説明

高圧用圧力センサ

【課題】 出力電圧が大きく、ノンリニアリティの小さい高特性な高圧用圧力センサを提供する。
【解決手段】 半導体結晶からなる基板の裏面に長方形のダイヤフラムをエッチングにより形成し、前記基板の表面に拡散抵抗形成部を設けた圧力センサにおいて、長方形のダイヤフラムの中心から拡散抵抗形成部の中心位置までの距離x,yと長方形のダイヤフラムの中心からダイヤフラムの各辺までの距離X,Yとの比をそれぞれRxとRyとしたときに、RxとRyをそれぞれ0.82〜0.99および1.15〜1.39の範囲の値として高圧用圧力センサを得る。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、差圧あるいは圧力を検出する圧力センサに関するものである。さらに詳しくは、半導体結晶からなる基板の裏面に長方形のダイヤフラムをエッチングにより形成し、前記基板の表面に拡散抵抗形成部を設けた高圧用圧力センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、高圧用圧力センサとしては、受圧部のダイヤフラム形状が正方形のものが一般的であり、センサの出力電圧やノンリニアリティはダイヤフラムの厚みや、拡散抵抗形成部の濃度や位置などを変えることによってコントロールされ、用途に応じそれぞれ最適な条件が検討されいた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の高圧用圧力センサは、大きな出力電圧を得るためにダイヤフラムの厚みを薄くすると、ノンリニアリティも大きくなってしまい、ノンリニアリティを小さくするためにダイヤフラムの厚みを厚くすると、必要かつ大きな出力電圧が得られないという問題点があった。したがって、本発明の目的は、出力電圧が大きく、ノンリニアリティの小さい高特性な高圧用圧力センサを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】上述した本発明の目的は、半導体結晶からなる基板の裏面に長方形のダイヤフラムをエッチングにより形成し、前記基板の表面に拡散抵抗形成部を設けた圧力センサにおいて、長方形のダイヤフラムの中心から拡散抵抗形成部の中心位置までの距離x,yと長方形のダイヤフラムの中心からダイヤフラムの各辺までの距離X,Yとの比をそれぞれRxとRyとしたときに、Rxが0.82〜0.99の範囲の値であり、Ryが1.15〜1.39の範囲の値であることを特徴とする高圧用圧力センサによって達成される。
【0005】すなわち、上述の構成によれば、出力電圧を下げること無くノンリニアリティを改善させることができるが、Rxが0.82〜0.99の範囲、Ryが1.15〜1.39の範囲からはずれると出力電圧が大きく、ノンリニアリティの小さい高特性な高圧用圧力センサは得られなかった。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例と比較例により詳しく説明する。シリコン・ウエハは、厚みが380μm,面方位が(100)のものを使用した。常法の圧力センサの製造工程により、拡散抵抗形成部を作成した後、7種類の形状のマスクを使用して、エッチングにより、ダイヤフラムを形成した。ここで、ダイヤフラムの中心から拡散抵抗形成部の中心までの距離は、x=210μm、y=330μmで一定とした。得られた圧力センサの一例の平面模式図を図1に示した。ここで、1は半導体基板であり、2の破線で囲まれた部分が半導体基板の裏面に形成されたダイヤフラムであり、3は拡散抵抗形成部である。なお、配線等その他の詳細は省略した。
【0007】次に、ダイヤフラムの中心からダイヤフラムの各辺までの距離X,Yと計算により求めた比Rx,Ryを表1にまとめて示した。ここで、*を付けたものは、本発明の範囲外の比較例であり、No.*7は、ダイヤフラムの形状が正方形の比較例である。
【0008】
【表1】


【0009】次に、得られた圧力センサの出力電圧とノンリニアリティの関係を表2に示した。ここで、ノンリニアリティとは、圧力無負荷Poのときの出力電圧をVo、定格圧力Prのときの出力電圧をVrとしたときに、VoとVrを結んだ直線上の数値から実測した出力電圧値が最大でどれくらいずれているかの尺度を示す値である。すなわち、圧力をPoからPrまで変化させたときの出力電圧を測定して圧力と出力電圧の関係を作図したときに、実測した出力電圧値と、VoとVrを結んだ直線から読み取った電圧値とのずれの最大値をDとすれば、ノンリニアリティは(Pl)は、Pl=D/(Vr−Vo)×100より求めた値として現され、単位は、(%Fs)となる。Plの符号は、正が実測値のほうがVoとVrを結んだ直線から読み取った電圧値より大きい場合であり、負は実測値のほう小さい場合である。また、Plの値の絶対値が小さいほどノンリニアリティが小さくなり高特性な圧力センサとなる。
【0010】
【表2】


【0011】表2の結果から、本発明の実施例であるダイヤフラムが長方形であり、Rxが0.82〜0.99の範囲の値であり、Ryが1.15〜1.39の範囲の値である圧力センサの特性は、出力電圧も高く、ノンリニアリティも小さなものが得られることが分かった。ここで、正方形のダイヤフラムを持つNo.*7の圧力センサは出力電圧は高いが、ノンリニアリティが大きく好ましい特性ではなかった。
【0012】
【発明の効果】本発明によれば、出力電圧も高くノンリニアリティも小さな高特性な高圧用圧力センサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】圧力センサの平面模式図の一例を示した図である。
【符号の説明】
1 半導体基板
2 ダイヤフラム
3 拡散抵抗形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】半導体結晶からなる基板の裏面に長方形のダイヤフラムをエッチングにより形成し、前記基板の表面に拡散抵抗形成部を設けた圧力センサにおいて、長方形のダイヤフラムの中心から拡散抵抗形成部の中心位置までの距離x,yと長方形のダイヤフラムの中心からダイヤフラムの各辺までの距離X,Yとの比をそれぞれRxとRyとしたときに、Rxが0.82〜0.99の範囲の値であり、Ryが1.15〜1.39の範囲の値であることを特徴とする高圧用圧力センサ。

【図1】
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