説明

高圧高速制御噴射ガン

【課題】1〜10MPa位までの高圧の液体や気体を高速かつ正確にパルス吐出できるとともに、従来の技術と比べて、より少ない純水使用量で洗浄能力を向上させることが可能な高圧高速制御噴射ガンを提供すること。
【解決手段】噴射ノズル(B3)に直結する開閉機構を持つシャッタ機構(B6)と、該シャッタ機構(B6)を直接開閉駆動するソレノイドなどの駆動源(D3、D9)とを一体化し、1〜10MPa位までの液体や気体の高圧力媒体を高速に噴射する可能としたことを特徴とし、これにより1〜10MPa位までの高圧の液体や気体を高速かつ正確にパルス吐出可能にするとともに従来の技術と比べてより少ない純水使用量で洗浄能力を向上させ、更に、シャッタ開閉確認センサ(S3)、漏水センサ(S1)、温度センサ(S2)などを内蔵し高圧高速制御機構の動作及び内部の異常を検知することを可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル製造、PDPパネル製造、有機ELパネル製造、FEDパネル製造、プリント基板製造、半導体製造、太陽電池製造、フィルム製造、版製造その他電子機器部品等の製造における洗浄工程に用いられる高圧高速制御噴射ガンに係り、より詳しくは、高圧の液体や気体を高速かつ正確にパルス吐出可能とし、これにより、より少ない純水使用量で洗浄能力向上を実現した高圧高速制御噴射ガンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のフラットパネルディスプレイ(液晶、PDP、EL、FED等)半導体、太陽電池、プリント基板、フィルム、電子機器部品等の進歩の高精度化へは目覚しく、特にフラットパネルディスプレイの製造プロセス、高集積半導体素子の製造プロセスにおいては、より高度な超精密洗浄が必要とされている。
【0003】
また、パターンの微細化、高集積化とともに、取り扱う液晶ガラス、PDPガラス、シリコンウエハは大型化しており、液晶ガラスでは2200×2600mm、PDPガラスでは2150×2350mm、シリコンウエハでは300mm径へと移行する現状にあるが、洗浄は、全工程の40〜60%を占め、歩留まり向上に重要な役割を担うプロセスとなっている。
【0004】
ここで、従来の純水洗浄装置の観点から現状を見ると、被洗浄物に対する非接触洗浄として、(1)高圧水連続流による洗浄方法、(2)断続的水圧流による洗浄方法、(3)水中にある被洗浄物に高周波振動波を加え洗浄する超音波洗浄方法など、また被洗浄物に対する接触洗浄として、(4)ブラシを使用した洗浄方法などがすでに行われているが、上記方法ではそれぞれに以下のような問題点を抱えている現状がある。
【0005】
例えば方法(1)では、高圧下における水の使用量の増大と噴出量との矛盾から洗浄時の衝撃能力に対する妥協点を見出さなければならない。
【0006】
また、方法(2)では、高圧力制御に対する構造上の難しさ、断続時の損傷や損傷による汚染粒子の防止や超寿命化の問題、更に高圧力での噴出衝撃圧を維持した上で高速化を実現することが難しく、この点が解決されないと、この方法での水の使用量の減少メリットは現実的ではない。また、方法(2)の方式として既に特開2006−075776号で提案しているが、上記の課題の中で、高圧力での噴出衝撃圧の維持と高速化には不満足であった。
【0007】
次に、方法(3)はすでに周知のように高周波衝撃波である以上、ミクロン粒子にしか効果が無い。さらに非常に洗浄時間を要するという使用範囲に限定される。
【0008】
そして、方法(4)は、非常に効果のある方法であるが、常にブラシによる再汚染対策をどうするかという問題がある。
【0009】
一方、近年の省資源、無公害化などの環境問題への対応や最近の産業機器での小型化、微細化の急速な進化に対応することが急務になってきている現状に鑑みて、上記のような問題点の解決と、より高度な洗浄要求に答える必要がある。
【特許文献1】特開2006−075776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、近年の省資源、無公害化などの環境問題への関心が高まっている状況において、1〜10MPa位までの高圧の液体や気体を高速かつ正確にパルス吐出できるとともに、従来の技術と比べて、より少ない純水使用量で線上能力を向上させることが可能な高圧高速制御噴射ガンを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
近年、省資源、無公害化などの環境問題への関心が高まっている状況の中で、本発明は、これらの厳しい要求に対応する一つとして、1〜10MPa位までの高圧の液体や気体を高速かつ正確にパルス吐出できる構造と制御機能を持つ噴射ガンと超高速駆動回路を開発し、実施例において、高速パルス特性による衝撃圧力発生を確認した。
【0012】
更に、高圧高速制御噴射ガンを使用した純水洗浄装置において、従来のものに比べて、より少ない純水使用量で線上能力向上を実現し、高圧超高速制御噴射ガン(「ダイレクトドライブパルスガン」)の有効性をも確認したものである。
【0013】
即ち、本発明の高圧高速制御噴射ガンは、噴射ノズルに直結する開閉機構を持つシャッタ機構と、該シャッタ機構を直接開閉駆動するソレノイドなどの駆動源とを一体化し、これにより、1〜10MPa位までの液体や気体の高圧力媒体を高速に噴射する可能としたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の高圧高速制御噴射ガンでは、噴射ノズルに直結する開閉機構を持つシャッタ機構と、このシャッタ機構を直接開閉駆動するソレノイドなどの駆動源とを一体化しているため、高圧の液体や気体を高速かつ正確に吐出することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
1.高圧高速制御噴射ガンの外観構成
本発明の高圧高速制御噴射ガンの実施例について図1を参照して説明すると、図1は本実施例の高圧高速制御噴射ガンの外観図である。そして、図においてAは噴射ガンユニット本体カバーであり、内部には駆動回路やセンサが組み込まれている。即ち、噴射ガンユニットが当然高湿度環境で使用されることから、噴射ガンユニット本体に対してカバーで周囲をシールして密閉構造としている。
【0016】
次に、図においてCは噴射ガンユニット本体内の部品を固定するベース板であり、ベース板Cの底面には装置に組み込む時のためのユニット固定用取付穴が設けられている。また、本実施例においてベース板Cは、内部の駆動源の放熱板の役割も果たしている。
【0017】
次に、図においてB1は高圧媒体バッファで、B2が高圧力媒体の供給口である。また、B3は噴射ガンノズルチップで、噴出量や噴出時の広がり角度を決定する。従って、噴射ガンノズルチップB3は、要求する洗浄仕様によって選択することになり、このような選択時の交換を容易にするためにノズル押えB4を備えている。
【0018】
本実施例の高圧高速制御噴射ガンでは1〜10MPa位までの高圧力での使用を対象にしているため、条件によっては部分的にダメージを受けライフに制約を受ける場合がある。特に、5MPa以上になると、後述するガン開閉シャッタ部や高圧シール部では問題が起きやすい。そのため、ノズル押えB4はこのような場合のメンテナンスの容易さを準備している一面もある。
【0019】
なお、図示していなが、ノズルの反対側、噴射ガンユニット本体裏面には駆動信号やセンサ出力などの受渡用に防水コネクタと装置に組み込んだ場合のガン噴射のローカル駆動のためのスタートスイッチがある。
【0020】
2.高圧高速制御噴射ガンの詳細説明
本実施例の高圧高速制御噴射ガンの構成について図2を参照して説明すると、本実施例の高圧高速制御噴射ガンの基本的な構成は、(1)ガン本体に部品を取り付けるための固定ベース類、(2)収容高圧媒体供給バッファと開閉シャッタ部を含むノズルユニット、(3)ガン本体に収容されている開閉シャッタ駆動部、(4)センサ、信号入出力部品、の四つに分類される。
【0021】
2−1 取付、固定ベース
図2においてCが高圧高速制御噴射ガン本体の基本ベースで、ガン内部に収容する各部品を取り付けると同時に、高圧高速制御噴射ガンを洗浄装置などに組み込む際の固定部であり、前述したように放熱板の役割も担っている。
【0022】
そして、C1は、ノズルユニット(B1〜B5)の固定ベースであるとともに高圧シールB7を保持する。C2はシャッタ部を閉にするソレノイドD3の固定、保持用ベースであり、C3は閉ソレノイドD3の補助バネの保持用ベースであり、C4がシャッタ部を閉にするソレノイドD9の固定、保持用ベースであり、及び、C5は高圧高速制御噴射ガン本体の背面カバーであると共にスイッチE1とコネクタE2の取付板である。
【0023】
2−2 ノズルユニット、高圧シール
次に、図2のノズルユニットB1〜B6と高圧シール部B7、B8について説明すると、B1は気体や液体の高圧力媒体のバッファで、B2が高圧力媒体供給口である。
【0024】
また、B3は高圧力媒体噴出ノズルチップで、このノズルチップB3の高圧力媒体入口には、閉補助パッキンB5が密接させてある。
【0025】
次に、B4はノズルチップ押えである。即ち、洗浄機の場合、被対象物に応じて、ノズルチップは噴出時の広がり角や噴出量を最適にするために選択、交換する必要があるので、またその他、メンテナンス時の交換を容易にするために、ノズルチップ押えB4がある。
【0026】
また、B6は、図2のX方向に移動するシャフトで、このシャフトB6はシャッタ機能を持ち、閉補助パッキンB5の面と開放とされるか、密接されるかで、高圧力媒体のシャッタの開閉機構となる。本実施例における高圧高速制御噴射ガンにおいてこのシャッタ構造は三つの重要な意味を持っている。
【0027】
第一は、閉補助パッキンB5はわずかに弾力性を持つ樹脂でシャフトB6の押し付け面に馴染んで密着し確実にシャッタ閉になる。また、シャフトB6の高速移動、強力な衝撃力のバッファとなり、衝撃音を弱めると共に衝突面での損傷を防止する。
【0028】
第二は、補助パッキンB5の面に対してシャフトB6が直角に当たり、すべり摩擦を生じさせない構造であることも重要である。なぜなら衝突時にすべり摩擦を生じるような構造でかつ金属面である場合には、上記の様に密接部分の損傷による摩擦劣化のため寿命の減少を招くばかりで無く、洗浄機の場合には金属粒子が流出し、再汚染され致命的になることも予測されるからである。
【0029】
更に重要な第三は、ノズルチップB3とシャフトB6とを密接にしてシャッタ部との間にバッファを介在させていないことである。高圧力媒体が溜まらない構造は高速動作に不可欠な条件である。その上でシャッタ動作を高速ドライブする事によってはじめて高圧高速制御ガンが可能になったのである。
【0030】
なお、高圧力媒体のシーリングについては、高圧リングシールB7でシールしている。そして、B8は、リングシールB7のすべり移動を制限するためのシールストッパで、高圧リングシールB7の移動を極力少なくして摩擦による摩耗を最小限にするためである。
【0031】
2−3 開閉シャッタ駆動部
本実施例の図2における開閉シャッタ駆動部(D1〜D11)は、前記シャフトB6を、図2のX方向に移動してシャッタ部を開閉駆動するために、互いに逆方向に励磁力が働くように取り付けられている二つのソレノイド(D9、D3)と、駆動確認センサ用検知シャフトD11が主たる構成部品である。
【0032】
即ち、D3が閉駆動ソレノイドで、可動片D4と可動片に固定された可動シャフトD2が閉駆動ソレノイドD3の励時によって閉駆動される。
【0033】
そして、可動シャフトD2は、一方がシャッタ機能を持つシャフトB6と連動するためのカップリングD1で接続され、他方が開駆動ソレノイドD9の可動シャフトD7と連動するためのカップリングD6で固定されている。
【0034】
なお、D5は、閉駆動補助バネで、閉駆動ソレノイドD3の閉駆動力をアップさせる機能を持っている。
【0035】
次に、D9が開駆動ソレノイドで、可動片D8と可動片D8に固定された可動シャフトD7が開駆動ソレノイドD9の励磁によって駆動される。
【0036】
そして、可動シャフトD7は、一方が閉駆動ソレノイドD3の可動シャフトD2とカップリングD6で接続され、他方にはカップリングD10によって駆動確認センサ用検知シャフトD11が固定されている。
【0037】
次に、開閉駆動ソレノイドD9、D3によるシャッタ動作について説明すると、まず、シャッタが閉状態では、閉駆動ソレノイドD3が励磁されており、開駆動ソレノイドD9は無励磁状態である。このため、シャフトD7はフリーのためシャフトD2がノズル側に移動し、連動したシャッタ用シャフトB6がノズルを遮断し高圧力媒体の噴射は完全にオフとなる。この状態がシャッタ閉状態で、このときのオフしている押力は閉駆動ソレノイドD3の励磁力と閉駆動補助バネD5の押力と高圧力媒体の押力となる。閉駆動ソレノイドD3の駆動力について考えると、閉動作の初めはソレノイド移動量が最大すなわち開駆動ソレノイドD9のストッパ位置にあるため励磁力は最小になるのと同時に高圧力媒体の押力が開方向に働くため、大きな駆動電流による高励磁力を高速に発生させなければ高速閉動作は得られない。
【0038】
次に、シャッタが閉状態から開状態の動作は、まず閉駆動ソレノイドD3のドライブをオフにし、続いて、開駆動ソレノイドD9のドライブをONにすると、シャッタ用シャフトB6は高圧力媒体をノズルB3に送り込む方向に移動する。この状態がシャッタ開の状態である。なお、動作開始時に大きな駆動電流による高励磁を高速に発生させなければ高速開動作は得られないのは閉動作と同じである。
実際にシャッタ部を連続的に開閉パルス駆動させた場合、上記したように閉駆動のスタート時には開駆動のスタート時に比べて、高圧力媒体の押力分だけ駆動力を多く必要とする。このため二つのソレノイドの駆動力を本実施例での標準的圧力5、6MPaでバランスさせるために閉駆動補助バネD5を取り付けていることを付記しておく。
【0039】
このように、本発明では、通常のバルブのように圧縮性気体を介して圧力弁を開閉するのではなく、駆動部に直結したシャッタ構造を電気的に直接ドライブし、シャッタに直結するノズルを高圧下で動作させることが出来る構造を設けることとしており、これによって始めて高圧高速制御噴射が可能になったのである。
【0040】
2−4 センサ部
本実施例において、ガン本体に収容されているセンサは以下の三つである。
まず、第一は、液体高圧力媒体の場合の高圧シールB7の不良発生を検出する漏水センサS1である。
第二は、高圧力下で高速に開閉駆動ソレノイドD9、D3を駆動した時の異常発熱を検出する温度センサS2である。正常動作している状態では高圧高速制御噴射ガン本体の基本ベース(図2におけるC)が放熱板の役割も担っていることは既に述べた通りである。
第三は、開閉駆動ソレノイドD9、D3を駆動した時のシャッタ動作(駆動確認センサ用検知シャフトD11の動き)をモニタリングする確認センサS3である。
【0041】
3.回路構成
本実施例に於ける全体制御回路構成を図3に、回路のタイムチャートを図4に、高速ドライブ回路を図5に示し、以下図に従い詳細を説明する。
【0042】
3−1 全体回路構成
図3においてF1は周期パルス発生発信回路で、周期パラメータF10が外部から与えられる。出力F11はタイムチャートの通りである。
【0043】
次に、F2はパルス幅発生回路で、周期パルスF11が発生される毎に出力F21とF22として、外部から与えられるパラメータF20に従いパルス(タイムチャート参照)を発生する。そして、この出力F21とF22が開閉シャッタ動作をさせる駆動ソレノイドD9、D3のドライブ入力信号となる。
【0044】
また、F4、F5は、ワンショットマルチバイブレータで、パルス出力F21とF22でトリガーがかかる。本実施例では出力パルス4mSにしてある。
【0045】
F30はシャッタ動作確認センサ(図2におけるS3)の出力である。
F3は立ち上がり、立ち下がり検出回路で確認センサそれぞれのパルスをF31、F32として出力する。これらのパルスF31、F32はワンショットマルチバイブレータF4、F5のリセット入力に接続されている。
この結果、ワンショットマルチバイブレータF4、F5の出力はシャッタ動作をさせる駆動ソレノイドD9、D3の開閉動作タイミングの信号F41とF51となる。即ち、ソレノイドの特性上最も大きい駆動力(ストロークストローク最大位置駆動力)を必要とするパワーアップタイミング信号となる。
【0046】
次に、F6、F7は開閉シャッタ動作をさせる駆動ソレノイドD9、D3のドライバである。ドライバへは、ドライブ入力信号F21とF22及びパワーアップタイミング信号F41とF51が入力され駆動ソレノイドD9、D3へのドライブ出力として各F61、F62とF71、F72を出力する。
【0047】
なお、ワンショットマルチバイブレータF4、F5は確認センサのエッジパルスをF31、F32が入って来なかった場合の最大パワーアップ時間(実施例では出力パルス4mS)を規制して駆動ソレノイドD9、D3の発熱を押さえるためである。
【0048】
3−2 超高速ドライブ回路
高圧高速制御噴射ガンを駆動部に直結した二つの開、閉ソレノイドを使用し、シャッタを電気的にダイレクトドライブする構造と、シャッタに直結するノズルを高圧下で動作させることが出来る構造を設けることによって、高圧高速制御噴射を可能にしたことは今まで述べてきた通りである。同時にこのような構造を有するガンを、確実に動作させて初めて、高圧高速制御噴射ガンが実現したのである。
そこで、以下、高圧高速制御噴射ガンの開閉シャッタ動作をさせる駆動ソレノイドの高速ドライブ基本回路の実施例を、図5に示し詳細に説明する。
【0049】
F6は開駆動ソレノイド用ドライバの回路構成で、F7が閉駆動ソレノイド用ドライバの回路構成である。
そして、VHはソレノイド高圧側ドライハブ電源で、VLが低圧側ドライハブ(保持)電源である。
また、D1、D2は高速電力ダイオードで、Q1、Q3がそれぞれ開、閉ソレノイドのパワーアップ駆動用電力トランジスタで、Q2、Q4がそれぞれ開・閉ソレノイドを駆動する高圧電力トランジスタである。
Z1、Z2は開・閉ソレノイドをオフした時に発生するサージ電圧を、高速に吸収するサージアブソーバ回路である。
【0050】
次に、動作について説明すると、シャッタ閉状態では閉ソレノイドD3が保持駆動されている。
そしてこの時、閉ドライブ入力F22は「1」、閉パワーアップ入力F51は「0」で、その結果Q3「OFF」、Q4「ON」となり、閉ソレノイドD3にはソレノイド低圧側ドライハブ(保持)電源VL→電力ダイオードD2→閉ソレノイドD3→電力トランジスタQ4の回路が働き、閉ソレノイドD3には保持電流が流れシャッタは閉状態を維持している。当然この時、開駆動ソレノイド用ドライバF6は「OFF」しており開ソレノイドD9には電流が流れていない。
【0051】
次に、閉ドライブ入力F22が「0」になると、トランジスタQ4が「OFF」となり、閉ソレノイドD3の電流を高速で「0」にする。同時に開ドライブ入力F22と開パワーアップ入力F41が「1」となり、ソレノイド高圧側ドライハブ電源VH→電力トランジスタQ1→開ソレノイドD9→電力トランジスタQ2の回路が働き、開ソレノイドD9に最大の電力が与えられ、シャッタは高速で開方向に動く。
【0052】
そして、シャッタが開方向に移動すると、前述したソレノイド動作確認センサS3の信号によって、開パワーアップ入力F41が「0」となり電力トランジスタQ1が「OFF」となり、開ソレノイドD3には保持電流が流れシャッタは開状態となり、今度は閉ドライブ入力F22と閉パワーアップ入力F51が閉ドライブとなる「1」になるまで開状態を維持する。
【0053】
このようにして高圧高速制御噴射ガンは高速に開閉シャッタ動作を実行する。なお実施例ではソレノイド定格の約6倍のパワーアップで移動量0.1mm/1msec=20μm/200μsecでほぼピエゾ素子の速度に匹敵する高速動作を実現している。
【実施例1】
【0054】
本実施例において、純水を使用した洗浄機を予測した場合の実施データとして動作確認した結果は、供給圧力−純水噴出衝撃圧力特性における直線性、供給圧力−純水使用量特性、パルス周期−純水使用量特性、パルス幅−純水使用量特性など非常に良い結果が得られた。一例として、水圧5MPa、対象物との距離100mmにおける設定パルス幅−出力パルス幅特性の測定結果を図6に示す。
【0055】
洗浄効果については、現在実証中であるが、従来このように正確なパルス衝撃噴出が出来なかったために不満足であったあらゆる領域に、本件ダイレクトドライブパルスガンの有効性が発揮されるはずである。
【0056】
なお、本件説明では、1〜10MPa位までの高圧の液体や気体に対応するガンとして説明しているが、出力条件、特にノズルチップやパルス幅によっては、圧力10MPa以上の確認がなされている。また本件によるガン構造で、ソレノイドの選択などによってさらなる高圧力に対応出来ることから、最大制御出力圧力が10MPaに限定されるものではないことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明の高圧高速制御噴射ガンは噴射ノズルに直結する開閉機構を持つシャッタ機構とこのシャッタ機構を直接開閉駆動するソレノイドなどの駆動源とを一体化し、これにより、高圧の液体や気体を高速かつ正確に吐出することを可能としているため、各種洗浄装置や乾燥装置、冷却装置、噴霧装置の全般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の高圧高速制御噴射ガンの実施例の外観図である。
【図2】本発明の高圧高速制御噴射ガンの実施例の構成を説明するための図である。
【図3】本発明の高圧高速制御噴射ガンの実施例の全体制御回路構成を示した図である。
【図4】本発明の高圧高速制御噴射ガンの実施例の全体制御回路のタイムチャートを示した図である。
【図5】本発明の高圧高速制御噴射ガンの実施例における開閉シャッタ動作をさせる駆動ソレノイドの高速ドライブ基本回路を示した図である。
【図6】本発明の高圧高速制御噴射ガンの実施例の測定結果を示した図である。
【符号の説明】
【0059】
A 噴射ガンユニット本体カバー
B1 高圧媒体バッファ
B2 高圧媒体の供給口
B3 噴射ガンノズルチップ
B4 ノズル押え
B5 閉補助パッキン
B6 シャフト
B7 高圧リングシール
B8 シールストッパ
C 噴射ガンユニット本体内の部品を固定するベース板
C1 ノズルユニットの固定ベース
C2 シャッタ部を閉にするソレノイドD3の固定、保持用ベース
C3 閉ソレノイドD3の補助バネの保持用ベース
C4 シャッタ部を閉にするソレノイドD9の固定、保持用ベース
C5 高圧高速制御噴射ガン本体の背面カバー
D1 カップリング
D2 可動片に固定された可動シャフト
D3 閉駆動ソレノイド
D4 可動片
D5 閉駆動補助バネ
D6 カップリング
D7 可動シャフト
D8 可動片
D9 開駆動ソレノイド
D10 カップリング
D11 駆動確認センサ用検知シャフト
S1 漏水センサ
S2 温度センサ
S3 確認センサ
F1 周期パルス発生発信回路
F10 周期パラメータ
F11 周期パルス発生発信回路の出力
F2 パルス幅発生回路
F21 パルス幅発生回路の出力
F22 パルス幅発生回路の出力
F4、F5 ワンショットマルチバイブレータ
F30 シャッタ動作確認センサの出力
F3 立ち上がり、立ち下がり検出回路
F31、F32 立ち上がり、立ち下がり検出回路の出力
F41、F51 駆動ソレノイドD9、D3の開閉動作タイミングの信号
F6、F7 駆動ソレノイドD9、D3のドライバ
F61、F62、F71、F72 ドライバの出力
VH ソレノイド高圧側ドライハブ電源
VL 低圧側ドライハブ(保持)電源
D1、D2 高速電力ダイオード
Q1、Q3 開、閉ソレノイドのパワーアップ駆動用電力トランジスタ
Q2、Q4 開・閉ソレノイドを駆動する高圧電力トランジスタ
Z1、Z2 サージアブソーバ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射ノズル(B3)に直結する開閉機構を持つシャッタ機構(B6)と、該シャッタ機構(B6)を直接開閉駆動するソレノイドなどの駆動源(D3、D9)とを一体化し、これにより、1〜10MPa位までの液体や気体の高圧力媒体を高速に噴射する可能としたことを特徴とする高圧高速制御噴射ガン。
【請求項2】
シャッタ開閉確認センサ、漏水センサ、温度センサなどを内蔵し高圧高速制御機構の動作及び内部の異常を検知することを可能とした請求項1に記載の高圧高速制御噴射ガン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−61388(P2009−61388A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231039(P2007−231039)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(599034398)株式会社ゼビオス (10)
【Fターム(参考)】