説明

高圧蒸気滅菌器

【課題】滅菌動作の途中で停電した場合は、蓋がロックされた状態に維持し、その状態で
取っ手を引っ張って蓋を直ちに開くことができないように保持し、安全を確保した段階等
、必要に応じて蓋のロックを解除して蓋を開くことができるような、ロック解除機構を備
えた技術を提供する。
【解決手段】蓋がチャンバーの開口を閉じた状態に一次的に保持するロック装置と、滅菌
動作の途中に停電等により高圧蒸気滅菌器への電源供給が断たれたときロック装置が蓋の
閉止状態を解除することを阻止するインターロック状態となるインターロック機構を備え
、インターロック機構はインターロック解除工具によってインターロック解除状態となる
こと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として病院等に設置して医療用器具等の被滅菌物を高圧蒸気下で滅菌する
ための高圧蒸気滅菌器に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧蒸気滅菌器の一つとして、滅菌器本体内に設けた前面開口のチャンバー4と、この
チャンバー4の上面開口を密閉する蓋5を備え、チャンバー4内に注水した水をヒータ3
6で蒸発させ、チャンバー4内に収納された被滅菌物を高圧蒸気下で滅菌する滅菌工程を
行なうものがある(特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1の高圧蒸気滅菌器において、チャンバー4の開口と蓋5との間は環状パ
ッキン5Aによってシールされており、蓋5がチャンバー4の開口を閉じることを検出す
る閉蓋検出スイッチ7を備え、電源スイッチONの状態において、蓋5がチャンバー4の
開口を閉じた正規の閉蓋状態を、この閉蓋検出スイッチ7A、7Bが検出した状態で条件
設定し、その状態でスタートキー31EをONすることにより、ソレノイド式ロック装置
24のソレノイド25がONして、操作取っ手12による蓋5を開くことができない状態
となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−073390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高圧蒸気滅菌器では、滅菌動作中はチャンバー内に高圧蒸気が充満しているため、停電
等により高圧蒸気滅菌器への電源供給が断たれたとき蓋を開けると、その高圧蒸気が流出
して危険であるため、滅菌動作中に停電などにより高圧蒸気滅菌器への電源供給が断たれ
たときは、蓋を閉止状態に保持する機構を設けることが要求されている。
【0006】
本発明はこのような点に鑑み、滅菌動作の途中に停電等により高圧蒸気滅菌器への電源
供給が断たれたときは、蓋が閉止された状態にロックし、その状態で取っ手を引っ張って
蓋を開けようとしても開くことができないように保持し、安全を確保した段階等、必要に
応じて蓋のロックを解除して蓋を開くことができるような、ロック解除機構を備えた技術
を提供するものである。
【0007】
このため、本発明では、蓋がチャンバーの開口を閉じた状態に一次的に保持するロック
装置を設け、このロック装置により蓋が閉止状態に保持され、この閉止状態をインターロ
ック機構によって保持して滅菌モードが開始する構成とし、滅菌動作中に停電したとき、
インターロック機構によるインターロック状態を継続し、そのインターロック状態の解除
は、インターロック解除工具によって行なうことができるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の高圧蒸気滅菌器は、滅菌器本体内に設けたチャンバーと、前記チャンバーの
開口を密閉状態に開閉する蓋と、前記蓋がチャンバーの開口を閉じた状態に一次的に保持
するロック状態となるロック装置と、滅菌動作の途中に停電等により高圧蒸気滅菌器への
電源供給が断たれたとき前記ロック装置が前記蓋の閉止状態を解除することを阻止するイ
ンターロック状態となるインターロック機構を備え、前記インターロック機構はインター
ロック解除工具によってインターロック解除状態となることを特徴とする。
【0009】
第2発明の高圧蒸気滅菌器は、第1発明において、前記ロック装置は手動にて前記蓋の
ロック状態と非ロック状態に操作可能であり、前記インターロック機構は非通電状態にて
前記ロック装置を前記ロック状態に維持し通電にて前記ロック装置による前記蓋の閉止状
態を解除操作可能とするアクチュエータを作動するソレノイド式であることを特徴とする

【0010】
第3発明の高圧蒸気滅菌器は、滅菌器本体内に設けたチャンバーと、前記チャンバーの
開口を密閉状態に開閉する蓋と、前記蓋がチャンバーの開口を閉じた状態に一次的に保持
するロック装置と、前記蓋が閉じた状態を検出する閉蓋検出スイッチと、前記蓋を閉じた
状態に前記ロック装置が動作したことを検出するロック検出スイッチと、滅菌動作中に停
電等により高圧蒸気滅菌器への電源供給が断たれたとき及び前記滅菌動作中は前記ロック
装置が前記蓋の閉止状態を解除することを阻止するインターロック状態となるインターロ
ック機構と、前記インターロック機構がインターロック状態になったことを検出するイン
ターロック検出スイッチとを備え、前記閉蓋検出スイッチと前記ロック検出スイッチの動
作により高圧蒸気滅菌器が運転開始可能状態となり、前記高圧蒸気滅菌器の運転を開始す
るスタートスイッチの操作に基づき前記インターロック機構がインターロック状態に動作
し、前記インターロック機構は所期の滅菌動作の終了、及びインターロック解除工具によ
ってインターロック解除状態となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明では、滅菌動作の途中に停電等により高圧蒸気滅菌器への電源供給が断たれた
とき、ロック装置が蓋の閉止状態を解除することを阻止するインターロック状態になるた
め、停電等の際に蓋を開いたときの危険を防止できる。また、このインターロック状態は
、特別なインターロック解除工具によって解除状態となるため、安全を確保した段階等、
必要に応じてインターロックを解除して蓋を開くことができるものとなる。
【0012】
第2発明では、インターロック機構は非通電状態にてロック装置をロック状態に維持し
、通電にてロック装置を非ロック状態に作動可能とするアクチュエータを作動するソレノ
イド式であるため、滅菌動作の途中に停電等により高圧蒸気滅菌器への電源供給が断たれ
たとき、ロック装置が蓋の閉止状態を解除することを阻止するインターロック状態になる
ため、停電等の際に蓋を開いたときの危険を防止できる。そして、ロック装置が手動にて
蓋のロック状態と非ロック状態に操作可能な構成の場合も、安定したインターロック動作
を得ることができる。また、このインターロック状態は、特別なインターロック解除工具
によって解除状態となるため、安全を確保した段階等、必要に応じてインターロックを解
除して蓋を開くことができるものとなる。
【0013】
第3発明は、各スイッチの検出状態によって、ロック装置によるロック状態と、そのロ
ック状態をインターロック機構によってインターロックされている状態において、安定し
た滅菌動作が行なわれるものとなる。そして、滅菌動作の途中に停電等により高圧蒸気滅
菌器への電源供給が断たれたとき、ロック装置が蓋の閉止状態を解除することを阻止する
インターロック状態になるため、停電等の際に蓋を開いたときの危険を防止できる。また
、このインターロック状態は、特別なインターロック解除工具によって解除状態となるた
め、安全を確保した段階等、必要に応じてインターロックを解除して蓋を開くことができ
るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る高圧蒸気滅菌器の正面斜視図である。
【図2】本発明に係る高圧蒸気滅菌器の蓋を開いた正面斜視図である。
【図3】本発明に係る高圧蒸気滅菌器の操作パネルの説明図である。
【図4】本発明に係る高圧蒸気蒸気滅菌器の蓋が閉じる前の閉蓋検出スイッチに係る動作状態の説明図であり、(イ)は蓋側の作動部の状態図であり、(ロ)は滅菌器本体側のスライドピースの状態図である。
【図5】本発明に係る高圧蒸気滅菌器の蓋が正規閉蓋状態に閉じた状態の閉蓋検出スイッチに係る動作状態の説明図である。
【図6】本発明に係る高圧蒸気滅菌器の蓋が閉じてロック装置がロック状態に作動する前の状態の説明図である。
【図7】本発明に係る高圧蒸気滅菌器の蓋が閉じてロック装置がロック状態に作動した状態の説明図である。
【図8】本発明に係る高圧蒸気滅菌器の蓋が閉じてインターロック機構がインターロック状態になっている状態の説明図である。
【図9】本発明に係る高圧蒸気滅菌器のインターロック機構に対してインターロック解除工具が差し込まれる状態を示す図である。
【図10】本発明に係るインターロック解除工具によってインターロック機構がインターロック解除状態となった状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る高圧蒸気滅菌器は、滅菌器本体内に設けたチャンバーと、前記チャンバー
の開口を密閉状態に開閉する蓋と、前記蓋がチャンバーの開口を閉じた状態に一次的に保
持するロック装置と、滅菌動作の途中に停電等により高圧蒸気滅菌器への電源供給が断た
れたとき前記ロック装置が前記蓋の閉止状態を解除することを阻止するインターロック状
態となるインターロック機構を備え、前記インターロック機構はインターロック解除工具
によってインターロック解除状態となる構成であり、以下にその好ましい実施例を記載す
る。
【実施例1】
【0016】
本発明に係る高圧蒸気滅菌器MKは、主として病院等に設置して医療用器具等の被滅菌
物を高圧蒸気下で滅菌するためのものであり、その代表的なものとして、図1及び図2に
示すように、前面開口2を形成した円筒状のチャンバー4を備え、この前面開口2を蓋7
によって開閉自在に閉塞する横型形態の高圧蒸気滅菌器MKである。以下、本発明に係る
横型形態の高圧蒸気滅菌器MKの実施例を図に基づき説明する。
【0017】
1は高圧蒸気滅菌器MKの滅菌器本体であり、内部に医療用器具等の被滅菌物を載せる
棚6を備えた前面開口2を形成した円筒状の横型チャンバー4を収納配置している。チャ
ンバー4の前面開口2は、滅菌器本体1の左右いずれか一方側(図1及び図2では左側)
に設けたヒンジ機構の蓋支持部5にて回動可能に支持された蓋7で密閉される。このため
、蓋7の裏側には、蓋7が正規状態に閉じられた状態で、チャンバー4の前面開口2の周
縁部に圧縮状態で密着する環状パッキン8を備えている。
【0018】
滅菌器本体1の前面部の蓋7の一側方(図では右側)に配置した操作パネル3には、図
3に示すように、高圧蒸気滅菌器MKの動作条件や動作モードを設定する設定部31と、
動作条件や動作モードを表示する表示部32と、電源スイッチSW等を配置している。設
定部31には、時刻設定部31A、予約設定部31B、滅菌温度設定部31C、滅菌時間
設定部31D、乾燥時間設定部31E、スタートキー(またはスタートボタンと称し、ス
タートスイッチの操作部である)39、ストップキー40、温度や時間や時刻の設定値の
アップダウン部31G、完了予定キー41等を配置している。表示部32は、温度や時刻
等の表示部32Aと、圧力計32Bと、プロセス表示部32C、蓋7のロック状態表示部
32D等を備えている。
【0019】
閉蓋検出スイッチ10と、それを作動する構成について説明する。図2に示すように、
閉蓋検出スイッチ10は、開口2に対して蓋支持部5の反対側(図1及び図2では右側)
の上部に配置され、滅菌器本体1の前面板1Aの裏側に取り付けられている。閉蓋検出ス
イッチ10は、図4等に示すように、閉蓋検出スイッチ10のケース10Aの内部に備え
た接点を開閉するためのアクチュエータ11と、アクチュエータ11を作動するためにケ
ース10Aに支点部12Aが支持されたバネ性作動レバー12を備えている。バネ性作動
レバー12は、板状バネ材で構成されている。
【0020】
また、バネ性作動レバー12によって前方へ向かって付勢されるように、滅菌器本体1
の前面板1Aを貫通状態に取り付けた筒状の支持体14内に前後方向にスライド可能にス
ライドピース13が設けられている。スライドピース13の後部には、支持体14の後部
のストッパー部14Aに係止する係止部13Aが形成されており、スライドピース13は
、その後端部13Pがバネ性作動レバー12に当接して前方へ付勢され、ストッパー部1
4Aに係止部13Aが当接したとき、滅菌器本体1の前面板1Aから前方へ突出する最大
長さが制限される。
【0021】
蓋7には、スライドピース13に対応する位置に、コイル状の第1付勢バネ16によっ
て蓋7の裏側方向へ突出状態に付勢されるように、蓋7の裏板7Aを貫通状態に取り付け
た筒状の支持体17内に前後方向にスライド可能に作動部15が設けられている。このた
め、コイル状の第1付勢バネ16は、作動部15内に収容されていて、その先端は作動部
15の先端壁に当接し、後端は支持体17と一体形成または別体形成の保持部18によっ
て支持された状態であり、若干圧縮された状態で作動部15内に収容されている。作動部
15の後部には、支持体17の後部のストッパー部17Aに係止する係止部15Aが形成
されており、作動部15は、第1付勢バネ16によって蓋7の裏側方向へ付勢されるとき
、ストッパー部17Aに係止部15Aが当接したとき、蓋7の裏板7Aから後方へ突出す
る最大長さが制限される。図4(イ)(ロ)は蓋7が開口2を開いている状態であり、第
1付勢バネ16もバネ性作動レバー12も初期状態である。即ち、上記のように、第1付
勢バネ16は若干圧縮された状態で作動部15内に収容されているため、作動部15が蓋
7の裏板7Aから後方へ最大長さで突出しており、バネ性作動レバー12によってスライ
ドピース13が前方へ押されて、スライドピース13が前面板1Aから前方へ最大長さで
突出している。
【0022】
上記の構成において、蓋7を閉めて行くことにより、作動部15の先端がスライドピー
ス13の先端を押しつつ、作動部15がスライドピース13を介してバネ性作動レバー1
2を押し圧にて更に後方へ押し、スライドピース13を更に後退させ、バネ性作動レバー
12がアクチュエータ11を最も押し込んだ状態に達する。この状態では、スライドピー
ス13を介して作動部15を後退させる作用が働くことにより、第1付勢バネ16がそれ
によって押し圧にて圧縮される。この状態を図5に示す。この状態は蓋7が開口2を正規
の閉止状態に閉じた正規閉蓋状態であり、この正規閉蓋状態では、環状パッキン8は、チ
ャンバー4の前面開口2の周縁部に強く当接して正規の圧縮状態で密着し、チャンバー4
を蓋7によって閉じた正規閉蓋状態である。この状態で閉蓋検出スイッチ10はその接点
が閉じたON状態となる。
【0023】
開口2に対して蓋支持部5の反対側(図1及び図2では右側)の中間位置には、滅菌器
本体1の前面板1Aの表側に本体側ロック部材19が突出状態に設けられている。蓋7に
は、本体側ロック部材19に対応する位置にロック装置20が設けられている。ロック装
置20は、本体側ロック部材19が蓋7の裏板7Aに形成した通口7Bを通して進入する
蓋側ロック部材21と、ロック棒22と、スイッチ作動体23を備えている。ロック装置
20は蓋7の前面に設けた取っ手9によってロック状態への操作と、ロック解除状態への
操作が可能となる構成である。
【0024】
蓋側ロック部材21は蓋7に固定されており、蓋側ロック部材21には、本体側ロック
部材19の進入路を外れた位置において、上下方向に垂直状態にガイド棒26Aが取り付
けられている。動作の安定化のためにガイド棒26Aは、本体側ロック部材19の進入路
の左右両側にガイド棒26A、26Aを配置した構成である。そして、ガイド棒26Aに
はコ字形の支持板25の上下辺25A、25Bが上下スライド可能に挿通され、支持板2
5の上辺25Aには下方へ垂下するようにロック棒22が取り付けられている。また、支
持板25の下辺25Bにスイッチ作動体23が取り付けられている。支持板25は取っ手
9に固定されており、これによって、取っ手9の上下動に伴って、ガイド棒26Aに案内
されて支持板25と共にロック棒22が上下動可能である。
【0025】
ロック装置20のロック棒22及び支持板25は、取っ手9を上昇させることに伴って
ガイド棒26Aを案内として上昇し、その状態で蓋7を閉めることにより、ロック棒22
と一体に作動する作動体23が、滅菌器本体1の前面板1Aの縦方向の長孔1Bを貫通し
て滅菌器本体1内に進入した状態となる。これと共に、図6に示すように蓋側ロック部材
21に本体側ロック部材19が進入する状態となる。この状態で取っ手9を下降させるこ
とに伴って、ロック棒22及び支持板25はガイド棒26Aを案内として下降し、ロック
棒22が本体側ロック部材19と蓋側ロック部材21の孔に進入してロック状態(ロック
位置)となる。この状態が、蓋7が正規閉蓋状態に閉じられた状態であり、蓋7によって
閉蓋検出スイッチ10がON状態になると共に、作動体23によってロック検出スイッチ
24がON状態となる(図7に示す)。
【0026】
なお、このロック位置から取っ手9を上昇させることによってロック棒22が本体側ロ
ック部材19と蓋側ロック部材21の孔から上方へ脱出して、非ロック位置となる。
【0027】
インターロック機構30は、図6乃至図10に示すように滅菌器本体1の前面板1Aの
裏側に設けたソレノイド32と、アクチュエータ33と、コイルバネ34を備えている。
板状のインターロック解除部材38は、後述のように手動にてインターロック状態を解除
するためのものである。このソレノイド32への非通電状態ではコイルバネ34によって
アクチュエータ33が作動体23の上方に進出し、作動体23の上昇(復帰)を阻止して
ロック装置20が蓋7をロック状態に維持するロック維持状態(インターロック状態)と
なり、この状態でインターロック検出スイッチ35のバネ性作動レバー35Aを押すため
、インターロック検出スイッチ35がON作動する。またソレノイド32への通電にてコ
イルバネ34を圧縮するようにアクチュエータ33が作動し、作動体23の移動通路(作
動体23が上下動する移動通路)から退避し、作動体23の上昇(復帰)を許可して前記
ロック維持状態を解除する非ロック維持位置となり、インターロック検出スイッチ35が
OFF状態に作動する。
【0028】
チャンバー4内に被滅菌物を収納し、蓋7を閉じて蓋7がチャンバー4の前面開口2を
密閉した状態において、高圧蒸気滅菌器MKを運転して、チャンバー4内を高温高圧状態
とし、被滅菌物の滅菌が行なわれる。この被滅菌物の一連の滅菌動作について述べること
とする。滅菌動作の操作に際しては、先ず、電源スイッチSWをオン(ON)操作するこ
とにより、スタンバイ状態となる。この状態でインターロック機構30のソレノイド32
は通電され励磁状態となり、アクチュエータ33は、バネ34に抗して作動体23の移動
通路(上下方向通路)から外れるように図8に示す矢印Y方向へ退避し、非インターロッ
ク位置となる。
【0029】
蓋7を開いて開口2よりチャンバー4内にヒータ6Aを覆う棚6を構成するヒータカバ
ー6の上などに被滅菌物をセットし、蓋7を閉じる。この状態を保持するために、上記の
ように、蓋7の取っ手9を操作してロック装置20によって蓋7をロック状態(ロック位
置)とする。この状態で、上記のように蓋7が閉じたことは閉蓋検出スイッチ10のON
動作によって検出され、ロック装置20によって蓋7がロックされた状態は、作動体23
によってロック検出スイッチ24がON状態となることによって検出される。
【0030】
このような動作によって達成される閉蓋検出スイッチ10のON状態とロック検出スイ
ッチ24のON状態のアンド(乗算動作)により、高圧蒸気滅菌器MKが運転開始可能状
態となる。この状態において、操作パネル3の表示部32を確認しつつ設定部31によっ
て所期の設定を行なう。このような操作によって、スタンバイ状態での準備が終わる。こ
の準備が終わったスタンバイ状態で、スタートキー39のオン(ON)操作に基づき制御
部の動作によって、ロック装置20による蓋7のロック状態を維持するようにインターロ
ック機構30が動作する。
【0031】
即ち、スタートキー39のオン(ON)操作に基づきインターロック機構30のソレノ
イド32は非通電となって非励磁状態となり、図8に示すように、アクチュエータ33は
バネ34によって矢印Y方向とは反対方向へ突出し、作動体23の真上となるように移動
通路(上下方向通路)へ突出する。このため、取っ手9を上方へ操作しても作動体23が
上方へ移動できず、蓋7のロック状態が維持されたインターロック状態を維持する。そし
て、この状態でアクチュエータ33の先端がインターロック検出スイッチ35のバネ性作
動レバー35Aを押すため、インターロック検出スイッチ35をON作動する。この状態
によって蓋7のロック状態表示部32Dが発光すると共に、所期の滅菌モード(所期の滅
菌動作)が開始する。
【0032】
所期の滅菌モード(所期の滅菌動作)が開始することにより、チャンバー4内に所定量
の水が注入され、その水がチャンバー4内底部に配置したヒータ6Aにより加熱蒸発し、
チャンバー4内を所定温度に維持しつつ、被滅菌物の滅菌工程が制御部(図示せず)の動
作によって所定時間行なわれ、滅菌工程の終了後、チャンバー4内の排気乾燥工程を経て
、所期の滅菌モード(所期の滅菌動作)が終了する。
【0033】
制御部(図示せず)の動作によって所期の滅菌モード(所期の滅菌動作)が終了したと
き、インターロック機構30のソレノイド32は通電され励磁状態となり、アクチュエー
タ33は、バネ34に抗して作動体23の移動通路(上下方向通路)から外れるように図
8に示す矢印Y方向へ退避して非インターロック位置となる。このようにインターロック
機構30によるインターロック状態が解除された状態で、取っ手9を上方へ引き上げる操
作によって、取っ手9と共にロック棒22が本体側ロック部材19と蓋側ロック部材21
の孔から上方へ脱出して、非ロック位置となる。この状態で取っ手9を引いて蓋7を開く
ことができ、被滅菌物を取り出すことができる。
【0034】
上記では、ロック装置20のロック棒22及び支持板25の上下動は、取っ手9の操作
に伴う手動式であるが、蓋7を閉じたときに閉蓋検出スイッチ10がON作動することに
よってソレノイドに通電し、それによってロック棒22及び支持板25が下降し、このソ
レノイドの非通電によってロック棒22及び支持板25が上昇する構成とするソレノイド
方式とすることも可能である。
【0035】
上記のように、滅菌モードが開始して行われる所期の滅菌モード(所期の滅菌動作)の
動作中はインターロック状態であるが、この状態において停電した場合は、インターロッ
ク機構30のソレノイド32は非通電状態となる。ソレノイド32の非通電によって、図
8に示すようにアクチュエータ33が作動体23の上昇を阻止し、蓋7が開くことを阻止
するインターロック状態を維持した状態であり、取っ手9を引いても蓋7を開くことがで
きない。このため、チャンバー4内の高圧蒸気が漏れ出すことはなく安全である。
【0036】
このインターロック状態を強制的に手動解除するためには、図8に矢印Yで示すように
、コイルバネ34に抗してアクチュエータ33を左方へ移動させて、作動体23の真上位
置から外れる位置まで退避させればよい。このため、手動にて強制的にコイルバネ34に
抗してアクチュエータ33が作動体23の真上位置から外れるように、図8で示す矢印Y
のように左方へ移動させ退避させればインターロックが解除される。
【0037】
高圧蒸気滅菌器MKが停電したとき、インターロックを解除するために、インターロッ
ク解除部材38が設けられている。インターロック解除部材38は、孔38Aをアクチュ
エータ33が貫通状態であるため、上記のように手動にて強制的にコイルバネ34に抗し
てアクチュエータ33を退避させるためには、高圧蒸気滅菌器MKの正面側から特殊なイ
ンターロック解除工具50を用いて、インターロック解除部材38を図10で反時計回り
に回動させることにより、インターロック解除部材38がアクチュエータ33の鍔部33
Aを図8に矢印Yで示す方向へ押すように動作し、アクチュエータ33がコイルバネ34
に抗して左方へ移動させられ、作動体23の真上位置から外れる位置まで退避させること
ができる。
【0038】
図9はインターロック機構30に対してインターロック解除工具50が差し込まれる状
態を示す。図10はインターロック解除工具50によってインターロック機構30がイン
ターロック解除状態となった状態を示す。インターロック解除部材38は、滅菌器本体1
の前面板1Aの裏側で固定部材に軸支持部36に回動可能に支持されており、通常状態で
は付勢バネ37または重量バランスによって図8及び図9のように垂直状態に保たれてい
る。滅菌器本体1の前面板1Aの裏側で固定部材52によって、板状のインターロック解
除工具50の挿入部51が、蓋7の下側空間を通して滅菌器本体1の前面に開口するよう
に、滅菌器本体1の底部に形成されている。挿入部51はインターロック解除工具50の
幅S1と板厚T1よりも若干大きい幅S2と厚さT2に形成されている。インターロック
解除工具50を板状に形成したのは、他の部材を挿入し難くするためである。
【0039】
インターロック解除部材38は、通常状態では図8及び図9のように垂直状態に保たれ
ており、その下端部は挿入部51の上壁に形成したスリット状の開口53を通して挿入部
51内に進入した状態に保たれている。インターロック解除工具50には、その挿入先端
部の一側に、先端に向けて傾斜した作用部50Aが形成されている。
【0040】
インターロック状態において、高圧蒸気滅菌器MKが停電したときは、ソレノイド32
は非通電状態であるため、図8及び図9に示すように、アクチュエータ33が作動体23
の上昇を阻止し、蓋7が開くことを阻止するインターロック状態を維持した状態である。
この状態において、インターロック解除部材38の下端部は挿入部51内に進入した状態
であるため、挿入部51へインターロック解除工具50の挿入先端部を挿入することによ
り、傾斜した作用部50Aがインターロック解除部材38の下端部をインターロック解除
方向へ押す。インターロック解除方向は、アクチュエータ33が作動体23の真上位置か
ら外れる位置まで退避する方向である。
【0041】
即ち、蓋7の下側空間を通して挿入部51へインターロック解除工具50の挿入先端部
を挿入することにより、傾斜した作用部50Aがインターロック解除部材38の下端部3
8Pを図8及び図9において、反時計回りに回動させることにより、インターロック解除
部材38がアクチュエータ33の鍔部33Aを図8に矢印Yで示す方向へ押すように動作
し、図10に示すように、アクチュエータ33がコイルバネ34に抗して矢印Y方向へ移
動させられ、作動体23の真上位置から外れる位置まで退避される。これによって、イン
ターロックが解除される。このインターロックの解除状態において、取っ手9を上方へ引
き上げる操作によって、取っ手9と共にロック棒22が本体側ロック部材19と蓋側ロッ
ク部材21の孔から上方へ脱出して、非ロック位置となる。この状態で取っ手9を引いて
蓋7を開くことができ、被滅菌物を取り出すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る高圧蒸気滅菌器は、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲での変更形態は
、本発明の範囲であり、上記実施例に示した構成に限定されず、上記同様の作用をするこ
とができる高圧蒸気滅菌器の範囲において種々の形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0043】
1・・・・滅菌器本体
2・・・・前面開口
3・・・・操作パネル
4・・・・チャンバー
5・・・・蓋支持部
6・・・・ヒータカバー
6A・・・ヒータ
7・・・・・蓋
8・・・・環状パッキン
10・・・閉蓋検出スイッチ
11・・・閉蓋検出スイッチのアクチュエータ
12・・・バネ性作動レバー
13・・・スライドピース
13A・・係止部
14・・・筒状の支持体
14A・・ストッパー部
15・・・作動部
15A・・係止部
16・・・コイル状の第1付勢バネ
17・・・支持体
17A・・ストッパー部
18・・・保持部
19・・・本体側ロック部材
20・・・ロック装置
21・・・蓋側ロック部材
22・・・ロック棒
23・・・作動体
24・・・バネ性作動レバー
25・・・支持板
26A・・ガイド棒
30・・・インターロック機構
32・・・ソレノイド
33・・・アクチュエータ
35・・・インターロック検出スイッチ
36・・・軸支持部
37・・・付勢バネ
38・・・インターロック解除部材
50・・・インターロック解除工具
50A・・作用部
51・・・挿入部
52・・・固定部材
53・・・スリット状の開口
MK・・・高圧蒸気滅菌器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌器本体内に設けたチャンバーと、前記チャンバーの開口を密閉状態に開閉する蓋と
、前記蓋がチャンバーの開口を閉じた状態に一次的に保持するロック装置と、滅菌動作の
途中に停電等により高圧蒸気滅菌器への電源供給が断たれたとき前記ロック装置が前記蓋
の閉止状態を解除することを阻止するインターロック状態となるインターロック機構を備
え、前記インターロック機構はインターロック解除工具によってインターロック解除状態
となることを特徴とする高圧蒸気滅菌器。
【請求項2】
前記ロック装置は手動にて前記蓋のロック状態と非ロック状態に操作可能であり、前記
インターロック機構は非通電状態にて前記ロック装置を前記ロック状態に維持し通電にて
前記ロック装置による前記蓋の閉止状態を解除操作可能とするアクチュエータを作動する
ソレノイド式であることを特徴とする請求項1に記載の高圧蒸気滅菌器。
【請求項3】
滅菌器本体内に設けたチャンバーと、前記チャンバーの開口を密閉状態に開閉する蓋と
、前記蓋がチャンバーの開口を閉じた状態に一次的に保持するロック装置と、前記蓋が閉
じた状態を検出する閉蓋検出スイッチと、前記蓋を閉じた状態に前記ロック装置が動作し
たことを検出するロック検出スイッチと、滅菌動作中に停電等により高圧蒸気滅菌器への
電源供給が断たれたとき及び前記滅菌動作中は前記ロック装置が前記蓋の閉止状態を解除
することを阻止するインターロック状態となるインターロック機構と、前記インターロッ
ク機構がインターロック状態になったことを検出するインターロック検出スイッチとを備
え、前記閉蓋検出スイッチと前記ロック検出スイッチの動作により高圧蒸気滅菌器が運転
開始可能状態となり、前記高圧蒸気滅菌器の運転を開始するスタートスイッチの操作に基
づき前記インターロック機構がインターロック状態に動作し、前記インターロック機構は
所期の滅菌動作の終了、及びインターロック解除工具によってインターロック解除状態と
なることを特徴とする高圧蒸気滅菌器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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