説明

高圧水電解システム及びその運転方法

【課題】水電解装置の外部に気液分離装置を個別に設ける必要がなく、システム全体の小型化を図ることを可能にする。
【解決手段】高圧水電解システム10を構成する単位セル14は、電解質膜・電極構造体32をアノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36により挟持する。電解質膜・電極構造体32は、固体高分子電解質膜38の両面にアノード側給電体40及びカソード側給電体42を設ける。カソード側セパレータ36と固体高分子電解質膜38との間には、皿ばね46が配設されるカソード側流路68が形成される。カソード側流路68の上部には、高圧水素と高圧水とを分離する高圧水素分離排出部70が設けられる一方、前記カソード側流路68の下部には、前記高圧水素分離排出部70で前記高圧水素から分離された前記高圧水を排出する高圧水排出部72が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる高圧水素製造装置を備える高圧水電解システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、燃料電池を発電させるための燃料ガスとして、水素ガスが使用されている。一般的に、水素ガスを製造する水素製造装置として、水電解装置が採用されている。この水電解装置は、水を電気分解して水素(及び酸素)を発生させるため、固体高分子電解質膜を用いている。固体高分子電解質膜の両面には、電極触媒層が設けられて電解質膜・電極構造体が構成されるとともに、前記電解質膜・電極構造体の両側には、それぞれ給電体を配設してユニットが構成されている。
【0003】
そこで、複数のユニットが積層された水電解スタックを用意し、前記水電解スタックの積層方向両端に電圧が付与されるとともに、アノード側給電体に水が供給される。このため、電解質膜・電極構造体のアノード側では、水が分解されて水素イオン(プロトン)が生成され、この水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、電子と結合して水素が製造される。一方、アノード側では、水素と共に生成された酸素が、余剰の水を伴って水電解スタックから排出される。
【0004】
この種の水電解装置として、例えば、特許文献1に開示されている固体高分子膜型水電解装置が知られている。この水電解装置は、図5に示すように、固体高分子電解質膜1によって内部が陽極室2と陰極室3に区画された水電解槽4と、前記陽極室2の前記固体高分子電解質膜1側に電解水を供給する水供給手段5と、水電解により発生した酸素(O2 )及び水素(H2 )を分離する酸素分離手段(気液分離装置)6及び水素分離手段(気液分離装置)7とを具備している。
【0005】
水電解槽4は、固体高分子電解質膜1が鉛直方向に沿って立設される一方、水素分離手段7は、前記水電解槽4の上方に水供給タンク8を設置している。そして、水供給タンク8からの水は、循環水として固体高分子電解質膜1に自然循環しつつ供給するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−285368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の水電解装置では、水電解槽4から排出される水素と水との気液分離を行うための水素分離手段7が、前記水電解槽4の外部に設けられている。このため、システム全体が相当に大型化するという問題がある。
【0008】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、水素製造装置の外部に気液分離装置を個別に設ける必要がなく、システム全体の小型化を容易に図ることが可能な高圧水電解システム及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる高圧水素製造装置を備える高圧水電解システムに関するものである。
【0010】
この高圧水電解システムでは、高圧水素製造装置は、面方向を鉛直方向に沿って立位姿勢で配置される固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の左右両側に設けられる電解用のアノード側給電体及びカソード側給電体と、前記アノード側給電体に対向して配置され、水が供給されるとともに、前記水を電気分解して酸素が発生されるアノード側セパレータと、前記カソード側給電体に対向して配置され、前記水を電気分解して前記酸素よりも高圧な水素が発生されるカソード側セパレータと、前記カソード側給電体に積層方向に荷重を付与する弾性部材と、前記カソード側セパレータと前記固体高分子電解質膜との間に形成され、前記弾性部材が配設されるとともに、前記高圧水素が排出されるカソード室と、前記カソード室の上部に連通し、前記高圧水素と高圧水とを分離する高圧水素分離排出部と、前記カソード室の下部に連通し、前記高圧水素分離排出部で前記高圧水素から分離された前記高圧水を排出する高圧水排出部とを備えている。
【0011】
また、この高圧水電解システムでは、複数の高圧水素製造装置が水平方向に沿って積層される高圧水電解スタックを備え、前記高圧水電解スタックは、積層方向に貫通し、各高圧水素製造装置の高圧水素分離排出部に連通する高圧水素連通孔と、前記積層方向に貫通し、各高圧水素製造装置の高圧水排出部に連通する高圧水連通孔とを設けるとともに、前記高圧水電解システムは、前記高圧水素連通孔に一端が接続され、前記高圧水素を前記高圧水電解スタックから排出する高圧水素排出配管と、前記高圧水連通孔に一端が接続され、前記高圧水を前記高圧水電解スタックから排出する高圧水排出配管と、前記高圧水素排出配管の他端及び前記高圧水排出配管の他端が接続され、前記高圧水電解スタック内の水位を検出する水位検出装置とを備えることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明は、面方向を鉛直方向に沿って立位姿勢で配置される固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の左右両側に設けられる電解用のアノード側給電体及びカソード側給電体と、前記アノード側給電体に対向して配置され、水が供給されるとともに、前記水を電気分解して酸素が発生されるアノード側セパレータと、前記カソード側給電体に対向して配置され、前記水を電気分解して前記酸素よりも高圧な水素が発生されるカソード側セパレータと、前記カソード側給電体に積層方向に荷重を付与する弾性部材と、前記カソード側セパレータと前記固体高分子電解質膜との間に形成され、前記弾性部材が配設されるとともに、前記高圧水素が排出されるカソード室と、前記カソード室の上部に連通し、前記高圧水素と高圧水とを分離する高圧水素分離排出部と、前記カソード室の下部に連通し、前記高圧水素分離排出部で前記高圧水素から分離された前記高圧水を排出する高圧水排出部とを備える高圧水素製造装置を組み込む高圧水電解システムの運転方法に関するものである。
【0013】
この運転方法は、高圧水素分離排出部の水位を検出する工程と、前記高圧水素分離排出部の水位が上限値を超えるか否かを判断する工程と、前記高圧水素分離排出部の水位が前記上限値を超えると判断された際、電解電流値を下げることにより、前記高圧水素分離排出部の水位を前記上限値以下に制御する工程と有している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高圧水素が生成されるカソード室は、弾性部材が配設されるために比較的広い空間を有している。そして、この空間の上部には、カソード室に排出された高圧水素と高圧水とを分離する高圧水素分離排出部が設けられている。
【0015】
従って、高圧水素製造装置の内部には、気液分離装置としての機能を兼用する高圧水素分離排出部が設けられている。これにより、高圧水素製造装置の外部には、気液分離装置を個別に設ける必要がなく、システム全体の小型化を図ることが可能になる。
【0016】
また、本発明によれば、高圧水素分離排出部の水位が上限値を超えると判断された際、電解電流値を下げることにより、前記高圧水素分離排出部の水位を前記上限値以下に制御している。このため、固体高分子電解質膜は、常時、湿潤状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る高圧水電解システムの概略説明図である。
【図2】前記高圧水電解システムを構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図3】前記単位セルの図2中、III−III線一部省略断面説明図である。
【図4】前記高圧水電解システムの運転方法を説明するフローチャートである。
【図5】特許文献1に開示されている水電解装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る高圧水電解システム10は、水(純水)を電気分解することによって、酸素及び高圧水素(常圧である酸素圧力よりも高圧、例えば、1MPa〜70MPaの水素)を製造する差圧式水電解装置(高圧水素製造装置)12を備える。
【0019】
水電解装置12は、複数の単位セル14を積層した高圧水電解スタックを備える。単位セル14の積層方向一端には、ターミナルプレート16a、絶縁プレート18a及びエンドプレート20aが外方に向かって、順次、配設される。単位セル14の積層方向他端には、同様にターミナルプレート16b、絶縁プレート18b及びエンドプレート20bが外方に向かって、順次、配設される。
【0020】
エンドプレート20a、20b間は、複数本のタイロッド22を介して一体的に締め付け保持される。なお、水電解装置12は、エンドプレート20a、20bを端板として含む箱状ケーシング(図示せず)により一体的に保持される構成を採用してもよい。また、水電解装置12は、全体として略円柱体形状を有しているが、立方体形状等の種々の形状に設定可能である。
【0021】
ターミナルプレート16a、16bの側部には、端子部24a、24bが外方に突出して設けられる。端子部24a、24bは、電解電源26に電気的に接続される。
【0022】
図2及び図3に示すように、単位セル14は、略円盤状の電解質膜・電極構造体32と、この電解質膜・電極構造体32を挟持するアノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36とを備える。アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36は、略円盤状を有するとともに、例えば、カーボン部材等で構成され、又は、鋼板、ステンレス鋼板、チタン板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板をプレス成形して、あるいは切削加工した後に防食用の表面処理を施して構成される。
【0023】
電解質膜・電極構造体32は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜38と、前記固体高分子電解質膜38の両面に設けられる円形状のアノード側給電体40及びカソード側給電体42とを備える。固体高分子電解質膜38の外形寸法は、アノード側給電体40及びカソード側給電体42の外径寸法よりも大径に設定される。
【0024】
固体高分子電解質膜38の両面には、アノード電極触媒層40a及びカソード電極触媒層42aが形成される。アノード電極触媒層40aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層42aは、例えば、白金触媒を使用する。
【0025】
アノード側給電体40及びカソード側給電体42は、例えば、球状アトマイズチタン粉末の焼結体(多孔質導電体)により構成される。アノード側給電体40及びカソード側給電体42は、研削加工後にエッチング処理される平滑表面部を設けるとともに、空隙率が10%〜50%、より好ましくは、20%〜40%の範囲内に設定される。
【0026】
カソード側給電体42には、プレート部材44が積層されるとともに、前記プレート部材44とカソード側セパレータ36との間には、弾性部材、例えば、複数枚の皿ばね46が配設される。プレート部材44は、例えば、チタン製のパンチングプレートにより構成され、複数の孔部44aが形成される。皿ばね46は、皿ばねホルダであるプレート部材44を介してカソード側給電体42に荷重を付与する。なお、皿ばね46に代えて、例えば、コイルスプリング等を使用してもよい。
【0027】
図2に示すように、単位セル14の外周部には、セパレータ面方向外方に突出する第1突出部48a、第2突出部48b、第3突出部48c及び第4突出部48dが形成される。第1突出部48a、第3突出部48c、第2突出部48b及び第4突出部48dは、単位セル14の外周部に等角度間隔ずつ離間して設けられる。
【0028】
第1突出部48aには、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、水(純水)を供給するための水供給連通孔50が設けられる。第2突出部48bには、矢印A方向に互いに連通して、反応により生成された酸素及び未使用の水を排出するための水排出連通孔52が設けられる。
【0029】
第3突出部48cには、矢印A方向に互いに連通して、反応により生成された高圧水素を流すための高圧水素連通孔54が設けられる。第4突出部48dには、矢印A方向に互いに連通して、高圧水素から分離された高圧水を排出するための高圧水連通孔56が設けられる。
【0030】
水供給連通孔50及び水排出連通孔52は、開口断面長円形状を有するとともに、互いに点対称の位置に配置される。高圧水素連通孔54及び高圧水連通孔56は、開口断面円形状を有するとともに、互いに点対称の位置に配置される。
【0031】
アノード側セパレータ34には、水供給連通孔50に連通する水供給通路58と、水排出連通孔52に連通する水排出通路60とが設けられる。アノード側セパレータ34の電解質膜・電極構造体32に向かう面34aには、水供給通路58及び水排出通路60に連通するアノード側流路62が設けられる。
【0032】
図2及び図3に示すように、カソード側セパレータ36には、高圧水素連通孔54に連通する水素排出通路64と、高圧水連通孔56に連通する高圧水排出通路66とが設けられる。カソード側セパレータ36の電解質膜・電極構造体32に向かう面36aには、水素排出通路64及び高圧水排出通路66に連通するとともに、高圧水素が排出されるカソード側流路(カソード室)68が設けられる。
【0033】
水素排出通路64は、気液分離して気泡が水を押し上げない径に設定される。水素排出通路64の径は、高圧水排出通路66の径よりも大径に構成されることが好ましい。
【0034】
図3に示すように、カソード側流路68の上部には、高圧水素と高圧水とを分離する高圧水素分離排出部70が連通する。カソード側流路68の下部には、高圧水素分離排出部70で高圧水素から分離された高圧水を排出する高圧水排出部72が連通する。
【0035】
図2及び図3に示すように、アノード側セパレータ34の電解質膜・電極構造体32に向かう面34aには、複数のシール部材74を配設するための複数のシール溝76が形成される。カソード側セパレータ36の電解質膜・電極構造体32に向かう面36aには、複数のシール部材78を配設するための複数のシール溝80が形成される。シール部材74、78は、例えば、Oリングである。
【0036】
図1に示すように、エンドプレート20aには、高圧水素連通孔54に連通する配管マニホールド82及び高圧水連通孔56に連通する配管マニホールド84が接続される。エンドプレート20bには、水供給連通孔50に連通する配管マニホールド86及び水排出連通孔52に連通する配管マニホールド88が接続される。
【0037】
配管マニホールド82には、高圧水素連通孔54に連通して高圧水素を水電解装置12から排出する高圧水素排出配管90の一端が接続される。高圧水素排出配管90から分岐配管90aが分岐するとともに、前記分岐配管90aは、水電解装置12内の水位を検出するための水位検出装置92の上部に接続される。高圧水素排出配管90には、第1背圧弁94が配設される。高圧水素排出配管90の他端は、図示しないが、水素ガス貯留部又は燃料電池車両の水素ガスタンク等の高圧水素供給部に接続されて前記高圧水素供給部に高圧水素を充填可能である。
【0038】
配管マニホールド84には、高圧水連通孔56に連通して高圧水を水電解装置12から排出する高圧水排出配管96の一端が接続される。高圧水排出配管96の他端は、水位検出装置92の下部に接続される。
【0039】
水位検出装置92には、内部の水位を検出するための水位センサ部98が設けられるとともに、前記水位検出装置92の下部側には、排水配管100が接続される。排水配管100には、第2背圧弁102と開閉弁(電磁弁)104とが配設される。第2背圧弁102は、第1背圧弁94よりも低い圧力値に設定される。
【0040】
配管マニホールド86には、水供給連通孔50に水(純水)を供給するための水供給配管106が接続される。配管マニホールド88には、水排出連通孔52から酸素及び未使用の水を排出するための水排出配管108が接続される。
【0041】
このように構成される高圧水電解システム10の動作について、以下に説明する。
【0042】
図1に示すように、水供給配管106から配管マニホールド86を通って水電解装置12の水供給連通孔50に水が供給されるとともに、ターミナルプレート16a、16bの端子部24a、24bに電気的に接続されている電解電源26を介して電解電圧が付与される。
【0043】
このため、図2に示すように、各単位セル14では、水供給連通孔50からアノード側セパレータ34のアノード側流路62に水が供給され、この水がアノード側給電体40内に沿って移動する。従って、水は、アノード電極触媒層40aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜38を透過してカソード電極触媒層42a側に移動し、電子と結合して水素が得られる。
【0044】
このため、図2及び図3に示すように、カソード側給電体42の内部、プレート部材44の孔部44a及びカソード側流路68に沿って、水素が流動する。この水素は、水供給連通孔50よりも高圧に維持されており、高圧水素連通孔54を流れて水電解装置12の外部に取り出し可能となる。一方、アノード側流路62には、反応により生成した酸素と、使用済みの水とが流動しており、これらが水排出連通孔52から水排出配管108に沿って水電解装置12の外部に排出される。
【0045】
この場合、本実施形態では、図3に示すように、高圧水素が生成されるカソード側流路68は、皿ばね46が配設されるために比較的広い空間を有している。そして、この空間の上部には、高圧水素と高圧水とを分離するための高圧水素分離排出部70が設けられている。
【0046】
従って、高圧水素分離排出部70で高圧水が分離された高圧水素は、高圧水素連通孔54を流れて水電解装置12から高圧水素排出配管90に排出される。さらに、高圧水素は、高圧水素排出配管90を通って高圧水素供給部に供給可能になる。また、高圧水素の一部は、分岐配管90aを通って水位検出装置92に供給される。
【0047】
一方、高圧水素分離排出部70で高圧水素から分離された高圧水は、高圧水連通孔56を流れて水電解装置12から高圧水排出配管96に排出される。この高圧水は、水位検出装置92に供給される。
【0048】
このように、本実施形態では、水電解装置12の内部に、気液分離装置としての機能を兼用する高圧水素分離排出部70が設けられている。このため、水電解装置12の外部に気液分離装置を個別に設ける必要がなく、高圧水電解システム10全体の小型化を図ることが可能になるという効果が得られる。
【0049】
しかも、高圧水素分離排出部70は、各単位セル14毎に設けられている。従って、各高圧水素分離排出部70で分離するための流量は、単一の気液分離装置を用いる場合に比べて大幅に削減され(1/単位セル数)、高圧水素と高圧水との分離が容易且つ確実に遂行される。
【0050】
さらに、図2に示すように、第1突出部48a、第3突出部48c、第2突出部48b及び第4突出部48dが、単位セル14の外周部に等角度間隔ずつ離間して設けられている。これにより、アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36は、高圧水素の圧力により偏り荷重を受けることがなく、所望のシール性を確保することが可能になる。
【0051】
次いで、高圧水電解システム10の運転方法について、図4に示すフローチャートに沿って、以下に説明する。
【0052】
上記のように、水電解処理が行われている際(ステップS1)、水位検出装置92には、高圧水排出配管96から高圧水が供給されるとともに、高圧水素排出配管90から分岐配管90aを介して高圧水素による圧力が付与されている。すなわち、水位検出装置92は、水電解装置12のカソード側流路68と同一の条件に維持されている。
【0053】
水位検出装置92では、水位センサ部98を介して前記水位検出装置92内に貯留されている水の水位が検出される(ステップS2)。そして、検出された水位が、予め設定された上限値を超えるか否かが判断される(ステップS3)。ここで、水位検出装置92により制御される水位範囲は、図3に示すように、単位セル14の水素排出通路64と高圧水素連通孔54との境界部位から下方に高さTの範囲である。
【0054】
検出された水位が、上限値を超えると判断されると(ステップS3中、YES)、ステップS4に進んで、電解電源26から印加される電解電流を低下させる。このため、カソード側流路68に透過する水分量が減少し、水位が低下する。従って、各単位セル14では、カソード側流路68の水位が所定の水位範囲である高さTの範囲内に制御される。この処理は、水電解処理が終了するまで、継続される(ステップS5)。なお、水位が所定水位以上になった時、開閉弁104を開弁して排水を開始する。
【0055】
これにより、各単位セル14では、カソード側流路68を、常時、水により満たすことができ、固体高分子電解質膜38は、常時、所望の湿潤状態に維持することが可能になる。
【符号の説明】
【0056】
10…高圧水電解システム 12…水電解装置
14…単位セル 26…電解電源
32…電解質膜・電極構造体 34…アノード側セパレータ
36…カソード側セパレータ 38…固体高分子電解質膜
40…アノード側給電体 42…カソード側給電体
44…プレート部材 46…皿ばね
50…水供給連通孔 52…水排出連通孔
54…高圧水素連通孔 56…高圧水連通孔
58…水供給通路 60…水排出通路
62…アノード側流路 64…水素排出通路
66…高圧水排出通路 68…カソード側流路
70…高圧水素分離排出部 72…高圧水排出部
90…高圧水素排出配管 92…水位検出装置
96…高圧水排出配管 98…水位センサ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電気分解して酸素と前記酸素よりも高圧な高圧水素とを発生させる高圧水素製造装置を備える高圧水電解システムであって、
前記高圧水素製造装置は、面方向を鉛直方向に沿って立位姿勢で配置される固体高分子電解質膜と、
前記固体高分子電解質膜の左右両側に設けられる電解用のアノード側給電体及びカソード側給電体と、
前記アノード側給電体に対向して配置され、水が供給されるとともに、前記水を電気分解して酸素が発生されるアノード側セパレータと、
前記カソード側給電体に対向して配置され、前記水を電気分解して前記酸素よりも高圧な水素が発生されるカソード側セパレータと、
前記カソード側給電体に積層方向に荷重を付与する弾性部材と、
前記カソード側セパレータと前記固体高分子電解質膜との間に形成され、前記弾性部材が配設されるとともに、前記高圧水素が排出されるカソード室と、
前記カソード室の上部に連通し、前記高圧水素と高圧水とを分離する高圧水素分離排出部と、
前記カソード室の下部に連通し、前記高圧水素分離排出部で前記高圧水素から分離された前記高圧水を排出する高圧水排出部と、
を備えることを特徴とする高圧水電解システム。
【請求項2】
請求項1記載の高圧水電解システムにおいて、複数の前記高圧水素製造装置が水平方向に沿って積層される高圧水電解スタックを備え、
前記高圧水電解スタックは、積層方向に貫通し、各高圧水素製造装置の前記高圧水素分離排出部に連通する高圧水素連通孔と、
前記積層方向に貫通し、各高圧水素製造装置の前記高圧水排出部に連通する高圧水連通孔と、
を設けるとともに、
前記高圧水電解システムは、前記高圧水素連通孔に一端が接続され、前記高圧水素を前記高圧水電解スタックから排出する高圧水素排出配管と、
前記高圧水連通孔に一端が接続され、前記高圧水を前記高圧水電解スタックから排出する高圧水排出配管と、
前記高圧水素排出配管の他端及び前記高圧水排出配管の他端が接続され、前記高圧水電解スタック内の水位を検出する水位検出装置と、
を備えることを特徴とする高圧水電解システム。
【請求項3】
面方向を鉛直方向に沿って立位姿勢で配置される固体高分子電解質膜と、
前記固体高分子電解質膜の左右両側に設けられる電解用のアノード側給電体及びカソード側給電体と、
前記アノード側給電体に対向して配置され、水が供給されるとともに、前記水を電気分解して酸素が発生されるアノード側セパレータと、
前記カソード側給電体に対向して配置され、前記水を電気分解して前記酸素よりも高圧な水素が発生されるカソード側セパレータと、
前記カソード側給電体に積層方向に荷重を付与する弾性部材と、
前記カソード側セパレータと前記固体高分子電解質膜との間に形成され、前記弾性部材が配設されるとともに、前記高圧水素が排出されるカソード室と、
前記カソード室の上部に連通し、前記高圧水素と高圧水とを分離する高圧水素分離排出部と、
前記カソード室の下部に連通し、前記高圧水素分離排出部で前記高圧水素から分離された前記高圧水を排出する高圧水排出部と、
を備える高圧水素製造装置を組み込む高圧水電解システムの運転方法であって、
前記高圧水素分離排出部の水位を検出する工程と、
前記高圧水素分離排出部の水位が上限値を超えるか否かを判断する工程と、
前記高圧水素分離排出部の水位が前記上限値を超えると判断された際、電解電流値を下げることにより、前記高圧水素分離排出部の水位を前記上限値以下に制御する工程と、
を有することを特徴とする高圧水電解システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−36068(P2013−36068A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171497(P2011−171497)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】