説明

高圧金属蒸気放電ランプおよび照明器具

【課題】発光管を固定支持するサポート部材にガラス製外管バルブの落下防止機能を有する弾性係止部材を設けたものにおいて、外管バルブやバルブに形成された被膜に傷をつけることを低減できた品質および生産性の向上がはかれる高圧金属蒸気放電ランプおよびこの放電ランプを装着した照明器具を提供することを目的とする。
【解決手段】膨出部11に連設してネック部13を有するガラス製外管バルブ1と、サポート部材3と、サポート部材3に固定支持されるとともに電気的に接続した発光管4と、サポート部材3に一端側が固定され中間部にネック部13に当接する屈曲部64および膨出部11に突出する屈曲部62が形成された一対の弾性係止部材6,6と、バルブ1端部に接合された口金7とを備えた高圧金属蒸気放電ランプL1およびこの放電ランプL1が装着された照明装置(器具)9である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、外管バルブ内にサポート部材を介し発光管を封装した高圧金属蒸気放電ランプおよびこの放電ランプを装着した照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧金属蒸気放電ランプは、外管バルブと、このバルブの端部に封止したステムと、このステムのサポート部材に固定支持した発光管と、上記外管バルブの封止部に接合した口金などで構成されている。
【0003】
上記発光管は石英ガラスあるいはアルミナなどのセラミックスからなる気密容器の両端部に対向して電極構体を配設固定するとともに内部に発光金属として水銀や金属ハロゲン化物などおよびアルゴンなどの希ガスからなる放電媒体を封入している。
【0004】
この放電ランプは、口金−ステムの導入線−サポート部材などを介し発光管に給電されると、発光管内の両電極間で発生する放電の作用により封入した水銀や金属ハロゲン化物などを発光させているが、点灯中の原子密度と温度が相当に高いため、その発光スペクトルは種々な波長範囲に及び高効率、高演色を呈する光源として各種用途に用いられている。
【0005】
この種高圧金属蒸気放電ランプは、ランプを照明装置のソケットへの装着時あるいは点灯中において、稀ではあるが外管バルブとステムとの封止部やこの封止部近傍のネック部などにクラックを生じることがある。
【0006】
この封止部近傍のクラックの発生は、封止作業時、ガラス製の外管バルブのネック部をバーナで加熱溶融して同種ガラスのステムと気密融着させているが、封止部や封止部近傍のガラスが均一な肉厚で縮径や膨出されず厚肉や薄肉の部分が生じたり、微小な傷やひび割れの進行、加工残存歪強度や部分的に歪差が大きくなったりあるいはバルブから導出した外部導入線を口金にろう材を用い接続するスポット的な加熱時に生じる歪などに起因している。
【0007】
すなわち、ねじ込み(E)形口金をソケットにねじ込みながら装着する際に外管バルブの封止部やその近傍のネック部に強いねじり応力が加わったり、ランプ点滅による熱的衝撃あるいは振動などの機械的衝撃などが薄肉部分、微小な傷やひび割れ部分あるいは歪量が大きい部分に作用した場合に、クラックや割れなど破損が生じることがあった。
【0008】
このため、多重管構造の上記高圧金属蒸気放電ランプなどで、外管バルブの傷や歪などに起因して封止部や封止部近傍の加工部分のネック部が破損分離した場合に備え外管バルブの脱落防止を図る必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−56081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
外管バルブの落下を防止するため、例えば一対のサポート部材にそれぞれの一端側が取り付け固定され、他端(中間部)側が外管バルブのネック部内径より大きく屈曲拡開した係止部を有する高圧放電ランプが知られている。(特許文献1)
この特許文献1の発明を適用することにより、外管バルブの封止部などにクラックを生じバルブがネック部から分離しても捕捉して落下を防ぐことができた。
【0011】
しかしながら、この特許文献1の発明では、発光管を固定支持したステムを外管バルブ内に挿入する際に、ネック部内径より差し渡し寸法が大きい一対の係止部が外管バルブのネック部を通過した後に弾性が解除され、その反動によってバルブの内面に形成してある光拡散膜や反射膜などの被膜を不所望に剥がしたり、甚だしい場合には内壁面に微小の傷を付けこの傷が熱的衝撃により伸長してクラックとなるなどの不具合があった。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、ガラス製外管バルブの落下防止機能を有する弾性係止部材を設けたものにおいて、外管バルブやバルブに形成された被膜に傷をつけることを低減できた品質および生産性の向上がはかれる高圧金属蒸気放電ランプおよびこの放電ランプを装着した照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本実施形態によれば、膨出部に連設してこの膨出部より小径のネック部を有するガラス製の外管バルブと、この外管バルブ内に少なくとも一部が並行配設されたサポート部材と、このサポート部材に外管バルブ軸に沿い固定支持されるとともに電気的に接続した発光管と、並行配設されたサポート部材の側部にそれぞれ一端側が固定されるとともに上記外管バルブと同軸方向に延在し他端側に向かう中間部に側方に突出した二つの屈曲部をそれぞれ有し、対向する一方の屈曲部同士の最大間隔がネック部の最小内径部より大きく膨出部内に突出し、他方の屈曲部がネック部内壁面に弾接するよう形成された一対の弾性係止部材と、上記外管バルブに接合されるとともに上記発光管と電気的に接続した口金とを具備していることを特徴とする高圧金属蒸気放電ランプおよびこの放電ランプが装着された照明装置(器具)である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外管バルブが破損分離しても、弾性係止部材によって外管バルブの落下を防止できるとともに弾性係止部材が外管バルブの膨出部に接触してバルブに形成された光拡散膜や反射膜などの被膜の損傷防止がはかれる品質および安全性の向上した高圧金属蒸気放電ランプおよび照明装置(器具)を提供することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施の形態の高圧金属蒸気放電ランプの概略を示す正面図である。
【図2】図1中の要部である弾性係止部材およびその近傍の概略を示す拡大正面図である。
【図3】外管バルブ挿入前の発光管や弾性係止部材が設けられたステムの要部の正面図である。
【図4】実施の形態の放電ランプに用いられる他の弾性係止部材およびその近傍の概略を示す拡大正面図である。
【図5】実施の形態に係る上記高圧金属蒸気放電ランプを装着した照明装置(器具)の実施の形態の概略を示す一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態を図面を参照して説明する。図1は高圧金属蒸気放電ランプとして、例えばメタルハライドランプの概略を示す正面図、図2は図1中の一方の弾性係止部材近傍の概略を示す拡大正面図、図3は外管バルブ挿入前の発光管や弾性係止部材が設けられたステムの要部の正面図である。
【0017】
図に示すメタルハライドランプL1は、ガラス製の外管バルブ1と、この外管バルブ1の一端部に封止されたステム2と、このステム2に設けられた一対のサポート線31,31からなるサポート部材3と、このサポート部材3に固定支持されるとともに給電がなされる発光管4と、上記サポート部材3の両サポート線31,31に一端側を接続固定した弾性係止部材6,6と、上記外管バルブ1の端部に接合された口金7とを主体として構成されている。
【0018】
これら各部分を詳述すると、外管バルブ1はホウケイ酸ガラスなどの透光性の硬質ガラスからなり、中央部に膨出部11を有するとともにこの膨出部11に連接して図示下部側の閉塞されたトップ部12および上部側のネック部13に小径部分が形成されたいわゆるBT形をなしている。このネック部13の端部にはステム2との封止部(図示しない。)を有し、この封止部を覆ってE(ねじ込み)形の口金7が取付けられている。また、外管バルブ1内はアルゴン(Ar)などの不活性ガスや窒素(N)などが封入されているか真空雰囲気としてある。
【0019】
上記ステム2は一端側が拡開したフレアステムからなり外管バルブ1と略同種材質のガラス管21が用いられ、少なくとも一対の導入導体22,23が封止られている。サポート部材3は直接導入導体22,23と接続されていてもよいが、この実施の形態では、モリブデン(Mo)などの線材や板状体を、ここでは線状のサポート線31を略長四角形の少なくとも一部にバルブ1軸に並行した部分を有する枠状に成形したものを上記ステム2のガラス管21に巻装したバンド部材32に締結などの手段で固定して支持させている。
【0020】
発光管4は、透光性の石英ガラスからなる直管状の発光管容器41の両端部に圧潰封止部42,43が形成され、この両圧潰封止部42,43内には、一端側にタングステン(W)やモリブデン(Mo)などからなる電極軸51を、他端部側に外部導入導体52を接続したモリブデン(Mo)などの金属箔からなる封止部材53が気密封止されている。
【0021】
上記各電極軸51,51の先端を直接電極5としてもよいが、この先端部にはタングステン(W)やトリウム(Th)入りタングステン(W)などからなる線材を巻回したコイル状の電極5,5が対峙して設けられている。また、上方側の圧潰封止部42内には上記金属箔53に離間してもう1枚の金属箔54が封止されていて始動用の補助電極5sが接続してある。なお、これら電極軸51、外部導入導体52、封止部材53およびコイル状の電極5で電極構体を構成している。
【0022】
また、発光管容器41内の放電空間には、放電媒体として所定量の発光用金属のハロゲン化物(と必要に応じて水銀(Hg))およびアルゴン(Ar)などの希ガスが封入してある。この金属ハロゲン化物としては、よう素(I)や臭素(Br)などのハロゲンと、ナトリウム(Na)、スカンジウム(Sc),セシウム(Cs)などの少なくとも一種の発光金属とが封入され、発光効率、演色性や色温度などの特性向上をはかっている。
【0023】
上記外管バルブ1内における発光管4の支持は、サポート線31で略長四角形の枠状に成形したサポート部材3の長手(管軸)方向に沿い発光管4を位置させて、帯状の金属板からなるバンド部材33,34で封止部42,43を挟み並行するサポート線31,31に溶接などの手段で接続することにより発光管4を固定している。
【0024】
なお、上記の構成で発光管4の支持が不安定の場合は、サポート部材3の側面に金属製の羽根状の弾性部材35,35を設け、(この弾性部材35,35はネック部13側のサポート部材3にも設けてもよい。)この弾性部材35,35を外管バルブ1のトップ部12内周面に弾性当接するようにするとともに、発光管4自体も主柱として作用させて、外管バルブ1の中心軸上にあるよう支持することができる。
【0025】
なお、図示しないが発光管4破損時に破片の飛散を防ぐため発光管4を囲繞して石英ガラスなどからなる上下端部が開口した円筒形状をなす透光性中空管を設けておくことは差し支えない。また、この場合は、発光管4と中空管とを円盤状やリング状の支持体を用いサポート部材3に固定支持させることができる。
【0026】
また、弾性係止部材6,6(左右略対称構造であるので一方のみを図示。)について図2を参照して詳述する。各弾性係止部材6はステンレスやモリブデン(Mo)などの板状体や線状体ここでは平板状体を帯状にカットしたものが用いられ、正面からみてサポート線31,31と同軸方向に延在してこのサポート線31,31に溶接などの手段で接続固定された平板状の固定部61と、この固定部61に続きばね作用をなす略く字状の山形に折り曲げられた第1(一方)の屈曲部62と、この屈曲部62に続く平板部63を経て形成された第1(一方)の屈曲部62より低い略く字状の山形に折り曲げられた第2(他方)の屈曲部64と、自由端をなす他端部65とから構成されている。なお、上記第1(一方)および第2(他方)の屈曲部62,64の頂部の外面は半円状の曲面が形成されている。また、中間の平板部63は必須のものではない。
【0027】
外管バルブ1内にステム2が挿入される前の弾性係止部材6の第1(一方)および第2(他方)の屈曲部62,64と外管1内径との寸法関係は図3に示すように、山形の第1(一方)の屈曲部62,62の頂部外面間の間隔をB、山形の第2(他方)の屈曲部64,64の頂部外面間の間隔をN、外管バルブ1のネック部13の内径をDとした場合、この三者はN>D<BあるいはD<N<BまたはD<B<N(但しいずれの場合も、外管バルブ1内に挿入された後は下記で、Bは膨出部11の最大内径未満)の関係にある。
【0028】
そして、外管バルブ1内にステム2が挿入された後の三者の関係はD=N<Bとなる。すなわち、弾性係止部材6,6は、一対の各サポート線31,31の外管バルブ1と対向する側部に固定され、第1(一方)の屈曲部62の頂部が外管バルブ1の膨出部11内に臨み、また、第2(他方)の屈曲部64の頂部はネック部13内壁面に弾性当接する。
【0029】
なお、上記において弾性係止部材6の平板部63および自由端をなす他端部65はサポート線31と当接していても図3のように離れていてもよく、バルブ1内に挿入された後は、山形の第2(他方)の屈曲部64の頂部外面がネック13内壁面と圧接するので平板部63および他端部65が反ってサポート線31を押圧する状態となる。また、他端部65は屈曲部64頂部やその近傍であってもあるいは図示のようにサポート線31に当接や近接していてもよい。
【0030】
また、図中8は始動補助回路部8などを示し、導入線22,23間に点灯管(グロースタータ)81、バイメタルスイッチ82、抵抗83を直列接続し、点灯管81とバイメタルスイッチ82との接続部から限流抵抗などを介し補助電極5sに接続している。また、84,85は給電部材である。
【0031】
そして、図1に示す高圧放電ランプは、BT形の外管バルブ1内に発光管4を収容した二重管構造のメタルハライドランプL1として、口金7側が上方にくる鉛直あるいは傾斜した状態のベースアップで点灯される。
【0032】
すなわち、このメタルハライドランプL1の点灯は、ランプL1をソケットに装着して電源から安定器などを有する点灯回路装置(図示しない。)を介し通電される。このランプL1は、始動時、口金7の端子部(シェルおよびアイレット)と電気的に接続した導入導体22,23−始動補助回路部8−サポート部材3−給電部材84,85−外部導入導体52−金属箔53,54などを介しコイル状電極5,5および補助電極5sに電圧が印加される。
【0033】
そして、放電はまず上方側の近接している一方の電極5と補助電極5sとの間で起り、ついで電極5,5間の放電へと移行しランプL1が発光する。電極5,5間で放電が始まれば、点灯管(グロースタータ)81やバイメタルスイッチ82などからなる始動回路部8が動作して回路を遮断したり、抵抗器により電圧が低下して電極5とこの電極5に近接する補助電極5sとの間の放電を停止させたりして、その後は電極5,5間での放電で安定した点灯を持続させることができる。
【0034】
そして、本実施形態のメタルハライドランプL1によれば、ガラス製の外管バルブ1で最も機械的強度が弱い封止部やネック部13にかけた部分において傷や歪などに起因して破損分離が生じてもバルブ1が床面などに落下するのを防ぐことができる。
【0035】
すなわち、外管バルブ1が封止部やネック部13にかけた部分において破損し封止部側から分離した場合であっても、ネック部13の内壁面には第2(他方)の山形の屈曲部64,64の頂部が弾性をもって当接してバルブ1を支持しているとともに、万一、落下をはじめてもバルブ1の膨出部11からネック部13にかかる徐々に縮径されている肩部分(E)が、ネック部13の内径より大きい間隔にある突出した第1(一方)の山形の屈曲部62の頂部から平板部63に向かう傾斜部分(F)に引っ掛って係止される、一つの弾性係止部材6で2か所において外管バルブ1を係止してさらに落下するのを阻止することができる。また、上記E部分からF部分までの短い間隔Hで、落下する外管バルブ5に加速度があまり加わらないうちに捕捉することができる。
【0036】
また、外管バルブ1の開口部からネック部13の肩部分Eまでの距離は、弾性係止部材6の屈曲部62の頂部と屈曲部64の頂部との間の寸法より長くなっている。
【0037】
このため、ばね性を有する弾性係止部材6が設けられたステム2をバルブ1内に挿入させるときは、固定部61から延びる両屈曲部62,64の頂部の外面側がネック部13の内壁面に当接して押圧され、擦りながら扁平状に変形して挿通されるとともに平板部63と自由端65はサポート線31,31に沿って移動する。
【0038】
そして、さらにステム2の挿入が進み第1(一方)の屈曲部62がネック部13内を通過し膨出部11内に入りネック部13内壁面との当接が解けると屈曲部64は元の広がりに復元してネック部13の内径Dより屈曲部62,62の頂部間の間隔Bが大きくなるが、後続する第2(他方)の屈曲部64はネック部13との間で圧縮され頂部はネック部13の内壁面に常時弾接した状態にある。
【0039】
すなわち、第1(一方)の屈曲部62は、膨出部11内に入ったときに固定部61と第2(他方)の屈曲部64とによって外管バルブ1側への動きが規制される。このため、固定部61と第2(他方)の屈曲部64とによって、第1(一方)の屈曲部62への押圧が開放されたときの反発を受け止め、弾性係止部材6の一部がその反動によって外管バルブ1を叩くことを抑制できる。よって、膨出部11内壁面やこの内壁面に塗布形成された光拡散膜や反射膜などの被膜に与える傷を抑制することができる。
【0040】
また、この挿入時、ネック部13内壁面に当接して擦りながら挿通される各
屈曲部62,64の頂部を曲面としておくことによって、抵抗が少なくネック部13内壁面に傷を付けることもなく、また、光拡散膜や反射膜などの被膜が形成されていてもこれら被膜に傷を付けたり、たとえ傷が付いても微少であってランプL1の外観品質を大きく損うこともない。
【0041】
したがって、ベースアップで点灯しているランプにおいて、封止部やネック部13などから分離した外管バルブ1が床面などに脱落するのを防ぐことができ、下方にある人や物品などに損傷を与えることがない、安全性の向上したメタルハライドランプL1を提供することができる。
【0042】
また、弾性係止部材6は上記図1、2に示す形状のほか、図4に示すような構成とすることもでき、図中、図2と同一部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0043】
図4に示す放電ランプL2に用いられる弾性係止部材6は、サポート部材3と同軸方向に延在してサポート線31に溶接などの手段で接続固定された平板状の固定部61と、この固定部61に続きばね作用をなす略半円状をした第1(一方)の山形の屈曲部62と、この屈曲部62に続き形成された第1(一方)の山形の屈曲部62より低い略半円状の山形に折り曲げられた第2(他方)の屈曲部64と、自由端をなす他端部65とから構成されている。また、中間の平板部63は必須のものではない。
【0044】
そして、この一対の弾性係止部材6,6もネック部13および膨出部11内における寸法関係が上記実施の形態と略同じで、上述の弾性係止部材6,6と同様の作用効果を呈する。
【0045】
また、上記各実施の形態において2つの屈曲部62,64の形状は同形のものとしたが両者が同一形状に限らず、例えば上記略く字状および略半円状の屈曲部62,64が各1か所に形成されているものであってもよい。
【0046】
さらに、上記図1ないし4に示す実施の形態において、弾性係止部材6,6のサポート部材3への取付けは、バルブ1の膨出部側に固定部61を設けたがこれに限らず、ネック部13に固定部61をもってきてもよい。
【0047】
なお、この固定部61はステム2を外管バルブ1の開口部から挿入することから、先に挿入される膨出部11側にしておいた方が作業性がよい。
【実施例】
【0048】
高圧金属蒸気放電ランプの具体的な実施例を下記に記述する。
【0049】
ランプは、定格ランプ電力が400Wのメタルハライドランプで、ランプの主構成は次の通りである。
【0050】
ランプは全長(外管バルブ+口金部)が約290mm、最大外径(膨出部)が約116mmのBT型をなす外管バルブ1と、この外管バルブ1の端部に封止したステム2に設けられたステンレス製のサポート線31で縦約220mm、横約40mmの長四角形の枠状に形成されたサポート部材3と、このサポート部材3に固定支持された両端内部に電極が設けられSc−NaーIからなるハロゲン化物と、水銀(Hg)およびアルゴン(Ar)ガスを封入した全長が約130mm、外径が約33mmの直管状をなす石英ガラス製の発光管4と、上記サポート部材3左右のサポート線31,31の側面に接続された板厚が約0.25mm、幅が約4mm、展開長さが約130mmのステンレス板材を用い、固定部61、中間部63および先端部(自由端)65の長さを各約10mm、第1(一方)の山形の屈曲部62(バルブ膨出部11内に位置する)の高さが約15mm、裾野幅が約51mm、第2(他方)の山形の屈曲部64(バルブネック部13内壁面と当接)の高さが約10mm、裾野幅が約34mmの略W字形状に折り曲げ成形した弾性係止部材6,6とで構成されている。
【0051】
上記外管バルブ1の質量は約160g(グラム)あるが、落下試験では落差H約20mmの距離で落下するバルブ1を捕捉することができた。
【0052】
図5は上述した高圧金属蒸気放電ランプL1を装着した照明装置(器具)9の実施の形態の概略を示す一部断面正面図である。
【0053】
この照明装置(器具)9は天井91などに埋め込み設置される埋込形の照明装置(器具)9で、例えば天井91側に取り付けられる装置(器具)本体92を有し、この装置(器具)本体92内に設けられたソケット93に上記高圧金属蒸気放電ランプL1の口金7が装着される。また、この装置(器具)本体92内にはランプL1の放射光を下方に反射させる反射鏡94が設けられている。
【0054】
なお、この反射鏡94の開口側を覆ってガラスなどからなるランプ保護用のカバー部材を設ける必要はないが、配光や光色調整用のレンズやフィルタなどの制光体95が配設してあってもよい。
【0055】
そして、上記高圧金属蒸気放電ランプL1は、ソケット93を介し装置(器具)本体92内あるいは本体92外に別置された安定器などを有する点灯回路装置(図示しない)と電気的に接続され、この点灯回路装置からの給電によりランプL1を点灯させることができる。
【0056】
したがって、上記高圧金属蒸気放電ランプL1を用いた実施の形態に係わる照明装置(器具)9は、外管バルブ1が封止部やネック部13から何らかの原因で分離してもその落下を防ぐことができる、安全性の向上した照明装置(器具)9を提供することができる。
【0057】
なお、上記実施の形態において、特に指定しない限り用語の定義および技術的意味は次による。
【0058】
高圧金属蒸気放電ランプの発光管を形成する気密容器材料としては、石英ガラスなどの酸化ケイ素(SiO)を主成分とする透光性高シリカガラスあるいは酸化アルミニウム(アルミナ−Al)などの透光性セラミックスを用いることができる。
【0059】
また、発光管容器の形状は、円筒形、長円形や球形などあるいはこれらの複合形状をなし、内部の対向する電極構体間に放電空間が形成されていればよい。
【0060】
発光管の端部に形成される封止部の形態は、ガラス製容器の場合には成形金型を用いた圧潰封止であっても、成形金型を用いないガラス管を焼萎め縮径してガラスを中心に集めその横断面をほぼ円形に形成した焼萎み封止であってもよく、封止部内には気密性封止部材としてモリブデン(Mo)などの金属箔や線を封止できる。また、セラミックス製容器の場合には、開口部に挿通させたニオブ(Nb)などの導入導体をセラミックス製のコンパウンドを用い気密封止することができる。
【0061】
発光管は容器の両端に封止部が設けられた両端封止形であっても、一端に封止部が設けられた片端封止形の発光管であってもよく、要するに容器の開口部に電極構体が気密閉塞された封止部が形成される発光管に適用できる。
【0062】
この発光管容器内に封入される放電媒体としては、水銀、発光金属のハロゲン化物や希ガスなどが用途や特性などに応じて適宜選択して用いられる。
【0063】
電極構体は容器との封止部内に位置する封止用部材として、ガラス製容器の場合はモリブデン(Mo)やタングステン(W)などからなる箔や線が、セラミックス製容器の場合はニオブ(Nb)やタングステン(W)などからなる線が用いられ、この封止用部材の一端側にはモリブデン(Mo)やタングステン(W)などからなる内部導入部材や電極軸を介し電極が、また、他端側にはモリブデン(Mo)やタングステン(W)などからなる外部導入部材が接続して構成されている。
【0064】
外管バルブを形成する材料としては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスやアルミノシリケートガラスなどの硬質ないしは半硬質ガラスあるいはソーダライムガラスなどの軟質ガラスを用いることができるが、品種や点灯時の温度などに対応して選ぶことができる。また、その形状はA形、BT形、G形、PS形やR形などあるいはこれらの複合形で、大径の膨出部に連接して小径のネック部が形成されている。また、ネック部の端部にフレアステムやボタンステムなどが焼落とし封止や衝合封止などにより封止して閉塞されている。
【0065】
また、外管バルブの内部は不活性ガスまたは窒素ガス雰囲気あるいは真空雰囲気としてある。すなわち、外管バルブ内に不活性ガスまたは窒素ガスを低圧封入するか真空雰囲気とすることにより、点灯時に高温となる発光管構成部材、サポート部材やステム構成部材の酸化などを防止するとともにランプの再始動時間を短縮したり、万一の外管バルブ破損時の破裂を防止できる。
【0066】
なお、本発明で示すバルブの膨出部はG形、R形やBT形などのバルブでは明確に視認できるが、T形などのバルブにおいては直管状をなす連続する最大径部がこれに相当し、この最大径部から縮径された肩部を経た端部に形成された部分がネック部になる。
【0067】
サポート部材はモリブデン(Mo)やステンレスなどの線材や板状体を略長四角形状の枠状や略コ字形状に成形あるいは2本以上のリード線などの導電体で形成して、発光管の両端を固定支持するとともに給電部材および弾性係止部材の支持体としての作用をなす。このサポート部材には発光管のほかシュラウド(中管)、始動補助回路部材や緩衝部材などが設けられていてもよい。
【0068】
また、弾性係止部材はたとえばJIS G4313に記載のステンレスやモリブデン(Mo)などの材料からなる線材や板状体を用い側面からみて中間部に略く字形状や略半円形状などの突出してばね性をもたせた山形の屈曲部が2か所に形成されるよう折り曲げ成形されたもので、サポート部材を構成するサポート線などに一端側が溶接などの手段で接続固定してある。また、山形の頂部表面はバルブ内壁面との滑りが良くなるよう曲面としておくことが好ましい。
【0069】
この弾性係止部材の固定部は、バルブのトップ側であってもネック部側であってもよい。また、この固定部や中間部はサポート線などの外周面に添うあるいは案内されるよう(必ずしも全面が当接していなくても、たとえば線接触状態であってもよい。)円筒状や角筒状などの一部を形成する弯曲部や折曲部などの溝状としておくことによりサポート線との接続作業を容易に、かつ、強固に行わせることができる。
【0070】
なお、上記弾性係止部材は、分離落下するバルブを確実に捕捉するには高弾性のものがよいが、マウントをバルブ内に挿入する際にはバルブ内壁面や被膜に傷を付けず作業性がよい弱弾性のものが好ましい。この弾性の強弱は相反する作用効果を呈するが、その選択はバルブの重量、内面形状や被膜の有無など、弾性係止部材の材質、厚さなどの寸法や形状などを考慮して適宜決めればよい。
【0071】
また、封止部を覆うよう設けられた口金は、ねじ込み(E)形などを用いることができ、接着剤を介し接合あるいは封止部にモールド成形された溝や凹部に螺合や係合されるメカニカル的に接合するものでもよい。
【0072】
また、本発明でいう照明装置は一般的にいう照明器具を含むもので、照明装置(器具)は反射鏡、レンズや保護カバーなどが設けられていてもよく、屋内外の一般照明用、店舗照明用、工場照明用、道路照明用やスポーツ施設照明用などに用いることができる。
【0073】
なお、本発明は上記実施の形態に限るものではない。例えば高圧金属蒸気放電ランプは、メタルハライドランプに限らず高圧ナトリウムランプや水銀ランプなど発光管をガラス製の外管バルブ内に封装した二重管などの多重管構造の放電ランプに適用できる。
【0074】
また、弾性係止部材はバルブのネック部および膨出部に対応した複数の屈曲部が形成されていれば図2や図3の実施の形態に示す構造に限らない。
【0075】
さらに、照明装置(器具)は、上記図4の実施の形態に示す構造や用途のものに限らず、各種の用途や用途に応じた構造を有するものに適用でき、放電ランプの点灯方向も鉛直なベースアップに限らず、傾斜状態や水平方向で点灯する装置(器具)にももちろん適用できる。
【符号の説明】
【0076】
L1,L2;高圧金属蒸気放電ランプ(メタルハライドランプ)、
1;外管バルブ、 11;膨出部、 13;ネック部、 2;ステム、
3;サポート部材、 31;サポート線、 4;発光管、
5;導入導体、 6;弾性係止部材、 62,64;屈曲部、
7;口金、 9;照明装置(器具)、 92;装置(器具)本体、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨出部に連設してこの膨出部より小径のネック部を有するガラス製の外管バルブと;
この外管バルブ内に少なくとも一部が並行配設されたサポート部材と;
このサポート部材に外管バルブ軸に沿い固定支持されるとともに電気的に接続した発光管と;
並行配設されたサポート部材の側部にそれぞれ一端側が固定されるとともに上記外管バルブと同軸方向に延在し他端側に向かう中間部に側方に突出した二つの屈曲部をそれぞれ有し、対向する一方の屈曲部同士の最大間隔がネック部の最小内径部より大きく膨出部内に突出し、他方の屈曲部がネック部内壁面に弾接するよう形成された一対の弾性係止部材と;
上記外管バルブに接合されるとともに上記発光管と電気的に接続した口金と;
を具備していることを特徴とする高圧金属蒸気放電ランプ。
【請求項2】
外管バルブのネック部内径をD、弾性係止部材のネック部に位置する屈曲部の頂部外面間の間隔をN、膨出部内に位置する屈曲部の頂部外面間の間隔をBとしたとき、外管バルブとこの外管バルブ外における弾性係止部材との寸法関係が、 N>D<B(但しBは膨出部の最大内径未満) であることを特徴とする請求項1に記載の高圧金属蒸気放電ランプ。
【請求項3】
外管バルブのネック部内径をD、弾性係止部材のネック部に位置する屈曲部の頂部外面間の間隔をN、膨出部内に位置する屈曲部の頂部外面間の間隔をBとしたとき、外管バルブと弾性係止部材との寸法関係が、 D=N<B(但しBは膨出部の最大内径未満) であることを特徴とする請求項1に記載の高圧金属蒸気放電ランプ。
【請求項4】
器具本体と;
この器具本体内に配設された上記請求項1ないし3のいずれか一に記載の高圧金属蒸気放電ランプと;
この高圧金属蒸気放電ランプに接続した点灯回路装置と;
を具備していることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−249292(P2011−249292A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124436(P2010−124436)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】