説明

高圧水素製造システム

【課題】水電解と燃料電池を一体化した可逆セルの水電解運転時や、水電解専用機による水素製造において、高圧水素発生運転時に問題となる両極間の差圧を容易に解消すると共にシステムのコンパクト化を実現する。
【解決手段】水電解を行うセル10と、セル10で発生した水素ガスを貯蔵する水素側貯蔵タンク11と、セル10で発生した酸素ガスを貯蔵する酸素側貯蔵タンク12とを備えた高圧水素製造システム1であって、水素側貯蔵タンク11内と酸素側貯蔵タンク12内に、所定のガスが封入された変形自在な圧力吸収体60、80が設けられている。水素側貯蔵タンク11内と酸素側貯蔵タンク12内に圧力吸収体を具備することで、両極間の差圧制御をすることなく差圧の発生を未然に防止または緩和する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水電解によって高圧水素を製造するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば燃料電池に供給する燃料として用いられる0.5MPa以上の高圧水素を製造するものとして高圧水素製造システムが知られている。図1に示すように、一般的な高圧水素製造システム3は、水電解を行うセル10と、セル10で発生した水素ガスを貯蔵する水素側貯蔵タンク11と、セル10で発生した酸素ガスを貯蔵する酸素側貯蔵タンク12を備えている。セル10は、例えば固体高分子形の可逆セルや水電解セルであり、セル10の内部は、隔膜によって陽極側と陰極側に分離され、純水を電気分解させることにより、陽極側に酸素ガスを発生させ、陰極側に水素ガスを発生させる。なお、固体高分子形の水電解セルと燃料電池セルを一体化して、任意に運転モードを切替えての運用ができる可逆セルにおける水電解運転用のシステムフローと水電解専用機のシステムフローは基本的にはほぼ同一であるため、以降の説明は水電解専用機のシステムフローで行う。
【0003】
水電解運転時や水電解専用機ではセル10から発生する酸素ガスや水素ガスの圧力を制御することで、コンプレッサー等の昇圧機器を使用しなくても、数MPa〜数10MPaの水素ガスと酸素ガスを発生することができる。しかし、セル10内で水素ガスと酸素ガスを隔離している隔膜は高分子の薄膜であり機械的強度が低い。そのため、両極間に過度の差圧が発生するとその隔膜等の破損によりシール損壊が発生する問題がある。そして、このような現象が起きると両極間のガスが混合するため、触媒上で燃焼反応が起きて最悪の場合にはセルが焼損し、運転継続が不可能になるという問題がある。これを防止するために、両極間の差圧を一定値以下(通常は数10MPa以下)に保つための制御が行われている。この極間差圧の制御は両極間の気密性喪失を防止する役目を果たしており、水電解の高圧運転を安全に行う上で非常に重要な制御である。だが、高圧になればなるほどその制御は困難になり、高度な管理と制御精度が必要となる。
【0004】
この問題を解決する方法として、隔膜の機械的強度を上げるかセル構造を工夫することで極間差圧耐性を高める方法と、セル構造以外の部分を工夫して現状の極間差圧耐性範囲内で管理する方法がある。前者の方法のみで差圧耐性を確保するのは困難であるため、通常は後者の方法が取られている。セル構造以外の部分を工夫する方法としては、一般的に発生ガスの両側または水素側(陰極側)のみの出口付近に系内の圧力が設定圧力になったら開となる調圧弁を設けることで系内の圧力を所定の圧力に保つ方法がとられている。
【0005】
水電解運転では、各極の貯蔵タンクの気層容量が厳密に水素側貯蔵タンク:酸素側貯蔵タンクで2:1であれば理論上差圧は発生しないが、実際には運転に伴い各極の貯蔵タンクには水の出入りが発生するため水位は常に変化しており、結果的に貯蔵タンクの気層容量は常時変化している。水電解運転時は主にこの気層容積の変化や、その他諸々の原因により両極間に差圧が発生するため、通常は両極間に一定値以上の差圧が発生した場合には、高圧となった側の気層中のガスを微量系外に排気することで、両極間差圧を解消する方法が取られている。気層容量が小さい場合には、貯蔵タンクへの給水や貯蔵タンクからの排水、圧力調整用排気といった操作の重複に伴い差圧のみだれが激しくなるため、より正確で高精度な追従性と制御性が求められる。
【0006】
これらの課題に対して従来は、特許文献1や特許文献2のように、水素ガス系統及び酸素ガス系統に調圧弁とリーク弁の2つの弁をそれぞれ又は片側に設け、調圧弁により水素及び酸素の圧力を設定し、リーク弁により水素圧力と酸素圧力を調整し直流電源によって水電解セルへの直流電流出力を自動制御して水素系統内圧と酸素系統内圧の均一化を図っている。一般的にはこの方法が採用されているが、タンク自体が過大になる。
【0007】
また、特許文献3のように両側の純水貯蔵兼気液分離タンクの下流に別途ガスタンクを設け、そのタンクの容積比を水素1.9〜2.1:酸素1とすることで昇降圧時の極間差圧低減や、タンク水位変化に伴う気層容積変化に対するバッファの役目をさせて極間差圧を低減するシステムが提案されている。この方法については、従来方式の純水貯蔵兼気液分離タンクの気層容量を発生しうる水層容積変化よりも遙かに大きくし、その比率を2:1に近づけたことと同じである。そのためタンク容量は大きくなり、差圧制御を含む圧力制御自体も特許文献1や特許文献2と大きな違いは無い。
【0008】
さらには、特許文献4のように、両極の純水貯蔵兼気液分離器の液層間を配管で接続し、差圧が発生した場合には両極間の純水を移動させることで差圧を解消する方法がとられていた。また、酸素側タンクの気層容積を水素側気層容積の4%以下とすることで万が一両タンク間のガスが混合した場合でも、爆鳴気が発生することを防止している。この方法については、極間差圧の検知機構が複雑で微量の水を厳密に制御する必要があるばかりでなく、両極間が配管で接続されているためガス混合の可能性がある。気層容積の比率を管理することで全体平均として見れば爆発限界値に到達しないが、何らかの問題が発生する場合のガス移動は超急激に起こるため、局所で考えた場合は触媒上にて爆発限界値に到達する可能性が十分に考えられ、制御のロバスト性が低いと共にシステムとしても安全とは言いがたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3400289号公報
【特許文献2】特開2007−31739号公報
【特許文献3】特開2004−84042号公報
【特許文献4】特開2003−342773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、水電解と燃料電池を一体化した可逆セルの水電解運転時や、水電解専用機による水素製造において、高圧水素発生運転時に問題となる両極間の差圧を容易に解消すると共にシステムのコンパクト化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、水電解を行うセルと、前記セルで発生した水素ガスを貯蔵する水素側貯蔵タンクと、前記セルで発生した酸素ガスを貯蔵する酸素側貯蔵タンクとを備えた高圧水素製造システムであって、前記水素側貯蔵タンク内と前記酸素側貯蔵タンク内に、所定のガスが封入された変形自在な圧力吸収体が設けられていることを特徴とする、高圧水素製造システムが提供される。本発明では、水素側貯蔵タンク内と酸素側貯蔵タンク内に圧力吸収体を具備することで、両極間の差圧制御をすることなく差圧の発生を未然に防止または緩和する。
【0012】
この高圧水素製造システムにおいて、前記水素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体と前記酸素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体とを連通させる流路が設けられていても良い。
【0013】
また、この高圧水素製造システムにおいて、前記水素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体は、常圧無負荷状態において、前記水素側貯蔵タンク内の気層部分の90%以上の容積を占めることが望ましい。また、前記酸素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体は、常圧無負荷状態において、前記酸素側貯蔵タンク内の気層部分の90%以上の容積を占めることが望ましい。更に、前記水素側貯蔵タンク内と前記酸素側貯蔵タンク内との差圧が0のときに、前記酸素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体の容積に比べて前記水素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体の容積が1.6〜2倍であることが望ましい。
【0014】
また、前記水素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体と前記酸素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体は金属ベローズまたは高分子膜で形成されていても良い。この場合、前記水素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体と前記酸素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体に封入される所定のガスは例えば窒素ガスである。
【0015】
また、前記水素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体と前記酸素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体は高分子膜で形成され、前記水素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体と前記酸素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体に封入される所定のガスは、前記酸素側貯蔵タンク内の酸素ガスであっても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水素側貯蔵タンク内と酸素側貯蔵タンク内に設けた圧力吸収体が変形することで、両極間の差圧制御をすることなく差圧の発生を未然に防止または緩和することができ、何らかの異常により差圧が発生したときでもその差圧値と差圧上昇速度を低減することが可能である。本発明の高圧水素製造システムは、昇圧−定常運転−降圧の各過程において差圧制御を行わなくても差圧は自動的に解消する。また、水素側貯蔵タンク内と酸素側貯蔵タンク内に形成される気層容積を従来よりも小さくできるため水素側貯蔵タンクと酸素側貯蔵タンクのコンパクト化が可能となる。
【0017】
特に水素側貯蔵タンク内の圧力吸収体と酸素側貯蔵タンク内の圧力吸収体とを流路で連通させることにより、差圧が発生した場合でも流路で接続された圧力吸収体間で直ちにガスの移動が起こる。そのガス移動がそのまま両タンク間の間接的な気層容積変化となるため、「水素側貯蔵タンクの気層圧力=水素側貯蔵タンク内の圧力吸収体の圧力=酸素側貯蔵タンク内の圧力吸収体の圧力=酸素側貯蔵タンクの気層圧力」となるように速やかに圧力吸収体の容積が変化し、両極間の差圧を電気信号を介することなくその場で直接的に解消できる。そのため、両極間の差圧信号を受信しその受信した信号を制御機器に転送して圧力制御機器を動作させることで差圧を解消する従来の方法に比べて、一切の時間遅れや高精度な制御無しに確実な対処が可能である。さらに両極間を絶縁することにより、従来の方法のようなセル隔膜以外の部分での両極ガスの混合可能性は一切ない。加えて、差圧を調整するための排気は一切不要であるため電解したガスの無駄が無い。また水位変動に対しても、上述のように各圧力吸収体に分散させて変動を吸収するため、1つの容器(例えば従来方式の酸素側気層部)のみで対処する従来の方法よりも変化する圧力値自体も低減できる。その結果、気層容積や水容積の小容量化が可能となり、万が一隔膜が破損した場合でもシステム全体が貯蔵するエネルギーが少ないため、その被害を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の高圧水素製造システムの説明図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる高圧水素製造システムの説明図である。
【図3】本発明の別の実施の形態にかかる高圧水素製造システムの説明図である。
【図4】本発明の実施例の高圧水素製造システムと従来例による差圧発生を比較したグラフである。(水素側貯蔵タンク)
【図5】本発明の実施例の高圧水素製造システムと従来例による差圧発生を比較したグラフである。(酸素側貯蔵タンク)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面を参照にして説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。図2に示すように、本発明の実施の形態にかかる高圧水素製造システム1は、水電解を行うセル10と、セル10で発生した水素ガスを貯蔵する水素側貯蔵タンク11と、セル10で発生した酸素ガスを貯蔵する酸素側貯蔵タンク12を備えている。
【0020】
セル10は、例えば固体高分子形の可逆セルや水電解セルである。セル10の内部は、図示しない隔膜によって陽極側と陰極側に分離され、セル10内に導入された純水Wを電気分解することにより、陰極側に水素ガスを発生させ、陽極側に酸素ガスを発生させる。セル10への電源供給は演算器13にて演算した後に直流電源装置14より行われる。セル10の陰極側に、配管15を介して水素側貯蔵タンク11が接続され、セル10の陽極側に、配管16を介して酸素側貯蔵タンク12が接続されている。
【0021】
水素側貯蔵タンク11内の下部には純水Wが溜められている。水素側貯蔵タンク11の底部には、補給水タンク20に連通する配管21が接続されており、この配管21には、流量調整弁22と電磁弁23が設けられている。水素側貯蔵タンク11内の純水Wの水位はフロート式の水位計24により監視されており、この水位計24からの電気信号により電磁弁23の開閉が制御されて、水素側貯蔵タンク11内の純水Wの水位が一定の範囲内に収められる。
【0022】
同様に、酸素側貯蔵タンク12内の下部にも純水Wが溜められている。酸素側貯蔵タンク12の底部には、セル10に連通する取り出し配管25が接続されており、この取り出し配管25には、酸素側貯蔵タンク12内の純水Wをセル10に供給するための循環ポンプ26が設けられている。循環ポンプ26の稼動で、酸素側貯蔵タンク12内の純水Wがセル10に供給され、セル10内において、純水Wが電気分解されて、陰極側に水素ガスが発生させられ、陽極側に酸素ガスが発生させられる。
【0023】
更に、酸素側貯蔵タンク12の底部には、補給水タンク20から連通する補給水配管30が接続されており、この補給水配管30には、補給水タンク20内の純水Wを酸素側貯蔵タンク12に補給するための補給水ポンプ31と流量調整弁32、電磁弁33が設けられている。酸素側貯蔵タンク12内の純水Wの水位はフロート式の水位計34により監視されており、循環ポンプ26の稼動で酸素側貯蔵タンク12内の純水Wがセル10に供給されることにより酸素側貯蔵タンク12内の純水Wの水位が下がると、この水位計34からの電気信号により電磁弁33の開閉が制御され、補給水配管30を通じて補給水タンク20から酸素側貯蔵タンク12内に純水Wが供給され、酸素側貯蔵タンク12内の純水Wの水位が一定の範囲内に収められる。
【0024】
補給水配管30において補給水ポンプ31の下流側には、補給水配管30内の純水Wを補給水タンク20に戻すための戻し配管35が接続されている。この戻し配管35には、流量調整弁36、熱交換器37、イオン交換樹脂38、フィルター39が設けられている。補給水タンク20内の水は、酸素側貯蔵タンク12内に供給される以外の間、戻し配管35に循環され、これにより、系内の純水Wの純度が維持される。
【0025】
取り出し配管25において循環ポンプ26の下流側には、取り出し配管25内から一部の純水Wを取り出して補給水タンク20に戻すためのバイパス配管40が接続されている。このバイパス配管40には、流量調整弁41と電磁弁42が設けられている。
【0026】
水素側貯蔵タンク11内において、純水Wの液面よりも上の部分は水素ガスが貯められる気層部分11aであり、水素側貯蔵タンク11内において気液分離された水素ガスが、水素側貯蔵タンク11内の気層部分11aに貯められる。この気層部分11aの圧力は、気圧計45によって検出されている。
【0027】
また、水素側貯蔵タンク11の気層部分11aには、電気分解した水素ガスの取り出し配管46が接続されており、この取り出し配管46には、ガス用フィルター47と、系内の圧力が設定圧力になったら開となる調圧弁48と、系内の圧力を検出する圧力測定器49が設けられている。また、取り出し配管46には、系内圧力が異常上昇した場合に圧力を開放するための安全弁50を備えたリーク配管51と、電磁弁52および調整弁53を備えた圧力開放配管54と、水素ガス中の水素濃度を計測する水素濃度計55および調整弁56を備えた濃度計測配管57が接続されている。
【0028】
また、水素側貯蔵タンク11内の気層部分11aには、変形自在な圧力吸収体60が設けられている。後述するように、この圧力吸収体60は、例えば金属ベローズまたは高分子膜で形成された変形自在な密閉容器であり、その内部には窒素ガス、酸素ガス等のガスを封入されている。このため、水素側貯蔵タンク11内の気層部分11aの圧力が変化すると、圧力吸収体60は膨張または収縮して圧力吸収体60自身が容積変化し、水素側貯蔵タンク11内の気層部分11aの圧力変化が吸収・緩和される。この圧力吸収体60は、気層部分11aの圧力が常圧となる無負荷状態において、水素側貯蔵タンク11内の気層部分11aの90%以上の容積を占めるようになっている。
【0029】
同様に酸素側貯蔵タンク12内において、純水Wの液面よりも上の部分は酸素ガスが貯められる気層部分12aであり、酸素側貯蔵タンク12内において気液分離された酸素ガスが、酸素側貯蔵タンク12内の気層部分12aに貯められる。この気層部分12aの圧力は、気圧計65によって検出されている。
【0030】
また、酸素側貯蔵タンク12の気層部分12aには、電気分解した酸素ガスの取り出し配管66が接続されており、この取り出し配管66には、ガス用フィルター67と、系内の圧力が設定圧力になったら開となる調圧弁68が設けられている。また、取り出し配管66には、系内圧力が異常上昇した場合に圧力を開放するための安全弁70を備えたリーク配管71と、電磁弁72および調整弁73を備えた圧力開放配管74が接続されている。
【0031】
また、酸素側貯蔵タンク12内の気層部分12aには、変形自在な圧力吸収体80が設けられている。後述するように、この圧力吸収体80は、例えば金属ベローズまたは高分子膜で形成された変形自在な密閉容器であり、その内部には窒素ガス、酸素ガス等のガスを封入されている。このため、酸素側貯蔵タンク12内の気層部分12aの圧力が変化すると、圧力吸収体80は膨張または収縮して圧力吸収体80自身が容積変化し、酸素側貯蔵タンク12内の気層部分12aの圧力変化が吸収・緩和される。この圧力吸収体80は、気層部分12aの圧力が常圧となる無負荷状態において、酸素側貯蔵タンク12内の気層部分12aの90%以上の容積を占めるようになっている。
【0032】
水素側貯蔵タンク11内の気層部分11aに設けられた圧力吸収体60と酸素側貯蔵タンク12内の気層部分12aに設けられた圧力吸収体80は、流路81によって連通させられている。このため、2つの圧力吸収体60、80に封入されているガスは、2つの圧力吸収体60、80同士の間で自由に行き来することができ、これにより、2つの圧力吸収体60、80の内圧は常に等しく保たれる。
【0033】
ここで、水素側貯蔵タンク11内の全容積から純水Wの容積を差し引いた容積を水素側貯蔵タンク11内の気層部分11aの全容積V11、酸素側貯蔵タンク12内の全容積から純水Wの容積を差し引いた容積を酸素側貯蔵タンク12内の気層部分12aの全容積V12と定義すると、水素側貯蔵タンク11内の圧力と酸素側貯蔵タンク12内の圧力が等しい場合に、水素側貯蔵タンク11内の気層部分11aの全容積V11が、酸素側貯蔵タンク12内の気層部分12aの全容積V12の1.6〜2倍となるように、水素側貯蔵タンク11内の容積および純水Wの水位WL1と酸素側貯蔵タンク12内の容積および純水Wの水位WL2が設計されている。
【0034】
さて、以上のように構成された本発明の実施の形態にかかる高圧水素製造システム1において、酸素側貯蔵タンク12内の純水Wがセル10に供給される。そして、セル10内に所定流量以上の純水Wが安定的に供給されていることと、所定の水位が確保されていることが確認できたら直流電源装置14から電力が供給され、徐々に負荷が上昇させられる。これにより、セル10内において、純水Wが電気分解されて、陰極側に水素ガスが発生させられ、陽極側に酸素ガスが発生させられる。
【0035】
なお、この高圧水素製造システム1では、水素ガスの取り出し配管46に調圧弁48が設けられているので、圧力測定器49によって系内の圧力を監視しながら直流電源装置14の負荷を演算器13で制御することで需要側の負荷に合わせた水素製造が行われる。また、補給水配管30に設けられた補給水ポンプ31は水質が低下した場合、または、酸素側貯蔵タンク12に補給が必要な場合のみ運転すればよいが、常時運転しておいても良い。なお、ここに説明した需要側の負荷に合わせた水素製造の制御方法は公知技術の一例であり、この制御方法に限らず公知となっているより簡便な制御システムを構成しても良い。
【0036】
そして、セル10内では直流電源装置14の出力に応じて、純水Wが水素イオン、酸素イオンに電気分解される。そのうち酸素イオンは触媒上で酸素ガスとなり、循環水と共に酸素側貯蔵タンク12に排出される。また、水素イオンは随伴水を伴って水素側に移動し、水素側触媒上で水素ガスとなって水素側貯蔵タンク11に排出される。排出された酸素および水素は、それぞれ酸素側貯蔵タンク12および水素側貯蔵タンク11にて気液分離される。気液分離された純水Wは再度セル10に送られ、水素ガスは取り出し配管46から排出され、酸素ガスは取り出し配管66から排出される。その際、系内圧力が定格圧力以下であれば水素ガスおよび酸素ガスは水素側貯蔵タンク11と酸素側貯蔵タンク12内に滞留し圧力の上昇に寄与する。そして系内圧力が所定の値になったら、調圧弁48、68からガスが放出され、需要側に供給される。図示のように取り出し配管46に調圧弁48を設けた場合には、圧力測定器49によって検出した圧力を演算器13にて常時監視し、その圧力が所定の値よりも低下したときに直流電源装置14からセル10に電力を供給することで需要側の負荷に合わせた水素製造を行う。
【0037】
なお、セル10に純水Wを供給する取り出し配管25から純水Wの水質を維持する目的でバイパス配管40に取り出された純水Wは補給水タンク20に返送される。セル10内での電気分解と補給水タンク20への返送により酸素側貯蔵タンク12内の水位は減少するため、水位計34の検出により補給水ポンプ31の稼動で補給水タンク20から酸素側貯蔵タンク12内に浄化処理された純水Wが補給される。
【0038】
なお、気圧計45、65は水素側貯蔵タンク11内と酸素側貯蔵タンク12内の圧力を測定しており、その差圧を常時演算器13で監視している。何らかの異常により極間差圧が所定の値以上になった場合には直ちに直流電源装置14からの電力を遮断し高圧水素製造システム1を緊急停止する。
【0039】
高圧水素製造システム1を停止する場合には、直流電源装置14からの電力供給を停止する。両極の圧力解放配管54、74の電磁弁52、72を開放し、系内のガスを排気して常圧近傍まで低下させる。本システムには差圧解消機構が設けられているため、上述のように昇圧から降圧の全ての工程に置いて特段の差圧制御をする必要はない。
【0040】
なお、系内の圧力が0.9MPa(G)を超えるような運転の場合には、水素側貯蔵タンク11内の気層部分11aに設けられる圧力吸収体60と酸素側貯蔵タンク12内の気層部分12aに設けられる圧力吸収体80を複数具備し、各圧力吸収体60、80に充填する窒素ガスの圧力を変えることで、任意の運転圧力に対して対応可能である。その際、各圧力吸収体60、80の初期封入圧力に対する設計上限圧力の倍率(以降、圧力上昇倍率と称す)は8〜10倍以下にすることが望ましい。例えば、圧力吸収体60、80の初期圧力が0MPa(G)(=常圧、絶対圧力:0.1MPa)の場合に、圧力上昇倍率を10倍とした場合には最大圧力は0.9MPa(G)(=絶対圧力:1.0MPa)となる。それ以上昇圧する場合には、分離膜容器の初期圧力を0MPa(G)とした圧力吸収体60、80と0.9MPa(G)とした圧力吸収体60、80の2つをタンク内に具備させればよい。各圧力吸収体60、80の圧力上昇倍率を下げるほど差圧解消能力は高まるが、それに伴い圧力吸収体60、80の数が増えるため、最大使用圧力に合わせて圧力吸収体60、80の数と各圧力吸収体60、80の圧力上昇倍率を選定すればよい。その際、初期圧力が高い圧力吸収体60、80ほど圧力上昇倍率を下げるようにする。
【0041】
この高圧水素製造システム1によれば、水素側貯蔵タンク11内と酸素側貯蔵タンク12内に設けた圧力吸収体60、80が変形することで、両極間の差圧制御をすることなく差圧の発生を未然に防止または緩和することができ、何らかの異常により差圧が発生したときでもその差圧値と差圧上昇速度を低減することが可能である。昇圧−定常運転−降圧の各過程において差圧制御を行わなくても差圧は自動的に解消する。また、水素側貯蔵タンク11内と酸素側貯蔵タンク12内に形成される気層部分11a、12aの容積を従来よりも小さくできるため水素側貯蔵タンク11と酸素側貯蔵タンク12のコンパクト化が可能となる。
【0042】
特に水素側貯蔵タンク11内の圧力吸収体60と酸素側貯蔵タンク12内の圧力吸収体80を流路81で連通させることにより、差圧が発生した場合でも流路81で接続された圧力吸収体60、80間で直ちにガスの移動が起こる。そのガス移動がそのまま両タンク間の間接的な気層容積変化となるため、「水素側貯蔵タンク11の気層圧力=水素側貯蔵タンク11内の圧力吸収体60の圧力=酸素側貯蔵タンク12内の圧力吸収体80の圧力=酸素側貯蔵タンク12の気層圧力」となるように速やかに圧力吸収体60、80の容積が変化し、両極間の差圧を電気信号を介することなくその場で直接的に解消できる。そのため、両極間の差圧信号を受信しその受信した信号を制御機器に転送して圧力制御機器を動作させることで差圧を解消する従来の方法に比べて、一切の時間遅れや高精度な制御無しに確実な対処が可能である。さらに両極間を絶縁することにより、従来の方法のようなセル隔膜以外の部分での両極ガスの混合可能性は一切ない。加えて、差圧を調整するための排気は一切不要であるため電解したガスの無駄が無い。また水位変動に対しても、上述のように各圧力吸収体に分散させて変動を吸収するため、1つの容器(例えば従来方式の酸素側気層部)のみで対処する従来の方法よりも変化する圧力値自体も低減できる。その結果、気層容積や水容積の小容量化が可能となり、万が一隔膜が破損した場合でもシステム全体が貯蔵するエネルギーが少ないため、その被害を最小限に抑えることができる。
【0043】
なお、本発明で差圧解消機構として使用する圧力吸収体60、80は、自動車サスペンション等に用いられているアキュムレータで使用されている分離膜容器を転用することができる。圧力吸収体60、80は、使用材質の違いにより金属ベローズ式と高分子膜式に大別できる。両方式とも通常は圧力吸収体60、80内に窒素等のガスを封入し、外界の圧力変動が起きたときには内部に封入した窒素ガスの圧縮性を利用して自身が容積変化をすることで、その圧力変動を吸収・緩和する。この圧力吸収体60、80は、高周波応答性に優れているため、水電解運転中の圧力変動に対する追従性を有している。なお、金属ベローズ式は分離膜が金属製であるため封入したガスの透過は一切無く、メンテナンス(ガスの再封入)の必要が無いため、金属ベローズ式の採用が好ましい。
【0044】
図2では、金属膜式の圧力吸収体60、80を使用したときのシステムフローを説明した。各極のタンクに挿入する圧力吸収体60、80は、タンク気層全容積中に占める圧力吸収体60、80の容積比率を高めれば高めるほど大きな差圧解消効果が得られる。このため、各極のタンク内圧が運転前の常圧状態であるときに、タンク気層部の90%以上を占める容量とするのが好ましい。ここで、水素側貯蔵タンク11内の実ガス容積(水素側貯蔵タンク11内の気層部分11aの容積−水素側貯蔵タンク11の圧力吸収体60の容積)と酸素側貯蔵タンク12内の実ガス容積(酸素側貯蔵タンク12内に形成される気層部分12aの容積−酸素側貯蔵タンク12の圧力吸収体80の容積)の比は、圧力吸収体60、80の容積が最大となる無負荷時の常圧状態と、圧力吸収体60、80の容積が最小となる最大圧力の状態のいずれにおいても1.6〜2倍(酸素側貯蔵タンク12の圧力吸収体80の容積基準)とするのが好ましい。そのためには、圧力吸収体60、80の容積が起動時の昇圧過程や停止時の降圧過程といった容積が大きく変化する状況においても1.6〜2倍(酸素側貯蔵タンク12の実ガス容積基準)の比率を保てるように圧力吸収体60、80を設計すればよい。具体的には、水素側、酸素側共に同一直径のタンクを用いて、圧力吸収体60、80の初期長さ(無負荷の常圧時)の比を1.6〜2倍(酸素側の長さ基準)としたり、圧力吸収体60、80の伸縮に対する耐久性を考慮して、圧力吸収体60、80の長さは両極同一とし、容器の断面積の比を1.6〜2倍(酸素側の断面積基準)にしても良い。これ以外であっても、極間差圧が0の場合に両極間の圧力吸収体60、80の容積比が1.6〜2倍となるように設計すればよい。なお、理論発生量を考慮すれば厳密に水素側貯蔵タンク11内の気層部分11aの全容積V11:酸素側貯蔵タンク12内の気層部分12aの全容積V12=2:1とするのが理想であるが、現実的には厳密に2:1になるように製作することは不可能であり、また水電解運転中のタンク水位は給排水に伴い常に変動しているため、昇圧降圧過程、定常過程の全ての過程で必ず差圧が発生する。しかし、差圧解消機構を組み込んだ本システムではその容積比を1.6倍〜2倍に収めればよく、製作上やその他様々な制約条件・運転状態を考慮しても十分な許容を有している。なお、昇圧過程で生じる差圧により圧力吸収体60、80の容積が所定の容積比(例えば2倍で設計した場合は水素2:酸素1)になっていなくても、定格圧力に到達すれば圧力吸収体60、80自体の弾性力によりほぼ所定の容積比となる。
【0045】
また、システム運転停止時の降圧過程においては、従来どおり電源を遮断した後に系内のガスを微量排気することで降圧すればよいが、その際の両極からの排気量の関係は、酸素側排気量を水素側排気量の0.4〜1倍とすればよい。本システムの差圧解消能力によりこれだけの広範な流量域を許容できるため、減圧過程においても一切高精度な機器や制御を使用する必要が無い。加えて貯蔵量も少ないことから迅速に系内を常圧の状態に戻すことができる。
【0046】
また、何らかの異常対応として、差圧を検知して圧力を調整する従来行われている制御を組み込んでおくとさらに安全である。この場合においても、差圧解消装置が組み込まれた本システムで発生する差圧は、それがない装置で発生する差圧よりもその上昇速度が鈍化するため、安価な圧力調整方式を採用することができる。
【0047】
なお、本方法では、差圧解消機構がない場合に生じる100KPa以上の差圧を自然に解消するため、例えば運転終了後の降圧過程で絞り弁やその前段のフィルターのゴミ詰まり等により片極の排気が所定どおり行われない場合でも、各圧力吸収体60、80間の容積変化によりある程度までは差圧が解消されるため、その異常を早期に検知できない可能性がある。このような緊急事態に対しても、特段の対策を行わなくても差圧を検知してシステムが緊急停止する回路が演算器13に組み込まれているが、この検知遅れを安価な方法で防止するには、降圧工程を時間で管理すればよい。具体的には所定の時間で所定の圧力まで下がらない場合には異常と判断し排気を中止しシステムを緊急停止する回路を演算器13に組み込んでおけば良い。その後は別途設けた予備調節弁から手動で排気することで対処する。これにより、フィルターの目詰まり等の前兆を早期に検知することができ異常事態の未然防止ともなる。このことは昇圧過程においても同様であり、所定時間で所定の圧力まで上がらない場合には異常と判断し直流電源装置14からの電力を遮断しシステムを緊急停止する回路を演算器13に組み込んでおけば良い。
【0048】
また、前述のように高分子膜製の隔膜の機械的強度は低いため、システムを設計する上では隔膜の破損を想定しておく必要がある。隔膜等が破損しても被害を最小限に抑えるためには、システム内に存在する燃料および燃焼補助剤(水素ガス、酸素ガス、水)の量を最小化することが有効であり、タンク容量の低減が不可欠である。本システムでは差圧解消機構の効果により圧力バッファでもある気層容積を従来方式よりも遙かに小さくできることから、この点に関しても従来方式での純水貯蔵兼気液分離タンクと比べて数〜数10分の一に抑えることができる。
【0049】
ここで、圧力吸収体60、80の材質が高分子膜であっても上述の効果が得られるが、高分子膜式を採用した場合には、金属ベローズ式と異なり高分子膜からのガス透過があるため定期的に圧力吸収体60、80内の圧力補充が必要となる。高分子膜式の圧力吸収体60、80を使用したときの実施の形態にかかる高圧水素製造システム2を図3に示す。圧力吸収体60、80に高分子膜を使用する場合には、窒素の代わりに圧力吸収体60、80内に酸素を封入し、運転に伴い発生する酸素ガスを用い、圧力吸収体60、80から透過した分のガスを定期的に再封入してやればよい。
【0050】
図3に示す高圧水素製造システム2では、酸素側貯蔵タンク12内の気層部分12aから流路81に酸素ガスを導入する酸素ガス流路85が接続されている。酸素ガス流路85には調圧弁86が設けられている。この図3に示す高圧水素製造システム2では、圧力吸収体60、80からは酸素側のみならず水素側にも微量の酸素が透過するが、その透過量よりも通常運転時のセル10内の隔膜における透過量のほうがはるかに高いことから安全上も問題無い。また、上述の通り発生した水素ガスにはもともと微量の酸素が含まれるため、水素ガスの純度を高める目的で水素供給配管系統には一般的に酸素を燃焼するための触媒塔が設けられている(図示せず)。封入ガスに酸素ガスを用いることで、圧力吸収体60、80から透過した酸素もこの触媒塔で燃焼されるため、生成水素ガスの純度を下げることなく、また圧力吸収体60、80からの透過ガス用に新たな除去設備を設ける必要がない。
【0051】
この図3に示す高圧水素製造システム2では、圧力吸収体60、80への再ガス封入に必要な設備は、酸素側貯蔵タンク12内の気層部分12aと流路81を接続する酸素ガス流路85と調圧弁86を付加するのみであり、極めて簡素な構成であり制御も不要である。この調圧弁86は、酸素側貯蔵タンク12内の圧力に係わらず調圧弁以降(圧力吸収体60、80側)の圧力を常に一定にでき、かつ圧力吸収体60、80の内圧が高くなっても圧力吸収体60、80から酸素側貯蔵タンク12内への逆流が生じない汎用の調圧弁である。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施例を説明する。図4、5は、本発明の高圧水素製造システムと従来例との発生差圧の相違を表したものである。このときの水素側と酸素側の容積比率は最大値の2倍で、圧力吸収体の容積は水素側貯蔵タンクと酸素側貯蔵タンクの気層部分の容積中のそれぞれ90%である。図4は、定格圧力状態から水素側圧力が低下した場合の効果を、図5は、定格圧力状態から酸素側圧力が低下した場合の効果をそれぞれ表している。両図には圧力上昇倍率を4倍(0.3MPa(G))、7倍(0.6MPa(G))、10倍(0.9MPa(G))としたときの差圧解消機構の効果を示している。圧力上昇倍率が低いほど差圧解消効果(差圧解消機構が無い場合(従来例)に発生する差圧に対してそこに差圧解消機構を組込んだ場合(本発明)に差圧が低下する効果)が大きいことはこの図からもわかる。また、水素側が圧力低下した場合よりも酸素側が圧力低下した場合の方がはるかに大きな差圧解消効果が得られることもわかる。これは、容積比率を2倍としているため酸素側と水素側で差圧解消効果に大きな違いが出ているが、容積比率を下げることで徐々に平均化されていくが、基本的には酸素側圧力低下に対する効果のほうが大きくなる。気層容積の変動要因であるタンク水位変化は酸素側のほうが顕著であり、また水素側に比べれば酸素側のほうが複数の機器を制御することで水位管理をしているという点で、何らかの異常が発生する可能性が高い。この点を考慮すると、酸素側の圧力変動に対する差圧解消効果が高いのは理想的であり、本システムはそれに適っている。なお、ここで出している各数値は、許容極間差圧を±50kPaとした時の値であるため、その値が上がればその分許容範囲が広がる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、例えば燃料電池の燃料として用いられる水素の製造に有用である。
【符号の説明】
【0054】
W 純水
1、2 高圧水素製造システム(本発明の実施の形態)
3 高圧水素製造システム(従来技術)
10 セル
11 水素側貯蔵タンク
11a 気層部分
12 酸素側貯蔵タンク
12a 気層部分
13 演算器
14 直流電源装置
15、16、21 配管
20 補給水タンク
22 流量調整弁
23 電磁弁
24 水位計
25 取り出し配管
26 循環ポンプ
30 補給水配管
31 補給水ポンプ
32 流量調整弁
33 電磁弁
34 水位計
35 戻し配管
36 流量調整弁
37 熱交換器
38 イオン交換樹脂
39 フィルター
40 バイパス配管
41 流量調整弁
42 電磁弁
45 気圧計
46 取り出し配管
47 ガス用フィルター
48 調圧弁
49 圧力測定器
50 安全弁
51 リーク配管
52 電磁弁
53 調整弁
54 圧力開放配管
55 水素濃度計
56 調整弁
57 濃度計測配管
60 圧力吸収体
66 取り出し配管
67 ガス用フィルター
68 調圧弁
70安全弁
71 リーク配管
72 電磁弁
73 調整弁
74 圧力開放配管
80 圧力吸収体
81 流路
85 酸素ガス流路
86 調圧弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水電解を行うセルと、前記セルで発生した酸素ガスを貯蔵する酸素側貯蔵タンクと、前記セルで発生した水素ガスを貯蔵する水素側貯蔵タンクとを備えた高圧水素製造システムであって、
前記酸素側貯蔵タンク内と前記水素側貯蔵タンク内に、所定のガスが封入された変形自在な圧力吸収体が設けられていることを特徴とする、高圧水素製造システム。
【請求項2】
前記酸素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体と前記水素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体とを連通させる流路が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の高圧水素製造システム。
【請求項3】
前記酸素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体は、常圧無負荷状態において、前記酸素側貯蔵タンク内の気層部分の90%以上の容積を占めることを特徴とする、請求項1または2に記載の高圧水素製造システム。
【請求項4】
前記水素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体は、常圧無負荷状態において、前記水素側貯蔵タンク内の気層部分の90%以上の容積を占めることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の高圧水素製造システム。
【請求項5】
前記酸素側貯蔵タンク内と前記水素側貯蔵タンク内との差圧が0のときに、前記酸素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体の容積に比べて前記水素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体の容積が1.6〜2倍であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の高圧水素製造システム。
【請求項6】
前記酸素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体と前記水素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体は金属ベローズまたは高分子膜で形成されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の高圧水素製造システム。
【請求項7】
前記酸素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体と前記水素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体に封入される所定のガスは窒素ガスであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の高圧水素製造システム。
【請求項8】
前記酸素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体と前記水素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体は高分子膜で形成され、
前記酸素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体と前記水素側貯蔵タンク内に設けられた圧力吸収体に封入される所定のガスは、前記酸素側貯蔵タンク内の酸素ガスであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の高圧水素製造システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−140674(P2011−140674A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−391(P2010−391)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発/水素貯蔵装置及び水電解・燃料電池一体型セルの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000169499)高砂熱学工業株式会社 (287)
【出願人】(000101374)アタカ大機株式会社 (55)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】