説明

高圧電力用ケーブル

【課題】ケーブル内への水分の浸入を検知することが可能な高圧電力用ケーブルを提供する。
【解決手段】本実施例に係る高電圧用ケーブル21は、風力発電装置の発電機で発生した電力を取り出し、送電する高圧電力用ケーブルとして用いられ、導体22の上に、内部半導電層23、絶縁層24、外部半導電層25、遮蔽層26、外部シース27を積層してなるものであり、遮蔽層26を被覆するように外部シース27内に侵入した水分を検知する被覆型センサ30が設けられている。この被覆型センサ30は、遮蔽層26を被覆するように設ける第一の導電部31と、第一の導電部31の表面側に高圧電力用ケーブル21の周方向に所定間隔をおいて設けられ、高圧電力用ケーブル21の長手方向に伸びる複数の絶縁部32と、絶縁部32に沿って設けられる第二の導電部33とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル内への水分浸入を検知する高圧電力用ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題等の観点から自然エネルギーの利用が重要視されており、風車のような風力発電装置を陸上、洋上に設置し、風力発電設備の利用の拡大が検討されている。このような風力発電装置は、風車翼が取り付けられたローターヘッドと、増速機及び発電機が内蔵されているナセルと、ローターヘッド及びナセルを地上又は洋上から所定の高さに設置するタワーとから構成されている。また、風車翼が効率良く風を受けてローターヘッドが回転し、発電できるように、ナセルはヨーシステムにより常に風向に正対するようになっている。一方、発電機で得られた電力を送電するために、発電機からタワー内を経由して地上の電気設備までケーブルが接続されている。
【0003】
この風力発電装置で用いられるケーブルには、高い電圧が加わっており、特にナセル内に設けられる発電機、トランスなどでは、各々、例えば600V、22000Vなど高電圧が発生している。そのため、風力発電設備などで発生する電力の送電用に用いられるケーブルとして高圧電力用ケーブルが用いられている。従来の高圧電力用ケーブルの構成の一例を図6に示す。図6に示すように、高圧電力用ケーブル100は、導体101を中心に外側に向かって順に内部半導電層102、絶縁層103、外部半導電層104、遮蔽層105、外部シース106が同心円状に構成されている。
【0004】
このような高電圧の環境下であって洋上のような水分の多い環境下においては、洋上の海水によるケーブルの経年劣化は避けられず、ケーブル内部に水分110が浸入することでいわゆる水トリー現象が発生する。そのため、こうした高圧電力用ケーブル100の内部に水分110が浸入しているか否かを検知し、風力発電装置の運転の安全性をより高める必要がある。
【0005】
水分検知方法として、例えば反射赤外吸収分光法、ラマン散乱分光法などを用い、対象物の表面を非接触、かつオンラインで連続して分析する方法がある。また、その他の水分検知方法としては、原子力プラントの炉内環境に貴金属(金属)を注入し、その注入された貴金属、金属が構造物にどの程度付着するかを定量的にモニタリングするセンサを用いて水質管理を行う方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
更に、その他の水分検知方法としては、例えば架空送電線の外周に円筒状のアルミニウム材等からなる腐食検知装置を嵌合して装着し、架空送電線の腐食による外径減少に応じて変化する腐食検知装置の装着位置を測定することで架空送電線の腐食を検知し、架空送電線の腐食点検作業を安全、かつ容易に行なう方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−139889号公報
【特許文献2】特開2004−140887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来から用いられている反射赤外吸収分光法、ラマン散乱分光法などの水分検知方法では、風車のナセル内などの狭い空間内には水分検出用の装置を設けることはできないため、風車などの風力発電設備に用いられる高電圧用ケーブルには適用することはできなかった、という問題がある。
【0009】
また、架空送電線の腐食による外径減少に応じて変化する腐食検知装置の装着位置を測定する方法では、腐食検知装置の架空送電線上での移動量を目視により行なうため、架空送電線の腐食判定の精度が十分でない、という問題がある。
【0010】
このような高電圧の環境下であって、かつ水分の多い環境下においても、発電機で発生した電力の送電の安全性をより高めるため、ケーブル内への水分の浸入を検知することができる高電圧用ケーブルが求められている。
【0011】
本発明は、前記問題に鑑み、ケーブル内への水分の浸入を検知することが可能な高圧電力用ケーブルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、発電機で発生した電力を取り出し、送電する高圧電力用ケーブルであって、前記高圧電力用ケーブルが、導体の上に、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層、遮蔽層、外部シースを積層してなり、前記外部半導電層、又は前記遮蔽層を被覆するように設けられ、前記外部シース内に侵入した水分を検知する被覆型センサを有することを特徴とする高圧電力用ケーブルにある。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記被覆型センサが、前記外部半導電層、又は前記遮蔽層を被覆するように設けられる第一の導電部と、該第一の導電部の表面側に前記高圧電力用ケーブルの周方向に所定間隔をおいて設けられ、前記高圧電力用ケーブルの長手方向に伸びる複数の絶縁部と、該絶縁部に沿って設けられる第二の導電部とを有することを特徴とする高圧電力用ケーブルにある。
【0014】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記高圧電力用ケーブルが、風力発電機から電力を取り出すのに用いられることを特徴とする高圧電力用ケーブルにある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、前記外部半導電層、又は前記遮蔽層を被覆するように被覆型センサを設けているため、高圧電力用ケーブルの内部に浸入した水分を検知することができる。これにより、風力発電装置の運転を制御し、高圧電力用ケーブルの取替えを行うことで、風力発電装置を安全に稼動させることができる。
【0016】
また、本発明によれば、高圧電力用ケーブルの内部に浸入した水分が外部半導電層、又は遮蔽層の表面を被覆するように設けた第一の導電部と、該第一の導電部の表面側に設けた絶縁部を介して設けられる第二の導電部との間に水膜を形成し、この水膜が形成された際に発生する第一の導電部と第二の導電部とのガルバニック対の腐食電流を検知することで、高圧電力用ケーブル内に水分が浸入したのを検知することできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例に係る高電圧用ケーブルを備えた風力発電設備の構成を簡略に示す概略図である。
【図2】図2は、実施例に係る高電圧用ケーブルの構成を簡略に示す概略断面図である。
【図3】図3は、高電圧用ケーブルの構成を簡略に示す斜視図である。
【図4】図4は、図3の部分拡大図である。
【図5】図5は、被覆型センサに水膜が形成された状態を示す図である。
【図6】図6は、従来の高電圧用ケーブルの構成を簡略に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0019】
本発明による実施例に係る高電圧用ケーブルを備えた風力発電装置について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例に係る高電圧用ケーブルを備えた風力発電装置の構成を簡略に示す概略図である。
図1に示すように、風力発電装置10は、タワー(支柱)11上に設置されたナセル12に、風車翼13を取り付けたロータヘッド14と、このロータヘッド14と一体に回転するよう連結された主軸15と、風車翼13に風力を受けて回転する主軸15を連結した増速機16と、増速機16の軸出力によって駆動される発電機17とを設けたものである。また、支柱11は地面や洋上などに設けた基台19上に設置される。尚、ナセル12内には増速機16や発電機17の他に、図示はしないが、油圧装置やその他の電気機器やこれらの制御装置も設置されている。タワー11は筒状であってタワー11の内部の下部には電気設備20が設置されている。また、発電機17と電気設備20との間は、本実施例に係る高電圧用ケーブル21によって連結されている。
【0020】
風力を回転力に変換する風車翼13を備えたロータヘッド14及び主軸15が回転して軸出力を発生し、主軸15に連結された増速機16を介して回転数を増速した軸出力が発電機17に伝達される。風力を回転力に変換して得られる軸出力を発電機17の駆動源とし、発電機17の動力として風力を利用して発電を行うことができる。
【0021】
本実施例に係る高電圧用ケーブル21は、発電機17で発生した電力を取り出し、送電する高圧電力用ケーブルとして用いられ、発電機17で得られた電力をこの電気設備20に送電している。ナセル12内の発電機17に接続された本実施例に係る高電圧用ケーブル21は、ナセル12の下部のタワー11に面する部分からタワー11内に垂下され、所定の弛みを持たせた状態で持ち上げてタワー11の内壁面に沿うように配設され、基台19に設置された電気設備20に接続されている。なお電気設備20はタワー11の外部に設置してもよい。
【0022】
また、ナセル12内には発電機17の他に、トランスを備えた発電ユニットを備えるようにしてもよく、発電機17で発生する電力を、トランスで例えば22kV程度にまで昇圧し、本実施例に係る高電圧用ケーブル21により取り出すようにしてもよい。
【0023】
また、図2は、実施例に係る高電圧用ケーブルの構成を簡略に示す概略断面図であり、図3は、高電圧用ケーブルの構成を簡略に示す斜視図であり、図4は、図3の部分拡大図である。尚、図3、4中では、外部シースは省略し、遮蔽層、外部半導電層、被覆型センサの構成のみを示す。
本実施例に係る高電圧用ケーブル21は、図2に示すように、導体22の上に、内部半導電層23、絶縁層24、外部半導電層25、遮蔽層26、外部シース27を積層してなるものである。遮蔽層26の外側表面には、遮蔽層26を被覆するように外部シース27内に侵入した水分を検知する被覆型センサ30が設けられている。この被覆型センサ30は、遮蔽層26を被覆するように設けられる第一の導電部31と、第一の導電部31の表面側に高圧電力用ケーブル21の周方向に所定間隔をおいて設けられ、図3、4に示すように、高圧電力用ケーブル21の長手方向に伸びる複数の絶縁部32と、絶縁部32に沿って第一の導電部31とは反対側の絶縁部32の表面に設けられる第二の導電部33とを有するものである。
【0024】
導体22は、電気を通しやすい材料、すなわち電気伝導率(導電率)の高い材料が用いられ、金属、セラミックなどを用いることができる。導体22に用いられる材料としては、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)などを用いるのが好ましい。導体22は、例えば多数の銅線を円形圧縮した複合撚線としている。
【0025】
内部半導電層23は、導体22と絶縁層24との間に設けられ、高電圧に適用するために部分放電を抑え、導体22の表面の電界強度を低減するようにしている。絶縁層24には、例えば架橋ポリエチレンが用いられる。外部半導電層25は、絶縁層24と遮蔽層26との間に設けられ、部分放電を抑えるようにしている。遮蔽層26は、感電、誘導障害を防止するものであり、例えば銅テープ、銅ワイヤー、アルミニウム、鉛などが用いられる。外部シース27は、絶縁層24を外傷、水分から保護する防食用のシースであり、例えば架橋ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride:PVC)、絶縁層24と同様に、架橋ポリエチレン、ナイロン(Nylon)などが用いられる。尚、本実施例でいうナイロンとは、単量体がアミド結合(−CO−NH−)により次々に縮合した高分子であるポリアミド系繊維の総称として用いている。例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロンMXD6等が例示される。
【0026】
また、第一の導電部31と第二の導電部33との一部は電流計(不図示)に接続され、第一の導電部31と第二の導電部33との間にガルバニック対の腐食電流が流れると、電流計(不図示)により検知される。
【0027】
図5は、被覆型センサに水膜が形成された状態を示す図である。尚、図5中では、外部シースは省略し、遮蔽層、被覆型センサの構成のみを示す。被覆型センサ30の内部に腐食性因子として水分が外部シース27内に浸入すると、図5に示すように、遮蔽層26の表面に設けた第一の導電部31と第二の導電部33との間に水膜35が形成される。水膜35が形成されることで第一の導電部31と第二の導電部33との間に第一の導電部31と第二の導電部33とのガルバニック対の腐食電流が流れる。この発生したガルバニック対の腐食電流を電流計(不図示)で検知することにより、外部シース27内に水分が浸入したことを検知することができる。これにより、風力発電装置を制御し、高圧電力用ケーブル21の取替えを容易に行うことができ、風力発電装置10を安全に稼動させることができる。
【0028】
また、第一の導電部31を形成する材料としては、例えばアルミニウム(Al)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)などを用いるのが好ましく、特にAlを用いるのが好ましい。また、第二の導電部33を形成する材料としては、例えば白金(Pt)、銀(Ag)などを用いるのが好ましく、特にPtを用いるのが好ましい。
【0029】
また、絶縁部32を形成する材料としては、第一の導電部31と第二の導電部33との間の絶縁性を確保することが可能な樹脂を含むものであればよく、例えば、エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0030】
また、本実施例に係る高圧電力用ケーブル21においては、第一の導電部31上に絶縁部32及び第二の導電部33を設ける数は、第一の導電部31の直径等に応じて適宜変更するようにしてもよい。
【0031】
また、本実施例に係る高圧電力用ケーブル21においては、第一の導電部31を遮蔽層26の外側表面に設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、遮蔽層26を第一の導電部31として用いてもよい。即ち、図2〜図5に示す本実施例に係る高電圧用ケーブル21の遮蔽層26の表面側に高圧電力用ケーブル21の周方向に所定間隔をおいて設けられ、高圧電力用ケーブル21の長手方向に伸びる複数の絶縁部32と、絶縁部32に沿って第二の導電部33とを有するようにしてもよい。
【0032】
また、本実施例に係る高圧電力用ケーブル21においては、被覆型センサ30が遮蔽層26を被覆するように設けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、外部半導電層25と遮蔽層26との間であって外部半導電層25を被覆するように被覆型センサ30を設けるようにしてもよい。このとき、外部半導電層25は導電性を有するため、外部半導電層25の内側には絶縁層を設けるようにしておく。また、遮蔽層26は網目状とし、外部半導電層25の内側に設ける絶縁シールを遮蔽層26の網目形状に対応させるようにする。
【0033】
このように、本実施例に係る高圧電力用ケーブル21によれば、遮蔽層26を被覆するように被覆型センサ30を設けることで、外部シース27内に浸入した水分24を検知することができる。これにより、風力発電装置10の運転を制御し、高圧電力用ケーブル21の取替えを行うことで、風力発電装置10を安全に稼動させることができる。
【0034】
また、本実施例に係る高圧電力用ケーブル21の軸方向から見た時の形状は円柱状に形成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、多角柱状に形成してもよい。
【0035】
また、本実施例に係る高電圧用ケーブル21は、風力発電装置10の発電機17から取り出される電力の送電用のケーブルとして用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、アースケーブル、制御ケーブル、電動機から取り出される電力の送電用のケーブル等に用いてもよい。
【0036】
また、本実施例に係る高圧電力用ケーブル21は、風車などの風力発電設備において高電圧がかかる高圧電力用ケーブルとして用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、風力発電設備以外の発電設備用の高圧電力用ケーブル、または高電圧がかからないケーブルなどにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明に係る高圧電力用ケーブルは、外部シース内に浸入した水分を検知することができ、例えば風力発電装置の発電機から取り出される高電圧の電力の送電用に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0038】
10 風力発電装置
11 タワー(支柱)
12 ナセル
13 風車翼
14 ロータヘッド
15 主軸
16 増速機
17 発電機
19 基台
20 電気設備
21 高電圧用ケーブル
22 導体
23 内部半導電層
24 絶縁層
25 外部半導電層
26 遮蔽層
27 外部シース
30 被覆型センサ
31 第一の導電部
32 絶縁部
33 第二の導電部
35 水膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機で発生した電力を取り出し、送電する高圧電力用ケーブルであって、
前記高圧電力用ケーブルが、導体の上に、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層、遮蔽層、外部シースを積層してなり、
前記外部半導電層、又は前記遮蔽層を被覆するように設けられ、前記外部シース内に侵入した水分を検知する被覆型センサを有することを特徴とする高圧電力用ケーブル。
【請求項2】
請求項1において、
前記被覆型センサが、
前記外部半導電層、又は前記遮蔽層を被覆するように設けられる第一の導電部と、
該第一の導電部の表面側に前記高圧電力用ケーブルの周方向に所定間隔をおいて設けられ、前記高圧電力用ケーブルの長手方向に伸びる複数の絶縁部と、
該絶縁部に沿って設けられる第二の導電部とを有することを特徴とする高圧電力用ケーブル。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記高圧電力用ケーブルが、風力発電機から電力を取り出すのに用いられることを特徴とする高圧電力用ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−286422(P2010−286422A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141791(P2009−141791)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】