高圧開閉器
【課題】安価、小型、高性能な高圧開閉器を提供する。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器において、一端を固定電極と接離する可動接点とし可動接点ではない端部を入力部とした可動電極と、操作機構からの力を可動電極に伝達して可動電極を動かす出力レバーとをピンで連結し、可動電極がピンで出力レバーと連結される入力部を、ピンがスライド移動が可能なように溝形状としたことを特徴とする高圧開閉器を提案するものである。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器において、一端を固定電極と接離する可動接点とし可動接点ではない端部を入力部とした可動電極と、操作機構からの力を可動電極に伝達して可動電極を動かす出力レバーとをピンで連結し、可動電極がピンで出力レバーと連結される入力部を、ピンがスライド移動が可能なように溝形状としたことを特徴とする高圧開閉器を提案するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器の改良に関するものであり、性能の向上や信頼性の向上を図ると共に、小型化及び部品点数を減らすことによる材料費や組立工数の低減を図った高圧開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧開閉器には、日本工業規格C4605に記載する耐電圧性能、電流遮断性能、短絡電流投入性能、短時間耐電流性能が求められ、これらの求められた性能の高低は、可動電極と固定電極の間隔の大きさや開閉駆動力の大きさ、遮断速度の速さに大きく関連することが知られている。これらの関連性を具体的に以下に説明する。
【0003】
高圧開閉器は、切状態における可動電極と固定電極の間の耐電圧性能を確保するために可動電極と固定電極の間隔をある一定以上に必要とし、前記間隔が大きいほど耐電圧能力が高い。
【0004】
高圧開閉器は、可動電極が固定電極から離れる開路方向に動作して電流を遮断するために可動電極と固定電極の間隔をある一定以上に必要とし、前記間隔が大きいほど電流遮断能力が高い。また、前記間隔を拡げる時間が短いほど、すなわち遮断速度が速いほど電流遮断能力が高い。
【0005】
可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器において、可動電極の動作負荷は、入位置近傍における可動電極と固定電極との接触摩擦負荷が最も大きい。このため高圧開閉器は、入位置近傍における開路閉路両方向の駆動力が大きいことが求められる。
【0006】
可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器において、可動電極の動作負荷は、回動途中及び切位置近傍における可動電極の回動中心部分の接触摩擦負荷のみであり、入位置近傍と比較して小さい。このため高圧開閉器は、開路途中の可動電極の回動速度、すなわち遮断速度が速くなり、電流遮断能力が高まる。よって、開路途中の動作負荷が小さいことは好都合である。
【0007】
ところが、動作負荷が小さいために遮断時における切位置での可動電極の開路方向への慣性は非常に大きく、可動電極が所定の切位置を大きく超えて回動しないようにストッパを設けるのが通例である。しかしながらストッパを設けると、切位置近傍における可動電極の開路方向への駆動力が小さい場合に、可動電極が閉路方向へバウンドして可動電極と固定電極の間隔が小さくなってしまい、電流遮断性能や、可動電極と固定電極の間の耐電圧性能に悪影響を与える。このため高圧開閉器は、切位置近傍における開路方向の駆動力が大きいことが求められる。
【0008】
可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器において、短絡電流が流れると電磁力により可動電極に入状態から切状態へ開こうとする反発力が発生する。この反発力は、投入動作及び入位置保持を阻害したりする。このため高圧開閉器は、入位置近傍における閉路方向の駆動力が大きいことが求められる。
【0009】
前述のように、求められる性能を達成する為に、高圧開閉器の可動電極と固定電極の間隔距離及び入位置と切位置における駆動力を確保することが必要である。
【0010】
以下に、可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する従来の高圧開閉器の例を、図6を用いて説明する。図6は、従来例を示す高圧開閉器の断面図であり、(a)は入位置近傍、(b)は開路途中、(c)は切位置近傍を示す。高圧開閉器の筐体となるケース601の対向する側面601a、601bにそれぞれ導体貫通用の穴を設け、前記導体貫通用の穴に貫通して樹脂又は碍子からなるブッシング602とブッシング603を装着し、ブッシング602に固定電極604を設け、ブッシング603にヒンジ電極606を設けている。この固定電極604とヒンジ電極606を電気的に接離することにより、高圧開閉器が電路を入切する。
【0011】
ヒンジ電極606には可動電極605を回動可能なように軸609を支点としてを設け、ヒンジ電極606と可動電極605が電気通電的に接続するように、ヒンジ電極606と可動電極605を圧接する接触バネ610を設けている。固定電極604には固定電極604を挟み込む複数片の対となるように固定接点607を設け、高圧開閉器が入状態のときに固定接点607は可動電極605の接点部分605aを挟み込むように位置し、固定電極604と固定接点607と可動電極605が電気通電的に接続されるように、固定接点607を内側に付勢する接触バネ615を設けている。
【0012】
操作機構20からの駆動力を伝達する出力レバー612と、前出の可動電極605とを、リンク608と、ピン613a、613bを回動可能に用いて、連結する。この連結により、出力レバー612の回動角度に応じてリンク608が移動し、リンク608の移動量に応じて可動電極605が回動することで、可動電極605は固定電極604に設けた固定接点607に接離し、高圧開閉器は電路を入切する。
【特許文献1】特開2000−228134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の高圧開閉器においては、性能の達成や信頼性の向上を図るために切位置における可動電極と固定電極の間隔を大きくする方法として、可動電極の回動角度を大きくすること及び可動電極を長くすることがなされてきた。また、入位置近傍及び切位置近傍における可動電極に作用する駆動力を大きくするために、操作機構を大型にして駆動力を増やしていた。
【0014】
ところが、高圧開閉器に求められる市場の要求としては、高性能化や信頼性の向上だけではなく、小型化や低価格化が強い。
【0015】
ここで高圧開閉器を小型化するにあたって、従来構造の高圧開閉器は可動電極と固定電極の間隔を大きくするために可動電極を長くしているので大型化しているという課題だけではなく、可動電極を長くすると可動電極の回動中心と固定電極との距離が長くなることにより、入位置における固定電極との接触摩擦負荷によって生じる可動電極の回転トルクが大きくなり、そのために操作機構が大型化するという課題があった。
【0016】
また、可動電極と固定電極の間隔を大きくするために可動電極の回動角度を大きくすると、可動電極とリンクの成す角度αが小さくなって駆動力伝達効率が低下してしまうという課題があった。
【0017】
ここで、駆動力伝達効率が低下してしまうことが課題となる理由を、図7を用いて説明する。(a)は入位置近傍、(b)は開路途中、(c)は切位置近傍を示す。リンク608が可動電極605を動かす駆動力のsinα分力が可動電極605を回動させる力に相当するためである。すなわち、出力レバー612から出力される駆動力をFとすると、駆動力Fがリンク608を介して可動電極605に伝達されるとき、駆動力Fは可動電極605とリンク608の成す角度αにより分解する。可動電極605を回動させる力をWとすると、WはW=Fsinαとなり、α=30度のときにW=0.5Fである。同様にα=45度のときにW=約0.7F、60度のときにW=約0.87Fである。よって駆動力伝達効率の低下による開閉性能の低下を防ぐために操作機構が大型化するという課題が発生する。
【0018】
このように、従来の高圧開閉器を小型化するためには、要求性能を達成するために必要な駆動力が大きく必要となって操作機構が大型化するという課題が発生し、小型化に相反するために小型化の実現が困難であった。
【0019】
本発明は、上記課題を解消するもので、可動電極を回動させる際に必要な駆動力伝達配分を、駆動力が大きく必要なときに大きくなるように適する配分にし、可動電極の回動角度を大きくすることによって切位置における可動電極と固定電極の間隔を大きくすることで性能の向上や信頼性の向上を図ると共に、部品点数を減らすことにより小型化及び材料費の低減を図った高圧開閉器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。第1の発明にあっては、可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器において、一端を固定電極と接離する可動接点とし可動接点ではない端部を入力部とした可動電極と、操作機構からの力を可動電極に伝達して可動電極を動かす出力レバーとをピンで連結し、可動電極がピンで出力レバーと連結される入力部を、ピンがスライド移動が可能なように溝形状としたことを特徴とする高圧開閉器である。
【0021】
第2の発明にあっては、可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器において、一端を固定電極と接離する可動接点とした可動電極に設けられた入力レバーと、操作機構からの力を入力レバーに伝達して可動電極を動かす出力レバーをピンで連結し、入力レバーがピンで出力レバーと連結される入力部を、ピンがスライド移動が可能なように溝形状としたことを特徴とする高圧開閉器である。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。このように構成すると、可動電極の回動角度と出力レバーの回動角度を90度程度にすることが可能である。また、可動電極と出力レバーの成す角θを入位置及び切位置において90度程度にすることが可能である。そして、可動電極の回動角度と出力レバーの回動角度を90度程度にすること、並びに、可動電極と出力レバーの成す角θを入位置及び切位置において90度程度にすることを、同時になし得る。
【0023】
図2を用いて詳しく説明すると、可動電極5の回動角度と出力レバー12の回動角度は、90度程度である。可動電極5と出力レバー12の成す角θは、入位置及び切位置において90度程度である。出力レバー12の回動する力をW1とした場合に、摩擦抵抗を無視して計算すると、可動電極5を回動させる力Wは、てこの原理によりW=W1/cosθなので、入位置近傍及び切位置近傍における駆動力伝達効率が高いため、可動電極5を回動する力WはW1に対して非常に大きくなる。具体的には、可動電極5を回動させる力WはW=W1/cosθなので、例えばθ=80度のときにW=約W1/0.17であり、θ=70度のときにW=約W1/0.34である。ここで、可動電極5と出力レバー12の成す角θを90度程度としたのは、θ=90度のときには、摩擦抵抗を無視して計算するとWが無限大になるので、駆動力の大きさを表現するのに好ましくないからである。
【0024】
一方で同様の理由から、開閉途中における可動電極5を回動する力WはW=W1/cosθなので、駆動力伝達効率が低くなるため、可動電極5を回動する力WはW1に対して大きくならない。具体的には、摩擦抵抗を無視した場合、可動電極5を回動させる力WはW=W1/cosθなので、例えばθ=175度のときにW=約W1/0.996となる。しかし、開閉途中における駆動力の効率は悪いが、開路途中は接触摩擦負荷が小さくて、大きな駆動力を必要としないのでので問題にはならない。
【0025】
また、可動電極の回動角度が90度程度であることから、可動電極5が短くても可動電極5と固定電極4との間隔が大きくできる。
【0026】
以上のように、入位置近傍及び切位置近傍における駆動力伝達効率が高いので、入位置近傍及び切位置近傍における可動電極を回動する力を大きくできる。また、可動電極と固定電極との間隔を大きくできる。よって、耐電圧性能や電流遮断性能、短時間電流性能、投入電流性能が高く、信頼性が高い開閉器を小型にできる。また、可動電極は出力レバーにより直接駆動されるので、従来の高圧開閉器のように、連結用のリンクを必要としない。従って、部品点数の削減により材料費を低減し、かつ組み立ての手間を削減し製造を容易にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施例を図1から図5を用いて説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明の請求項1に記載の特徴を有する一実施の形態例を示す高圧開閉器の断面図であり、(a)は入位置近傍、(b)は開路途中、(c)は切位置近傍を示す。高圧開閉器の筐体となるケース1の対向する側面1a、1bにそれぞれ導体貫通用の穴を設け、前記導体貫通用の穴に貫通して樹脂又は碍子からなるブッシング2とブッシング3を装着し、ブッシング2に固定電極4を設け、ブッシング3にヒンジ電極6を設けている。固定電極4とヒンジ電極6を電気的に接離することにより、高圧開閉器が電路を入切する。
【0029】
ヒンジ電極6には可動電極5が回動可能なように軸9を支点としてを設け、ヒンジ電極6と可動電極5が電気通電的に接続されるように、ヒンジ電極6と可動電極5を圧接する接触バネ10を設けている。固定電極4には固定電極4を挟み込む複数片の対となるように固定接点7を設け、高圧開閉器が入状態のときに固定接点7は可動電極5の接点部分5aを挟み込むように位置し、固定電極4と固定接点7と可動電極5を電気通電的に接続するように固定接点7を内側に付勢する接触バネ15を設けている。
【0030】
操作機構20の出力軸11に出力レバー12を設け、出力レバー12の接続部12aと、可動電極5の溝部5cとをピン13を用いて連結する。ピン13は溝部5cをスライドすることが可能である。
【0031】
本発明の高圧開閉器は、操作機構20の操作により出力軸11に設けた出力レバー12が回動し、接続部12aに設けたピン13が溝部5cをスライドすることにより、可動電極5がヒンジ電極6に設けた軸9を支点として回動する。そして可動電極5が回動することで可動電極5と固定電極4が接離し、電路を入切する。
【実施例2】
【0032】
図3は、本発明の請求項2に記載の特徴を有する一実施の形態例を示す高圧開閉器の断面図であり、(a)は入位置近傍、(b)は開路途中、(c)は切位置近傍を示す。高圧開閉器の筐体となるケース1の対向する側面1a、1bにそれぞれ導体貫通用の穴を設け、前記導体貫通用の穴に貫通して樹脂又は碍子からなるブッシング2とブッシング3を装着し、ブッシング2に固定電極4を設け、ブッシング3にヒンジ電極6を設けている。固定電極4とヒンジ電極6を電気的に接離することにより、高圧開閉器が電路を入切する。
【0033】
ヒンジ電極6には可動電極5が回動可能なように軸9を支点としてを設け、ヒンジ電極6と可動電極5が電気通電的に接続されるように、ヒンジ電極6と可動電極5を圧接する接触バネ10を設けている。固定電極4には固定電極4を挟み込む複数片の対となっている固定接点7を設け、高圧開閉器が入状態のときに固定接点7は可動電極5の接点部分5aを挟み込むように位置し、固定電極4と固定接点7と可動電極5を電気通電的に接続するように固定接点7を内側に付勢する接触バネ15を設けている。
【0034】
操作機構20の出力軸11に出力レバー12を設け、可動電極5に入力レバー16を設け、出力レバー12の接続部12aと入力レバー16の溝部16cとをピン13を用いて連結する。ピン13は溝部16cをスライドすることが可能である。
【0035】
本発明の高圧開閉器は、操作機構20の操作により出力軸11に設けた出力レバー12が回動し、接続部12aに設けたピン13が溝部16cをスライドすることにより、入力レバー16とともに可動電極5がヒンジ電極6に設けた軸9を支点として回動する。そして可動電極5が回動することで可動電極5と固定電極4が接離し、電路を入切する。
【0036】
ここで可動電極5に入力レバー16を設ける作用を述べると、可動電極5に設けた入力レバー16と出力レバー12の成す角θを90度程度にすれば、特に可動電極5と出力レバー12の成す角θを90度程度にする必要はなく、可動電極5の位置や向きの自由度が高くなる。
【実施例3】
【0037】
図4は、本発明の請求項4に記載の特徴を有する一実施の形態例を示す高圧開閉器の断面図であり、(a)は入位置近傍、(b)は開路途中、(c)は切位置近傍を示す。高圧開閉器の筐体となるケース1の対向する側面1a、1bにそれぞれ導体貫通用の穴を設け、前記導体貫通用の穴に貫通して樹脂又は碍子からなるブッシング2とブッシング3を装着し、ブッシング2に固定電極4を設け、ブッシング3にヒンジ電極6を設けている。固定電極4とヒンジ電極6を電気的に接離することにより、高圧開閉器が電路を入切する。
【0038】
ヒンジ電極6には可動電極5が回動可能なように軸9を支点としてを設け、ヒンジ電極6と可動電極5が電気通電的に接続されるように、ヒンジ電極6と可動電極5を圧接する接触バネ10を設けている。固定電極4には固定電極4を挟み込む複数片の対となっている固定接点7を設け、高圧開閉器が入状態のときに固定接点7は可動電極5の接点部分5aを挟み込むように位置し、固定電極4と固定接点7と可動電極5を電気通電的に接続するように固定接点7を内側に付勢する接触バネ15を設けている。
【0039】
操作機構20の出力軸11に出力レバー12を設け、可動電極5に入力レバー16を設け、出力レバー12の接続部12aと入力レバー16の略円弧状溝部16dとをピン13を用いて連結する。ピン13は溝部16dをスライドすることが可能である。
【0040】
本発明の高圧開閉器は、操作機構20の操作により出力軸11に設けた出力レバー12が回動し、接続部12aに設けたピン13が略円弧状溝部16dをスライドすることにより、入力レバー16とともに可動電極5がヒンジ電極6に設けた軸9を支点として回動する。そして可動電極5が回動することで可動電極5と固定電極4が接離し、電路を入切する。
【0041】
ここで溝部を略円弧状にする作用を述べると、可動電極5に設けた入力レバー16と出力レバー12の成す角θを90度程度にすることができない場合で、特に入位置近傍又は切位置近傍のどちらかにおける駆動力伝達効率を高めたいときに効果がある。
【0042】
入位置近傍における駆動力伝達効率を高めたいときを例にして詳しく説明する。図5(a)に示したように、出力レバー12の回動する力W1が働くと、てこの原理により、入力レバー16に設けた略円弧状溝部16dのピン13との接点における接線Aに対する垂線B方向に、出力レバー12の駆動力Fが働く。駆動力Fは、入力レバー16と駆動力Fの成す角をβとすると、F=W1/sin(θ−β)である。駆動力Fが入力レバー16に伝達されるとき、駆動力Fは入力レバー16と駆動力Fの成す角度βにより分解する。駆動力Fはβにより分解するので、入力レバー16が回動する力WはW=Fsinβとなる。よって、W=W1sinβ/sin(θ−β)となる。ここで、略円弧状溝部16dの形状を適切にすることにより、駆動力Fの方向は出力レバー12の方向とほぼ一致することができる。すなわちβ≒θとすることができる。β≒θのとき、入力レバー16と出力レバー12の成す角θを90度程度にすることができなくても、駆動力Fおよび回動する力Wは、出力レバー12の回動する力W1に対して非常に大きくすることができるので、実施例1に示した可動電極を回動する力Wと同等に得ることが可能となる。
【0043】
本実施例1から3の高圧開閉器においては、ケース1にブッシング2及び3を装着しているが、ケース1を樹脂材料とすることによりブッシング2及び3と一体的に成形してもよく、同様に、出力軸11を出力レバー12と一体的に成型してもよい。
【0044】
本実施例1から3の高圧開閉器においては、可動電極を1枚として複数片の対からなる固定接点を使用しているが、可動電極を2枚として固定電極を挟み込む構造とし、固定接点を用いない構造としてもよい。
【0045】
本実施例1から3の高圧開閉器においては、ブッシング2及び3の位置をケース1の対向する側面1a及び1bに装着するとしているが、ケース1の同一面に装着するとしても同様の効果を得ることが可能である。
【0046】
本実施例1から2の高圧開閉器においては、溝を直線状にして、可動電極5の長手方向に対して平行に配しているが、長手方向に対して斜めに設けてもよい。
【0047】
本実施例3の高圧開閉器においては、溝を略円弧状にして可動電極5の長手方向に配しているが、駆動力が必要な位置に応じて略波状や略クランク状に設けてもよい。
【0048】
本実施例1から2の高圧開閉器においては、可動電極5の回動角度と出力レバー12の回動角度は約90度で、可動電極5と出力レバー12の成す角θは入位置及び切位置において約90度としているが、発明を実施するための最良の形態が約90度であるとしているのであって、(発明の効果)(0023)で示したように、摩擦抵抗を無視して計算すると、可動電極5を回動させる力Wは、出力レバー12の回動する力W1を下回ることがなく非常に大きいので、約90度である必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1(a)】請求項1の特徴を持つ実施例を示す「入」状態高圧開閉器の断面図である。
【図1(b)】請求項1の特徴を持つ実施例を示す「遮断中」高圧開閉器の断面図である。
【図1(c)】請求項1の特徴を持つ実施例を示す「切」状態高圧開閉器の断面図である。
【図2(a)】請求項1の実施例の「入」状態可動電極5及び出力レバー12の説明図である。
【図2(b)】請求項1の実施例の「遮断中」可動電極5及び出力レバー12の説明図である。
【図2(c)】請求項1の実施例の「切」状態可動電極5及び出力レバー12の説明図である。
【図3(a)】請求項2の特徴を持つ実施例を示す「入」状態高圧開閉器の断面図である。
【図3(b)】請求項2の特徴を持つ実施例を示す「遮断中」高圧開閉器の断面図である。
【図3(c)】請求項2の特徴を持つ実施例を示す「切」状態高圧開閉器の断面図である。
【図4(a)】請求項4の特徴を持つ実施例を示す「入」状態高圧開閉器の断面図である。
【図4(b)】請求項4の特徴を持つ実施例を示す「遮断中」高圧開閉器の断面図である。
【図4(c)】請求項4の特徴を持つ実施例を示す「切」状態高圧開閉器の断面図である。
【図5(a)】請求項4の実施例の「入」状態可動電極5と入力レバー16と出力レバー12の説明図である。
【図5(b)】請求項4の実施例の「遮断中」可動電極5と入力レバー16と出力レバー12の説明図である。
【図5(c)】請求項4の実施例の「切」状態可動電極5と入力レバー16と出力レバー12の説明図である。
【図6(a)】従来の「入」状態高圧開閉器の断面図である。
【図6(b)】従来の「遮断中」高圧開閉器の断面図である。
【図6(c)】従来の「切」状態高圧開閉器の断面図である。
【図7(a)】従来の「入」状態高圧開閉器の可動電極605とリンク608と出力レバー612の説明図である。
【図7(b)】従来の「遮断中」高圧開閉器の可動電極605とリンク608と出力レバー612の説明図である。
【図7(c)】従来の「切」状態高圧開閉器の可動電極605とリンク608と出力レバー612の説明図である。
【図8(a)】請求項5の特徴を持つ実施例を示す「入」状態高圧開閉器の断面図である。
【図8(b)】請求項5の特徴を持つ実施例を示す「遮断中」高圧開閉器の断面図である。
【図8(c)】請求項5の特徴を持つ実施例を示す「切」状態高圧開閉器の断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ケース
2 ブッシング
3 ブッシング
4 固定電極
5 可動電極
6 ヒンジ電極
7 固定接点
9 軸
10 接触バネ
11 出力軸
12 出力レバー
13 ピン
14 ストッパ
15 接触バネ
16 入力レバー
17 滑り対偶
608 リンク
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器の改良に関するものであり、性能の向上や信頼性の向上を図ると共に、小型化及び部品点数を減らすことによる材料費や組立工数の低減を図った高圧開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧開閉器には、日本工業規格C4605に記載する耐電圧性能、電流遮断性能、短絡電流投入性能、短時間耐電流性能が求められ、これらの求められた性能の高低は、可動電極と固定電極の間隔の大きさや開閉駆動力の大きさ、遮断速度の速さに大きく関連することが知られている。これらの関連性を具体的に以下に説明する。
【0003】
高圧開閉器は、切状態における可動電極と固定電極の間の耐電圧性能を確保するために可動電極と固定電極の間隔をある一定以上に必要とし、前記間隔が大きいほど耐電圧能力が高い。
【0004】
高圧開閉器は、可動電極が固定電極から離れる開路方向に動作して電流を遮断するために可動電極と固定電極の間隔をある一定以上に必要とし、前記間隔が大きいほど電流遮断能力が高い。また、前記間隔を拡げる時間が短いほど、すなわち遮断速度が速いほど電流遮断能力が高い。
【0005】
可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器において、可動電極の動作負荷は、入位置近傍における可動電極と固定電極との接触摩擦負荷が最も大きい。このため高圧開閉器は、入位置近傍における開路閉路両方向の駆動力が大きいことが求められる。
【0006】
可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器において、可動電極の動作負荷は、回動途中及び切位置近傍における可動電極の回動中心部分の接触摩擦負荷のみであり、入位置近傍と比較して小さい。このため高圧開閉器は、開路途中の可動電極の回動速度、すなわち遮断速度が速くなり、電流遮断能力が高まる。よって、開路途中の動作負荷が小さいことは好都合である。
【0007】
ところが、動作負荷が小さいために遮断時における切位置での可動電極の開路方向への慣性は非常に大きく、可動電極が所定の切位置を大きく超えて回動しないようにストッパを設けるのが通例である。しかしながらストッパを設けると、切位置近傍における可動電極の開路方向への駆動力が小さい場合に、可動電極が閉路方向へバウンドして可動電極と固定電極の間隔が小さくなってしまい、電流遮断性能や、可動電極と固定電極の間の耐電圧性能に悪影響を与える。このため高圧開閉器は、切位置近傍における開路方向の駆動力が大きいことが求められる。
【0008】
可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器において、短絡電流が流れると電磁力により可動電極に入状態から切状態へ開こうとする反発力が発生する。この反発力は、投入動作及び入位置保持を阻害したりする。このため高圧開閉器は、入位置近傍における閉路方向の駆動力が大きいことが求められる。
【0009】
前述のように、求められる性能を達成する為に、高圧開閉器の可動電極と固定電極の間隔距離及び入位置と切位置における駆動力を確保することが必要である。
【0010】
以下に、可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する従来の高圧開閉器の例を、図6を用いて説明する。図6は、従来例を示す高圧開閉器の断面図であり、(a)は入位置近傍、(b)は開路途中、(c)は切位置近傍を示す。高圧開閉器の筐体となるケース601の対向する側面601a、601bにそれぞれ導体貫通用の穴を設け、前記導体貫通用の穴に貫通して樹脂又は碍子からなるブッシング602とブッシング603を装着し、ブッシング602に固定電極604を設け、ブッシング603にヒンジ電極606を設けている。この固定電極604とヒンジ電極606を電気的に接離することにより、高圧開閉器が電路を入切する。
【0011】
ヒンジ電極606には可動電極605を回動可能なように軸609を支点としてを設け、ヒンジ電極606と可動電極605が電気通電的に接続するように、ヒンジ電極606と可動電極605を圧接する接触バネ610を設けている。固定電極604には固定電極604を挟み込む複数片の対となるように固定接点607を設け、高圧開閉器が入状態のときに固定接点607は可動電極605の接点部分605aを挟み込むように位置し、固定電極604と固定接点607と可動電極605が電気通電的に接続されるように、固定接点607を内側に付勢する接触バネ615を設けている。
【0012】
操作機構20からの駆動力を伝達する出力レバー612と、前出の可動電極605とを、リンク608と、ピン613a、613bを回動可能に用いて、連結する。この連結により、出力レバー612の回動角度に応じてリンク608が移動し、リンク608の移動量に応じて可動電極605が回動することで、可動電極605は固定電極604に設けた固定接点607に接離し、高圧開閉器は電路を入切する。
【特許文献1】特開2000−228134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の高圧開閉器においては、性能の達成や信頼性の向上を図るために切位置における可動電極と固定電極の間隔を大きくする方法として、可動電極の回動角度を大きくすること及び可動電極を長くすることがなされてきた。また、入位置近傍及び切位置近傍における可動電極に作用する駆動力を大きくするために、操作機構を大型にして駆動力を増やしていた。
【0014】
ところが、高圧開閉器に求められる市場の要求としては、高性能化や信頼性の向上だけではなく、小型化や低価格化が強い。
【0015】
ここで高圧開閉器を小型化するにあたって、従来構造の高圧開閉器は可動電極と固定電極の間隔を大きくするために可動電極を長くしているので大型化しているという課題だけではなく、可動電極を長くすると可動電極の回動中心と固定電極との距離が長くなることにより、入位置における固定電極との接触摩擦負荷によって生じる可動電極の回転トルクが大きくなり、そのために操作機構が大型化するという課題があった。
【0016】
また、可動電極と固定電極の間隔を大きくするために可動電極の回動角度を大きくすると、可動電極とリンクの成す角度αが小さくなって駆動力伝達効率が低下してしまうという課題があった。
【0017】
ここで、駆動力伝達効率が低下してしまうことが課題となる理由を、図7を用いて説明する。(a)は入位置近傍、(b)は開路途中、(c)は切位置近傍を示す。リンク608が可動電極605を動かす駆動力のsinα分力が可動電極605を回動させる力に相当するためである。すなわち、出力レバー612から出力される駆動力をFとすると、駆動力Fがリンク608を介して可動電極605に伝達されるとき、駆動力Fは可動電極605とリンク608の成す角度αにより分解する。可動電極605を回動させる力をWとすると、WはW=Fsinαとなり、α=30度のときにW=0.5Fである。同様にα=45度のときにW=約0.7F、60度のときにW=約0.87Fである。よって駆動力伝達効率の低下による開閉性能の低下を防ぐために操作機構が大型化するという課題が発生する。
【0018】
このように、従来の高圧開閉器を小型化するためには、要求性能を達成するために必要な駆動力が大きく必要となって操作機構が大型化するという課題が発生し、小型化に相反するために小型化の実現が困難であった。
【0019】
本発明は、上記課題を解消するもので、可動電極を回動させる際に必要な駆動力伝達配分を、駆動力が大きく必要なときに大きくなるように適する配分にし、可動電極の回動角度を大きくすることによって切位置における可動電極と固定電極の間隔を大きくすることで性能の向上や信頼性の向上を図ると共に、部品点数を減らすことにより小型化及び材料費の低減を図った高圧開閉器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために講じた本発明の手段は次のとおりである。第1の発明にあっては、可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器において、一端を固定電極と接離する可動接点とし可動接点ではない端部を入力部とした可動電極と、操作機構からの力を可動電極に伝達して可動電極を動かす出力レバーとをピンで連結し、可動電極がピンで出力レバーと連結される入力部を、ピンがスライド移動が可能なように溝形状としたことを特徴とする高圧開閉器である。
【0021】
第2の発明にあっては、可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器において、一端を固定電極と接離する可動接点とした可動電極に設けられた入力レバーと、操作機構からの力を入力レバーに伝達して可動電極を動かす出力レバーをピンで連結し、入力レバーがピンで出力レバーと連結される入力部を、ピンがスライド移動が可能なように溝形状としたことを特徴とする高圧開閉器である。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上記構成を備え、次の効果を有する。このように構成すると、可動電極の回動角度と出力レバーの回動角度を90度程度にすることが可能である。また、可動電極と出力レバーの成す角θを入位置及び切位置において90度程度にすることが可能である。そして、可動電極の回動角度と出力レバーの回動角度を90度程度にすること、並びに、可動電極と出力レバーの成す角θを入位置及び切位置において90度程度にすることを、同時になし得る。
【0023】
図2を用いて詳しく説明すると、可動電極5の回動角度と出力レバー12の回動角度は、90度程度である。可動電極5と出力レバー12の成す角θは、入位置及び切位置において90度程度である。出力レバー12の回動する力をW1とした場合に、摩擦抵抗を無視して計算すると、可動電極5を回動させる力Wは、てこの原理によりW=W1/cosθなので、入位置近傍及び切位置近傍における駆動力伝達効率が高いため、可動電極5を回動する力WはW1に対して非常に大きくなる。具体的には、可動電極5を回動させる力WはW=W1/cosθなので、例えばθ=80度のときにW=約W1/0.17であり、θ=70度のときにW=約W1/0.34である。ここで、可動電極5と出力レバー12の成す角θを90度程度としたのは、θ=90度のときには、摩擦抵抗を無視して計算するとWが無限大になるので、駆動力の大きさを表現するのに好ましくないからである。
【0024】
一方で同様の理由から、開閉途中における可動電極5を回動する力WはW=W1/cosθなので、駆動力伝達効率が低くなるため、可動電極5を回動する力WはW1に対して大きくならない。具体的には、摩擦抵抗を無視した場合、可動電極5を回動させる力WはW=W1/cosθなので、例えばθ=175度のときにW=約W1/0.996となる。しかし、開閉途中における駆動力の効率は悪いが、開路途中は接触摩擦負荷が小さくて、大きな駆動力を必要としないのでので問題にはならない。
【0025】
また、可動電極の回動角度が90度程度であることから、可動電極5が短くても可動電極5と固定電極4との間隔が大きくできる。
【0026】
以上のように、入位置近傍及び切位置近傍における駆動力伝達効率が高いので、入位置近傍及び切位置近傍における可動電極を回動する力を大きくできる。また、可動電極と固定電極との間隔を大きくできる。よって、耐電圧性能や電流遮断性能、短時間電流性能、投入電流性能が高く、信頼性が高い開閉器を小型にできる。また、可動電極は出力レバーにより直接駆動されるので、従来の高圧開閉器のように、連結用のリンクを必要としない。従って、部品点数の削減により材料費を低減し、かつ組み立ての手間を削減し製造を容易にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施例を図1から図5を用いて説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は、本発明の請求項1に記載の特徴を有する一実施の形態例を示す高圧開閉器の断面図であり、(a)は入位置近傍、(b)は開路途中、(c)は切位置近傍を示す。高圧開閉器の筐体となるケース1の対向する側面1a、1bにそれぞれ導体貫通用の穴を設け、前記導体貫通用の穴に貫通して樹脂又は碍子からなるブッシング2とブッシング3を装着し、ブッシング2に固定電極4を設け、ブッシング3にヒンジ電極6を設けている。固定電極4とヒンジ電極6を電気的に接離することにより、高圧開閉器が電路を入切する。
【0029】
ヒンジ電極6には可動電極5が回動可能なように軸9を支点としてを設け、ヒンジ電極6と可動電極5が電気通電的に接続されるように、ヒンジ電極6と可動電極5を圧接する接触バネ10を設けている。固定電極4には固定電極4を挟み込む複数片の対となるように固定接点7を設け、高圧開閉器が入状態のときに固定接点7は可動電極5の接点部分5aを挟み込むように位置し、固定電極4と固定接点7と可動電極5を電気通電的に接続するように固定接点7を内側に付勢する接触バネ15を設けている。
【0030】
操作機構20の出力軸11に出力レバー12を設け、出力レバー12の接続部12aと、可動電極5の溝部5cとをピン13を用いて連結する。ピン13は溝部5cをスライドすることが可能である。
【0031】
本発明の高圧開閉器は、操作機構20の操作により出力軸11に設けた出力レバー12が回動し、接続部12aに設けたピン13が溝部5cをスライドすることにより、可動電極5がヒンジ電極6に設けた軸9を支点として回動する。そして可動電極5が回動することで可動電極5と固定電極4が接離し、電路を入切する。
【実施例2】
【0032】
図3は、本発明の請求項2に記載の特徴を有する一実施の形態例を示す高圧開閉器の断面図であり、(a)は入位置近傍、(b)は開路途中、(c)は切位置近傍を示す。高圧開閉器の筐体となるケース1の対向する側面1a、1bにそれぞれ導体貫通用の穴を設け、前記導体貫通用の穴に貫通して樹脂又は碍子からなるブッシング2とブッシング3を装着し、ブッシング2に固定電極4を設け、ブッシング3にヒンジ電極6を設けている。固定電極4とヒンジ電極6を電気的に接離することにより、高圧開閉器が電路を入切する。
【0033】
ヒンジ電極6には可動電極5が回動可能なように軸9を支点としてを設け、ヒンジ電極6と可動電極5が電気通電的に接続されるように、ヒンジ電極6と可動電極5を圧接する接触バネ10を設けている。固定電極4には固定電極4を挟み込む複数片の対となっている固定接点7を設け、高圧開閉器が入状態のときに固定接点7は可動電極5の接点部分5aを挟み込むように位置し、固定電極4と固定接点7と可動電極5を電気通電的に接続するように固定接点7を内側に付勢する接触バネ15を設けている。
【0034】
操作機構20の出力軸11に出力レバー12を設け、可動電極5に入力レバー16を設け、出力レバー12の接続部12aと入力レバー16の溝部16cとをピン13を用いて連結する。ピン13は溝部16cをスライドすることが可能である。
【0035】
本発明の高圧開閉器は、操作機構20の操作により出力軸11に設けた出力レバー12が回動し、接続部12aに設けたピン13が溝部16cをスライドすることにより、入力レバー16とともに可動電極5がヒンジ電極6に設けた軸9を支点として回動する。そして可動電極5が回動することで可動電極5と固定電極4が接離し、電路を入切する。
【0036】
ここで可動電極5に入力レバー16を設ける作用を述べると、可動電極5に設けた入力レバー16と出力レバー12の成す角θを90度程度にすれば、特に可動電極5と出力レバー12の成す角θを90度程度にする必要はなく、可動電極5の位置や向きの自由度が高くなる。
【実施例3】
【0037】
図4は、本発明の請求項4に記載の特徴を有する一実施の形態例を示す高圧開閉器の断面図であり、(a)は入位置近傍、(b)は開路途中、(c)は切位置近傍を示す。高圧開閉器の筐体となるケース1の対向する側面1a、1bにそれぞれ導体貫通用の穴を設け、前記導体貫通用の穴に貫通して樹脂又は碍子からなるブッシング2とブッシング3を装着し、ブッシング2に固定電極4を設け、ブッシング3にヒンジ電極6を設けている。固定電極4とヒンジ電極6を電気的に接離することにより、高圧開閉器が電路を入切する。
【0038】
ヒンジ電極6には可動電極5が回動可能なように軸9を支点としてを設け、ヒンジ電極6と可動電極5が電気通電的に接続されるように、ヒンジ電極6と可動電極5を圧接する接触バネ10を設けている。固定電極4には固定電極4を挟み込む複数片の対となっている固定接点7を設け、高圧開閉器が入状態のときに固定接点7は可動電極5の接点部分5aを挟み込むように位置し、固定電極4と固定接点7と可動電極5を電気通電的に接続するように固定接点7を内側に付勢する接触バネ15を設けている。
【0039】
操作機構20の出力軸11に出力レバー12を設け、可動電極5に入力レバー16を設け、出力レバー12の接続部12aと入力レバー16の略円弧状溝部16dとをピン13を用いて連結する。ピン13は溝部16dをスライドすることが可能である。
【0040】
本発明の高圧開閉器は、操作機構20の操作により出力軸11に設けた出力レバー12が回動し、接続部12aに設けたピン13が略円弧状溝部16dをスライドすることにより、入力レバー16とともに可動電極5がヒンジ電極6に設けた軸9を支点として回動する。そして可動電極5が回動することで可動電極5と固定電極4が接離し、電路を入切する。
【0041】
ここで溝部を略円弧状にする作用を述べると、可動電極5に設けた入力レバー16と出力レバー12の成す角θを90度程度にすることができない場合で、特に入位置近傍又は切位置近傍のどちらかにおける駆動力伝達効率を高めたいときに効果がある。
【0042】
入位置近傍における駆動力伝達効率を高めたいときを例にして詳しく説明する。図5(a)に示したように、出力レバー12の回動する力W1が働くと、てこの原理により、入力レバー16に設けた略円弧状溝部16dのピン13との接点における接線Aに対する垂線B方向に、出力レバー12の駆動力Fが働く。駆動力Fは、入力レバー16と駆動力Fの成す角をβとすると、F=W1/sin(θ−β)である。駆動力Fが入力レバー16に伝達されるとき、駆動力Fは入力レバー16と駆動力Fの成す角度βにより分解する。駆動力Fはβにより分解するので、入力レバー16が回動する力WはW=Fsinβとなる。よって、W=W1sinβ/sin(θ−β)となる。ここで、略円弧状溝部16dの形状を適切にすることにより、駆動力Fの方向は出力レバー12の方向とほぼ一致することができる。すなわちβ≒θとすることができる。β≒θのとき、入力レバー16と出力レバー12の成す角θを90度程度にすることができなくても、駆動力Fおよび回動する力Wは、出力レバー12の回動する力W1に対して非常に大きくすることができるので、実施例1に示した可動電極を回動する力Wと同等に得ることが可能となる。
【0043】
本実施例1から3の高圧開閉器においては、ケース1にブッシング2及び3を装着しているが、ケース1を樹脂材料とすることによりブッシング2及び3と一体的に成形してもよく、同様に、出力軸11を出力レバー12と一体的に成型してもよい。
【0044】
本実施例1から3の高圧開閉器においては、可動電極を1枚として複数片の対からなる固定接点を使用しているが、可動電極を2枚として固定電極を挟み込む構造とし、固定接点を用いない構造としてもよい。
【0045】
本実施例1から3の高圧開閉器においては、ブッシング2及び3の位置をケース1の対向する側面1a及び1bに装着するとしているが、ケース1の同一面に装着するとしても同様の効果を得ることが可能である。
【0046】
本実施例1から2の高圧開閉器においては、溝を直線状にして、可動電極5の長手方向に対して平行に配しているが、長手方向に対して斜めに設けてもよい。
【0047】
本実施例3の高圧開閉器においては、溝を略円弧状にして可動電極5の長手方向に配しているが、駆動力が必要な位置に応じて略波状や略クランク状に設けてもよい。
【0048】
本実施例1から2の高圧開閉器においては、可動電極5の回動角度と出力レバー12の回動角度は約90度で、可動電極5と出力レバー12の成す角θは入位置及び切位置において約90度としているが、発明を実施するための最良の形態が約90度であるとしているのであって、(発明の効果)(0023)で示したように、摩擦抵抗を無視して計算すると、可動電極5を回動させる力Wは、出力レバー12の回動する力W1を下回ることがなく非常に大きいので、約90度である必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1(a)】請求項1の特徴を持つ実施例を示す「入」状態高圧開閉器の断面図である。
【図1(b)】請求項1の特徴を持つ実施例を示す「遮断中」高圧開閉器の断面図である。
【図1(c)】請求項1の特徴を持つ実施例を示す「切」状態高圧開閉器の断面図である。
【図2(a)】請求項1の実施例の「入」状態可動電極5及び出力レバー12の説明図である。
【図2(b)】請求項1の実施例の「遮断中」可動電極5及び出力レバー12の説明図である。
【図2(c)】請求項1の実施例の「切」状態可動電極5及び出力レバー12の説明図である。
【図3(a)】請求項2の特徴を持つ実施例を示す「入」状態高圧開閉器の断面図である。
【図3(b)】請求項2の特徴を持つ実施例を示す「遮断中」高圧開閉器の断面図である。
【図3(c)】請求項2の特徴を持つ実施例を示す「切」状態高圧開閉器の断面図である。
【図4(a)】請求項4の特徴を持つ実施例を示す「入」状態高圧開閉器の断面図である。
【図4(b)】請求項4の特徴を持つ実施例を示す「遮断中」高圧開閉器の断面図である。
【図4(c)】請求項4の特徴を持つ実施例を示す「切」状態高圧開閉器の断面図である。
【図5(a)】請求項4の実施例の「入」状態可動電極5と入力レバー16と出力レバー12の説明図である。
【図5(b)】請求項4の実施例の「遮断中」可動電極5と入力レバー16と出力レバー12の説明図である。
【図5(c)】請求項4の実施例の「切」状態可動電極5と入力レバー16と出力レバー12の説明図である。
【図6(a)】従来の「入」状態高圧開閉器の断面図である。
【図6(b)】従来の「遮断中」高圧開閉器の断面図である。
【図6(c)】従来の「切」状態高圧開閉器の断面図である。
【図7(a)】従来の「入」状態高圧開閉器の可動電極605とリンク608と出力レバー612の説明図である。
【図7(b)】従来の「遮断中」高圧開閉器の可動電極605とリンク608と出力レバー612の説明図である。
【図7(c)】従来の「切」状態高圧開閉器の可動電極605とリンク608と出力レバー612の説明図である。
【図8(a)】請求項5の特徴を持つ実施例を示す「入」状態高圧開閉器の断面図である。
【図8(b)】請求項5の特徴を持つ実施例を示す「遮断中」高圧開閉器の断面図である。
【図8(c)】請求項5の特徴を持つ実施例を示す「切」状態高圧開閉器の断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 ケース
2 ブッシング
3 ブッシング
4 固定電極
5 可動電極
6 ヒンジ電極
7 固定接点
9 軸
10 接触バネ
11 出力軸
12 出力レバー
13 ピン
14 ストッパ
15 接触バネ
16 入力レバー
17 滑り対偶
608 リンク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器において、一端を固定電極と接離する可動接点とし可動接点ではない端部を入力部とした可動電極と、操作機構からの力を可動電極に伝達して可動電極を動かす出力レバーとをピンで連結し、可動電極がピンで出力レバーと連結される入力部を、ピンがスライド移動が可能なように溝形状としたことを特徴とする高圧開閉器。
【請求項2】
可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器において、一端を固定電極と接離する可動接点とした可動電極に設けられた入力レバーと、操作機構からの力を入力レバーに伝達して可動電極を動かす出力レバーとをピンで連結し、入力レバーがピンで出力レバーと連結される入力部を、ピンがスライド移動が可能なように溝形状としたことを特徴とする高圧開閉器。
【請求項3】
可動電極に用いる刃形接点が、棒状であることを特徴とする請求項1から請求項2の高圧開閉器。
【請求項4】
溝形状を略円弧状にしたことを特徴とする請求項1から請求項3の高圧開閉器。
【請求項5】
一端を固定電極と接離する可動接点とし可動接点ではない端部を入力部とした可動電極の入力部、または、一端を固定電極と接離する可動接点とした可動電極に設けられた入力レバーと、操作機構からの力を可動電極に伝達して可動電極を動かす出力レバーとをスライドブッシュのような滑り対偶で連結し、滑り対偶が可動電極に対してスライド移動することを特徴とする請求項1から請求項3の高圧開閉器。
【請求項1】
可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器において、一端を固定電極と接離する可動接点とし可動接点ではない端部を入力部とした可動電極と、操作機構からの力を可動電極に伝達して可動電極を動かす出力レバーとをピンで連結し、可動電極がピンで出力レバーと連結される入力部を、ピンがスライド移動が可能なように溝形状としたことを特徴とする高圧開閉器。
【請求項2】
可動電極に刃形接点を用い、可動電極が回動することによる固定電極との接離により電路を入切する高圧開閉器において、一端を固定電極と接離する可動接点とした可動電極に設けられた入力レバーと、操作機構からの力を入力レバーに伝達して可動電極を動かす出力レバーとをピンで連結し、入力レバーがピンで出力レバーと連結される入力部を、ピンがスライド移動が可能なように溝形状としたことを特徴とする高圧開閉器。
【請求項3】
可動電極に用いる刃形接点が、棒状であることを特徴とする請求項1から請求項2の高圧開閉器。
【請求項4】
溝形状を略円弧状にしたことを特徴とする請求項1から請求項3の高圧開閉器。
【請求項5】
一端を固定電極と接離する可動接点とし可動接点ではない端部を入力部とした可動電極の入力部、または、一端を固定電極と接離する可動接点とした可動電極に設けられた入力レバーと、操作機構からの力を可動電極に伝達して可動電極を動かす出力レバーとをスライドブッシュのような滑り対偶で連結し、滑り対偶が可動電極に対してスライド移動することを特徴とする請求項1から請求項3の高圧開閉器。
【図1(a)】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図2(c)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図6(c)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図8(c)】
【図1(b)】
【図1(c)】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図2(c)】
【図3(a)】
【図3(b)】
【図3(c)】
【図4(a)】
【図4(b)】
【図4(c)】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図6(a)】
【図6(b)】
【図6(c)】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図8(a)】
【図8(b)】
【図8(c)】
【公開番号】特開2007−172849(P2007−172849A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364364(P2005−364364)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000002842)株式会社高岳製作所 (72)
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