説明

高圧水電解装置

【課題】導電通路を構成する部品同士の接触面積を有効に拡大させることができ、接触面の変化に影響されることがなく、安定した導電通路を設けることを可能にする。
【解決手段】高圧水電解装置10を構成する単位セル12は、電解質膜・電極構造体32と、この電解質膜・電極構造体32を挟持するアノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36とを備える。電解質膜・電極構造体32は、固体高分子電解質膜38と、前記固体高分子電解質膜38の両面に設けられるアノード側給電体40及びカソード側給電体42とを備える。カソード側セパレータ36と皿ばね46との間からプレート部材44とカソード側給電体42との間にわたって、前記カソード側セパレータ36から前記カソード側給電体42に電気的に連なる導電通路60epを有する導電部材60が一体に介装される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を電気分解してアノード側に酸素を発生させるとともに、カソード側に前記酸素よりも高圧な水素を発生させる高圧水電解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、燃料電池を発電させるための燃料ガスとして、水素ガスが使用されている。一般的に、水素ガスを製造する際に、水電解装置が採用されている。この水電解装置は、水を電気分解して水素(及び酸素)を発生させるため、固体高分子電解質膜を用いている。固体高分子電解質膜の両面には、電極触媒層が設けられて電解質膜・電極構造体が構成されるとともに、前記電解質膜・電極構造体の両側には、それぞれ給電体を配設してユニットが構成されている。
【0003】
そこで、複数のユニットが積層された状態で、積層方向両端に電圧が付与されるとともに、アノード側給電体に水が供給される。このため、電解質膜・電極構造体のアノード側では、水が分解されて水素イオン(プロトン)が生成され、この水素イオンが固体高分子電解質膜を透過してカソード側に移動し、電子と結合して水素が製造される。一方、アノード側では、水素と共に生成された酸素が、余剰の水を伴ってユニットから排出される。
【0004】
この種の水電解装置では、カソード側に、アノード側に生成される酸素よりも高圧(例えば、数十MPa)な水素が生成される高圧水電解装置を採用する場合がある。例えば、特許文献1に開示されている高圧水素製造装置は、図11に示すように、固体高分子膜1と、その両側に相対向して設けられたカソード給電体2a及びアノード給電体2bと、各給電体2a、2bに積層されたセパレータ3a、3bと、各セパレータ3a、3bに設けられ、前記各給電体2a、2bが露出する流体通路4a、4bとを備えている。
【0005】
固体高分子膜1、各給電体2a、2b、各セパレータ3a、3bは、前記セパレータ3a、3bに積層された絶縁部材5a、5bを介してエンドプレート6a、6bに挟持されている。
【0006】
カソード側のセパレータ3aに設けられた流体通路4a内には、カソード給電体2aを固体高分子膜1側に付勢するチタン製皿ばね7が配設されている。皿ばね7と固体高分子膜1との間には、チタン製パンチングプレート8が介装されている。これにより、カソード側が高圧になったときにも、固体高分子膜1とカソード給電体2aとの接触抵抗が増大することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−70322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記の高圧水素製造装置では、高圧水素が生成されるカソード側に、それぞれ別部材で構成された皿ばね7、パンチングプレート8及びカソード給電体2aが積層されている。
【0009】
その際、セパレータ3a、皿ばね7、パンチングプレート8及びカソード給電体2aの順に、電子が流れており、固体高分子膜1の触媒表面で水素の生成反応が発生している。
【0010】
このように、皿ばね7は、導電通路を構成しているが、この皿ばね7とセパレータ3aとの接触面積及び前記皿ばね7とパンチングプレート8との接触面積が相当に小さくなるおそれがある。これにより、セパレータ3aと皿ばね7との接触面の変化、例えば、酸化による接触抵抗への影響を受け易くなるとともに、前記皿ばね7が通電により劣化し易いという問題がある。
【0011】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、導電通路を構成する部品同士の接触面積を有効に拡大させることができ、接触面の変化に影響されることがなく、安定した導電通路を設けることが可能な高圧水電解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、固体高分子電解質膜と、前記固体高分子電解質膜の両側に設けられる電解用のアノード側給電体及びカソード側給電体と、前記アノード側給電体に対向して配置され、水が供給されるとともに、前記水を電気分解して酸素が発生されるアノード側セパレータと、前記カソード側給電体に対向して配置され、前記水を電気分解して前記酸素よりも高圧な水素が発生されるカソード側セパレータと、前記カソード側給電体に積層されるプレート部材と、前記プレート部材と前記カソード側セパレータとの間に配置され、積層方向に荷重を付与する弾性部材とを備える高圧水電解装置に関するものである。
【0013】
この高圧水電解装置は、カソード側セパレータと弾性部材との間からプレート部材とカソード側給電体との間にわたって一体に介装され、前記カソード側セパレータから前記カソード側給電体に電気的に連なる導電通路を有する導電部材を備えている。
【0014】
また、この高圧水電解装置では、導電部材は、カソード側セパレータと弾性部材との間に介装される第1平坦部と、プレート部材とカソード側給電体との間に介装される第2平坦部と、前記第1平坦部と前記第2平坦部とを連結する連結部とを備えるとともに、前記導電部材は、弾性変形自在であることが好ましい。
【0015】
さらに、この高圧水電解装置では、導電部材は、第1平坦部がカソード側セパレータに一体化されることが好ましい。
【0016】
さらにまた、この高圧水電解装置では、導電部材は、金属シートに導電性メッキ処理が施されることが好ましい。
【0017】
また、本発明の高圧水電解装置では、カソード側セパレータと固体高分子電解質膜との間から、前記固体高分子電解質膜に設けられた電極触媒層とカソード側給電体との間にわたって一体に介装され、前記カソード側セパレータから前記電極触媒層に電気的に連なる導電通路を有する導電部材を備えている。
【0018】
さらに、この高圧水電解装置では、導電部材は、多孔質の金属製シート部材で構成されることが好ましい。
【0019】
さらにまた、この高圧水電解装置では、弾性部材は、ゴム部材で構成されるとともに、プレート部材は、複数の孔部を設けることが好ましい。
【0020】
また、この高圧水電解装置では、弾性部材は、プレート部材に対して同心円状、螺旋状又は直線状に配設されることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、導電部材を備えるとともに、前記導電部材は、カソード側セパレータからカソード側給電体又は電極触媒層に直接電気的に連なる導電通路を有している。このため、導電通路を構成する部品間において、導電部材の厚さ分だけ接触面積が増加し、接触面の変質等による影響を受け難くすることができる。これにより、接触面の変化に影響されることがなく、弾性部材の劣化を抑制するとともに、安定した導電通路を確実に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る高圧水電解装置の斜視説明図である。
【図2】前記高圧水電解装置の一部断面側面図である。
【図3】前記高圧水電解装置を構成する単位セルの分解斜視説明図である。
【図4】前記単位セルの、図3中、IV−IV線断面図である。
【図5】前記高圧水電解装置を構成する導電部材の斜視説明図である。
【図6】前記導電部材の接触状態の説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る高圧水電解装置を構成する単位セルの断面説明図である。
【図8】前記単位セルを構成するプレート部材及びゴム部材の斜視説明図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る高圧水電解装置を構成するプレート部材及びゴム部材の斜視説明図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係る高圧水電解装置を構成するプレート部材及びゴム部材の斜視説明図である。
【図11】特許文献1に開示されている高圧水素製造装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1及び図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る高圧水電解装置10は、複数の単位セル12が鉛直方向(矢印A方向)又は水平方向(矢印B方向)に積層された積層体14を備える。
【0024】
積層体14の積層方向一端(上端)には、ターミナルプレート16a、絶縁プレート18a及びエンドプレート20aが上方に向かって、順次、配設される。積層体14の積層方向他端(下端)には、同様にターミナルプレート16b、絶縁プレート18b及びエンドプレート20bが下方に向かって、順次、配設される。
【0025】
高圧水電解装置10は、例えば、矢印A方向に延在する4本のタイロッド22を介して円盤形状のエンドプレート20a、20b間を一体的に締め付け保持する。なお、高圧水電解装置10は、エンドプレート20a、20bを端板として含む箱状ケーシング(図示せず)により一体的に保持される構成を採用してもよい。また、高圧水電解装置10は、全体として略円柱体形状を有しているが、立方体形状等の種々の形状に設定可能である。
【0026】
図1に示すように、ターミナルプレート16a、16bの側部には、端子部24a、24bが外方に突出して設けられる。端子部24a、24bは、配線26a、26bを介して電源28に電気的に接続される。
【0027】
図3及び図4に示すように、単位セル12は、略円盤状の電解質膜・電極構造体32と、この電解質膜・電極構造体32を挟持するアノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36とを備える。アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36は、略円盤状を有するとともに、例えば、カーボン部材等で構成され、又は、鋼板、ステンレス鋼板、チタン板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板をプレス成形して、あるいは切削加工した後に防食用の表面処理を施して構成される。
【0028】
電解質膜・電極構造体32は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜38と、前記固体高分子電解質膜38の両面に設けられる円形状のアノード側給電体40及びカソード側給電体42とを備える。固体高分子電解質膜38の外形寸法は、アノード側給電体40及びカソード側給電体42の外径寸法よりも大径に設定される(図3参照)。
【0029】
図4に示すように、固体高分子電解質膜38の両面には、アノード電極触媒層40a及びカソード電極触媒層42aが形成される。アノード電極触媒層40aは、例えば、Ru(ルテニウム)系触媒を使用する一方、カソード電極触媒層42aは、例えば、白金触媒を使用する。
【0030】
アノード側給電体40及びカソード側給電体42は、例えば、球状アトマイズチタン粉末の焼結体(多孔質導電体)により構成される。アノード側給電体40及びカソード側給電体42は、研削加工後にエッチング処理される平滑表面部を設けるとともに、空隙率が10%〜50%、より好ましくは、20%〜40%の範囲内に設定される。
【0031】
カソード側給電体42側には、プレート部材44と皿ばね(弾性部材)46とが配設される。プレート部材44は、円板状を有するとともに、カソード側給電体42に対向する押圧面44aとは反対側の荷重付与面44bに、弾性部材、例えば、4枚の皿ばね46が配設される。皿ばね46は、皿ばねホルダであるプレート部材44を介してカソード側給電体42に荷重を付与する。
【0032】
カソード側セパレータ36と皿ばね46との間からプレート部材44とカソード側給電体42との間にわたって、前記カソード側セパレータ36から前記カソード側給電体42に電気的に連なる導電通路60epを有する導電部材60(後述する)が一体に介装される。
【0033】
図3に示すように、単位セル12の外周部には、セパレータ面方向外方に突出する第1突出部48a、第2突出部48b及び第3突出部48cが形成される。第1突出部48aには、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、第1の流体である水(純水)を供給するための水供給連通孔50aが設けられる。
【0034】
第2突出部48bには、矢印A方向に互いに連通して、反応により生成された酸素及び使用済みの水を排出するための排出連通孔50bが設けられる。第3突出部48cには、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、反応により生成された高圧水素を流すための水素連通孔50cが設けられる。
【0035】
図3及び図4に示すように、アノード側セパレータ34には、水供給連通孔50aに連通する供給通路52aと、排出連通孔50bに連通する排出通路52bとが設けられる。アノード側セパレータ34の電解質膜・電極構造体32に向かう面34a及びアノード側給電体40の内部には、供給通路52a及び排出通路52bに連通する第1流路54が設けられる。
【0036】
カソード側セパレータ36には、水素連通孔50cに連通する排出通路56が設けられる。カソード側給電体42の内部には、排出通路56に連通する第2流路58が形成される。
【0037】
図4及び図5に示すように、導電部材60は、カソード側セパレータ36と皿ばね46との間に介装される4つの矩形状の第1平坦部60aと、プレート部材44とカソード側給電体42との間に介装される円板状の第2平坦部60bと、前記第1平坦部60aと前記第2平坦部60bとを連結する4つの連結部60cとを備える。導電部材60は、弾性変形可能であり、例えば、第1平坦部60aと第2平坦部60bとの間隔が変更自在である。
【0038】
導電部材60の第1平坦部60aは、カソード側セパレータ36の内面に、例えば、溶接又は拡散接合により一体化される。導電部材60は、例えば、チタン、SUS又は鉄等の金属シートにより構成されるとともに、例えば、白金等の導電性メッキ処理によりカソード側セパレータ36の内面に一体化されてもよい。
【0039】
図5に示すように、導電部材60は、抵抗率R(μΩ・cm)の場合に、帯状の導電通路(第1平坦部60aから連結部60c)60epの抵抗率は、前記導電通路60epの長さL、幅W及び厚さtから、R×L/4×W×t(μΩ)となる。さらに、電流Aより、RL・A/4Wt(μV)となり、この値が全体の電力効率の1%以下になるように設定される。
【0040】
図3に示すように、アノード側セパレータ34及びカソード側セパレータ36の外周端部を周回して、シール部材61a、61bが一体化される。このシール部材61a、61bには、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材が用いられる。
【0041】
図3及び図4に示すように、アノード側セパレータ34の電解質膜・電極構造体32に向かう面34aには、第1流路54及びアノード側給電体40の外方を周回して第2シール部材62aを配設するための第2シール溝64aが形成される。
【0042】
面34aには、水供給連通孔50a、排出連通孔50b及び水素連通孔50cの外側を周回して、第3シール部材62b、第4シール部材62c及び第5シール部材62dを配置するための第3シール溝64b、第4シール溝64c及び第5シール溝64dが形成される。第2シール部材62a〜第5シール部材62dは、例えば、Oリングである。
【0043】
カソード側セパレータ36の電解質膜・電極構造体32に向かう面36aには、第2流路58及びカソード側給電体42の外方を周回して、第1シール部材66aを配設するための第1シール溝68aが形成される。
【0044】
面36aには、水供給連通孔50a、排出連通孔50b及び水素連通孔50cの外側を周回して、第3シール部材66b、第4シール部材66c及び第5シール部材66dを配置するための第3シール溝68b、第4シール溝68c及び第5シール溝68dが形成される。第1シール部材66a、第3シール部材66b〜第5シール部材66dは、例えば、Oリングである。
【0045】
アノード側給電体40の外方を周回する第2シール溝64aと、カソード側給電体42の外方を周回する第1シール溝68aとは、セパレータ積層方向(矢印A方向)に対し固体高分子電解質膜38を挟んで互いに異なる位置に設定される。
【0046】
水素連通孔50cの外方を周回する第5シール溝64dと前記水素連通孔50cの外方を周回する第5シール溝68dとは、矢印A方向に対し固体高分子電解質膜38を挟んで互いに異なる位置に設定される。
【0047】
図1及び図2に示すように、エンドプレート20aには、水供給連通孔50a、排出連通孔50b及び水素連通孔50cに連通する配管76a、76b及び76cが接続される。配管76cには、図示しないが、背圧弁(又は電磁弁)が設けられており、水素連通孔50cに生成される水素の圧力を高圧に維持することができる。エンドプレート20a、20b間には、図示しない押し付け力付与装置により押し付け力が付与され、この状態で、前記エンドプレート20a、20bがタイロッド22を介して締め付けられる。
【0048】
このように構成される高圧水電解装置10の動作について、以下に説明する。 図1に示すように、配管76aから高圧水電解装置10の水供給連通孔50aに水が供給されるとともに、ターミナルプレート16a、16bの端子部24a、24bに電気的に接続されている電源28を介して電圧が付与される。このため、図3及び図4に示すように、各単位セル12では、水供給連通孔50aからアノード側セパレータ34の第1流路54に水が供給され、この水がアノード側給電体40内に沿って移動する。
【0049】
従って、水は、アノード電極触媒層40aで電気により分解され、水素イオン、電子及び酸素が生成される。この陽極反応により生成された水素イオンは、固体高分子電解質膜38を透過してカソード電極触媒層42a側に移動し、電子と結合して水素が得られる。
【0050】
このため、カソード側給電体42の内部及びプレート部材44に形成される第2流路58に沿って、水素が流動する。この水素は、水供給連通孔50aよりも高圧に維持されており、水素連通孔50cを流れて高圧水電解装置10の外部に取り出し可能となる。一方、第1流路54には、反応により生成した酸素と、使用済みの水とが流動しており、これらが排出連通孔50bに沿って高圧水電解装置10の外部に排出される。
【0051】
この場合、第1の実施形態では、導電部材60を備えるとともに、前記導電部材60は、カソード側セパレータ36からカソード側給電体42に電気的に連なる導電通路60epを有している。このため、カソード側セパレータ36と皿ばね46とが、直接接触して互いに略線接触する構成に比べ、導電部材60の厚さtに対応して接触面積が増加する(図6参照)。具体的には、面圧が付与される面の接触面積は2πtDに拡大される。
【0052】
従って、十分な接触面積を確保することができ、導電通路60epを構成する接触面の変質等による影響を受け難くすることが可能になる。これにより、接触面の変化に影響されることがなく、皿ばね46の劣化を抑制するとともに、安定した導電通路60epを確実に設けることができるという効果が得られる。
【0053】
なお、第1の実施形態では、カソード側給電体42の内部に第2流路58が形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、プレート部材44において、導電部材60の第2平坦部60bに接触する面に、直線溝やエンボス形状の第2流路58を形成するとともに、前記導電部材60の前記第2平坦部60bを多孔質に構成することができる。
【0054】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る高圧水電解装置80を構成する単位セル82の断面説明図である。なお、第1の実施形態に係る高圧水電解装置10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付してその詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3以降の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0055】
単位セル82は、固体高分子電解質膜38のカソード電極触媒層42aとカソード側給電体42との間に介装される導電部材84を備える。導電部材84は、円形状の金属製薄膜シートで構成されており、外周縁部が固体高分子電解質膜38とカソード側セパレータ36との間に挟持される。導電部材84は、水素ガス及び水を透過可能な微細な孔部を有する多孔質に構成されるとともに、導電通路84epを形成する。
【0056】
カソード側給電体42側には、プレート部材86と複数のゴム部材(弾性部材)88a、88b及び88cとが配設される。図7及び図8に示すように、プレート部材86は、円板状を有するとともに、前記プレート部材86の中心から同心円状にリング状の溝部90a、90b及び90cが形成される。溝部90a〜90cの底部には、厚さ方向に貫通する複数の水素導入用孔部92が形成される。各溝部90a〜90cには、ゴム部材88a〜88cが配設されるとともに、前記ゴム部材88a〜88cは、プレート部材86の面から突出してカソード側セパレータ36の内面に当接する。
【0057】
このように構成される高圧水電解装置80では、接触面の変化に影響されることがなく、安定した導電通路84epを確実に設けることができるという効果が得られる。
【0058】
しかも、プレート部材86の中心から同心円状にゴム部材88a〜88cが配設されるため、カソード電極触媒層42aとカソード側給電体42との接触面圧を良好に確保することができる。その上、プレート部材86とゴム部材88a〜88cとが使用されるため、厚さ方向の寸法Cは、例えば、皿ばねを使用する構成に比べて相当に短尺化されるという利点がある。
【0059】
図9は、本発明の第3の実施形態に係る高圧水電解装置を構成するプレート部材100及びゴム部材(弾性部材)102の斜視説明図である。
【0060】
プレート部材100は、円板状を有するとともに、前記プレート部材100の中心から外方に向かって螺旋状に周回する溝部104が形成される。溝部104には、ゴム部材102が螺旋状に配置される。
【0061】
図10は、本発明の第4の実施形態に係る高圧水電解装置を構成するプレート部材110及び複数のゴム部材(弾性部材)112の斜視説明図である。
【0062】
プレート部材110は、円板状を有するとともに、前記プレート部材110には、互いに並行する複数本の直線状溝部114が形成される。各溝部114には、直線状のゴム部材112が配置される。
【0063】
このように構成される第3及び第4の実施形態では、上記の第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0064】
10、80…高圧水電解装置 12、82…単位セル
14…積層体 16a、16b…ターミナルプレート
18a、18b…絶縁プレート 20a、20b…エンドプレート
24a、24b…端子部 28…電源
32…電解質膜・電極構造体 34…アノード側セパレータ
36…カソード側セパレータ 38…固体高分子電解質膜
40…アノード側給電体 42…カソード側給電体
44、86、100、110…プレート部材
46…皿ばね 50a…水供給連通孔
50b…排出連通孔 50c…水素連通孔
54、58…流路 60、84…導電部材
60a、60b…平坦部 60c…連結部
60ep、84ep…導電通路
88a〜88c、102、112…ゴム部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体高分子電解質膜と、
前記固体高分子電解質膜の両側に設けられる電解用のアノード側給電体及びカソード側給電体と、
前記アノード側給電体に対向して配置され、水が供給されるとともに、前記水を電気分解して酸素が発生されるアノード側セパレータと、
前記カソード側給電体に対向して配置され、前記水を電気分解して前記酸素よりも高圧な水素が発生されるカソード側セパレータと、
前記カソード側給電体に積層されるプレート部材と、
前記プレート部材と前記カソード側セパレータとの間に配置され、積層方向に荷重を付与する弾性部材と、
を備える高圧水電解装置であって、
前記カソード側セパレータと前記弾性部材との間から前記プレート部材と前記カソード側給電体との間にわたって一体に介装され、前記カソード側セパレータから前記カソード側給電体に電気的に連なる導電通路を有する導電部材を備えることを特徴とする高圧水電解装置。
【請求項2】
請求項1記載の高圧水電解装置において、前記導電部材は、前記カソード側セパレータと前記弾性部材との間に介装される第1平坦部と、
前記プレート部材と前記カソード側給電体との間に介装される第2平坦部と、
前記第1平坦部と前記第2平坦部とを連結する連結部と、
を備えるとともに、
前記導電部材は、弾性変形自在であることを特徴とする高圧水電解装置。
【請求項3】
請求項2記載の高圧水電解装置において、前記導電部材は、前記第1平坦部が前記カソード側セパレータに一体化されることを特徴とする高圧水電解装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の高圧水電解装置において、前記導電部材は、金属シートに導電性メッキ処理が施されることを特徴とする高圧水電解装置。
【請求項5】
固体高分子電解質膜と、
前記固体高分子電解質膜の両側に設けられる電解用のアノード側給電体及びカソード側給電体と、
前記アノード側給電体に対向して配置され、水が供給されるとともに、前記水を電気分解して酸素が発生されるアノード側セパレータと、
前記カソード側給電体に対向して配置され、前記水を電気分解して前記酸素よりも高圧な水素が発生されるカソード側セパレータと、
前記カソード側給電体に積層されるプレート部材と、
前記プレート部材と前記カソード側セパレータとの間に配置され、積層方向に荷重を付与する弾性部材と、
を備える高圧水電解装置であって、
前記カソード側セパレータと前記固体高分子電解質膜との間から、該固体高分子電解質膜に設けられた電極触媒層と前記カソード側給電体との間にわたって一体に介装され、前記カソード側セパレータから前記電極触媒層に電気的に連なる導電通路を有する導電部材を備えることを特徴とする高圧水電解装置。
【請求項6】
請求項5記載の高圧水電解装置において、前記導電部材は、多孔質の金属製シート部材で構成されることを特徴とする高圧水電解装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載の高圧水電解装置において、前記弾性部材は、ゴム部材で構成されるとともに、
前記プレート部材は、複数の孔部を設けることを特徴とする高圧水電解装置。
【請求項8】
請求項7記載の高圧水電解装置において、前記弾性部材は、前記プレート部材に対して同心円状、螺旋状又は直線状に配設されることを特徴とする高圧水電解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−87403(P2012−87403A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169335(P2011−169335)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】