説明

高堅牢度織編物

【課題】ポリエステル繊維とセルロース系繊維との特濃色や濃色の織編物において、この織編物を繰り返し洗濯しても、色落ちや汚染、色移りなどをおこすことがなく、光や汗、長期間の着用などで変色や色褪せの殆んどしない、高堅牢度を有する織編物を提供する
【解決手段】着色剤を総量に対して0.5〜5.0質量%の範囲で含有した原着ポリエステル繊維と、着色剤を総量に対して0.5〜5.0質量%を含有した原着セルロース系繊維とからなる織編物であって、前記原着ポリエステル繊維(A)と前記原着セルロース系繊維(B)との混用重量比率(A/B)が80/20〜20/80であり、織編物が織物の場合は、織物の織物被覆度WCF(カバーファクター)が20以上45以下であり、織編物が編物である場合は、編物の編物被覆度KCF(カバーファクター)が15以上30以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高堅牢度を有する織編物に関し、さらに詳しくは、スポーツ用途や作業用のユニフォーム等に使用される衣料や衣料資材に適したポリエステル繊維とセルロース系繊維との複合織編物であり、濃い色目すなわち濃色や特濃色な色目であっても、着用中に下着等への色移りや、繰り返し洗濯による変色や色落ち汚染がなく、長時間の運動に伴う着用に対しても汗等による変色の殆んどしないポリエステル繊維とセルロース系繊維との複合織編物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スポーツ衣料や作業用のユニフォーム等に供される織編物は、用途特性として、汗を良く吸い、洗濯しても縮みにくく、しわになりにくく、毛羽立ちやピリング等の外観も変化の少ない等の機能を基本として要求される。
【0003】
前記機能を満たすための素材としては、ポリエステル繊維と木綿やセルロース系繊維とを混紡や複合した織編物がこれらの用途に広く採用され、審美性を付与するために、染色した糸を用いた先染め織編物にしたり、織編物にした後に染色する後染め織編物にして、用途に供されるのが一般である。
【0004】
前記織編物は、シャツや上着やズボン等のデザインやトレンド等に応じて、濃く、深い色表現が配色上求められてきたが、先染め織編物や後染め織編物を作製する際に広く用いられてきた染料使い、例えば、ポリエステル繊維を分散染料で、セルロース系繊維を反応染料で染色した先染め織編物や後染め織編物は、反応染料に起因した日光や汗や長期の着用でこの織編物に色褪や変色が発生しやすく、特にこの織編物が濃色である場合には、色移りや色汚染をおこしやすい等の問題があった。
【0005】
一方、前記織編物の色褪せや変色、色移りを防ぐことを重視した染料選択が知られており、例えば、ポリエステル繊維を分散染料で、セルロース系繊維をスレン染料で染色するなどである。しかし、このような染料選択を行っても、例えばスレン染料の欠点である色濃度や色相の表現に制約が出てしまい、特に、目的の色濃度や色相が出ない場合がおこるとともに、染色コストが高くつく等の問題があった。
【0006】
これらの課題に対しては、特許文献1には、ポリエステル繊維とセルロース繊維の複合繊維に対して、セルロース繊維をほとんど汚染せずに、ポリエステル繊維のみを高い湿潤堅牢度で染色する方法が開示されているが、これはポリエステル繊維の染色に用いられる分散染料のセルロース繊維に対する汚染を減じるための分散染料や染法を提示されているに過ぎず、セルロース繊維に用いる染料や染法の改良には言及されていないために、上記問題を解消するには至っていない。
【0007】
また、特許文献2には、繊維布帛の濃染加工法及びその布帛が開示されている。
これは、繊維布帛を高圧液体柱状流で処理して、この繊維布帛の露出する繊維配列に微細な乱れを生じさせ、光反射を減少させて濃染化を認識させるものである。しかし、この方法は、物理的に布帛の繊維形態を変化させた視覚効果による濃染化によるものであるため、セルロース系繊維に用いる染料に起因した上記問題を解消するには至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平6−65789号公報
【特許文献2】特開2004−52156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、これらの現状を鑑みてなされたものであり、ポリエステル繊維とセルロース系繊維との特濃色や濃色の織編物において、繰り返し洗濯しても、色落ちや色落ちして白布などの他の織編物に色が付着する汚染や、色移りなどをおこすことがなく、長期間の着用などによって汗等による変色や色褪せの殆んどしない、高堅牢度を有する織編物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリエステル繊維とセルロース系繊維との複合織編物において、着色顔料等の着色剤をポリエステル繊維やレーヨン等のセルロース系繊維の繊維原料に練りこんだ原着繊維で構成した織編物は、染料で染色した織編物よりも、色目が濃く、深くても、諸堅牢度に優れていることに着目して、本発明を完成するに至ったのである。
【0011】
すなわち、本発明は以下の構成から成る。
(a)着色剤を総量に対して0.5〜5.0質量%の範囲で含有した原着ポリエステル繊維と、着色剤を総量に対して0.5〜5.0質量%を含有した原着セルロース系繊維とからなる織編物であって、前記原着ポリエステル繊維(A)と前記原着セルロース系繊維(B)との混用重量比率(A/B)が80/20〜20/80であり、織編物が織物の場合は、下記式(1)で表される織物の織物被覆度WCFが20以上45以下であり、織編物が編物である場合は、下記式(2)で表される編物の編物被覆度KCFが15以上30以下であることを特徴とする、原着繊維100%の織編物。
(1)織物被覆度:WCF=WCF1+WCF2
WCF1 = 経糸密度Dt(本/2.54cm)/√経糸番手Nt
WCF2 = 緯糸密度Dy(本/2.54cm)/√緯糸番手Ny
(2)編物被覆度:KCF=KCF1+KCF2
KCF1 = ウェール数Dw(本/2.54cm)/√編物番手Nk
KCF2 = コース数 Dc(本/2.54cm)/√編物番手Nk
(b)前記原着ポリエステル繊維と前記原着セルロース系繊維とが短繊維であり、これら短繊維どうしを混紡した原着繊維100%の紡績糸を用いた前記(a)に記載の織編物。
(c)前記原着ポリエステル繊維がフィラメント糸であり、織編物の一部に交編織されている前記(a)または(b)に記載の織編物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の織編物は、ポリエステル繊維とセルロース系繊維との特濃色や濃色の織編物において、この織編物を繰り返し洗濯しても、この織編物は色落ちや、色落ちして白布などの他の織編物への汚染、色移りなどをおこすことがなく、長期間の運動に伴う着用等に際しても汗等による変色や色褪せの殆んどしない高い性能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明について詳細に説明する。
(ポリエステル繊維)
本発明におけるポリエステル繊維とは、エチレンテレフタレートを主たる構成単位としたポリエステル繊維を代表例とするが、少量の第三成分を共重合したポリエステル繊維でも良く、静電防止剤他の改質剤を含んでいても差し支えない。
【0014】
(セルロース繊維)
本発明におけるセルロース系繊維とは、ビスコース法レーヨン、モダールに代表されるハイウエットモジュラスレーヨン、セルロースを有機溶剤(NメチルモルフォリンNオキサイド)に溶かして紡糸される精製セルロース繊維や銅アンモニアレーヨンやポリノジックレーヨン、竹を原料とする再生セルロース繊維等があげられ、これらを単独で用いても、混用して用いても良い。
【0015】
(原着ポリエステル繊維)
原着ポリエステル繊維を製造するには、着色剤を、ポリマーの重合段階から紡糸されるまでの任意の過程で添加すれば良いが、設備の汚染、制御等の取り扱性から、重合終了後に添加するのが好ましい。
添加方法としては、溶融紡糸時の安定性、着色剤の取り扱い性により、マスターバッチ方式が好ましい。
本発明でいう着色剤の具体例としては、カーボンブラック、酸化チタン、弁柄、群青等の無機系顔料、フタロシアニン系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、ペリレン系等の有機系顔料などがあげられる。
【0016】
本発明における原着ポリエステル繊維には、着色剤を原着ポリエステル繊維の総量に対して0.5〜5.0質量%含有させており、好ましくは、濃色としての好ましい色濃度を得るために、1.5〜3.0質量%を含有させる方が良い。着色剤が原着ポリエステル繊維の総量に対して0.5質量%よりも少ないと該原着ポリエステル繊維に充分な発色や色濃度が得られず、一方、5.0質量%を超えると円滑な紡糸を行い難くなり好ましくない。
【0017】
本発明における原着ポリエステル繊維のフィラメント糸は、ポリエステルポリマーに着色剤の含有量が原着ポリエステル繊維の総量に対して0.5〜5.0質量%に成る様に混合したものを、常法により、溶融紡糸溶融紡糸装置を用いて紡糸・延伸して得られる。
また、本発明における原着ポリエステル繊維の短繊維は、得られたフィラメント糸を延伸したのちに捲縮を付与し、さらに必要な長さにカットして得られる。
【0018】
本発明における原着ポリエステル繊維は、水や油やアルコールなどに不溶で、かつ染料よりもはるかに大きな粒径を有する着色顔料(色素粒子)が、繊維内部に分散した状態で着色しているために、原着ポリエステル繊維は、色目が深く、濃く、しかも、洗濯や摩擦等による色落ちや汚染や色移り、日光による変色や熱による色素の移行等の問題が、前記着色顔料(色素粒子)よりも小さな粒径を有する分散染料で染色されたポリエステル繊維に比べてはるかにおきにくい。
【0019】
(原着セルロース繊維)
本発明における原着セルロース系繊維には、原着セルロース系繊維の総量に対して0.5〜5.0質量%の着色剤を含有させており、好ましくは1.5〜3.0質量%を含有させるのが良い。着色剤が原着セルロース系繊維の総量に対して0.5質量%よりも少ないと該原着セルロース系繊維に充分な発色や色濃度が得られず、一方、5.0質量%を超えると円滑な紡糸に支障をきたすからである。
【0020】
本発明でいう着色剤の具体例としては、原着ポリエステル繊維の着色剤で例示したものと同じ、カーボンブラック、酸化チタン、弁柄、群青等の無機系顔料、フタロシアニン系、ポリアゾ系、アンスラキノン系、ペリレン系等の有機系顔料があげられる。
【0021】
本発明における原着セルロース系繊維のフィラメント糸は、着色剤をセルロース原液に原着セルロース系繊維の総量に対して0.5〜5.0質量%混合したのち、常法によって、湿式紡糸または乾・湿式紡糸して得られる。
本発明における原着セルロース系繊維の短繊維は、得られたフィラメント糸を紡糸したのち必要な長さにカット、乾燥させて得られる。
【0022】
本発明における原着セルロース系繊維は、水や油やアルコールなどに不溶で、かつ染料よりもはるかに大きな粒径を有する着色顔料(色素粒子)が、繊維内部に分散した状態で着色しているために、原着セルロース系繊維は色目が深く、濃く、しかも、洗濯や摩擦等による色落ちや汚染や色移り、日光による変色等の問題が、反応染料やスレン染料等のイオン性染料で染色されたセルロース繊維に比べてはるかにおきにくい。
【0023】
(混紡糸)
本発明における原着ポリエステル繊維と原着セルロース系繊維との混紡糸(複合糸)は、これらの短繊維を常法の紡績工程で混綿したのち、梳綿、練条、粗紡、精紡工程を経て得られるリング紡績糸でも、スライバーから直接糸に紡ぐオープエンド紡績法や空気過流(村田機械(株)製の「MVS」)紡績法等によって得られる紡績糸でもよく、紡績法にはこだわらないが、紡績糸としての必要な強度や均斉度や糸外観を備えている必要がある。
【0024】
(織編物)
本発明の織編物は、上記紡績糸、上記フィラメント糸などを用いて、糸を交錯して形成される。
織物は、たて糸とよこ糸を通常直角に交差させて、具体的には、平織や綾織、朱子織、それらの変化組織等によって製織される。
編織は、糸のループを連結させて、具体的には、よこ糸でループを作っているよこ編では、天竺編やゴム編、両面編等で、たて糸でループを作っているたて編では、ハーフ編やパワーネット編、ラッセル編などによって製織される。
また、特に上記紡績糸を用いて得られた織編物は、この織編物の一部に上記原着ポリエステル繊維のフィラメント糸を交編織することで、長短複合織編物とすることが好ましい。これは、例えば、短繊維紡績糸のみからなる織編物は、短繊維特有の毛羽や撚りや膨らみや糸斑が醸し出す独特の自然な表情、表面感や暖かみのある風合いが得られるのであるが、混用する素材やその比率や番手等によってピリングや糸斑が問題となる。一方、フィラメント糸のみからなる織編物は、一般に紡績工程を必要としないためにコストが安く、さらにこの織編物はピリングや糸斑もないが、太さが均一でストレートの繊維が平行に配列しているだけで繊維間空隙がほとんどないため、ペーパーライク、プラスチックライクで暖かみがなく、無機質で冷たい感じとなってしまう。そこで、短繊維のみから成る上記紡績糸を用いて得られる織編物にフィラメント糸を交編織させることで、双方の互いの欠点を補い合う繊維独特の暖かみのある織編物とすることができる。
【0025】
その際、本発明の織編物は、原着ポリエステル繊維と、原着レーヨン繊維等の原着セルロース系繊維との混用率重量%が、80/20〜20/80の混用重量比率で複合した織編物であり、この織編物は、織物の場合、下記式(1)で表される織物の織物被覆度WCF(カバーファクター)が20以上45以下であり、編物の場合、下記式(2)で表される編物の編物被覆度KCF(カバーァクター)が15以上30以下である、原着繊維100%の織編物である必要がある。
(1)織物被覆度(カバーファクター):WCF=WCF1+WCF2
WCF1=経糸密度Dt(本/2.54cm)/√経糸番手Nt
WCF2=緯糸密度Dy(本/2.54cm)/√緯糸番手Ny
(2)編物被覆度(カバーファクター):KCF=KCF1+KCF2
KCF1=ウェール数Dw(本/2.54cm)/√編物番手Nk
KCF2=コース数 Dc(本/2.54cm)/√編物番手Nk
一般に、織編物は、染色前に織編物として必要な密度がなく不足しても、染色工程中に熱や水流や張力等の負荷によって、経方向(編み物の場合、ウェール方向)や緯方向(編み物の場合、コース方向)の数%〜10数%程度(組織、密度、染色法によって異なる)の収縮作用によって、染色された織編物は密度が増し、織編物として必要な密度が得られる場合がある。一方、原着繊維100%からなる織編物は、染色を必要としないため、密度変化を殆んど起こさないか、非常に少なく、加工上がり後にも、織編物として必要な密度が不足してしまう。
従って、本発明の織物は、織物被覆度として20≦WCF≦45、好ましくは25≦WCF≦40の範囲にあればよい。WCFが20未満であると、織物の強度不足になり縫製後の縫目に破れが生じたりするおそれがある。45を超えてしまうと、緻密な織物と成りすぎてしまい、硬く、厚くなり衣料用として適さない。
本発明の編物は、編物被覆度として15≦KCF≦30が必要であり、好ましくは15≦KCF≦25の範囲にあればよい。KCFが15未満であると、編物の強度不足になり縫製後の縫目に破れが生じたりするおそれがある。30を超えてしまうと緻密になりすぎて、硬く、厚くなってしまい衣料として適さない。
織物、編物がともに上記範囲であれば、織編物として必要な強度や縫目破れの発生もなく、風合も良好で色目が深く、濃く、摩擦や洗濯に対する堅牢度が良好な織編物が得られる。
本発明における原着ポリエステル繊維と原着セルロース系繊維との混用重量比率は、80/20〜20/80、好ましくは65/35〜35/65の範囲の混用重量比率が必要である。原着ポリエステル繊維の混用比率が80%を超えてしまうと、吸水性が悪くなるとともに、ピリングによる外観変化をおこしてしまい、原着レーヨン繊維などの原着セルロース系繊維の混用率が80%を超えてしまうと寸法安定性や洗濯後のシワ回復性が悪くなってしまうからである。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例および比較例により、具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例および比較例において用いた織物または編物の性能の評価は次の方法で実施した。
【0027】
(1)色の深み・濃さの評価
測色機(グレタグマクベス(株)製の「カラーアイ」)を用いて織物または編物のL値(明度)を測定した。L値によって以下の評価をした。
○: 優 ( L ≦ 16.0 )
△: 良〜可( 16.0 < L < 20.0 )
×: 不可 ( L ≧ 20.0 )
【0028】
(2)洗濯堅牢度の判定
洗濯に対する染色堅ろう度試験方法(JIS−L−0844)に規定されているA−2号に準拠し、織物または編物を水洗、脱水、乾燥した織物または編物の変退色と、織物または編物に添付した白布への液汚染の程度について、それぞれ変退色用グレースケール、汚染用グレースケールを基準に以下の級数(G)判定をそれぞれ行った。
(i)変退色
○: 優 ( G > 4級 )
△: 良〜可( G = 4級 )
×: 不可 ( G < 4級 )
(ii)液汚染
○: 優 ( G > 3級 )
△: 良〜可( G = 3級 )
×: 不可 ( G < 3級 )
【0029】
(3)乾燥状態および湿潤状態での摩擦堅牢度の判定
染色堅牢度試験方法(JIS―L−0849)に規定されている摩擦試験機II形(学振形)に準拠し、摩擦試験機を用いて乾燥状態(乾試験)および湿潤状態(湿試験)の白布が織物または編物に汚染される程度について、汚染用グレースケールを基準に以下の級数(G)判定をそれぞれ行った。
(i)乾試験
○: 優 ( G ≧ 4級 )
△: 良〜可( G = 3.5級 )
×: 不可 ( G ≦ 3級 )
(ii)湿試験
○: 優 ( G > 2級 )
△: 良〜可( G = 2級 )
×: 不可 ( G < 2級 )
【0030】
(4)汗堅牢度の判定
汗堅牢度試験方法(JIS―L−0848)に準拠し、織物または編物に白布を縫付け、この織物または編物に(i)酸性(pH5.5)および(ii)アルカリ性(pH8.0)の人工汗液を含浸させた後、37度で乾燥させ、白布の汚染の程度で以下の級数(G)判定を行った。
(i)酸性の人工汗液
○: 優 ( G > 3.5級 )
△: 良〜可( G = 3.5級 )
×: 不可 ( G < 3.5級 )
(ii)アルカリ性の人工汗液
○: 優 ( G > 3.5級 )
△: 良〜可( G = 3.5級 )
×: 不可 ( G < 3.5級 )
【0031】
(5)洗濯後のシワ回復の判定
洗濯処理による寸法変化(JIS―L−0217)に規定されている103法に準拠し、織物または編物を標準洗剤を用いて3回洗濯した後につり干し乾燥させ、AATCC124−1984の5段階レプリカ法に基づいて編織物の洗濯後のシワ回復について、以下の級数(G)判定を行った。
○: 優 ( G > 3.0級 )
△: 良〜可( G = 3.0級 )
×: 不可 ( G < 3.0級 )
【0032】
(6)ピリング性の判定
織物および編物のピリング試験法(JIS−L−1076)に規定されるA法(ICI形試験機を用いる方法)に準拠して、織物の場合には10時間摩擦を与えた後に、編物の場合には5時間摩擦を与えた後に、以下の級数(G)判定を行った。
○: 優 ( G > 3級 )
△: 良〜可( G = 3級 )
×: 不可 ( G < 3級 )
【0033】
(7)吸湿性の評価
繊維製品の吸水性試験方法(JIS−L−1907)に規定されているバイレック法に準拠して、織物または編物の吸水高さHを測定した。吸水高さによって、以下の評価をした。
○: 優 ( H ≧ 45mm )
△: 良〜可( 20mm < H < 45mm )
×: 不可 ( H ≦ 20mm )
【0034】
(8)寸法変化率の評価
洗濯処理による寸法変化(JIS―L―0217)に規定されている103法に準拠し、織物または編物を水温40℃で5分間洗濯後、脱水し、水温30℃で2分間のすすぎを2回繰り返し、直射日光の当たらない場所で吊り干しする一連の工程を5回繰り返し、この織物または編物の縦方向(編物の場合、ウェール方向)および横方向(編物の場合、コース方向)のそれぞれの寸法変化率Dを求め、以下の評価を行った。ただし、プラス表記は、伸びたことを示しており、例えば+3%とは、3%伸びたことを表す。また、マイナス表記は縮んだことを示しており、例えば−3%とは、3%縮んだことを表す。
(i)織物の縦方向および横方向
○: 優 ( ―3% < D < +3% )
△: 良〜可( D = ±3% )
×: 不可 ( D < ―3% 、 D > +3% )
(ii)編物のウエール方向およびコース方向
○: 優 ( ―6% < D < +6% )
△: 良〜可( D = ±6% )
×: 不可 ( D < ―6% 、 D > +6% )
【0035】
(実施例1)
着色剤としてカーボンブラックを原着ポリエステル繊維の総量に対して2.0質量%を含有させた1.7dtex×38mmの原着ポリエステル短繊維50重量%を用いて、同じく、着色剤としてカーボンブラックを原着レーヨンの総量に対して2.0質量%練り込んで、ビスコース法にて製造した1.7dtex×38mmの原着レーヨン短繊維50重量%とを用いて、常法のリング紡績工程にて混綿混紡し、梳綿、練条、粗紡、精紡工程を経て、Ne30番手の黒色の紡績糸を得た。
この糸を用いて、経130本/2.54cm、緯70本/2.54cmの2/1の左綾、CF=36.5の綾織物を製織したのち、常法の毛焼、糊抜き、精錬工程を経て、乾燥仕上げ工程にて、生地の収縮率を安定させるためにヒートセット(170度×45秒)を付与して、原着ポリエステル繊維50重量%、原着レーヨン繊維50重量%の黒色の綾織物を得た。
得られた織物に対して、上記の諸物性や諸堅牢度を測定した後、それぞれの評価・判定を行った。試験結果を表1に表す。
【0036】
(実施例2)
実施例1と同様にして原着ポリエステル短繊維50重量%と原着レーヨン短繊維50重量%から成るNe30番手の黒色の紡績糸を得た。
この糸を用いて、28G、34インチ(1インチ=2.54cm)口径、給糸数102口の丸編機にて、天竺編物を製編し、開反した後に、常圧液流染色機にて常法の精錬したのち、仕上げ工程にて幅出し、ヒートセット(170℃×45秒)を行って、CF=21の黒色の天竺編物を得た。
得られた天竺編物に対して、前記諸物性や諸堅牢度を測定した後、それぞれの評価・判定を行った。試験結果を表1に表す。
【0037】
(実施例3)
実施例1と同様にして原着ポリエステル短繊維50重量%と原着レーヨン短繊維50重量%から成るNe30番手の黒色の紡績糸を得た。
この糸を経糸に用いて、緯糸には、着色剤としてカーボンブラックを原着ポリエステル繊維の総量に対して2.0質量%含有させた原着ポリエステル繊維のフィラメント糸167dtex/36fを用いて、経130本/2.54cm、緯72本/2.54cm、CF=35.9の2/1左綾の綾織物を製織したのち、常法での連続染色工程にて、毛焼、糊抜き、精錬工程を経て、乾燥仕上げ工程にて生地の収縮率を安定させるために、ヒートセット(170℃×45秒)を付与して、原着ポリエステル繊維67重量%、原着レーヨン繊維33重量%の黒色の綾織物を得た。
得られた綾織物に対して、前記諸物性や諸堅牢度を測定した後、それぞれの評価・判定を行った。試験結果を表1に表す。
【0038】
(比較例1)
1.7dtex×38mmのポリエステル短繊維を50重量%、ビスコース法にて製造した1.7dtex×38mmのレーヨン短繊維50重量%とを用いて、常法のリング紡績工程にて混綿混紡し、梳綿、練条、粗紡、精紡工程を経て、Ne30番手紡績糸を得た。
この糸を用いて、経130本/2.54cm、緯70本/2.54cm、CF=36.5の2/1左綾の綾織物を製織した後、得られた綾織物にて、実施例1で得た黒織物の色目濃度を見本に、分散染料(日本化薬(株)製の「カヤロンBLACK」)および反応染料(住化ケムテックス(株)製の「スミフィックスBLACK」)にて、ビーカーレベルで染色レサイプを作成した。
このビーカー染料レサイプを用いて、常法の分散染料および反応染料を用いて連続染色法(一浴染)で染色し、乾燥仕上げ工程にて生地の収縮率を安定させるために、ヒートセット(170℃×45秒)を付与して、ポリエステル繊維50重量%、レーヨン繊維50重量%の黒色の綾織物を得た。
得られた綾織物に対して、前記諸物性や諸堅牢度を測定した後、それぞれの評価・判定を行った。試験結果を表1に表す。
【0039】
(比較例2)
1.7dtex×38mmのポリエステル短繊維を15重量%、ビスコース法にて製造した1.7dtex×38mmのレーヨン短繊維85重量%とを用いて、常法のリング紡績工程にて混綿混紡し、梳綿、練条、粗紡、精紡工程を経て、Ne30番手紡績糸を得た。
この糸を用いて、経130本/2.54cm、緯70本/2.54cm、CF=36.5の2/1左綾の綾織物を製織した後、得られた綾織物にて、実施例1で得た黒織物の色目濃度を見本に、分散染料(日本化薬(株)製の「カヤロンBLACK」)およびスレン染料(DYSTAR(有)製の「ミケスレンBLACK」)にて、ビーカーレベルで染色レサイプを試行錯誤して作成したが、見本どおりの黒の色濃度は得られず、浅く、薄くなった。
このビーカー染料レサイプで、常法の分散染料およびスレン染料を用いて連続染色法(一浴染)にて染色し、乾燥仕上げ工程にて生地の収縮率を安定させるために、ヒートセット(170℃×45秒)を付与して、ポリエステル繊維50重量%、レーヨン繊維50重量%の黒色の綾織物を得た。
得られた綾織物に対して、前記諸物性や諸堅牢度を測定した後、それぞれの評価・判定を行った。試験結果を表1に表す。
【0040】
(比較例3)
1.7dtex×38mmのポリエステル短繊維を85重量%、ビスコース法にて製造した1.7dtex×38mmのレーヨン短繊維15重量%とを用いて、常法のリング紡績工程にて混綿混紡し、梳綿、練条、粗紡、精紡工程を経て、Ne30番手紡績糸を得た。
この糸を用いて、実施例2と同様の規格にて製編した。実施例2で得た黒織物の色目濃度を見本に、分散染料(日本化薬(株)製の「カヤロンBLACK」)および反応染料(住化ケムテックス(株)製の「スミフィックスBLACK」)にて染色レサイプを作成し、開反した後に、高圧液流染色機にて常法の精錬したのち、前記染色レサイプを元に、分散染料および反応染料の一浴染めにて染色し、仕上げ工程にて幅出し、ヒートセット(170℃×45秒)を行って、CF=21の黒色の天竺編物を得た。
得られた天竺編物に対して、前記諸物性や諸堅牢度を測定した後、それぞれの評価・判定を行った。試験結果を表1に表す。
【0041】
【表1】

【0042】
その結果、表1より、比較例1の織物は、湿試験での摩擦堅牢度や汗堅牢度が悪く、着用中に色移りや洗濯時に色落ちしてしまい、比較例2は、目的の色濃度が得られず、洗濯後の縮みが大きく、シワがつきやすい問題を残し、比較例3は、ピリングの発生がひどく、吸水性も悪いため、本用途に対する織編物としての基本機能が劣る。
一方、本発明による織編物によれば、表1の実施例1、2、3に示す如く、色目は深く、濃く、本用途に対しての織編物として必要な諸物性や堅牢度を満たしたすぐれた機能と審美性とを有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤を総量に対して0.5〜5.0質量%の範囲で含有した原着ポリエステル繊維と、着色剤を総量に対して0.5〜5.0質量%を含有した原着セルロース系繊維とからなる織編物であって、
前記原着ポリエステル繊維(A)と前記原着セルロース系繊維(B)との混用重量比率(A/B)が80/20〜20/80であり、織編物が織物の場合は、下記式(1)で表される織物の織物被覆度WCFが20以上45以下であり、織編物が編物である場合は、下記式(2)で表される編物の編物被覆度KCFが15以上30以下であることを特徴とする、原着繊維100%の織編物。
(1)織物被覆度:WCF=WCF1+WCF2
WCF1 = 経糸密度Dt(本/2.54cm)/√経糸番手Nt
WCF2 = 緯糸密度Dy(本/2.54cm)/√緯糸番手Ny
(2)編物被覆度:KCF=KCF1+KCF2
KCF1 = ウェール数Dw(本/2.54cm)/√編物番手Nk
KCF2 = コース数 Dc(本/2.54cm)/√編物番手Nk
【請求項2】
前記原着ポリエステル繊維と前記原着セルロース系繊維とが短繊維であり、これら短繊維どうしを混紡した原着繊維100%の紡績糸を用いた請求項1に記載の織編物。
【請求項3】
前記原着ポリエステル繊維がフィラメント糸であり、織編物の一部に交編織されている請求項1または2に記載の織編物。

【公開番号】特開2011−94259(P2011−94259A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248871(P2009−248871)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(593069897)モリリン株式会社 (29)
【Fターム(参考)】