説明

高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体

【課題】本発明は、インジケーターが内容物を汚染する恐れがなく、ヒートシール処理では変色せずに高圧蒸気滅菌処理では明瞭に変色し、内容物の色に影響されない識別性を有する高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体およびそれに使用するインジケーターインキを提供することを目的とする。
【解決手段】フィルム基材にヒートシール性フィルムが積層されたフィルムをヒートシールすることによって作成される包装体において、インジケーターインキが前記フィルム基材のヒートシール部の少なくとも一部に塗布されていることを特徴とする高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧蒸気滅菌は医療用途および食品用途で利用されている。 医療用途では、輸液のような医薬品、ガーゼのような衛生用品、医療機器や器具等の滅菌に、また、食品用途においても、カレーやシチュー、おかゆ、スープなどのレトルト食品の殺菌に利用されているが、これらの高圧蒸気滅菌がなされたか否かを確認するために高圧蒸気滅菌インジケーターが使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、基材フィルムと外層フィルムがラミネート層を介して接着され、ラミネート層との接着面の少なくとも一部にインジケーターインキ層が形成されているレトルト包材フィルムが開示されている。 また、特許文献2〜4にも同様のインジケーター付き積層体または包装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−334897号公報
【特許文献2】特開2005−022173号公報
【特許文献3】特開2005−178871号公報
【特許文献4】特開2006−219135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜4の積層体または包装体では、殺菌すべき医薬品や食品を包装した後に高圧蒸気滅菌を行なう際、あるいは行なった後に、内層フィルムが剥離や破断等を起こすと、インジケーターが内容物と接触し内容物を汚染するおそれがあった。
また、インジケーターが内容物の上方に設置されるため内容物の色によってはインジケーターの発色が分かりにくかった。
さらに、インジケーターを内層フィルムが剥離や破断しても内容物を汚染しないような部位、例えばヒートシール部だけに設置する場合は、インジケーターにはヒートシール処理では変色しないといった耐熱性も必要とされる。
【0006】
従って、本発明は、インジケーターが内容物を汚染する恐れがなく、ヒートシール処理では変色せずに高圧蒸気滅菌処理では明瞭に変色し、内容物の色に影響されない識別性を有する高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体およびそれに使用するインジケーターインキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、かかる従来技術の問題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体において、そのヒートシール部のみにインジケーターを設置し、そのインジケーターがヒートシールでは変色しないが高圧蒸気滅菌では明瞭に変色するものとすることによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)フィルム基材にヒートシール性フィルムが積層されたフィルムをヒートシールすることによって作成される包装体において、インジケーターインキが前記フィルム基材のヒートシール部の少なくとも一部に塗布されていることを特徴とする高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体、

(2)前記インジケーターインキがポリウレタン樹脂、メチン系染料および/またはシアニン系染料、並びにカルボキシル基を有する樹脂を含むことを特徴とする(1)記載の高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体、

(3)前記ヒートシール性フィルムが未延伸ポリオレフィンフィルムであることを特徴とする(1)または(2)記載の高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体、

(4)前記ポリウレタン樹脂がポリオール、ポリイソシアネート化合物および鎖伸長剤から合成され、かつその数平均分子量が3,000〜150,000であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体、

(5)前記カルボキシル基を有する樹脂が、酸価20以上のロジンまたはロジン誘導体であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体、

(6)(1)乃至(5)のいずれかに記載の高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体に用いられるインジケーターインキであって、ポリウレタン樹脂、メチン系染料および/またはシアニン系染料、並びにカルボキシル基を有する樹脂を含むことを特徴とするインジケーターインキ、

(7)前記ポリウレタン樹脂がポリオール、ポリイソシアネート化合物および鎖伸長剤から合成され、かつその数平均分子量が3,000〜150,000であることを特徴とする(6)記載のインジケーターインキ、

(8)前記カルボキシル基を有する樹脂が、酸価20以上のロジンまたはロジン誘導体であることを特徴とする(6)または(7)記載のインジケーターインキ、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インジケーターがヒートシール部のみに設置されているため、その包装体が剥離または破断してもインジケーターが内容物と接触し汚染するおそれがなく、またヒートシール条件では変色しないが、高圧蒸気滅菌条件では明瞭に変色し、かつその発色が内容物の色に影響されることがないため、識別性に優れた高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体およびそれに用いるインジケーターインキを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0011】
本発明の高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体は、フィルム基材にヒートシール性フィルムが積層されたフィルムをヒートシールすることによって作成される包装体において、インジケーターインキが前記フィルム基材のヒートシール部の少なくとも一部に塗布されていることを特徴とする。
【0012】
さらに詳しく説明すると、該包装体は、前記インジケーターインキをフィルム基材のヒートシール部(普通は外縁部になると考えられる)の少なくとも一部のみに塗布し、次いでその上にヒートシール性フィルムをラミネートすることによりインジケーター付きフィルムとし、さらに該インジケーター付きフィルムを折り曲げ、または重ね合わせるなどし、ヒートシール部をシールすることによって得られる。 こうすることにより、インジケーターはヒートシール部にのみ存在するため、該包装体が剥離または破断しても内容物と接触することがなく、内容物にかかわらず明瞭に変色したことが視認できる。
【0013】
インジケーターインキを塗布するフィルム基材は、単層である必要はなく、ラミネートすることにより、2層以上の積層フィルムとすることもできる。 また、該フィルム基材にインジケーターインキを塗布した後、中間層としてフィルムを1層以上積層し、その上にヒートシール性フィルムをラミネートしてインジケーター付きフィルムとすることもできる。
【0014】
さらに、インジケーターを塗布した後に、白インキ層とヒートシール層とを順次形成することによりインジケーター付きフィルムを得ても良い。 白色インキ層が背景となるため、インジケーターの高圧蒸気滅菌処理後の変色がさらに明瞭に視認でき、また内容物の隠蔽性をも備えることができる。
【0015】
前記白色インキは、バインダー樹脂および白色顔料を含むインキであれば、特に制限はない。市販されているものでもよく、例えばLG−NT631R白S(東京インキ(株)製)などが挙げられる。
【0016】
前記ラミネートは公知の方法が使用でき、接着剤を介してヒートシール性フィルムを積層する方法が好ましい。 例えば、押出しラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、ノンソルベントラミネート法が挙げられるが、耐熱性に優れるドライラミネート法が特に好ましい。
【0017】
本発明の高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体は、インジケーター付きフィルムの外縁部をシールすることによって得られる。 シール方式については、特に制限はないが、密閉性が高く、耐荷重性のあるヒートシール方式が好ましい。
【0018】
ヒートシール方式には、熱板シール、ベルトシール、インパルスシール方式などが挙げられるが、十分な密閉性や強度などが得られるのであれば、特に制限はない。
【0019】
ヒートシール条件(温度、圧力および時間)は、ヒートシール性フィルムの種類によって、適宜決められるが、所望の強度が得られ、ヒートシール後の外観不良がなければ、特に制限はない。 本発明のインジケーターインキは耐熱性が高いため、ヒートシール性樹脂として通常用いられるポリプロピレンやポリエチレンのヒートシール条件では変色することがない。 例えば、ポリプロピレンのヒートシールでの最高温度とされる250℃においても、加熱時間0.2秒間で3回程度の繰り返しでは変色することがない。 従って、ヒートシールして包装体を作成する場合、重なり部分など複数回加熱される部分おいても変色しないので、複雑な形状の包装体にも本発明が適用できる。
【0020】
本発明のインジケーターインキは、ポリウレタン樹脂、メチン系染料および/またはシアニン系染料、およびカルボキシル基を有する樹脂を含む。
【0021】
前記ポリウレタン樹脂は、ポリオール、ポリイソシアネート化合物および鎖伸長剤から合成され、数平均分子量が3,000〜150,000であることが好ましい。 なかでも、特に好ましいのは5,000〜100,000の範囲である。 3,000未満ではインジケーターインキの乾燥性や、インジケーターインキを塗布した塗工物の耐ブロッキング性が低下する。 また、150,000を超えるとインジケーターインキの貯蔵安定性、製造適性および印刷適性が低下する。 なお、本明細書における数平均分子量は、GPC法(ポリスチレン換算)による測定値である。
【0022】
前記ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、高分子ポリオール化合物、飽和または不飽和の低分子ジオールや低分子ポリオールなどが挙げられ、適宜選択して使用できる。 なかでも、好ましいのはポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールである。 ポリエステルポリオール単独またはポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールを混合して用いても良い。
【0023】
前記ポリエステルポリオールは、例えば、ジオールとジカルボン酸との縮合反応によって得られる。 ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、トリメチレングリコール、1−もしくは2−メチル−1,3−ブタンジオール、1−もしくは2−メチル−1,4−ペンチルグリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4-ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−3,4−ヘキサンジオール、イソブチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリプロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブテンジオールなどが挙げられる。 なお、ジオール成分のうち、一部を多官能ポリオールに変更することができる。 例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
ジカルボン酸としては、アジピン酸、コハク酸、セバシン酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マロン酸、しゅう酸、グルタル酸、ピメリン酸などが挙げられ、これらの2種類以上の混合物でも良い。 なかでも、特に好ましいのはアジピン酸、セバシン酸などである。
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量は、600〜7,000の範囲であることが好ましい。 なかでも、特に好ましいものは1,000〜5,000の範囲である。 数平均分子量が600未満ではポリウレタン樹脂としては硬くてもろくなり、7,000を超えるとインジケーターインキのフィルムへの密着性が低下する。
【0024】
前記ポリエーテルポリオールは、酸化エチレン、酸化プロピレン、テトラヒドロフランなどの重合または共重合によって得られる。例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどが挙げられる。なかでも、特に好ましいのはポリプロピレングリコールなどである。
ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、600〜5,000の範囲であることが好ましい。なかでも、特に好ましいのは800〜3,500の範囲である。数平均分子量が600未満ではポリウレタン樹脂としては硬くてもろくなり、5,000を超えるとインジケーターインキを塗布した塗工物の耐ブロッキング性が低下する。
ポリエステルポリオ−ルとポリエーテルポリオールの比率は、重量比で100/0〜20/80の範囲であることが好ましい。ポリエステルポリオ−ルとポリエーテルポリオールの比率において、ポリエーテルポリオールが、重量比80重量%を超えるとインジケーターインキを塗布した塗工物の耐ブロッキング性が低下する。
【0025】
また、前記ポリウレタン樹脂には、その他の高分子ポリオール化合物を使用することもできる。 例えば、環状エステル化合物を開環重合して得られるポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール類、ポリブタジエングリコール類、アクリルポリオール類などが挙げられる。
【0026】
さらに、前記ポリウレタン樹脂には、飽和または不飽和の低分子ジオールや低分子ポリオールを使用することもできる。 例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,2−ペンタジオール、2−メチル−1,3−ペンタジオール、2−メチル−2,3−ペンタジオール、4−メチル−1,3−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−2,3−ペンタンジオール、4−メチル−1,2−ペンタンジオール、4−メチル−2,3−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール、2,4−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3,4−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,3−オクタンジオール、1,4−オクタンジオール、1,5−オクタンジオール、1,6−オクタンジオール、1,7−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、2,3−オクタンジオール、2,4−オクタンジオール、2,5−オクタンジオール、2,6−オクタンジオール、2,7−オクタンジオール、3,4−オクタンジオール、3,5−オクタンジオール、3,6−オクタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブチレンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、ソルビトール、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0027】
前記ポリイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート及びこれらのトリメチロールプロパン三量体、イソシアヌレート体、ビュレット体、アロファネート体などの変性体などが挙げられ、これらを単独もしくは2種類以上を併用して使用できる。 なかでも、特に好ましいのは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどである。
【0028】
前記鎖伸長剤としては、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、ダイマージアミン、キシリレンジアミンなどのジアミン化合物、また、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミンなどの水酸基を有するジアミン化合物、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリエチレングリコール、1−もしくは2−メチル−1,3−ブタンジオール、1−もしくは2−メチル−1,4−ペンチルグリコール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオールなどのジオール化合物、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルジイソプロパノールアミン、フェニルジイソプロパノールアミン、4−メチルフェニルジエタノールアミン、4−メチルフェニルジイソプロパノールアミンなどのアミン基を有するジオール化合物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エチレンプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。 なかでも、特に好ましいのはイソホロンジアミンなどである。
【0029】
ポリウレタン樹脂の製造においては、必要に応じて反応停止剤や触媒を使用できる。 反応停止剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノールなどのモノアルコール化合物、ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミンなどのモノアミン化合物などが挙げられる。 触媒としては、例えばトリエチレンアミン、トリエチレンジアミンなどのアミン系触媒、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、オクチル酸錫(II)などの錫系触媒、テトラブチルチタネートなどのチタン系触媒などが挙げられる。
【0030】
インジケーターインキ全量中にポリウレタン樹脂は、2〜50重量%の範囲が好ましい。 なかでも、特に好ましいのは3〜20重量%の範囲である。 2重量%未満ではインジケーター付きフィルムのラミネート適性および/または耐高圧蒸気滅菌性が低下する。 50重量%を超えると印刷に適した粘度あるいは流動性が得られない。
【0031】
ポリウレタン樹脂には希釈溶剤を使用できる(以降、溶剤で希釈したポリウレタン樹脂を、本明細書中では「ポリウレタン樹脂溶液」という)。 例えばトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤などが挙げられ、これらを単独もしくは2種類以上を併用して使用できる。 なかでも、特に好ましいのはトルエン、酢酸エチル、酢酸プロピル、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトンなどである。
【0032】
ポリウレタン樹脂溶液の製造方法は、二段階反応法、一段階反応法あるいは一段階反応法と二段階反応法を組み合わせた方法などに代表される公知の方法が使用できる。 均一な重合体を得やすいという点では、二段階反応法が好ましい製造方法である。
【0033】
ポリウレタン樹脂溶液の粘度は、50〜100,000mPa・s/25℃の範囲内にあることが取り扱い上、好ましい。 また、ポリウレタン樹脂溶液のアミン価は、0.1〜10mgKOH/gの範囲内にあることが好ましい。
【0034】
インジケーターインキに用いる前記メチン系染料および/またはシアニン系染料は、例えばカラーインデックス・ベーシックレッド(C.I.Basic Red)12、13、14、15、27、35、36、37、45、48、49、52、53、66および68、カラーインデックス・ベーシックイエロー(C.I.Basic Yellow)11、12、13、14、21、22、23、24、28、29、33、35、40、43、44、45、48、49、51、52および53、カラーインデックス・バイオレット(C.I.Basic Violet)7、15、16、20、21、39および40、カラーインデックス・オレンジ(C.I.Basic Orange)27、42、44および46、カラーインデックス・ベーシックブルー(C.I.Basic Blue)62および63などが挙げられる。 なかでも、特に変色において好ましいのはカラーインデックス・ベーシックレッド12、13、14、15および37、カラーインデックス・ベーシックイエロー11および13、カラーインデックス・ベーシックバイオレット7および15などである。これらを単独もしくは2種類以上を併用して使用できる。
【0035】
インジケーターインキ全量中に前記メチン系染料および/またはシアニン系染料は、0.1〜5重量%の範囲内であることが好ましい。 なかでも、特に好ましいのは0.2〜3重量%の範囲内である。 0.1重量%未満では十分な発色を示さず、5重量%を超えると変色後の色相変化が乏しい。
【0036】
インジケーターインキに用いる前記カルボキシル基を有する樹脂の酸価は、20以上であることが好ましい。 なかでも、特に好ましいのは30以上である。 これにより、インジケーターインキを塗布したときにメチン系染料および/またはシアニン系染料の優れた発色効果が得られる。
また、前記カルボキシル基を有する樹脂の軟化点は、60℃以上であることが好ましい。なかでも、特に好ましいのは80℃以上である。 軟化点が60℃未満ではインジケーターインキを塗布した塗工物の耐ブロッキング性が低下する。
【0037】
前記カルボキシル基を有する樹脂は、例えばロジン、水添ロジン、重合ロジン、ロジンのマレイン酸変性体およびそのエステル化合物、ロジンのフマル酸変性体およびそのエステル化合物、ロジンのアクリル酸変性体およびそのエステル化合物、ロジンのエステル化樹脂、不均化ロジンなどが挙げられる。 これにより、高圧蒸気滅菌処理におけるメチン系染料および/またはシアニン系染料の明瞭な変色効果が得られる。
【0038】
インジケーターインキ全量中に前記カルボキシル基を有する樹脂は、0.1〜30重量%の範囲が好ましい。 なかでも、特に好ましいのは1〜25重量%の範囲である。0.1重量%未満では高圧蒸気滅菌処理においてメチン系染料および/またはシアニン系染料の明瞭な変色効果が得られない。 また30重量%を超えるとインジケーターインキを塗布した塗工物の耐ブロッキング性が低下する。
【0039】
前記ポリウレタン樹脂と前記カルボキシル基を有する樹脂との比率は、重量比で95/5〜10/90の範囲であることが好ましい。 なかでも、特に好ましいのは90/10〜20/80の範囲である。 前記ポリウレタン樹脂と前記カルボキシル基を有する樹脂との配合で、前記ポリウレタン樹脂が、重量比で95重量%を超えると高圧蒸気滅菌処理におけるメチン系染料および/またはシアニン系染料の明瞭な変色効果が得られず、また、前記カルボキシル基を有する樹脂が、重量比で90重量%を超えるとインジケーター付きフィルムのラミネート適性および/または耐高圧蒸気滅菌性が低下する。
【0040】
本発明のインジケーターインキには、ポリウレタン樹脂、メチン系染料および/またはシアニン系染料およびカルボキシル基を有する樹脂の他に、必要に応じて、他の樹脂、不変色性色素(高圧蒸気滅菌処理により色相が変化しない色素)、添加剤、他の溶剤などを使用することができる。
【0041】
インジケーターインキの性能および皮膜物性を向上させる目的で、他の樹脂を使用できる。 例えば硝化綿、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、塩素化エチレン−ビニルアセテート樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール樹脂、エチレン−ビニルアセテート樹脂、アルキッド樹脂、ブチラール樹脂、ケトン樹脂などが挙げられる。
【0042】
前記不変色性色素としては、高圧蒸気滅菌処理に耐えうる耐熱性と耐マイグレーション性を有していれば、特に制限はない。 高圧蒸気滅菌処理前後においてメチン系染料および/またはシアニン系染料の色相が明瞭に認識できる範囲内において、顔料や染料を適宜選択して使用できる。
【0043】
前記不変色性色素の顔料としては、例えば酸化チタン、弁柄、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、硫化亜鉛、マイカ、タルク、カーボンブラックなどの無機顔料、フタロシアニン系、不溶性アゾ系、縮合アゾ系、ジオキサジン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ペリレン系、ペイノン系、チオインジゴ系などの有機顔料が挙げられる。 染料としては、有機溶剤に溶解または分散し、アルカリ性下で反応しないものが好ましい。 例えば、カラーインデックス・ダイレクトイエロー(C.I.Direct Yellow)12、27および98、カラーインデックス・ダイレクトレッド(C.I.Direct Red)1、4および28、カラーインデックス・ダイレクトオレンジ(C.I.Direct Orange)8、26および29、カラーインデックス・ダイレクトブラウン(C.I.Direct Brown)2、44、58、106および209、カラーインデックス・アシッドオレンジ(C.I.Acid Orange)74、カラーインデックス・アシッドレッド(C.I.Acid Red)111、カラーインデックス・アシッドブルー(C.I.Acid Blue)113、117および120、カラーインデックス・アシッドグリーン(C.I.Acid Green)9、19および44、カラーインデックス・アシッドブラウン(C.I.Acid Brown)13、カラーインデックス・モルダントブラウン(C.I.Mordant Brown)19、カラーインデックス・ディスパースレッド(C.I.Disperse Red)9、カラーインデックス・ソルベントイエロー(C.I.Solvent Yellow)16、21、29、56および61、カラーインデックス・ソルベントオレンジ(C.I.Solvent Orange)12、14、37および40、カラーインデックス・ソルベントレッド(C.I.Solvent Red)1、8、23、30、49、81、82、83、84、100、109および121、カラーインデックス・ソルベントブルー(C.I.Solvent Blue)5、12および70、カラーインデックス・ソルベントバイオレット(C.I.Solvent Biolet)8、21および27、カラーインデックス・ソルベントブラウン(C.I.Solvent Brown)20などが挙げられる。 不変色性色素は、高圧蒸気滅菌前後においてメチン系染料および/またはシアニン系染料の色相が明瞭に認識できる範囲内であれば、特に制限はない。 インジケーターインキ全量中に0.1〜30重量%の範囲内で添加することが好ましい。
【0044】
前記添加剤としては、インジケーター機能を低下させない範囲で、インジケーターインキの印刷適性および皮膜物性を向上させる目的で、消泡剤、レベリング剤、ブロッキング防止剤、ワックス、顔料分散剤などを適宜選択して使用できる。
【0045】
前記他の溶剤としては、インジケーターインキを構成する成分を溶解および/または分散させ、流動性を保つものであれば、いずれでも良く、公知の有機溶剤、水など適宜選択して使用できる。
【0046】
前記有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールなどのアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤およびこれらのエステル化物が挙げられ、エステル化物としては主にアセテート化したものが選ばれ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられ、これらを単独もしくは2種類以上を併用して使用できる。 インジケーターインキ全量中に溶剤は、50〜98重量%の範囲内が好ましい。 なかでも、特に好ましいのは60〜95重量%の範囲内である。
【0047】
本発明のインジケーターインキは、ポリウレタン樹脂溶液、メチン系染料および/またはシアニン系染料、カルボキシル基を有する樹脂、その他樹脂、不変色性色素、添加剤などを溶剤中に均一に溶解および/または分散することにより製造できる。 溶解および/または分散する製造機は、撹拌機または分散機を使用でき、ディゾルバー、ロールミル、ボールミル、ビーズミル、アトライターなどが挙げられる。 インジケーターインキ中に気泡や粗大粒子が含まれる場合、印刷適性や印刷物品質を低下させるため、公知のろ過機などを用いて、取り除くことが好ましい。
【0048】
本発明のインジケーターインキの粘度は、印刷に支障のない範囲であれば、特に制限はない。 インジケーターインキの製造適性、取扱いなどを考慮すれば、10〜1,000mPa・s/25℃の範囲が好ましい。
【0049】
本発明のインジケーターインキは、フィルム基材のヒートシールされる部分の少なくとも一部に塗布される。 塗布方法としては、公知の印刷または塗布、噴霧などの方法などから選択でき、例えば、シルクスクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法、ローラーコーター法、刷毛塗り法、スプレー法、ナイフジェットコーター法などが挙げられる。 なかでも、品質および生産性の高さからグラビア印刷法またはフレキソ印刷法が好ましい。
【0050】
印刷する場合は、そのまま印刷することもできるが、印刷方法、印刷条件、印刷効果に応じ、ザーンカップNo.3((株)離合社製)にて、希釈溶剤で希釈することにより所望の粘度に調整して使用できる。 この場合の粘度は、12〜40秒の範囲が好ましい。 希釈溶剤は、インジケーターインキの粘度を調整して使用できるものであれば、いずれでも良く、有機溶剤、水などが挙げられ、希釈溶剤として市販されているものも使用できる。
【0051】
本発明のフィルム基材に塗布されるインジケーターインキ層の厚さは、高圧蒸気滅菌処理前後において、十分な着色度を有し、かつその色変化が明瞭に認識できる範囲内であれば、特に制限はないが、0.01〜10μmの範囲内が好ましい。 なかでも、特に好ましいのは0.1〜3μmの範囲内である。 0.01μm未満では十分な濃度が得られず、10μmを超えるとインジケーターインキを塗布した塗工物の耐ブロッキング性が低下する。
【0052】
本発明のインジケーターインキを、多色機を用いて印刷する場合、インジケーターインキ以外にも絵柄をインラインで同時に印刷することができる。 例えば、メーカーの社名、製品名、内容物、成分表示、販売促進等のデザイン、インジケーターの変色前後の色相の擬似的表示などが挙げられる。
【0053】
本発明のインジケーターインキは、そのまま希釈溶剤を添加して印刷する一液での使用条件でも印刷できるが、これにポリイソシアネート系硬化剤を添加する二液での使用条件でも印刷できる。 二液での印刷においては、インジケーターインキの耐熱性、耐水性、密着性などが向上し、高圧蒸気滅菌条件下で耐性のあるインジケーター付きフィルムが得られる点で好ましい。
【0054】
前記ポリイソシアネート系硬化剤としては、例えばトリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシネートメチル)シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート及びこれらのトリメチロールプロパン三量体、イソシアヌレート体、ビュレット体、アロファネート体などの変性体などが挙げられ、これらを単独もしくは2種類以上を併用して使用できる。
【0055】
高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体に用いられるフィルム基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルム、ポリスチレンフィルム、エチレン−ビニルアルコール、ポリビニルアルコールなどのアルコール系フィルム、ポリアミドフィルムまたはバリア層を中間に配したバリア性ポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム、PETフィルムまたはポリアミドフィルムにアルミナやシリカなどの蒸着層を設けた透明蒸着ポリエステルフィルムまたは透明蒸着ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂などをコートした各種コーティングフィルムなどが挙げられ、これらは延伸、未延伸のどちらでも良く、単独もしくは2種類以上を積層していても良い。 これらは機械的強度や寸法安定性などを考慮して適切なものが選択できる。 また、インジケーターインキ層を塗布する面にはインジケーターインキの密着性を向上させるため、コロナ処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などを施すか、あらかじめ施されたものが選択できる。 なかでも、特に好ましいのは二軸延伸されたPETフィルムやポリアミドフィルムまたはこれらにアルミナやシリカなどの蒸着層を設けた蒸着フィルムなどである。
【0056】
フィルム基材の厚さは、印刷適性、巻き取り適性などに支障のない範囲内であれば、特に制限はないが、5〜200μmの範囲内が好ましい。 なかでも、特に好ましいのは6〜30μmの範囲内である。
【0057】
インジケーターインキを塗布したフィルム基材に、ラミネートすることにより、中間層を積層することもできる。 この中間層は、耐ピンホール性、遮光性、ガスバリア性、保香性などの付与のため、必要に応じて設けることができる。 例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステルフィルム、透明蒸着ポリエステルまたは透明蒸着ポリアミドフィルム、エチレン−ビニルアルコール、ポリビニルアルコールなどのアルコール系フィルム、ポリアミドフィルムまたはバリア層を中間に配したバリア性ポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂などをコートした各種コーティングフィルム、アルミ箔などの金属箔、紙などが挙げられる。 また、密着性を向上させるため、コロナ処理、低温プラズマ処理、フレーム処理、溶剤処理、コート処理などを施すか、あらかじめ施されたものが選択できる。 コストや汎用性の観点から、特に好ましいのはコロナ処理であり、両面に処理を施したものである。
【0058】
中間層の厚さは、加工適性、コストなどに支障のない範囲内であれば、特に制限はないが、3〜200μmの範囲内が好ましい。なかでも、特に好ましいのは5〜30μmの範囲内である。
【0059】
本発明の高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体に用いられるヒートシール性フィルムとしては、250℃以下の温度でヒートシール可能なフィルムであれば使用可能である。 例えばポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンビニルアセテート、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびそれらの金属架橋物の樹脂などの未延伸フィルムなどが挙げられるが、未延伸ポリプロピレンフィルムやポリエチレンフィルムが好ましい。
【0060】
前記ヒートシール性フィルムの厚さは、巻き取り適性、コストなどに支障のない範囲内であれば、特に制限はないが、10〜200μmの範囲内が好ましい。 なかでも、特に好ましいのは20〜80μmの範囲内である。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、以下の実施例等のみに限定されるものではない。また、実施例等において「部」および「%」は特に断りのない限り、「重量部」および「重量%」を表わす。
【0062】
(合成例1)
撹拌機、冷却管、温度計および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量3,000の3−メチル−1,5−ペンタンアジペートジオール600部および数平均分子量3,000のネオペンチルグリコールアジペートジオール150部、数平均分子量3,000のポリプロピレングリコール250部およびイソホロンジイソシアネート144.8部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、105℃で6時間反応させ、ウレタンプレポリマー(イソシアネート含量2.3%)を得た。 このウレタンプレポリマーに、メチルエチルケトン763部を加えて、均一なウレタンプレポリマー樹脂溶液A’1,907.8部を得た。 続いて、イソホロンジアミン25.5部、ジブチルアミン5.2部、メチルエチルケトン630.3部、イソプロピルアルコール442部からなる混合物に、上記ウレタンプレポリマー樹脂溶液A’1,000部を室温で徐々に添加し、次いで、60℃に加温し、3時間反応させ、ポリウレタン樹脂溶液Aを得た。 得られたポリウレタン樹脂溶液Aは、樹脂固形分30%、粘度1,050mPa・s/25℃、アミン価0.4mgKOH/g、数平均分子量9,500であった。
【0063】
(合成例2)
撹拌機、冷却管、温度計および窒素ガス導入管を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2,000の3−メチル−1,5−ペンタンアジペートジオール666部、数平均分子量2,000のポリプロピレングリコール334部および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート200部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、105℃で6時間反応させ、ウレタンプレポリマー(イソシアネート含量2.1%)を得た。 このウレタンプレポリマーに、酢酸エチル800部を加えて、均一なウレタンプレポリマー樹脂溶液B’2,000部を得た。 続いて、イソホロンジアミン24.7部、ジブチルアミン2.6部、酢酸エチル625.7部、イソプロピルアルコール440部からなる混合物に、上記ウレタンプレポリマー樹脂溶液B’1,000部を室温で徐々に添加し、次いで、60℃に加温し、3時間反応させ、ポリウレタン樹脂溶液Bを得た。 得られたポリウレタン樹脂溶液Bは、樹脂固形分30%、粘度950mPa・s/25℃、アミン価0.5mgKOH/g、数平均分子量10,200であった。
【0064】
(実施例1)
ポリウレタン樹脂溶液A20部、水添ロジン(酸価170、軟化点85℃)15部、ベーシックレッド37を1部、酢酸プロピル50部、メチルエチルケトン4部およびイソプロピルアルコール10部を3時間混合して、赤色のインジケーターインキNo.1を得た。 インジケーターインキNo.1を12μmのPETフィルムにグラビア印刷し、次いで二液硬化型ウレタン系接着剤A−525/A−52(三井化学ポリウレタン(株)製)にて、中間層となる15μmのポリアミドフィルムをドライラミネート法により積層し、さらにヒートシール性を有する60μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層して、インジケーター付きフィルムを得た。 これを50℃にて、6日間エージング後、インジケーター付きフィルムのヒートシール性フィルム面同士を合わせ、250℃、0.2秒間、圧力3kgf/cmでヒートシールし、水を内容物として充填した4方パウチを作成した。
【0065】
(実施例2)
ポリウレタン樹脂溶液B10部、水添ロジン(酸価168、軟化点88℃)15部、ベーシックレッド37を1部、酢酸プロピル50部、メチルエチルケトン4部およびイソプロピルアルコール20部を3時間混合して、赤色のインジケーターインキNo.2を得た。 インジケーターインキNo.2を12μmのPETフィルムにグラビア印刷し、次いで二液硬化型ウレタン系接着剤A−525/A−52(三井化学ポリウレタン(株)製)にて、中間層となる7μmのアルミ箔および15μmのポリアミドフィルムをドライラミネート法により積層し、さらにヒートシール性を有する60μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層して、インジケーター付きフィルムを得た。 これを50℃にて、7日間エージング後、インジケーター付きフィルムのヒートシール性フィルム面同士を合わせ、200℃、0.5秒間、圧力3kgf/cmでヒートシールし、水を内容物として充填した4方パウチを作成した。
【0066】
(実施例3)
ポリウレタン樹脂溶液A39部、ロジン(酸価170、軟化点85℃)19.5部、ベーシックレッド37を1.5部、酢酸プロピル20部およびイソプロピルアルコール20部を3時間混合して、赤色のインジケーターインキNo.3を得た。 インジケーターインキNo.3をノントルエン型希釈溶剤PU515(東京インキ(株)製)で、ザーンカップ#3((株)離合社製)にて、粘度を18秒に調整し、12μmの透明蒸着PETフィルムにグラビア印刷し、次いで二液硬化型ウレタン系接着剤A−525/A−52(三井化学ポリウレタン(株)製)にて、ヒートシール性を有する60μmの未延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネート法により積層して、インジケーター付きフィルムを得た。 これを45℃にて、5日間エージング後、インジケーター付きフィルムのヒートシール性フィルム面同士を合わせ、200℃、0.5秒間、圧力3kgf/cmでヒートシールし、水を内容物として充填した4方パウチを作成した。
【0067】
(実施例4)
ポリウレタン樹脂溶液A30部、ロジン(酸価170、軟化点85℃)15部、シアニンブルー顔料(Pigment Blue15:3)1.5部、メチルエチルケトン2.5部、酢酸エチル30部、イソプロピルアルコール20部をビーズミルにて、分散させ、これにベーシックレッド37を1部添加して、3時間混合して、紫色のインジケーターインキNo.4を得た。 インジケーターインキNo.4をノントルエン型希釈溶剤PU515(東京インキ(株)製)で、ザーンカップ#3((株)離合社製)にて、粘度を18秒に調整し、12μmのPETフィルムにグラビア印刷し、次いで二液硬化型ウレタン系接着剤A−525/A−52(三井化学ポリウレタン(株)製)にて、ヒートシール性を有する60μmの未延伸ポリプロピレンフィルムをドライラミネート法により積層して、インジケーター付きフィルムを得た。これを50℃にて、5日間エージング後、インジケーター付きフィルムのヒートシール性フィルム面同士を合わせ、250℃、0.5秒間、圧力3kgf/cmでヒートシールし、水を内容物として充填した4方パウチを作成した。
【0068】
(実施例5)
インジケーターインキNo.2を12μmのPETフィルムにグラビア印刷した後、白色インキ LG−NT631R白S(東京インキ(株)製)をグラビア印刷、次いで二液硬化型ウレタン系接着剤A−525/A−52(三井化学ポリウレタン(株)製)にて、中間層となる15μmのポリアミドフィルムをドライラミネート法により積層し、さらにヒートシール性を有する60μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層して、インジケーター付きフィルムを得た。 これを50℃にて、6日間エージング後、インジケーター付きフィルムのヒートシール性フィルム面同士を合わせ、200℃、0.5秒間、圧力3kgf/cmでヒートシールし、水を内容物として充填した4方パウチを作成した。
【0069】
(実施例6)
実施例1で作成した4方パウチのヒートシール部を、室温まで冷却する工程を加えながら、同じ場所をさらに2回、250℃、0.2秒間、圧力3kgf/cmでヒートシール処理した。
【0070】
(比較例1)
ロジン(酸価168、軟化点88℃)15部、ベーシックレッド37を1部、酢酸プロピル50部、メチルエチルケトン14部、イソプロピルアルコール20部を3時間混合して、赤色のインジケーターインキNo.5を得た。インジケーターインキNo.5を12μmのPETフィルムにグラビア印刷し、次いで二液硬化型ウレタン系接着剤A−525/A−52(三井化学ポリウレタン(株)製)にて、中間層となる15μmのポリアミドフィルムをドライラミネート法により積層し、さらにヒートシール性を有する60μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層して、インジケーター付きフィルムを得た。これを50℃にて、6日間エージング後、インジケーター付きフィルムのヒートシール性フィルム面同士を合わせ、200℃、0.5秒間、圧力3kgf/cmでヒートシールし、水を内容物として充填した4方パウチを作成した。
【0071】
(比較例2)
ポリウレタン樹脂溶液B20部、ベーシックレッド37を1部、酢酸プロピル50部、メチルエチルケトン9部、イソプロピルアルコール20部を3時間混合して、赤色のインジケーターインキNo.6を得た。 インジケーターインキNo.6を12μmのPETフィルムにグラビア印刷し、次いで二液硬化型ウレタン系接着剤A−525/A−52(三井化学ポリウレタン(株)製)にて、中間層となる7μmのアルミ箔および15μmのポリアミドフィルムをドライラミネート法により積層し、さらにヒートシール性を有する60μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層して、インジケーター付きフィルムを得た。 これを50℃にて、5日間エージング後、インジケーター付きフィルムのヒートシール性フィルム面同士を合わせ、250℃、0.5秒間、圧力3kgf/cmでヒートシールし、水を内容物として充填した4方パウチを作成した。
【0072】
(比較例3)
TPHメジウム(東京インキ(株)製ポリアミド系メジウム)35部、水添ロジン(酸価168、軟化点88℃)8部、ベーシックレッド37を0.8部、酢酸エチル20部、トルエン10部、イソプロピルアルコール20部およびノルマルプロピルアルコール6.2部を3時間混合して、赤色のインジケーターインキNo.7を得た。 インジケーターインキNo.7を12μmのPETフィルムにグラビア印刷し、次いで二液硬化型ウレタン系接着剤A−525/A−52(三井化学ポリウレタン(株)製)にて、中間層となる15μmのポリアミドフィルムをドライラミネート法により積層し、さらにヒートシール性を有する60μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層して、インジケーター付きフィルムを得た。 これを50℃にて、6日間エージング後、インジケーター付きフィルムのヒートシール性フィルム面同士を合わせ、250℃、0.2秒間、圧力3kgf/cmでヒートシールし、水を内容物として充填した4方パウチを作成した。
【0073】
(比較例4)
酸化ビスマス13部、チオ尿素20部、タルク7部、LG-NT Rメジウム(東京インキ(株)製ポリウレタン系メジウム)65部、酢酸エチル17部を混合、白色のインジケーターインキNo.8を得た。 インジケーターインキNo.8を12μmのPETフィルムにグラビア印刷し、次いで二液硬化型ウレタン系接着剤A−525/A−52(三井化学ポリウレタン(株)製)にて、中間層となる15μmのポリアミドフィルムをドライラミネート法により積層し、さらにヒートシール性を有する60μmの未延伸ポリプロピレンフィルムを積層して、インジケーター付きフィルムを得た。 これを50℃にて、6日間エージング後、インジケーター付きフィルムのヒートシール性フィルム面同士を合わせ、200℃、0.5秒間、圧力3kgf/cmでヒートシールし、水を内容物として充填した4方パウチを作成した。
【0074】
実施例1〜5および比較例1〜4で得られたインジケーター付きフィルムおよび4方パウチ、並びに実施例6で得られた4方パウチを用いて、以下の性能評価を実施した。
【0075】
[インジケーター付きフィルムのラミネート適性]
インジケーター付きフィルムを15mm巾に切り、インジケーターインキ層を形成するフィルム基材とその貼り合わせ基材(中間層および/またはヒートシール性フィルム)を、テンシロン万能試験機((株)オリエンテック社製)を用い、引張速度300mm/分にて、T型剥離を行い、インジケーター付きフィルムの引張強度(引っ張りによる切断の度合い)を測定した。 測定値が200g以上のものを、レトルト用途として十分な強度であると判断し、良好なラミネート適性として○、200g未満のものは、レトルト用途として十分な強度を有しないと判断し、ラミネート適性として×とした。
【0076】
[ヒートシールによる変色]
4方パウチのヒートシール部の変色を目視で確認し、変色のないものを○、変色しているものを×として評価した。
【0077】
[インジケーター付き包装袋の性能評価]
オートクレーブ内で、水蒸気温度121℃で30分間の高圧蒸気滅菌処理をし、4方パウチの色相の変化の明瞭性および外観の異常について、処理後の状態を目視により確認した。 優良であるものを○、不良であるものを×として評価した。
【0078】
以上の評価結果を表1にまとめた。
表1に示す通り、実施例1〜6のインジケーター付きフィルムは、ラミネート適性を十分に有し、高圧蒸気滅菌処理前後で色相が明瞭に変化し、外観の異常はまったくなかった。 またヒートシールにおいて変色せず、高圧蒸気滅菌処理したときにだけ変色したことが分かる。 さらに実施例6はヒートシール条件を3回繰り返したものであるがヒートシール部が変色しなかった。
【0079】
【表1】

【0080】
一方、比較例であるが、比較例1では、インジケーター層を形成するフィルム基材とその貼り合わせ基材の間が膨らむレトルト浮きが発生し、比較例2では、色相の変化が不明瞭であった。 さらに、比較例3では、容器としての基本的な性能であるラミネート強度が不十分であったためインジケーターの発色性以外の評価を中止した。 また、比較例4は特許文献1に準じて作成したインジケーター付き包装袋であるが、ヒートシール部が変色したため、本発明の目的には使用できないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体は、医療用途および食品用途の高圧蒸気滅菌の完了を確認する包装体として利用できる。 また、本発明のインジケーターインキは、耐熱性に優れているため、ヒートシール部にも使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム基材にヒートシール性フィルムが積層されたフィルムをヒートシールすることによって作成される包装体において、インジケーターインキが前記フィルム基材のヒートシール部の少なくとも一部に塗布されていることを特徴とする高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体。
【請求項2】
前記インジケーターインキがポリウレタン樹脂、メチン系染料および/またはシアニン系染料、並びにカルボキシル基を有する樹脂を含むことを特徴とする請求項1記載の高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体。
【請求項3】
前記ヒートシール性フィルムが未延伸ポリオレフィンフィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂がポリオール、ポリイソシアネート化合物および鎖伸長剤から合成され、かつその数平均分子量が3,000〜150,000であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体。
【請求項5】
前記カルボキシル基を有する樹脂が、酸価20以上のロジンまたはロジン誘導体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の高圧蒸気滅菌インジケーター付き包装体に用いられるインジケーターインキであって、ポリウレタン樹脂、メチン系染料および/またはシアニン系染料、並びにカルボキシル基を有する樹脂を含むことを特徴とするインジケーターインキ。
【請求項7】
前記ポリウレタン樹脂がポリオール、ポリイソシアネート化合物および鎖伸長剤から合成され、かつその数平均分子量が3,000〜150,000であることを特徴とする請求項6記載のインジケーターインキ。
【請求項8】
前記カルボキシル基を有する樹脂が、酸価20以上のロジンまたはロジン誘導体であることを特徴とする請求項6または7記載のインジケーターインキ。

【公開番号】特開2011−46411(P2011−46411A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196697(P2009−196697)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000219912)東京インキ株式会社 (120)
【Fターム(参考)】