説明

高圧用圧力センサ

【目的】耐久性と、信頼性を向上せしめることができる高圧用圧力センサを提供する。
【構成】21は被測定圧力Pを供給する供給口22を有するアウタケースであって、このアウタケース21内における圧力供給口22開口部には第2のダイアフラム23の周縁部を受け止める段部24が形成され、この段部24と第2のダイアフラム23との間に介在されるOリング25によって、その第2のダイアフラム23は液密に接合されている。この第2のダイアフラム23を可撓耐久性に優れた同質の金属板である2枚の薄板ダイアフラム素材23Aと23Bとを重ね合せた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば、半導体拡散型歪ゲージを内装して、高圧である自動車用油圧等を検出するに有利な圧力センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来において自動車用油圧を検出するために使用される従来の油圧センサの受圧部構造としては例えば図1に示す如き構造のものがある。つまり1はセンサケースであって、このケース1には受圧凹部2が形成され、この凹部2の奥面には歪ゲージ3が固定されている。またその凹部2の開口部にはダイアフラム4が、固定環5によって液密に被着されており、さらにそのダイアフラム4と半導体拡散型歪ゲージ3との間にはシリコンオイル6が充填されているものである。なお7は半導体拡散型歪ゲージ3より引き出される複数の電極を示す。
【0003】そして上記ダイアフラム4に矢印で示す被測定圧力P0 が作用されればその圧力でダイアフラム4を撓ませこのダイアフラム4の撓み力が半導体拡散型歪ゲージ3に伝達されることで、該歪ゲージ3からは、伝達圧力に応じた出力が生じ、これによって被測定圧力P0 の値が検出されるものである。
【0004】ところがかかる構造の圧力センサにあってはダイアフラムの全面に作用する被測定圧力がシリコンオイル6を介して半導体拡散型歪ゲージ3に作用される構造であるために、そのダイアフラム4に作用する被測定圧力P0 が異常な高圧であると、その高圧力が半導体拡散型歪ゲージ3に作用し、その結果半導体拡散型歪ゲージ3が破損されてしまうという不具合が生じていた。従って例えば高圧用センサと、低圧用センサに対応できる複数種の半導体拡散型歪ゲージを予め用意しなければならない不便があった。
【0005】そこでこの不便を解消するために、本発明者は図2に示す如き構造の圧力センサを先に出願している。つまりこの先願圧力センサは、インナケース8に圧力検出素子9が収容される凹部10を形成し、該凹部10を、その中に非圧縮性流体11が封入されるように第1のダイアフラム12で閉塞し、さらに測定圧力を受けて変位する第2のダイアフラム13を前記インナケース8と一体のアウタケース14に固定すると共に、前記第2のダイアフラム13の変位を前記第1のダイアフラム12に伝達する中間部材15を前記第1及び第2のダイアフラムの間に介装してなる構造のものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところがかかる先願構造の圧力センサにあっては、圧力供給口16より供給される圧力P0 により、第2のダイアフラム13が変動し、これによって中間部材15を介して第1のダイアフラム12を変動させるものであるが、上記第2のダイアフラム13の撓み部17は、図3の詳細図で示すように、インナケース8と、中間部材15との間で形成される隙間18に対応して形成されるものであって、この撓み部17は、該第2のダイアフラムに繰返し作用される曲げ応力と引張応力により疲労が生じ、長期使用によってその撓み部17が破損されやすい等のことからこの構造の圧力センサにあってはダイアフラムの変動量(撓み量)が大である高圧測定用の圧力センサには適さずかつ信頼性にも欠けるという不具合があった。尚図2に示される撓み部17の斜線部は応力分布を示す。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明はかかる先行例による圧力センサの不具合に着目してなされたもので、第2のダイアフラムを、可撓耐久性に優れた薄型のダイアフラムを2枚以上重ね合せて構成することにより、高圧力を測定するための圧力センサとして耐久性と、信頼性を向上せしめることができる高圧用圧力センサを提供することにある。
【0008】
【実施例】以下に本発明を図面に示す実施例に基いて詳細に説明する。
【0009】図4において、21は被測定圧力P0 を供給する供給口22を有するアウタケースであって、このアウタケース21内における圧力供給口22開口部には第2のダイアフラム23の周縁部を受け止める段部24が形成され、この段部24と第2のダイアフラム23との間に介在されるOリング25によって、その第2のダイアフラム23は液密に接合されている。
【0010】この第2のダイアフラム23の構成は、図5R>5において明示したように同質の金属板である2枚の薄板ダイアフラム素材23Aと23Bとを重ね合せて構成したものであり、しかもそのダイアフラム素材23A,23Bの厚さは、先行例で示されているダイアフラム13の厚さの1/2、即ち2枚のダイアフラム素材23Aと23Bとを重ね合せた厚さが、先行例のダイアフラム13の厚さと等しいものである。
【0011】26はその第2のダイアフラム23の上側周縁部に重ね合せられる環状のスペーサであり、このスペーサ26の上側には、第1のダイアフラム27が載置されている。28は第1のダイアフラム、スペーサ26、第1のダイアフラム27を、前記段部24に押圧固定するインナケースであって、このインナケースの下端中央部には凹部29が形成され、この凹端面には半導体拡散型歪ゲージ30が取り付けられている。31はその半導体拡散型歪ゲージ30の電極、32は半導体拡散型歪ゲージ30と第1のダイアフラム27との空間に充填されているシリコンオイル、33は第1のダイアフラム27と第2のダイアフラム23との間に介在されて、第2のダイアフラム23の動作を第1のダイアフラム27に伝達せしめるための側面略T字状の中間部材であって、その上側面は第1のダイアフラム27に当接され、その下面は第2のダイアフラム23に当接されている。
【0012】以上が本実施例の構成であるが、次にその作用について述べると、今圧力供給口22に被測定圧力を供給することにより、第2のダイアフラム23が撓み、この第2のダイアフラム23の撓みは中間部材33を介して第1のダイアフラム27に伝達されるために、この第1のダイアフラム27の動作がシリコンオイル32を介して半導体拡散型歪ゲージ30に作用し、その結果被測定圧力の圧力が半導体拡散型歪ゲージ30によって測定されるものである。
【0013】このように本実施例にあっては、第2のダイアフラム23を、薄板である2枚のダイアフラム素材23Aと23Bとを重ね合せて先行例で示した第2のダイアフラムと等しい厚さとするものである。それぞれの薄板ダイアフラム素材23A,23Bに生じる応力分布は図5の斜線で示すように、先行例の1枚の第2のダイアフラムにおいて生じる応力分布に比して小さくなる。すなわち第2のダイアフラム23に作用する応力は、2枚のダイアフラム素材23A,23Bに分担されるために各ダイアフラム素材23A,23Bの最大応力は小さくなり、これによって第2のダイアフラム23における疲労度が小さくなり耐久性及び信頼性が向上される。
【0014】また薄板ダイアフラム素材23A,23Bを重ね合せることで耐圧力は先行例と同様に優れ、高圧用として充分に耐え得る圧力センサが得られる。
【0015】なお上記実施例では第2のダイアフラム23を2枚の薄板ダイアフラム素材23Aと23Bの重ね合せで構成したが、2枚に限るものではなくそれ以上の枚数を重ね合せるようにしても同等の効果が得られる。
【0016】さらに上記実施例では、第1のダイアフラム27を金属性ダイアフラムを使用しているが、これに限るものではなく、例えば図6に示す如くゴム弾性シート又はポリイミドなどのフィルム34を設けることも可能である。
【0017】なお、ダイアフラムの厚さの合計も従来例と同じにする必要はないことはいうまでもないことである。
【0018】
【発明の効果】以上のように本発明は、インナケース28に、圧力検出素子30が収容される凹部29を形成し、この凹部29を、その凹部内に非圧縮性流体32を封入して第1のダイアフラム27又は34で閉塞し、さらに測定圧力を受けて変位し、かつ複数枚のダイアフラム素材23A,23Bが重ね合さって構成される第2のダイアフラム23を前記インナケース28と一体のアウタケース21に固定すると共に、前記第2のダイアフラム23の変位を前記第1のダイアフラム27又は34に伝達する中間部材33を、前記第1及び第2のダイアフラム間に介装してなる高圧用圧力センサであるから、これによれば第2のダイアフラムに作用する応力は複数枚のダイアフラムに分担されるために、各ダイアフラムに生じる最大応力は小さくなり、これによって第2のダイアフラムにおける疲労度合は小さく、耐久性、信頼性が大幅に向上される。また薄板である複数枚のダイアフラム素材を重ね合せることにより、高圧力を測定することも可能であって、高圧用圧力センサとしての実用性も大であるといった効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来例の圧力センサの構造説明図。
【図2】先行例の圧力センサの構造説明図。
【図3】先行例の圧力センサの要部拡大図。
【図4】本発明実施例の圧力センサの構造説明図。
【図5】本発明実施例の圧力センサの要部拡大図。
【図6】本発明他の実施例の圧力センサの構造説明図。
【符号の説明】
21…アウタケース 22…圧力供給口
23…第2のダイアフラム 23A,23B…ダイアフラム素材
24…段部 25…Oリング
26…スペーサ 27…第1のダイアフラム
28…インナケース 29…凹部
30…半導体拡散型歪ゲージ 31…電極
32…シリコンオイル 33…中間部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 インナケース(28)に、圧力検出素子(30)が収容される凹部(29)を形成し、この凹部(29)を、その凹部内に非圧縮性流体(32)を封入して第1のダイアフラム(27又は34)で閉塞し、さらに測定圧力を受けて変位し、かつ複数枚のダイアフラム素材(23A),(23B)が重ね合さって構成される第2のダイアフラム(23)を前記インナケース(28)と一体のアウタケース(21)に固定すると共に、前記第2のダイアフラム(23)の変位を前記第1のダイアフラム(27又は34)に伝達する中間部材(33)を、前記第1及び第2のダイアフラム間に介装してなることを特徴とする高圧用圧力センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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