説明

高圧発生装置及び磁化測定装置

【課題】SQUID磁束計で用いられる1.5GPa以上の超高圧が発生可能で磁化の小さな物質の磁化測定も可能で高圧発生空間が比較的大きく廉価な高圧発生装置及び磁化測定装置を提供する。
【解決手段】高圧発生装置10は、両端部にボルト部11が形成されたシリンダー12と、シリンダー内に設けられた一対のアンビル13と、一対のアンビルの間に高圧発生空間を形成するために設けられたガスケット15と、一対のアンビルの両端から押さえるピストン16と、ピストンを介して一対のアンビルを加圧する加圧棒17と、加圧棒で加圧した後に一対のアンビルを加圧した状態でピストンを固定するためにボルト部でねじ締めするクランプナット18と、を備え、シリンダー12とアンビル13とガスケット15とピストン16とクランプナット18は、非磁性物質により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧発生装置及び磁化測定装置に関し、特に、高圧下での物質の磁化を測定するときに用いられる高圧発生装置及び磁化測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁性体・超伝導物質の基礎物性特性を研究する上で磁化測定は必要不可欠の手段である。現在、米国QUANTUM DESIGN社のMPMS(Magnetic Property Measurement System)という装置を始めとして、超伝導量子干渉素子(SQUID)が組み込まれた磁化測定装置(以下、SQUID磁束計)が各社から発売され磁化測定に幅広く用いられている。温度領域1.8Kから350K、磁場領域0Tから7Tの環境下における磁化測定が可能であり、5×10−8emu程度の微小磁化が検出可能である。
【0003】
磁性体・超伝導体の物性に対する圧力効果の調査は、物性の基礎特性を探る上でも重要である。SQUID磁束計に高圧発生装置を装着させ、試料の磁化の圧力効果が調べられている。SQUID磁束計の試料空間(試料を設置させる場所)は内径9mm程度であり、小型な高圧発生装置が数種類開発されている。以下、これまでに開発された高圧発生装置を概説し、その特徴と問題点を説明する。着眼点は「最大発生圧力(最高圧力)」、「高圧発生空間の体積」、「高圧発生装置の磁化のバックグラウンド」、「操作性」、「費用(価格)」である。
【0004】
(a)ピストンシリンダー型高圧発生装置(非特許文献1,2,3,4)
図13は、高圧発生装置として最も一般的なピストンシリンダー型高圧発生装置の構成を示す図である。この高圧発生装置100は、円筒形のシリンダー101にピストン102を挿入し上下からピストン102に荷重をかけて高圧発生空間103に高圧力を発生させるものである。SQUID磁束計に組み込み可能な、小型ピストンシリンダー型高圧発生装置は、1990年代半ばから開発が行われ学術論文として報告された(非特許文献1,2,3,4)。また企業により、製品として市販されている(例えば、日本では有限会社エレクトラボ)。
【0005】
測定される試料の磁化は、高圧発生空間103に配置された試料の体積に比例する。ピストンシリンダー型高圧発生装置100の特徴は、試料空間の体積が10mm程度と比較的大きいことである。SQUID磁束計を用いて十分に信頼できる精度で磁化測定が可能である。
【0006】
高圧発生装置を構成する部材には機械強度の大きな銅ベリリウム(CuBe)合金(引っぱり強度1.3GPa)が主に用いられている。SQUID磁束計において高圧発生装置を配置させる空間の外径は、通常9mm未満であり、高圧発生装置の外径(図13のL)は9mm未満に制限される。よって、およそ1トン(1000kgf)以上の荷重に対してシリンダー101及びピストン102は変形/破壊される。大きな荷重を加えることができないため高圧発生空間における最大発生圧力(最高圧力)は1.5GPa(万気圧)程度である。
【0007】
(b)インデンタ型高圧発生装置(非特許文献5)
図14は、インデンタ型高圧発生装置の構成を示す図である。この高圧発生装置200は、シリンダー201内で対向する2つの円錐台上のアンビル202の間にNiCrAl合金で作成されたガスケット203を挟み込む。ガスケット203は、薄い円筒状であり、中央の高圧発生空間204に試料と液体圧力媒体を封じる。アンビル202は、ジルコニア(ZrO)であり、ジルコニアの機械強度(圧縮強度)は、3GPaである。この高圧発生装置200は、アンビル202の斜面とガスケット203の穴(高圧発生空間204)を接触させる形で配置する。上下のピストン205を通してアンビル202に荷重を加えると、高圧発生空間204に圧力が発生する。NiCrAl合金の機械強度(引っぱり強度)は、2GPaであり、CuBe合金のそれ(1.3GPa)よりも大きい。この高圧発生装置200は、ピストンシリンダー型高圧発生装置よりも高い圧力が発生可能であり、最高圧力は、2.5−3.0GPa程度である。
【0008】
この高圧発生装置200は、高圧発生空間204の体積が1mm程度であり、ピストンシリンダー型高圧発生装置の10%未満である。また、ガスケット203の材料であるNiCrAl合金の磁化率(〜4×10−6emu/g:室温)は、CuBe合金のそれ(〜−2×10−7emu/g:室温)と比較して20倍以上絶対値が大きい。このため、磁化の小さな試料(例えば反強磁性物質)は、ガスケット203の磁化が大きなバックグラウンドとなり、信頼できる磁化測定は難しい。一般的に、この高圧発生装置の適用は、磁化(絶対値)の大きな超伝導物質や、強磁性物質に限定される。
【0009】
(c)ダイヤモンドアンビル型高圧発生装置(非特許文献6,7、特許文献1)
図15は、ダイヤモンドアンビル型高圧発生装置の構成を示す図である。この高圧発生装置300は、シリンダー301内で対向する2つのアンビル302としてダイヤモンドを用いる。2つのアンビル302の間には、CuBe合金で作成されたガスケット303が挟み込まれる。上下からダイヤモンドアンビル302に荷重を加え、ガスケット303が押しつぶされ高圧発生空間304の体積が減少し高圧力が発生する。上記のインデンタ型高圧発生装置200ではジルコニアをアンビル202として用いるのに対して、この高圧発生装置300では、ダイヤモンドを使用することが特徴である。ダイヤモンドの機械強度(圧縮強度)は、12GPaであり、インデンタ型高圧発生装置のアンビル(ジルコニア)のそれよりも大幅に大きいため10−15GPa程度の超高圧の発生が可能である。しかし、試料空間は、0.01mm程度と大変小さいため、磁化測定の対象は磁化の大きな強磁性物質や超伝導物質に限定される。また操作性の難易度が高いことがダイヤモンド型アンビル型高圧発生装置の特徴である。ダイヤモンドアンビル302は一つの単結晶であり、その機械強度や硬さには2倍程度の異方性がある。2つのダイヤモンドアンビル302を平行に配置することが重要で、図15(a)に示した通り、調節ネジA,Bで平行度を調節する。精密な平行度調節は熟練した技術が必要となる。また、ダイヤモンドアンビル302を除いた圧力セルにも精密加工が必要なため、その費用は70万円程度となる。また、ダイヤモンドの値段は一個あたり15万円程度である。一つのダイヤモンドアンビル型高圧発生装置の価格は100万円程度となる。
【0010】
(d)従来技術の問題点のまとめ
以上、SQUID磁束計で使用可能な、高圧下磁化測定を目的とした高圧発生装置について概観した。高圧発生装置は、学術/産業に関する多くの分野で開発/使用されてきた。これらの装置と比較して、SQUID磁束計用高圧発生装置は、外径9mm未満であることが要求されるため、開発上多くの困難がある。図16は、各高圧発生装置の特徴をまとめた表である。個別の特徴は、以下のようにまとめられる。
【0011】
(d−1)ピストンシリンダー型高圧発生装置は、取り扱い容易で、高圧発生空間の体積(10mm程度)が十分大きく、信頼できる試料の磁化が測定可能である。超伝導物質/強磁性物質だけでなく、磁化の小さな反強磁性物質にも適用可能である。しかし、最高圧力は1.5GPa程度である。
【0012】
(d−2)インデンタ型高圧発生装置は、2.5−3.0GPaの高圧を発生可能であり、操作性も簡単である。インデンタ型高圧発生装置の高圧発生空間の体積は、1mm程度である。SQUID磁束計は、十分な感度をもつ。しかし、NiCrAl合金のガスケットの磁化率が非常に大きい。通常、NiCrAl合金のガスケットの磁化は、試料の磁化と比較して数倍から10倍程度、もしくはそれ以上ある。磁化の大きな強磁性物質や超伝導物質はこの比率が数倍程度になるため、試料を取り除いた高圧発生装置の磁化を予め測定して求め、試料を含んだ高圧発生装置の磁化から差し引くことで、試料の高圧下磁化測定が可能になる。これ以外の磁化の小さな反強磁性物質等には基本的に適用不可能である。
【0013】
(d−3)ダイヤモンドアンビル型高圧発生装置は、10GPaを越える超高圧を発生可能である。しかし、高圧力発生空間の体積は、0.01mm程度と大変小さく、磁化の大きな強磁性物質や超伝導物質に適用が限られる。また操作性も難しく、価格も高いことが特徴である。
【0014】
(d−4)高圧発生空間の体積を増やすために、ダイヤモンドアンビルのサイズを大きくする方法もあるが、価格的にも現実的でない。インデンタ型高圧発生装置のアンビルであるジルコニアでは4GPa以上の発生は不可能である。高圧実験で一般的に用いられる、WC(炭化タングステン)は5GPa以上の超高圧を発生が可能であり、各種高圧発生装置で使用されている。しかし、WCは強磁性物質がバインダーとして含まれており、磁化率(〜2×10−6emu/g:室温)が銅ベリリウム(CuBe)合金と比較して10倍程度大きく、またアンビル材料として用いた場合、高圧発生装置の中で示す体積が大きくなるため、磁化測定には不適である。非磁性のアンビル材料の選定が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】Patricia Lebre Alireza,US 2009/0151465 A1 (Unites States Patent Application Publication)
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】S. Reich, and T. Godin, Meas. Sci. Technol. 7, 1079 (1996)
【非特許文献2】J. Diederichs, A. K. Gangopadhway, and J. S. Schilling, Phys. Rev. B 54, R9662 (1996).
【非特許文献3】Y. Uwatoko, T. Hotta, E. Matsuoka, H. Mori, T. Ohki, J. L. Sarrao, J. D. Thompson, N. Mori, and G. Oomi: Rev. High Pressure Sci. Technol. 7, 1508 (1998).
【非特許文献4】K. Kamishima, M. Hagiwara, and H. Yoshida, Rev. Sci. Instrum. 72, 1472 (2001).
【非特許文献5】T. C. Kobayashi, H. Hidaka, H. Kotegawa, K. Fujiwara, and M. I. Eremets:Rev. Sci. Instrum. 78, 023909 (2007).
【非特許文献6】M. Mito, M. Hitaka, T. Kawae, K. Takeda, T. Kitai, and N. Toyoshima. Jpn. J. Appl. Phys. 40, 6641 (2001).
【非特許文献7】P. L. Alireza, and G. G. Lonzarich, Rev. Sci. Instrum. 80, 023906 (2009).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の課題は、1.5GPa以上の超高圧を容易に発生させることが可能で、高圧発生空間の体積がインデンタ型高圧発生装置とダイヤモンドアンビル型高圧発生装置のそれらの中間程度(0.01mm〜1mm)の0.1mm程度あり、高圧発生装置の磁化のバックグラウンドがインデンタ型高圧発生装置のそれより大幅に小さく、磁化の小さな反強磁性物質にも適用可能な高圧発生装置及び磁化測定装置を提供することである。また、アンビル材料として、磁化の小さな非磁性材料で機械強度が大きな材料を用いた高圧発生装置及び磁化測定装置を提供することである。さらに、ダイヤモンドのような高価でない廉価な材料で、磁化の小さな非磁性材料をアンビルとして使用する高圧発生装置及び磁化測定装置を提供することである。
【0018】
本発明の目的は、上記課題を解決するため、SQUID磁束計で用いられる1.5GPa以上の超高圧が発生可能で磁化の小さな物質の磁化測定も可能で高圧発生空間が比較的大きく廉価な高圧発生装置及び磁化測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る高圧発生装置及び磁化測定装置は、上記の目的を達成するため、次のように構成される。
【0020】
第1の高圧発生装置(請求項1に対応)は、両端部にボルト部が形成されたシリンダーと、前記シリンダー内に設けられた一対のアンビルと、前記一対のアンビルの間に高圧発生空間を形成するために設けられたガスケットと、前記一対のアンビルの両端から押さえるピストンと、前記ピストンを介して前記一対のアンビルを加圧する加圧棒と、前記加圧棒で加圧した後に前記一対のアンビルを加圧した状態で前記ピストンを固定するために前記ボルト部でねじ締めするクランプナットと、を備え、前記シリンダーと前記アンビルと前記ガスケットと前記ピストンと前記クランプナットは、非磁性物質により形成されていることを特徴とする。
第2の高圧発生装置(請求項2に対応)は、上記の構成において、好ましくは、前記シリンダーと前記ガスケットと前記ピストンと前記クランプナットは、銅ベリリウム合金により形成され、前記アンビルは、非磁性セラミックにより形成されていることを特徴とする。
第3の高圧発生装置(請求項3に対応)は、上記の構成において、好ましくは、前記非磁性セラミックは、アルミナとジルコニアを含む混合物からなるセラミックであることを特徴とする。
第4の高圧発生装置(請求項4に対応)は、上記の構成において、好ましくは、前記非磁性セラミックは、2〜3mol%のイットリアで準安定化させたジルコニアに、20〜30mol%のアルミナを複合化させたセラミックであることを特徴とする。
第1の磁化測定装置(請求項5に対応)は、上記第1〜第4のいずれかの高圧発生装置をSQUID(超伝導量子干渉計)磁束計に設置することにより構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、SQUID磁束計で用いられる1.5GPa以上の超高圧が発生可能で磁化の小さな物質の磁化測定も可能で高圧発生空間が比較的大きく廉価な高圧発生装置及び磁化測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の本実施形態に係る高圧発生装置の全体構成図である。
【図2】本発明の本実施形態に係る高圧発生装置の試料部分の拡大図である。
【図3】本発明の本実施形態に係る高圧発生装置のセラミックアンビルの図である。
【図4】セラミックアンビル先端直径、高圧発生空間の体積、最高圧力についてまとめた表である。
【図5】本発明の本実施形態に係る高圧発生装置と市販のSQUID磁束計の配置概念図である。
【図6】先端直径A=1.8mmとA=0.6mmのセラミックアンビルを用いて行った高圧下磁化測定の結果である。
【図7】超伝導物質MgB(二ホウ化マグネシウム)の高圧下磁化測定の結果である。
【図8】反強磁性物質CePdAlの高圧下磁化測定の結果である。
【図9】本装置と他のSQUID磁束計用高圧発生装置の特徴を比較した表である。
【図10】インデンタ型高圧発生装置のNiCrAlガスケットと本発明による高圧発生装置のCuBeガスケットの磁化の測定結果を比較した図である。
【図11】本高圧発生装置に加えた荷重と高圧力発生空間における圧力の関係を示す図である
【図12】各種高圧発生装置の高圧力発生空間の体積と最高圧力の関係を示す図である。
【図13】高圧発生装置として最も一般的なピストンシリンダー型高圧力発生装置の構成を示す図である。
【図14】インデンタ型高圧発生装置の構成を示す図である。
【図15】ダイヤモンドアンビル型高圧発生装置の構成を示す図である。
【図16】各高圧発生装置の特徴をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は、本発明の本実施形態に係る高圧発生装置の全体構成図である。高圧発生装置10は、両端部にボルト部11が形成されたシリンダー12と、シリンダー12内に設けられた一対のアンビル13と、一対のアンビル13の間に高圧発生空間14を形成するために設けられたガスケット15と、一対のアンビル13の両端から押さえるピストン16と、ピストン16を介して一対のアンビル13を加圧する加圧棒17と、加圧棒17で加圧した後に一対のアンビル13を加圧した状態でピストン16を固定するためにボルト部11でねじ締めするクランプナット18と、を備えている。
【0025】
上記高圧発生装置10では、シリンダー12及びクランプナット18の直径Xが例えば8.7mmであり、シリンダー12の長さが例えば70mmに形成することにより、SQUID磁束計の内径9mm未満の試料空間に設置させることが可能である。
【0026】
シリンダー12とアンビル13とガスケット15とピストン16とクランプナット18は、非磁性物質により形成されている。
【0027】
好ましくは、シリンダー12とガスケット15とピストン16とクランプナット18は、銅ベリリウム(CuBe)合金により形成される。
【0028】
図2は、高圧発生装置10の試料部分の拡大図であり、図3は、アンビル13の図である。
【0029】
アンビル13は、非磁性セラミックにより形成されている。
【0030】
好ましくは、アンビル13は、アルミナ(Al)とジルコニア(ZrO)を含む混合物からなる非磁性セラミックにより形成されている。
【0031】
より好ましくは、アンビル13は、2〜3mol%のイットリアで準安定化させたジルコニアに、20〜30mol%のアルミナを複合化させた非磁性セラミックにより形成されている。
【0032】
アンビル13は、例えば、アルミナ(Al)とジルコニア(ZrO)を混合させ複合させたセラミック(冨士ダイス株式会社製、商品名:FCY20A)を用いて作成することができる。このセラミックは非磁性物質であり、その磁化率(−1×10−7emu/g:室温)はアンビル材料として一般に用いられる炭化カーバイド(WC)のそれ(2×10−6emu/g:室温)と比較して一桁小さく磁化測定に適切な材料である。
【0033】
また、上記構成の高圧発生装置10は、後述の実施例で示されるように、5GPa以上の超高圧発生が可能なことが初めて明らかにされた。また、上記セラミックアンビル13は、価格もダイヤモンドと比較して大幅に安い。カラット(0.2グラム)あたりの値段(〜5000円:加工代金含)はダイヤモンドのそれ(〜800000円:加工代金含)と比較して大幅に低い。大型のアンビルが安い価格で作成可能で、大きな体積を持つ高圧発生空間14を準備することが出来た。このセラミックを用いることで、本発明の目的が達成可能となった。
【0034】
2つのアンビル13は、試料空間(高圧発生空間)14が設けられた厚さZのガスケット15を挟み込む構成となっており、対向型の構成となっている。アンビル13の大きさは、例えば、符号Bで示す長さが5mmであり、符号Aで示す直径が0.6〜1.8mmのものを用いることができる。符号Aで示す直径は、ガスケット15とで形成される試料空間の大きさによって、適切に選択することができる。
【0035】
すなわち、先端直径A=0.06,0.08,0.10,0.12,0.14,0.16,0.18mmのセラミックアンビル13が使用可能である。同じ先端直径をもつ2つのセラミックアンビル13を組み合わせて使用する。好ましくは、ガスケット15の厚さZと試料空間(高圧発生空間)14の直径は、セラミックアンビル先端直径Aの半分である。
【0036】
図4は、セラミックアンビル先端直径A、高圧発生空間14の体積、最高圧力についてまとめた表である。図4の表から分かるように、高圧発生空間の体積は、0.0141mmから0.572mmまで得ることができ、また、最高圧力は、2.41GPaから7.58GPaまで得ることができる。
【0037】
図5は、本発明の本実施形態に係る高圧発生装置をSQUID(超伝導量子干渉計)磁束計に配置した磁化測定装置30の図である。符号20は、SQUID磁束計であり、符号21は、SQUID磁束計において、高圧発生装置10を配置する空間である。符号Dは、SQUID磁束計において、高圧発生装置10を配置させる空間の直径を示す。SQUID磁束計は、超伝導ピックアップコイル22と、超伝導量子干渉素子SQUID22cと、超伝導ピックアップコイル22の外側に安定磁場の発生と磁気シールドの両面の役割を担う外部磁場発生用マグネット23が備えられている。また、冷却するための液体ヘリウムを入れた冷却槽24を備えている。加熱は、図示しないヒーターにより行われる。符号25は、高圧発生装置10を固定し移動させるためのロッドであり、符号26は、高圧発生装置10が装着されたロッド25を振動させる動作方向を示す。試料は、図示しない駆動機構により超伝導ピックアップコイル22中を上下し、このときSQUID出力の振幅から磁化を求めることができる。
【0038】
このSQUID磁束計20に高圧発生装置10を設置することで、温度1.8Kから350K、磁場0Tから7T、セラミックアンビル先端直径Aに依存する最高圧力の範囲内で高圧下磁化測定が可能である。
【0039】
次に、本発明の本実施形態に係る高圧発生装置及び磁化測定装置のSQUID磁束計を用いての操作手順を説明する。
【0040】
[ステップ1]
図2に示すような圧力発生部(セラミックアンビル13、ガスケット15)を構成し、液体圧力媒体、試料、圧力決定用の鉛を高圧発生空間14に配置する。図1に示す通り、上部から加圧棒17を通して油圧プレス等を使用して、高圧発生装置10に垂直方向(図1中の符号19で示す)に荷重を加える。荷重が加えられることにより、ピストン16を介してセラミックアンビル13の上の部分が垂直に押される。セラミックアンビル13同士は互いまっすぐに向き合い、ガスケット15が変形されてセラミックアンビル13間の距離が縮まり、高圧発生空間14に圧力が発生する。なお、高圧発生空間14に加えられた荷重は、円筒状で両端部内側にネジ加工された圧力セルシリンダー12とクランプナット18とのネジ組み合わせにより保持される。荷重を加えて圧力が発生した後、クランプナット18を締めることで荷重が保持され、発生した圧力セルをそのまま保持する。
【0041】
[ステップ2]
圧力が発生し保持された高圧発生装置10をSQUID磁束計20に配置させる。これを概念的に示したのが図5である。図中のSQUID磁束計20には、温度領域(1.8Kから350K)、磁場領域(0Tから7T)の環境下における磁化測定に必要な装置一式が備わっている。SQUID磁束計20内部に設置された2つの超伝導ピックアップコイル22の中間の位置に試料が配置される。SQUID磁束計20の内訳(代表的なもの)は、液体ヘリウムを用いた冷凍機24と温度制御システム(図示せず)、磁場発生に必要な超伝導マグネット23とその制御システム(図示せず)、磁化測定に必要な超伝導ピックアップコイル22と超伝導ピックアップコイル22に発生する誘導起電圧を増幅し検出するSQUID(超伝導量子干渉素子)22c、試料(この場合は高圧下磁化測定装置10)を振動させるシステムと、磁化測定を自動制御するためのコンピューター(図示せず)である。SQUID磁束計20内部に設置された動作システムにより、高圧発生装置10が図5の符号26に示される方向に振動させる。その際、超伝導ピックアップコイル22に発生する電圧から高圧発生装置10の磁化を求める。
【0042】
[ステップ3]
SQUID磁束計20に配置された、高圧発生装置10の磁場と温度を制御し、目的の温度、磁場で安定させる。図5中の矢印(符号26で示す)で示す通り、高圧発生装置10を上下に振動させる。SQUID磁束計20内部の磁化測定検出用コイル(超伝導ピックアップコイル22)に発生する電圧が制御系により検出され、磁化の値に換算される。これらの作業は、SQUID磁束計20の制御系をパソコンでコントロールして自動的に行う。試料を入れない高圧発生装置10の磁化の値と、試料を入れた高圧発生装置10の磁化の両方を測定し、両者を差し引くことで試料の磁化を求める。
【0043】
[ステップ4]
高圧発生空間14に発生する圧力を決定するために、0.001T程度の弱い磁場を加え、鉛の磁化の温度依存を測定する。鉛は常圧において7.2Kで超伝導転移し、マイスナー効果のため大きな負の磁化が発生する。磁化の温度依存から超伝導転移温度を求める。鉛の超伝導転移温度の圧力に依存し、その関係式は確定している(文献(a)A. Eiling and J. S. Schilling, J. Phys. F. Metal Phys., 11 (1981)623, 文献(b)B. Bireckoven and J. Wittig, J. Phys. E: Sci. Instrum. 21 (1988) 841)。得られた鉛の超伝導転移温度から高圧発生空間14に発生している圧力を決定する。具体的には、圧力が5GPa以下の場合、上記文献(a)に記載される次の関係式(1)を使用する。
【0044】
Tc(P)=Tc(0)−(0.365±0.003)P (1)
【0045】
上記式(1)で、Pは圧力(GPa)を示し、Tc(0)は、圧力がゼロのときの超伝導転移温度(K)を示し、Tc(P)は、圧力がPのときの超伝導転移温度(K)を示す。
【0046】
また、圧力が5GPa以上の場合、文献(b)に記載される鉛の超伝導の超伝導転移温度の30GPaまでの圧力依存性を示す図(文献(b)中のFigure7)をデータとしてパソコンに読み取り、その関係から圧力を決定する。
【0047】
次に、本発明による高圧発生装置とSQUID磁束計を用いた磁化測定装置の実施例を示す。
【0048】
(実施例1)鉛の高圧下磁化測定の実施例
図6(a)は、先端直径A=1.8mmのセラミックアンビル13を用いて行った高圧下磁化測定の結果である。外部磁場0.001Tを加えている。図6(a)の丸(○)で表示したのは、高圧発生装置10に荷重を加えない状態:常圧下(大気圧下)で測定された鉛の磁化の温度依存のグラフである。鉛の磁化は超伝導転移温度7.2Kで急激に減少する。これはマイスナー効果に起因した減少である。図6(a)、三角(△)で表示したのは、高圧発生装置10に950kgfの荷重を加えてこれを保持し磁化測定を行った結果である。超伝導転移温度は6.3Kと決定された。鉛の超伝導転移温度の圧力効果は過去の研究から明らかにされている。その関係式(1)を用いて、低温で高圧発生空間14に2.41GPaの圧力が発生していることが決定された。
【0049】
図6(b)は、先端直径A=0.6mmのセラミックアンビル13を用いて行った高圧下磁化測定の結果である。外部磁場0.001Tを加えている。図6(b)の丸(○)で表示したのは、常圧下で測定された鉛の磁化の温度依存のグラフである。鉛の磁化は超伝導転移温度7.2Kで急激に減少する。図6(b)、三角(△)で表示したのは、高圧発生装置10に350kgfの荷重を加えて保持し、磁化測定した結果である。超伝導転移温度は4.8Kと決定された。鉛の超伝導転移温度の圧力効果は過去の研究から明らかにされている。上記の文献(b)中のFigure7に基づいて、低温で高圧発生空間14に7.58GPaの圧力が発生していることが決定された。
【0050】
(実施例2)MgBの高圧下磁化測定の実施例
図7は、超伝導物質MgB(二ホウ化マグネシウム)の高圧下磁化測定の結果である。外部磁場0.001Tを加えている。先端直径A=0.06mmのセラミックアンビル13を用いて高圧下磁化測定を行った。高圧発生装置10に荷重を加えない常圧では38K近辺で、超伝導転移に対応するマイスナー信号が観測された。6.8GPaでは超伝導転移温度は31Kとなった。MgBの超伝導転移温度の圧力依存は過去電気抵抗測定で調べられており(S. Deemyad, J. S. Schilling, J. D. Jorgensen, D. G. Hinks: Physica C 361 227 (2001))、本研究結果と一致する。
【0051】
(実施例3)CePdAlの高圧下磁化測定の実施例
図8は、反強磁性物質CePdAlの磁化測定の結果である。先端直径A=1.6mmのセラミックアンビル13を用いて高圧下磁化測定を行った。外部磁場0.2Tを加えた。常圧では4.0Kに反強磁性転移温度に起因した折れ曲がりが観測された。圧力を加えると3.3GPaで転移温度が5.3Kまで上昇することが明らかにされた。過去磁気転移温度の圧力依存が調べられており(F. Honda, M. Measson, Y. Nakano, N. Yoshitani, E. Yamamoto, Y. Haga, T. Takeuchi, H. Yamagami, K. Shimizu, R. Settai, and Y. Onuki: J. Phys. Soc. Jpn. 77 043701 (2008))、その結果とも一致する。
【0052】
反強磁性物質は磁化が一般的に小さく、高圧下磁化測定には不向きである。ダイヤモンドアンビル型高圧発生装置では感度の問題があり、インデンタ型高圧発生装置ではNiCrAlガスケットの磁化バックグラウンドが大きく、高圧下磁化測定が事実上不可能である。本高圧発生装置10は磁化のバックグランドも小さく反強磁性物質に適用可能であることが明らかにされた。なお、反強磁性物質CePdAlの試料の磁化と、バックグラウンド(試料以外の高圧発生装置に起因する磁化)に対する比率は常圧で2K−20Kの温度領域で90%−110%程度である。つまり両者は同程度である。もし、この反強磁性物質CePdAlの試料をそのままインデンタ型高圧発生装置にセットして高圧磁化測定すると仮定して比率を求めると、2K−20Kの温度領域で7%−13%程度となり、バックグラウンドの方が10倍弱大きいことになり、精密測定は不可能であることがわかる。
【0053】
次に、本発明の本実施形態に係る高圧発生装置10の特徴点と長所を説明する。
【0054】
図9は、本装置と他のSQUID磁束計用高圧発生装置の特徴を比較した表である。以下個別に議論する。
【0055】
(磁化バックグラウンドの低さ)
本発明の本実施形態に係る高圧発生装置10の特徴として磁化測定におけるバックグラウンド(測定目的の試料以外の装置の部品に起因する磁化)がインデンタ型高圧発生装置より大幅に小さいことが挙げられる。この違いはガスケット15の材質の違いに起因する。インデンタ型高圧発生装置のNiCrAlガスケットと本発明による高圧発生装置10のCuBeガスケットの磁化の測定結果を比較したものが図10である。本発明による高圧発生装置10のCuBeガスケットの磁化はインデンタ型高圧発生装置のNiCrAlガスケットよりも二桁以上小さく、磁化のバックグラウンドが大幅に低いため、遥かに精度の良い磁化測定が可能である。実際の磁化測定の際には、ガスケットだけでなく、高圧発生装置のシリンダー、アンビル、ピストンの寄与が全て含まれる。本高圧発生装置10のバックグラウンド(試料以外の高圧発生装置に起因する磁化)の値はインデンタ型高圧発生装置のそれの約10%程度である。
【0056】
(圧力発生効率の良さ)
本高圧発生装置10はSQUID磁束計20の試料空間21に配置させる。この空間は狭く、内径は9mm程度しかない。高圧発生装置10は小型であることが要求される。加えることが出来る荷重には限界がある。本高圧発生装置10の場合、対荷重限界は1.1ton(1100kgf)である。よって、少ない荷重で高い圧力を発生させる必要がある。
【0057】
「背景技術・課題」で記述した通り、ピストンシリンダー型高圧発生装置の場合、高圧発生空間の体積は大きく、配置させることができる試料の体積(磁化)が大きいため、信頼できる磁化測定が可能である。しかし、大きな荷重を加えることができないため最高圧力は1.0−1.5GPaにとどまる。少ない荷重で高い圧力を発生させることが要求される。図11は、本高圧発生装置10に加えた荷重と高圧発生空間14における圧力の関係である。先端直径Aが1.8mmから0.06mmのセラミックアンビル13についてそれぞれ表示した。インデンタ型高圧発生装置と比較して圧力発生効率が良く、1ton(1000kgf)未満の荷重で目的の圧力を発生させることが可能になった。図4の表に示した通り、セラミックアンビル13の先端直径Aに最高圧力は依存する。A=0.06mmのセラミックアンビル13を使用した場合、7.58GPaの圧力の発生が確認された。
【0058】
(強度が強く磁化測定に適切なセラミックアンビルの選定)
本発明によるSQUID磁束計用の最大の特徴は、複合セラミック(冨士ダイス株式会社製、商品名:FCY20A)をアンビル材料として選定したことである。高圧発生装置のアンビル材料として一般に用いられる炭化タングステン(WC)は強度も強く(圧縮強度4GPa)、5GPa以上の超高圧発生には最も適切な材料である。しかし、磁化率は一般的に大きく磁化測定には不適である。また、ダイヤモンドアンビル型高圧発生装置で使用されるダイヤモンドアンビルは強度も強く超高圧発生に適切な材料である。しかし、ダイヤモンドは高価であり、本発明の目的である、大きな体積をもつ高圧発生空間14を準備するためには、大型のダイヤモンドアンビルを準備する必要があり、費用の観点でも非現実的である。本発明で採用されたセラミックアンビル13は廉価であり加工も容易である。また非磁性材料であり磁化率も大幅に小さいため、本発明の目的に最も適切なアンビル材料である。
【0059】
(試料空間の体積と最高圧力)
ダイヤモンドアンビル型高圧発生装置の高圧発生空間の体積は0.01mm程度のため磁化の小さな反強磁性物質などの磁化測定は不可能である。本装置は様々な先端直径をもつセラミックアンビル13を組み合わせて使用する。アンビル先端直径Aにより高圧発生空間の体積と最高圧力の関係は異なる。これを表したグラフが図12である。本発明の目的である、インデンタ型高圧発生装置とダイヤモンドアンビル型高圧発生装置の高圧発生空間の体積の中間程度の体積を持ち、SQUID磁束計を使用して、信頼できる高圧下磁化測定が可能になった。
【0060】
(操作性の容易さ)
ダイヤモンドアンビル型高圧発生装置では、2つのダイヤモンドアンビルの平行度を厳密に調節することが必要である。この平行度が悪いと低い荷重でもダイヤモンドアンビルは容易に破壊される。しかし、靭性に優れた複合セラミックスを材料として作成されたセラミックアンビル13はこのような問題は存在せず、「背景技術・課題」の図15(a)に記載された、アンビル平行度調節ネジなどは必要としない。よって、操作は容易でインデンタ型高圧発生装置とピストンシリンダー型高圧発生装置と同程度である。
【0061】
(装置作成に必要な費用の少なさ)
本発明による高圧発生装置10は構造が単純であり、その材料も廉価であり、作成に必要な価格は10万円程度である。インデンタ型高圧発生装置とピストンシリンダー型高圧発生装置と同程度である。
【0062】
(本発明による効果:目的の達成)
本発明の本実施形態に係る高圧発生装置10の特徴や基本的仕様について図4と図9の表にまとめる。
本発明の目的は、1.5GPa以上の超高圧発生が可能な圧力セルを開発することである。また高圧発生空間の体積がインデンタ型高圧発生装置とダイヤモンドアンビル型高圧発生装置のそれらの中間程度(0.01mm−1mm)となる装置である。本発明の目的を達成するためには、廉価な磁化測定に適した非磁性アンビルの材料の選定が重要な点となる。本発明ではジルコニア(ZrO)にアルミナ(Al)を混合させ複合化させたセラミック(冨士ダイス株式会社製、商品名:FCY20A)を用いて作成されたセラミックアンビル13を使用した。このセラミックアンビル13の採用により本発明の目的が達成された。以下本発明による効果について個別に記述する。
【0063】
(最高圧力)
本発明の本実施形態に係る高圧発生装置10の最高圧力は7.58GPaであることが確認された。
【0064】
(高圧発生空間の体積)
セラミックアンビル13は廉価であり、大型のアンビルの作成が可能である。よって、ダイヤモンドアンビル型セルでは不可能な大きな体積をもつ高圧発生空間14をガスケット15に形成させることが可能となった。高圧発生空間の体積は、0.0141−0.572mmである。
【0065】
(磁化のバックグラウンドの低減化)
ガスケット15として磁化率の小さなCuBe合金を用いるため、NiCrAl合金をガスケットとして使用するインデンタ型高圧発生装置と比較してバックグラウンドが大幅に小さい。よって、磁化の大きな超伝導物質/強磁性物質だけでなく、磁化の小さな反強磁性物質も磁化測定が可能になった。
【0066】
(作成経費の低さ、操作性の容易さ)
セラミックアンビル13は廉価(一個一万円程度)であり、本発明による高圧発生装置10を作成するために必要な費用は約10万円程度である。ダイヤモンドアンビル型高圧下磁化測定装置と比較して大幅に低い。さらに、構造が単純のため操作性も容易である。
【0067】
以上の実施例でも示したように、本発明によれば、SQUID磁束計で用いられる1.5GPaの超高圧が発生可能で磁化の小さな物質の磁化測定も可能で高圧発生空間が比較的大きく廉価な高圧発生装置及び磁化測定装置を提供することができる。
【0068】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさおよび配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値および各構成の組成(材質)等については例示にすぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る高圧発生装置及び磁化測定装置は、SQUID磁束計を用いた高圧力下での磁化測定において利用される。
【符号の説明】
【0070】
10 高圧発生装置
11 ボルト部
12 シリンダー
13 アンビル
14 高圧発生空間
15 ガスケット
16 ピストン
17 加圧棒
18 クランプナット
19 荷重を加える方向
20 SQUID磁束計
21 高圧発生装置を配置する空間
22 超伝導ピックアップコイル
22c 超伝導量子干渉素子(SQUID)
23 外部磁場発生用マグネット
24 冷却槽
25 ロッド
26 ロッドを振動させる動作方向
30 磁化測定装置
X 高圧発生装置の外径(直径)
Z ガスケットの厚さ
A セラミックアンビルの先端の直径
D SQUID磁束計において本発明に係る高圧発生装置を配置させる空間の直径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部にボルト部が形成されたシリンダーと、
前記シリンダー内に設けられた一対のアンビルと、
前記一対のアンビルの間に高圧発生空間を形成するために設けられたガスケットと、
前記一対のアンビルの両端から押さえるピストンと、
前記ピストンを介して前記一対のアンビルを加圧する加圧棒と、
前記加圧棒で加圧した後に前記一対のアンビルを加圧した状態で前記ピストンを固定するために前記ボルト部でねじ締めするクランプナットと、を備え、
前記シリンダーと前記アンビルと前記ガスケットと前記ピストンと前記クランプナットは、非磁性物質により形成されていることを特徴とする高圧発生装置。
【請求項2】
前記シリンダーと前記ガスケットと前記ピストンと前記クランプナットは、銅ベリリウム(CuBe)合金により形成され、前記アンビルは、非磁性セラミックにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の高圧発生装置。
【請求項3】
前記非磁性セラミックは、アルミナとジルコニアを含む混合物からなるセラミックであることを特徴とする請求項2記載の高圧発生装置。
【請求項4】
前記非磁性セラミックは、2〜3mol%のイットリアで準安定化させたジルコニアに、20〜30mol%のアルミナを複合化させたセラミックであることを特徴とする請求項2又は3記載の高圧発生装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の高圧発生装置をSQUID(超伝導量子干渉計)磁束計に設置することにより構成されることを特徴とする磁化測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図5】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2012−187612(P2012−187612A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54153(P2011−54153)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(505374783)独立行政法人日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】