯点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ等の高圧放電灯は、寿命末期になると放電が不安定になり光束が低下し、更には、立ち消え等の問題が発生する。従来の高圧放電灯は、図13に示すように、点灯制御されて点灯中の放電灯が立ち消えした場合、直後もしくは短時間後、再始動モードに移行してパルスを印加していたため、発光管(内管)では放電できず、外管内での放電の可能性が高くなっていた。外管内のリード線間で放電が起こると大電流が流れ、外管が割れたり、インバータが破壊する恐れがある。
【0003】
高圧放電灯は、安定点灯している状態から消灯すると、消灯直後において高圧放電灯の発光管が非常に高温、高圧となっているため、絶縁破壊電圧が安定点灯時の電圧から短時間で急激に上昇し、その後、時間と共に高圧放電灯の発光管温度が低下し、絶縁破壊電圧も低下することが知られている。
【0004】
このように、高圧放電灯は、始動の際、数kv乃至数十kvの高電圧を印加する必要があり、そして、始動失敗の際、始動を繰り返すように構成されているので、放電灯の故障、寿命などにより始動困難なときは、長時間高電圧が繰り返し発生して点灯装置に損傷を与えたり、感電させたりする恐れがある。
【0005】
そこで、点灯装置等に損傷を与えたり、感電させたりする恐れの少ない放電灯を提供することを目的として、図14に示すように、放電灯103に電力を供給する給電部101と、放電灯103に始動用高電圧を供給する始動用高電圧発生手段102と、放電灯103に供給される電流を検出する電流検出手段104と、放電灯103の状態を監視して給電部101と始動用高電圧発生手段102を制御する監視制御部105とを備え、監視制御部105は、始動の際、先ず始動用高電圧発生手段102を駆動し、始動状態を電流検出手段104の出力により監視し、始動失敗の場合、再度始動用高電圧発生手段102を駆動し始動状態を電流検出手段104の出力により監視するというシーケンスを所定回数まで繰り返し、なおかつ、始動失敗のときは始動用高電圧発生手段102の駆動を停止すると共に給電部101による給電を停止する放電灯点灯装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、放電灯はランプ交換などの目的で接続端子を介して点灯装置に接続されているのが一般的である。接続端子による接触状態が不十分であると次のような問題が生じる。交流電源を投入した直後の始動時には放電灯が点灯可能である接触状態であったとしても、点灯途中で接触状態が不良になって放電灯が立ち消えする場合がある。放電灯が立ち消えした直後には、放電灯の電極間にイオンが残留しており、残留イオンが消失するには数10msec程度の時間を要する。残留イオンの消失前に高電圧パルスが印加されると、接続端子の接触状態が不十分であるときには点灯状態に至らず微放電が開始され、この微放電が継続して接続端子に電流が流れ続けることになる。このような電流が流れると接続端子に対する電気的ストレスが大きくなり、発火・発煙が生じることがある。そこで、再始動時に放電灯内の残留イオンが消失してから高電圧パルスを発生させることによって放電灯に微放電が生じるのを防止し、接続端子などに大きな電気的ストレスがかからないようにした放電灯点灯装置がある。
【0007】
図15は電源電圧に高電圧パルスを重畳させて放電灯を始動させる始動パルス発生回路7を備えた放電灯点灯装置の回路図である。図において、始動パルス発生回路7は、交流電源ACの両端間に接続された一対の抵抗R1、R2の直列回路と、抵抗R2に並列接続されたコンデンサC1と、安定器Lの一次巻線N1に直列接続されたコンデンサC2およびスイッチング素子Q1(例えば、トライアック)と、両抵抗R1、R2の接続点とスイッチング素子Q1の制御端子(ゲート)との間に接続された電圧応答型のトリガ素子Q2(例えば、ダイアック)及び抵抗R3とを備える。従って、図16(a)のような交流電源ACの電圧を抵抗R1、R2によって分圧した電圧がトリガ素子Q2のブレークオーバ電圧を超えると、トリガ素子Q2がオンになり、抵抗R3を介してスイッチング素子Q1の制御端子に電流が流れる。するとスイッチング素子Q1がオンになり、交流電源ACから安定器Lの一次巻線N1を介してコンデンサC2に図16(b)に示すような充電電流Icが流れる。コンデンサC2が充電されると充電電流は停止し、スイッチング素子Q1はオフになる。安定器Lには時刻t1においてスイッチング素子Q1がオンになった時点から時刻t2においてスイッチング素子Q2がオフになる時点まで、コンデンサc2への充電電流Icが流れることになる。この充電電流Icは交流電源ACの各半サイクルごとに流れる。コンデンサc2への充電電流Icは安定器Lの一次巻線N1を通して流れるから、安定器Lの二次巻線N2には一次巻線N1への印加電圧を昇圧した電圧が発生する。安定器Lの二次巻線N2に高電圧パルスが発生し、この高電圧パルスが交流電源ACの電圧に重畳されることによって、図16(c)のような電圧VDLが放電灯DLに印加される。このようにして、放電灯DLに高電圧を印加することによって放電灯DLは始動する。
【0008】
放電灯DLが点灯した状態では高電圧パルスを発生させる必要がないから、放電灯DLが点灯したことを点灯判別回路OCによって検出して始動パルス発生回路7からの高電圧パルスの発生を停止させる。点灯判別回路OCは、一次巻線が放電灯DLと直列接続された電流トランスCTと、電流トランスCTの二次巻線を全波整流する整流器DB1と、整流器DB1の出力を平滑化するコンデンサC3と、コンデンサC3の両端電圧が所定電圧以上であるときにオンになるトランジスタQ3と、コンデンサC3の両端電圧に応じてトランジスタQ3にベース電流を与える抵抗R4、R5と、トランジスタQ3のコレクタ−エミッタ間に直流側端が接続された全波整流器DB2とを備え、コンデンサC3と抵抗R5との接続点の間に、コンデンサC3の充電電荷の放電時間を調節するための抵抗R6を挿入している。コンデンサC3と抵抗R6とによる時定数は、放電灯DLの消灯後に残留イオンが消失する時間に応じて適宜設定される。コンデンサC3及び抵抗R6によって遅延手段が構成される。
【0009】
図17に示すように、時刻t3で交流電源ACを投入したときには、放電灯DLが不点灯状態であって、図17(a)のようにランプ電流IDLが流れていないから、電流トランスCTの一次巻線には電流は流れない。従って、図17(b)のようにコンデンサC3の両端に電圧が発生せず、図17(c)のようにトランジスタQ3がオフであって、始動パルス発生回路7が動作する。図17(d)のように放電灯DLが点灯するまで高電圧パルスがが繰り返し発生する。放電灯DLが時刻t4で点灯すると、図17(a)のようにランプ電流IDLが流れ、図17(b)のようにコンデンサC3が充電されて両端電圧が上昇するから、図17(c)のようにトランジスタQ3がオンになって、図17(d)のように始動パルス発生回路7からの高電圧パルスの発生が停止する。
【0010】
放電灯DLの点灯状態において、図17(a)に示すように、時刻t5で立ち消えなどによって不点灯状態に移行すると、コンデンサC3の充電電荷は図17(b)のようにコンデンサC3と抵抗R6とによって決定された時定数に従って放電する。時刻t6においてコンデンサC3の端子電圧がトランジスタQ3のオン状態を維持できなくなるまで低下すると、図17(c)のようにトランジスタQ3がオフになって図17(d)のように始動パルス発生回路7から高電圧パルスが再び発生し、放電灯DLを再始動しようとする。ここで、コンデンサC3と抵抗R6とによって決定される時定数は、放電灯DLが点灯状態から不点灯状態に移行した後、放電灯DLの内部の残留イオンが消失する程度の時間よりも長い間、トランジスタQ3がオン状態に保たれるように設定される。従って、放電灯DLが点灯状態から不点灯状態に移行して残留イオンが消失する前に始動パルス発生回路7から高電圧パルスが発生して放電灯DLに微放電が生じることが防止される(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2778257号公報
【特許文献2】特開平5−174985号公報
【特許文献3】特開平11−176583号公報
【特許文献4】特開平11−054290号公報
【特許文献5】特開平10−270182号公報
【特許文献6】実開平04−119998号公報
【特許文献7】特開平10−106767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来の放電灯点灯装置(特許文献1)は、監視制御部105は、始動の際、先ず始動用高電圧発生手段102を駆動し、始動状態を電流検出手段104の出力により監視し、始動失敗の場合、再度始動用高電圧発生手段102を駆動し始動状態を電流検出手段104の出力により監視するというシーケンスを所定回数まで繰り返し、なおかつ、始動失敗のときは始動用高電圧発生手段102の駆動を停止すると共に給電部101による給電を停止するようにしているが、内管が高温・高圧のときに高電圧パルスを印加するため、内管が放電せずに外管内放電を引き起こす恐れがある。
【0013】
また、高電圧パルスの印加を、外管放電が起こっても持続させないように通常の始動時より短い間隔で印加、停止を行うことは想定していない。
【0014】
従来の放電灯点灯装置(特許文献2)は、放電灯DLが立ち消えした直後には放電灯DLの電極間にイオンが残留しており、残留イオンの消失前に高電圧パルスが印加されると、接続端子の接触状態が不十分であるときには点灯状態に至らずに微放電が開始され、この微放電が継続して接続端子に電流が流れ続け、接続端子に対する電気的ストレスが大きくなり、発火・発煙が生じることがあるので、放電灯DLが点灯状態から不点灯状態に移行したとき残留イオンが消失してから始動パルス発生回路7から高電圧パルスを発生させて再始動させ、放電灯DLに微放電が生じることを防止している。しかし、立ち消え後残留イオンは数10msec程度の時間で消失するので、残留イオンが消失してから高電圧パルスを発生させて再始動させる場合、数10msec程度の時間では発光管(内管)の温度は未だ高く、内管が放電せずに外管内放電を引き起こす恐れがある。
【0015】
また、高電圧パルスの印加を、外管放電が起こっても持続させないように通常の始動時より短い間隔で印加、停止を行うことは想定していない。
【0016】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、高圧放電灯の外管放電を適性に回避する安全な高圧放電灯点灯装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明に係る高圧放電灯点灯装置は、発光管とこの発光管を保持・保護する外管とを有する高圧放電灯と、この高圧放電灯に電力を供給する給電部と、高圧放電灯に始動用高電圧を供給する始動パルス発生回路と、給電部及び始動パルス発生回路を制御する制御回路とを備えた高圧放電灯点灯装置において、発光管の温度上昇下降特性と相関のある温度特性を有する給電部の回路部品と温度的に結合し、所定の温度以上で通電又は遮断するサーマルスイッチと、このサーマルスイッチが通電又は遮断した時に、始動パルス発生回路を駆動しないようにする信号合成手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る高圧放電灯点灯装置は、発光管の温度上昇下降特性と相関のある温度特性を有する給電部の回路部品と温度的に結合し、所定の温度以上で通電又は遮断するサーマルスイッチと、このサーマルスイッチが通電又は遮断した時に、始動パルス発生回路を駆動しないようにする信号合成手段とを備えた構成にしたので、消灯後のランプ温度が高い状態で高電圧パルスをランプに印加すると、内管で放電せずに外管内で異常放電が起こる危険を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1を示す図で、高圧放電灯点灯装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施の形態1を示す図で、高圧放電灯の一例を示す構成図である。
【図3】実施の形態1を示す図で、制御のフローチャート図である。
【図4】実施の形態1を示す図で、通常始動制御時に印加するパルス波形を示す図である。
【図5】実施の形態1を示す図で、再始動時の始動制御時に印加するパルス波形を示す図である。
【図6】実施の形態1を示す図で、消灯後の内管の放電可能電圧の変化を示す図である。
【図7】実施の形態1を示す図で、消灯後の高圧放電灯(密閉相当器具使用)の消灯後の外管中心部の温度の変化を示す図である。
【図8】実施の形態1を示す図で、高圧放電灯(100W、裸点灯)の発光管最高温度部と外管中心部の温度特性を示す図である。
【図9】実施の形態1を示す図で、再始動時始動制御において正常に点灯しない場合の不連続なアーク放電を示す図である。
【図10】実施の形態2を示す図で、高圧放電灯点灯装置の構成を示すブロック図である。
【図11】実施の形態2を示す図で、ランプ点灯時と消灯時のランプ温度と点灯装置の発熱部温度の変化を示す図である。
【図12】実施の形態3を示す図で、高圧放電灯点灯装置の構成を示すブロック図である。
【図13】従来の高圧放電灯点灯装置の制御のフローチャート図である。
【図14】従来の高圧放電灯点灯装置の構成を示すブロック図である。
【図15】従来の電源電圧に高電圧パルスを重畳させて放電灯を始動させる始動パルス発生回路7を備えた放電灯点灯装置の回路図である。
【図16】従来の放電灯点灯装置の動作説明図である。
【図17】従来の放電灯点灯装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1.
図1乃至9は実施の形態1を示す図で、図1は高圧放電灯点灯装置の構成を示すブロック図、図2は高圧放電灯の一例を示す構成図、図3は制御のフローチャート図、図4は通常始動制御時に印加するパルス波形を示す図、図5は再始動時の始動制御時に印加するパルス波形を示す図、図6は消灯後の内管の放電可能電圧の変化を示す図、図7は消灯後の高圧放電灯(密閉相当器具使用)の消灯後の外管中心部の温度の変化を示す図、図8は高圧放電灯(100W、裸点灯)の発光管最高温度部と外管中心部の温度特性を示す図、図9は再始動時始動制御において正常に点灯しない場合の不連続なアーク放電を示す図である。
【0021】
図1に示すように、高圧放電灯点灯装置は、交流電源1が投入されると、制御電源回路10が制御電源を生成して、制御回路9(マイクロコンピューター)が動作し、昇圧インバータ3、降圧インバータ4、矩形波回路6、始動パルス発生回路7に制御信号を送り、それぞれが動作を開始する。昇圧インバータ3は、整流回路2で整流された出力を規定の電圧に昇圧し、降圧インバータ4は高圧放電灯8に流れる電流が規定の電流になるように出力を調整する。矩形波回路6は、高圧放電灯8に規定の周波数の交流矩形波電圧を出力する。始動パルス発生回路7は、高圧パルスを発生させて高圧放電灯8を始動させる。また、電流検出抵抗5のより高圧放電灯8の電流を検出し、点灯判別を行う。
高圧放電灯8に電力を供給する給電部は、交流電源1、整流回路2、昇圧インバータ3、降圧インバータ4、矩形波回路6で構成される。
【0022】
図2は高圧放電灯の一例のメタルハライドの構成を示す図である。図に示すように、高圧放電灯8は、発光管11(内管)にセラミック又は石英ガラスが使用されており、内部に一対の電極が封着されている。また、発光管11内を高真空にした後、アルゴンガス又はキセノンガス等の始動用ガスとともに、水銀・ナトリウム・金属ハロゲン化合物等の発光用の金属物質(添加物)が封入されている。
【0023】
外管12は、例えば硬質ガラスが使用されており(石英ガラスも使用される)、内部は高真空又は高真空後に窒素ガス等の不活性ガスが封入されている。外管12の役割は下記の通りである。
(1)発光管11の保持(保護)
(2)発光管11の保温
(3)リード線13a,9b等の酸化防止
(4)紫外線のカット
【0024】
E26口金14は、高圧放電灯8を器具内に保持し、点灯装置との電気的接続を行っている。図2のメタルハライドは、片口金である。E26口金14から外管12内に、発光管11の一方の電極に接続するリード線13a、発光管11の他方の電極に接続するリード線13bが設けられ、リード線13bには外管12内の不純ガスを吸収するゲッター15が取り付けられる。
【0025】
本実施の形態は、制御回路9(マイクロコンピューター)の始動パルス発生回路7の制御に特徴があり、以下に説明する方法により、高圧放電灯8が立ち消えした場合の再始動時始動制御を行うものである。以下、高圧放電灯8が立ち消えした場合の再始動時始動制御方法を、図3のフローチャートにより説明する。
【0026】
ステップS1において、点灯スイッチ(図示せず)をオンにして電源を投入する。始動パルス発生回路7による始動制御では、始動パルス発生回路7は、例えば図4に示すような、30秒駆動、30秒停止のパルス状の高電圧を発生して高圧放電灯8に印加する(ステップS2)。次に、ステップS3において、高圧放電灯8の点灯時間をカウントする点灯時間カウンタのリセットを行う。ステップS4において、降圧インバータ4からの交流電力により高圧放電灯8は点灯されて点灯制御され、点灯時間カウンタにより高圧放電灯8の点灯時間がカウントアップされる(ステップS5)。
【0027】
点灯中の高圧放電灯8の立ち消えを監視し(ステップS6)、高圧放電灯8が立ち消えした場合は、高圧放電灯8の点灯時間カウンタが10分を超えたかを判定する(ステップS7)。点灯時間カウンタが10分を超えていない場合は、ステップS2の始動制御に戻る。
【0028】
これは、点灯時間カウンタが10分を超えていない場合、即ち、点灯初期でランプ温度が未だ低い時は、高圧放電灯8の立ち消え直後に高電圧パルスを印加して再始動しても内管で放電が起こり、外管で放電が起こる恐れがないからである。
【0029】
高圧放電灯8の点灯時間カウンタが10分を超えた場合は、カウントがリセットされ(ステップS8)、そして1だけカウントアップするとともに統計的に発光管が再始動しやすくなる時間(150W以下の低電力高圧放電灯では、例えば5分程度)点灯を停止する(ステップS6)。
【0030】
以下、高圧放電灯8が立ち消えしてから、例えば5分程度点灯を停止する理由、効果について説明する。
図6は消灯後の内管の放電可能電圧の変化を示す図で、高圧放電灯8は、安定点灯している状態から消灯すると、消灯直後において高圧放電灯8の発光管11が非常に高温、高圧となっているため、内管の放電可能電圧が安定点灯時の電圧から短時間で急激に上昇し、その後、時間と共に高圧放電灯8の発光管温度が低下して、内管の放電可能電圧も低下する。消灯後5分で、内管の放電可能電圧は4kv程度となる。
【0031】
消灯後の高圧放電灯8の内管の放電可能電圧は、発光管温度が関係するが、図7は消灯後の高圧放電灯(100W、密閉相当器具使用)の消灯後の外管中心部の温度の変化の一例を示す図であり、100Wのランプを1時間連続点灯後消灯したときの外管中心部表面温度の変化を測定したものである。ランプを1時間連続点灯した時の外管表面温度は338℃で、5分冷却(停止)した時の外管表面温度は193℃であり、5分間の冷却で、約57%温度が下がる。
【0032】
また、図8は高圧放電灯(100W、裸点灯)の発光管最高温度部と外管中心部の温度特性の一例を示す図で、周囲温度26℃において、エージング15分後の冷却特性を測定したものである。点灯後10分で、発光管11、外管12とも安定温度近くになる。点灯後15分の発光管表面温度は900℃以上、外管中心部表面温度は200℃以上になる。消灯5分後の再始動時は、発光管表面温度は280℃、外管中心部表面温度は100℃である。
【0033】
ところで、高圧放電灯8は図2に示す構造であり、外管内のリード線13aとリード線13bの絶縁距離と、E26口金14の異極間の沿面距離の制約から、高圧放電灯8に印加する高電圧は、5kv以下にする必要がある。
【0034】
また、発光管11が始動できる最低電圧は3kvである。
【0035】
従って、高圧放電灯8の消灯後、内管の放電可能電圧が5kvを下回った時点からは何時でも、3〜5kvの高圧パルスを高圧放電灯8に印加すれば、外管内で放電が起こることなく、発光管11が放電し正常点灯させることができる。
【0036】
しかし、製品としては、消灯後の停止期間はできるだけ短くしたい。そこで、内管の放電可能電圧が5kvを下回ったら、直ちに再始動させることが望ましい。停止期間は、図6より、内管の放電可能電圧が約4kvとなる5分程度が適していると言える。
【0037】
高圧放電灯8が立ち消えしてから、例えば5分程度点灯を停止することにより、製品の価値を下げることなく、かつ外管内での放電を抑え、発光管11が放電し正常点灯させることができる。
【0038】
図3に戻り、ステップS10における、始動パルス発生回路7による再始動時始動制御では、始動パルス発生回路7は図5に示すように、仮に外管放電が起こっても持続させないように、ステップS2よりも短い間隔の、例えば10秒駆動、10秒停止のパルス状の高電圧を発生して高圧放電灯8の封入ガスの絶縁破壊を行う。そして、60秒間のパルス印加の後に、例えば60秒間の休止期間を設ける。これにより、発光管11グロー放電での加熱を抑え、スムーズに始動させることができる。
【0039】
ステップS10で、高圧放電灯8の点灯判別を行い、正常に点灯している場合は、ステップS4に戻る。正常に点灯していない場合は、ステップS12で不連続なアーク放電数(図9参照)が、例えば1024を超えたかを判定し、超えない場合はステップS10に戻り、超えた場合はステップS13でカウント数kが3であるかどうかを判断し、今はカウント数が1であるからステップS9に戻る。
【0040】
ステップS9で、1だけカウントアップし再び再始動時始動制御を行う(ステップS10)。点灯判別を行い(ステップS11)、正常に点灯している場合は、ステップS4に戻る。正常に点灯していない場合は、ステップS12で不連続なアーク放電数が、例えば1024を超えたかを判定し、超えない場合はステップS10に戻り、超えた場合はステップS13でカウント数kが3であるかどうかを判断し、今はカウント数が2であるから再度ステップS9に戻る。
【0041】
ステップS9で、1だけカウントアップし再び再始動時始動制御を行う(ステップS10)。点灯判別を行い(ステップS11)、正常に点灯している場合は、ステップS4に戻る。正常に点灯していない場合は、ステップS12で不連続なアーク放電数が、例えば1024を超えたかを判定し、超えない場合はステップS10に戻り、超えた場合はステップS13でカウント数kが3であるかどうかを判断し、今はカウント数が3であるから、ステップS14で点灯装置は保護停止となる。
【0042】
上記のように、高圧放電灯8が点灯初期に立ち消えした場合は、ランプ温度が低く内管が放電可能であるから直ちに再始動して、不要な停止は行わないことにより、製品の価値を高めることができる。
【0043】
また、高圧放電灯8がランプ温度が安定するまで点灯した後に立ち消えした場合は、直ちに高電圧パルスを印加して再始動すると内管で放電せずに、外管内放電を引き起こす恐れがあるが、立ち消え後5分程度の停止を行うことにより、外管内での異常放電を回避できる。
【0044】
また、再始動時の高電圧パルスの印加を、通常の始動時より短い間隔で印加、停止を行うことにより、外管放電が起こっても持続させないようにすることができる。
【0045】
また、不連続なアーク放電を検出した場合に直ちに停止せず、例えば3回再始動モードを試行し、異常判別を確実にし、誤動作を防ぐことができる。
【0046】
実施の形態2.
図10、11は実施の形態2を示す図で、図10は高圧放電灯点灯装置の構成を示すブロック図、図11はランプ点灯時と消灯時のランプ温度と点灯装置の発熱部温度の変化を示す図である。
実施の形態1では、マイクロコンピューターにより、点灯時間カウンタにより高圧放電灯8の点灯時間をカウントして、点灯時間が所定時間より短い場合は、立ち消え後直ちに通常の始動制御を行い、点灯時間が所定時間より長い場合は、始動パルス発生回路7が所定の停止期間後にパルス印加を開始し、このパルス印加は通常の始動時より短い間隔で印加、停止を行うように制御する例を示したが、本実施の形態では、ランプの温度上昇下降特性と相関のある温度特性を有する点灯装置の回路部品温度を検知して、回路部品温度が一定温度を超える場合は、始動パルス発生回路を駆動しないようにし、ランプが消灯して回路部品温度が下がり、所定時間後に一定温度以下になると始動パルス発生回路を駆動するようにしたものである。
【0047】
ランプ温度と点灯装置の例えば昇圧インバータ3内の部品であるトランジスタQ5の温度とは相関があり、ランプ点灯中とランプ消灯後のそれぞれの温度は、例えば図11に示すように変化する。このようにランプ温度とトランジスタQ5の温度とは変化が近似している。
【0048】
図10により、高圧放電灯点灯装置の構成を図1と異なる部分のみ説明する。昇圧インバータ3の一回路部品であるトランジスタQ5と温度的にカップリングされたサーマルスイッチS1を設ける。温度的にカップリング(結合)されたとは、トランジスタQ5の熱がサーマルスイッチS1に効率良く伝達するように結合されたことをいう。このサーマルスイッチS1は、ランプ温度が例えば200℃に相当するトランジスタQ5の温度Th(図11の点線)以上で通電するように設定する。そして、サーマルスイッチS1が通電した時には始動パルス発生回路7を駆動しないようにする信号合成手段16を備える。
【0049】
トランジスタQ5の温度がTh以上であれば、サーマルスイッチS1はオンになり、制御回路9から始動パルス発生回路7への制御信号がGNDに短絡され、始動パルス発生回路7は動作しない。ランプが消灯し、温度が下がってくるとトランジスタQ5の温度も下がり、所定時間後トランジスタQ5の温度がTh以下になるとサーマルスイッチS1はオフし、始動パルス発生回路7に制御回路9からの信号が供給されるようになり、始動パルス発生回路7を駆動する。
【0050】
サーマルスイッチS1は、トランジスタQ5の温度Th以上で通電するように設定したが、逆にトランジスタQ5の温度Th以上で遮断するように設定してもよい。この場合は、信号合成手段16は、サーマルスイッチS1が遮断した時に始動パルス発生回路7を駆動しないように動作する。
【0051】
本実施の形態によれば、昇圧インバータ3の一回路部品であるトランジスタQ5と温度的にカップリングされたサーマルスイッチS1を設け、サーマルスイッチS1は、ランプ温度が例えば200℃に相当するトランジスタQ5の温度Th(図11の点線)以上で通電するように設定し、サーマルスイッチS1が通電した時には始動パルス発生回路7を駆動しないようにする信号合成手段16を備えることにより、消灯後のランプ温度が高い状態で高電圧パルスをランプに印加すると、内管で放電せずに外管内で異常放電が起こる危険を回避できる。
【0052】
実施の形態3.
図12は実施の形態3を示す図で、高圧放電灯点灯装置の構成を示すブロック図である。
図において、電流検出抵抗5からの電流検出信号をコンパレータ17(点灯判別手段)で判別して、点灯時に1レベルとなる信号とし、この信号の変化を利用して(コンパレータ17に直列にカップリングコンデンサ20を接続することにより信号の変化を通す)点灯タイマ回路18(例えば555シリーズタイマICを使用した回路)のリセットを行う。
【0053】
点灯タイマ回路18の出力は、リセット後カウンタが例えば10分(第1の所定時間)になるまで、Lレベルとし、この信号で再始動遅延回路であるCR遅延回路(他の遅延回路でもよい)のコンデンサCtに電荷が貯まらないよう放電しておく。再始動遅延回路19は点灯時に1となる信号でコンデンサCtを充電、消灯時にコンデンサCt→抵抗Rtの経路での放電を行い、その時定数によりQtを飽和領域に維持できる時間、QtのドレインをGND電位に保持する。この再始動遅延回路19で制御回路9から出力される始動パルス発生回路駆動信号をコンデンサCt、抵抗Rtの時定数時間(第2の所定時間)GND電位に保持、遮断する。ダイオードDは消灯時にコンデンサCtの電荷がコンパレータ17側に逆流するのを防ぎ、充電用抵抗R1がダイオードDに直列に接続されている。
【0054】
本実施の形態によれば、ランプの点灯時間が10分(第1の所定時間)を超える場合、消灯時にコンデンサCt、抵抗Rtの時定数時間(第2の所定時間)始動パルス発生回路7は停止するので、ランプが高温・高圧の状態で始動パルスがランプに印加されないため、内管で放電せずに外管内で異常放電が起こる危険を回避できる。
【0055】
また、ランプの点灯時間が10分以内の場合、コンデンサCtに電荷がないため再始動遅延回路は働かず、直ぐに始動パルスが発生するので、ランプ温度が低い状態での必要のない停止期間を無くすことができる。
【符号の説明】
【0056】
1 交流電源、2 整流回路、3 昇圧インバータ、4 降圧インバータ、5 電流検出抵抗、6 矩形波回路、7 始動パルス発生回路、8 高圧放電灯、9 制御回路、10 制御電源回路、11 発光管、12 外管、13a,13b リード線、14 E26口金、15 ゲッター、16 信号合成手段、17 コンパレータ、18 点灯タイマ回路、19 再始動遅延回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管とこの発光管を保持・保護する外管とを有する高圧放電灯と、この高圧放電灯に電力を供給する給電部と、前記高圧放電灯に始動用高電圧を供給する始動パルス発生回路と、前記給電部及び前記始動パルス発生回路を制御する制御回路とを備えた高圧放電灯点灯装置において、
前記発光管の温度上昇下降特性と相関のある温度特性を有する前記給電部の回路部品と温度的に結合し、所定の温度以上で通電又は遮断するサーマルスイッチと、
このサーマルスイッチが通電又は遮断した時に、前記始動パルス発生回路を駆動しないようにする信号合成手段と、
を備えたことを特徴とする高圧放電灯点灯装置。
【請求項1】
発光管とこの発光管を保持・保護する外管とを有する高圧放電灯と、この高圧放電灯に電力を供給する給電部と、前記高圧放電灯に始動用高電圧を供給する始動パルス発生回路と、前記給電部及び前記始動パルス発生回路を制御する制御回路とを備えた高圧放電灯点灯装置において、
前記発光管の温度上昇下降特性と相関のある温度特性を有する前記給電部の回路部品と温度的に結合し、所定の温度以上で通電又は遮断するサーマルスイッチと、
このサーマルスイッチが通電又は遮断した時に、前記始動パルス発生回路を駆動しないようにする信号合成手段と、
を備えたことを特徴とする高圧放電灯点灯装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−45054(P2010−45054A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267251(P2009−267251)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【分割の表示】特願2004−95072(P2004−95072)の分割
【原出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【出願人】(591015625)オスラム・メルコ株式会社 (123)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(301010951)オスラム・メルコ・東芝ライティング株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【分割の表示】特願2004−95072(P2004−95072)の分割
【原出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【出願人】(591015625)オスラム・メルコ株式会社 (123)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(301010951)オスラム・メルコ・東芝ライティング株式会社 (37)
【Fターム(参考)】
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