説明

高圧蒸気滅菌器

【課題】扉体と開口との間の密閉度を高く確保し得て、不測な蒸気漏れの発生を抑制する
ことができる高圧蒸気滅菌器を提供する。
【解決手段】滅菌器本体の内部に配置したチャンバーと、チャンバーの開口を開閉する扉
体と、扉体に設けられた取手の手動変位操作に連動して変位するロックシャフト60と、
滅菌器本体に設けられてロックシャフト60が貫通するロックシャフト貫通孔19aを備
えたロックシャフト保持部19と、を備え、ロックシャフト60とロックシャフト貫通孔
19aとの相対位置をチャンバ蓋と開口との密閉度を基準として変更する変更部と、を備
えている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的小型な医療用器具・実験器具・食器等の被処理物に付着している菌を
高圧蒸気下で滅菌するための高圧蒸気滅菌器に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧蒸気滅菌器の一つとして、滅菌器本体内に設けた前面開口のチャンバーと、このチ
ャンバーの前面開口を密閉する扉体と、を備え、チャンバー内に注水した水をヒータ等の
加熱手段の加熱によって蒸発させつつ、チャンバー内に収納された比較的小型な医療用器
具や食器等の被処理物に付着している菌を高圧蒸気下で滅菌する滅菌工程(滅菌処理)を
行なうものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、このような高圧蒸気滅菌器においては、チャンバーの前面開口と扉体との間は、
前面開口を包囲する環状パッキン等のシール部材によってシールされている。この際、扉
体と前面開口との間は密閉状態となるように緊密に対向関係にあるのが好ましい。
【0004】
さらに、扉体によって前面開口を閉成しているときには、その状態を閉扉検出スイッチ
等で検出し、扉体によって前面開口が閉成しているときにチャンバー内を高圧蒸気下とす
るようにしている。この際、扉体は、前面開口の周囲を撓み無く略均一に環状パッキンを
押し当てることにより、蒸気漏れ等を抑制することができる(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−073390号公報
【特許文献2】特開2011−156224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、高圧蒸気滅菌器では、滅菌処理中はチャンバー内に高圧蒸気が充満している
ため、環状パッキンの形状のばらつきや経年劣化等に起因して、環状パッキンの圧縮量が
変化してしまい、蒸気漏れ等の要因となってしまうという問題が生じていた。
【0007】
本発明はこのような点に鑑み、環状パッキンに形状のばらつきや経年劣化が発生しても
扉体と前面開口との間の密閉性を確保し得て、不測な蒸気漏れの発生を抑制することがで
きる高圧蒸気滅菌器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高圧蒸気滅菌器は、滅菌器本体の内部に配置したチャンバーと、前記チャンバ
ーの開口を開閉する扉体と、前記扉体に設けられた取手の手動変位操作に連動して変位す
るロックシャフトと、前記滅菌器本体に設けられて前記ロックシャフトが貫通するロック
シャフト貫通孔を備えたロックシャフト保持部と、前記ロックシャフトと前記ロックシャ
フト貫通孔との相対位置を前記扉体と前記開口との密閉度を基準として変更する変更部と
、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明の高圧蒸気滅菌器によれば、扉体と開口との間の密閉度を高く確保し得て、不測
な蒸気漏れの発生を抑制することができる。
【0010】
また、本発明の高圧蒸気滅菌器は、前記扉体は前記開口の周囲を包囲する環状パッキン
を有するチャンバー蓋を備え、前記変更部は前記環状パッキンによる密閉度の経年劣化に
応じて密閉度が高くなる方向に変更することを特徴とする。
【0011】
本発明の高圧蒸気滅菌器によれば、環状パッキンが経年劣化した場合であっても、環状
パッキンを交換することなく、密閉度を高く確保することができる。
【0012】
さらに、本発明の高圧蒸気滅菌器は、前記変更部は、前記ロックシャフト保持部に保持
されて前記ロックシャフト貫通孔に先端が臨む調整螺子であることを特徴とする。
【0013】
本発明の高圧蒸気滅菌器によれば、簡素な構成でロックシャフトとロックシャフト貫通
孔との相対位置を調整することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の高圧蒸気滅菌器は、扉体と開口との間の密閉度を高く確保し得て、不測な蒸気
漏れの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る高圧蒸気滅菌器を示し、(A)は扉体閉成状態の高圧蒸気滅菌器の斜視図、(B)は扉体開放状態の高圧蒸気滅菌器の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る高圧蒸気滅菌器に適用されるインターロック機構を示し、(A)は扉ロック前の要部の側面図、(B)は扉ロック状態の要部の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る高圧蒸気滅菌器に適用されるインターロック機構を示し、(A)はインターロック解除前の要部の斜視図、(B)はインターロック解除状態の要部の斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る高圧蒸気滅菌器に適用されるインターロック機構を示し、(A)はインターロック解除前の要部の正面図、(B)はインターロック解除状態の要部の正面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る高圧蒸気滅菌器を示し、(A)はカバーを取り外した状態の高圧蒸気滅菌器の正面図、(B)は(A)のA−A線に沿う断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る高圧蒸気滅菌器を示し、(A)は図5(A)のB−B線に沿う断面図、(B)はチャンバー回動軸と貫通孔との関係を示す要部の断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る高圧蒸気滅菌器を示し、(A)は扉アンロック状態の要部の断面図、(B)は扉ロック状態の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の一実施形態に係る高圧蒸気滅菌器について、図面を参照して説明する。
尚、以下に示す実施例は本発明の高圧蒸気滅菌器における好適な具体例であり、技術的に
好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定
する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。また、以下に示す実施形
態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既
存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能である。したがって、以下に
示す実施形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するもので
はない。
【0017】
図1において、高圧蒸気滅菌器10は、比較的小型な医療用器具・実験器具・食器等の
被処理物(対象は公知のオートクレーブ滅菌・高圧蒸気滅菌で可能なもの)に付着してい
る菌を高圧蒸気下で滅菌するためのものであり、略筐体形状の外観を呈する滅菌器本体1
1と、滅菌器本体11の前面に図示を略するヒンジ(図示上下方向に延びる軸線)を介し
て回動可能に設けられた扉体12と、滅菌器本体11の内部に設けられて扉体12によっ
て開閉されて被処理物の入れ出しを可能とする前面開口13を備えた略有低円筒形状のチ
ャンバー14と、滅菌器本体11の前面に配置されて扉体12とで高圧蒸気滅菌器10の
正面(前面)の外観を構成する操作パネル15と、を備えた所謂横型形態が採用されてい
る。
【0018】
(滅菌器本体11の構成)
滅菌器本体11は、チャンバー14の内部に医療用器具等の被処理物を載置する載置棚
16が設けられている。また、滅菌器本体11の前面板17には、前面開口13を避ける
周囲に、閉扉検出スイッチ18、ロックシャフト保持部19、前面板17の上下方向に延
びる長孔20、が設けられている。
【0019】
閉扉検出スイッチ18は、前面板17のうち、前面開口13に対して扉体12の自由端
側(図1の右側)の上部付近に配置され、滅菌器本体11の前面板17から突出して取り
付けられている。尚、閉扉検出スイッチ18によってON・OFF操作される閉扉検出ス
イッチ本体(図示せず)は、閉扉検出スイッチ18に対して前面板17の裏面側に配置さ
れている。また、閉扉検出スイッチ18は、押し出しバネ(図示せず)によって常時は突
出方向に付勢されている。これにより、閉扉検出スイッチ18は、扉体12によって前面
開口13を閉成した状態では押し出しバネの付勢に抗して埋没方向に変位し、この変位に
よって閉扉検出スイッチ本体がON(閉扉状態を検知)する。本実施の形態においては、
閉扉状態で閉扉検出スイッチ18と対向するように扉体12の裏面側に出没可能に配置さ
れた作動スイッチ体21との協働により滅菌器本体11と扉体12との隙間変動に伴うス
イッチング圧力変動が管理されている。
【0020】
ロックシャフト保持部19は、閉扉検出スイッチ18と長孔20との間に位置して前面
板17に固定されており、上下方向に貫通するロックシャフト貫通孔19aと、ロックシ
ャフト貫通孔19aに先端が臨むようにロックシャフト保持部19に螺合する調整螺子2
2と、を備えている。
【0021】
長孔20は、扉体12に上下方向にスライド変位可能に設けられた取手23のスライド
変位操作に連動して上下方向に変位する楔状のスイッチ作動片24が前面板17の裏面側
に臨むように形成されている。従って、長孔20は、スイッチ作動片24の上下方向のス
ライド変位量以上の長さに設定されている。また、長孔20が形成された前面板17の裏
面側には、図2に示すように、インターロック機構25が配置されている。
【0022】
インターロック機構25は、図2乃至図4に示すように、滅菌器本体11の前面板17
の裏側に設けたソレノイド26と、アクチュエータ27と、アクチュエータ27を伸長方
向に付勢するコイルバネ28と、アクチュエータ27をコイルバネ28の付勢に抗して手
動で収縮させるインターロック解除プレート29と、アクチュエータ27の先端に対向配
置されてアクチュエータ27が伸長状態(非通電状態)にあるときにONされるインター
ロック検出スイッチ30と、スイッチ作動片24が下方にスライド変位しているときにO
Nされるロック検出スイッチ31と、を備えている。
【0023】
滅菌処理開始操作に際しては、先ず、操作パネル15のメインスイッチ(図示せず)を
ON操作するとスタンバイ状態となる。このスタンバイ状態のときには、ソレノイド26
は通電されて励磁状態となり、アクチュエータ27がコイルバネ28の付勢に抗してスイ
ッチ作動片24の移動通路(上下方向通路)から外れるように収縮し、非インターロック
位置となる。
【0024】
扉体12を開いて前面開口13からチャンバー14の内部に(例えば、ヒータカバー1
6の上面に)被処理物をセットして扉体12を閉じ、前面開口13を閉成(密閉)する。
このように、扉体12が閉じられると、閉扉検出スイッチ18がONして扉体12の閉成
状態を検出する。さらに、この密閉状態を保持するために、扉体12の取手23を下方へ
と押し下げ操作すると、スイッチ作動片24が同時に下方にスライド変位してロック検出
スイッチ31をONする。これにより、扉体12がロックされた状態にあることをロック
検出スイッチ31が検出する。
【0025】
このような動作によって達成される閉扉検出スイッチ18とロック検出スイッチ31の
アンド(乗算動作)により、高圧蒸気滅菌器10が運転開始可能状態となる。この状態に
おいて、操作パネル15により所期の設定を行なうことでスタンバイ状態での準備が終わ
る。また、このスタンバイ状態で、操作パネル15の操作(例えば、滅菌温度や滅菌時間
等の滅菌処理モード設定操作や滅菌処理開始操作など)をすると、ソレノイド26が非通
電状態となり、アクチュエータ27がコイルバネ28の付勢によってスイッチ作動片24
の移動通路上に進出(伸長)し、インターロック状態となる。
【0026】
すなわち、スイッチ作動片24の真上にアクチュエータ27が進出すると、取手23を
上方へスライド変位操作しようとしても、スイッチ作動片24の上方への変位が阻止され
ているため、扉体12のロックが維持されたインターロック状態を維持する。そして、こ
のインターロック状態では、アクチュエータ27の先端がインターロック検出スイッチ3
0をONしているため、例えば、操作パネル15に設けられたロック状態表示部(図示せ
ず)が発光(又は点灯)する。
【0027】
これにより、チャンバー14の内部に被処理物を収納し、扉体12の閉成並びにロック
された状態で操作パネル15の設定により高圧蒸気滅菌器10を運転すると、チャンバー
14の内部を高温高圧状態として被処理物の滅菌処理が行なわれる。
【0028】
設定された滅菌モード(滅菌処理)が開始すると、チャンバー14の内部に所定量の水
が注入され、その水がチャンバー14の内底部(ヒータカバー16の底面)に配置したヒ
ータ(図示せず)により加熱蒸発し、チャンバー14の内部を所定温度(設定温度)に維
持しつつ、被処理物の滅菌処理が施される。そして、予め設定された滅菌時間が経過して
滅菌処理が終了すると、チャンバー14の内部の排気・乾燥工程を経て、滅菌モードが終
了する。
【0029】
また、滅菌モードが終了すると、ソレノイド26が通電されて励磁状態となり、アクチ
ュエータ27がコイルバネ28の付勢に抗してスイッチ作動片24の移動通路(上下方向
通路)から退避するように収縮して非インターロック位置となる。
【0030】
このインターロック状態が解除された状態で、取手23を上方へ引き上げる操作によっ
て、扉体12の開放が可能となり、被処理物を取り出すことができる。
【0031】
ところで、本実施の形態においては、インターロック解除プレート29が設けられてい
る。このインターロック解除プレート29は、手動にてインターロック状態を解除するた
めのものである。
【0032】
例えば、滅菌処理実行中のインターロック状態において停電等が発生した場合、ソレノ
イド26は非通電状態のままとなる。したがって、アクチュエータ27はスイッチ作動片
24の上方へのスライド変位を阻止し、扉体12を開放させることはできなくなっている
ため、チャンバー14の内部高圧蒸気が外部へと漏れ出すことはなく安全である。
【0033】
しかしながら、緊急の場合等、インターロック状態を強制的に手動解除してチャンバー
14の内部から被処理物を取り出したい場合が想定される。
【0034】
インターロック解除プレート29は、例えば、図2に示すように、前面板17に形成さ
れた水平板部17aにインターロックブラケット32を介して軸33が設けられ、この軸
33を支点として回動可能とされている。また、インターロック解除プレート29は、一
端側にアクチュエータ27の先端を貫通させた状態で中途部と係合するアクチュエータ作
動片29aと、水平板部17a(滅菌器本体11の底面)から外部に突出する被操作片2
9bと、を備えている。なお、インターロック解除プレート29は、常時は付勢バネや重
量バランスによって図3(A)及び図4(A)に示すように、垂直状態に保たれている。
【0035】
一方、水平板部17aの底面には、被操作片29bと当接してインターロック解除プレ
ート29を強制的に回動させるためのインターロック解除工具34のガイド部材35が設
けられている。
【0036】
インターロック解除工具34は、例えば、薄肉の金属板から構成され、その最大幅をガ
イド部材35の内幅と略同じとされ、先端側を先細り(片側傾斜)としている。その先端
側に形成された片側傾斜面34aはガイド面となっており、インターロック解除工具34
をガイド部材35に先端側から挿入することによって、片側傾斜面34aに被操作片29
bの先端が当接する。そして、さらなるインターロック解除工具34の挿入により、片側
傾斜面34aに被操作片29bが案内され、インターロック解除プレート29が軸33を
支点として回動し、アクチュエータ作動片29aがコイルバネ28の付勢に抗してアクチ
ュエータ27を強制的に収縮させる。
【0037】
これにより、スイッチ作動片24の上方からアクチュエータ27が退避されてインター
ロックが解除され、取手23の上方へのスライド変位が許容され、扉体12の開放が可能
となる。
【0038】
なお、インターロック解除工具34を板状に形成したのは、例えば、何らかの他の部材
を不測にガイド部材35に挿入してしまわないようにするためである。その一方で、その
形状等は簡素であるため、例えば、インターロック解除工具34を紛失した場合には、代
替品によって容易に対応することができる。
【0039】
(扉体12の構成)
扉体12は、図5に示すように、前面板17に固定された支持部36に一端が支持され
る扉ヒンジ部37と、扉ヒンジ部37の略中央に支持されたチャンバー扉部38と、扉ヒ
ンジ部37の他端に支持された扉ロック操作部39と、扉ヒンジ部37に固定された外面
カバー40と、扉ヒンジ部37に固定された内面カバー41と、を備えている。
【0040】
扉ヒンジ部37は、支持部36に支持された扉ヒンジ軸42と、扉ヒンジ軸42の両端
に離間対向状態で固定されて扉ヒンジ軸42を回動支点とする上下一対のフレーム枠43
,44と、を備えている。
【0041】
フレーム枠43,44は、アルミ等の金属材料から構成されており、扉体12の厚さ及
び横幅に応じたものが採用されている。なお、外面カバー40及び内面カバー41は、フ
レーム枠43,44に直接固定しても良いし、ブラケット等(図示せず)を介して固定し
ても良い。
【0042】
チャンバー扉部38は、図6(A)に示すように、フレーム枠43,44の長手方向略
中央で両者間に跨る断面略コ字形状のチャンバーブラケット45と、チャンバーブラケッ
ト45の内側でフレーム枠43,44の間に介在された支持ブロック46と、チャンバー
ブラケット45とフレーム枠43,44と支持ブロック46とを貫通してチャンバーブラ
ケット45及び支持ブロック46を回動可能にフレーム枠43,44で支持するチャンバ
ー回動軸47と、支持ブロック46の内側に固定されたチャンバー蓋48と、チャンバー
ブラケット45と支持ブロック46との間に介在されて先端が支持ブロック46に螺合す
るチャンバー蓋調整螺子49と、を備えている。
【0043】
チャンバーブラケット45は、フレーム枠43,44の外側に位置していると共に、隙
間(遊び)を存してチャンバー回動軸47により支持されている。
【0044】
支持ブロック46は、アルミ等の金属ブロックから構成されており、フレーム枠43,
44の内側で回転が妨げられない程度に摺接(遊挿)している。また、支持ブロック46
には、チャンバー回動軸47が貫通する貫通孔46aと、この貫通孔46に連通してチャ
ンバー蓋調整螺子49と螺合する雌螺子孔46bと、を備えている。さらに、支持ブロッ
ク46は蓋固定螺子50を介してチャンバー蓋48を固定している。
【0045】
貫通孔46aは、図6(B)に示すように、チャンバー回動軸47の軸線方向と直行す
る滅菌器本体11の前後方向に長軸な断面小判型(断面略楕円)に形成されている。これ
により、支持ブロック46は、チャンバー蓋48と一体に滅菌器本体11の前後方向に変
位が可能となっている。また、貫通孔46aは、チャンバー蓋調整螺子49と雌螺子孔4
6bとの相対螺合位置を調整することにより、支持ブロック46をチャンバー蓋48と一
体に滅菌器本体11の前後方向の変位が位置決めされる。また、貫通孔46aは、扉体1
2を閉成状態としたときに、内面カバー41と前面板17との相対位置が平行な対面状態
に無い場合であっても、チャンバー蓋48と前面板17との相対位置は平行な対面状態と
なるように、若干のガタ、特に、水平方向へのチャンバー蓋48の振れを許容するように
形成されている。
【0046】
チャンバー蓋48は、前面開口13の開口径よりも大径な略円板状のチャンバー蓋本体
51と、チャンバー蓋51に交換可能に保持されて扉体12を閉成状態としたときに前面
開口13の外側を取り巻くようにチャンバー14の開口端縁14aに密着する環状パッキ
ン52と、を備えている。また、チャンバー蓋48は、チャンバー蓋調整螺子49と雌螺
子孔46bとの相対螺合位置を調整し、支持ブロック46と一体にチャンバー蓋48を滅
菌器本体11の前方に接近させるほど、環状パッキン52による前面板17への密着度(
密閉度)が高く確保される。したがって、環状パッキン52に劣化等が生じた場合等には
、チャンバー蓋調整螺子49と雌螺子孔46bとの相対螺合位置を調整して支持ブロック
46を前面板17に向けて変位させることで環状パッキン52の密着度(密閉度)を高く
確保することができる。
【0047】
チャンバー蓋調整螺子49は、ブラケットの内面側で軸周り方向に回転可能に支持され
ている。また、チャンバー蓋調整螺子49は、その頭部に六角レンチ等の工具によって支
持ブロック46との相対距離を調整する差込み孔49aが形成されている。なお、差込み
孔49aは、外面カバー40に形成された調整孔40aと対向しており、この調整孔40
aから工具を差し込むことで調整できるようになっている。この際、調整孔40aは、常
時はゴム製等のキャップ53によって塞がれている。
【0048】
扉ロック操作部39は、外面カバー40に形成されたスライド孔40bの範囲で取手2
3を上下方向に変位させることで扉体12をロック・アンロック状態とするものである。
なお、取手23は、ベース54と、ベース54に両端が固定されたアーチ状のアーム55
と、スライド孔40bを裏面側から覆うシャッタ56(図1(A)にのみ図示)と、を備
えている。また、扉ロック操作部39は、フレーム枠43,44に貫通状態で支持された
一対のガイドシャフト57,58と、図7に示すように、ガイドシャフト57,58にス
ライド可能に支持されて内側にフレーム枠43,44が位置する断面略コ字形状のロック
ブラケット59と、ロックブラケット59に固定されて扉体12を閉成状態としたときに
ロックシャフト貫通孔19aを貫通するロックシャフト60と、を備えている。
【0049】
フレーム枠43,44には、扉体12を閉成したときにロックシャフト貫通孔19aと
同軸なシャフト貫通孔43a,44aが形成されている。また、一対のガイドシャフト5
7,58は、ロックブラケット59の上下変位範囲以上の長さとされ、フレーム枠43,
44に対してEリング等(図示せず)によって抜け止め状態で支持されている。ロックブ
ラケット59は、シャッタ56を挟んでベース54を固定しており、取手23の操作に連
動して昇降する。また、ロックブラケット59には、スイッチ作動片24が固定されてい
る。
【0050】
このような構成においては、扉体12を閉成して取手23を引き下げ操作すると、ロッ
クブラケット59がガイドシャフト57,58に案内されて下方へと変位する。また、こ
のロックブラケット59の下方変位に連動して、ロックシャフト60とスイッチ作動片2
4とが下方に変位する。
【0051】
ロックシャフト60が下方に変位すると、シャフト貫通孔43a、ロックシャフト貫通
孔19a、シャフト貫通孔44aをこの順に貫通し、蓋体12を閉成状態でロックするこ
とができる。
【0052】
この際、ロックシャフト保持部19には、ロックシャフト貫通孔19aに先端が臨む(
突出する)調整螺子22が設けられている。これにより、この調整螺子22のロックシャ
フト貫通孔19aに対する突出量を調整することにより、ロックシャフト60とロックシ
ャフト貫通孔19aとの相対位置を調整することができる。したがって、この調整螺子2
2のロックシャフト貫通孔19aへの突出量が多いほど、ロックシャフト60が滅菌器本
体11に向けて押し付けられることとなり、前面板17に対する環状パッキン52の密着
度(密閉度)を高く確保することができる。
【0053】
また、本発明における環状パッキン52とチャンバー14の開口端縁14aとの密閉度
とは、チャンバー14の内部圧力(最高設定圧力)等の高圧蒸気滅菌器10の能力によっ
て異なるが、上述した密閉度の確保に際しては、例えば、環状パッキン52の初期(劣化
前)の密閉度を基準とする。従って、その数値的な限定は特に例示しないが、例えば、稼
働時間に応じて各螺子22,49の一方若しくは両方の締め付け方向の回転角度を目盛等
で数値的に示すことも可能である。
【0054】
なお、上記実施の形態では、チャンバー蓋48と前面開口13との密閉度を変更する変
更部としての調整螺子22によってロックシャフト60とロックシャフト貫通孔19aと
の相対位置を調整する構成を開示したが、例えば、ロックシャフト貫通孔19aを含むよ
うにロックシャフト保持部19を分割し、分割したロックシャフト保持部19を接近・離
反させてロックシャフト貫通孔19aの孔径を変更するように構成するなど、ロックシャ
フト60とロックシャフト貫通孔19aとの相対位置が調整できる構成であれば特に限定
されるものではない。また、ロックシャフト60の直径を部分的に変更するように構成し
ても良い。
【符号の説明】
【0055】
10…高圧蒸気滅菌器
11…滅菌器本体
12…扉体
13…前面開口
14…チャンバー
14a…開口端縁
15…操作パネル
16…載置棚
17…前面板
17a…水平板部
18…閉扉検出スイッチ
19…ロックシャフト保持部
19a…ロックシャフト貫通孔
20…長孔
21…作動スイッチ体
22…調整螺子
23…取手
24…スイッチ作動片
25…インターロック機構
26…ソレノイド
27…アクチュエータ
28…コイルバネ
29…インターロック解除プレート
29a…アクチュエータ作動片
29b…被操作片
30…インターロック検出スイッチ
31…ロック検出スイッチ
32…インターロックブラケット
33…軸
34…インターロック解除工具
34a…片側傾斜面
35…ガイド部材
36…支持部
37…扉ヒンジ部
38…チャンバー扉部
39…扉ロック操作部
40…外面カバー
40a…調整孔
40b…スライド孔
41…内面カバー
42…扉ヒンジ軸
43…フレーム枠(上)
43a…シャフト貫通孔
44…フレーム枠(下)
44a…シャフト貫通孔
45…チャンバーブラケット
46…支持ブロック
46a…貫通孔
46b…雌螺子孔
47…チャンバー回動軸
48…チャンバー蓋
49…チャンバー蓋調整螺子
49a…差込み孔
50…蓋固定螺子
51…チャンバー蓋
52…環状パッキン
53…キャップ
54…ベース
55…アーム
56…シャッタ
57…ガイドシャフト
58…ガイドシャフト
59…ロックブラケット
60…ロックシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌器本体の内部に配置したチャンバーと、前記チャンバーの開口を開閉する扉体と、
前記扉体に設けられた取手の手動変位操作に連動して変位するロックシャフトと、前記滅
菌器本体に設けられて前記ロックシャフトが貫通するロックシャフト貫通孔を備えたロッ
クシャフト保持部と、前記ロックシャフトと前記ロックシャフト貫通孔との相対位置を前
記扉体と前記開口との密閉度を基準として変更する変更部と、を備えていることを特徴と
する高圧蒸気滅菌器。
【請求項2】
前記扉体は前記開口の周囲を包囲する環状パッキンを有するチャンバー蓋を備え、前記
変更部は前記環状パッキンによる密閉度の経年劣化に応じて密閉度が高くなる方向に変更
することを特徴とする請求項1に記載の高圧蒸気滅菌器。
【請求項3】
前記変更部は、前記ロックシャフト保持部に保持されて前記ロックシャフト貫通孔に先
端が臨む調整螺子であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高圧蒸気滅菌器


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate