説明

高圧電装部品設置構造

【課題】車両の衝突時に車室の周壁の変形を抑制する。
【解決手段】バッテリ設置構造10では、車両12の前面衝突時に、エンジン14が車両12に対し車両後側へ移動されると共に、バッテリ38に車両前側への慣性力が作用するため、キャビン16の周壁22がバッテリ38の重心Gより車両前側において変形される。ここで、バッテリ38の車両前側及び車両後側にそれぞれ第1バッテリブラケット32及び第2バッテリブラケット34が配置されている。このため、エンジン14の車両12に対する車両後側への移動力を、第1バッテリブラケット32、バッテリ38及び第2バッテリブラケット34が伝達でき、キャビン16の周壁22の変形量を小さくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に高圧電装部品を設置する高圧電装部品設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧電装部品設置構造としては、車両のフロアパネルに設けられたセンタトンネル上にバッテリボックスを配置したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、このような高圧電装部品設置構造では、車両の前面衝突時に、フロアパネルの変形を抑制して乗員を保護できるのが好ましい。
【特許文献1】特開2004−345447公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事実を考慮し、車両の衝突時に車室の周壁の変形を抑制できる高圧電装部品設置構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の高圧電装部品設置構造は、車両の車室の周壁に設けられたトンネル部と、前記トンネル部の上部に設置された高圧電装部品と、前記高圧電装部品の車両前側及び車両後側の少なくとも一方に設けられ、車両の衝突荷重を前記トンネル部との間で伝達する伝達部材と、を備えている。
【0006】
請求項2に記載の高圧電装部品設置構造は、車両の車室の周壁と、前記周壁に設置され、車両の運転席又は助手席が着座可能な状態で最大車両前側位置に配置された際における前記運転席又は助手席のシートクッションの車両前後方向中央部よりも車両前側に重心が配置された高圧電装部品と、を備えている。
【0007】
請求項3に記載の高圧電装部品設置構造は、請求項2に記載の高圧電装部品設置構造において、前記運転席又は助手席が着座可能な状態で最大車両前側位置に配置された際における前記運転席又は助手席のシートクッションよりも車両前側に前記高圧電装部品の重心が配置された、ことを特徴としている。
【0008】
請求項4に記載の高圧電装部品設置構造は、請求項2又は請求項3に記載の高圧電装部品設置構造において、前記運転席又は助手席が着座可能な状態で最大車両前側位置に配置された際における前記運転席又は助手席のシートクッションよりも車両前側に前記高圧電装部品の車両後側端が配置された、ことを特徴としている。
【0009】
請求項5に記載の高圧電装部品設置構造は、請求項2乃至請求項4の何れか1項に記載の高圧電装部品設置構造において、前記高圧電装部品の車両前側及び車両後側の少なくとも一方に設けられ、車両の衝突荷重を前記車室の周壁との間で伝達する伝達部材を備えた、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の高圧電装部品設置構造では、車両の車室の周壁にトンネル部が設けられており、トンネル部の上部に高圧電装部品が設置されている。
【0011】
ここで、高圧電装部品の車両前側及び車両後側の少なくとも一方に設けられた伝達部材が、車両の衝突荷重をトンネル部と高圧電装部品との間で伝達する。このため、車室の周壁の変形量を小さくすることができ、車室の周壁の変形を抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の高圧電装部品設置構造では、車両の車室の周壁に高圧電装部品が設置されている。
【0013】
ここで、車両の運転席又は助手席が着座可能な状態で最大車両前側位置に配置された際における運転席又は助手席のシートクッションの車両前後方向中央部よりも車両前側に、高圧電装部品の重心が配置されている。このため、車両の衝突時に、車室の周壁が変形される範囲を狭くすることができ、車室の周壁の変形を抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載の高圧電装部品設置構造では、運転席又は助手席が着座可能な状態で最大車両前側位置に配置された際における運転席又は助手席のシートクッションよりも車両前側に、高圧電装部品の重心が配置されている。このため、車両の衝突時に、車室の周壁が変形される範囲を効果的に狭くすることができ、車室の周壁の変形を効果的に抑制することができる。
【0015】
請求項4に記載の高圧電装部品設置構造では、運転席又は助手席が着座可能な状態で最大車両前側位置に配置された際における運転席又は助手席のシートクッションよりも車両前側に、高圧電装部品の車両後側端が配置されている。このため、車両の衝突時に、車室の周壁が変形される範囲を効果的に狭くすることができ、車室の周壁の変形を効果的に抑制することができる。
【0016】
請求項5に記載の高圧電装部品設置構造では、高圧電装部品の車両前側及び車両後側の少なくとも一方に設けられた伝達部材が、車両の衝突荷重を車室の周壁と高圧電装部品との間で伝達する。このため、車室の周壁の変形量を小さくすることができ、車室の周壁の変形を一層抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1の実施の形態]
図1には、本発明の第1の実施の形態に係る高圧電装部品設置構造としてのバッテリ設置構造10が適用されて構成された車両12の主要部が車両左方から見た側面図にて示されている。さらに、図2には、バッテリ設置構造10が車両左方から見た断面図にて示されており、図3には、バッテリ設置構造10が車両左斜め後方から見た斜視図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車両右方を矢印RHで示し、上方を矢印UPで示す。
【0018】
本実施の形態における車両12は、所謂ハイブリット車又は電動自動車にされている。車両12の前部には、エンジン14が設けられており、エンジン14は、部分的又は全体的に電動モータ(図示省略)の出力を使用して駆動されることで、車両12を走行させることができる。
【0019】
車両12の前後方向中央部には、車室としてのキャビン16が設けられており、キャビン16の車両前側には、エンジン14が配置されている。
【0020】
キャビン16内には、車両前側部分において、シートとしての前シート18が設けられており、前シート18は、運転席又は助手席にされて、乗員20(例えば運転手)が着座している。前シート18には、シートクッション18Aが設けられており、シートクッション18Aは、略水平に配置されて、乗員20の上半身を載置した状態で支持している。前シート18には、シートバック18Bが設けられおり、シートバック18Bは、シートクッション18Aの車両後側端部から上側へ起立されて、乗員20の上半身の後側への傾動を支持可能にされている。さらに、前シート18は、車両前後方向へ移動(スライド)可能にされている。また、乗員20の下肢骨のつけ根部分は、ヒップポイントHにされている。
【0021】
キャビン16の周壁22の車両前側かつ下側の部分は、板状のダッシュパネル22A(トーボード)によって構成されており、ダッシュパネル22Aの下端は、車両後側へ延伸されている。ダッシュパネル22Aの下端近傍には、車両前側において、横補強部材としての略断面横U字形板状のダッシュクロス24が結合されており、ダッシュクロス24は、車幅方向に沿って配置されると共に、矩形状の閉断面を形成して、ダッシュパネル22Aを車幅方向において補強している。
【0022】
キャビン16の周壁22の下側の部分は、板状のフロアパネル22B(フロアパン)によって構成されており、フロアパネル22Bの車両前側端は、ダッシュパネル22A下端の車両後側端に結合されている。
【0023】
キャビン16の車両前側端部かつ上下方向中間部には、ダッシュパネル22Aの車両後側において、インストルメントパネル26が固定されており、インストルメントパネル26の内部には、エアコンディショナユニット28が設けられている。
【0024】
キャビン16の周壁22には、前シート18の車両前側の車幅方向中央部分において、ダッシュパネル22Aからフロアパネル22Bに亘って、略断面逆U字形板状のトンネル部30(センタトンネル)が形成されており、トンネル部30は、キャビン16の周壁22から上側に突出すると共に、上面が車両後側へ向かうに従い下側へ向かう方向へ傾斜されている。また、トンネル部30の上側には、インストルメントパネル26が配置されている。
【0025】
トンネル部30の車両前側部分の上側には、伝達部材としての第1バッテリブラケット32(ガセット)が設けられている。第1バッテリブラケット32は、略横三角柱形箱状にされており、第1バッテリブラケット32の下面は、開口されると共に、トンネル部30の上面によって閉じられている。第1バッテリブラケット32は、上壁の車両前側端部と車両右側壁、車両左側壁及び車両後側壁の下端部とにおいて、トンネル部30に溶接(スポット溶接)によって結合されており、第1バッテリブラケット32の車両後側壁は、車両前後方向に略垂直に配置されている。
【0026】
トンネル部30の車両後側部分の上側には、伝達部材としての第2バッテリブラケット34(ガセット)が設けられている。第2バッテリブラケット34は、略横三角柱形箱状にされており、第2バッテリブラケット34の下面は、開口されると共に、トンネル部30の上面によって閉じられている。第2バッテリブラケット34は、上壁の車両後側端部と車両右側壁、車両左側壁及び車両前側壁の下端部とにおいて、トンネル部30に溶接(スポット溶接)によって結合されており、第2バッテリブラケット34の車両前側壁は、車両前後方向に略垂直に配置されている。
【0027】
トンネル部30の車両前後方向中間部分の上側には、追加伝達部材としての第3バッテリブラケット36(ガセット)が設けられている。第3バッテリブラケット36は、略横三角柱形箱状にされており、第3バッテリブラケット36の下面は、開口されると共に、トンネル部30の上面によって閉じられ、かつ、第3バッテリブラケット36の車両後側面は、開口されると共に、第2バッテリブラケット34の車両前側壁によって閉じられている。第3バッテリブラケット36は、車両右側壁及び車両左側壁の下端部において、トンネル部30に溶接(スポット溶接)によって結合されている。
【0028】
第1バッテリブラケット32と第2バッテリブラケット34との間には、高圧電装部品としての略直方体状のバッテリ38(メインバッテリ)が設置(固定)されており、バッテリ38は、第3バッテリブラケット36の上面に支持されると共に、インストルメントパネル26の下側近傍に配置されている。これにより、前シート18が着座可能な状態(格納状態以外の状態)で最大車両前側位置に配置された際でも、バッテリ38の車両後側端が前シート18のシートクッション18Aの車両前側端よりも車両前側に配置されて、通常、バッテリ38の車両後側端が乗員20のつま先20A(車両前側端)よりも車両前側に配置されるようにされている。
【0029】
バッテリ38は、略直方体形箱状のバッテリケース38Aにバッテリ本体38B(図5及び図6参照)が収納された構成にされており、バッテリ38は、高剛性を有すると共に、大重量を有している。バッテリ38(バッテリ本体38B)にはハーネス40が接続されており、ハーネス40は、インストルメントパネル26内を介してダッシュパネル22Aの車両前側へ配線されて、エアコンディショナユニット28及びエンジン14の電動モータに接続されている。これにより、バッテリ38(バッテリ本体38B)は、エアコンディショナユニット28及び電動モータに高電圧の電力を供給可能にされている。
【0030】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0031】
以上の構成のバッテリ設置構造10では、車両12の前面衝突時に、エンジン14が車両12に対し車両後側へ移動されると共に、バッテリ38に車両前側への慣性力が作用する。このため、キャビン16の周壁22(特にダッシュパネル22A)が、バッテリ38の重心Gより車両前側(特にバッテリ38の車両前側端の車両前側)において、エンジン14の車両12に対する車両後側への移動力(衝突荷重)とバッテリ38の車両前側への慣性力との合力によって、変形される(崩壊する)。
【0032】
ここで、前シート18が着座可能な状態で最大車両前側位置に配置された際でも、バッテリ38の車両後側端が前シート18のシートクッション18Aの車両前側端よりも車両前側に配置されて、通常、バッテリ38の車両後側端が乗員20のつま先20Aよりも車両前側に配置されるようにされている。このため、車両12の前面衝突時には、キャビン16の周壁22の変形範囲(バッテリ38の重心Gより車両前側の範囲)を小さくできて、乗員20の存在範囲においてキャビン16の周壁22が変形されることを抑制できる。
【0033】
また、バッテリ38の車両前側に第1バッテリブラケット32が配置されている。このため、エンジン14の車両12に対する車両後側への移動力(衝突荷重)を、第1バッテリブラケット32がバッテリ38へ伝達することができ(第1バッテリブラケット32が受けることができ)、キャビン16の周壁22の変形量を小さくすることができて、キャビン16の周壁22が変形されることを抑制することができる。
【0034】
さらに、バッテリ38の車両後側に第2バッテリブラケット34が配置されている。このため、エンジン14の車両12に対する車両後側への移動力(衝突荷重)を、第1バッテリブラケット32、バッテリ38及び第2バッテリブラケット34を介してトンネル部30へ伝達することができ(第1バッテリブラケット32、バッテリ38及び第2バッテリブラケット34が受けることができ)、キャビン16の周壁22の変形量を一層小さくすることができて、キャビン16の周壁22が変形されることを一層抑制することができる。
【0035】
しかも、第1バッテリブラケット32と第2バッテリブラケット34との間に第3バッテリブラケット36が配置されている。このため、エンジン14の車両12に対する車両後側への移動力(衝突荷重)を、第3バッテリブラケット36が第1バッテリブラケット32から第2バッテリブラケット34へ伝達することができ(第3バッテリブラケット36が受けることができ)、キャビン16の周壁22の変形量を更に一層小さくすることができて、キャビン16の周壁22が変形されることを更に一層抑制することができる。
【0036】
また、第1バッテリブラケット32、第2バッテリブラケット34、第3バッテリブラケット36及びバッテリ38が、トンネル部30に設けられている。このため、エンジン14の車両12に対する車両後側への移動力(衝突荷重)を、第1バッテリブラケット32、バッテリ38、第3バッテリブラケット36及び第2バッテリブラケット34が効果的に伝達することができ、キャビン16の周壁22の変形量を更に一層小さくすることができて、キャビン16の周壁22が変形されることを更に一層抑制することができる。
【0037】
以上により、乗員20を効果的に保護することができる。
【0038】
また、ハーネス40がバッテリ38の上側近傍のインストルメントパネル26内に配線されている。このため、前シート18の車幅方向内側にバッテリ38を配置する場合と異なり、ハーネス40がトンネル部30の上面を介してインストルメントパネル26内に配線されることでキャビン16の床面(特に乗員20の足元の床面)が高くなったり、ハーネス40が前シート18の下側及び車幅方向外側を介してインストルメントパネル26内に配線されることでハーネス40が長くなったりすることを防止でき、コスト及び質量を低減することができる。
【0039】
[第2の実施の形態]
図4には、本発明の第2の実施の形態に係る高圧電装部品設置構造としてのバッテリ設置構造50が車両左斜め後方から見た斜視図にて示されている。
【0040】
本実施の形態に係るバッテリ設置構造50は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様な構成であるが、以下の点で異なる。
【0041】
本実施の形態に係るバッテリ設置構造50では、第1バッテリブラケット32の車両後側端部が、第1バッテリブラケット32の車両右側壁、車両左側壁及び車両後側壁の下端部において、トンネル部30に溶接(スポット溶接)によって結合されおり、第1バッテリブラケット32の車両前側部分には、拡大手段としての断面逆U字形板状の第1分岐部52が複数(本実施の形態では3つ)形成されている。第1バッテリブラケット32は、複数の第1分岐部52によって、車幅方向の幅が、車両後側部分に比し車両前側部分において広くされており、第1バッテリブラケット32の車両前側部分はトンネル部30に対し車幅方向外側へ突出されている。
【0042】
第2バッテリブラケット34の車両前側端部は、第2バッテリブラケット34の車両右側壁、車両左側壁及び車両前側壁の下端部において、トンネル部30に溶接(スポット溶接)によって結合されおり、第2バッテリブラケット34の車両後側部分には、拡大手段としての断面逆U字形板状の第2分岐部54が複数(本実施の形態では3つ)形成されている。第2バッテリブラケット34は、複数の第2分岐部54によって、車幅方向の幅が、車両前側部分に比し車両後側部分において広くされており、第2バッテリブラケット34の車両後側部分はトンネル部30に対し車幅方向外側へ突出されている。さらに、複数の第2分岐部54の車両後側端部(下端)は、キャビン16の周壁22(フロアパネル22B)に溶接(スポット溶接)によって結合されている。
【0043】
ここで、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と、同様の作用及び効果を奏することができる。
【0044】
さらに、第1バッテリブラケット32の車幅方向の幅が、複数の第1分岐部52によって広くされている。このため、車両12の前面衝突時には、エンジン14の車両12に対する車両後側への移動力(衝突荷重)を、第1バッテリブラケット32がバッテリ38へ効果的に伝達することができ(第1バッテリブラケット32が広範囲で受けることができ)、キャビン16の周壁22の変形量を効果的に小さくすることができて、キャビン16の周壁22が変形されることを効果的に抑制することができる。
【0045】
しかも、第2バッテリブラケット34の車幅方向の幅が、複数の第2分岐部54によって広くされている。このため、車両12の前面衝突時には、エンジン14の車両12に対する車両後側への移動力(衝突荷重)を、第1バッテリブラケット32、バッテリ38、第3バッテリブラケット36及び第2バッテリブラケット34を介してキャビン16の周壁22へ広範囲に伝達することができ(第1バッテリブラケット32、バッテリ38、第3バッテリブラケット36及び第2バッテリブラケット34が効果的に受けることができ)、キャビン16の周壁22の変形量を一層効果的に小さくすることができて、キャビン16の周壁22が変形されることを一層効果的に抑制することができる。
【0046】
以上により、乗員20を一層効果的に保護することができる。
【0047】
[第3の実施の形態]
図5には、本発明の第3の実施の形態に係る高圧電装部品設置構造としてのバッテリ設置構造70が車両左方から見た断面図にて示されており、図6には、バッテリ設置構造70のバッテリ38が車両前方から見た断面図にて示されている。
【0048】
本実施の形態に係るバッテリ設置構造70は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様な構成であるが、以下の点で異なる。
【0049】
本実施の形態に係るバッテリ設置構造70では、バッテリ38のバッテリケース38A内に、バッテリ本体38Bの周囲において、補強部材としての断面略U字形板状の荷重伝達板72が所定数(本実施の形態では4つ)設けられており、荷重伝達板72は、開口部側の端部がバッテリケース38Aの内面に結合されて、矩形状の閉断面を形成している。荷重伝達板72は、バッテリケース38A内に長手方向に沿って配置されており、荷重伝達板72の車両前側端及び車両後側端は、それぞれ第1バッテリブラケット32及び第2バッテリブラケット34に、直接的に、又は、バッテリケース38Aの側壁を介して間接的に連絡されている。
【0050】
バッテリ38のバッテリ本体38Bには、補強部材としての矩形筒状の荷重伝達筒74が貫通されている。荷重伝達筒74は、バッテリケース38Aの長手方向に沿って配置されており、荷重伝達筒74の車両前側端及び車両後側端は、それぞれ第1バッテリブラケット32及び第2バッテリブラケット34に、直接的に、又は、バッテリケース38Aの側壁を介して間接的に連絡されている。
【0051】
ここで、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と、同様の作用及び効果を奏することができる。
【0052】
さらに、バッテリ38内(バッテリケース38A内)の荷重伝達板72及び荷重伝達筒74によって、第1バッテリブラケット32と第2バッテリブラケット34とが直接的又は間接的に連絡されている。このため、車両12の前面衝突時には、エンジン14の車両12に対する車両後側への移動力(衝突荷重)を、荷重伝達板72及び荷重伝達筒74が第1バッテリブラケット32から第2バッテリブラケット34へ伝達することができ(荷重伝達板72及び荷重伝達筒74が受けることができ)、キャビン16の周壁22の変形量を効果的に小さくすることができて、キャビン16の周壁22が変形されることを効果的に抑制することができる。
【0053】
以上により、乗員20を一層効果的に保護することができる。
【0054】
なお、本実施の形態では、内部に荷重伝達板72及び荷重伝達筒74が設けられたバッテリ38を上記第1の実施の形態に適用した構成としたが、内部に荷重伝達板72及び荷重伝達筒74が設けられたバッテリ38を上記第2の実施の形態に適用した構成としてもよい。
【0055】
また、上記第1の実施の形態乃至第3の実施の形態では、前シート18が着座可能な状態で最大車両前側位置に配置された際における前シート18のシートクッション18Aの車両前側端よりも車両前側にバッテリ38の車両後側端を配置した構成としたが、前シート18が着座可能な状態で最大車両前側位置に配置された際における前シート18のシートクッション18Aの車両前後方向中央部よりも車両前側にバッテリ38の重心Gを配置した構成(通常、乗員20のヒップポイントHよりも車両前側にバッテリ38の重心Gが配置される構成)であればよい。例えば、前シート18が着座可能な状態で最大車両前側位置に配置された際における前シート18のシートクッション18Aの車両前側端よりも車両前側にバッテリ38の重心Gを配置した構成としてもよい。
【0056】
さらに、上記第1の実施の形態乃至第3の実施の形態では、第1バッテリブラケット32と第2バッテリブラケット34との間に第3バッテリブラケット36を配置した構成としたが、第1バッテリブラケット32と第2バッテリブラケット34との間に第3バッテリブラケット36を配置しない構成としてもよい。
【0057】
また、上記第1の実施の形態乃至第3の実施の形態では、バッテリ38の上側近傍にインストルメントパネル26が配置された構成としたが、バッテリ38の少なくとも一部がインストルメントパネル26内に配置された構成としてもよい。これにより、ハーネス40をバッテリ38からインストルメントパネル26内に直接配線することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施の形態における車両の主要部を示す車両左方から見た側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るバッテリ設置構造を示す車両左方から見た断面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るバッテリ設置構造を示す車両左斜め後方から見た斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るバッテリ設置構造を示す車両左斜め後方から見た斜視図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係るバッテリ設置構造を示す車両左方から見た断面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態に係るバッテリ設置構造のバッテリを示す車両前方から見た断面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 バッテリ設置構造(高圧電装部品設置構造)
12 車両
16 キャビン(車室)
18 前シート(運転席又は助手席)
18A シートクッション
22 周壁
30 トンネル部
32 第1バッテリブラケット(伝達部材)
34 第2バッテリブラケット(伝達部材)
38 バッテリ(高圧電装部品)
50 バッテリ設置構造(高圧電装部品設置構造)
70 バッテリ設置構造(高圧電装部品設置構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車室の周壁に設けられたトンネル部と、
前記トンネル部の上部に設置された高圧電装部品と、
前記高圧電装部品の車両前側及び車両後側の少なくとも一方に設けられ、車両の衝突荷重を前記トンネル部との間で伝達する伝達部材と、
を備えた高圧電装部品設置構造。
【請求項2】
車両の車室の周壁と、
前記周壁に設置され、車両の運転席又は助手席が着座可能な状態で最大車両前側位置に配置された際における前記運転席又は助手席のシートクッションの車両前後方向中央部よりも車両前側に重心が配置された高圧電装部品と、
を備えた高圧電装部品設置構造。
【請求項3】
前記運転席又は助手席が着座可能な状態で最大車両前側位置に配置された際における前記運転席又は助手席のシートクッションよりも車両前側に前記高圧電装部品の重心が配置された、ことを特徴とする請求項2記載の高圧電装部品設置構造。
【請求項4】
前記運転席又は助手席が着座可能な状態で最大車両前側位置に配置された際における前記運転席又は助手席のシートクッションよりも車両前側に前記高圧電装部品の車両後側端が配置された、ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の高圧電装部品設置構造。
【請求項5】
前記高圧電装部品の車両前側及び車両後側の少なくとも一方に設けられ、車両の衝突荷重を前記車室の周壁との間で伝達する伝達部材を備えた、ことを特徴とする請求項2乃至請求項4の何れか1項記載の高圧電装部品設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−1147(P2008−1147A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170549(P2006−170549)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】